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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】ホイールクランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 65/12 20060101AFI20220131BHJP
   B62D 43/10 20060101ALI20220131BHJP
   F16B 2/04 20060101ALI20220131BHJP
   F16B 2/14 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
B62D65/12 C
B62D43/10
F16B2/04 Z
F16B2/14 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018042947
(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公開番号】P2019156043
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】横手 英幸
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-255549(JP,A)
【文献】特開昭62-181483(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1677148(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 65/12
B62D 43/10
F16B 2/04
F16B 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランクルームへ予備タイヤを積降しするための操作アームの先端に設けたホイールクランプ装置において、下端に係合フランジを突設したクランプ用羽根をタイヤホイールのハブ孔に挿入自在とし、しかもクランプ用羽根に楔機能を有する拡開片を進退自在に挟持すると共に、
拡開片はクランプ用羽根の内対面上部において当接自在で楔機能を果たす上部拡開片と、
クランプ用羽根の下部内対面において当接自在で楔機能を果たす下部拡開片とより構成し、
ハブ孔が肉厚のタイヤホイールに対しては、
下部拡開片の進出作動によりクランプ用羽根との楔機能によりクランプ用羽根を拡開可能とし、
また、ハブ孔が肉薄のタイヤホイールに対しては、
上部拡開片の進出作動によりクランプ用羽根の楔機能によりクランプ用羽根を拡開可能とし、
更には、上下部拡開片の下手部にはそれぞれクランプ用羽根の内対面の当接部分において略垂直面で当接するように構成し、
拡開片を、膨出形状の上部拡開片は1段目膨出部とその下方に1段目膨出部より小径にして形成した2段目膨出部とにより構成し、該2段目膨出部は周面は垂直状とし下端面はR形状とし、下部拡開片はロッド状で、クランプ用羽根の上部内対面の下方には前記拡開片のロッド状の下部拡開片が進入したとき遊嵌させる中間凹部と、該中間凹部と下部内対面との間にはテーパーが形成されていることを特徴としたホイールクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランクルームへ予備タイヤを積降しするための操作アームの先端に設けられたホイールを保持するホイールクランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車製造ラインにおいて、操作アームの先端にホイールクランプ装置を設け、タイヤホイールのハブ孔に挿入してホイールを保持してトランクルームへ予備タイヤを積降しする作業が行われている。
【0003】
かかる作業に使用される従来の技術として、例えば、特許文献1、特許文献2に開示されたものが知られている。すなわち、特許文献1には、バネを使用することで常に拡開状態に付勢された係止爪と、該係止爪の開閉作動をピストンの上下動によって制御し係止爪を一旦縮めてから対象に挿通し、バネの弾撥力により係止爪を拡開して対象を保持する技術について開示している。また、特許文献2には、一対の爪片と各爪片の先端部側に介設したバネと、上下方向略中央部に形成した枢支部で形成された可動式のストッパーを備え、各爪片の上方より係合用ロッドを下方に移動させることで爪片の先端部側を開閉して部材をバネの弾撥力により対象を保持する係止機能について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-302022号公報
