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特許7016782初期方位を推定する携帯装置、プログラム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】初期方位を推定する携帯装置、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20220131BHJP
   G01C 21/10 20060101ALI20220131BHJP
   G01S 5/02 20100101ALI20220131BHJP
   G01S 5/14 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
G01C21/28
G01C21/10
G01S5/02 A
G01S5/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018185618
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020056602
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2020-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 義浩
【審査官】田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-134191(JP,A)
【文献】特開2019-045179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00 - 21/36
G01C 23/00 - 25/00
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G01S 5/00 - 5/14
G01S 5/00 - 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯装置において、
測位開始から、当該携帯装置の第1の絶対位置を時系列に取得する第1の絶対位置測位手段と、
測位開始から、当該携帯装置の相対位置を時系列に取得する相対位置測位手段と、
複数の仮初期方位を予め設定し、測位開始から、前記仮初期方位毎に、前記相対位置の時系列から第2の絶対位置の時系列を算出する第2の絶対位置測位手段と、
測位開始の時刻からの所定時間に達した際に、又は、測位開始の位置からの所定距離に達した際に、選択指示を出力する所定条件判定手段と
前記選択指示が出力された際に、複数の第2の絶対位置の時系列の中で、第1の絶対位置の時系列に最も類似しているものを選択し、選択された第2の絶対位置の時系列における仮初期方位を初期方位として選択する初期方位選択手段と
を有することを特徴とする携帯装置。
【請求項2】
複数の仮初期方位は、各仮初期方位同士の間が等角度となるように設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯装置。
【請求項3】
第1の絶対位置測位手段は、他の複数のデバイスからの近距離無線電波を受信する通信デバイスを用いて第1の絶対位置を測位するものであり、
前記相対位置測位手段は、加速度センサ及び角速度センサを用いて相対位置を測位するものである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯装置。
【請求項4】
通信デバイスは、BLE(Bluetooth Low Energy)又はiBeacon(登録商標)の電波を受信して測位に用いるものであり、
加速度センサ及び角速度センサは、歩行者自律航行(PDR:Pedestrian Dead Reckoning)用のものである
ことを特徴とする請求項3に記載の携帯装置。
【請求項5】
初期方位が選択されるまでは、第1の絶対位置測位手段から出力された第1の絶対位置を、測位結果として出力し、
初期方位が選択された後は、前記初期方位選択手段によって選択された初期方位に基づいて、第1の絶対位置測位手段から出力された第1の絶対位置と、前記相対位置測位手段から出力された相対位置とを用いて、最適位置を算出するハイブリッド測位手段を
更に有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の携帯装置。
【請求項6】
前記初期方位選択手段は、複数の第2の絶対位置の時系列の中で、第1の絶対位置の時系列と比較して平均二乗誤差が最も小さいものを選択する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の携帯装置。
【請求項7】
前記所定条件判定手段における前記所定距離は、予め設定された、測位開始の位置からの累積移動距離及び/又は直線距離である
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の携帯装置。
【請求項8】
携帯装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムにおいて、
