(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】サーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 17/04 20060101AFI20220131BHJP
B41J 2/325 20060101ALI20220131BHJP
B41J 11/04 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
B41J17/04
B41J2/325 A
B41J11/04
(21)【出願番号】P 2018038035
(22)【出願日】2018-03-02
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507351883
【氏名又は名称】シチズン・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100161089
【氏名又は名称】萩原 良一
(72)【発明者】
【氏名】森 靖幸
(72)【発明者】
【氏名】桜井 弘
(72)【発明者】
【氏名】松井 優和
(72)【発明者】
【氏名】神山 卓郎
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-012377(JP,A)
【文献】特開2006-217734(JP,A)
【文献】特開2007-118536(JP,A)
【文献】特開2003-155137(JP,A)
【文献】特開昭64-009760(JP,A)
【文献】特開平06-270436(JP,A)
【文献】特開2017-159636(JP,A)
【文献】特開2003-080750(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102029804(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 17/04
B41J 2/325
B41J 2/32
B41J 11/04
B41J 11/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクリボンを搬送する第1搬送部と、
記録媒体を
前記インクリボンの搬送方向と同じ方向に搬送する第2搬送部と、
前記第1搬送部および前記第2搬送部を同時に駆動する少なくとも1つのモータと、
前記インクリボンのインクを前記記録媒体に熱転写して印刷するサーマルヘッドと、
前記記録媒体と前記インクリボンとが前記サーマルヘッドに押圧された状態で、前記モータを停止状態から目標速度まで加速する制御部と、を有し、
前記制御部は、加速制御として、
前記停止状態から前記モータの駆動力が前記第2搬送部に伝達
して前記記録媒体が動き始めるまでの機械的な遅延時間である第1期間に、前記モータを加速し、
前記第1期間の後前記目標速度に達する前の第2期間に、前記モータを一定速度で駆動するかまたは前記第1期間よりも小さな加速度で加速し、
前記第2期間の後前記目標速度に達するまでの第3期間に、前記第2期間よりも大きな加速度で前記モータを加速する
ことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1期間に、前記第3期間よりも大きい加速度で前記モータを加速する、請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記モータは、1つである、請求項1または2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記サーマルプリンタは、高速モードと、前記高速モードよりも前記目標速度および印刷速度が低い低速モードとのいずれかで印刷可能であり、
前記制御部は、前記高速モードのときに前記加速制御を行い、前記低速モードのときには前記加速制御を行わない、請求項1~3のいずれか一項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記サーマルプリンタは、
前記インクリボンを用いる熱転写モードと、前記インクリボンを用いずに前記記録媒体として感熱用の記録媒体を用いる感熱モードとのいずれかで印刷可能であり、
前記加速制御を行うための熱転写用制御データと、前記加速制御よりも短い時間で前記モータを前記停止状態から前記目標速度まで加速する別の加速制御を行うための感熱用制御データとを記憶する記憶部をさらに有し、
前記サーマルヘッドは、前記感熱モードでは前記記録媒体を感熱させて印刷し、
前記制御部は、前記加速制御と前記別の加速制御とのいずれかを択一的に実行する、請求項1~4のいずれか一項に記載のサーマルプリンタ。
【請求項6】
前記制御部は、前記別の加速制御では、少なくとも、前記第2期間に対応する期間において、前記加速制御における前記第2期間よりも大きな加速度で前記モータを加速する、請求項5に記載のサーマルプリンタ。
【請求項7】
前記加速制御および前記別の加速制御のいずれを実行するかを使用者が選択可能な入力部をさらに有し、
