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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】多節リンク膝継手
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/64 20060101AFI20220131BHJP
   A61F 2/70 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
A61F2/64
A61F2/70
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018035537
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2018187358
(43)【公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2017090616
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】奥田 正彦
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/132662(WO,A1)
【文献】特開平05-212070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0023133(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/64
A61F 2/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部リンク部材および下部リンク部材を含む複数のリンク部材を有する多節リンク機構により、前記上部リンク部材が前記下部リンク部材に対して回転する膝部と、
前記上部リンク部材の回転にしたがって移動する従動部材と、
前記リンク部材に設けられた、前記従動部材の位置を検出する位置検出部と、
前記従動部材の位置から前記膝部の屈曲角度を求める角度検出部と、
前記上部リンク部材の回転にしたがって前記従動部材を移動させる移動機構と、
を備え
前記従動部材は、突起を備え、
前記移動機構は、前記突起が嵌り込む溝であって、前記上部リンク部材の回転にしたがって前記従動部材を移動させる溝を備え、
前記溝は、湾曲部を備えることを特徴とする多節リンク膝継手。
【請求項2】
前記位置検出部と前記角度検出部は、同じ前記リンク部材に設けられることを特徴とする請求項1に記載の多節リンク膝継手。
【請求項3】
前記従動部材および前記移動機構は、一方が前記上部リンク部材に設けられ、他方が前記下部リンク部材に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の多節リンク膝継手。
【請求項4】
上部リンク部材および下部リンク部材を含む複数のリンク部材を有する多節リンク機構により、前記上部リンク部材が前記下部リンク部材に対して回転する膝部と、
前記上部リンク部材の回転にしたがって移動する従動部材と、
前記リンク部材に設けられた、前記従動部材の位置を検出する位置検出部と、
前記従動部材の位置から前記膝部の屈曲角度を求める角度検出部と、
前記上部リンク部材の回転にしたがって前記従動部材を移動させる移動機構と、
を備え、
前記従動部材は、突当部材を備え、
前記移動機構は、延在方向に沿って深さが変化するように形成された溝と、前記突当部材を前記溝の底に突き当てる付勢部材と、
を備えることを特徴とする多節リンク膝継手。
【請求項5】
前記膝部の動きを補助する補助駆動部を制御する制御装置をさらに備え、
前記下部リンク部材は、下部リンクと、前記下部リンクに連結される下腿部とを備え、
前記制御装置は、前記下腿部に設けられており、
前記位置検出部は、前記下部リンクに設けられていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の多節リンク膝継手。
【請求項6】
前記膝部の動きを補助する補助駆動部を制御する制御装置をさらに備え、
前記位置検出部および前記制御装置は、前記上部リンク部材に設けられていることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の多節リンク膝継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多節リンク膝継手に関する。
【背景技術】
