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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】超音波位置決定システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/30 20060101AFI20220131BHJP
   G01S 5/26 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
G01S5/30
G01S5/26
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019548670
(86)(22)【出願日】2018-03-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 GB2018050554
(87)【国際公開番号】W WO2018162885
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】1703647.6
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508170852
【氏名又は名称】ソニター テクノロジーズ アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブーイユ, ウィルフレッド エドウィン
(72)【発明者】
【氏名】アンティル, シリル
(72)【発明者】
【氏名】オルセン, オイスタイン ハウグ
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/084308(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/174396(WO,A1)
【文献】特開2017-032535(JP,A)
【文献】米国特許第06292106(US,B1)
【文献】特表2014-513287(JP,A)
【文献】国際公開第2014/020348(WO,A1)
【文献】特表2006-506830(JP,A)
【文献】特表2006-514743(JP,A)
【文献】特開2005-077175(JP,A)
【文献】宮良泰明 伊与田健敏,スペクトル拡散超音波を用いた屋内測位システムにおけるドップラー効果に対するシリアルサーチを用いた信号検出の評価,電子情報通信学会2016年総合大会講演論文集 通信2,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2016年03月01日,Page 501,ISSN 1349-1369
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
3/80 - 3/86
5/00 - 5/30
7/52 - 7/64
15/00 - 15/96
19/00 - 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境内のモバイル受信機ユニット(3,3a,3b)の位置を決定するためのシステムであり、かつ処理システムを含むシステムにおいて、
前記システムは、
送信装置(6,6a,6b,6c)であって、複数の超音波送信機(9-13)を含み、前記送信装置からそれぞれ異なる主方向に複数の超音波信号を送信するように構成され、各超音波信号は異なるそれぞれの方向識別子を符号化する、送信装置と、
モバイル受信機ユニットであって、超音波受信機を含み、複数の信号経路に沿って前記複数の超音波信号を受信するように構成され、少なくとも1つの前記信号経路が前記環境内の表面(15-17)からの反射を含む、モバイル受信機ユニットと、をさらに含み、
記処理システムはデコーダを含み、かつ前記受信した超音波信号から前記それぞれの方向識別子を復号化するように構成され、
前記処理システムは前記信号経路のそれぞれについて、前記それぞれの超音波信号が前記モバイル受信機ユニットに到着するそれぞれの時間を決定するように構成され、
前記処理システムは(i)前記送信装置に関する位置情報、(ii)前記表面に関する位置情報、(iii)前記それぞれの方向識別子、および(iv)前記到着時間を使用して、前記モバイル受信機ユニットの前記位置の推定値を計算するように構成されることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記送信装置(6,6a,6b,6c)は、単一の静的送信機ユニットである、請求項1に記載のシステム(1)
【請求項3】
前記送信装置(6,6a,6b,6c)は、無指向性送信機(9)及び少なくとも2つの指向性送信機(10-13)を含む、請求項1または2に記載のシステム(1)
【請求項4】
前記送信装置(6,6a,6b,6c)は、非平行な共面ベクトルであるそれぞれの主方向に沿って超音波信号を送信するように構成された少なくとも一対の送信機(10-13)を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム(1)
【請求項5】
前記送信装置(6,6a,6b,6c)は、第1の平面に平行な方向に超音波信号を送信するように構成された第1対の送信機(10-13)と、第2の平面に平行な方向に超音波信号を送信するように構成された第2対の送信機(10-13)とを含み、前記第1の平面と第2の平面は直交平面である、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム(1)
【請求項6】
各超音波信号は、チップレートでキャリア信号に符号化されたチッピングシーケンスを含み、前記処理システムは、
前記受信した超音波信号を、前記チップレートよりも高いサンプリングレートでサンプリングし、
前記サンプリングされた信号をチッピングシーケンスと相互相関させて、経時的な相関強度を表すデータを生成し、
経時的な前記相関強度データの導関数を使用して、前記サンプリングレートよりも精密な時間分解能で前記データのピークの前記位置を決定する
ように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム(1)
【請求項7】
