(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】木ねじ構造
(51)【国際特許分類】
F16B 35/00 20060101AFI20220131BHJP
F16B 25/10 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
F16B35/00 T
F16B25/10 A
(21)【出願番号】P 2019227334
(22)【出願日】2019-12-17
【審査請求日】2019-12-18
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519450019
【氏名又は名称】徐國泰
(73)【特許権者】
【識別番号】519450020
【氏名又は名称】徐敏豪
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】徐國泰
(72)【発明者】
【氏名】徐敏豪
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0266467(US,A1)
【文献】特開2007-315513(JP,A)
【文献】実開昭56-015814(JP,U)
【文献】特開2010-190269(JP,A)
【文献】特開平09-217722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 35/00
F16B 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
始端頭部と、前記始端頭部と一体に連続接続した杆体と、を備えた木ねじ構造であって、
前記杆体は、主杆部及び終端部を有し、
前記主杆部及び前記終端部は、第1の端部及び第2の端部をそれぞれ有し、
前記主杆部の前記第1の端部が前記始端頭部側に設けられ、
前記主杆部の前記第2の端部と前記終端部の前記第1の端部とが接続され、
前記終端部の前記第2の端部には、角錐端が形成され、
前記終端部の直径は、前記主杆部の直径より小さく、
前記主杆部上には、前記第2の端部から前記第1の端部に向かって螺旋状に延びた第1のねじ山が形成され、
前記終端部上には、前記第2の端部から前記第1の端部に向かって螺旋状に延びた第2のねじ山が形成され、
前記第2のねじ山と前記第1のねじ山とが接続され、
前記終端部上
の略全長にわたって、
前記杆体の長手方向に対し斜め方向に間隔をおいて複数のドリルユニットが形成され、
前記ドリルユニットの外径は前記第2のねじ山の外径より小さく、
前記第2のねじ山の外径は前記第1のねじ山の外径より小さいことを特徴とする、
木ねじ構造。
【請求項2】
前記ドリルユニット及び前記第2のねじ山は、ねじ山高さをそれぞれ有し、前記ドリルユニットの前記ねじ山高さは、前記第2のねじ山の前記ねじ山高さの0.9倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の木ねじ構造。
【請求項3】
前記ドリルユニットは、前記第2のねじ山の少なくとも1つのピッチを超え、前記ドリルユニットの始端及び終端は、前記第2のねじ山の異なる2つのピッチにそれぞれ位置することを特徴とする請求項1に記載の木ねじ構造。
【請求項4】
前記ドリルユニットは、前記第2のねじ山のピッチを超えず、前記ドリルユニットの始端及び終端は、前記第2のねじ山の同一のピッチにそれぞれ位置することを特徴とする請求項1に記載の木ねじ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木ねじ構造に関し、特に、スムーズかつ確実にワークピースに螺着させることが可能な木ねじ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~4で開示されている従来のねじ構造は、主に、始端頭部と、始端頭部に接続されて末端が角錐端に成形された杆体と、を含む。その杆体の角錐体から始端頭部に至るまで直径は同じであり、杆体はその長手方向で始端端部から上方へ螺旋しているねじ山が成形され、直径が同じ杆体上には、長手方向で縦方向又は斜め方向で複数配列され、ねじ山のピットを超えるか超えないドリルユニットが設けられている。
特許文献1で開示されているねじは、同一直径の杆体上に縦方向で配列されてそのねじ山のピッチを超えないドリルユニットを有する(
図2Bの符号221)。特許文献2で開示されているねじは、同一直径の杆体上に斜めに配列されてそのねじ山の少なくとも1つのピッチを超えるドリルユニット(
図1の符号331)を有する。特許文献3で開示されている従来のねじは、同一直径の杆体上に、縦方向で配列されてそのねじ山の少なくとも1つのピッチを超えるドリルユニット(
図1の符号3)を有する。特許文献4で開示されているねじは、同一直径の杆体上に、縦方向で配列されてそのねじ山の少なくとも1つのピッチを超えるドリルユニット(
図1の符号4)と、縦方向で配列されてそのねじ山のピッチを超えないドリルユニット(
図4の符号4)を有する。ねじをワークピースに螺合する際、その杆体の角錐端を木材などのワークピースに当接させ、力を加えてねじを回すと、その角錐端がワークピースに螺挿され、ドリルユニットによりワークピースに穴を開けると、ねじ山が螺入されるに従い、雌ねじ部が形成される。
【0003】