【0002】
病気や事故などで膝の上側で足を切断した人が使用する義足には、生体の膝関節と同様に屈曲する膝継手が設けられる。使用者の動きに応じて膝継手が曲がることで、立つ、座る、歩くといった動作が可能になる。
【0003】
特許文献1には、多節リンク機構により屈曲する膝部と、屈曲角度に応じて膝部の動きを補助するエアシリンダとを備える膝継手が開示されている。この膝継手では、多節リンク機構により膝部の動きが生体の膝関節に近づくので、より自然に動きやすくなる。また、エアシリンダにより歩行動作がサポートされるので、歩行の安定性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/132662号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る膝継手は、膝部に連結されたピストンロッドの位置を検出し、この検出結果から膝部の屈曲角度を求めてエアシリンダを制御する。膝部の動きを補助する補助駆動部として、エアシリンダや油圧シリンダ以外に、ピストンロッドを持たない回転式油圧ダンパなどを用いる場合もある。この場合、屈曲角度の検出に関する構成を変更する必要がある。屈曲角度の検出に関する構成を、異なる方式の補助駆動部にも対応可能な構成にできれば、多様な製品群を展開する上で部品を共通化してコストを低減できる可能性がある。
【0006】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、多節リンク膝継手において膝部の屈曲角度を検出する構成を、複数の方式の補助駆動部に対応可能な構成とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、多節リンク膝継手である。この多節リンク膝継手は、上部リンク部材および下部リンク部材を含む複数のリンク部材を有する多節リンク機構により、上部リンク部材が下部リンク部材に対して回転する膝部と、上部リンク部材の回転にしたがって移動する従動部材と、リンク部材に設けられた、従動部材の位置を検出する位置検出部と、従動部材の位置から膝部の屈曲角度を求める角度検出部と、を備える。
【0008】
この態様によれば、上部リンク部材の回転にしたがって移動する従動部材の位置を検出し、この検出結果から膝部の屈曲角度を求めるので、同様の構成で方式が異なる補助駆動部にも対応できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多節リンク膝継手において膝部の屈曲角度を検出する構成を、複数の方式の補助駆動部に対応可能な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る多節リンク膝継手の側面図である。
図2】実施の形態に係る多節リンク膝継手の断面概略図である。
図3図3(a)~(c)は、実施の形態に係る多節リンク膝継手の膝部が屈曲する様子を示す図である。
図4】実施の形態に係る制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図5図5(a)、(b)は、実施の形態に係る回転検出部の構成を示す図である。
図6】実施の形態に係る上部リンクの溝を示す図である。
図7図7(a)~(c)は、実施の形態に係る膝部の屈曲にしたがって従動部材が移動する様子を示す図である。
図8】実施の形態に係る位置検出部の検出値と膝部の屈曲角度との関係を示す図である。
図9】実施の形態に係る膝部の屈曲角度および従動部材の移動角度を示す図である。
図10図10(a)~(c)は、実施の形態に係る膝部の屈曲角度、従動部材の移動角度、および従動部材の軸方向移動量の関係を示す図である。
図11】変形例1に係る多節リンク膝継手を示す断面概略図である。
図12図12(a)~(c)は、変形例1に係る膝部の屈曲角度、従動部材の移動角度、および従動部材の軸方向移動量の関係を示す図である。
図13】変形例2に係る多節リンク膝継手を示す断面概略図である。
図14】別の実施の形態に係る多節リンク膝継手の断面概略図である。
図15】膝部の屈曲角度が0°のときの別の実施の形態に係る回転検出部を示す概略図である。
図16】膝部の屈曲角度が大きくなったときの別の実施の形態に係る多節リンク膝継手の断面概略図である。
図17】膝部の屈曲角度が大きくなったときの別の実施の形態に係る回転検出部を示す概略図である。
図18】さらに別の実施の形態に係る多節リンク膝継手の断面概略図である。
図19図19(a)~(d)は、膝部が屈曲する様子を示す図である。
図20】さらに別の実施の形態に係る多節リンク膝継手の断面概略図である。