測位開始から、当該携帯装置の第1の絶対位置を時系列に取得する第1の絶対位置測位手段と、
測位開始から、当該携帯装置の相対位置を時系列に取得する相対位置測位手段と、
複数の仮初期方位を予め設定し、測位開始から、前記仮初期方位毎に、前記相対位置の時系列から第2の絶対位置の時系列を算出する第2の絶対位置測位手段と、
測位開始の時刻からの所定時間に達した際に、又は、測位開始の位置からの所定距離に達した際に、選択指示を出力する所定条件判定手段と
前記選択指示が出力された際に、複数の第2の絶対位置の時系列の中で、第1の絶対位置の時系列に最も類似しているものを選択し、選択された第2の絶対位置の時系列における仮初期方位を初期方位として選択する初期方位選択手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする携帯装置のプログラム。
【請求項9】
携帯装置の初期方位決定方法において、
前記携帯装置は、
測位開始から、当該携帯装置の第1の絶対位置を時系列に取得する第1のステップと、
測位開始から、当該携帯装置の相対位置を時系列に取得する第2のステップと、
複数の仮初期方位を予め設定し、測位開始から、前記仮初期方位毎に、前記相対位置の時系列から第2の絶対位置の時系列を算出する第3のステップと、
測位開始の時刻からの所定時間に達した際に、又は、測位開始の位置からの所定距離に達した際に、選択指示を出力する第4のステップと、
前記選択指示が出力された際に、複数の第2の絶対位置の時系列の中で、第1の絶対位置の時系列に最も類似しているものを選択し、選択された第2の絶対位置の時系列における仮初期方位を初期方位として選択する第のステップと
を実行することを特徴とする携帯装置の初期方位決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内における絶対位置測位及び相対位置測位の両方を用いたハイブリッド測位の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外におけるユーザ位置を推定するために、携帯装置におけるGPS(Global Positioning System)による絶対位置測位と、加速度・磁気センサによる相対位置測位とを組み合わせた技術がある(例えば非特許文献1参照)。この技術によれば、測位結果として得られた絶対位置及び相対位置を、カルマンフィルタによって組み合わせて、高精度に位置を決定することができる。
【0003】
一方で、屋内では、GPSを使用することができないために、絶対位置測位には、近距離無線通信のビーコンが用いられる。近距離無線通信として、Bluetooth(登録商標)を用いたBLE(Bluetooth Low Energy)がある。BLEは、近距離無線規格Bluetoothの仕様策定団体である「Bluetooth SIG」によって、「低消費電力版Bluetooth」として規格化されたものである。尚、Apple社のiOS7以降のOSに基づくiBeacon(登録商標)も、BLEに基づくものである。
【0004】
屋内におけるユーザ位置を推定するために、BLEを用いた絶対位置測位と、携帯装置のPDR(Pedestrian Dead Reckoning)の相対位置測位とを切り替える技術がある(例えば非特許文献2参照)。歩行自律航行と称されるPDRは、携帯装置に搭載された加速度・角速度センサを用いる。この技術によれば、BLEビーコンから観測される受信強度RSSI(Received Signal Strength Indication)が全て、減少傾向となった場合に、PDRの相対位置測位に切り替える。また、PDRの相対位置測位の際に、BLEビーコンの直下に位置したと判定された時、BLEの絶対位置測位へ切り替える。即ち、屋内における携帯装置の絶対位置測位及び相対位置測位を、BLEビーコンの受信強度に応じて切り替えている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】小河原亮、他、「GPS測位情報とセンサ情報に基づく位置推定システムに関する研究」、情報処理学会論文誌 Vol.56, No.1, 2-12, 2015-01-15、[online]、[平成30年9月8日検索]、インターネット<URL:https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=repository_uri&item_id=112719&file_id=1&file_no=1>
【文献】堀川三好、他、「BLE位置測位およびPDRを用いたハイブリッド型屋内位置測位手法の提案」、情報処理学会研究報告、Vol.2015-CDS-14 No.13, 2015/10/2、[online]、[平成30年9月8日検索]、インターネット<URL:https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/index.php?action=pages_view_main&active_action=repository_action_common_download&item_id=145223&item_no=1&attribute_id=1&file_no=1&page_id=13&block_id=8>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