前記モバイル受信機ユニット(3,3a,3b)は、各受信信号の信号強度情報を決定するように構成され、前記処理システムは、前記信号強度情報および前記到着時間に基づいて、各受信信号をそれぞれの信号経路に関連付けるように構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム(1)
【請求項8】
前記処理システムは、各クラスタについて、互いの所定の最大飛行時間距離窓内にある異なるそれぞれの方向識別子を符号化する信号の到着時間の1つ以上のクラスタを識別するように構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム(1)
【請求項9】
前記処理システムは、各クラスタに対して、前記クラスタに到達する信号の信号強度を使用して、信号経路に対して、到着角の第1推定値を2次元または3次元で計算し、前記到着角の第1推定値を使用して、前記到着時間が、前記送信装置(6,6a,6b,6c)上の前記送信機(9-13)の前記位置に関連する整合性テストを満たす前記クラスタのサブセットを選択するように構成される、請求項8に記載のシステム(1)
【請求項10】
前記処理システムは、無指向性送信機(9)から受信した第1信号の強度と各指向性送信機(10-13)から受信した第2信号の強度との間の比率を計算することによって、信号経路に対する到着角の各第1推定値を計算するように構成され、前記信号経路に対する到着角の推定に前記比率を用いる、請求項9に記載のシステム(1)
【請求項11】
前記処理システムは、クラスタの前記サブセット内の各クラスタについて、前記クラスタに到着する信号の前記到着時間を使用して、2次元または3次元で前記到着角の各第2推定値を計算するように構成される、請求項9または10に記載のシステム(1)
【請求項12】
前記処理システムは、振幅情報、距離情報、および到着角情報のいずれか1つ以上を使用して、クラスタの前記サブセット内の各クラスタを前記送信装置(6,6a,6b,6c)の実位置または仮想位置に割り当てるように構成される、請求項11に記載のシステム(1)
【請求項13】
前記処理システムは、前記到着時間を使用して、多辺測量動作を実行し、前記モバイル受信機ユニット(3,3a,3b)の前記位置を推定するように構成される、請求項1~12のいずれか一項に記載のシステム(1)
【請求項14】
デコーダを含む処理システムを用いて、環境内のモバイル受信機ユニット(3,3a,3b)の位置を決定する方法において、前記方法は、
送信装置(6,6a,6b,6c)からそれぞれ異なる主方向に複数の超音波信号を送信し、前記超音波信号のそれぞれは異なるそれぞれの方向識別子を符号化することと、
複数の信号経路に沿って前記モバイル受信機ユニットで前記複数の超音波信号を受信し、少なくとも1つの前記信号経路が前記環境内の表面からの反射を含むことを含み、
更に処理システムが、
前記デコーダを用いて、前記受信した超音波信号から前記それぞれの方向識別子を復号化することと、
前記信号経路のそれぞれについて、前記それぞれの超音波信号が前記モバイル受信機ユニットに到着するそれぞれの時間を決定することと、
(i) 前記送信装置(6,6a,6b,6c)に関する位置情報、(ii) 前記表面に関する位置情報、(iii) 前記それぞれの方向識別子、および(iv)前記到着時間を使用して、前記モバイル受信機ユニットの前記位置を推定することと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項15】
前記信号経路の少なくとも1つが直接経路である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波信号を使用してモバイルユニットの位置を決定するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を使用して、環境内の既知の位置(建物の壁や天井など)にある複数の静的送信機ユニットから超音波信号を送信することにより、モバイルユニットまたはタグの位置を3次元で決定することが知られている。これらの信号は、物体に取り付けられたモバイル受信機ユニットで受信される。静的送信機ユニットの位置が与えられると、標準の幾何学的計算を使用して、モバイルユニットでの超音波信号の到着時間を使用して、環境内のモバイルユニットの位置を推定することができる。このようなシステムの例は、米国特許第6292106号(Cubic Defense Systems, Inc.)に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
超音波は、電波や光よりもはるかに遅いため、測位システム、特に屋内での使用に適している。したがって、光速度信号と比較して、所与の空間分解能での精度の高くない時間測定を必要とする。
【0004】
ただし、既知の超音波ベースの測位システムでは、通常、正確な結果を得るために、各静的送信機ユニットとモバイル受信機ユニットの間に明確な見通し線経路を必要とする。これは、重大な障害(サイズが1波長を超える)があると、超音波が反射、吸収、またはその両方の組み合わせを起こすためである。つまり、モバイルユニットが人体、または静的送信機ユニットからの見通し線にある他の障害物によって遮蔽されている場合、信号がモバイルユニットに到達するのを簡単にブロックできる。これが発生すると、環境内の表面からの反射が直接経路信号よりも大きなエネルギーでモバイルユニットに到達する可能性があるため、直接経路信号として誤って識別される可能性があり、モバイルユニットの位置の推定にかなりの誤差が生じる。既知の超音波ベースの測位システムはまた、設定および保守に費用がかかることがよくある。
【0005】
本発明は、これらの欠点の少なくとも一部に対処しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様から、本発明は、環境内のモバイル受信機ユニットの位置を決定する方法を提供し、この方法は、
送信装置からそれぞれ異なる主方向に複数の超音波信号を送信し、各超音波信号は異なるそれぞれの方向識別子と通信することと、
複数の信号経路に沿ってモバイル受信機ユニットで複数の超音波信号を受信し、少なくとも1つの信号経路が環境内の表面からの反射を含むことと、
受信した超音波信号からそれぞれの方向識別子を識別することと、
各信号経路について、それぞれの超音波信号がモバイル受信機ユニットに到着するそれぞれの時間を決定することと、
(i)送信装置に関する位置情報、(ii)表面に関する位置情報、(iii)前記それぞれの方向識別子、および(iv)前記到着時間を使用して、モバイル受信機ユニットの位置を推定することと、