図21図21(a)~(d)は、膝部が屈曲する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施の形態では、同一の構成要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略する。
【0012】
実施の形態に係る多節リンク膝継手を具体的に説明する前に、概要を説明する。実施の形態に係る多節リンク膝継手は、多節リンク機構により上部リンクが下部リンクに対して回転する膝部と、膝部の動きを補助する補助駆動部とを備える。補助駆動部の一例は、回転式油圧ダンパである。膝部には、上部リンクの回転にしたがって移動する従動部材と、従動部材の位置を検出する位置検出部とが設けられている。予め設定される従動部材の位置と膝部の屈曲角度との関係から、位置検出部の検出結果から膝部の屈曲角度を求めることができる。補助駆動部は、エアシリンダや油圧シリンダなどのシリンダ装置であってもよい。同様の構成で方式が異なる補助駆動部に対応して膝部の屈曲角度を検出できる。
【0013】
図1は、実施の形態に係る多節リンク膝継手100の側面図である。図2は、多節リンク膝継手100の断面概略図である。以下の説明では、各図に示すxyz直交座標系において、x軸に平行な方向を左右方向として、x軸の正方向を「左」、負方向を「右」という。y軸に平行な方向を前後方向として、y軸の正方向を「前」、負方向を「後ろ」という。また、z軸に平行な方向を上下方向として、z軸の正方向を「上」、負方向を「下」という。
【0014】
多節リンク膝継手100は、膝部10、下腿部12、制御装置14を備える。膝部10は、上部リンク16、下部リンク18、前部リンク20、および後部リンク22を含む多節リンク機構により屈曲する。上部リンク16に第1軸24および第2軸26が設けられ、下部リンク18に第3軸28および第4軸30が設けられている。各軸は、軸方向がx軸に平行で回転可能に設けられている。前部リンク20は、第1軸24および第3軸28の端部に取り付けられている。後部リンク22は、第2軸26および第4軸30の端部に取り付けられている。上部リンク16は、前部リンク20および後部リンク22に支持されて下部リンク18に対して回転する。上部リンク16から突出する大腿接続部32は、使用者の大腿部に取り付けられるソケットに接続される。大腿接続部32が突出する方向とz軸とがなす角を、膝部10の屈曲角度と定義する。図1および図2に示される屈曲角度は0°であり、膝部10が完全に伸びた状態である。
【0015】
図3は、膝部10が屈曲する様子を示す図である。図3(a)~(c)に示す膝部10の屈曲角度は、それぞれ45°、90°、160°である。屈曲角度が大きくなると、前部リンク20と後部リンク22とが交差する。上部リンク16は、下部リンク18に対して後方に移動しながら回転する。上部リンク16の回転により、膝部10は生体の膝関節と同様に屈曲する。
【0016】
上部リンク16の下部リンク18側の外周面には、上部リンク16の回転方向に延びる溝34が形成されている。溝34は、上部リンク16の回転にしたがって後述の従動部材を移動させる移動機構である。下部リンク18の上部には、上部リンク16の回転を検出する回転検出部36が設けられている。回転検出部36は、従動部材38を備える。従動部材38は、溝34に嵌り込み、上部リンク16の回転にしたがってx軸方向に移動する。回転検出部36は、従動部材38の位置に応じた検出値を制御装置14に出力する。溝34および回転検出部36の構成は後述する。
【0017】
下腿部12は、筒状に形成されており、制御装置14を収納する。下腿部12の上側には、下部リンク18が固定されている。また、下側には義足を構成する足部に接続する足接続部40が設けられている。制御装置14は、回転検出部36の検出結果から膝部10の屈曲角度を求め、不図示の補助駆動部を制御する。
【0018】
なお、本明細書では適宜、リンクと、該リンクに固定されてリンクと共に動く部材とを合わせて「リンク部材」と称する。例えば「上部リンク部材」は、上部リンク16と、大腿接続部32とを含む。また「下部リンク部材」は、下部リンク18と、下腿部12とを含む。多節リンク膝継手100の多節リンク機構は、上部リンク部材および下部リンク部材を含む複数のリンク部材から構成される。
【0019】
図4は、実施の形態に係る制御装置14の機能構成を示すブロック図である。本明細書のブロック図で示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0020】
