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特許7016857医療機器内の流体の流れ温度調節を行うための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】医療機器内の流体の流れ温度調節を行うための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 3/02 20060101AFI20220131BHJP
   A61M 5/44 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
A61M3/02 120
A61M5/44 510
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019504977
(86)(22)【出願日】2017-07-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 DE2017000215
(87)【国際公開番号】W WO2018019317
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-05-20
(31)【優先権主張番号】102016009173.8
(32)【優先日】2016-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515344990
【氏名又は名称】ダブリュ・オー・エム・ワールド・オブ・メディスン・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】W.O.M. WORLD OF MEDICINE GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】シェーンボーン,カール-ハインツ ギュンター
【審査官】伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-000704(JP,A)
【文献】特表2013-536711(JP,A)
【文献】特開昭61-279250(JP,A)
【文献】特開2001-231853(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0126517(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 3/02
A61M 5/44
A61M 1/16
H05B 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療上の灌注流体の流れ温度調節を行うための装置であって、
それぞれホース連結部を伴う少なくとも1つの入口および1つの出口を有する熱交換器本体を備え、
前記装置は、前記熱交換器本体に適合する少なくとも1つの平面状の温度調節要素をさらに備え、
前記熱交換器本体は、前記熱交換器本体の壁により、閉じた1つの空洞を内部に形成し、
少なくとも1つの熱交換器本体の壁は、良好な熱伝達(熱伝導係数>1W/(cmK))を可能にし、
前記熱交換器本体は、内部に2つの流路を備え、2つの前記流路は、前記熱交換器本体の内部に設けられた1つの分離壁によって、前記熱交換器本体内部の前記空洞を2つに分離することで形成されており、一方の流路は、前記温度調節要素と熱接触はなく(「バイパス」)、前記熱交換器本体の壁は、少なくとも局所的に可逆的に変形可能であり、その結果、前記変形に応じて、前記2つの流路は制御可能であり、
前記平面状の温度調節要素は、開口部を有する筐体の中に一体化され、
動作位置では、前記熱交換器本体の壁は、平面状の温度調節要素への良好な熱伝達を伴う接触を有する装置。
【請求項2】
前記熱交換器本体は、実質的に直方体の形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記熱伝達を確実にする前記壁は、前記熱交換器本体の一部をアルミニウム箔でコートして形成されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記平面状の温度調節要素は、加熱箔により形成されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記筐体は、前記熱交換器本体の出口近くに位置決めされた接触式温度計を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