前記制御部は、前記入力部への入力に従って、前記加速制御または前記別の加速制御により前記モータを加速する、請求項5または6に記載のサーマルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、用紙を搬送して用紙に印刷ヘッドでインクリボンを介して印刷を行う熱転写式プリンタにおいて、印刷開始時に直流モータによって搬送されるインクリボンがステッピングモータによって搬送される用紙よりもモータの種類に起因して遅れることが記載されている。さらに、特許文献1には、この遅れに伴い、用紙のインク汚れやインクリボンの皺、切れが発生するために、印刷開始時に、用紙搬送用のステッピングモータの駆動開始よりも所定時間前にインクリボン搬送用の直流モータの駆動を開始することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクリボンを用いるサーマルプリンタ(熱転写プリンタ)では、1つの共用のモータから歯車などで分岐してインクリボンと記録媒体とにモータの回転を伝達した場合であっても、印刷開始時に、インクリボンと記録媒体が動き始める際、インクリボンと記録媒体とが擦れて、記録媒体にインクリボンの跡(スマッジ)が付くことがある。これは、インクリボンと記録媒体を搬送するためのプリンタ内の歯車のバックラッシュや、インクリボンの弛みなどにより、インクリボンの巻取りに遅れが生じ、記録媒体がインクリボンよりも僅かに早く動き始めるためであると考えられる。こうしたリボン跡は汚れになり、印画物の品質を低下させるため、リボン跡の発生を防ぐ必要がある。モータの立ち上がりを遅くすればモータが目標速度に達するまでの過程でインクリボンと記録媒体との相対的な速度差が小さくなり、こうしたリボン跡は発生し難くなるが、単純にモータの速度を遅くするのでは、印刷速度が低下するため、望ましくない。
【0005】
特許文献1の発明は、印刷開始時にインクリボンが用紙より遅れることで用紙のインク汚れやインクリボンの皺、切れが発生することを、互いに加速曲線の異なる2つのモータに対し、一方のモータの起動を早めて、互いに一致する加速曲線の一部の範囲で起動させて防ぐためのものである。しかしながら、個々のモータには起動特性に差があるので、インクリボン用のモータと記録媒体用のモータを設けて、前者を後者よりも先に駆動したとしても、所望の範囲で2つのモータの起動特性が一致するとは限らない。しかも、前述のように、インクリボンの遅れはモータのみに起因するものではないため、インクリボンと記録媒体との速度差が十分に解消されずに、依然としてリボン跡が発生する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、実用的な起動速度が確保され、記録媒体にインクリボンの跡が付き難いサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
インクリボンを搬送する第1搬送部と、記録媒体を搬送する第2搬送部と、第1搬送部および第2搬送部を同時に駆動する少なくとも1つのモータと、インクリボンのインクを記録媒体に熱転写して印刷するサーマルヘッドと、記録媒体とインクリボンとがサーマルヘッドに押圧された状態で、モータを停止状態から目標速度まで加速する制御部とを有し、制御部は、加速制御として、停止状態からモータの駆動力が第2搬送部に伝達するまでの機械的な遅延時間である第1期間に、モータを加速し、第1期間の後目標速度に達する前の第2期間に、モータを一定速度で駆動するかまたは第1期間よりも小さな加速度で加速し、第2期間の後目標速度に達するまでの第3期間に、第2期間よりも大きな加速度でモータを加速することを特徴とするサーマルプリンタが提供される。
【0008】
制御部は、第1期間に、第3期間よりも大きい加速度でモータを加速することが好ましい。
【0009】
モータは1つが好ましい。
【0010】
サーマルプリンタは、高速モードと、高速モードよりも目標速度および印刷速度が低い低速モードとのいずれかで印刷可能であり、制御部は、高速モードのときに加速制御を行い、低速モードのときには加速制御を行わないことが好ましい。
【0011】
サーマルプリンタは、インクリボンを用いる熱転写モードと、インクリボンを用いずに記録媒体として感熱用の記録媒体を用いる感熱モードとのいずれかで印刷可能であり、加速制御を行うための熱転写用制御データと、加速制御よりも短い時間でモータを停止状態から目標速度まで加速する別の加速制御を行うための感熱用制御データとを記憶する記憶部をさらに有し、サーマルヘッドは、感熱モードでは記録媒体を感熱させて印刷し、制御部は、加速制御と別の加速制御とのいずれかを択一的に実行することが好ましい。
【0012】
制御部は、別の加速制御では、少なくとも、第2期間に対応する期間において、加速制御における第2期間よりも大きな加速度でモータを加速することが好ましい。
【0013】
サーマルプリンタは、加速制御および別の加速制御のいずれを実行するかを使用者が選択可能な入力部をさらに有し、制御部は、入力部への入力に従って、加速制御または別の加速制御によりモータを加速することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上記のサーマルプリンタは、実用的な起動速度が確保され、記録媒体にインクリボンの跡が付き難い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】カバー20が開いたプリンタ1の斜視図である。
【
