(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】ゲルマニウム-68供給源物質およびこのような供給源物質を含む校正デバイス
(51)【国際特許分類】
C01G 17/00 20060101AFI20220131BHJP
G01T 1/161 20060101ALI20220131BHJP
C01B 39/00 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
C01G17/00
G01T1/161 A
C01B39/00
(21)【出願番号】P 2019509460
(86)(22)【出願日】2017-08-14
(86)【国際出願番号】 US2017046696
(87)【国際公開番号】W WO2018035009
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-06-23
(32)【優先日】2016-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516236702
【氏名又は名称】キュリウム ユーエス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】バルボサ, ルイス アントニオ エム.エム.
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0194677(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101593567(CN,A)
【文献】The Journal of Physical Chemistry,1993年,Vol. 97, No. 21,pp. 5678-5684
【文献】Journal of the American Chemical Society,1986年,Vol. 108,pp. 30-33
【文献】Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry,2011年,Vol. 288,pp. 303-306
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 39/54
C01G 17/00 - 17/04
G01T 1/161- 1/166
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元多面体結晶構造を有するマトリックス物質を含む、固体ゲルマニウム-68供給源物質であって、前記マトリックス物質が、
中心原子Tおよび酸素を含む第1の四面体であり、前記中心原子は、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよび安定ゲルマニウムからなる群から選択され、前記第1の四面体は、式TO
4を有している、第1の四面体、ならびに
ゲルマニウム-68および酸素を含み、式
68GeO
4を有するゲルマニウム-68四面体であ
る、第2の四面体
を含み、前記第1の四面体および
第2の四面体は、三次元多面体結晶構造の一部である
、
固体ゲルマニウム-68供給源物質。
【請求項2】
前記第1の四面体が、式SiO
4を有するケイ素四面体であり、ゲルマニウム-68が、前記マトリックス物質中の複数の四面体の中心原子としてケイ素を同形置換している、請求項1に記載の固体ゲルマニウム-68供給源物質。
【請求項3】
前記マトリックス物質が、第3の四面体をさらに含み、前記第3の四面体が、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよび安定ゲルマニウムからなる群から選択される中心原子を含む、請求項1または請求項2に記載の固体ゲルマニウム-68供給源物質。
【請求項4】
前記第3の四面体が、アルミニウム四面体であり、前記アルミニウム四面体が、アルミニウムおよび酸素を含み、式AlO
4を有する、請求項3に記載の固体ゲルマニウム-68供給源物質。
【請求項5】
前記第3の四面体が、安定ゲルマニウム四面体であり、前記安定ゲルマニウム四面体が、安定ゲルマニウムおよび酸素を含み、式GeO
4を有する、請求項3に記載の固体ゲルマニウム-68供給源物質。
【請求項6】
前記安定ゲルマニウムが、前記マトリックス物質中の複数の四面体の中心原子としてケイ素を同形置換している、請求項5に記載の固体ゲルマニウム-68供給源物質。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の固体ゲルマニウム-68供給源物質を含む、放射線検出器を校正するための校正デバイス。
【請求項8】
