(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】電気パルス発生器
(51)【国際特許分類】
H05H 1/24 20060101AFI20220131BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
H05H1/24
H05H1/46 R
(21)【出願番号】P 2019510847
(86)(22)【出願日】2017-08-24
(86)【国際出願番号】 FR2017052271
(87)【国際公開番号】W WO2018037192
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-05-20
(32)【優先日】2016-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519057195
【氏名又は名称】クラルテイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボスル、スニル
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02389047(EP,A1)
【文献】特開平06-237153(JP,A)
【文献】特開2004-220985(JP,A)
【文献】特開2015-180127(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0346875(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00-1/54
H03K 5/01
K03K 3/53
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体バリア放電装置(20)に電力を供給するための電気パルス発生器(10)であって、
前記発生器(10)は、
充電段階で、直流電圧源(30)によって前記発生器(10)の2つの電源供給端子(A,B)に送られたエネルギーを蓄積すると共に、放電段階で、昇圧変圧器(Ts)を介して前記エネルギーを前記誘電体バリア放電装置(20)に移すためのインダクタ(Lstock)を備え、
前記発生器(10)は、
前記発生器(10)のノードNに接続された直列の第1の回路(40)と第2の回路(50)の構成をさらに備え、
前記第1の回路(40)は、2つの並列の分岐(41,42)を含み、
前記2つの分岐の一方(41)は、前記インダクタ(Lstock)を含み、
前記2つの分岐の他方(42)は、アノードが前記ノードNに接続されると共に、カソードが前記昇圧変圧器(Ts)の一次回路(Ts1)に接続されたダイオード(D1)を直列に含み、
前記昇圧変圧器の二次回路(Ts2)は、前記誘電体バリア放電装置(20)に接続されるように構成され、
前記第2の回路(50)は、制御スイッチ(T1)を含み、当該制御スイッチ(T1)の閉鎖と開放がそれぞれ前記充電段階と前記放電段階を制御する、電気パルス発生器(10)。
【請求項2】
前記第2の回路(50)は、前記制御スイッチ(T1)と直列に電気的に接続され、アノードが前記ノードNに接続されたダイオード(D2)をさらに含む、請求項1に記載の発生器(10)。
【請求項3】
前記昇圧変圧器(Ts)は、磁心を含み、
前記電気パルス発生器(10)は、前記誘電体バリア放電装置(20)をさらに備え、
前記誘電体バリア
放電装置(20)は、ガスを含み、
当該ガスは、前記誘電体バリア放電装置(20)の動作電圧VDより高い電圧Vが前記
誘電体バリア放電装置(20)に印加されたときに誘電体バリア放電を生成するのに適しており、
前記誘電体バリア放電は、前記動作電圧VDによって予め決定され前記磁心を通る磁束の第1の変化を生成し、
前記磁心は、前記磁束の前記第1の変化より大きい前記磁束の変化が前記磁心を通るときに磁気的に飽和するように寸法決めされている、請求項1又は2に記載の発生器(10)。
【請求項4】
前記発生器(10)は、前記制御スイッチ(T1)の開閉を制御するための制御信号
(Sc
)を生成するのに適した制御モジュール(60)をさらに備える、請求項1~3のうちいずれか一項に記載の発生器(10)。
【請求項5】
前記制御モジュール(60)は、前記インダクタ(Lstock)を通る電流(Istock)を基準電流(Iref)と比較する手段(61)を含み、
前記制御モジュール(60)の前記制御信号(Sc)は、前記電流(Istock)が前記
基準電流(Iref)より大きいときに前記制御スイッチ(T1)の開放を制御する、請求項4に記載の発生器(10)。
【請求項6】
前記比較する手段(61)は、第1の比較器を含む、
請求項5に記載の発生器(10)。
【請求項7】
前記制御モジュール(60)は、前記制御信号
(Sc
)を前記制御スイッチ(T1)に送信するための出力(
Q)を備えたフリップフロップD(70)を含む、請求項5又は6に記載の発生器(10)。
【請求項8】
前記制御モジュール(60)は、外部制御信号を受信したときに前記制御スイッチ(T1)を閉じるための制御信号
(Sc
)を生成するのに適して
いる、
請求項4~7のうちいずれか一項に記載の発生器(10)。
【請求項9】
前記制御モジュール(60)は、外部制御信号を受信したときに前記制御スイッチ(T1)を閉じるための制御信号(Sc)を生成するのに更に適しており、
前記外部制御信号は、前記フリップフロップD(70)の入力C(71)に送信され、
前記電流(Istock)と前記基準電流(Iref)との比較が、前記フリップフロップD(70)
の入力D(72)に送信される
、請求項
7に記載の発生器(10)。
【請求項10】
前記制御モジュール(60)は、前記ノードN
の電圧
(ad1)の符号を決定する手段(62)を含み、
前記制御モジュール(60)は、前記ノードNの
前記電圧
(ad1)が負のときに前記制御スイッチ(T1)の閉鎖を制御する制御信号
(Sc
)を生成するのに適している、請求項4~7のうちいずれか一項に記載の発生器(10)。
【請求項11】
前記電圧
(ad1)の符号を決定する手段(62)は、第2の比較器である、請求項10に記載の発生器(10)。
【請求項12】
前記制御モジュール(60)は、前記ノードNの電圧(ad1)の符号を決定する手段(62)をさらに含み、
前記制御モジュール(60)は、前記ノードNの前記電圧(ad1)が負のときに前記制御スイッチ(T1)の閉鎖を制御する制御信号(Sc)を生成するのに適しており、
前記電圧
(ad1)の符号を決定する手段(62)は、前記フリップフロップD(70)
の入力C(71)に接続され、
前記電圧
(ad1)の符号を決定する手段(62)は、前記ノードNの前記電圧V(ad1)が負のときに前記フリップフロップD(70)の前記入力C(71)にハイ状態を送るのに適している
、請求項
7に記載の発生器(10)。
【請求項13】
前記制御モジュール(60)は、前記電圧
(ad1)の符号を決定する手段(62)と前記フリップフロップD(70)の前記入力C(71)との間に挟まれた論理ORゲート(63)を含み、