図3】トップカバー30が開いたプリンタ1の斜視図である。
【
図4】印字ユニット40の一部を示す斜視図である。
【
図6】印字ユニット40内におけるインクリボン2の配置を示す模式図である。
【
図7】カバー20の変形防止構造を説明するための図である。
【
図8】印字ユニット40のリボンフランジ70側を底面側から見た斜視図である。
【
図10】プリンタ1のモータ12の加速制御を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、サーマルプリンタについて説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
【0017】
図1は、プリンタ1の外観を示す斜視図である。プリンタ1は、本体10およびカバー20を有する。カバー20には、正面側の側面および上面を覆うトップカバー30が設けられている。
図1では、カバー20およびトップカバー30が閉じた状態を示している。
図2は、カバー20が開いたプリンタ1の斜視図である。
図3は、トップカバー30が開いたプリンタ1の斜視図である。
【0018】
プリンタ1は、インクリボン2のインクを用紙3に熱転写して印刷(印字)するサーマルプリンタ(熱転写プリンタ)である。用紙3は、記録媒体の一例であり、ロール状に巻かれた帯状の連続紙である。用紙3は、例えば、台紙上に剥離可能なラベルが貼り付けられたラベル紙であってもよく、この場合、プリンタ1はラベルプリンタとも呼ばれる。用紙3は紙に限らず、例えば布またはリボンなどでもよく、その材質は特に限定されない。
図2では、プリンタ1の内部の構造を示すために、用紙3が透明であるとして図示している。
【0019】
カバー20は、背面側の下部の符号21で示す部分において、本体10の背面側の上部に回転自在に支持されている。これにより、カバー20は、
図2に示すように、支持されている符号21の部分を中心として、本体10に対して図示の上方および後方に回転可能である。
【0020】
本体10内には、用紙3を収容するための空間である用紙収容部11が設けられている。図示した形態とは異なり、本体10には用紙収容部11を設けずに、使用者が、本体10の外側に用紙3を配置してもよい。本体10は、用紙収容部11の他に、モータ12、歯車輪列13、用紙検出センサ14、制御ユニット15およびプラテンローラ16を有する。
【0021】
モータ12は、インクリボン2と用紙3を搬送するための兼用のステップモータであり、制御ユニット15の制御に従って駆動されて、歯車輪列13を回転させる。歯車輪列13は、プリンタ1の正面から見た本体10内の左側面に設置されている。歯車輪列13は、モータ12の駆動力を用紙3に伝達するための記録媒体伝達機構であり、モータ12により駆動されて、プラテンローラ16を回転させる。用紙検出センサ14は、用紙3上に設けられた図示しない黒色マーク、切欠きまたは貫通孔などの目印を検出する。
【0022】
制御ユニット15は、本体10内の基板上のマイクロコンピュータで構成され、CPUやメモリ(後述する
図9(A)のメモリ15a)などを含む。制御ユニット15は、制御部の一例であり、用紙検出センサ14の検出結果に基づきモータ12を駆動してインクリボン2と用紙3の搬送を制御したり、カバー20内のサーマルヘッド42(
図3を参照)を駆動して印刷を実行させたりする。プラテンローラ16は、第2搬送部の一例であり、サーマルヘッド42との間で用紙3を挟んで、歯車輪列13を介してモータ12により駆動されて回転し、それにより、プリンタ1の正面側に向かう矢印F方向に用紙3を搬送する。
【0023】
カバー20内には、
図3に示すように、インクリボン2を収容するための空間であるインクリボン収容部31が設けられており、インクリボン収容部31には、印字ユニット40が収容されている。
図4は、印字ユニット40の一部を示す斜視図である。
図5は、印字ユニット40の左側面図である。
図6は、印字ユニット40内におけるインクリボン2の配置を示す模式図である。印字ユニット40は、支持部材41、サーマルヘッド42、ばね43、リボンガイド48、ガイドシャフト49、送出側リボン軸50、巻取側リボン軸60、巻取側歯車61、リボンフランジ70および歯車輪列90を有する。
【0024】
支持部材41は、サーマルヘッド42、送出側リボン軸50および巻取側リボン軸60などを支持する箱状の部材であり、幅方向の両端に側壁41a,41bを有する。
図5では、支持部材41のうちで、プリンタ1の正面から見て左側の側壁41aを図示している。支持部材41の幅方向は、カバー20の幅方向と一致している。
【0025】
サーマルヘッド42は、
図6に示すように、カバー20が閉まった状態で、プラテンローラ16の真上に配置され、インクリボン2と用紙3をプラテンローラ16との間に挟んで、ばね43によりプラテンローラ16に対して押圧される。サーマルヘッド42は、印刷部の一例であり、制御ユニット15による制御の下で、内蔵する発熱体を印刷対象の画像データ(印字データ)に応じて発熱させ、インクリボン2のインクを用紙3に熱転写することで、用紙3に画像や文字を印刷する。
【0026】
リボンガイド48およびガイドシャフト49は、印字ユニット40内でインクリボン2を案内する部材である。インクリボン2の搬送経路上において、リボンガイド48は送出側リボン軸50とサーマルヘッド42との間に、ガイドシャフト49はサーマルヘッド42と巻取側リボン軸60との間に、それぞれ配置されている。