【文献】特開平7-276227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1,2に記載された技術では、いずれも、ばねの弾撥力により係止爪、爪片を作動させて対象を保持しているので、係止爪、爪片の弾撥力に抗する外力が加わった場合に、保持が外れて対象を取り落とす恐れがあり、慎重に扱わなければならないので作業の能率を下げているという問題点があった。
【0006】
本発明は、以上のような従来技術の有する問題点に着目してなされたものであり、楔作用により拡開片を拡開状態に固持し、タイヤホイールを確実に保持することができ、作業の安全性と能率を向上させることのできるホイールクランプ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、トランクルームへ予備タイヤを積降しするための操作アームの先端に設けたホイールクランプ装置において、下端に係合フランジを突設したクランプ用羽根をタイヤホイールのハブ孔に挿入自在とし、しかもクランプ用羽根に楔機能を有する拡開片を進退自在に挟持すると共に、拡開片はクランプ用羽根の上部内対面において当接自在で楔機能を果たす上部拡開片と、クランプ用羽根の下部内対面において当接自在で楔機能を果たす下部拡開片とより構成し、ハブ孔が肉厚のタイヤホイールに対しては、下部拡開片の進出作動によりクランプ用羽根との楔機能によりクランプ用羽根を拡開可能とし、また、ハブ孔が肉薄のタイヤホイールに対しては、上部拡開片の進出作動によりクランプ用羽根との楔機能によりクランプ用羽根を拡開可能とし、更には、上下部拡開片の下手部にはそれぞれクランプ用羽根の内対面の当接部分において略垂直面で当接するように構成し、クランプ用羽根にかかる不測の側方外圧応力に対して拡開片の上昇分力を可及的に減殺可能に構成したホイールクランプ装置とし、また、拡開片を、膨出形状の上部拡開片は1段目膨出部とその下方に1段目膨出部より小径にして形成した2段目膨出部とにより構成し、該2段目膨出部は周面を垂直状とし、下端面はR形状とし、下部拡開片はロッド状で、クランプ用羽根の上部内対面の下方には前記拡開片のロッド状の下部拡開片が進入したとき遊嵌させる中間凹部と、該中間凹部と下部内対面との間にはテーパーが形成されていることを特徴とするホイールクランプ装置としたものである。
【0008】
トランクルームへ予備タイヤを積降しする作業は、操作アームの先端に設けたホイールクランプ装置でタイヤホイールを保持あるいは解放してなされる。すなわち、拡開片が後退した位置にあるとき、下端に係合フランジを突設したクランプ用羽根をタイヤホイールのハブ孔に挿入した後、拡開片を進出させ、拡開片の楔機能によりクランプ用羽根を保持位置に動作させて固持し、操作アームにより移動されるタイヤホイールを積降し位置に移動させてから拡開片を後退させ、クランプ用羽根を閉じてタイヤホイールを解放する。
【0009】
拡開片の上部拡開片は楔機能によりクランプ用羽根の上部内対面において当接自在でクランプ用羽根を拡開あるいは縮退させる。また、下部拡開片はクランプ用羽根の下部内対面において当接自在で楔機能によりクランプ用羽根を拡開あるいは縮退させる。
そして、ハブ孔が肉厚のタイヤホイールに対しては、下部拡開片の進出作動によりクランプ用羽根が拡開して、その楔機能によりクランプ用羽根を拡開固持して、係合フランジがタイヤホイールに係合して保持する。
【0010】
また、ハブ孔が肉薄のタイヤホイールに対しては、上部拡開片の進出作動によりクランプ用羽根が拡開して、その楔機能によりクランプ用羽根を拡開固持して、上下部拡開片の下手部において、それぞれクランプ用羽根の内対面の当接部分において略垂直面で当接して、タイヤホイールを固持する。
【0011】
このように、クランプ用羽根にかかる側方外圧応力に対して拡開片の上昇分力を可及的に減殺可能に構成したホイールクランプ装置となっている。