上述した特許文献1~4で開示されているねじは、回転トルクを下げるために、ドリルユニットの外径がねじ山の底径より大きくなっているため、ドリルユニットにより切削形成されたワークピースのねじ孔の内径もねじ山の底径より大きくなり、ねじ山とワークピースの雌ねじ部との噛み合わせ程度が低くなり、ねじとワークピースとの結合強度が低下する虞があった。
また、上述した特許文献で開示されているねじのドリルユニットが同一直径の杆体上に成形されているため、この設計は、その杆体に設けたドリルユニットが螺挿される際、杆体外周のワークピース材料しか破壊できず、杆体の外周に広孔が形成されるため、ねじ山により杆体をワークピースに螺挿するとき、ワークピース材料が圧縮されて密度が高まり、密度が高まるに従ってねじを螺挿する際に発生する抵抗力が大きくなるため、ねじをワークピース内に螺挿するにはより大きなトルクが必要となった。また、そのドリルユニットは、ねじ山が同一直径の杆体上に形成されていたため、杆体の断面積が大きくなるに従い、そのドリルユニットは、ワークピースを切削する過程で発生する抵抗力も大きくなり、ワークピースにねじを螺挿するために、作業者は大きな力を加えなければならなかったため、従来のねじをワークピースにスムーズに螺着させることは容易でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2017/0241463A1号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0039720A1号明細書
【文献】欧州特許出願公開第EP1411252A2号明細書
【文献】台湾特許出願公開第201544718A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、スムーズかつ確実にワークピースに螺着させることが可能な木ねじ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態によれば、始端頭部と、前記始端頭部と一体に連続接続した杆体と、を備えた木ねじ構造であって、前記杆体は、主杆部及び終端部を有し、前記主杆部及び前記終端部は、第1の端部及び第2の端部をそれぞれ有し、前記主杆部の前記第1の端部が前記始端頭部側に設けられ、前記主杆部の前記第2の端部と前記終端部の前記第1の端部とが接続され、前記終端部の前記第2の端部には、角錐端が形成され、前記終端部の直径は、前記主杆部の直径より小さく、前記主杆部上には、前記第2の端部から前記第1の端部に向かって螺旋状に延びた第1のねじ山が形成され、前記終端部上には、前記第2の端部から前記第1の端部に向かって螺旋状に延びた第2のねじ山が形成され、前記第2のねじ山と前記第1のねじ山とが接続され、前記終端部上には、複数のドリルユニットが形成され、前記ドリルユニットの外径は前記第2のねじ山の外径より小さく、前記第2のねじ山の外径は前記第1のねじ山の外径より小さいことを特徴とする、木ねじ構造を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の木ねじ構造は、終端部がワークピースに螺挿されると、終端部に設けられたドリルユニットにより主杆部に対応したワークピース材料を破壊し、主杆部のねじ山がワークピースに螺挿させる際に発生する抵抗力を下げ、木ねじをワークピースにスムーズかつ楽に螺着させることができる上、主杆部のねじ山に対応して噛合する雌ねじ部がワークピースに切削されて形成されるため、木ねじを確実にワークピースに螺着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る木ねじ構造の杆体を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る木ねじ構造を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る木ねじ構造を示す正面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る木ねじ構造を示す背面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る木ねじ構造を示す左側面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る木ねじ構造を示す右側面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る木ねじ構造を示す横断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る木ねじ構造を示す正面図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る木ねじ構造を示す正面図である。
【
図10】本発明の第4実施形態に係る木ねじ構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る木ねじ構造は、始端頭部1と、始端頭部1と一体に連続接続した杆体2と、を備える。杆体2は、主杆部21及び終端部22を有する。主杆部21及び終端部22は、第1の端部及び第2の端部をそれぞれ有する。主杆部21の第1の端部が始端頭部1側に設けられ、主杆部21の第2の端部と終端部22の第1の端部とが接続され、終端部22の第2の端部には、角錐端221が形成される。終端部22の直径D1は、主杆部21の直径D2より小さい。