【0027】
送出側リボン軸50は、インクリボン2の未使用部分がロール状に巻かれる軸であり、巻取側リボン軸60は、インクリボン2の使用済み部分がロール状に巻かれる軸である。巻取側リボン軸60は、第1搬送部の一例であり、モータ12の駆動力によってインクリボン2を巻き取ることにより、インクリボン2を搬送する。送出側リボン軸50および巻取側リボン軸60の両端は、支持部材41の側壁41aと側壁41bの間に架設されている。リボンフランジ70は、巻取側リボン軸60における支持部材41の側壁41aよりも内側に設けられた円板状の部材であり、巻取側リボン軸60に巻き取られたインクリボン2が巻取側リボン軸60の軸方向の一方に寄せられるのを防止する。
【0028】
インクリボン2は、使用時に、
図6に示すように、送出側リボン軸50から繰り出されて矢印F方向に搬送され、リボンガイド48、サーマルヘッド42およびガイドシャフト49を経由して、巻取側リボン軸60に巻き取られる。その際、インクリボン2と用紙3を間に挟んでサーマルヘッド42がプラテンローラ16に圧接した状態でプラテンローラ16が回転することにより、用紙3も、インクリボン2とともに矢印F方向に搬送される。
【0029】
巻取側歯車61は、
図5に示すように、側壁41aを貫通した巻取側リボン軸60の端部に連結されており、巻取側リボン軸60とともに回転する。歯車輪列90は、側壁41aの外側の面に配置され、巻取側歯車61と噛み合うとともに、カバー20が閉じた状態で、本体10側の歯車輪列13とも噛み合う。したがって、巻取側リボン軸60は、カバー20が開いた状態ではモータ12から切り離されているが、カバー20が閉じた状態では、歯車輪列13,90および巻取側歯車61を介してモータ12と連結する。歯車輪列90は、モータ12の駆動力をインクリボン2に伝達するためのインクリボン伝達機構であり、カバー20が閉じた状態で、モータ12により駆動されて、巻取側リボン軸60を矢印R1方向(
図5において反時計回り)に回転させる。これにより、インクリボン2は、巻取側リボン軸60に巻き取られる。
【0030】
カバー20が閉じた状態でモータ12が停止しているときには、モータ12が停止していることで生じる制動力によって、巻取側リボン軸60は静止した状態を維持する。カバー20が開いた状態では、巻取側リボン軸60にはモータ12の制動力は作用しないが、リボンフランジ70などを用いた図示しない機構により、巻取側リボン軸60の回転を規制するように構成されている。
【0031】
送出側リボン軸50と巻取側リボン軸60には、それぞれ、トーションばねを有するクラッチ機構(後述する
図9(A)の送出側クラッチ機構50aと巻取側クラッチ機構60a)が設けられている。送出側リボン軸50のトーションばねは、インクリボン2が巻き取られる矢印R1方向とは反対の矢印R2方向(
図5において時計回り)にトルクを掛け、巻取側リボン軸60のトーションばねは、矢印R1方向にトルクを掛ける。これにより、送出側リボン軸50と巻取側リボン軸60の間にあるインクリボン2は、それぞれの軸に引き付ける方向に付勢されるので、インクリボン2には常に張力が掛けられて、インクリボン2は弛まず平らに張られる。
【0032】
図7(A)~
図7(D)は、カバー20の変形防止構造を説明するための図である。
図7(A)は、
図3における符号VIIAで示したカバー20の一部を示す斜視図であり、
図7(B)は、
図3における符号VIIBの側から見たトップカバー30の一部を拡大して示す側面図である。
図7(B)の右側がトップカバー30(プリンタ1)の正面に相当する。
図7(C)と
図7(D)は、
図7(A)における符号X-Xの高さ位置において、それぞれ、トップカバー30を閉じる途中と閉じた状態の変形防止構造の要部を上面側から視認した断面図である。カバー20の側面は、プリンタ1の前方において、トップカバー30をプリンタ1における幅方向から挟むようにトップカバー30の両側に位置するため、プリンタ1の内部で応力が発生したり、高温の環境が続いたりすると、トップカバー30から幅方向に離間する方向に変形し易い。これを防ぐために、カバー20とトップカバー30には、次のような変形防止構造が設けられている。
【0033】
図7(A)に示すように、カバー20の内側(プリンタ1における幅方向の内側)には、ハッチングで示した支持部材41の側壁41aの外側を縁取るように壁面21aが設けられている。壁面21aは、さらに、外側壁面21a1に対し、内側壁面21a2が、カバー20の幅方向の内側に突出するように形成されている。図示を省略するが、カバー20における壁面21aに対向する壁面21b側も同様な構成である。
図7(A)では、壁面21b側における対応する部分の符号を括弧内に付記している。以下、同様に、
図7(B)~
図7(D)では、図示した部位に対向する部位の符号を括弧内に付記して示し、その説明を省略する。
図4に示した支持部材41における側壁41aの上部に位置する平面部は、
図7(A)では、視認されない状態でカバー20内に収容されている。支持部材41における側壁41bの上部に位置する平面部も同様である。
【0034】