を含む。
【0007】
さらなる態様から、本発明は、環境内のモバイル受信機ユニットの位置を決定するためのシステムを提供し、このシステムは、
送信装置であって、複数の超音波送信機を含み、送信装置からそれぞれ異なる主方向に複数の超音波信号を送信するように構成され、各超音波信号は異なるそれぞれの方向識別子と通信する、送信装置と、
モバイル受信機ユニットであって、超音波受信機を含み、複数の信号経路に沿って複数の超音波信号を受信するように構成され、少なくとも1つの信号経路が環境内の表面からの反射を含む、モバイル受信機ユニットと、
処理システムであって、
処理システムは受信した超音波信号からそれぞれの方向識別子を識別するように構成され、
処理システムは各信号経路について、それぞれの超音波信号がモバイル受信機ユニットに到着するそれぞれの時間を決定するように構成され、
処理システムは(i)送信装置に関する位置情報、(ii)表面に関する位置情報、(iii)前記それぞれの方向識別子、および(iv)前記到着時間を使用して、モバイル受信機ユニットの位置の推定値を計算するように構成される、処理システムと
を含む。
【0008】
したがって、当業者は、本発明によれば、反射信号のモバイルユニットへの到着時間は、モバイルユニットの位置を決定するために使用され、さらに反射信号であるか、またはそうでない可能性がある他の信号の到着時間もモバイルユニットの位置を決定するために使用されることを理解するであろう。反射が好ましくないエラーの原因である代わりに、本発明は、環境内の表面(部屋の壁または床など)からの反射を積極的に活用して、測位精度を高め、部屋またはエリアのカバレッジの提供に必要な別個の送信機ユニットの数を潜在的に減らす。本発明を使用すると、いくつかの状況では、例えば部屋の天井に取り付けられた単一の送信機ユニットで十分であり、モバイルユニットの位置を部屋のどこでも3次元で決定でき、精度は数センチメートル以上であり、送信機ユニットからモバイル受信機ユニットへの見通し経路の障害に対する復元力を備えている。比較すると、従来のシステムでは、同等のパフォーマンスを得るために、部屋に4つ以上の別個のユニットを設置する必要がある。設置する必要のある静的ユニットの数が少ないシステムは、設置が安価(装置コストと設置コストの両方)であり、保守が安価(例えば、交換するバッテリーが少ない)であるため望ましい。
【0009】
送信装置は複数の別個のユニット(好ましくは互いに近接して配置される)を備えてもよいが、好ましい実施形態では、送信装置は単一の送信機ユニットである。送信装置は静的、例えば、壁または天井、または建物または部屋の他の表面に固定されていることが好ましい。送信装置またはユニットの超音波送信機は、好ましくは、すべて互いに近接して、例えば、100cm、50cm、30cm以下の最大寸法を有する領域または容積内に配置される。これにより、以下でより詳細に説明するように、処理システムが反射が来る表面を識別し、したがって表面に関連する正しい位置情報を識別しやすくなる。システムは、複数の同様の送信装置または送信機ユニットを含んでいてもよく、これらはサイトの異なるそれぞれの部屋または領域に設置されてもよく、または共通領域の重複するカバレッジを提供するように設置されてもよい。
【0010】
本出願人は、国際公開第2010/84308号(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)において、モバイル送信機ユニットが、静的受信機ユニットで直接経路および反射経路に沿って受信される1つの信号を送信するシステムを以前に説明した。 異なる経路の到着時間は、モバイル送信機ユニットの位置を決定するために使用される。しかし、出願人は、モバイル受信機ユニットが複数の区別可能な超音波信号を受信し、この超音波信号は静的送信機ユニットによって異なる方向に送信され、これらの信号のいずれかの反射がモバイル受信機ユニットの位置を決定するのに役立つ公開システムを知らない。当業者は、そのようなシステムが、同じ1つの送信信号が複数の経路に沿って静的受信局で受信される国際公開第2010/84308号に開示されているものとアーキテクチャ的に全く異なることを理解する。異なるそれぞれの識別子を通信するモバイル受信機ユニットに指向性信号を送信することにより、本発明の実施形態は、任意の多数のモバイル受信機ユニットをサポートできるが、一方国際公開第2010/84308号に記載されているシステムは、システムの音響帯域幅によって決定された、限られた数のモバイルユニットのみをサポートできる。
【0011】
各超音波信号は、いくつかの異なる経路に沿ってモバイル受信機ユニットに到達する可能性が高く、そのうちの1つは直接経路である可能性があり、他のものは環境内の表面からの1つ以上の反射を含む可能性があることが理解されよう。指向性送信を使用して、他の他と比較して、特定の経路に沿って信号強度を意図的に増加させることにより、測位精度を改善できる。
【0012】
したがって、送信装置内の複数の超音波送信機は、少なくとも2つの指向性送信機を含むことが好ましい。4つ以上の指向性送信機を備えてもよい。複数の超音波送信機は、1つ以上の無指向性送信機を備えてもよい。無指向性送信機からの信号はまた、好ましくは方向識別子と通信する(それにより、受信機は、無指向性信号の受信であるとして特定の経路に沿って信号の受信を識別することができる)。「指向性」および「無指向性」という用語は、ここでは相対的な意味で理解され得ることが理解されよう。無指向性送信機でさえ、ある程度の指向性を持っている場合があり、例えば、全球ではなく半球以下でエネルギーを放出する場合がある。送信される超音波信号の主な方向は、信号の最も高いエネルギーの方向であってもよい。信号が単一のトランスデューサによって生成される場合、これは典型的には、トランスデューサの主軸に対応する。当然、いずれの超音波信号も、高指向性トランスデューサから送信された場合でも、さまざまな方向にわたって移動する。無指向性スピーカ(送信機)の場合、主方向はスピーカの主軸である場合がある。
【0013】