BLEの絶対位置測位の場合、携帯装置は、屋内に配置されたタグデバイスの位置(フロアマップ)を予め記憶している。その上で、携帯装置は、複数のタグデバイスからのBLEビーコンを受信し、各BLEビーコンの受信強度に基づく三点測量によって絶対位置を測位する。
しかしながら、屋内の場合、電波は、壁や設置物などによって反射・回折する。また、タグデバイスと携帯端末との間に、遮蔽障害物が急に生じた場合、同じ絶対位置であっても受信強度が変化することとなる。即ち、BLEの絶対位置測位の場合、BLEビーコンの受信強度が周辺環境によって影響を受けやすい。結果的に、絶対位置の測位精度は不安定とならざるを得ない。
【0007】
また、PDRの相対位置測位の場合、加速度・角速度センサのみを使う場合では、端末の絶対的な方位(例:北を0度とした方位)を知ることはできない。なぜならば、加速度センサで取得できるのは重力方向のみで、重力方向と垂直な方向である方位の情報を得ることはできず、角速度センサで取得できるのは角速度、すなわち方位の変化量のみであり、絶対的な方位は取得できないからである。磁気センサを使う場合については、地磁気を検出することで絶対的な方位を取得することができるが、磁気センサの事前のキャリブレーションが必要であることと、屋内においては建造物自体による磁場の歪みにより正確な地磁気を取得することが困難である。そのために、測位開始時の初期方位を、事前にキャリブレーションするか、初期方位を正確に推定することによって、信頼性を高めている。
しながら、初期方位の設定に失敗すると、精度が大きく劣化するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、絶対位置測位を用いて、相対位置測位の初期方位を推定することができる携帯装置、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、携帯装置において、
測位開始から、当該携帯装置の第1の絶対位置を時系列に取得する第1の絶対位置測位手段と、
測位開始から、当該携帯装置の相対位置を時系列に取得する相対位置測位手段と、
複数の仮初期方位を予め設定し、測位開始から、仮初期方位毎に、相対位置の時系列から第2の絶対位置の時系列を算出する第2の絶対位置測位手段と、
測位開始の時刻からの所定時間に達した際に、又は、測位開始の位置からの所定距離に達した際に、選択指示を出力する所定条件判定手段と
選択指示が出力された際に、複数の第2の絶対位置の時系列の中で、第1の絶対位置の時系列に最も類似しているものを選択し、選択された第2の絶対位置の時系列における仮初期方位を初期方位として選択する初期方位選択手段と
を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の携帯装置における他の実施形態によれば、
複数の仮初期方位は、各仮初期方位同士の間が等角度となるように設定する
ことも好ましい。
【0011】
本発明の携帯装置における他の実施形態によれば、
第1の絶対位置測位手段は、他の複数のデバイスからの近距離無線電波を受信する通信デバイスを用いて第1の絶対位置を測位するものであり、
相対位置測位手段は、加速度センサ及び角速度センサを用いて相対位置を測位するものである
ことも好ましい。
【0012】
本発明の携帯装置における他の実施形態によれば、
通信デバイスは、BLE(Bluetooth Low Energy)又はiBeacon(登録商標)の電波を受信して測位に用いるものであり、
加速度センサ及び角速度センサは、歩行者自律航行(PDR:Pedestrian Dead Reckoning)用のものである
ことも好ましい。
【0013】
本発明の携帯装置における他の実施形態によれば、
第1の絶対位置測位手段から出力された第1の絶対位置と、初期方位選択手段によって選択された初期方位と、相対位置測位手段から出力された相対位置とを用いて、最適位置を算出するハイブリッド測位手段を
更に有することも好ましい。
【0014】
本発明の携帯装置における他の実施形態によれば、
初期方位選択手段は、複数の第2の絶対位置の時系列の中で、第1の絶対位置の時系列と比較して平均二乗誤差が最も小さいものを選択する
ことも好ましい。
【0016】
本発明の携帯装置における他の実施形態によれば、
所定条件判定手段における所定距離は、予め設定された、測位開始の位置からの累積移動距離及び/又は直線距離である
ことも好ましい。
【0017】
本発明によれば、携帯装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムにおいて、
測位開始から、当該携帯装置の第1の絶対位置を時系列に取得する第1の絶対位置測位手段と、
測位開始から、当該携帯装置の相対位置を時系列に取得する相対位置測位手段と、
複数の仮初期方位を予め設定し、測位開始から、仮初期方位毎に、相対位置の時系列から第2の絶対位置の時系列を算出する第2の絶対位置測位手段と、