記筐体は、前記熱交換器本体の壁と前記温度調節要素の間に陰圧を発生させる真空ポンプを備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記熱交換器本体の壁と前記温度調節要素の間の前記陰圧は、0.05bar~0.3bar(0.7psi~4.4psi)であることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも1つの熱交換器本体の内面は、波形の形状、鋸歯状の形状、または杉綾模様の構成の形状を有する構造物を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記熱交換器本体の前記温度調節要素と熱接触がない前記流路は、前記熱交換器本体の最下部に隣接して配置されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記熱交換器本体は、前記入口および/または前記出口の領域内に流れの横断面の狭窄部を備え、前記狭窄部内、ならびに前記狭窄部の前方および/または背後に、それぞれ圧力を測定するための1つの測定ポイントが提供されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記筐体は、前記動作位置にある前記熱交換器本体の前記入口および/または前記出口の領域内に、加熱要素および温度センサを含む少なくとも1つの熱流測定用センサを備え
ることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
医療上の灌注流体からなる流体の流れの流れ温度調節を行うための方法であって、前記医療上の灌注流体は、それぞれホース連結部を伴う少なくとも1つの入口および1つの出口を有する熱交換器本体を伴う装置を通して導かれることを特徴とし、
前記装置は、前記熱交換器本体に適合する少なくとも1つの平面状の温度調節要素をさらに備え、
前記熱交換器本体は、前記熱交換器本体の壁により、閉じた1つの空洞を内部に形成し、
少なくとも1つの熱交換器本体の壁は、良好な熱伝達(熱伝導係数>1W/(cmK))を可能にし、
前記熱交換器本体は、内部に2つの流路を備え、2つの前記流路は、前記熱交換器本体の内部に設けられた1つの分離壁によって、前記熱交換器本体内部の前記空洞を2つに分離することで形成されており、一方の流路は、前記温度調節要素と熱接触はなく(「バイパス」)、前記熱交換器本体の壁は、少なくとも局所的に可逆的に変形可能であり、その結果、前記変形に応じて、前記2つの流路は制御可能であり、
前記平面状の温度調節要素は、開口部を有する筐体の中に一体化され、前記動作位置では、前記熱交換器本体の壁は、平面状の温度調節要素への良好な熱伝達を伴う接触を有し、その結果、前記医療上の灌注流体は、通過中に温度調節される方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
体腔を灌注することは、さまざまな内視鏡医療法の大部分で、たとえば、関節鏡検査、(内)泌尿器科、または子宮鏡検査に関連して周知である。そこでは通常、灌注流体は、ポンプ、たとえばローラーポンプを用いて体腔の中に注入される。たとえば(内)泌尿器科および子宮鏡検査では、患者の身体の局所的体温低下を避けるために、灌注流体を適用中に体温に適合させることが有利であることが証明されている。しかしながら、従来技術では、異なる欠点がある異なる解決手段が公知である(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4)。関節鏡検査では、炎症進行を低減するため、出血を回避するために、および/または手術中に局所的代謝を低減するために、灌注流体により関節を冷却することが有利な場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【文献】米国特許第6,480,257号明細書
【文献】米国特許第8,790,303号明細書
【文献】米国特許第7,153,285号明細書
【文献】米国特許出願公開第2003/0216689(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の主題は、従来技術のさまざまな欠点を克服する新規の装置である。
【0004】
したがって、本発明の主題は、医療上の灌注流体の流れ温度調節を行うための装置であって、
それぞれホース連結部を伴う少なくとも1つの入口および1つの出口を有する熱交換器本体
を備え、