前記電圧
(ad1)の符号を決定する手段(62)
の出力は、前記論理ORゲート(63)の入力に接続され、
前記制御モジュール(60)は、前記論理ORゲート(63)の第2の入力に接続され
たプライミング発生器(64)をさらに含み、
前記プライミング発生器(64)は、前記論理ORゲート(63)の前記入力にいわゆるハイ状態を生成するのに適している、請求項12に記載の発生器(10)。
【請求項14】
前記制御モジュール(60)は、前記インダクタ(Lstock)を通る電流(Istock)を基準電流(Iref)と比較する手段(61)を含み、
前記制御モジュール(60)は、前記比較する手段(61)と前記フリップフロップD(70)
の入力D(72)との間に挟まれた論理ANDゲート(65)をさらに含み、
前記論理
ANDゲート
(65)は、前記比較する手段(61)によって供給される第1の入力と、ENABLE信号によって供給される第2の入力とを含み、
前記論理ANDゲート(65)は、前記フリップフロップD(70)の前記入力D(72)を供給し、
前記論理ANDゲート(65)は、前記電流(Istock)が前記基準電流(Iref)より小さく且つ前記ENABLE信号がハイのときに前記入力D(72)にハイ信号を送り、前記電気パルス発生器(10)の停止を可能にするローENABLE信号を送るのに適している、請求項13に記載の発生器(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、誘電体バリア放電装置に電力を供給するための電気パルス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体バリア放電は、プラズマを生成するための特に興味深い技術である。
【0003】
この点に関して、
図1は、2つの電極2及び3の間に配置されたガス内で誘電体バリア放電を生成するのに好適な装置1の例を示す(しかしながら、誘電体バリア放電の生成が、
図1に示された装置に限定されないことに注意されたい)。装置1は、本事例では、2つの電極2及び3の一方と接触した誘電体材料4をさらに備える。したがって、ガスが、2つの電極2及び3によって加えられる降伏電圧Vcより高い電圧Vを受けたとき、誘電体バリア放電が見られる。しかしながら、放電中、本来絶縁性の誘電体材料は、電荷を阻止し、2つの電極2及び3によって加えられた電界に対抗する電界を生成するため、放電に過渡的性質を提供する。この過渡的性質によって、周囲温度に近い温度と大気圧を含む広範囲の圧力で多くの用途を有する「熱力学平衡外」と呼ばれる状態のプラズマの生成が可能になる。詳細には、そのようなプラズマは、表面処理、物理化学的手法又は光放射生成に使用されうる。当業者は、この説明の最後に記載された非特許文献1に誘電体バリア放電の潜在的用途の説明を見つけるであろう。
【0004】
しかしながら、誘電体バリア放電を生成し維持するには、ガスの降伏電圧Vcより高い電圧Vの周期的印加を可能にする発生器を実装しなければならない。実際には、誘電体バリア放電は本質的に過渡的現象であり、この放電は、生成されたプラズマが平均的に安定して現れるように周期的にリプライムされなければならない。
【0005】
更に、正弦波形状ではないパルス形状を有する電圧V(以下では、電気パルスと呼ばれる)の誘電体バリア放電への印加に対する関心が高まっている(用語「パルス電圧」は、急勾配を有する立ち上がりと立ち下がりを有する電圧を意味する)。
【0006】
この説明の最後に記載された特許文献1は、周期的電気パルスを生成するのに好適な発生器を示す。特許文献1は、誘電体バリア放電におけるキャパシタの放電によって急峻な電圧パルスを送ることを可能にする最初のトポロジーと、放電で消費されないエネルギーを回収するための回路とを示す。このトポロジーは、規則的な波形を生成し、寄生振動をなくすことを可能にする。
【0007】
しかしながら、この装置は十分ではない。
【0008】
実際には、この放電中に生成された大量の電流は、回路の寄生要素、特に巻線の抵抗と発生器の漏れインダクタンスによってのみ制限される。これらの要素は制御が難しい。
【0009】
更に、提案された発生器は、動作中に蓄積容量を誘電体バリア放電と急に接触させる。その結果、大量のピーク電流が電力スイッチに流れ、この電力スイッチは前記ピーク電流に対応するように決定されなければならない。
【0010】
更に、高電圧ダイオードを含むエネルギー回収回路は、大量になりうる回収電流が通ることを可能にしなければならない。したがって、そのような高電圧ダイオードは高価な素子であり、したがってそのような用途での関心が制限される。
【0011】
最後に、発生器は、一般に放電サイクル中に大量の電流にさらされる電力スイッチを含み、この電力スイッチは、そのスイッチングの際に高い損失を引き起こす。そのようなスイッチング損失は、スイッチの制御を複雑にし、前記スイッチの大形化を必要としうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【非特許文献】
【0013】
【文献】U. Kogelschatz and al., "Dielectric-Barrier Discharges. Principle and Applications", Journal de Physique IV Colloque, 1997, 07 (C4), pp. C4-47-C4-66
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、誘電体バリア放電装置に電力を供給するための電気パルス発生器を提案することであり、この電気パルス発生器は、最新技術の発生器に見られるスイッチング損失の制限を可能する。
【0015】
本発明の別の目的は、小型かつ軽量でその構成要素の大形化を必要とせず、したがって工業要件に適合する製造コストを達成可能な電気パルス発生器を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明の目的は、部分的に、誘電体バリア放電装置に電力を供給するための電気パルス発生器によって達成され、発生器は、充電段階で、直流電圧源によって発生器の2つの電源供給端子に送られたエネルギーを蓄積し、放電段階で、昇圧変圧器を介して誘電体バリア放電装置に前記エネルギーを伝えるためのインダクタを含み、発生器は、更に、
-発生器のノードNに接続された直列の第1と第2の回路の構成を含み、
-第1の回路が、2つの並列の分岐を含み、2つの分岐の一方が、インダクタを含み、他方の分岐が、アノードがノードNに接続されると共に、カソードが昇圧変圧器の一次回路に接続されたダイオードを直列に含み、昇圧変圧器の二次回路が、誘電体バリア放電装置に接続されるように意図され、
-第2の回路は、閉鎖と開放がそれぞれ充電段階と放電段階を制御する制御スイッチを含む。
【0017】
一実施形態によれば、第2の回路は、制御スイッチと直列に電気的に接続され、アノードがノードNに接続されたダイオードをさらに含む。
【0018】