複数の超音波送信機の少なくとも1つは、好ましくは、20度から50度の間、例えば、30度または45度の、超音波信号のうちの1つの周波数で、10度から60度の間の半角を有する指向性送信機を備えてもよい。無指向性の送信機のうちの1つは、半角を有さない(つまり、その角度変化が6dB未満)か、または指向性のある送信機の半角よりも大きい(好ましくは60度を超える)半角を有することがある。送信機のうちの指向性の1つは、本質的に指向性(例えば、本質的に指向性の圧電トランスデューサ)であるか、または指向性を追加または強化するための導波管またはシールドを備えた無指向性スピーカを含んでいてもよい。送信機の無指向性の1つは、本質的に無指向性であるか、またはスピーカの前に配置され、音を回折するオリフィスを画定するシートなどの回折部材を備えた指向性スピーカを備えてもよい。
【0014】
送信装置は、好ましくは互いに平行ではない、共面ベクトル(すなわち、共通平面にある、または共通平面に平行である)であるそれぞれの主方向に沿って超音波信号を送信するように構成される少なくとも1対の送信機を備えてもよく 、例えば、少なくとも45度または60度または90度以上角度付けられているが、180度未満であることが好ましい。これにより、信号強度を使用して信号経路および反射面を識別しやすくなる。無指向性送信機の軸は、例えば、ベクトル間の角度を2等分する、2つのベクトル間の鋭角内にある場合がある。信号が送信装置の反対側で送信される場合、例えば、モバイル受信機ユニットによって受信されたそれぞれの信号強度を比較することにより、モバイル受信機ユニットが送信装置のどちら側に位置するかを決定することを比較的簡単にすることができる。好適な実施形態では、送信装置は、そのような送信機の2つの対を備え、各対はそれぞれの平面に平行に向けられ、2つの平面は直交平面である。
【0015】
信号経路の少なくとも1つは直接経路であってもよい。少なくとも1つの無指向性送信機を有する送信装置の利点は、モバイル受信機ユニットがどこに位置していても、モバイル受信機ユニットによって直接経路信号が受信される可能性が高まることである。ただし、送信装置とモバイル受信機ユニットの間に直接の見通し線がない場合、反射信号経路(エコー)のみを使用してモバイル受信機ユニットの位置を推定することも可能である。したがって、いくつかの実施形態では、直接音響信号が利用可能な場合は直接音響信号が使用されるが、直接経路が存在しない場合は間接経路が使用される。
【0016】
送信装置は、ボックスなどのケーシングまたは筐体を備えてもよく、複数の超音波送信機は、ケーシングまたは筐体上の異なるそれぞれの位置から異なるそれぞれの方向に超音波を送信するように配置されてもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、送信装置は、トランスデューサの1次元または2次元アレイと、ビーム形成を使用して異なる方向にトランスデューサアレイから超音波信号を送信するためのコントローラとを備えてもよい。本明細書で説明される超音波送信機は、トランスデューサの1つ以上のフェーズドアレイによって提供されてもよい。
【0018】
しかしながら、好ましくは、各超音波送信機は、例えば、単一の振動板、圧電結晶、または他の能動素子を有する単一のそれぞれのトランスデューサまたはラウドスピーカから形成される。超音波信号が送信される各主方向は、異なるそれぞれの超音波送信機に関連付けられることが好ましい。これにより、フェーズドアレイを制御する複雑さが回避される。また、複数の超音波信号を異なる方向に同時に送信することが容易になる。さらに、いくつかの実施形態では、モバイル受信機ユニットの位置を推定することは、以下により詳細に説明されるように、送信装置上の超音波送信機間の物理的分離を利用する。
【0019】
複数の超音波信号は同時に送信されてもよい。あるいは、送信は時間的にオフセットされる場合があるが、モバイル受信機ユニットが動いている場合、または環境が時間とともに変化する場合(例えば、障害物が特定の送信サイクルの途中で特定の経路をブロックする場合)、これは潜在的に精度の低下につながる可能性がある。
【0020】
方向識別子は、任意の適切な方法で超音波信号によって通信されてもよい。
【0021】
識別子は、例えば、周波数ベースの符号化、位相ベースの符号化、振幅ベースの符号化、および時間ベースの符号化の任意の組み合わせを使用して、符号化方式に従って超音波信号に符号化されてもよい。識別子は、例えば、周波数偏移変調(FSK)符号化を使用して符号化できる。実施形態の好ましい組において、方向識別子は、位相偏移変調(PSK)を使用してキャリア信号上で符号化される。識別子は、追加または代替として、直接シーケンス拡散スペクトル(DSSS)符号化を使用して符号化される。いくつかの実施形態では、各超音波信号は、バーカーコードなどの1つ以上のチッピングシーケンスを含む。各信号は、例えば、本出願人による国際公開第2012/137017号に記載されているような信号であってもよく、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
実施形態の別の組では、方向識別子は、タイムスロットの使用、または別のタイミングベースの通信方式を介して全体的または部分的に通信され得る。複数の超音波信号は、送信スケジュールに従って送信されてもよく、スケジュール内の各送信時間またはタイムスロットは、それぞれの方向識別子である。処理システムは、送信スケジュールに関する情報を使用して、受信した超音波信号からそれぞれの方向識別子を識別することができる。
【0023】
送信時間は、後続の超音波信号が送信される前に、1つの超音波信号からのすべてのエコーが環境内のしきい値レベル未満に減少するように調整することができる。超音波信号は、方向固有のデータを符号化することもできるが、それらは単一のパルスまたは同一のチャープまたはパターンである可能性があり、方向識別子の通信にタイミング情報のみが使用される場合がある。
【0024】
方向識別子は、システム全体で一意でも、特定のゾーンまたはエリア内で、あるいは特定の送信機ユニット内でのみ一意であってもよい。いくつかの実施形態では、例えば、異なる送信装置に異なる所定のタイムスロットで送信させるか、送信機ユニット識別子、ゾーンまたはエリア識別子など方向識別子の一部としてまたは方向識別子とは別に追加データを送信することにより、他の情報を使用して、システム内の異なる送信装置からの送信間を区別することができる。いくつかの実施形態では、送信装置は、本出願人による国際公開第2014/020348号に記載されるように、FSK符号化されたゾーンIDおよび領域IDを送信してもよく、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0025】