熱交換器本体は、その熱交換器本体の壁により、閉じた空洞を形成し、
少なくとも1つの熱交換器本体の壁は、良好な熱伝達(熱伝導係数>1W/(cmK))を可能にし、
熱交換器本体は、2つの流路を備え、一方の流路は、温度調節要素と熱接触はなく(「バイパス」)、熱交換器本体の壁は、少なくとも局所的に可逆的に変形可能であり、その結果、変形に応じて、2つの流路は制御可能であり、
装置は、熱交換器本体に適合する少なくとも1つの平面状の温度調節要素をさらに備え、
平面状の温度調節要素は、開口部を有する筐体の中に一体化され、
動作位置では、熱交換器本体の壁は、請求項1により、平面状の温度調節要素への良好な熱伝達を伴う接触を有する
装置である。
【0005】
下位クレームの主題である、本発明の有利な実施形態について以下で説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明による装置は、たとえば、温度調節されるべき流体が通過するカートリッジの形をとる熱交換器本体と、熱交換器本体の形状に適合した平面状の温度調節要素とから構成される。
【0007】
本発明の好ましい実施形態では、温度調節されるべき流体は、室温から体温へ、たとえば、20℃から37℃へ加熱される。この場合、平面状の温度調節要素は、表面加熱要素として構成される。
【0008】
本発明の代替の一実施形態では、温度調節されるべき流体は、たとえば20℃の室温から3℃~5℃へ冷却される。この場合、平面状の温度調節要素は、表面冷却要素として構成される。この代替実施形態については、以下でより詳細に説明する。
【0009】
熱交換器本体は、異なる幾何学的形状を有してもよい。同封する図に示すように、好ましい一実施形態は、平らな直方体の形状である。直方体の内部は、実質的に中空であり、灌注流体を受け入れることができる。直方体は、一方の場所に入口を、別の場所に出口を有する。入口および出口は、図2に示すように、直方体の面に配列されてもよい。入口の中に流体を供給することにより、熱交換器本体は、流体がさらにまた出口を通して出るまで、流体で満たされる。好ましくは、動作位置では、出口は、入口よりも高い高さに位置し、その結果、最初に含まれていた空気は、より簡単に流出することができる。あるいは、熱交換器本体は、円形、楕円形,六角形、八角形などのような他の幾何学的形状を有してもよい。
【0010】
熱交換器本体は、好ましくは、プラスチック(たとえば、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(polyethylene terephthalate-glycol、PETG)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、ポリエチレン(polyethylene、PE)またはこれらのプラスチック材料の組合せ)から作られる。プラスチック材料はまた、セラミック粉末で満たされてもよい。さらに、金属の、詳細には金属箔(たとえば、アルミニウム箔)の熱交換器本体を作成することが可能である。また、異なる材料から熱交換器本体の個々の構成要素を作成してもよい。少なくとも1つの熱交換器本体の壁を、良好な熱伝達を確実にするように作成する。この壁(熱伝導壁)の熱伝導係数を、少なくとも1W/(cmK)とすべきであり、好ましくは2.5W/(cmK)よりも大きくすべきである。
【0011】
「熱伝達係数α」は、次式
P=α・ΔA・ΔT
によれば、境界を横断する単位面積あたりの熱伝達(P=ΔQ/Δt)を記述する係数を意味する。
【0012】
このために、一般にすべての熱伝導材料が適している。好ましくは金属箔、詳細には好ましくはアルミニウム箔を使用する。あるいは、セラミック粉末が充填されたプラスチック材料を採用してもよい。有利には、熱伝達のために、熱交換器本体の最も広い表面を、たとえば、平べったい直方体の上面または底面を使用する。特殊な実施形態では、いくつかの表面を、たとえば直方体の熱交換器本体の上面および底面をこのように設計してもよい。
【0013】