測位開始の時刻からの所定時間に達した際に、又は、測位開始の位置からの所定距離に達した際に、選択指示を出力する所定条件判定手段と
選択指示が出力された際に、複数の第2の絶対位置の時系列の中で、第1の絶対位置の時系列に最も類似しているものを選択し、選択された第2の絶対位置の時系列における仮初期方位を初期方位として選択する初期方位選択手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、携帯装置の初期方位決定方法において、
携帯装置は、
測位開始から、当該携帯装置の第1の絶対位置を時系列に取得する第1のステップと、
測位開始から、当該携帯装置の相対位置を時系列に取得する第2のステップと、
複数の仮初期方位を予め設定し、測位開始から、仮初期方位毎に、相対位置の時系列から第2の絶対位置の時系列を算出する第3のステップと、
測位開始の時刻からの所定時間に達した際に、又は、測位開始の位置からの所定距離に達した際に、選択指示を出力する第4のステップと、
選択指示が出力された際に、複数の第2の絶対位置の時系列の中で、第1の絶対位置の時系列に最も類似しているものを選択し、選択された第2の絶対位置の時系列における仮初期方位を初期方位として選択する第のステップと
を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の携帯装置、プログラム及び方法によれば、絶対位置測位を用いて、相対位置測位の初期方位を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明における携帯装置の機能構成図である。
図2】第1の絶対位置の時系列を表す説明図である。
図3】本発明における複数の仮初期方位を表す説明図である。
図4】仮初期方位に相対位置を対応付けた第2の絶対位置の時系列を表す説明図である。
図5】絶対位置と複数の仮初期方位に基づく相対位置との比較を表す説明図である。
図6】本発明によって決定された初期方位を表す説明図である。
図7】初期方位を決定するまでの絶対位置測位の経過を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明における携帯装置の機能構成図である。
【0023】
図1によれば、携帯装置1は、ハードウェアとして、通信デバイス101と、加速度・角速度センサ102とを有する。
また、図1によれば、携帯装置1は、第1の絶対位置測位部11と、相対位置測位部12と、第2の絶対位置測位部13と、所定条件判定部14と、初期方位選択部15と、ハイブリッド測位部16とを有する。これら機能構成部は、携帯装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、携帯装置の初期方位決定方法として理解できる。
【0024】
[通信デバイス101]
通信デバイス101は、BLE(又はiBeacon(登録商標))の近距離無線規格に基づくスキャナ用のものである。通信デバイス101は、屋内に配置された複数のタグデバイスから、BLEビーコン(Advertising Packet)を受信する。そして、通信デバイス101は、受信したビーコンID及び受信強度を、第1の絶対位置測位部11へ出力する。
【0025】
[加速度・角速度センサ102]
加速度・角速度センサ102は、計測した加速度値及び角速度値を、相対位置測位部12へ出力する。加速度・角速度センサ102は、歩行者自律航行(PDR:Pedestrian Dead Reckoning)用のものである。
【0026】
[第1の絶対位置測位部11]
第1の絶対位置測位部11は、他の複数のデバイスからの近距離無線電波を受信する通信デバイス101を用いて第1の絶対位置を測位する。
第1の絶対位置測位部11は、屋内に配置されたタグデバイスそれぞれの位置(フロアマップ)を予め蓄積している。その上で、第1の絶対位置測位部11は、通信デバイス101から受信した複数のタグデバイスのビーコンID及び受信強度から、三点測量の方式で第1の絶対位置を推定する。第1の絶対位置は、測位時刻と共に、測位開始から時系列に取得される。
【0027】
図2は、第1の絶対位置の時系列を表す説明図である。
【0028】
第1の絶対位置測位部11は、測位開始から、当該携帯装置の第1の絶対位置を時系列に取得する。例えば所定時間間隔で計測することによって、時系列に第1の絶対位置をプロットすることができる。但し、時系列の第1の絶対位置は、BLEビーコンの受信強度によって推定されたものであるので、誤差を含むことを前提とする。
【0029】
[相対位置測位部12]
相対位置測位部12は、加速度センサ及び角速度センサを用いて相対位置を測位するものである。
相対位置測位部12は、測位開始から、当該携帯装置の相対位置を時系列に取得する。具体的には、加速度・角速度センサ102から、加速度値及び角速度値を常時受信する。加速度値から「歩」を、角速度値から「向きの変化」を、携帯端末の変位として検出し、それらを組み合わせて積算することによって相対位置を取得する。
【0030】
[第2の絶対位置測位部13]
第2の絶対位置測位部13は、複数の仮初期方位を予め設定する。複数の仮初期方位は、各仮初期方位同士の間が等角度となるように設定することが好ましい。