超音波信号の到着時間は、絶対時間として決定されてもよく(例えば、システムクロックまたはモバイル受信機ユニットが同期され得る外部クロックからの信号によって定義される)、または相対的なタイミングが使用され得る。例えば、時間は、受信機への直接音響信号の到着に関連する場合があり、すなわち、この最初の到着イベントは「時間ゼロ」を定義し、そこから後から到着する1つまたは複数のエコーまでの間隔が測定される。
【0026】
各到着時間は、1つ以上の相互相関演算を使用して決定できる。
【0027】
実施形態の好ましい組において、各超音波信号は、チップレートでそれぞれのキャリア信号に符号化された(好ましくは位相偏移変調符号化された)チッピングシーケンスを含む。モバイル受信機ユニットまたは処理システムは、好ましくはチップレートよりも高い、好ましくは少なくとも2倍のサンプリングレートで受信信号をサンプリングする。最初に受信信号をより高いレートでサンプリングし、次により低いが依然としてチップレートより高いサンプリングレート、好ましくはチップレートの少なくとも2倍であるが、好ましくはチップレートの16倍、8倍または4倍を超えない、にダウンサンプリングする(例えば、デシメーションを使用)。サンプリングレートは、チップレートの2倍に等しい場合がある。受信信号は、同相信号(I)と直交信号(Q)に分離され、それぞれサンプリングレートでサンプリングされる。
【0028】
次いで、サンプリングされた信号は、好ましくはサンプリングレートでチッピングシーケンスと相互相関されて、経時的な相関の大きさを表すデータを生成し得る。相関強度データの経時的な導関数を使用して、相関強度データのピークを特定することができる。ピークの位置は、サンプリングレートよりも精密な、および/またはチッピングレートよりも精密な時間分解能で決定されてもよい。次いで、信号の到着時間は、相関強度データのピークの時間的位置から決定され得る。
【0029】
サンプリングレートよりも精密な時間分解能で相関強度データのピークを識別する1つの方法は、ピーク検出器を使用することである。ピーク検出器は、適切な方法で実施できる。しかしながら、好ましい一組の実施形態では、ピーク検出器は、3つの連続するサンプル点にわたるスライディング窓に基づいてピークを識別する。相関強度データの各点で、点の前の勾配と点の後の勾配を使用して、ピークを特定することが好ましい。これらの勾配はまた、好ましくは、勾配のそれぞれの大きさに基づいてピークの位置を推定するために使用される。これにより、サブサンプルの精度でピークの位置を決定できる。例えば、1つの勾配の絶対値が他の勾配の絶対値よりも大きい場合、処理システムは、より浅い勾配の方向への中間点からのオフセットとしてピークを推定する場合がある。
【0030】
このようなアプローチは、非常に正確な到着時間の測定を容易にすることが分かっている。例えば、音響測位の最大空間解像度は、音速をチップレートで除算した値にほぼ等しいと一般に考えられている(例えば(340 m/s)/(500チップ/s)=68cm)。しかしながら、本技術は、この約10分の1(例えば、500チップ/sで約7cm)の空間解像度を可能にすることができる。このアイデアは、それ自体が斬新であると考えられている。
【0031】
さらなる態様から、本発明は、信号の到着時間を測定する方法を提供し、この方法は、
チップレートでキャリア信号上で符号化されたチッピングシーケンスを含む信号を受信することと、
チップレートよりも高いサンプリングレートで受信信号をサンプリングすることと、
サンプリングレートで、サンプリングされた信号をチッピングシーケンスと相互相関させて、経時的な相関強度を表すデータを生成することと、
経時的な相関強度データの導関数を使用して、サンプリングレートよりも精密な時間分解能で、相関強度データからピークの位置を決定することと、
相関強度データのピークの時間的位置から信号の到着時間を決定することと
を含む。
【0032】
さらなる態様から、本発明は、受信機装置であって、
チップレートでキャリア信号上で符号化されたチッピングシーケンスを含む信号を受信するように構成された信号受信機と、
チップレートよりも高いサンプリングレートで受信信号をサンプリングするように構成されたサンプリング回路と、
サンプリングレートで、サンプリングされた信号をチッピングシーケンスと相互相関させて、経時的な相関強度を表すデータを生成するように構成された相関器と、
経時的な相関強度データの導関数を使用して、サンプリングレートよりも精密な時間分解能で、相関強度データからピークの位置を決定し、それにより受信機装置での信号の到着時間を決定するように構成された処理システムと
を含む、受信機装置を含む。
【0033】
信号は、電磁信号でも音響信号でもよい。しかし、超音波信号であることが好ましい。到着時間は、ローカルタイマまたはクロック、またはその他の適切な基準に対して決定される。受信機装置は受信機ユニットであってもよく、処理システムは受信機ユニットの一部であってもよい。あるいは、処理システムの一部またはすべては、受信機ユニットから遠隔、例えばネットワークサーバ内にあってもよい。
【0034】
チッピングシーケンスは、キャリア信号上で位相偏移変調符号化されることが好ましい。サンプリングレートは、チップレートの高さの少なくとも2倍であることが好ましい。
【0035】
本明細書で説明される他の態様または実施形態の特徴は、これらの態様の特徴でもあり得る。
【0036】
上記の測位システムおよび方法では、環境内の任意の表面(部屋、建物、または外部空間)からの反射をモバイルユニットの位置の推定に使用できる可能性があるが、表面は好ましくは静的な表面であり、好ましくは、実質的に平面である。そのような実施形態では、反射面は「音響ミラー」として効果的に機能する。受信信号の適切な処理により、表面は、実際の送信装置と同じ距離にある第2の仮想送信装置の見掛けをモバイル受信機ユニットに与える。当然、複数の反射面を考慮することにより、複数のそのような仮想送信機が発生する。いくつかの実施形態では、複数の表面があり、複数の信号経路は環境内の表面からの反射を含む。複数の表面のそれぞれに関するそれぞれの位置情報は、モバイル受信機ユニットの位置を推定するときに使用してもよい。
【0037】