本発明によれば、熱交換器本体は、2つの流路を備える。すなわち、熱交換器本体の大部分は、加熱要素により加熱されるが、一方では同時に、流体が加熱されることなく入口から出口へ直接流れることができる「バイパス」の可能性が提供される。バイパスは、たとえば図2に示すように、熱交換器本体内部の熱交換器本体の最下部に対応して形作ることにより形成されてもよい。あるいは、バイパスは、たとえば、熱交換器本体に平行に伸長するホースにより、熱交換器本体の外側に形成されてもよい。この実施形態のいずれの場合も、流体の流れを主チャンバの中に、またはバイパスの中に導くアクチュエータ、たとえば弁(たとえば、ピンチ弁の形をとる)が提供される。好ましくは、バイパスは、以下で記述する、表面が平面状の温度調節要素と接触のない区間を通って、熱交換器本体の内部に伸長する(図2を参照のこと)。この実施形態により、詳細には流れが非常に不規則な用途で、灌注流体の出口温度を迅速かつ効果的に制御することができるようになる。この事例では、たとえば流れを一時的に遮断することに起因して、チャンバ内の流体温度があまりにも高くなる場合、出口温度を一定に保つために、具体的に、バイパスを通して非加熱灌注流体を加えることができる。さらに、このことを使用して、出口温度の十分な制御速度を達成することができ、これにより、たとえ流量が激しく変動しても、安全な温度調整が確実になる。
【0014】
熱交換器本体およびバイパスを通る流体の流れを制御することができるようにするには、熱交換器本体の一部は、加熱システムの筐体の中に一体化されたアクチュエータを用いて(ピンチ弁の方向の)熱交換器本体およびバイパスを通る流体の流れを制御するために、弾性体材料(たとえば、シリコン)から作られる。使用する壁の材料に応じて、(蛇腹の方向の)厚さの局所的低減または材料の整形は、可逆的変形能という意味で必要とされる可撓性を確実にするのにすでに十分である場合がある。好ましくは、アクチュエータは、休止位置で不全または障害の場合、流体がバイパスを通過し、かつ加熱経路を通過しないように配列される。このようにして、熱すぎる状態で流体が患者に決して供給されないことを確実にする。
【0015】
上記でさらに記述する熱交換器本体は、本発明によれば、それに応じて採用された温度調節要素、たとえば、加熱要素と一緒に使用される。加熱要素は、熱交換器本体の少なくとも1つの壁を、その表面の全面にわたって加熱することができるように形作られる。平面状の加熱箔の形をとるそのような加熱要素は、市販されており、ほとんどの場合、たとえばシリコンまたはポリイミド(商品名カプトン(Kapton)(登録商標))の絶縁プラスチックフィルムに埋め込まれた、平らに配列された1層のオーム加熱コイルから構成される。
【0016】
あるいは、加熱要素はまた、セラミック粉末(電気絶縁性がある)の中に圧縮された針金の形状をした加熱導体を伴う加熱表面として構成されてもよく、セラミック粉末は、さらにまた金属の外側スリーブ/筐体で取り囲まれる。
【0017】
加熱要素、たとえば加熱箔にしっかりと固定して熱接触した状態で、加熱箔の温度を制御することができるように、1つまたはいくつかの場所に温度変換装置を配列してもよい。
【0018】
特殊な一実施形態として、この加熱箔はまた、この加熱箔の温度が上昇したとき、電気抵抗の増大をこうむるPTC要素から作られてもよい。このようにして、ある種の状況の下で、温度が上昇したときに抵抗が増大することにより加熱電力低下を引き起こすので、温度制御が必要とならない場合がある。そのようなPTC要素および対応する制御は、最新技術であり、本明細書でより詳細に説明する必要はない。
【0019】
当然、加熱要素は、実質的に任意の外部形状を有してもよい筐体の内部に配置される。本発明による使用法で極めて重要なのは、たとえばスロットの形をとる、前述の熱交換器本体を受け入れるための、筐体内の開口部である。開口部は当然、熱交換器本体を開口部の中に導入することができるような幾何形状で設計される。開口部を通してアクセスできる空洞の側には、たとえば下側には、たとえば加熱箔の形をとる平面状の加熱要素が配置される。上述の熱交換器本体は、熱伝達を確実にする側が、加熱要素と接触するようになるような方法で、開口部の中に導入されなければならない。加熱電力を調整することにより、灌注流体の温度を制御することができる。
【0020】
明らかになったように、熱交換器本体は、好ましくは下から加熱される。熱対流のために、熱交換器本体で流体の熱的混合が行われる。流体が冷却される、以下でさらに記述する動作モードの場合、冷却要素は、好ましくは最上部に配列される。原理上は、熱交換器本体の2つの壁、たとえば底面および上面を熱伝導材料から形成してもよいため、加熱または冷却もまた2つの側から遂行してもよい。
【0021】
本発明の別の実施形態では、筐体内に加熱表面だけではなく冷却表面も提供することができる。そのため、装置の設定に応じて、加熱または冷却を交互に行うことができる。
【0022】
好ましくは、前記導入開口部の幾何学的形状は、熱交換器本体の位置ずれをできる限り排除するように設計される。このために、補完する記号または色分けが役立つ場合がある。