校正デバイスハウジングをさらに含み、前記マトリックス物質が前記ハウジング内にある、請求項7に記載の校正デバイス。
【請求項9】
前記校正デバイスが、円筒形のファントムである、請求項7または請求項8に記載の校正デバイス。
【請求項10】
前記校正デバイスがロッドの形状をしている、請求項7または請求項8に記載の校正デバイス。
【請求項11】
放射線検出器を校正するための方法であって、
請求項7から10のいずれか一項に記載の校正デバイスを前記検出器の検出フィールドに配置するステップ、
前記放射線検出器を操作して、前記校正デバイスによって放出された放射線を検出するステップ、ならびに
検出された前記放射線と前記校正デバイスによって放出された放射線の予想された量とを比較するステップ
を含む、方法。
【請求項12】
前記検出された放射線と予想された放射線との差が、前記放射線検出器によって生成されたデータを正規化するのに使用される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記検出された放射線と予想された放射線との差が、前記放射線検出器を再校正するのに使用される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
その中にゲルマニウム-68が同形置換されているマトリックス物質を含む、ゲルマニウム-68供給源物質を生成するための方法であって、
結晶化出発混合物を形成するステップであり、前記出発混合物は、第1の中心原子の供給源および第2の中心原子の供給源を有し、前記第1の中心原子は、ゲルマニウム-68であり、前記第2の中心原子は、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよび安定ゲルマニウムからなる群から選択される、ステップ、ならびに
前記出発混合物を加熱して、前記物質を結晶化させ、結晶化構造中にゲルマニウム-68四面体および前記第2の中心原子の四面体を形成させるステップ
を含む、方法。
【請求項15】
前記第2の中心原子が、ケイ素である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記結晶化出発混合物が、アルミニウム、ジルコニウムおよび安定ゲルマニウムからなる群から選択される第3の中心原子をさらに含み、前記結晶化構造が、前記第3の中心原子の四面体を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記出発混合物が、少なくとも
100℃まで
加熱される、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記マトリックス物質を、水熱条件下で結晶化させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の中心原子が、ケイ素であり、前記出発混合物中のゲルマニウム-68のケイ素に対するモル比が、少なくとも
1:1000
である、請求項14から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ゲルマニウム-68の供給源としてハロゲン化ゲルマニウム-68を前記出発混合物に加える、請求項14から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ゲルマニウム-68の供給源として
68GeO
2を前記出発混合物に加える、請求項14から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の中心原子が、ケイ素であり、ケイ素の供給源としてシリカを前記出発混合物に加える、請求項14から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記出発混合物が、ゲルである、請求項14から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ゲルが、シリカおよび式
xGeO
2ySiO
2
に基づく安定ゲルマニアを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
yが(1-x)に等しく、xが0.8、0.4または0.165である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記マトリックス物質が三次元多面体結晶構造を有する、請求項14から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
ゲルマニウム-68を含む校正デバイスを製造するための方法であって、
請求項14から26のいずれか一項に記載の方法によってゲルマニウム-68供給源物質を生成するステップ、および