そのような「仮想」送信装置は、対応する位置に複数の実際の送信装置またはユニットがあり、反射面が存在しないかのように動作する処理システムによって、モバイル受信機ユニットの位置を決定するのに役立つ可能性がある。言い換えれば、仮想送信装置内の各仮想送信機は、あたかもそれがモバイル受信機ユニットへの直線経路に沿って直接その超音波信号を送信したかのように見なされ得る。各仮想送信機の可能な位置の組は、実際の送信機と1つまたは複数の反射面の既知の位置から決定できる。さまざまな受信信号に対応する表面が識別されると、従来の球面(到着時間)または双曲線(到着時間差)方法を使用した三辺測量または多辺測量(multilateration(マルチラテレーション))計算が処理システムによって実行され、モバイル受信機ユニットの位置を推定してもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、エコーまたは反射の信号強度は、モバイル受信機ユニットの位置を決定するときに使用され、例えば、信号強度を使用して、表面からの反射を含む信号経路の長さを推定する。システムは、位置推定を改善するために、空気中の超音波の球面減衰および散逸減衰の知識、および/または環境内の主要な表面の反射特性の知識を使用してもよい。
【0039】
送信装置に関連する位置情報は、空間内の送信装置の、好ましくは3次元での位置に関する、適切なレベルの精度で、適切な座標系での情報を含むことが好ましい。情報は、好ましくは、送信装置の向きに関する情報、あるいはそれぞれの送信機の位置および/または向きに関する情報を含む。
【0040】
表面に関する位置情報は、表面の位置および/またはサイズおよび/または形状および/または方向に関する情報を含むことが好ましい。
【0041】
このシステムは、送信装置に関連するおよび/または表面に関連する関連する位置情報を記憶するデータベースを備えてもよい。データベースには、部屋または建物の壁、床、天井の一部またはすべての場所に関する情報を記憶できる。テーブルや机の上部、窓の位置など、他の反射面の位置を記憶できる。部屋または建物内の複数の送信機ユニットの位置および方向を記憶してもよい。処理システムは、モバイル受信機ユニットの位置の推定値を計算するためにデータベースにアクセスしてもよい。
【0042】
モバイル受信機ユニットは、好ましくは、送信装置のタイマまたはクロックに同期されたタイマまたはクロックを含む。この同期は、モバイル受信機ユニットまたは送信装置上でクロックまたは導出されたタイミング信号の1つを調整することにより、あるいはモバイル受信機ユニット上の受信タイムスタンプを調整することにより実行され得る。または、モバイル受信機ユニットおよび送信装置のクロックを実行できるようにするが、遠隔コンピュータまたはサーバ(上記の処理システムの一部を形成してもよい)のクロック間のオフセット(および任意選択的にドリフト)に関する情報を記憶することにより、遠隔で実行でき、そしてこれを情報に使用して、例えば、記憶されたオフセットおよびドリフトに従って送信および受信タイムスタンプを調整することによって、各超音波信号の飛行時間を決定する。
【0043】
送信装置は、所定の1つまたは複数の時間に超音波信号を送信するように構成されることが好ましい。このようにして、処理システムは、例えば基本的な減算動作により、到着時間から各受信超音波信号の飛行時間(ToF)を決定できる。音速が一定であると仮定すると、飛行時間は各経路の経路長の尺度に対応することが理解されよう。
【0044】
しかし、同期は必須ではなく、いくつかの実施形態では、処理システムは到着時間差(TDoA)情報を使用してモバイル受信機ユニットの位置を推定する。モバイル受信機クロックは自由に実行し、サーバでクロックの関連付けを実行する(インフラストラクチャに関して)。
【0045】
モバイル受信機ユニットは、好ましくは、各受信信号の信号強度情報を決定するように構成される。
【0046】
処理システムは、最小閾値を下回る信号強度を有する信号に関連する到着時間を除外することが好ましい。このようなピークは、システムに位置がわからない小さな反射面に由来する可能性がある。閾値は、距離が増加するにつれて(すなわち、特定の信号の既知の送信時間とモバイル受信機ユニットでのその到着時間との間の経過時間に基づいて)、例えば、距離を2乗して指数関数的に、スケールダウンされることが好ましい。
【0047】
モバイル受信機ユニットの位置を推定することは、好ましくは、
各受信信号をそれぞれの信号経路に関連付けることと、
モバイル受信機ユニットの初期位置推定値を計算することと、
到着時間を使用して、多辺測量を実行し、モバイル受信機ユニットの位置を推定することとの動作のうちのいずれかの1つ以上を含む。
【0048】
各受信信号をそれぞれの信号経路に関連付けるには、信号強度情報および到着時間を使用することが好ましい(本明細書では「経路割り当て」と呼ばれる)。処理システムは、好ましくは、無指向性スピーカからの信号経路の到着時間をフィルタリングし、それぞれの最大の信号強度に関連付けられた無指向到着時間を含む、好ましくは所定のサイズの組を保持する。
【0049】
処理システムは、各クラスタについて、互いの所定の最大飛行時間距離窓内にある異なるそれぞれの方向識別子を符号化する信号の到着時間の1つ以上のクラスタを識別することが好ましい。この距離窓は、好ましくは、送信装置の送信機間の最大分離距離に、任意選択的に固定マージン、例えば最大5cmまたは10cm、または分離距離の5%または10%または50%または100%を加えた距離以下であることが好ましい。これにより、クラスタ内のすべてのピークが、受信機ユニットへの同じ経路をたどった信号に関連する可能性が高くなる。いくつかの実施形態では、各クラスタは無指向性送信機からの信号を含まなければならない。したがって、いくつかの実施形態では、各クラスタ内のそれぞれの方向識別子は、無指向性送信機からのそれぞれの信号到着時間から所定の最大飛行時間距離(例えば、前記距離窓の半分)以内に到着する信号からのものとして識別され得る。
【0050】
クラスタへの到着時間はすべて、互いにほぼ同じ経路、すなわち直接経路、または同じ表面からの1つ以上の反射を有する経路、をたどる信号用である場合、これらを使用して信号経路を識別できる。
【0051】
ただし、一部のクラスタは、異なる経路からの信号到着時間を含む場合がある。処理システムは、それぞれの信号強度および/または信号の到着時間の差を使用して、すべて同じ経路をたどっていないクラスタを除外することが好ましい。送信機の1つ以上の対が反対方向を向くように配置されている場合、処理システムは、送信機の対の信号強度と、任意選択的に、無指向性スピーカからの信号強度も使用して、クラスタが1つの経路のみからの反射を含むかどうかをテストすることが好ましい。