一実施形態によれば、昇圧変圧器は、また、磁心を含み、電気パルス発生器は、誘電体バリア放電装置をさらに含み、前記誘電体バリア装置は、誘電体バリア放電装置の動作電圧VDより高い電圧Vが前記装置に印加されたときに誘電体バリア放電を生成し、その結果、誘電体バリア放電が、磁心を介して動作電圧VDによって事前決定された磁束の第1の変化を生成するのに好適なガスを含み、磁心は、磁束の第1の変化より大きい磁束の変化が通るときに磁気的に飽和するように寸法決めされる。
【0019】
一実施形態によれば、発生器は、制御スイッチの開閉を制御するように意図された制御信号Scを生成するのに好適な制御モジュールをさらに含む。
【0020】
一実施形態によれば、制御モジュールは、インダクタを通る電流Istockを基準電流Irefと比較する手段を含み、制御モジュールの制御信号は、電流Istockが電流Irefより大きいときに制御スイッチの開放を制御する。
【0021】
一実施形態によれば、比較する手段は、第1の比較器を含む。
【0022】
一実施形態によれば、制御モジュールは、制御信号Scを制御スイッチに送るように意図された出力Scを有するフリップフロップDを含む。
【0023】
一実施形態によれば、制御モジュールは、更に、外部制御信号を受け取ったときに制御スイッチを閉じる制御信号Scを生成するのに適し、有利には、外部制御信号は、時間スロットを有するクロック信号H1であり、クロック信号H1の各立ち上がりで閉鎖のための制御信号Scが生成される。
【0024】
一実施形態によれば、外部制御信号は、フリップフロップDの入力Cに送られ、電流Istockと基準電流Irefとの比較は、フリップフロップDの入力DとRST#に送られる。
【0025】
一実施形態によれば、制御モジュールは、更に、ノードNにおける電圧の符号を決定する手段を含み、制御モジュールは、ノードNにおける電圧が負のときに制御スイッチの閉鎖を制御する制御信号Scを生成するのに好適である。
【0026】
一実施形態によれば、電圧の符号を決定する手段は、第2の比較器である。
【0027】
一実施形態によれば、電圧の符号を決定する手段は、フリップフロップDの入力Cに接続され、電圧の符号を決定する手段は、ノードNの電圧V(ad1)が負のときにフリップフロップDの入力Cにハイ状態(high状態)を送るのに好適である。
【0028】
一実施形態によれば、制御モジュールは、電圧の符号を決定する手段とフリップフロップDの入力Cとの間に挟まれた論理ORゲートを含み、電圧の符号を決定する手段の出力が、論理ORゲートの入力に接続され、プライミング発生器が、論理ORゲートの第2の入力に接続され、プライミング発生器が、論理ORゲートの入力にいわゆる「ハイ」状態(high状態)を生成するのに好適である。
【0029】
一実施形態によれば、制御モジュールは、更に、比較する手段とフリップフロップDの入力Dとの間に挟まれた論理ANDゲートを含み、論理ゲートが、比較する手段によって供給される第1の入力と、信号によって供給される第2の入力とを含み、論理ANDゲートは、電流Istockが基準電流Irefより大きくかつ信号がハイ(high)でもあるときにハイ信号(high信号)と、電気パルス発生器の停止を可能するロー(low)ENABLE信号とを入力Dに送るのに好適である。
【0030】
他の特徴及び利点は、添付図面に関して非限定的な例として提供された、本発明による電気パルス発生器の以下の記述で明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明による電気パルス発生器によって供給されうる誘電体バリア放電装置を示す図である。
【
図2】本発明の有利な実施形態による電気パルス発生器の単純化したトポロジーの表現である。
【
図3a】本発明による電気パルス発生器に流れる電流ループを示す図であり、より詳細には、第1、第2、第3及び第4のシーケンスでの電流ループの方向を示す。
【
図3b】本発明による電気パルス発生器に流れる電流ループを示す図であり、より詳細には、第1、第2、第3及び第4のシーケンスでの電流ループの方向を示す。
【
図3c】本発明による電気パルス発生器に流れる電流ループを示す図であり、より詳細には、第1、第2、第3及び第4のシーケンスでの電流ループの方向を示す。
【
図3d】本発明による電気パルス発生器に流れる電流ループを示す図であり、より詳細には、第1、第2、第3及び第4のシーケンスでの電流ループの方向を示す。
【
図4a】本発明により、単一パルスで、電気パルス発生器の4つの動作シーケンスの展開でインダクタLstock(縦軸)を通る電流の強さのデジタルシミュレーションによって時間(横軸)の関数として得られたグラフ表示である。
【
図4b】本発明により電気パルス発生器によって送られた単一パルスによって供給された電圧V(dbd)(左側縦軸)と電流I(dbd)(右側縦軸)の強さのデジタルシミュレーションによって、誘電体バリア放電装置の時間(横軸)の関数として得られたグラフ表示である。
【
図5a】負電圧Vkd1の場合に制御スイッチT1を閉じた状況で磁心を含む昇圧変圧器内の磁束(縦軸に沿った)の変化を時間の関数として(磁束は前記変圧器の磁性状態の指標である)示す図であり、Φsatは、変圧器の磁心の飽和流を表わす。
【
図5b】負電圧Vkd1の場合に制御スイッチT1を閉じた状況でダイオードD1を通る電圧Vkd1と電流の変化を示す図である。
【
図6a】正電圧Vkd1の制御スイッチT1を閉じた状況で、磁心を含む昇圧変圧器内の磁束(縦軸に沿った)の変化を、時間(磁束は前記変圧器の磁性状態の指標である)の関数として示す図であり、Φsatは、変圧器の磁心の飽和流を表わす。
【
図6b】正電圧Vkd1の制御スイッチT1を閉じた状況でダイオードD1を通る電圧Vkd1と電流I(d1)の変化を示す図である。
【
図7】電流制限された制御方法によって制御スイッチT1を制御するように意図された制御モジュールのトポロジーを示す図である。
【
図8a】電流制限された制御方法の状況の本発明による電気パルス発生器の動作のデジタルシミュレーションのグラフ表示であり、グラフは、インダクタLstock(右側縦軸)を通る電流Istock、クロック信号H1(左側縦軸)、及びフリップフロップD(左側縦軸)によって生成され制御スイッチT1に送られた制御信号Scを時間(横軸)の関数として示す。
【
図8b】電流制限された制御方法の状況の本発明による電気パルス発生器の動作のデジタルシミュレーションのグラフ表示であり、グラフは、誘電体バリア放電装置を通る電流I(dbd)(右側縦軸)並びに前記装置の端子における電圧V(dbd)(左側縦軸)を時間(横軸)の関数として示す。
【
図8c】電流制限された制御方法の状況の本発明による電気パルス発生器の実験実装のグラフ表示であり、グラフは、誘電体バリア放電装置を通る電流I(dbd)(右側縦軸)並びに前記装置の端子における電圧V(dbd)(左側縦軸)を時間(横軸)の関数として示す。
【
図9】最適電力制御方法に従って制御スイッチT1を制御するように意図された制御モジュールのトポロジーを示す図である。
【