前記ゲルマニウム-68供給源物質を校正デバイスに形成するステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2016年8月16日に出願された米国仮特許出願番号第62/375,641号に基づく優先権を主張しており、その全体の内容は、参考として本明細書によって援用される。
【0002】
発明の分野
本開示の分野は、固体(solid-state)ゲルマニウム-68供給源物質および放射線検出器を校正するためにこうした供給源物質を含む校正デバイスに関する。校正供給源物質は、結晶質であってよく、ゲルマニウム-68は、結晶質マトリックス物質の他の中心原子を同形置換していてもよい。
【背景技術】
【0003】
背景
陽電子放出断層撮影(PET)は、ヒトおよび動物における生化学的、分子的、および/または病態生理学的プロセスを追跡するために陽電子放出放射性トレーサーを使用するin vivo撮像法である。PETシステムでは、陽電子放出同位体は、人体の外科的診査なしで研究中の疾患の正確な位置および病理学的プロセスを特定するためのビーコンとして働く。これらの非侵襲的な撮像法を用いる場合、疾患の診断は、探索的手術などのより伝統的で侵襲的な手法とは対照的に、患者にとってより快適であり得る。
【0004】
PET撮像中、PETガンマ線検出器(すなわち、カメラまたはスキャナー)は、放射性トレーサーによって放出される対のガンマ線を検出する。PET検出器は、機器の機能および精度を保証するために定期的に校正される。校正は、既知の量の放射線を放出する放射性物質の供給源を含む校正デバイス(しばしば校正源と呼ばれる)の撮像を伴うことがある。PETカメラまたはスキャナーがデバイスを撮像し、結果は、校正デバイス内の放射性物質の量に基づいて、かつ/または測定された活性に基づいて、デバイスが放出すると予想された放射線の量と比較される。
【0005】
校正デバイスの一群は、ゲルマニウム(geramanium)-68(「Ge-68」)の崩壊に基づいている。Ge-68は、半滅期が約271日であり、電子捕獲によってGa-68に崩壊し、重要な光子放出が全くない。これらの特性は、ゲルマニウム-68をPETスキャナーおよびカメラを校正するための理想的な物質にする。プラスチックマトリックスは、しばしば種々の校正源を保持するために使用されるが、この手法は、しばしば使用中に浸出に苦しみ、しばしば構造的に弱い。マトリックスとして使用された樹脂は、劣化し、この物質内部にガスを発生させる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
放射線スキャナーおよびカメラを校正するための、ならびにこのような物質を組み込んだ校正デバイスのための、改善されたゲルマニウム-68供給源物質が必要とされている。
【0007】
この項は、以下に記載および/または特許請求されている本開示の種々の態様に関連し得る当技術分野の種々の態様を読者に紹介するものである。この議論は、本開示の種々の態様のより良い理解を促進するために読者に背景情報を提供するのに役立つと考えられる。したがって、これらの記述は、この観点から読まれるべきであり、先行技術の承認として読まれるべきではないことを理解されたい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
要旨
本開示の一態様は、固体ゲルマニウム-68供給源物質を対象とする。ゲルマニウム-68供給源物質は、三次元多面体結晶構造を有するマトリックス物質を含む。マトリックス物質は、中心原子Tおよび酸素を含み、式TO4を有する第1の四面体を含む。中心原子は、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよび安定ゲルマニウムからなる群から選択される。マトリックス物質は、第2の四面体を含む。第2の四面体は、ゲルマニウム-68および酸素を含み、式68GeO4を有するゲルマニウム-68四面体である。第1の四面体およびゲルマニウム-68四面体は、三次元多面体結晶構造の一部である。
【0009】
本開示の別の態様は、ゲルマニウム-68供給源物質を生成するための方法を対象とする。供給源物質は、その中にゲルマニウム(gemanium)-68が同形置換されているマトリックス物質を含む。方法は、結晶化出発混合物を形成するステップを含む。出発混合物は、第1の中心原子の供給源および第2の中心原子の供給源を有する。第1の中心原子は、ゲルマニウム-68であり、第2の中心原子は、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよび安定ゲルマニウムからなる群から選択される。出発混合物を加熱して物質を結晶化させ、結晶化構造中にゲルマニウム-68四面体および第2の中心原子の四面体を形成させる。