制御装置14は、角度検出部42、制御部44を備える。角度検出部42は、回転検出部36の検出結果から膝部10の屈曲角度を求める。制御部44は、角度検出部42が求めた屈曲角度に応じて、補助駆動部46を制御する。本実施の形態において、補助駆動部46は、第1軸24に取り付けられた回転式油圧ダンパであり、制御部44に制御されて膝部10の動きを補助する。制御部44は、屈曲角度が0°に近い立脚時には、第3軸28の回転を制限するように補助駆動部46を制御する。これにより、使用者の意思に反して膝部10が屈曲する膝折れを防ぐ。また、歩行時など屈曲角度が変化する遊脚時には、角度の変化方向に合わせて第3軸28を回転させるように補助駆動部46を制御する。これにより、足の振り出しに合わせて下腿部12がスイングするので、使用者は快適に歩行できる。なお、補助駆動部46としての回転式油圧ダンパは、第2軸26、第3軸28、および第4軸30のいずれかに設けられてもよい。ただし、第3軸28および第4軸30は上部リンク16の回転途中で回転方向が逆方向に変わる場合があるので、上部リンク16と常に同じ方向に回転する第1軸24または第2軸26に設けた方が、回転式油圧ダンパを制御しやすくなる。また、補助駆動部46としてエアシリンダや油圧シリンダなどのシリンダ装置を設けてもよい。
【0021】
図5は、実施の形態に係る回転検出部36の構成を示す図である。図5(a)は回転検出部36の上面図、図5(b)はその側面図である。回転検出部36は、従動部材38、ケース50、位置検出部64を備える。従動部材38は、一体に形成されている突起58および本体60を備える。突起58は、円柱状に形成されて本体60から突出する。本体60は、直方体状に形成されて磁石62を収納する。ケース50は、上ケース52、下ケース54を備える。上ケース52は、従動部材38の矢印方向への移動を可能にするレールを構成する。下ケース54は、位置検出部64を収納する。位置検出部64は、ホール素子を備え、磁石62との距離に応じた検出値を出力する。
【0022】
従動部材38の突起58は、上部リンク16の溝34に嵌り込む。上部リンク16が回転すると、突起58が溝34に押されて従動部材38が矢印方向のいずれかに移動する。従動部材38の移動により、磁石62と位置検出部64との距離が変化する。位置検出部64は、従動部材38の位置、すなわち膝部10の屈曲角度に応じた検出値を出力する。回転検出部36は、従動部材38の移動方向と膝部10の各軸の軸方向とが平行になるように下部リンク18に取り付けられる。なお、従動部材38の移動方向は膝部10の回転軸方向に対して傾斜してもよい。本実施の形態のように、従動部材38の移動方向を回転軸方向に平行とすることで、従動部材38の移動量を小さくして回転検出部36を小型化できる。
【0023】
図6は、実施の形態に係る上部リンク16の溝34を示す図である。図6は、屈曲角度0°における上部リンク16の底面図である。溝34は、大腿接続部32とは反対側の面に形成され、従動部材38の突起58が嵌まり込む湾曲部66および導入部68を備える。湾曲部66は、上部リンク16の底面の中央付近から後方に向かって延びながら右側に向かって湾曲する。導入部68は、湾曲部66に通じ、後方に向かって幅が広がるように形成されている。図3(c)に示すように、膝部10の屈曲角度が大きくなると、突起58が溝34から外れる。この状態から図3(a)および(b)に示す状態に戻る際に、導入部68が突起58を湾曲部66に導く。
【0024】
図7は、実施の形態に係る膝部10の回転にしたがって従動部材38が移動する様子を示す図である。図7(a)~(c)は、それぞれ膝部10の屈曲角度が0°、45°、90°の場合を示す。膝部10が曲げられると、突起58が溝34に押されて従動部材38が移動する。従動部材38が移動すると磁石62と位置検出部64との距離が変わり、位置検出部64の検出値が変化する。図8は、位置検出部64の検出値と膝部10の屈曲角度との関係を示す図である。角度検出部42は、位置検出部64の検出値を取得し、図8に示す関係から膝部10の屈曲角度を求める。
【0025】
ここで、図9に示すように、膝部10の屈曲角度をα、第1軸24を中心とする周方向への従動部材38の移動角度をβとする。上部リンク16は後方に移動しながら回転するので、膝部10の屈曲角度αと従動部材38の移動角度βとの関係は線形とはならず、図10(a)に示すように、実線部分と破線部分との境界に変曲点を持つ曲線となる。移動角度βを、屈曲角度αを用いた関数として以下の式(1)で表す。
【0026】
β=f(α) …(1)