【0052】
処理システムは、クラスタに到着する信号の信号強度から、経路の2次元または3次元の到着角を計算するように構成できる。そのために、処理システムは、信号強度の1つ以上の比率、例えば、無指向性送信機からの信号の強度と指向性送信機からの信号の強度との間の比率を計算してもよい。処理システムは、到着角および/または経路長(例えば、無指向性信号の飛行時間から決定)を使用して、到着時間が送信装置における送信機の位置と一致しない、すなわち、送信装置上の送信機の位置に基づいた整合性テストを満たさない、1つ以上の信号を含むクラスタを除外する。クラスタのサブセット、例えば、しきい値を超える整合性スコアを有するクラスタのサブセットを選択できる。
【0053】
モバイル受信機ユニットの初期位置推定値を計算するには、信号強度情報と到着時間を使用することが好ましい。モバイル受信機ユニットへの同じ経路に沿ってすべて移動した信号の到着時間のみを含む可能性がある1つ以上のクラスタが見つかると、好ましくは信号の到着時間(非常に正確に知られている)を使用して、2次元または3次元の到着角(またはベクトル)を計算する。これは、信号強度のみに基づく角度推定よりも正確であるはずである。
【0054】
これらのベクトルのそれぞれは、直線経路に沿った、モバイル受信機ユニットから送信装置の実または「仮想」画像への方向を表す。処理システムは、好ましくは、各ベクトル用の振幅および/または距離情報および/または到着角情報を使用して、ベクトルを実または仮想送信装置の位置に割り当てる。候補位置の組は事前に既知であるか、必要に応じて、送信装置と1つまたは複数の反射面(ミラーとして機能する)の位置から計算できる。処理システムはまた、送信装置上の送信機の位置に関する情報を使用して、経路に奇数または偶数の反射が含まれるかどうかを決定し、ベクトルを実または仮想送信装置の位置に割り当てるときにこの情報を使用することができる。これは、反射のパリティによって、送信機のレイアウトが実際のように表示されるか、鏡像として表示されるか(つまり、モバイル受信機ユニットに対して左手または右手に表示されるかどうか)が決まるためである。
【0055】
多辺測量動作は到着時間を使用するが、信号強度情報を直接使用しないことが好ましい。多辺測量は、好ましくは、モバイル受信機ユニットとそれぞれの実および「仮想」送信装置位置との間の直線経路を想定する。好ましくは、最小化アルゴリズムまたは近似アルゴリズムなどの反復アルゴリズム、例えば最小二乗最小化を使用する。好ましくは初期位置推定、または以前の測位サイクルまたは動作からの位置推定を使用して、反復最小化アルゴリズムを開始する。
【0056】
モバイル受信機ユニットは、例えば、タグを人または物体に固定し、人または物体を追跡するための手段を含む専用の測位タグであってもよく、または携帯電話またはタブレットコンピュータなどの追加機能を有する携帯用電子機器であってもよい。
【0057】
モバイル受信機ユニットはすべての処理システムを含むことができ、これはモバイル受信機ユニットがディスプレイ画面および強力なプロセッサを含む場合、例えばスマートフォンの場合に特に適している。この場合、モバイル受信機ユニットは、送信装置に関連する位置情報および/または表面に関連する位置情報を記憶するように構成されてもよい。
【0058】
他の実施形態では、モバイル受信機ユニットは、処理システムの他の部分、例えば、方向識別子を識別するためのデコーダまたは他のモジュールを含み、および/または信号の到着時間を決定する要素を含むことができ、一方処理システムの他の部分、例えば、モバイル受信機ユニットの位置の推定値を計算するように構成された要素などは、遠隔コンピュータまたはサーバなど、1つ以上の他のユニットに常駐する場合がある。モバイル受信機ユニットは、無線、光学、または他の送信機、例えば、ブルートゥース(登録商標)、WiFi、またはセルラネットワーク送信機を備えてもよい。送信機を使用して、受信した超音波信号に関連するデータを遠隔処理ユニットに送信する。
【0059】
一組の実施形態では、方向識別子を識別することでさえも、モバイル受信機ユニットから離れて生じる。この場合、受信機ユニットは基本的に、受信した音声信号を(任意選択的に、復調、ダウンサンプリング、圧縮などの処理後に)遠隔受信機にストリーミングできる。
【0060】
位置決定システムは、好ましくは、データ記憶装置および/またはディスプレイおよび/またはデータ接続をさらに備え、モバイル受信機ユニットの推定位置を記憶および/または表示および/または電子的に通信するように構成される。システムは、例えば、建物または環境の地図または平面上にモバイル受信ユニットの位置を示すように構成されてもよい。
【0061】
超音波は、人間の聴覚の通常の範囲(特に成人のもの)を超える音である。典型的には、20kHzより高い音である。本発明の実施形態における超音波信号は、約20kHz以上、例えば約40kHzであってもよい。約20kHz(例えば、18kHz、19kHzまたは20kHzより高いおよび/または20kHz、22kHzまたは25kHz未満)の周波数は、モバイル受信機ユニットの超音波受信機が可聴周波数に最適化されており、超音波周波数応答が限られていてもよい場合などの、いくつかの実施形態で、好ましい場合がある。これは、モバイル受信機ユニットが専用の測位部品ではなく、携帯電話、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータなど、1つ以上の他の機能を備えた携帯機器である場合である。
【0062】
本明細書に記載される任意の態様または実施形態の特徴は、適切な場合にはいつでも、本明細書に記載される任意の他の態様または実施形態に適用されてもよい。異なる実施形態または実施形態の組を参照する場合、これらは必ずしも明確ではないが、重複する可能性があることを理解されたい。
【0063】
ここで、本発明の特定の好ましい実施形態を、添付の図面を参照して、ほんの一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】本発明を実施するシステムの主要構成要素の概略図である。
図2】天井に取り付けられた位置送信機の下方からの斜視図である。
図3】代替の天井に取り付けられた位置送信機の下方からの斜視図である。
図4】さまざまな信号経路と2つの「仮想」位置送信機の位置を示す概略図である。