【0010】
本開示の上述の態様に関して指摘された特徴の種々の改良が存在する。さらなる特徴も同様に本開示の上述の態様に組み込まれていてもよい。これらの改良および追加の特徴は、個々にまたは任意の組合せで存在していてもよい。例えば、本開示の例示された実施形態のいずれかに関して以下に論ずる種々の特徴は、本開示の上記の態様のいずれかに、単独または任意の組合せで組み込まれていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、ゲルマニウムが、ケイ素中心原子を同形置換したゼオライト物質の概略図である。
【0012】
【
図2】
図2は、ゲルマニウム-68が安定ゲルマニウムと同形置換された、8T環内に主空洞を有する斜方沸石(chabazite)ゼオライト構造の概略図である。
【0013】
【
図3】
図3は、円筒形の校正デバイスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本開示の手段は、放射線検出器を校正するため、およびそのような検出器を校正するのに使用される校正デバイスのためのゲルマニウム-68供給源物質に関する。供給源物質は、その中にゲルマニウム-68が組み込まれている結晶化マトリックス物質を含んでいてもよい。ゲルマニウム-68は、結晶化マトリックス物質中の1種または複数の中心原子を同形置換している。
【0015】
本開示の実施形態のゲルマニウム(geramnium)-68物質は、四面体配位に基づく構造を形成する任意の物質(本明細書では「マトリックス物質」と呼んでもよい)であってよい。一般に、マトリックス物質は、異なる2種類の四面体中心原子を含み、そのうちの1つはゲルマニウム-68である。各四面体原子は、中心原子および代表的には酸素で満たされているいくつか(代表的には4つ)の配位サイトを有する。各四面体構造は、一般に式TO4を有しており、ここで、Tはこの構造の中心原子である。四面体は、一緒になって多面体の三次元結晶構造を形成する。このような三次元構造は、組織化された構造内に種々の空洞またはチャネルを含み得る。
【0016】
本開示の実施形態のマトリックス物質中の四面体構造の中心原子Tは、ケイ素、アルミニウム、ゲルマニウムおよびジルコニウム(例えば、SiO4、AlO4、GeO4およびZrO4)から選択することができる。一部の実施形態では、マトリックス物質は、ゲルマニウム-68がマトリックス物質内のいくつかの四面体の中心原子としてケイ素を同形置換しているケイ素四面体(SiO4)を含む。この点に関して、本明細書に記載された式TO4は四面体の配位(共有酸素を含む)を表し、物質自体は異なる化学式を有しているかもしれないことに留意されたい。例えば、物質自体は、シリカ(SiO2)、アルミナ(AlO2)、ゲルマニア(GeO2)、ジルコニア(ZrO2)および物質内に四面体配位(TO4)があるこれらの物質の組合せであってもよい。
【0017】
構造は、ゲルマニウム-68がゼオライト物質内の少なくともいくつかのケイ素原子を同形置換したゼオライト物質であってもよい。ゼオライト物質は一般に、ゼオライト物質の多面体三次元結晶構造を形成するために連結している異なる2種類またはそれよりも多い種類の四面体を含む。本明細書では、「ゼオライト」は、第1の種類の中心原子(通常ケイ素)、第2の種類の中心原子および酸素の任意のマトリックスを意味する。使用され得る種々の中心原子は、ケイ素、アルミニウム、ゲルマニウムおよびジルコニウムを含む。例えば、ゼオライトは、ケイ素とアルミニウムのマトリックス(シリコアルミネート)またはケイ素とゲルマニウムのマトリックス(シリコゲルマネート)またはさらにはジルコニウムとゲルマニウム(ジルコノゲルマネート)であってよい。
【0018】
ゼオライト物質は、物質内の四面体構造の種々の中心原子の同形置換物としてゲルマニウム-68を含むように修飾されている天然ゼオライトであってもよい。より一般的には、ゼオライトは、物質を生成している間に同形的に組み込まれたゲルマニウム-68原子を有する合成ゼオライトである。一部の実施形態では、ゼオライトは、ゲルマニウム-68が四面体構造中のいくつかのケイ素および/またはアルミニウム原子を置換している、ケイ素およびアルミニウム四面体の両方を含有する(すなわち、シリコアルミネートである)。一部の実施形態では、ゼオライトは、同形のゲルマニウム-68を含有するペンタシル-ゼオライト(ZSM-5など)である。一部の実施形態では、ゼオライト物質は、安定ゲルマニウム四面体とゲルマニウム-68がいくつかのゲルマニウム原子および/またはアルミニウム原子を置換しているアルミニウム四面体とを含有する。
【0019】