カバー20の壁面21a,21bには、上端部付近の位置に、トップカバー30と係合する被係合部20a1,20b1が形成されている。被係合部20a1,20b1は、カバー20の外側壁面21a1,21b1との間に間隙部20a3,20b3を挟んで外側壁面21a1,21b1から離間するように形成されている。
【0035】
図7(B)に示すように、トップカバー30の側部には、カバー20における被係合部20a1,20b1に対向する位置に、係合部材33a,33bが取り付けられている。トップカバー30の側部は、端辺30c,30dからプリンタ1における幅方向の内側に引っ込んだ位置に壁面30a,30bを有する。係合部材33a,33bは、ねじ孔が形成された固定部33a2,33b2と、固定部33a2,33b2からプリンタ1における幅方向の外側に離間する係合部33a1,33b1とを有する。係合部材33a,33bは、トップカバー30とは別体として形成され、壁面30a,30bに、ねじ35a,35bを用いて固定部33a2,33b2を螺着して固定される。係合部33a1,33b1は直角三角形の平面形状に形成され、トップカバー30の側方から見ると、ねじ35a,35bは係合部33a1,33b1により覆われずに露出している。
【0036】
カバー20側の被係合部20a1,20b1とトップカバー30側の係合部33a1,33b1は、
図7(C)および
図7(D)に示すように、先端部が面取りされた先細り形状に形成され、斜面部20a1S,20b1Sと斜面部33a1S,33b1Sとが対向するように構成されている。なお、
図7(C)は、トップカバー30を閉じる途中の状態であり、係合部33a1,33b1は、
図7(B)における下側の幅の狭い部位の断面を示している。また、
図7(C)の状態では、互いの先端部同士がプリンタ1における幅方向に離間していて、カバー20やトップカバー30のプリンタ1における幅方向の位置に多少のずれが生じても、係合部33a1,33b1が、被係合部20a1,20b1と外側壁面21a1,21b1との間に確実に入り込む。
【0037】
トップカバー30を閉じた
図7(D)の状態では、トップカバー30側における係合部33a1,33b1が、カバー20における被係合部20a1,20b1と外側壁面21a1,21b1との間に入り、斜面部33a1S,33b1Sと斜面部20a1S,20b1Sとが当接し、これらがプリンタ1における幅方向に重なった状態となる。これにより、トップカバー30における係合部33a1,33b1と、カバー20における被係合部20a1,20b1とが係合する。この状態では、カバー20の被係合部20a1,20b1付近に幅方向に広がるように力が作用しても、係合部33a1,33b1と被係合部20a1,20b1との係合により、この方向へのカバー20の変形が防止される。
【0038】
さらに、トップカバー30の側部には、リブ36a,36bとリブ37a,37bとが形成されている。リブ36a,36bとリブ37a,37bは、プリンタ1における幅方向の端面がカバー20の内側壁面21a2,21b2に当接するように形成されている。これにより、カバー20がプリンタ1における幅方向のトップカバー30側に変形してトップカバー30が閉じなくなることが防止される。
【0039】
なお、リブ36a,36bは、
図7(B)における境界部36a1,36b1よりも上方がカバー20の内側壁面21a2,21b2に当接し、境界部36a1,36b1よりも下方が内側壁面21a2,21b2から離間するように構成されている。リブ36a,36bにおける境界部36a1,36b1よりも下方の部位は、
図7(B)における下端が固定部33a2,33b2とほぼ同じ高さであり、境界部36a1,36b1が内側壁面21a2,21b2に当接する高さであり、かつその間が徐々に高くなる(プリンタ1における幅方向の高さが大きくなる)ように構成されている。リブ37a,37bも同様に、
図7(B)における境界部37a1,37b1よりも左側の部位が、左端から境界部37a1,37b1に向かって徐々に高くなり、境界部37a1,37b1よりも右側の部位が内側壁面21a2,21b2に当接するように構成されている。これらにより、トップカバー30を閉じる際に、リブ36a,36bの境界部36a1,36b1よりも下方、および、リブ37a,37bの境界部37a1,37b1よりも左側がカバー20の内側壁面21a2,21b2に当接せずに、スムーズに閉じることができる。
【0040】
このように、
図7(A)~
図7(D)に示した変形防止構造は、開閉可能なカバー(トップカバー30)と、閉じた状態のカバーに対し、カバーの開閉の軸となる方向(プリンタ1の幅方向)でカバーの両側部に対向する壁面(壁面21a,21b)を設けた筐体(カバー20)とを有する。この変形防止構造は、壁面とこれに対向するカバーの側部とに、開閉の軸となる方向に互いに係合する被係合部(被係合部20a1,20b1)と係合部(係合部33a1,33b1)とを有する。これにより、筐体における壁面を有する部位がカバーに対し開閉の軸となる方向に離間するのを防ぐことができる。さらに、この変形防止構造は、カバーの側部に、壁面と当接する当接部(リブ36a,36b、リブ37a,37b)を有する。これにより、筐体における壁面を有する部位が開閉の軸となる方向のカバー側に変形してカバーが閉じなくなるのを防ぐことができる。
【0041】