すなわち、本発明の要諦は、拡開片の進退方向に対してクランプ用羽根の拡開方向が直交しており、クランプ用羽根へ不測の外力が加わったとしても、拡開片の進退方向に直交する方向に力が加わるので、拡開片を進退させる分力は全く発生しないか、発生してもわずかで拡開片を進退させる力とはなりえず、あたかも閂をかけた如くになり、しかも拡開片を進退させる抵抗や障害は全くなく、確実かつ円滑に動作するホイールクランプ装置となるのである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係るホイールクランプ装置によれば、下端に係合フランジを突設したクランプ用羽根をタイヤホイールのハブ孔に挿入自在とし、しかもクランプ用羽根に楔機能を有する拡開片を進退自在に挟持すると共に、拡開片はクランプ用羽根の上部内対面において当接自在で楔機能を果たす上部拡開片と、クランプ用羽根の下部内対面において当接自在で楔機能を果たす下部拡開片とより構成し、ハブ孔が肉厚のタイヤホイールに対しては、下部拡開片の進出作動によりクランプ用羽根との楔機能によりクランプ用羽根を拡開可能とし、また、ハブ孔が肉薄のタイヤホイールに対しては、上部拡開片の進出作動によりクランプ用羽根との楔機能によりクランプ用羽根を拡開可能とし、更には、上下部拡開片の下手部にはそれぞれクランプ用羽根の内対面の当接部分において略垂直面で当接するように構成し、クランプ用羽根にかかる不測の側方外圧応力に対して拡開片の上昇分力を可及的に減殺可能に構成したホイールクランプ装置としたので、ハブ孔が肉厚のタイヤホイールに対しては、下部拡開片の楔機能によりクランプ用羽根を拡開固持して、タイヤホイールのハブ孔が係合フランジに係合することによりタイヤホイールを確実に保持することができ、また、ハブ孔が肉薄のタイヤホイールに対しては、上部拡開片の進出作動によりクランプ用羽根が拡開固持され、クランプ用羽根の内対面の当接部分がタイヤホイールのハブ孔に係合して、タイヤホイールのハブ孔の寸法に応じて使い分けることができ、外れる恐れがないので、作業の安全性と能率を向上させることができる。
【0013】
請求項に係るホイールクランプ装置によれば、拡開片を、膨出形状の上部拡開片は1段目膨出部とその下方に1段目膨出部より小径にして形成した2段目膨出部とにより構成し、該2段目膨出部の周面は垂直状とし、下端面はR形状とし、下部拡開片はロッド状でクランプ用羽根の上部内対面の下方には前記拡開片のロッド状の下部拡開片が進入したとき遊嵌させる中間凹部と、該中間凹部と下部内対面との間にはテーパーが形成されているので、2段目膨出部の下端面のR形状がクランプ用羽根の上部内対面と滑らかに接触し、2段目膨出部の周面を垂直状としたため、クランプ用羽根の上部内対面の末端と当接したとき水平分力のみ生起し、拡開片が抜けることがなく確実に作動するものとなっている。そして、中間凹部と下部内対面との間にはテーパーが形成されているので、ロッド状の下部拡開片がクランプ用羽根の下部内対面に円滑に噛み合うことができ、全体として円滑かつ確実に作動するものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態に係るホイールクランプ装置によりタイヤホイールをトランクルームに装入する状態を示す要部斜視図である。
図2】本発明の一実施の形態に係るホイールクランプ装置によりハブ孔が肉薄のタイヤホイールを把持した状態を示す要部斜視図である。
図3】本発明の一実施の形態に係るホイールクランプ装置であって、クランプ用羽根の拡開していない状態を示す断面および要部を示す説明図である。
図4】本発明の一実施の形態に係るホイールクランプ装置であって、クランプ用羽根の拡開していない状態を示す斜視図である。
図5】本発明の一実施の形態に係るホイールクランプ装置であって。ハブ孔が肉薄のタイヤホイールを把持した状態の断面および要部を示す説明図である。
図6】本発明の一実施の形態に係るホイールクランプ装置であって、クランプ用羽根が拡開してハブ孔が肉薄のタイヤホイールを把持する状態を示す断面図である。
図7】本発明の一実施の形態に係るホイールクランプ装置であって、クランプ用羽根が拡開してハブ孔が肉厚のタイヤホイールを把持する状態を示す断面図である。
図8】本発明の一実施の形態に係るホイールクランプ装置であって、クランプ用羽根が拡開してハブ孔が肉厚のタイヤホイールを把持する状態を示す斜視図である。
図9】本発明の一実施の形態に係るホイールクランプ装置であって、拡開片によりクランプ用羽根が拡開する様子を示す説明図である。
図10】本発明の一実施の形態に係るホイールクランプ装置であって、クランプ用羽根と拡開片とを対応させた説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について図面に基づき説明する。図1図10の各図は本発明の一実施の形態を示している。
【0016】
図1に示すようにホイールクランプ装置1はトランクルームTへ予備タイヤを積降するために操作アームAの先端に装備されるものである。そして、図2に示すように挿入筒10に3枚のクランプ用羽根20が内装されている。このクランプ用羽根20は、挿入筒10の長手切欠口11から3方向に拡開可能としている。クランプ用羽根20は下端に係合フランジ21を突設しており、挿入筒10内にあってタイヤホイールWのハブ孔W1に挿入自在とし、クランプ用羽根20に楔機能を有する拡開片30を進退自在に挟持し、該拡開片30の楔機能によりクランプ用羽根20を拡開状態に保持するようになっている。