図10a】最適電力制御方法の状況の本発明による電気パルス発生器の動作のデジタルシミュレーションのグラフ表示であり、グラフは、インダクタLstock(右側縦軸)を通る電流Istockと、フリップフロップD(左側縦軸)によって生成され制御スイッチT1に送られる制御信号Scを時間(横軸)の関数として示す。
【
図10b】最適電力制御方法の状況の本発明による電気パルス発生器の動作のデジタルシミュレーションのグラフ表示であり、グラフは、誘電体バリア放電装置を通る電流I(dbd)(右側縦軸)並びに前記装置の端子における電圧V(dbd)(左側縦軸)を、時間(横軸)の関数として示す。
【
図10c】最適電力制御方法の状況の本発明による電気パルス発生器の実験実装のグラフ表示であり、グラフは、誘電体バリア放電装置を通る電流I(dbd)(右側縦軸)並びに前記装置の端子における電圧V(dbd)(左側縦軸)を時間(横軸)の関数として示す。
【
図11】プライミング信号発生器の一例を示す図である。
【
図12】本発明の一実施形態によるインダクタLstockから誘電体バリア放電装置に全てのエネルギーを移す枠組みで電流Istock(縦軸上)の変化を時間(横軸上)の関数として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に詳述される発明は、誘電体バリア放電装置に電力を供給するように意図された電気パルス発生器を実現する。説明の残りの部分で理解されるように、本発明による発生器は、充電段階で直流電圧源によって供給されるエネルギーを蓄積し、そのエネルギーを昇圧変圧器を介して誘電体バリア放電装置にパルスの形で返すように意図されたインダクタLstockを含む。また、特定条件下で、そのような電気パルス発生器が、電力スイッチのスイッチングを伴うことなく誘電体バリア放電装置によって消費されないエネルギーの回収を可能にすることを理解されたい。
【0033】
図2は、本発明による電気パルス発生器10を図で示す。
【0034】
電気パルス発生器10は、直流電圧源30に接続される2つの電源供給端子A及びBを備える。
【0035】
直流電圧源30は、広範囲の電圧(例えば、10V~350Vの電圧)を供給しうる。
【0036】
より詳細には、直流電圧源30は、10V~50Vのきわめて低い電圧源でよい。
【0037】
電気パルス発生器10は、インダクタLstockを含む。用語「インダクタンス」は、多くの場合、強磁性体で作成されたコアに巻かれた導線からなるコイルを意味する。
【0038】
電気パルス発生器10は、一次回路Ts1と二次回路Ts2を含む昇圧変圧器Tsを含む。昇圧変圧器は、一般に、一次回路Ts1と二次回路Ts2が巻かれた磁心を含む。
【0039】
インダクタンスLstockは、充電段階で、直流電圧源30によって供給されたエネルギーを蓄積し、放電段階で、前記エネルギーを昇圧変圧器Tsを介して誘電体バリア放電装置20に送るように構成される。したがって、電気パルス発生器10は、スイッチングによって充電段階と放電段階が交番されるスイッチ手段を含む。したがって、充電段階で、スイッチ手段は閉じられ、その結果、直流電圧源30によって提供された電圧が、インダクタLstockの端子に印加される。放電段階で、スイッチ手段は開かれ、インダクタLstockが直流電圧源30から遮断される。したがって、放電段階で、インダクタLstockは、一次回路Ts1の電流I(d1)を生成することによって蓄積されたエネルギーを送る(換言すると、インダクタLstockと一次回路Ts1の間に電流ループが形成される)。
【0040】
スイッチ手段は、制御スイッチT1を含むことができ、より詳細には、制御スイッチT1は、電力スイッチ、例えば絶縁ゲート電界効果トランジスタ(「金属酸化物半導体電界効果トランジスタ」又は「MOSFET」)でよい。
【0041】
電気パルス発生器10は、ダイオードD1も含む。
【0042】
更に、二次回路Ts2の端子は、誘電体バリア放電装置20の端子に電圧及び/又は電流を印加することを目的とする。
【0043】
次に、非限定的な例として示された電気パルス発生器10の特定の構成について述べる。
【0044】
電気パルス発生器10は、ノードNのレベルで直列に電気接続された第1の回路40と第2の回路50を含む。
【0045】
第1の回路40は、電気パルス発生器10のノードNと端子Aをそれぞれ接続する2つの分岐41及び42を含む。したがって、2つの分岐41及び42が並列に接続されることが分かる。
【0046】
第1の回路40は、スイッチ手段がないと有利である。
【0047】
分岐41は、インダクタLstockを含む。
【0048】
分岐42は、カソードによって昇圧変圧器Tsの一次回路Ts1に直列に接続されたダイオードD1を含む。ダイオードD1のアソードは、ノードNに接続される。
【0049】
ノードNと端子Bを接続する第2の回路50は、制御スイッチT1を含む。
【0050】
有利には、第2の回路50は、制御スイッチT1とノードNの間に挟まれ、制御スイッチT1が閉位置のときに制御スイッチT1内に電流を通すように意図されたダイオードD2を含みうる。以下の説明で、ダイオードD2は、電気パルス発生器10が「最適電力方法」と呼ばれる方法に従って制御されるときに特に有利でありうることが分かる。
【0051】
説明の残りの部分で分かるように、放電段階で第1の回路40だけが求められる。この放電段階は、「背景技術」の説明で分かるように、第1の回路40を構成する要素にのみ印加される電圧と電流に大きな変化を引き起こす。より詳細には、放電の発生中に生じるピーク電流は、磁心を飽和できるときに昇圧変圧器Tsの二次回路Ts2によってのみ対応されうる。実際には、変圧器Tsの磁心は、放電段階で飽和するように寸法決めされうる。したがって、二次回路Ts2のインダクタL2の値の低下が見られる。この結果、一次回路Ts1と二次回路Ts2との間の誘導による結合が少なくとも部分的に破断される。したがって、放電段階で、特に有利には、磁心を飽和できるときに制御スイッチT1に電流が流れない。これは、特許文献1に記載された装置に対して大きな利点である。
【0052】
用語「飽和した磁心」は、二次回路Ts2の巻き付け方向に従う飽和磁場を有する磁心を意味する。
【0053】
飽和磁場は、磁心内に生成されうる最大磁場として定義される。
【0054】
誘電体バリア放電装置は、電圧VDより大きい電圧Vが端子に印加されたときに誘電体バリア放電を生成できる。電圧VDは、誘電体材料の性質、その形状、装置20内のその位置決め、及び誘電体バリア放電装置に含まれるガスの降伏電圧に依存する。電圧VDは、誘電体バリア放電装置20の特性パラメータであり、説明の最後に記載された文献[1]に参照される当業者に知られる。したがって、電圧VDは、誘電体バリア放電装置20の動作電圧である。
【0055】
したがって、動作電圧VDは、その電圧よりも上で誘電体バリア放電装置20が誘電体バリア放電を生成できる電圧として定義される。
【0056】
誘電体バリア放電の展開中、磁心の磁性状態(即ち、コア内の磁場)が修正される。より詳細には、コアの磁性状態は、誘電体バリア放電の生成によって引き起こされる誘電体バリア放電装置の端子の電圧によって加えられる磁束の変化によって修正される。
【0057】