上記の変形防止構造を有するプリンタは、開閉可能なカバー(トップカバー30)と、閉じた状態の上記カバーに対し、上記カバーの開閉の軸となる方向(プリンタ1の幅方向)で上記カバーの両側部に対向する壁面(壁面21a,21b)が設けられた筐体(カバー20)とを有し、上記壁面と、これに対向する上記カバーの側部とに、上記開閉の軸となる方向に互いに係合する被係合部(被係合部20a1,20b1)と係合部(係合部33a1,33b1)とが設けられていることを特徴とするプリンタである。
【0042】
上記のプリンタでは、カバーの側部に、上記壁面と当接する当接部が設けられていてもよい。また、上記のプリンタでは、係合部材33a,33bはトップカバー30とは別部品であるが、係合部材33a,33bをトップカバー30に一体に形成してもよい。
【0043】
図8は、印字ユニット40のリボンフランジ70側を底面側から見た斜視図である。支持部材41は樹脂製、ガイドシャフト49は金属製であり、
図4および
図8に示すように、プリンタ1の正面側における支持部材41の側壁41a,41bの下端には、ガイドシャフト49を取り付けるための一対の軸固定孔45が形成されている。一対の軸固定孔45には、ガイドシャフト49のそれぞれの端部が挿入されて固定される。
【0044】
ガイドシャフト49に対し、インクリボン2が擦れるように搬送されるため、ガイドシャフト49には静電気が発生し易い。ガイドシャフト49に発生した静電気を逃がすため、ガイドシャフト49における側壁41b側の端部には、図示しないねじ孔にねじ46が嵌められ、ねじ46により接続線47が取り付けられている。接続線47は、本体10に内蔵された図示しない回路基板のグランドパターンに接続されている。この構成により、ガイドシャフト49に発生した静電気を回路基板のグランドパターンに逃がし、静電気に起因する不具合を防ぐことができる。
【0045】
仮に、支持部材41を板金で加工すると、これに取り付けられるガイドシャフト49に発生する静電気は、支持部材41をグランドパターンに接続して逃がすことができるが、支持部材41が高価になる。また、支持部材41だけではなく、ガイドシャフト49に対応する部分を支持部材41に樹脂で一体に成型すると、安価に構成できるが、ガイドシャフト49に発生する静電気をグランドパターンに逃がすことができない。これらに対し、本実施形態では、支持部材41が樹脂製で、ガイドシャフト49が金属製であり、ガイドシャフト49がグランドパターンに電気的に接続されるため、安価で静電気に起因する不具合を防ぐことができる。
【0046】
図9(A)および
図9(B)は、プリンタ1の概略ブロック図である。
図9(A)では、上記の通り、モータ12の駆動力を、本体10側の歯車輪列13とプラテンローラ16を介して用紙3に伝達するとともに、歯車輪列13、カバー20側の歯車輪列90、巻取側歯車61、巻取側クラッチ機構60aおよび巻取側リボン軸60を順に介してインクリボン2に伝達することを、それぞれ矢印で示している。送出側クラッチ機構50aは、送出側リボン軸50を介してインクリボン2に張力を掛けるが、モータ12には連結していないので、
図9(A)では、モータ12からの矢印は、送出側クラッチ機構50aにはつながっていない。
【0047】
図9(A)における入力部17は、例えば、本体10に設けられた操作ボタンか、またはホストコンピュータなどの外部機器に接続される外部入力端子に相当する。
図9(A)では、入力部17を介してプリンタ1に入力される印刷指示に従って制御ユニット15がモータ12とサーマルヘッド42を駆動することを、矢印で示している。
【0048】
プリンタ1では、モータ12がインクリボン2と用紙3の搬送モータを兼ねているが、インクリボン2と用紙3をそれぞれ別々のモータにより搬送してもよい。すなわち、インクリボン2と用紙3を搬送するモータは、1つに限らず、複数であってもよい。
図9(B)では、用紙3がモータ12aにより搬送され、インクリボン2がモータ12aとは別のモータ12bにより搬送される場合の例を示している。この場合、印刷時にはインクリボン2と用紙3は同時に搬送されるため、モータ12a,12bは制御ユニット15により同期して(同時に)駆動される。このように、インクリボン2を搬送する第1搬送部と、用紙3などの記録媒体を搬送する第2搬送部とは、少なくとも1つのモータであるモータ12またはモータ12a,12bで駆動することができる。
【0049】
上記の通り、インクリボンを用いるサーマルプリンタでは、印刷開始時に、モータの駆動によりインクリボンと記録媒体が動き始める際、インクリボンの巻取りに遅れが生じることにより、記録媒体にインクリボンの跡が付くことがある。このリボン跡は、1つのモータ12でインクリボン2と用紙3を搬送する
図9(A)の場合に限らず、インクリボン2と用紙3を別々のモータ12a,12bにより搬送する
図9(B)の場合であっても、それらが同期して駆動されれば発生し得る。そこで、プリンタ1の制御ユニット15は、印刷開始時において、インクリボン2と用紙3がサーマルヘッド42に押圧された状態で、モータ12を停止状態から目標速度まで加速する際に、このリボン跡の発生を防ぐための加速制御を行う。以下では、制御ユニット15によるモータ12の加速制御について説明する。
【0050】
図10は、プリンタ1のモータ12の加速制御を説明するためのグラフである。グラフの横軸は時間tを表し、縦軸はモータ12の回転速度Vを表す。