【0017】
図1および図2に示すように、ホイールクランプ装置1は、図外のエアバランス式重量補助装置の操作に連動する操作アームAの先端に中継部材A1を介して取り付けられており、この中継部材A1に連動しながら重量補助装置を介して作業者が操作アームAを操作することでタイヤGを所定の位置へ移動する。具体的には、トランクルームTの近傍に置いてあるタイヤGのタイヤホイールWに形成されたハブ孔W1にホイールクランプ装置1の挿入筒10を挿通して係合させてから、作業者が操作アームAに連結した重量補助装置を操作してタイヤGを持ち上げ、トランクルームT内にタイヤGを持ち込み、所定位置に載置してタイヤホイールWのハブ孔W1からホイールクランプ装置1の挿入筒10を外し、重量補助装置の操作により操作アームAを次のタイヤホイールWを掴む位置に戻す動作を行うものである。
なお、ホイールクランプ装置1は操作アームAを介して任意に操作できるように構成されていれば良く、例えば、操作アームAを図外のロボットに連結し、ロボットにより自動で操作できるように構成されていても良い。
【0018】
図1に示すように、挿入筒10は中継部材A1を介して操作アームAの先端部に連結形成されている。図3図4に示すように挿入筒10は有底筒状に形成されており、先端周壁には120度の間隔で拡開片30が出没する3列の長手切欠口11が形成されている。挿入筒10に内装されたクランプ用羽根20は長手形状に形成されており、その上端部に枢支部29を備えている。そのため、クランプ用羽根20は枢支部29を介して3方向に拡開自在としている。なお、本実施形態におけるクランプ用羽根20の拡開作動は拡開アクチュエータとしての拡開片30の上下動によって制御されているが、スプリングやエアシリンダーなどで制御することも可能である。
【0019】
クランプ用羽根20の下半部は枢支部29を中心とした拡開作動に伴い、挿入筒10の3列の長手切欠口11から出没自在に構成されている。すなわち、後述する拡開片30が挿入筒10内における3個のクランプ用羽根20によって形成される中央空間Sに進入し楔となって当接することにより、楔機能を介して3個のクランプ用羽根20が拡開し、この楔機能の解放時に挿入筒10の長手切欠口11から退去作動するものである。
【0020】
クランプ用羽根20の下半部の外側面から係合フランジ21の直角面にかけては略L字形の2次部材23を重合して張り付けている。この2次部材23は上下2本のボルトB,Bでクランプ用羽根20に固定されている。なお、この2次部材23に形成した係合フランジ21aを介することなく、クランプ用羽根20の係合フランジ21をタイヤホイールWに直接当てるようにして支持してもよい。また、略L字形の2次部材23の材質は、現実動作の回数やクランプ用羽根20の拡開度合いの設定により適宜変更することができる。
また、各クランプ用羽根20の2次部材23には、タイヤホイールWのハブ孔W1の内周面との当接部分において略垂直面27を形成しており、クランプ用羽根20の拡開作動によってこの垂直面27がハブ孔W1を押圧してタイヤGを保持することができる。
【0021】
拡開片30はクランプ用羽根20の上部内対面22に当接自在で楔機能を果たす上部拡開片31と、クランプ用羽根20の下部内対面25に当接自在で楔機能を果たす下部拡開片35とより構成してある。また、拡開片30の上端部には拡開片30を進退自在とするマニピュレータ(図示せず)と接続した操作アーム37が設けられている。
【0022】
拡開片30は挿入筒10内の各クランプ用羽根20の間に形成された中央空間Sに挿入自在に構成されている。拡開片30上部の操作アーム37は油圧シリンダーなどで構成されたアクチュエータ(図示せず)に連結されており、このアクチュエータにより中央空間Sに拡開片30を挿入自在としている。
【0023】
上部拡開片31は塊状で、クランプ用羽根20,20,20の凹形状の上部内対面22,22,22が塊状の上部拡開片31を挟むようにして相対している。
【0024】