【0031】
図3は、本発明における複数の仮初期方位を表す説明図である。
【0032】
図3によれば、4つの仮初期方位(0°、90°、180°、270°)が設定されている。具体的な実施形態としては、例えば16個の仮初期方位を、22.5°の等角度で設定することが好ましい。
【0033】
図4は、仮初期方位に相対位置を対応付けた第2の絶対位置の時系列を表す説明図である。
【0034】
第2の絶対位置測位部13は、測位開始から、仮初期方位毎に、相対位置の時系列から第2の絶対位置を時系列に対応付ける。
ここで、本発明によれば、複数の仮初期方位それぞれに対応して、計測開始時の絶対位置からの相対位置を、時系列にプロットしていく。図4によれば、1つの相対位置(携帯装置の変位)が計測された際に、4つの仮初期方位それぞれに第2の絶対位置をプロットしていく。
【0035】
[所定条件判定部14]
所定条件判定部14は、以下の条件を満たした際に、初期方位選択部15へ、選択指示を出力する。
(1)測位開始の時刻からの所定時間に達した際
例えば測位開始から10秒経過した時点であってもよい。
(2)相対位置測位部12又は第2の絶対位置測位部13について、測位開始の位置からの所定距離に達した際
例えば所定距離は、測位開始の位置からの累積移動距離及び/又は直線距離によって予め設定されたものであってもよい。
これは、第1の絶対位置の時系列と第2の絶対位置の時系列とを十分に比較することができるように、十分なデータを収集しようとするものである。
【0036】
図5は、測位開始の位置からの所定距離を表す説明図である。
【0037】
図5によれば、第2の絶対位置を例としたものである。
図5(a)によれば、第2の絶対位置における測位開始の位置からの累積移動距離10mに達した時を表す。
図5(b)によれば、第2の絶対位置における測位開始の位置からの直線距離10mに達した時を表す。
また、図5(a)及び図5(b)の両方を達成した時であってもよい。
これら所定条件を満たした際に、所定条件判定部14は、初期方位選択部15へ、選択指示を出力する。
【0038】
[初期方位選択部15]
初期方位選択部15は、測位開始の位置から複数の仮初期方位を適用した複数の第2の絶対位置の時系列の中で、第1の絶対位置の時系列に最も類似しているものを選択する。
ここで、初期方位選択部15は、選択指示が入力された場合に、初期方位を選択するものであってもよい。
【0039】
図6は、第1の絶対位置と複数の第2の絶対位置との比較を表す説明図である。
【0040】
初期方位選択部15は、複数の第2の絶対位置の時系列の中で、第1の絶対位置の時系列と比較して平均二乗誤差が最も小さいものを選択する。具体的には、ほぼ同一時刻に基づく複数の第2の絶対位置のプロットと第1の絶対位置のプロットとを比較して、プロット間の平均二乗誤差Errを算出する。
Err=1/n Σt((Ht-At)2) t=0,1,・・・,T
T:所定条件判定部14から選択指示が入力された時刻
n:計測開始時刻から選択指示が入力された時刻までの間に取得された
位置のデータ数
At:時刻tにおける第1の絶対位置
Ht:時刻tにおける第2の絶対位置
そして、平均二乗誤差が最も小さい第2の絶対位置の時系列を選択する。
【0041】
図7は、決定された初期方位を表す説明図である。
【0042】
図7によれば、選択された第2の絶対位置の時系列における仮初期方位を初期方位として選択する。その初期方位は、ハイブリッド測位部16へ出力される。
【0043】
[ハイブリッド測位部16]
ハイブリッド測位部16は、以下の情報を用いて、最適位置を算出する。
(1)第1の絶対位置測位部11から出力された第1の絶対位置
(2)初期方位選択部15によって選択された初期方位
(3)相対位置測位部12から出力された相対位置
【0044】
ハイブリッド測位部16は、初期方位が選択されるまでは、第1の絶対位置を、測位結果として出力する。
その後、初期方位が選択された後は、その初期方位に基づいて、第1の絶対位置及び相対位置を用いたハイブリッド測位結果を出力する。即ち、初期方位が選択された後は、第1の絶対位置及び相対位置を継続的に入力し、ハイブリッド測位結果を出力し続けることができる。
【0045】
具体的なハイブリッド測位方法としては、既存のものであって、例えば前述した非特許文献1のように、絶対位置及び相対位置をカルマンフィルタによって組み合わせて、高精度に位置を決定するものであってもよい。
【0046】
以上、詳細に説明したように、本発明の携帯装置、プログラム及び方法によれば、絶対位置測位を用いて、相対位置測位の初期方位を推定することができる。
【0047】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0048】
1 携帯装置
101 通信デバイス
102 加速度・角速度センサ
11 第1の絶対位置測位部
12 相対位置測位部
13 第2の絶対位置測位部
14 所定条件判定部
15 初期方位選択部
16 ハイブリッド測位部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7