図10では、リボン跡を考慮しない比較例の加速制御(別の加速制御)に相当する曲線aと、リボン跡の発生を防ぐためのプリンタ1の加速制御に相当する曲線bとを、重ねて示している。以下では、
図10の曲線aの加速制御(別の加速制御)のことを「加速制御a」、
図10の曲線bの加速制御のことを「加速制御b」という。
【0051】
加速制御aでは、モータは、時刻0の停止状態から時刻t1までは大きな加速度で急加速し、時刻t1以降はそれまでよりも小さい加速度で加速して、時刻t3で目標速度Vfに達する。すなわち、比較例の制御では、なるべく短い時間でモータの回転速度が目標速度Vfに達するように、一貫してモータを加速する。加速とは、ステップモータに印加する駆動パルスの周波数を上げる(駆動パルスの出力の間隔が徐々に短くなるように変化させる)ことに相当する。
【0052】
加速制御bでは、制御ユニット15は、モータ12を、時刻0~t1の第1期間T1では大きな加速度で急加速し、時刻t1~t2の第2期間T2では一定速度Vcで駆動し、時刻t2~t4の第3期間T3では第1期間T1よりも小さい加速度でゆっくり加速して、比較例の制御の時刻t3よりも遅い時刻t4で目標速度Vfに到達させる。言い換えると、加速制御aでは、モータ12は、加速制御bよりも短い時間で停止状態から目標速度Vfまで加速する。
【0053】
第1期間T1は、モータ12が停止した状態から、モータ12の駆動力がプラテンローラ16に伝達して、実際に用紙3が動き始めるまでの機械的な遅延時間に相当する、ごく短い期間である。第1期間T1での用紙3の搬送量は1mm以下であり、第1期間T1の長さは、この期間内にインクリボン2と用紙3とに極僅かな擦れが生じたとしても汚れとして見えないくらい短い。第1期間T1は、用紙3が実質的に動き出す前のリボン跡に影響しない期間なので、制御ユニット15は、第1期間T1の間、第3期間T3よりも大きい加速度でモータ12を一気に加速して、起動に要する時間を短縮する。
【0054】
第2期間T2は、第1期間T1に続く、用紙3が実質的に動き始める期間であって、モータ12の回転速度が目標速度Vfに達する前の期間である。第2期間T2の長さは、第1期間T1よりも長く、第3期間T3よりも短い。制御ユニット15は、第2期間T2の間、モータ12の駆動パルスの周波数を一定に保って、モータ12を一定速度Vcで駆動する。
【0055】
第2期間T2における一定速度Vcでの駆動は加速制御aにはない制御である。加速制御aでは、第2期間T2に対応する時刻t1~t2の期間において、モータ12は、加速制御bにおける第2期間T2よりも大きな加速度で加速する。
【0056】
第2期間T2が始まる時刻t1またはその直後で、用紙3の搬送速度は、モータ12の回転速度に対応する一定速度に達し、インクリボン2の搬送速度は、第2期間T2が終わる時刻t2までに、用紙3よりも遅れて用紙3と同じ一定速度に達する。第2期間T2では、モータ12の回転速度が速すぎるとインクリボン2が用紙3に追従できず、また、インクリボン2が用紙3と同じ速度に達するまでの相対的な速度差が無視できず、リボン跡が発生し得るので、適度な一定速度でモータ12を駆動して、インクリボン2が用紙3と同じ速度に達するのを待つ。このため、第2期間T2は、インクリボン2が用紙3と同じ速度に追い付くのに十分な長さであることが好ましい。また、第2期間T2の間にインクリボン2が用紙3と同じ速度に追い付き、両者の相対的な速度差が印刷の品質に影響しない範囲内であれば、制御ユニット15は、第2期間T2の間に、第1期間T1および第3期間T3よりも小さな加速度で、モータ12を多少加速してもよい。
【0057】
第3期間T3は、第2期間T2に続く、モータ12の回転速度が目標速度Vfに達するまでの期間である。制御ユニット15は、第3期間T3の間、第1期間T1よりも小さく加速度がゼロである第2期間T2よりも大きな(ゼロよりも大きな)加速度でモータ12を加速する。すなわち、第2期間T2にインクリボン2と用紙3がほぼ同じ速度になったら、制御ユニット15は、モータ12の回転を早めて、インクリボン2と用紙3を一緒に、目標速度Vfに対応する速度まで加速する。なお、第1期間T1よりも第3期間T3を小さな加速度に制御する理由は、第1期間T1には、インクリボン2と用紙3が実質的に停止しているため、大きな加速度で加速しても印刷の品質に影響を与えないのに対し、第3期間T3には、インクリボン2と用紙3とが搬送され、印刷の品質に支障をきたすような搬送ができないためである。
【0058】
本実施形態のようなステップモータを用いたモータ12の加速度は、駆動ステップごとの駆動パルスの周波数(1つ前のステップから次のステップまでの駆動パルスの出力の間隔)の時間変化として表すことができる。第1期間T1、第2期間T2および第3期間T3の間の加速度の大小関係は、各期間内での加速度の平均値についてのものである。加速度は、各期間内での平均値が、第2期間T2、第3期間T3、第1期間T1の順に大きくなればよく、印刷の品質に影響がない範囲で各期間における瞬時値の中にはこの関係に反するものがあってもよい。加速度の平均値が上記の関係を満たしていれば、第1期間T1または第3期間T3内にも、モータ12の回転速度が一定になる期間があってもよく、時刻0~t4の間に、モータ12の回転速度が一時的に減少する期間があってもよい。