そして、図5および図6に示すように、肉薄H1のタイヤホイールWに対しては、上部拡開片31の進出作動によりクランプ用羽根20の上部内対面22によりクランプ用羽根20が拡開し、クランプ用羽根20との楔機能によりクランプ用羽根20を拡開状態に固持するようになっている。具体的には、拡開片30の上部拡開片31の下部に形成した2段目膨出部33が下方に進出することで周面33aと中間凹部28とが当接してクランプ用羽根20の拡開状態を維持する。そのため、クランプ用羽根20にかかる不測の側方外圧応力、例えばクランプ用羽根20に対してクランプ用羽根20を挿入筒10へ収納する方向Xにクランプ用羽根20の外方から応力が生起した場合でも、拡開片30への応力は下部拡開片35の軸直方向となり上昇分力がほとんど発生しないため、タイヤホイールWの保持状態が外れることがないように形成されている。
【0025】
そして、図7および図8に示すように、肉厚H2のタイヤホイールWに対しては、拡開片30の進出作動により下部拡開片35と下部内対面25とが当接してクランプ用羽根20を拡開する。クランプ用羽根20の拡開作動は垂直面27がハブ孔W1に当接するまで拡開する。2次部材23の係合フランジ21aはタイヤホイールWに係合し、また、拡開片30は下部拡開片35の楔機能によりクランプ用羽根20を拡開状態で固持するようになっている。
【0026】
図3図5図7に示すように、拡開片30の上部拡開片31は膨出形状で、かつ、クランプ用羽根20の内側の凹形状と対面して楔機能を果たすように形成されている。膨出形状の上部拡開片31は1段目膨出部32とその下方に1段目膨出部32より小径にして形成した2段目膨出部33とにより構成し、2段目膨出部33の周面33aは垂直状とし、周面33aの下端部はR形状33bとしてある。そして、上部拡開片31を囲繞する内側の半円形状の上部内対面22の下端部は拡開片30の進出作動に伴い2段目膨出部33のR形状33bを経て略垂直状の周面33aと当接するようにしている。
【0027】
また、上部内対面22の下方には中間凹部28が形成されており、拡開片30の進出作動に伴い下部拡開片35が中間凹部28に進入しても遊嵌状態を保つことができる。この中間凹部28の下方には凸状の下部内対面25が形成され、中間凹部28と下部内対面25とはテーパー24によって連設されており、拡開片30の進出作動時に下部拡開片35が下部内対面25に円滑に進入できるようになっている。
【0028】
図5に示すように、拡開片30が下降して上部拡開片31の2段目膨出部33が上部内対面22の下端部に当接している状態では、クランプ用羽根20が多めに挿入筒10の長手切欠口11から拡開突出し、略垂直面27が肉薄H1のタイヤホイールWのハブ孔W1に係合し、2段目膨出部33の周面33aと中間凹部28との間に形成される楔作用により外れる恐れなくタイヤホイールWが保持されるよう構成されている。
【0029】
図7に示すように、拡開片30が進出することで下部拡開片35が下部内対面25に当接している状態では、クランプ用羽根20が少なめに挿入筒10の長手切欠口11から拡開突出し、係合フランジ21aが肉厚のタイヤホイールWのハブ孔W1に係合し、下部拡開片35の下部と下部内対面25との間に形成される楔作用により外れる恐れなくタイヤホイールWが保持されるよう構成されている。
【0030】
拡開片30の上部拡開片31とクランプ用羽根20の上部内対面22、及び下部拡開片35と下部内対面25との間に形成される楔作用による係合把持の態様は上述したとおりであり、拡開片30の進出状況に対応してクランプ用羽根20が少なめに挿入筒10の長手切欠口11から拡開突出し、係合フランジ21が肉厚H2のタイヤホイールWのハブ孔W1に適合して係合し、また、クランプ用羽根20が多めに挿入筒10の長手切欠口11から拡開突出し、クランプ用羽根20の略垂直面27が肉薄H1のタイヤホイールWのハブ孔W1に適合して係合するように適切に対応可能となっている。
【0031】
しかも、本発明の特徴として、上記構成の楔機能を利用し、クランプ用羽根20にかかる不測の外力に対して外れないよう対抗することができ、拡開片30の進出状況に対応して、拡開片30の塊状の上部拡開片31とクランプ用羽根20の半円形状の上部内対面22との関係、また、下部拡開片35と下部内対面25との間の楔作用がいずれの厚さのタイヤホイールにも対応できるという特徴構成を有している。
【0032】
基本的に拡開片30の上部拡開部31における1段目膨出部32の外形は最大限にクランプ用羽根20を拡開させ、1段目膨出部32に対応するクランプ用羽根20の上部内対面22は上方に向かうに従い漸次幅狭となる半円形の湾面としている。従って、タイヤホイールWのハブ孔W1にクランプ用羽根20の係合フランジ21、又は略垂直面27が係合しているとき、不測の外力が加わって拡開片30に上昇分力が発生したような場合でも、1段目膨出部32は上部内対面22の湾曲面に当接して規制され、また、下部拡開片35と下部内対面25との間においても上昇分力は規制され、ホイールクランプ装置1によるタイヤホイールWの把持状態が解除されるという不測の事態を未然に防止することができるものである。