したがって、磁束の変化は、誘電体バリア放電装置20の動作電圧VDによって提供される。その結果、動作電圧VDの知識によって、誘電体バリア放電が生成されたときに磁心が磁気的に飽和されるように昇圧変圧器の磁心を寸法決めできる。
【0058】
前述の使用条件で飽和できるようにする磁心の寸法決めは、特定の磁性材料(例えば、フェライト型の材料)及び/又は前記コアの形状及び/又は前記コアのサイズの選択を含みうる。
【0059】
誘電体バリア放電装置20によって課される使用条件で飽和できるようにする磁心の寸法決めは、前記磁心の磁気断面の調整を含みうる。
【0060】
この点で、当業者は、明細の最後に記載された非特許文献2に、磁心の寸法決めに必要な教示を全て見つけるであろう。
【0061】
更に、出願人は、式(1)によって定義された磁気断面Aminより小さい磁気断面Aを有する磁心が、本発明の実施に好適であることに気づいた(即ち、前述の使用条件で飽和できる磁心を得る)。
【0062】
【0063】
ここで、Ceq1は、誘電体バリア放電装置の誘電体材料の等価静電容量であり、N1は、昇圧変圧器Tsの一次回路の巻数であり、Imaxは、第1シーケンスの終わりにインダクタLstockに流れる電流であり(Imaxは、説明の残りの部分で定義される)、及びBsatは、コア内の磁気飽和場の値である。
【0064】
一般に、昇圧変圧器の磁心の飽和は、一次回路と二次回路の間の結合が破断されるので望ましくない現象である。
【0065】
本発明の枠組みでは、結合の破断によって、誘電体バリア放電装置によって消費されないエネルギーの一部を前記誘電体バリア放電装置に再注入できる。
【0066】
したがって、誘電体バリア放電装置の端子における電圧は、誘電体バリア放電の端子における電圧の所定値で飽和し始めるように寸法決めされた変圧器Tsのコア内の磁束を増大させる。
【0067】
更に、誘電体バリア放電装置の動作条件で磁心を飽和できるようにすることによって前記磁心のサイズを小さくできる。
【0068】
次に、
図3a~
図3d、
図4a及び
図4bと関連して、単一電気パルス上の電気パルス発生器10の4つの動作シーケンスについて述べる。説明の残りの部分では、電気パルス発生器がダイオードD2を含むことと、誘電体バリア放電が生成されたときに昇圧変圧器Tsの磁心が磁気的に飽和されるように寸法決めされることを検討する。換言すると、昇圧変圧器の磁心は、誘電体バリア放電装置の動作電圧V
Dに対して寸法決めされる。
【0069】
第1のシーケンス(
図3a)は、インダクタLstockの充電段階に対応する。この第1のシーケンスで、制御スイッチT1は、時間t1の間閉じられる。次に、直流電圧源30の電圧Vsが、インダクタンスLstockに印加される。電流ループの強さIstockが、直線的に増大するため、直流電圧源30、インダクタLstock、ダイオードD2及び制御スイッチT1(
図4a)によって構成されたユニット内に流れる。
【0070】
時間t1の後、電流Istockは値Imaxに達する。電気パルス発生器10が生成すべき電圧と電流の波形の必要に応じて、時間t1を変調させることによって、値Imaxを容易に調整できる。その結果、充電時間t1をImaxの目標値に従って十分に適応できるので、トポロジーは、広範囲の電圧値Vsで有効になる。
【0071】
時間t1の後、制御スイッチT1の開放後に第2のシーケンス(
図3b)が始まる。第2のシーケンスは時間t2だけ続く。この第2のシーケンスで、インダクタLstockに蓄積されたエネルギーは、昇圧変圧器Tsを介して誘電体バリア放電装置20に共振式に移される。誘電体バリア放電装置は、放電容積がガスで占有されるキャパシタとして働く。したがって、蓄積エネルギーを移す際、その端子の電圧V(dbd)が正弦波部分に沿って上昇することが分かる(
図4b参照)。
【0072】
有利には、この電圧V(dbd)の上昇率は、電流Imaxを調整することによって制御され、したがって制御スイッチT1を閉じる持続時間(換言すると、時間t1)によって制御されうる。
【0073】
誘電体バリア放電装置20に含まれるガスに印加された電圧が、前記ガスの降伏電圧Vc(始動電圧とも呼ばれる)に達したとき、ガスはイオン化され過渡放電が生成される。誘電体バリア放電装置の端子における電圧は、誘電体バリア放電の端子における電圧の所定値VDから磁気的に飽和され始めるように寸法決めされた変圧器Tsのコア内の磁束を増大させ、所定電圧VDはガスの降伏電圧Vcより高い。
【0074】
第2のシーケンスの終わりに、インダクタLstockから誘電体バリア放電装置にエネルギーが全て移される前後で、昇圧変圧器Tsの磁心の飽和が起こる。
【0075】
図12は、インダクタLstockから誘電体バリア放電装置20にエネルギーが全て移される枠組みで、電流Istock(縦軸上)の変化を時間の関数(横軸上)として示す。第2のシーケンスの終わり(
図12の点S2)に電流Istockの消滅がはっきり観察される。
【0076】
したがって、昇圧変圧器Tsの磁心の飽和から第3のシーケンスが始まる。上記のように、昇圧変圧器Tsの磁心が飽和したとき、二次回路Ts2のインダクタL2の値が低下する(変圧器は、漏れインダクタンスに変換される)。この結果、一次回路Ts1と二次回路Ts2の間の誘導による結合が少なくとも部分的に破断されるため、インダクタLstock、ダイオードD1及び一次回路Ts1によって構成されたループに流れる電流が自由に回転する。
【0077】
これと平行に、誘電体バリア放電装置20は、第2のシーケンスで移された蓄積エネルギーの少なくとも一部分を消費した。消費されない残留エネルギーは、誘電体バリア放電回路20の誘電体の表面に電荷の形で蓄積されたままである。したがって、(磁心の飽和により)二次回路Ts2によって構成された低インダクタンスと並列の誘電体バリア放電装置20は、低い固有周波数双極子を構成する。次に、残留エネルギーは、誘電体バリア放電装置20の間で、時間t3の間に飽和されうる昇圧変圧器Tsの漏れインダクタンスに共振式に移される。したがって、誘電体バリア放電装置20(
図3cと
図4b)の端子には電圧V(dbd)の急峻で短時間の低下が見られる。
【0078】
残留エネルギーが漏れインダクタンスに移されたとき、前記残留エネルギーは、やはり共振によって、誘電体バリア放電回路20に再注入され、第2のシーケンスから来る第1のパルスとは逆極性を有する誘電体バリア放電装置20の端子に第2の電圧パルスを生成する。電圧の急峻な低下には、第1の放電とは逆方向のピーク電流と一致する第2の放電が伴う。
【0079】
第3のシーケンスで観察された磁心の飽和は、誘電体バリア放電装置20の端子における電圧V(dbd)の低下と、また前記装置20内に大きい振幅の電流パルス(ピーク電流)との突然の現象を引き起こす。また、特許文献1に記載された装置とは反対に、電流ピークは、二次回路Ts2と誘電体放電装置20の間にだけ流れる。これらの要素は、この一時的な過剰強度を失敗なしに支援できる。詳細には、電流ピークは、制御スイッチT1を通らず、したがって、最新技術で述べられた事例と反対に、これらの構成要素の大形化を必要としない。
【0080】