このとき、従動部材38の移動量Xが、以下の式(2)を満たすように溝34の湾曲部66を形成する。この場合の従動部材38の移動量Xと膝部10の屈曲角度αとの関係を図10(b)に示す。
【0027】
X=a・f-1(β) …(2)
-1(β)は、f(β)の逆関数である。aは係数であり、任意の値に設定する。係数aを小さくすると、膝部10の屈曲角度αに対する従動部材38の移動量Xが小さくなる。移動量Xを小さくすることで、限られた磁力でもより正確に磁場の変化量を検出可能になる。膝部10の各部の寸法に応じて係数aを設定する。逆関数を用いた場合について説明したが、最小二乗法などの他の方法を用いてもよい。
【0028】
図10(a)および(b)に実線で示した領域において、式(2)を満たすように溝34の湾曲部66を形成すると、図10(c)に示すように膝部10の屈曲角度αと従動部材38の移動量Xとの関係が線形となる。これにより、図8に示す関係が得られる。位置検出部の出力値と膝部10の屈曲角度αとの関係を線形とすることで、屈曲角度αの算出処理を簡単にできる。本実施の形態では、図10(a)に示す関係において、変曲点となる角度までが膝部10の屈曲角度αの検出範囲となるように溝34を形成したが、変曲点を超える角度まで検出範囲となるように溝34を形成することもできる。この場合、溝34の湾曲部66にも変曲点を形成する。これにより、膝部10の屈曲角度αの検出範囲を拡大できる。本実施の形態のように変曲点までを検出範囲とした場合、溝34の湾曲部66を簡単な形状とし、組み付け誤差などの影響を低減して精度良く膝部10の屈曲角度を検出できる。
【0029】
以上の構成による使用方法および動作は以下の通りである。多節リンク膝継手100は、足接続部40に足部が接続された状態で、大腿接続部32が使用者の大腿部に取り付けられたソケットに接続されて使用される。膝部10は、多節リンク機構により上部リンク16が下部リンク18に対して回転することで屈曲する。膝部10が屈曲すると、角度検出部42が位置検出部64の検出値から屈曲角度を求める。制御部44は、屈曲角度に応じて補助駆動部46を制御して膝部10の動きを補助する。屈曲角度を検出する溝34、従動部材38および位置検出部64を含む回転検出部36は膝部10に設けられており、方式が異なる補助駆動部にも対応して膝部10の屈曲角度を検出できる。多様な製品群を展開する上で、屈曲角度を検出する構成を共通化し、製造コストの低減を図ることができる。
【0030】
また、本実施の形態に係る多節リンク膝継手100によれば、位置検出部64と角度検出部42(すなわち制御装置14)とが同一のリンク部材、すなわち下部リンク部材に設けられている。角度検出部42は、回転検出部36の検出結果から膝部10の屈曲角度を求めるので、位置検出部64の検出情報を角度検出部42に伝送するために、位置検出部64と角度検出部42は配線で接続される必要がある。仮に位置検出部64と角度検出部42が別々のリンク部材に設けられている場合、配線の途中に可動部が存在するため、配線に切断等に不具合が生じないような構成をとる必要がある。これは膝継手の大型化やコストアップにつながるため好ましくない。一方、本実施の形態に係る多節リンク膝継手100では、位置検出部64と角度検出部42とが同一の下部リンク部材に設けられているので、配線の途中に可動部は存在せず、配線を簡単な構成にできる。その結果、膝継手の小型化や低コスト化を図ることができる。
【0031】
以下、上記実施の形態の変形例を挙げる。
【0032】
(変形例1)
図11は、変形例1に係る多節リンク膝継手102を示す断面概略図である。多節リンク膝継手102は、回転検出部36が前部リンク20に設けられており、溝34が上部リンク16の回転方向に対して傾斜する直線状に形成されている点で、実施の形態と相違する。
【0033】
図12(a)~(c)に、変形例1に係る膝部10の屈曲角度α、従動部材38の移動角度β、および従動部材38の軸方向移動量Xの関係を示す。実施の形態と同様に、膝部10の屈曲角度αと従動部材38の移動量Xとの関係が線形となるように溝34を形成する。回転検出部36を前部リンク20に設けた場合には、屈曲角度αと移動角度βとの関係に変曲点は表れない。これにより、溝34の湾曲部66を簡単な形状に保ちながら、膝部10の屈曲角度αの検出範囲を拡大できる。
【0034】
(変形例2)
図13は、変形例2に係る多節リンク膝継手104を示す断面概略図である。多節リンク膝継手104は、上部リンク16が破線で示す実施の形態より大きく、従動部材38の突起58が実施の形態より長い。また、溝34には導入部68が設けられておらず、溝34は前側から後側まで同じ幅で形成されている。膝部10が大きく屈曲しても突起58が溝34から外れない構成とすることで、屈曲角度の検出範囲を拡大できる。