このようなゼオライト構造では、ゼオライトは通常、3つの四面体構造-ケイ素四面体、ゲルマニウム-68四面体ならびに、アルミニウム、ジルコニウムおよび安定ゲルマニウムからなる群から選択される第3の四面体を含む。一部の実施形態では、第3の中心原子は、アルミニウム四面体であり、アルミニウム四面体は、アルミニウムおよび酸素を含み、構造AlO4を有する。他の実施形態では、第3の四面体は、安定ゲルマニウム四面体であり、安定ゲルマニウム四面体は、安定ゲルマニウムおよび酸素を含み、式GeO4を有する。
【0020】
マトリックス物質中のゲルマニウム-68の量は、ゲルマニウム-68を含む商用の校正源と一致し得る。一部の実施形態では、微結晶物質の形成は、特定の活性範囲を有する供給源物質を形成するように制御されている。
【0021】
ゲルマニウム-68に加えて、ゼオライトマトリックス物質は、四面体構造(
図1)の中心原子のいくつかに同形的に組み込まれている非活性(すなわち、安定)なゲルマニウム(例えば、ゲルマニウム-74)含有していてもよい。ゼオライト中の非活性ゲルマニウムのゲルマニウム-68に対するモル比は、所望の活性を有する校正源をもたらすように制御され得る。
【0022】
ゲルマニウム-68を組み込むマトリックス物質は、マトリックスが結晶化される出発混合物中にゲルマニウム-68を含めることによって得ることができる。ゲルマニウム-68を含めることにより、ゲルマニウム-68は、構造の種々の四面体中心原子(例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムまたは安定ゲルマニウム)を同形置換する。結晶化出発混合物は、第1の中心原子としてのゲルマニウム-68の供給源および第2の中心原子の供給源を含み得る。第2の中心原子は、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよび安定ゲルマニウムからなる群から選択され得る。
【0023】
一部の特定の実施形態では、ゲルマニウム-68は、構造を組み立てるために使用されている安定ゲルマニウムを置換する。安定ゲルマニウムを組み込んだゼオライト物質は、例えば、Kosslickら、「Synthesis and Characterization of Ge-ZSM-5 Zeolites」、J. Phys. Chem.1993年、97巻(21号)、5678~5684頁に記載されているような公知の方法によって調製することができ、これは、全ての関連および一貫した目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
一部の他の実施形態では、ゲルマニウム-68は、構造中のある量のケイ素(例えば、約30%までのケイ素原子)を置換する。出発混合物中のゲルマニウム-68のケイ素に対するモル比は、所望の活性を達成するように選択されてもよく、一部の実施形態におけるように、少なくとも約1:1000であってもよく、あるいは、他の実施形態におけるように、少なくとも約1:1000、少なくとも約1:100、少なくとも約1:50、少なくとも約1:20、少なくとも約1:10または少なくとも約1:5であってもよい。
【0025】
ゼオライトなどのマトリックス物質は、基礎物質の混合体またはゲルを形成し、結晶が形成するまで結晶化条件を維持することによって調製することができる。結晶が形成し始めると、四面体は、酸素原子を共有することによって三次元ネットワークを形成する。
【0026】
一部の実施形態では、酸化ゲルマニウム-68(68GeO2)と1種または複数の他の酸化物の水性混合物を調製し(例えば、シリカ、アルミナおよび/または安定ゲルマニア)、加熱して結晶を形成する。ゲルマニアの使用に代わる方法として、塩化ゲルマニウム(68GeCl4)などのハロゲン化ゲルマニウムをゼオライト形成混合物に加えることができる。適切な結晶化条件は、水熱条件下で加熱することを含んでもよい。例えば、結晶化出発混合物またはゲルは、少なくとも約100℃、またはさらには少なくとも約150℃(例えば、約100℃~約200℃)まで加熱することができる。過熱すると、出発混合物は結晶化し、結晶化構造中に第1の中心原子の四面体およびゲルマニウム-68四面体を形成する。
【0027】
マトリックス物質(例えば、ゼオライト物質)を形成するための適切な方法は、三次元構造の形成を助ける有機または無機剤を含む種々の構造指向剤(SDA)の使用を含み得る。例示的なSDAは、無機カチオン、ホスファゼン、第四級アンモニウム化合物(例えば、ハロゲン化物および水酸化物)、イミダゾリウム化合物ならびに環状および直鎖状エーテルを含む。種結晶添加法も、結晶化および/または構造形成を促進するために使用することができる。種結晶添加法は、マトリックス物質の形成のために結晶成長表面として作用する所望の構造の種結晶の使用を伴ってもよい。