第2の電圧パルスの振幅は、一般に、第1の電圧パルスの振幅より小さい(絶対値で)。この減少は、少なくとも部分的に回路の散逸的要素によるものである。したがって、第2の電圧パルスの小さい振幅は、放電でインダクタによって注入されたエネルギーの良好な移行を示す。
【0081】
第3のシーケンスで、二次回路Ts2と誘電体バリア放電装置20のセット内に循環する電流の方向は、昇圧変圧器Tsの磁心の飽和を維持する。
【0082】
時間t4に及ぶ第4のシーケンスで、エネルギーは、再び誘電体バリア放電装置20に、したがって、第2の電圧パルスの最大値(絶対値で)に完全に蓄積される。誘電体バリア放電装置20のエネルギーは、二次回路Ts2に共振によって戻される。しかしながら、第3のシーケンス(
図3d)と逆の電流の方向は、磁心の飽和度を低下させるため、一次回路Ts1と二次回路Ts2の間の結合を復帰させる。
【0083】
共振移行は、誘電体バリア放電装置20と二次回路Ts2の間で行われなくなるが、インダクタLstockと並列な前記装置20と一次回路Ts1の間では行われる(D1を介して)。したがって、誘電体バリア放電装置20内の残留エネルギーは回収され、飽和できる昇圧変圧器TsとインダクタLstockの間で分配される。
【0084】
制御スイッチT1が後で導通に戻されない場合、誘電体バリア放電装置20と飽和できる昇圧変圧器TsとインダクタLstockとの間で共振が続く。次に、誘電体バリア放電装置20の端子に電圧V(dbd)の発振が観察される。一般に、誘電体バリア放電装置の端子における電圧V(dbd)の発振の振幅は、ガス内で新しい放電をプライムするのに十分ではなく、発振は、散逸的寄生要素(詳細には、一次回路Ts1と二次回路Ts2の抵抗器と、インダクタLstock)により減衰される
【0085】
次に、制御スイッチT1を閉じる様々な事例を検討できる。
【0086】
第1の事例によれば、制御スイッチT1は、電圧V(dbd)の発振の緩和時間より長い時間の後で閉じられうる。この事例では、システムは、その初期状態にあり、したがってこのシーケンスはシーケンス1と同一である。
【0087】
第2の事例によれば、制御スイッチT1は、電圧V(dbd)の発振の緩和前に閉じられうる。
【0088】
この事例では、インダクタLstockと一次回路Ts1に流れる電流はゼロではない(ダイオードD1が導通状態)。ダイオードD1のアノードとカソードは、発振しVsを中心とするそれぞれ電位V(ad1)とV(kd1)である。
【0089】
したがって、制御スイッチT1の閉鎖時に電位V(kd1)は正又は負である。
【0090】
制御スイッチT1の閉鎖時にV(kd1)が負の場合、ダイオードD2は遮断状態である。その結果、電流がゼロの状態で制御スイッチT1の閉鎖が行われ、これにより、前記制御スイッチT1のスイッチングによるスイッチング損失が防止される。制御スイッチT1が閉じられたとき、電位V(kd1)(
図5bに示された)はゼロに戻るのに時間t5かかり、したがってダイオードD2を導通状態にする。また、一次回路の端子における電圧は、直流電圧源30によって印加された値Vsに維持され、これにより、時間tdem後で昇圧変圧器Tsの磁心が消磁される(
図5aと
図5b)。
【0091】
これとは反対に、制御スイッチT1が閉じたときにV(kd1)が正の場合(
図6b)、ダイオードD2は導通状態であり、T1が閉じたときにダイオードD1のアノードにゼロに近い電位が印加され、それにより、ダイオードD1が遮断され、一次回路Ts1に流れる電流が突然遮断される。この結果、残りのエネルギーが変圧器Tsから誘電体バリア放電装置20に移される。したがって、誘電体バリア放電装置20は、昇圧変圧器Tsを介して、時間t5の間にダイオードD1のカソードの電位を値ゼロまで低下させ、その値で、ダイオードD1は、再び導通状態に切り変わり、電圧Vsで一次回路Ts1が分極される。この後、前の点で示されたように、時間tdem(
図6aと
図6b)の間、消磁段階が続く。
【0092】
昇圧変圧器Tsの磁心の消磁の後、電流I(d1)(
図5bと
図6b参照)が、一次回路内で除去され、したがって、ダイオードD1、昇圧変圧器Ts、及び誘電体バリア放電装置20で構成された系は定常状態のままである。しかしながら、誘電体バリア放電装置20と二次回路Ts2のインダクタの間の電圧V(dbd)の吸収振動は存続できる。
【0093】
次に、装置20内で誘電体バリア放電を生成し維持する制御スイッチT1を制御する様々な方法について述べる。
【0094】
前述されたように、誘電体バリア放電を生成し維持するには、特定のスイッチングモードが他のものより好ましいと思われる。また、放電を維持するには、電圧Vkd1が負のとき、又は制御方法の観点から等価なノードNの電圧が負のときに、制御スイッチT1の閉鎖を制御することが好ましいと思われる。
【0095】
次に制御スイッチT1を制御する3つの方法について述べる。
【0096】
電気パルス発生器10は、制御スイッチT1の制御モジュール60を備えうる。より詳細には、制御モジュール60は、制御スイッチT1の開閉を制御するように意図された制御信号Scの生成に適しうる。
【0097】
「PWM制御方法」と呼ばれる第1の方法を適用できる。
【0098】
第1の方法は、制御スイッチをパルス幅変調制御ロジック(PWM)によって制御することを含む。この第1の方法は、制御モジュール60によって実行されうる。より詳細には、制御モジュール60は、実装が当業者に知られたPWMロジックコントローラを含みうる。PWMシーケンス制御信号は、
図5bと
図6bに時間スロット関数によって表わされる。しかしながら、制御スイッチT1の閉鎖中にインダクタLstock(I(Lstock))を通る電流が直線的に増大するとき、一連の固定長制御時間スロットは、理論的に、各時間スロットにおける実質電流を増大させる(
図5bと
図6bに2つの時間スロットにわたって示されているように)。
【0099】
実際には、電流Imaxが高いほど、誘電体バリア放電が吸収するエネルギーが多くなり、その結果、動作が平衡し永久になる。
【0100】
図2に示されたトポロジーの実施は、20μFキャパシタによって構成された直流電圧源20(Vs)と並列に入力フィルタを備え、PWM制御モードは、放電ランプを含む誘電体バリア放電装置20上で安定した永久動作を提供した(説明の最後に記載された非特許文献3に述べられた)。コンバータ10のパラメータを表1に示す。
【0101】
【0102】
ダイオードD1及びD2並びに変圧器Tsの寸法決定は、当業者の技術知識の範囲内にあり、したがって、本出願では詳述されない。
【0103】
「PWM制御方法」と呼ばれる第1の方法の利点は、本発明による電気パルス発生器10のトポロジーで実施が単純なことである。更に、PWM制御方法は、制御のための2つの自由度、即ち、
値Imaxに影響を及ぼすデューティサイクルと、
誘電体バリア放電装置に注入される平均電力に影響を及ぼす周波数と、を含む。
【0104】
「制限電流制御方法」と呼ばれる第2の方法も適用できる。
【0105】