【0035】
(その他)
溝34を上部リンク16に形成した構成において、回転検出部36を後部リンク22に設けてもよい。溝34を下部リンク18に設け、回転検出部36を上部リンク16に設けてもよい。また、従動部材38および位置検出部64をそれぞれ異なるリンクに設けてもよい。なお、位置検出部64を下部リンク18に設けることで、位置検出部64と下腿部12に収納されている制御装置14との配線を簡単な構成にできる。この構成によれば、膝部10を小さくできる。制御装置14および位置検出部64を上部リンク16に設けてもよい。この場合にも、位置検出部64と制御装置14との配線を簡単な構成にできる。
従動部材38は、上部リンク16に固定して設けられてもよく、上部リンク16の一部であってもよい。この場合、下部リンク18に従動部材38の位置の変化を検出する位置検出部64を設ける。上部リンク16とともに回転する従動部材38の位置を検出し、この検出結果から膝部10の屈曲角度を求めることができる。こうした構成により、移動機構として溝34を形成する必要がなくなってより簡単な構成にできる。一方、移動機構を設けた場合、移動機構がない構成に比べて、従動部材38の移動量を小さくでき、回転検出部36を小型化できる。
実施の形態では、従動部材38を移動させる移動機構として溝34を形成したが、移動機構はこれに限らない。移動機構として、溝34の代わりに突起を設け、この突起に嵌り込む溝を従動部材38に設けてもよい。また、移動機構として、上部リンク16の外周面から突出して周方向に延びる壁部を形成し、この壁部が突起58を押して従動部材38を移動させる構成としてもよい。
また、実施の形態では、従動部材38に磁石62を設けてホール素子により従動部材38の位置を検出したが、位置検出部64はホール素子に限らない。位置検出部64として静電容量式の近接センサ、赤外線センサ、光学センサを用いて従動部材38の位置を検出してもよい。
さらに、実施の形態では、膝部10が4節リンク機構により屈曲するが、膝部10の構成は多節リンク機構であればこれに限らない。
【0036】
図14は、別の実施の形態に係る多節リンク膝継手200の断面概略図である。図14に示す膝部10の屈曲角度は0°である。多節リンク膝継手200は、回転検出部236の構成が上述の多節リンク膝継手100と異なる。図15は、膝部10の屈曲角度が0°のときの回転検出部236を示す概略図である。なお、本実施の形態を示す図面においても、補助駆動部の図示を省略している。
【0037】
回転検出部236は、突当部材203と、ケース206と、ばね208と、磁石262と、位置検出部264とを備える。
【0038】
ケース206は、上端が開放された収納空間206aを有する。ケース206は、下部リンク18に固定される。ケース206の収納空間206a内には、突当部材203とばね208が収納される。ばね208は、突当部材203の上部が収納空間206aから突出するように、突当部材203を付勢している。磁石262は突当部材203に取り付けられる。位置検出部264は、ホール素子を備え、磁石262との距離に応じた検出値を出力する。
【0039】
上部リンク16の下部リンク18側の外周面には、上部リンク16の回転方向に円弧状に延びる溝234が形成されている。この溝234は、延在方向に沿って深さが変化するように形成されている。図16において、符号「C」は円弧状に延在する溝234の中心を示す。図16に示すように、溝234の中心Cは、上部リンク16の下部リンク18側の外周面の中心(第1軸24の中心)に対して前方に偏心している。これにより、膝部10の屈曲角度が0°のとき、溝234は、後方になるにつれて深さが大きくなっている。回転検出部236は、突当部材203の上部が溝234に嵌り込むように下部リンク18に取り付けられる。突当部材203は、ばね208により付勢されて溝234の底に突き当てられている。
【0040】
図16は、膝部10の屈曲角度が大きくなったときの多節リンク膝継手200を示す概略断面図である。また、図17は、膝部10の屈曲角度が大きくなったときの回転検出部236を示す概略図である。
【0041】
本実施の形態においては、突当部材203が、上部リンク部材202の回転にしたがって移動する従動部材となる。図16および図17に示すように、膝部10の屈曲角度が大きくなると、回転検出部236の突当部材203が嵌り込んでいる溝234の深さが大きくなる。突当部材203はばね208により溝234の底に突き当たるように付勢されているので、溝234の深さが大きくなると、突当部材203がケース206から突出する方向に移動する。