【0028】
結晶化後、ゼオライト結晶は濾過または蒸発によってゲルの液体部分から分離することができる。結晶を洗浄(例えば、水を用いて)して、残留液および微細結晶を除去することができる。一部の実施形態では、結晶質物質をか焼する。
【0029】
一部の実施形態では、出発混合物は、式(1)を有するゲルであり、
xGeO2ySiO2 (1)、
(x,y)は、(0.8,0.2)、(0.4,0.6)または(0.165,0.835)である。
【0030】
一部の実施形態では、第2の中心原子はケイ素である。あるいはまたはさらには、出発混合物は、第3の中心原子の供給源を含んでいてもよい(ゲルマニウム-68も含むゼオライト構造のように)。第2の中心原子がケイ素の場合、第3は、アルミニウム、ジルコニウムおよび安定ゲルマニウムからなる群から選択され得る。
【0031】
一部の実施形態では、出発物質(staring material)および得られた結晶化された物質の安定ゲルマニウムのゲルマニウム-68に対するモル比は、校正デバイスの活性を調整するために制御される。一般に、安定ゲルマニウムのゲルマニウム-68に対する比を下げると、より活性な校正デバイスが得られ、逆も同様である。
【0032】
得られたゲルマニウム-68ゼオライト骨格は、例えば、O’Keeffeら、「Germanate Zeolites: Contrasting the Behavior of Germanate and Silicate Structures being from Cubic T
8O
20 Units (T = Ge or Si)」、Chem. Eur. J. 1999年、5巻(10号)に記載されている立方体構造などの任意の適切な形状を有していてもよく、これは、全ての関連および一貫した目的のために参照により本明細書に組み込まれている。ゼオライトA(リンデA型)などの他の骨格またはゼオライトY(リンデY型)などの6員環の鎖または斜方沸石、モルデン沸石またはフェリエ沸石も調製してもよい(Davisら、「Zeolite and Molecular Sieve Synthesis」、Chem. Mater. 1992年、4巻(4号)756~768頁およびDavis、「Zeolites from a Materials Chemistry Perspective」、Chem. Mater.、2014年、26巻(1号)、239~245頁参照、両方とも全ての関連および一貫した目的のために参照により本明細書に組み込まれている)。ゲルマニウム-68が非活性ゲルマニウム原子の一部を同形置換している例示的な斜方沸石ゼオライト構造を
図2に示している。
【0033】
形成後、ゲルマニウム-68置換マトリックス物質は、放射線検出器の校正に適した形状に形成される。マトリックス物質は、校正源内の粉末として使用することができ、粉末は適切な形状のハウジング内に含有されている。マトリックス物質は、種々の樹脂、結合剤、充填剤、セラミックス(例えば、アルミナ)および他の賦形剤と混合し、種々の形状(例えば、ペレット、ロッド、ブロックなど)に形成することができる。一部の実施形態および
図3に示すように、マトリックス物質は、PETスキャナーの校正に使用され得る円筒形のファントム10などのファントムに形成される。他の実施形態では、物質は、校正線源用などのロッドに形成される。
【0034】
校正デバイスは、ゲルマニウム-68置換マトリックス物質を保持するハウジングを含み得る。デバイスは、放射線検出器の校正中に取り外すことができる放射線遮蔽(例えば、鉛遮蔽)を含み得る。一部の実施形態では、ゲルマニウム-68置換マトリックス物質は、バイアル内に入れられる。
【0035】
ゲルマニウム-68校正デバイスは、既知量の放射線を放出する。これにより、放射線検出器によって測定された放射線が比較される標準として、デバイスが働くことが可能になる。校正され得る適切な放射線検出器は、PETスキャナーおよびカメラおよびガンマカメラおよび分光計を含む。
【0036】
検出器を校正するために、校正デバイスは、検出器の検出フィールドに配置されている。放射線検出器は、校正デバイスによって放出される放射線を検出するように操作される。検出された放射線は、校正デバイスによって放出されると予想された放射線の量と比較することができる。放射線検出器によって生成されたデータを正規化するために、差(または適切に校正されている場合は差がない)を使用することができる。例えば、2つまたはそれより多い検出器(例えば、様々な医療現場における様々なスキャナーまたはカメラ)によって生成されたデータは、スキャナー間の測定のばらつきを削減するために正規化することができる。一部の実施形態では、検出された放射線と予想される放射線(すなわち、標準)との間の測定された任意の差は、1つまたは複数の調整プロトコールによって検出器を再校正するために使用される。