【0023】
本発明による装置を以下のように動作させることができる。
【0024】
医療上の灌注流体を伴う貯蔵容器から熱交換器本体の入口へホースが伸長する。別のホースが、医療用ポンプ、たとえばローラーポンプの入口に熱交換器本体の出口を連結する。ポンプの出口から内視鏡などの医療用器具へ、別のホースが誘導される。あるいは、本発明による機器はまた、ポンプなしに純粋な重力供給で動作させられてもよく、この場合、出口のホースは、直接に熱交換器本体から器具へ伸長し、本発明による他の特徴はすべて、変わらずに残る。熱交換器本体は、加熱機器の中に導入される。本発明による加熱機器により所望の温度(たとえば、患者の体温)まで事前に加熱された流体は、灌注ポンプを用いて患者の身体の中に供給される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による熱交換器本体(1)の基本形を上面図(上部)および透視図(下部)で示す。熱交換器の筐体は、実質的に直方体であり、2つの連結部をそれぞれ入口(2)および出口(3)として示している。
図2】バイパス(11)を伴う熱交換器本体(1)の特殊な一実施形態を示す。バイパスは、本体内部で分離壁(7)により体積の残りの部分から分離される。熱交換器本体は、少なくとも2つの場所で、それぞれ主要部分またはバイパスを通る流れをピンチ弁の手法で制御する変形可能な要素(8、9)を備える。それに加えて、入口の温度(6)または出口の温度(10)をそれぞれ測定する温度センサが提供される。さらに、ベンチュリタイプの流量計が示されている。このために、入口に狭窄部(4)が形成される。狭窄部内または狭窄部の背後の圧力センサ(5)により圧力差を計測することにより、流体の流れを計算できるようになる。
図3】本発明による装置の使用法を概略的に示す。平面状の加熱機器を伴う筐体内に配置された熱交換器本体の中へ、ホースを用いて流体貯蔵器が供給される。熱交換器本体の出口で、ローラーポンプにつながる別のホースが連結される。ローラーポンプの出口に、患者につながる器具が存在する。図は、本発明による装置が、簡単な手法で既存の医療用設備の補完物として適していることを明確に示している。
図4】上面が鋸歯状タイプの構成の(上部)、または底面が波形の(下部)熱交換器本体の横断面図を示す。そのような熱交換器本体を通る流れは、流体の乱れを引き起こし、その結果、よりよい熱伝達になる。
図5】それぞれ台形の形状(上部)、または一体に形成されたガイドレール(14)(下部)を伴う熱交換器本体の横断面図を示す。筐体内に相補的に設計された開口部と組み合わせて、不完全な挿入を確実に回避することができる。
図6】円い(上部)または六角形(下部)などの異なる幾何形状を有する熱交換器本体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、本発明の好ましい実施形態について記述する。
【0027】
熱交換器本体は、好ましくは使い捨ての物品として構成され、したがって、1回使用した後に捨てられる。熱交換器本体は、好ましくは、深絞りにより作り出されるプラスチック(たとえば、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、またはこれらのプラスチック材料の組合せ)から構成される。あるいは当然のことながら、射出成形または3D印刷などの他の技法を考慮してもよい。このようにして、熱交換器本体の最上部側を、接着された、または溶接されたアルミニウム箔(厚さが、たとえば20μm~90μm、好ましくは60μm)で単にコートしてもよい。好ましい一実施形態では、アルミニウム箔は、熱交換器本体の内側を形成する側をプラスチック層(たとえば、1μm~5μm、好ましくは2μmのポリプロピレン)でコートする。このようにして、必要とされる熱伝達を損なうことなく、アルミニウムと流体が直接接触するのを防止する。
【0028】
必要とされる熱電力を伝達することができるように、熱交換器本体の最下部表面領域は、一般に100cm~1,600cmの間(たとえば、10cm×10cm~40cm×40cm)である。
【0029】
ホース連結部、たとえば、射出成形部分、または他のプラスチックで形作られた部分は、好ましくは熱交換器本体の最下部部分と同じプラスチック材料から作られる。ホース連結部は、それに対応して用意された開口部の中にそれぞれ挿入され、熱交換器本体に溶接または接着される。あるいは、ホース連結部はまた、深絞り、押出成形、または3D印刷により直接に形成されてもよい。