【0042】
突当部材203の移動により、突当部材203に取り付けられた磁石262とケース206に取り付けられた位置検出部264との距離が変化する。位置検出部264は、突当部材203の位置、すなわち膝部10の屈曲角度に応じた検出値を出力する。制御装置14の角度検出部42(図4参照)は、位置検出部64の検出値から屈曲角度を求める。例えば膝部10の屈曲角度と位置検出部264の検出値との関係を予め測定してテーブルを作成しておけば、該テーブルを参照して位置検出部264の検出値から膝部10の屈曲角度を求めることができる。制御部44(図4参照)は、屈曲角度に応じて補助駆動部46(図4参照)を制御して膝部10の動きを補助する。
【0043】
本実施の形態に係る多節リンク膝継手200においても、屈曲角度を検出するための構成は膝部10に設けられている。すなわち、溝34は上部リンク16に設けられており、突当部材203および位置検出部264を含む回転検出部236は下部リンク18に設けられている。したがって、方式が異なる補助駆動部にも対応して膝部10の屈曲角度を検出できる。多様な製品群を展開する上で、屈曲角度を検出する構成を共通化し、製造コストの低減を図ることができる。
【0044】
また本実施の形態に係る多節リンク膝継手200においても、位置検出部264と角度検出部42(制御装置14)とが同一のリンク部材、すなわち下部リンク部材204に設けられているので、配線を簡単な構成にできる。なお、位置検出部と角度検出部は、上部リンク部材などの他のリンク部材に設けられてもよい。
【0045】
本実施の形態では、突当部材203に磁石262を設けてホール素子により突当部材203の位置を検出したが、位置検出部264はホール素子に限らない。位置検出部264として静電容量式の近接センサ、赤外線センサ、光学センサを用いて突当部材203の位置を検出してもよい。
【0046】
図18は、さらに別の実施の形態に係る多節リンク膝継手300の断面概略図である。図18に示す膝部10の屈曲角度は0°である。図18に示すように、本実施の形態に係る多節リンク膝継手300は、膝部10の動きを補助する補助駆動部としてシリンダ装置310を備える。シリンダ装置310は、エアシリンダや油圧シリンダであってよい。
【0047】
シリンダ装置310は、シリンダチューブ312と、シリンダチューブ312に対して移動可能であるピストンロッド314と、シリンダチューブ312に移動可能に収納されてピストンロッド314が固定されたピストン316とを備える。
【0048】
シリンダ装置310は、上部リンク部材302と下部リンク部材304とを連結するように設けられる。すなわち、シリンダチューブ312は、下部リンク部材304の下腿部12に設けられた下軸318により回転可能に支持され、ピストンロッド314は、上部リンク部材302の上部リンク16に設けられた上軸320により回転可能に支持される。このように設けられたシリンダ装置310は、下軸318を中心として、上部リンク部材302の回転にしたがって揺動する。
【0049】
また、本実施の形態に係る多節リンク膝継手300においては、位置検出部364が下部リンク部材304の下腿部12に設けられている。図18に示すように、位置検出部364は下腿部12に設置され、下腿部12に対するシリンダ装置310の距離(より詳細には下腿部12に対するシリンダチューブ312の距離)dを計測する。位置検出部364は、シリンダ装置310までの距離dを検出できるものであれば特に限定されず、例えば赤外線センサを用いることができる。
【0050】
図19(a)~(d)は、膝部10が屈曲する様子を示す図である。図19(a)~(d)に示す膝部10の屈曲角度は、それぞれ0°、45°、90°、160°である。
【0051】
本実施の形態においては、シリンダ装置310が、上部リンク部材202の回転にしたがって移動する従動部材となる。図19(a)~(d)に示すように、膝部10の屈曲角度の変化に応じて、下腿部12に対するシリンダ装置310の距離dが変化する。本実施形態に係る多節リンク膝継手300では、膝部10の屈曲角度が大きくなるにつれて、下腿部12に対するシリンダ装置310の距離dが小さくなる。
【0052】
制御装置14の角度検出部42(図4参照)は、位置検出部364の検出値から屈曲角度を求める。例えば膝部10の屈曲角度と位置検出部364の検出値との関係を予め測定してテーブルを作成しておけば、該テーブルを参照して位置検出部364の検出値から膝部10の屈曲角度を求めることができる。制御部44(図4参照)は、屈曲角度に応じてシリンダ装置310を制御して膝部10の動きを補助する。