【0037】
従来のゲルマニウム-68校正デバイスと比較して、本開示の実施形態の校正デバイスには、いくつかの利点がある。物質の骨格および結晶構造にゲルマニウム-68を同形的に含めることによって、ゲルマニウム-68は、物質から容易に浸出されない。マトリックス物質は、高い化学的、放射線的および機械的耐性を有する固体無機物質である。校正デバイスの活性は、結晶質マトリックス物質を調製するのに使用された出発物質中のゲルマニウム-68の非活性ゲルマニウムに対する比を調整することによって制御することができる。同形的に結合しているゲルマニウム(geramium)-68によって、ゲルマニウム-68結晶質マトリックス物質は、供給源の作製および供給源物質の廃棄中に容易に取り扱うことができる。
【0038】
本明細書では、用語「約」、「実質的に」、「本質的に」、および「およそ」は、寸法、濃度、温度または他の物理的もしくは化学的特性または特徴の範囲と併せて使用した場合、例えば、四捨五入、測定方法もしくは他の統計的ばらつきから得られるばらつきを含む、特性または特徴の範囲の上限および/または下限値内に存在し得るばらつきを包含することを意味する。
【0039】
本開示またはその実施形態(単数または複数)の要素を導入する場合、冠詞「a」、「an」、「the」および「前記(said)」は、1つまたは複数の要素があることを意味するものである。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」および「有する(having)」は、包含的であることを意図しており、列挙された要素以外に追加の要素があり得ることを意味している。特定の配向を示す用語(例えば、「上部」、「底部」、「側面」など)の使用は、説明の便宜上のものであって、説明される項目の任意の特定の配向を要求しない。
【0040】
種々の変更が、本開示の範囲から逸脱することなく、上記の構成および方法に行なうことができるので、上記の説明に含有され、添付の図面に示された全ての事項は、例示として解釈されるべきであり、限定的な意味で解釈されるべきではないことが意図される。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
三次元多面体結晶構造を有するマトリックス物質を含む、固体ゲルマニウム-68供給源物質であって、前記マトリックス物質が、
中心原子Tおよび酸素を含む第1の四面体であり、前記中心原子は、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよび安定ゲルマニウムからなる群から選択され、前記第1の四面体は、式TO
4
を有している、第1の四面体、ならびに
第2の四面体であり、前記第2の四面体は、ゲルマニウム-68および酸素を含み、式
68
GeO
4
を有するゲルマニウム-68四面体であり、前記第1の四面体およびゲルマニウム-68四面体は、三次元多面体結晶構造の一部である、第2の四面体
を含む、固体ゲルマニウム-68供給源物質。
(項目2)
前記第1の四面体が、式SiO
4
を有するケイ素四面体であり、ゲルマニウム-68が、前記マトリックス物質中の複数の四面体の中心原子としてケイ素を同形置換している、項目1に記載の固体ゲルマニウム-68供給源物質。
(項目3)
前記マトリックス物質が、第3の四面体をさらに含み、前記第3の四面体が、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよび安定ゲルマニウムからなる群から選択される中心原子を含む、項目1または項目2に記載の固体ゲルマニウム-68供給源物質。
(項目4)
前記第3の四面体が、アルミニウム四面体であり、前記アルミニウム四面体が、アルミニウムおよび酸素を含み、式AlO
4
を有する、項目3に記載の固体ゲルマニウム-68供給源物質。
(項目5)
前記第3の四面体が、安定ゲルマニウム四面体であり、前記安定ゲルマニウム四面体が、安定ゲルマニウムおよび酸素を含み、式GeO
4
を有する、項目3に記載の固体ゲルマニウム-68供給源物質。
(項目6)
前記安定ゲルマニウムが、前記マトリックス物質中の複数の四面体の中心原子としてケイ素を同形置換している、項目5に記載の固体ゲルマニウム-68供給源物質。
(項目7)
項目1から6のいずれか一項に記載の固体ゲルマニウム-68供給源物質を含む、放射線検出器を校正するための校正デバイス。
(項目8)
校正デバイスハウジングをさらに含み、前記マトリックス物質が前記ハウジング内にある、項目7に記載の校正デバイス。
(項目9)