【0030】
熱交換器本体は、好ましくは平らであり、高さは5mm~20mmである。筐体内の開口部は、そこに適合した手法で構成される。好ましくは、筐体開口部は、やけどによる事故を回避するために、操作する職員が開口部の中に指を挿入することができないような寸法に作られる。
【0031】
さらに、熱交換器本体、および筐体内の開口部に対応して形作ることにより、たとえば、直方体形状を少し台形にずらし、それに対応して筐体内の開口部を形作ることにより(図6の上部)、または熱交換器本体の側にガイドレールを追加し、それに対応するガイドスロットを筐体内に有することにより(図6の下部)、筐体の中に熱交換器本体を適切な手法で置くことを確実にすることができる。代わりにまたは相補的に、熱交換器本体および筐体上に提供された記号および色分けは、不完全な操作を排除することができる。
【0032】
さらに好ましくは、温度調節装置は、灌注流体の出口温度を調べるための温度センサを含む。このために、たとえば、温度センサは、熱交換器本体の出口の中に一体化されてもよい。
【0033】
明らかになったように、熱伝達のためにアルミニウム箔を使用するとき、この箔の熱伝導はとても良好なので、熱交換器本体の出口近くに位置決めされた接触式温度計による温度測定は、温度を十分正確に測定するのに足りる。このようにして、温度センサは、筐体の構成要素とすることができ、再利用することができる。
【0034】
記述した本発明の一改善形態では、筐体は、陰圧のポンプを含む。熱が移行する側に陰圧を生成することにより、温度調節要素の上に熱交換器本体を押しつけることができるようになり、その結果、熱伝達は改善される。ポンプの1つまたは複数の入口連結器は、加熱要素の領域内に配置される。陰圧を容易に維持することができるように、平面状の加熱要素の周囲に密封材料(たとえば、外周密封コードの形をとるシリコンシール)を提供することが推奨される。本発明のこの実施形態では、熱交換器本体と、加熱表面または冷却表面との間の圧力は、0.05bar~0.3bar(0.7psi~4.4psi)であることが意図され、ほぼ0.1bar(1.5psi)であることが好ましい。この圧力があれば、熱交換器本体の熱伝導壁(たとえば、アルミニウム箔)は、加熱表面または冷却表面に1μm未満まで引き寄せられる。同時に、0.05bar~0.3bar(0.7psi~4.4psi)の圧力があれば、優れた熱伝達が得られる。
【0035】
本発明の別の実施形態では、熱交換器の内壁の1つまたはいくつかの内側は、たとえば、内面が波形の、鋸歯状の、または杉綾模様の構成の形をとる構造物を備える(図4)。そのような構造物は、通過する流体の乱れに寄与し、その結果、熱交換器本体の流れおよび温度の熱的均質化に寄与することが明らかになっている。熱伝達を伴う壁に対向する内壁の構造物が、特に有利であることが証明されている。
【0036】
熱交換器本体のサイズ、および熱交換器材料の側の弾力性に応じて、内側に(たとえば、円筒形状の)支持要素をさらにまた配列して、熱交換器本体の崩壊を防止してもよい。熱交換器本体の壁はまた、補剛機器(たとえば、リブ)を備えてもよい。
【0037】
加熱機器の平面状の加熱要素が、患者の体温よりも少し高い最大温度(たとえば、39℃)を達成することが推奨される。安全上の理由から、平面状の加熱要素の温度を、対応する温度センサがモニタする。さらに、熱交換器本体から得られる灌注流体の出口温度を、温度センサがモニタする。温度センサは、上述のように、熱交換器本体の構成要素であってもよい。コストの理由から、たとえば、アルミニウム箔の表面の温度を測定する接触センサの形をとる温度センサを、加熱機器の中に一体化することが推奨される。
【0038】
温度調節制御を最適化するために、熱交換器本体を通る流れを測定することが有利であることが明らかになっている。本発明による装置をポンプ、たとえば医療用ローラーポンプと組み合わせて動作させるとき、一般にポンプの流量を決定することで十分である。他の方法で流量が決定されず、利用できないとき、本発明による装置はまた、同時流量測定の準備ができていてもよい。流量測定は、たとえば、ベンチュリの原理に従って行われてもよい。このために、たとえば流体が入る、または出る領域で、流れの横断面を狭めなければならない。(狭窄部内または狭窄部の背後で)圧力差を測定することにより、流れを決定することができる。圧力を測定するために、対応するセンサが必要である。圧力センサを、熱交換器本体の中に、すなわち熱交換器本体のそれぞれ入口または出口の中に直接一体化してもよい。あるいは、可撓性のある膜を測定ポイントに配列してもよく、筐体内の対応する圧力変換器により、圧力測定のために、可撓性のある膜の反りを使用する。