【0033】
図1および図2に示すように、トランクルームTへタイヤGを積降しする作業は、操作アームAの先端に設けたホイールクランプ装置1でタイヤホイールWを保持あるいは解放してなされる。図3に示すように、拡開片30が後退した位置では、下端に係合フランジ21を突設したクランプ用羽根20が内退した状態であり、外方に突出した部位がない挿入筒10をタイヤホイールWのハブ孔W1に挿入し、拡開片30を進出させると、図7および図8に示すように、ロッド状の下部拡開片35がクランプ用羽根20の下部内対面25を押圧し、係合フランジ21が外方に突出してタイヤホイールWに係合して保持する。
【0034】
ホイールクランプ装置1は拡開片30とクランプ用羽根20との間の楔機能によりクランプ用羽根20を拡開作動させてハブ孔W1に係合させて固持し、操作アームAによりタイヤホイールWを移動することができる。そして、ホイールクランプ装置1は積降し位置で拡開片30を後退させるとクランプ用羽根20が内退して楔機能が外れ、係合フランジ21も内退してタイヤホイールWを解放する。
【0035】
このように、拡開片30の上部拡開片31は楔機能によりクランプ用羽根20の上部内対面22において当接自在でクランプ用羽根20を拡開あるいは縮退させる。また、下部拡開片35はクランプ用羽根の下部内対面25において当接自在で楔機能によりクランプ用羽根20を拡開あるいは縮退させる。
【0036】
そして、図2図5図6図9(a),及び図9(c)に示すように、ハブ孔W1が肉薄H1のタイヤホイールWに対しては、挿入筒10をタイヤホイールWのハブ孔W1に挿入してから上部拡開片31の進出作動により上部内対面22が押されてクランプ用羽根20が枢支部29を基点として拡開し、拡開片30の楔機能によりクランプ用羽根20を拡開固持する。このときクランプ用羽根20の内対面の当接部分において略垂直面27がハブ孔W1に係合している。その後、ホイールクランプ装置1はトランクルームTにタイヤGを所定の姿勢で納め、操作アーム37を縮退して下部拡開片35および上部拡開片31がクランプ用羽根20の下部内対面25および上部内対面22から外れることにより、略垂直面27がハブ孔W1から外れ、係合フランジ21もハブ孔W1から外れタイヤホイールWからホイールクランプ装置1を外すことができる。なお、図10には、クランプ用羽根20と拡開片30を拡大図示している。
【0037】
また、図7図8図9(a),及び図9(b)に示すように、ハブ孔W1が肉厚H2のタイヤホイールWに対しては、挿入筒10をタイヤホイールWのハブ孔W1に挿入してから、拡開片30の下部拡開片35の進出作動により下部内対面25が押されてクランプ用羽根20が拡開し、係合フランジ21がタイヤホイールWに係合して、拡開片30の楔機能によりクランプ用羽根20を拡開固持してタイヤGを保持する。トランクルームTにタイヤGを所定の姿勢で納めた後は、操作アーム37を縮退して下部拡開片35が下部内対面25から外れることで係合フランジ21もハブ孔W1から外れて、ホイールクランプ装置1をタイヤホイールWから外すことができる。
【0038】
このように、クランプ用羽根20にかかる不測の側方外圧応力に対して拡開片30の上昇分力を可及的に減殺可能に構成したホイールクランプ装置1となっている。
【0039】
以上のように、本願発明の要諦は、従来技術ではバネの弾撥力によりクランプ力を得ていたのに対し、この弾撥力に抗する強い外力が加わった場合にクランプが外れる恐れがあることに鑑み、楔機能によりクランプを外そうとする外力にほぼ直角方向から対抗して外れる恐れがない技術としたものである。また、肉厚、肉薄の形態に応じて適切に対象を保持することができるようにし、汎用性も高めたものである。したがって、各部の態様が楔機能を果たすものであれば広く技術思想を広げることができるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0040】
W タイヤホイール
W1 ハブ孔T トランクルーム
A 操作アーム
G タイヤ
1 ホイールクランプ装置
10 挿入筒
20 クランプ用羽根
21,21a 係合フランジ
22 上部内対面
23 2次部材
24 テーパ
25 下部内対面
27 略垂直面
28 中間凹部
29 枢支部
30 拡開片
31 上部拡開片
32 1段目膨出部
33 2段目膨出部
33a 周面
33b R形状
35 下部拡開片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10