前記校正デバイスが、円筒形のファントムである、項目7または項目8に記載の校正デバイス。
(項目10)
前記校正デバイスがロッドの形状をしている、項目7または項目8に記載の校正デバイス。
(項目11)
放射線検出器を校正するための方法であって、
項目7から10のいずれか一項に記載の校正デバイスを前記検出器の検出フィールドに配置するステップ、
前記放射線検出器を操作して、前記校正デバイスによって放出された放射線を検出するステップ、ならびに
検出された前記放射線と前記校正デバイスによって放出された放射線の予想された量とを比較するステップ
を含む、方法。
(項目12)
前記検出された放射線と予想された放射線との差が、前記放射線検出器によって生成されたデータを正規化するのに使用される、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記検出された放射線と予想された放射線との差が、前記放射線検出器を再校正するのに使用される、項目11に記載の方法。
(項目14)
その中にゲルマニウム-68が同形置換されているマトリックス物質を含む、ゲルマニウム-68供給源物質を生成するための方法であって、
結晶化出発混合物を形成するステップであり、前記出発混合物は、第1の中心原子の供給源および第2の中心原子の供給源を有し、前記第1の中心原子は、ゲルマニウム-68であり、前記第2の中心原子は、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウムおよび安定ゲルマニウムからなる群から選択される、ステップ、ならびに
前記出発混合物を加熱して、前記物質を結晶化させ、結晶化構造中にゲルマニウム-68四面体および前記第2の中心原子の四面体を形成させるステップ
を含む、方法。
(項目15)
前記第2の中心原子が、ケイ素である、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記結晶化出発混合物が、アルミニウム、ジルコニウムおよび安定ゲルマニウムからなる群から選択される第3の中心原子をさらに含み、前記結晶化構造が、前記第3の中心原子の四面体を含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記出発混合物が、少なくとも約100℃まで、または約100℃~約200℃に加熱される、項目14から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記マトリックス物質を、水熱条件下で結晶化させる、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記第1の中心原子が、ケイ素であり、前記出発混合物中のゲルマニウム-68のケイ素に対するモル比が、少なくとも約1:1000または少なくとも約1:100、少なくとも約1:50、少なくとも約1:20、少なくとも約1:10または少なくとも約1:5である、項目14から18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
ゲルマニウム-68の供給源としてハロゲン化ゲルマニウム-68を前記出発混合物に加える、項目14から19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
ゲルマニウム-68の供給源として
68
GeO
2
を前記出発混合物に加える、項目14から19のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記第2の中心原子が、ケイ素であり、ケイ素の供給源としてシリカを前記出発混合物に加える、項目14から21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記出発混合物が、ゲルである、項目14から22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記ゲルが、シリカおよび式
xGeO
2
ySiO
2
に基づく安定ゲルマニアを含む、項目23に記載の方法。
(項目25)
yが(1-x)に等しく、xが0.8、0.4または0.165である、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記マトリックス物質が三次元多面体結晶構造を有する、項目14から25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
ゲルマニウム-68を含む校正デバイスを製造するための方法であって、
項目14から26のいずれか一項に記載の方法によってゲルマニウム-68供給源物質を生成するステップ、および
前記ゲルマニウム-68供給源物質を校正デバイスに形成するステップ
を含む、方法。