図2及び
図3を併せて参照する。
図2及び
図3に示すように、主杆部21上には、第2の端部から第1の端部に向かって螺旋状に延びた第1のねじ山23が形成され、終端部22上には、第2の端部から第1の端部に向かって螺旋状に延びた第2のねじ山24が形成され、第2のねじ山24と第1のねじ山23とが接続される。終端部22の直径D1は、第2のねじ山24の底径を形成する。主杆部21の直径D2は、第1のねじ山23の底径を形成する。終端部22上には、複数のドリルユニット25が形成される。複数のドリルユニット25は、終端部22の長手方向で斜め方向に間隔をおいて設けられる。ドリルユニット25は、第2のねじ山24の少なくとも1つのピッチを超える。ドリルユニット25の始端及び終端は、第2のねじ山24の異なる2つのピッチにそれぞれ位置する。
図4~
図6を参照する。
図4~
図6に示すように、ドリルユニット25の外径D3は、第2のねじ山24の外径D4より小さく、第2のねじ山24の外径D4は、第1のねじ山23の外径D5より小さい。
図7を併せて参照する。
図7に示すように、ドリルユニット25のねじ山高さ(h1)は、第2のねじ山24のねじ山高さ(h2)の0.9倍以下である。
【0010】
第1実施形態の木ねじを木材、合板などのワークピースに螺着させるときは、木ねじの終端部22の角錐端221をワークピースに当接させた後、ドライバーなどの工具で始端頭部1を回転させて終端部22を旋回させる。これにより、角錐端221がワークピースに螺挿され、終端部22上に設けたドリルユニット25によりワークピース材料を径方向で破壊し、終端部22上のドリルユニット25が主杆部21に対応したワークピース材料を破壊するため、主杆部21が第1のねじ山23によりワークピースに螺挿される体積は変化しないが、ワークピースの主杆部21に対応した位置が終端部22上のドリルユニット25などによりワークピース材料を破壊するため密度が低下する。そのため、主杆部21の第1のねじ山23が螺挿される過程で材料堆積に打ち勝つのに必要な反対方向の応力が減り、本発明の木ねじをワークピースに螺挿するのに必要なトルクが少なくなるため、木ねじをワークピースに螺挿させる作業をスムーズに行うことができる。
【0011】
第1実施形態の木ねじは、そのドリルユニット25の外径D3が第2のねじ山24の外径D4より小さく、第2のねじ山24の外径D4が第1のねじ山23の外径D5より小さい。このため、終端部22の第2のねじ山24及び主杆部21の第1のねじ山23が、ドリルユニット25により切削されて形成された孔に螺挿され続けるに伴い、ワークピースの雌ねじのねじ山が深くなり、主杆部21の第1のねじ山23のねじ山高さに対応して噛合した雌ねじ部が形成されるため、第1実施形態では木ねじを確実にワークピースに螺着させることができる。
【0012】
図8を併せて参照する。
図8に示すように、本発明の第2実施形態に係る木ねじ構造は、複数のドリルユニット26及び終端部22の長手方向で、縦向きで間隔をおいて設けられ、ドリルユニット26は第2のねじ山24のピッチを超えず、ドリルユニット26の始端及び終端の両端が第2のねじ山24の同一ピッチに位置する。
また、
図9を併せて参照する。
図9に示すように、本発明の第3実施形態に係る木ねじ構造は、複数のドリルユニット27が終端部22の長手方向で斜めに間隔をおいて設けられ、ドリルユニット27が第2のねじ山24のピッチを超えず、ドリルユニット27の始端及び終端が第2のねじ山24の同一のピッチに位置する。
また、
図10を併せて参照する。
図10に示すように、本発明の第4実施形態に係る木ねじ構造は、複数のドリルユニット28が終端部22の長手方向で、縦向きで間隔をおいて設けられ、ドリルユニット28が第2のねじ山24の少なくとも1つのピットを超えてもよいし、ドリルユニット28の始端及び終端が第2のねじ山24の異なる2つのピッチにそれぞれ位置してもよい。そのため、同様に複数のドリルユニット26,27,28によりワークピース材料を破壊し、主杆部21の第1のねじ山23がワークピースに螺挿されるのに必要なトルクが減り、木ねじにワークピースを確実に螺挿させてもよい。
【0013】
上述したことから分かるように、本発明の木ねじ構造は、以下(1)及び(2)の長所を有する。
(1)終端部の直径が主杆部の直径より小さく、終端部がワークピースに螺挿されると、終端部に設けられたドリルユニットにより主杆部のワークピース材料が破壊され、主杆部の第1のねじ山がワークピースに螺挿される際に発生する抵抗力が減るため、スムーズかつ楽に木ねじをワークピースに螺着させることができる。
(2)木ねじ構造は、ドリルユニットの外径が第2のねじ山の外径より小さい上、第2のねじ山の外径が第1のねじ山の外径より小さいため、ドリルユニットにより開けた穴に第2のねじ山及び第1のねじ山が螺挿され続けると、主杆部の第1のねじ山のねじ山高さが噛合する雌ねじ部に対応する。そのため、木ねじを確実にワークピースに螺着させることができる。
【符号の説明】
【0014】
1 始端頭部
2 杆体
21 主杆部
22 終端部
23 第1のねじ山
24 第2のねじ山
25 ドリルユニット
26 ドリルユニット
27 ドリルユニット
28 ドリルユニット
221 角錐端