【0059】
プリンタ1では、以上説明した加速制御bにより、インクリボン2と用紙3との相対的な速度差を解消する第2期間T2は、その前後の期間T1およびT3よりも、インクリボン2をやさしく送る(印刷の品質に影響する速度差を生じさせずに送る)ことになるため、用紙3にインクリボン2の跡が付くのを防ぐことができる。また、リボン跡に影響しない第1期間T1ではモータ12を急加速し、インクリボン2と用紙3がほぼ同じ速度になった後の第3期間T3でも加速するので、一貫してゆっくり加速する場合よりも早く回転速度が目標速度Vfに達し、印刷開始の遅れも防ぐことができる。すなわち、インクリボン2と用紙3の実用的な起動速度を確保することができる。
【0060】
プリンタ1には、例えば高速(速度優先)モードと低速(品質優先)モードなど、印刷速度が互いに異なる複数の動作モードがあってもよい。プリンタ1は、インクリボン2と用紙3を搬送しながら印刷するため、印刷速度が速いほど、搬送速度が速くなり、したがって、モータ12の目標速度Vfも速くなる。低速モードでは、搬送速度が遅くリボン跡が発生し難いと考えられることから、高速モードと低速モードを切替え可能な場合には、制御ユニット15は、高速モードのときに加速制御bを行い、低速モードのときには、加速制御bに替えて加速制御aを行ってもよい。印刷速度を3段階以上切替え可能な場合には、制御ユニット15は、その中で印刷速度が高い一部の動作モードのときのみ、加速制御bを行ってもよい。
【0061】
一般に、プリンタ1が使用できるインクリボン2と用紙3は1種類ではなく、複数の種類のものが使用できる。使用するインクリボン2とサーマルヘッド42との摩擦係数の違いや、インクリボン2と用紙3との摩擦係数の違いによって、インクリボン2には、リボン跡が発生し易いものと発生し難いものがある。このため、制御ユニット15内のメモリ15aは、プリンタ1で使用されるインクリボン2と用紙3の組の識別情報と、その組を使用するときに加速制御a,bのどちらを行うかを記憶してもよい。この場合、本体10に設けられた操作ボタンか、またはホストコンピュータなどの外部機器が接続される入力端子により構成される入力部17から、使用者が、加速制御a,bを選択できるようにしてもよいし、制御ユニット15が、メモリ15aの情報を参照し、使用されるインクリボン2と用紙3の組に応じて、加速制御a,bを自動で切り替えて行ってもよい。
【0062】
なお、
図9(B)のように、インクリボン2と用紙3を別々のモータ12a,12bにより搬送する場合は、2つのモータ12a,12bを同期させて、第1期間T1~第3期間T3の制御を行うとよい。
【0063】
サーマルプリンタには、インクリボンを取り付けて、汎用の用紙に印刷する熱転写モードと、インクリボンを取り外し、用紙として感熱紙を用いて印刷する感熱モードとを切り替えて使用可能なものもある。こうしたプリンタでは、サーマルヘッドは、熱転写モードではインクを熱転写して印刷し、感熱モードでは用紙を感熱させて印刷する。熱転写モードと感熱モードの切替えは、プリンタ本体に設けられたボタンか、または、プリンタに接続されるホストコンピュータにインストールされたプリンタドライバ用のソフトウェア(ユーティリティ)を介して、使用者の操作により行われる。熱転写モードでは加速制御bが適切であるが、感熱モードでは、インクリボンがなく感熱紙にリボン跡が発生しないので、モータを早く目標速度Vfに到達させて早く印刷するためには、加速制御aが適切である。
【0064】
そこで、制御ユニット15内のメモリ15a(記憶部の一例)は、加速制御bを行うための熱転写用制御データと、加速制御aを行うための感熱用制御データとを記憶してもよい。
【0065】
この場合、制御ユニット15は、使用者の操作により入力部17(操作ボタンまたは外部入力端子)に入力される熱転写モードと感熱モードとの切替え指示に従って、メモリ15aのモータ制御テーブルを参照し、加速制御a,bのいずれかを択一的に実行してもよい。すなわち、制御ユニット15は、ホストコンピュータからのコマンドまたはプリンタ本体のボタン操作によって、インクリボン2が取り付けられている(熱転写モード)と判断した場合には、加速制御bによりモータ12の立ち上げ速度を遅くする。一方、制御ユニット15は、ホストコンピュータからのコマンドまたはプリンタ本体のボタン操作によって、インクリボン2が取り付けられていない(感熱モード)と判断した場合には、加速制御aによりモータ12の立ち上げ速度を速くする。
【0066】
これにより、熱転写モードでは用紙にリボン跡が付かなくなり、感熱モードでは短時間でモータの回転速度が目標速度に達するので、インクリボンの有無に応じて、適切なモータ制御をすることができる。
【0067】
なお、本実施形態では、インクリボン2と用紙3の搬送に用いるモータとしてステップモータの例を示したが、上記の加速制御はステップモータ以外のモータを用いる場合にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 プリンタ
2 インクリボン
3 用紙
10 本体
12,12a,12b モータ
15 制御ユニット
16 プラテンローラ
20 カバー
30 トップカバー
40 印字ユニット
42 サーマルヘッド
50 送出側リボン軸
60 巻取側リボン軸