制限電流方法の目的は、所定周波数(例えば、クロックH1の周波数)での制御スイッチT1の閉鎖と、インダクタLstockを通る電流が基準電流値Iref(例えば、前述の値Imax)を超えたときの前記制御スイッチT1の開放との制御を含む。この方法は、安定動作の保証を可能にする。
【0106】
したがって、制限電流制御方法を実行するため、インダクタLstockを通る電流Istockを基準電流Irefと比較手段61を、制御モジュール60(
図7に示された)に提供することに関心がある。したがって、電流Istockが電流Irefより大きいとき、制御モジュール60は、制御スイッチT1を開くための制御信号Scを生成するのに好適である。比較手段61は、電流プローブ61bから電流Istockの測定値を受け取りうる。
【0107】
有利には、比較手段61は、第1の比較器を含む。
【0108】
用語「第1の比較器」は、2つのアナログ入力の大きさを区別し、前記区別の符号により「ハイ」(high)又は「ロー」(low)と呼ばれる論理出力信号を生成するのに好適な比較器を意味する。比較器は、当業者に知られており、したがって説明で詳述されない。本発明の枠組みでは、電流Istockが基準電流Irefより小さい場合に第1の比較器の出力の信号が「ハイ」と呼ばれ、反対の場合にローになる。
【0109】
更に、有利には、制御モジュール60は、制御スイッチT1を制御し、制御信号Scを制御スイッチT1に送るための出力Scを含むタイプDのフリップフロップ(以下ではフリップフロップD70と呼ばれる)を含む。
【0110】
定義によると、フリップフロップD70は、Cと示された制御入力、Dと示されたデータ入力、及びQと示された出力を含む論理回路である。動作では、入力信号Dは、入力Cの各立ち上がりで出力Q上に複製される。フリップフロップDは、入力D72とC71の状態に関係なく、出力Qの「ハイ」及び「ロー」状態をそれぞれ与えるSET及び/又はRESET入力(RSTとして示された)を備えうる。制御入力(入力C71)とデータ入力(入力D72)は、この説明全体にわたってこれらの定義を保持する。
【0111】
本発明の枠組みで、フリップフロップD70の出力Scの高さのレベルにおける用語「ハイ」状態は、制御スイッチT1の閉鎖を制御するための状態を意味する。同様に、フリップフロップD70の出力Scのレベルにおける用語「ロー」状態は、制御スイッチT1の開放の制御をするための状態を意味する。
【0112】
本発明の文脈で、フリップフロップD70の入力D72及びRST#(RESET、逆論理)に印加される信号は、電流Istockが基準電流Irefより小さい場合にハイと見なされ、信号は逆の場合にローになる。
【0113】
有利には、外部制御信号(例えば、時間スロットを有するクロック信号H1)は、フリップフロップD70の入力C71に送られる。
【0114】
時間スロットを有するクロック信号H1の立ち上がりは、本発明の枠組みでは、フリップフロップD70の入力C71に課される「ハイ」状態に対応する。したがって、ハイ状態が入力C71に課されたとき、入力RST#に印加された信号(入力D72に印加されたものと同一)が「ハイ」の状態で、閉じるための制御信号Scが、フリップフロップD70によって制御スイッチT1に送られる。
【0115】
図8aと
図8bは、制御モジュール(60)によって制御された電気パルス発生器10のデジタルシミュレーションによって得られたオシログラムを示し、
図8cは、制御モジュール60によって制御された電気パルス発生器10の実験実装によって得られたオシログラムを示す。より詳細には、
図8aは、インダクタLstockを通る電流Istock、クロック信号H1、及びフリップフロップD70によって生成され制御スイッチT1に送られる制御信号Scを示す。
図8bと
図8cは、誘電体バリア放電装置20を通る電流I(dbd)並びに前記装置の端子における電圧V(dbd)をそれぞれ、本発明のデジタルシミュレーションと実験実装の枠組みで示す。
【0116】
デジタルシミュレーションによって実験的に得られたオシログラムがきわめて類似することに注意されたい。
【0117】
制御信号Scの各時間スロットが、電流Istockのパルス(例えば、
図8aに記号Eによって示されたパルス)に対応することに注意されたい。電流パルスIstockの後、誘電体バリア放電装置20の端子で測定された電圧V(dbd)と電流I(dbd)との振幅の激しい変化によって、
図8bで識別可能な前記装置20内の放電が起こる。
【0118】
図7に示されたトポロジーの実施は、(電圧Vsの)直流電圧源30と並列な入力フィルタを備える。入力フィルタは、20μFキャパシタと、インダクタLstockと並列のサージ抑制ダイオードを含む。
【0119】
コンバータ10のパラメータを表2に示す。
【0120】
【0121】
制限電流方法は、安定した永久的な動作を可能にし、適度な電力での使用に完全に適応される。公称電流設定を維持し、クロック信号H1の周波数を低くすることによって、誘電体バリア放電装置20に注入される電力を消滅することなく大幅に少なくできるので、広範囲の段階的変化が可能になる。
【0122】
次に、負電圧V(kd1)の場合に制御スイッチT1の閉鎖を保証可能にする「最適電力方法」と呼ばれる第3の方法について述べる。
【0123】
したがって、最適電力方法を実施するために、制御モジュール60(
図9に示された)は、制限電流制御方法の実行を可能にする制御モジュール60を比較する手段61を使用する。
【0124】
有利には、比較手段61は、第1の比較器を含む。
【0125】
更に、有利には、制御モジュール60は、制御スイッチT1を制御し、制御スイッチT1に制御信号Scを送るように意図された出力Scを有するフリップフロップD70を含む(
図9参照)。
【0126】
フリップフロップD70は、Cと示された制御入力、Dと示されたデータ入力、及びQと示された出力を有する論理回路である。動作中、入力信号D(入力D72のレベル)は、入力C71に印加された信号の各立ち上がりで出力Qに複製される。フリップフロップDは、入力D72及びC71の状態に関係なく、出力Qの「ハイ」と「ロー」状態をそれぞれ課するSET及び/又はRESET入力を有する。
【0127】
本発明の文脈では、フリップフロップD70の入力D72に印加された信号は、電流Istockが基準電流Irefより小さい場合にハイになると考えられ、反対の場合に信号はローになる。
【0128】
制御モジュール60は、ノードN(V(ad1)と示された)での電圧の符号を決定する手段62をさらに含むことができ、制御モジュール60は、ノードNでの電圧V(ad1)が負のときに制御スイッチT1の閉鎖を制御する制御信号Scを生成するのに適している。
【0129】
電圧の符号を決定する手段62は、電圧プローブ62bから電圧V(ad1)の測定値を受け取りうる。
【0130】
電圧の符号を決定する手段62は、例えば、第2の比較器である。
【0131】
より詳細には、第2の比較手段は、電圧V(ad1)の値と接地電位との差を測定するのに適している。したがって、動作中、電圧V(ad1)の測定値が、第2の比較器の第1の入力Fのレベルで注入され、第2の比較器の第2の入力Gが接地される。