【0053】
このように本実施の形態に係る多節リンク膝継手300では、下部リンク部材304(より詳細には下腿部12)に位置検出部364を設け、下部リンク部材304(より詳細には下腿部12)に対するシリンダ装置310の距離dを測定し、この距離dに基づいて膝部10の屈曲角度を求めている。したがって、シリンダ装置310として磁石や磁気センサを備える特殊なものを用いる必要はない。すなわち、汎用的なシリンダ装置310に対応して膝部10の屈曲角度を検出できる。
【0054】
また本実施の形態に係る多節リンク膝継手300においても、位置検出部364と角度検出部42(制御装置14)とが同一のリンク部材、すなわち下部リンク部材304に設けられているので、配線を簡単な構成にできる。なお、位置検出部と角度検出部は、上部リンク部材などの他のリンク部材に設けられてもよい。
【0055】
図20は、さらに別の実施の形態に係る多節リンク膝継手400の断面概略図である。図20に示す膝部10の屈曲角度は0°である。図20に示すように、本実施の形態に係る多節リンク膝継手400は、位置検出部464が下部リンク部材304に対するシリンダ装置310の傾斜角度θを検出するよう構成および配置されている点が上述した多節リンク膝継手300(図19参照)と異なる。ここでは、シリンダ装置310の長手方向(言い換えるとピストンロッド314の伸縮方向)とz軸とがなす角を、シリンダ装置310の傾斜角度θとする。
【0056】
位置検出部464は、下腿部12の下軸318に取り付けられる。位置検出部464としては、例えばポテンショメータ、ロータリエンコーダ、レゾルバ等を用いることができる。
【0057】
本実施の形態においても、シリンダ装置310が、上部リンク部材202の回転にしたがって移動する従動部材となる。図21(a)~(d)は、膝部10が屈曲する様子を示す図である。図21(a)~(d)に示す膝部10の屈曲角度は、それぞれ0°、45°、90°、160°である。図21(a)~(d)に示すように、膝部10の屈曲角度の変化に応じて、下腿部12に対するシリンダ装置310の傾斜角度θが変化する。本実施形態に係る多節リンク膝継手300では、膝部10の屈曲角度が大きくなるにつれて、下腿部12に対するシリンダ装置310の傾斜角度θが小さくなる。
【0058】
制御装置14の角度検出部42(図4参照)は、位置検出部464の検出値から屈曲角度を求める。例えば膝部10の屈曲角度と位置検出部464の検出値との関係を予め測定してテーブルを作成しておけば、該テーブルを参照して位置検出部464の検出値から膝部10の屈曲角度を求めることができる。制御部44(図4参照)は、屈曲角度に応じてシリンダ装置310を制御して膝部10の動きを補助する。
【0059】
このように本実施の形態に係る多節リンク膝継手400では、下部リンク部材304(より詳細には下腿部12)に位置検出部464を設け、下部リンク部材304(より詳細には下腿部12)に対するシリンダ装置310の傾斜角度θを測定し、この傾斜角度θに基づいて膝部10の屈曲角度を求めている。したがって、シリンダ装置310として磁石や磁気センサを備える特殊なものを用いる必要はない。すなわち、汎用的なシリンダ装置310に対応して膝部10の屈曲角度を検出できる。
【0060】
また本実施の形態に係る多節リンク膝継手400においても、位置検出部464と角度検出部42(制御装置14)とが同一のリンク部材、すなわち下部リンク部材304に設けられているので、配線を簡単な構成にできる。なお、位置検出部と角度検出部は、上部リンク部材などの他のリンク部材に設けられてもよい。
【0061】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、また、そうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0062】
10 膝部、 12 下腿部、 14 制御装置、 16 上部リンク、 18 下部リンク、 34,234 溝、 36、236 回転検出部、 38 従動部材、 42 角度検出部、 44 制御部、 46 補助駆動部、 58 突起、 62,262 磁石、 64,264,364,464 位置検出部、 100,102,104,200,300,400 多節リンク膝継手、 203 突当部材、 310 シリンダ装置、 312 シリンダチューブ、 314 ピストンロッド。
図1
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