【0039】
あるいは、さらにまた流量を熱的に測定してもよい。このために、熱交換器本体の適切な場所に、たとえば、それぞれ流体の入口または出口の領域に、温度センサを配置しなければならない。温度センサのすぐ近くに、加熱要素、たとえば抵抗加熱装置を提供する必要がある。加熱要素は、決定される加熱電力を用いて連続的に、または不連続的に加熱してもよい。達成される温度は、加熱要素の環境で増大し、その温度は温度センサにより測定され、流量に関する尺度になる。流量が高ければ、顕著な温度増大はまったく得られず、一方では、流量が低ければ、温度計により温度増大が測定される。この種の流量測定の利点は、加熱要素だけではなく温度センサも、熱交換器本体の構成要素である必要がなく、熱交換器本体の表面と接触することにより測定を開始することができることである。このようにして、最も簡単な方法で、したがって、最も経済的な方法で熱交換器本体を作り出すことができる。
【0040】
本発明による装置は、室温(20℃)から38℃まで、水性の灌注流体を最大800ml/分まで加熱することができる。
【0041】
本発明による装置は、従来技術に対して一連の利点を有する。第一に、既存の医療用設備の中に本発明による装置を簡単に一体化することができる。装置は、通常の方法でさらに動作させることができる既存のポンプシステム(たとえば、ローラーポンプ)の補完物として使用することができる。あるいは、本発明による装置を「スタンドアロンの」解決手段として使用してもよい。この場合、流体は、より高い高さにある貯蔵容器から、単に重力(「重力供給」)により熱交換器本体を通って医療用器具、たとえば内視鏡まで流れる。
【0042】
使い捨てできる熱交換器本体を使用することにより、必要とされる安全性、詳細には無菌性を簡単な方法で確実にすることができる。熱交換器本体の製造コストは、比較的低い。
【0043】
さらに、本発明による装置により、さらにまた、ただちに消費すべき灌注流体の部分だけが加熱される。したがって、本発明による装置は、たとえば、溶液の安定性に悪い影響を与えることになる、灌注流体貯蔵容器全体を加熱しなければならないことを回避する。
【0044】
詳細には、バイパスを一体化した実施形態により、流体の流れが大きく変動していても、流体温度を非常に正確に制御することもできるようになる。
【0045】
上記ですでに述べたように、本発明による装置はまた、貫流型冷却のために使用してもよい。そのような冷却システムは、たとえば、膨化、出血、および患者による痛みの体験を最小にするために、関節鏡検査で使用するのに有利である。このために、灌注流体を氷点の数℃上(たとえば、1℃~10℃、好ましくは2℃~5℃)まで冷却してもよい。本発明のこの実施形態では、平面状の加熱要素の代わりに、平面状の冷却要素を使用する。この冷却要素は、平面状の圧縮器駆動型冷却器であってもよい。あるいは、冷却するために、さらにまた冷却剤を使用してもよい。本発明の別の実施形態では、さらにまたペルチェ素子を使用してもよい。そのようなペルチェ素子を用いる実施形態では、流れの方向を逆にする(極を変える)ことにより、冷却だけではなく加熱も達成することができる。
【0046】
さらに上記ですでに述べたように、熱交換器本体の冷却は、好ましくは上から行われる。当然のことながら、複数の側、たとえば、直方体の熱交換器本体の底面および上面を冷却することもまた可能である。上記で説明した本発明のさらに代わりの実施形態を、たとえば温度測定および/または流量測定のような、冷却を伴う実施形態で、完全に類似する手法で使用してもよい。必要に応じて、室温で灌注流体を混合するために、類似する手法で「バイパス」を実装することができる。
【0047】
本発明の別の考えうる実施形態では、熱交換器本体を、2つの異なる側(たとえば、底面および上面)からさらにまた加熱および冷却してもよい。たとえば、一方の側(たとえば、最下部側)で加熱要素を、別の側(たとえば、最上部側)で冷却要素を、筐体に提供することが想定可能である。2つの熱伝導壁を伴う熱交換器本体を使用するとき、動作モードに応じて、冷却または加熱を遂行することができる。ある種の状況では、流体温度をより迅速に、効果的に、および/または正確に制御することができるように、冷却および加熱の能力を伴う本発明による機器を動作させることが適している場合さえある。
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