【0132】
有利には、電圧の符号を決定する手段62は、フリップフロップD70の入力C71に接続され、電圧の符号を決定する手段62は、ノードNの電圧V(ad1)が負のときにフリップフロップD70の入力C71にハイ状態を送るのに適している。この点で、入力C71が立ち上がりにあるフリップフロップD70で、出力Scがその入力D72の状態を複製することに注意されたい。
【0133】
したがって、電流Istockが電流Irefより大きい場合、フリップフロップD70の入力RST上の信号は出力Qをロー状態にする。
【0134】
これとは反対に、電流Istockが電流Irefより小さい場合、Qは、C71の第1の立ち上がりで、即ちノードNの電圧が負に切り替わるときに、「ハイ」状態に切り替わる。
【0135】
有利には、制御モジュール60は、電圧の符号を決定する手段62とフリップフロップD70の入力C71との間に挟まれた論理ORゲート63を含みうる。したがって、電圧の符号を決定する手段62の出力は、論理ORゲート63の入力に接続される。論理ORゲート63の第2の入力にプライミング発生器64も接続でき、プライミング発生器64は、電気パルス発生器10の開始を生成するように適応される。
【0136】
用語「論理ORゲート」は、その2つの入力の少なくとも一方がハイ状態のとき、その出力にハイ信号を生成する論理回路を意味する。これは逆の場合にロー状態を生成する。
【0137】
プライミング発生器はクロックでよい。プライミング信号(論理ORゲート63の入力でハイ信号)は、負電圧信号V(kd1)がない場合に必要とされうる。
【0138】
更に、有利には、制御モジュール60は、比較手段61とフリップフロップD70の入力D72との間に挟まれた論理ANDゲート65も含みうる。論理ANDゲートは、比較手段61によって供給される第1の入力と、ENABLE信号によって供給される別の入力とを有する。論理ANDゲート65は、フリップフロップD70の入力D72に供給し、論理ANDゲート65は、電流Istockが基準電流Irefより小さくENABLE信号もハイのときに、入力D72にハイ信号を送るのに好適である。
【0139】
用語「論理ANDゲート」は、その入力が全て同時にハイ状態のときにその出力にハイ信号を生成する論理回路を意味する。これは逆の場合にロー状態を生成する。
【0140】
「ロー」ENABLE信号は、電気パルス発生器10の停止の制御を可能にする。実際には、誘電体バリア放電装置20内の放電が、制御モジュール60と電気パルス発生器との動作モードによって持続されるので、ユーザは、「ロー」ENABLE制御信号によって、放電の停止を制御できる。
【0141】
ENABLE信号は、(電気パルス発生器10のための)開始信号でよい。発生器64は、プライミング信号と協力し、パルス(ハイ信号)を、開始信号の立ち上がりから始まる期間dの後で接続されるORゲート63の入力に送りうる。
【0142】
図11は、プライミング信号発生器64の例を示す。プライミング信号発生器64は、市販されている集積回路又は個別の構成要素によって実現されうる。
【0143】
図11のプライミング信号発生器64は、ORゲート65の出力によって放出された信号と電圧V(ad1)の符号とをそれぞれ受け取るように意図された2つの入力を有しうる。プライミング信号発生器64は、更に、2つの抵抗器Rg1及びRg2とキャパシタCg1とを含む。
【0144】
最後に、プライミング信号発生器64は、ORゲート63の入力に接続されるように意図された出力Sを含む。
【0145】
図10aと
図10bは、制御モジュール60のデジタルシミュレーションによって得られたオシログラムを示し、
図10cは、制御モジュール60によって制御された電気パルス発生器の実験実装によって得られたオシログラムを示す。より詳細には、
図10aは、インダクタLstockを通る電流Istock、ENABLE信号、及びフリップフロップD70によって生成され制御スイッチT1に送られる制御信号Scを示す。
図10bと
図10cは、誘電体バリア放電装置20を通る電流I(dbd)並びに、前記装置の端子における電圧V(dbd)を、本発明のデジタルシミュレーション及び実験実装の枠組みで示す。
【0146】
デジタルシミュレーションによって実験で得られたオシログラムがきわめて類似することに注意されたい。
【0147】
制御信号Scの各時間スロットが、電流Istockのパルス(例えば、
図10aに記号Eによって示されたパルス)に対応することに注意されたい。電流パルスIstockの後、誘電体バリア放電装置20の端子で測定される電圧V(dbd)と電流I(dbd)との振幅の激しい変化によって、
図10bと
図10cで識別可能な前記装置20内の放電が起こる。
【0148】
図9に示されたトポロジーの実施は、更に、以下の要素、即ち、
直流電圧源30と並列で20μFキャパシタを含む入力フィルタと、
Lstockと並列なサージ抑制ダイオードと、
ダイオードD1のアノードと接地(アース)との間にあり、飽和可能な昇圧変圧器Tsの漏れインダクタンスによるインダクタLstockの端子の電圧ピークを取り除く470pFキャパシタとを含む。
【0149】
コンバータ10のパラメータを表3に示す。
【0150】
【0151】
特定の場合、特に誘電体バリア放電装置が移されるエネルギーの大部分を消費するとき、電圧V(ad1)は、シーケンス3の最後にその静止値(Vs)より低下するが、負になることはない。この場合、接地の代わりに正分極電圧Vpolを第2の電圧比較器に印加するこの最適電力制御方法の代替を実現できる。この場合、生成される信号は、電圧V(ad1)と分極電圧Vpolの差(「V(kd1)<Vpol」)になる。これにより、V(ad1)が負の値をとらない場合でも、制御スイッチT1の閉鎖を提供できる。この場合、スイッチングはゼロ電圧で行われないが、電圧VpolはVより低い電圧を表わし、強制スイッチングの条件は制御スイッチT1の許容限度内のままになる。
【0152】
参考文献
【文献】Electronics Engineer's Reference Book” published by F.F. Mazda, 2013 ISBN 1483161064,
【文献】Hubert Piquet, Sounil Bhosle, Rafael Diez, and Michael V. Erofeev, “Pulsed Current-Mode Supply of Dielectric Barrier Discharge Excilamps for the Control of the Radiated Ultraviolet Power”, IEEE Transactions on Plasma Science, vol. 38, no. 10, October 2010.
【符号の説明】
【0153】
10:電気パルス発生器
20:誘電体バリア放電装置
30:直流電圧源
40:第1の回路
41,42:分岐
50:第2の回路
A,B:電源供給端子
D1:ダイオード
Lstock:インダクタ
Ts:昇圧変圧器
T1:制御スイッチ
Ts1:一次回路
Ts2:二次回路