図5】典型的な自己相関関数のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1は、病院などの建物に設置することができる3次元測位システム1を示している。これにより、サーバ2は、建物内の複数のモバイルタグ3a、3b(モバイル受信機ユニット)の位置を、3次元で高精度に決定できる。タグ3a、3bは、典型的には、人(例えば、人の首の周りのストラップにより、またはリストバンドで)、または体温計または病院用ベッドなどの装置のアイテムに取り付けられている。ただし、タグは、ラップトップコンピュータや携帯電話などの別の物体と一体であるか、または別の物体から形成されている場合がある。タグに関連付けられた物体の詳細は、サーバ2に記憶できる。サーバ2はまた、タグ3a、3bが存在する建物の床および壁の位置の平面図などの環境の地図を記憶する。サーバは、1つ以上のタグの推定位置および高さが床平面図に印付けられた床平面図の視覚表示などの、タグ3a、3bの位置を示すテキスト、グラフィック、または、その他のデータを出力できる。
【0066】
サーバ2は、有線イーサネット(登録商標)ネットワーク5によって複数の802.15.4ゲートウェイ4a、4bに接続されている。これらのゲートウェイ4a、4bは、例えば、 IEEE 802.15.4標準に基づいて構築されたプロトコルを使用して、一組の静的位置送信機6a、6b、6c(静的送信機ユニット)およびタグ3a、3bと通信するための双方向無線機を含む。位置送信機6a、6b、6cおよびタグ3a、3bは、ゲートウェイ4a、4bと通信するための双方向無線機を含む。
【0067】
位置送信機6a、6b、6cはそれぞれ、タグ3a、3bによって受信可能な超音波測位信号を送信するための複数の超音波送信機を含む。これらの信号は典型的には40kHzのキャリア周波数で送信されるが、代わりにより高いまたはより低い周波数を使用することもできる。いくつかの実施形態では、例えば、タグ3a、3bが携帯電話で具現化され、電話の標準可聴周波数マイクロフォンを使用して超音波信号を受信する場合、約20kHzのキャリア周波数が有利となり得る。各位置送信機6a、6b、6cはまた、位置送信機のメモリに格納された送信スケジュールに従って超音波測位信号を送信するためのクロックまたはタイマ、および回路を含む。建物内の位置送信機6a、6b、6cの位置および向きは、例えば各位置送信機6a、6b、6c上の2つの基準点の3次元座標としてサーバ2に記憶される。
【0068】
タグ3a、3bのそれぞれは、超音波信号を受信およびデジタル化するためのマイクロフォンおよび関連する受信機回路を含む。タグ3a、3bはまたそれぞれ、絶対クロック値として、またはタグのメモリに記憶された送信スケジュールに対するかいずれかで、超音波測位信号の到着時間を記録するためのタイマを含む。タイマまたはクロックは、定期的に(例えば、数時間または数日ごとに)繰り返す単純なカウンタである場合がある。世界時の概念を持つ必要はない。
【0069】
タグ3a、3bは、IEEE802.11マルチキャスト信号を802.11アクセスポイント7a、7bに送信するための無線送信機を含むことができる。タグ3a、3bは、Wi-Fiタグ用のCisco(登録商標)Compatible Extensionsの一部またはすべてを実施できる。
【0070】
802.11アクセスポイント7a、7bは、有線イーサネット(登録商標)ネットワーク5によってサーバ2に接続されている。
【0071】
実際には、システムは、図1に示したものよりも多い、または少ないサーバ、タグ、位置送信機、ゲートウェイ、および/またはアクセスポイントを有してもよいことが理解されよう。
【0072】
サーバ2、モバイルタグ3a、3b、ゲートウェイ4a、4b、位置送信機6a、6b、6cおよびアクセスポイント7a、7bは、必要に応じて、それぞれプロセッサ、マイクロコントローラ、CPU、DSP、ASIC、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、アナログ回路、デジタル回路、電源、受信機、送信機、トランスデューサ、入力、出力、ユーザインタフェースの1つ以上を備えてもよい。それらの動作の一部はソフトウェアによって制御される場合がある。
【0073】
位置送信機6a、6b、6cは、タグ3a、3bが一般的に発見されるすべての領域が位置送信機6a、6b、6cの少なくとも1つの可聴範囲内にあるように配置されることが好ましい。例えば、建物内のすべての部屋は、好ましくは部屋の天井の中央に設置される、少なくとも1つの位置送信機を含むことができる。このように、超音波は壁、天井、ドアによって非常に強く減衰されるため、サーバ2は各タグ3a、3bがどの部屋にあるかを決定できるはずである。状況によっては、または特定のタグでは、そのような部屋レベルの精度で十分な場合がある。しかしながら、システム1はまた、センチメートルまたはミリメートルのオーダーの精度で、3次元でタグの位置を決定することができる。
【0074】
初期の大まかな測位は、国際公開第2014/020348号に記載されているように、例えばFSK符号化されたゾーンIDおよびエリアIDを送信することによって、それぞれの位置IDを符号化する周期的超音波信号を送信する各位置送信機6a、6b、6cによって、実行され得る。この位置IDは、位置送信機の無指向性スピーカによって送信されてもよい。いくつかの実施形態では、位置IDは、位置送信機上の指向性スピーカによって送信されてもよく、これは、オープンスペース(部屋など)を複数のゾーンに分割することが望まれる場合に役立つ。タグ3a、3bのゾーン位置が決定されると、識別されたゾーン内でタグをより正確に位置特定することが望まれる場合、以下に説明するように、3D測位動作を実行することができる。
【0075】
他の実施形態では、そのような超音波ベースの大まかな測位プロセスは実行されず、代わりに3D測位動作により、タグの位置を設備全体にわたって一意に決定することができる(他の位置ベースの情報と関連して、例えばRFネットワーク、GPS、または慣性計測ユニット(IMU)から取得)。これは典型的に、大まかな測位信号によって供給される追加の位置情報を符号化する必要があるため、3D測位動作に使用される信号はより大きな帯域幅を必要とする。
【0076】
サーバ2は、位置送信機6a、6b、6cとタグ3a、3bを同期させ、タグ3a、3bが超音波リスニング回路を常にアクティブにしないことで電力を節約できるようにし、その結果、正確な飛行時間測定値が正確な3次元測位のために決定できる。
【0077】
サーバ2は、802.15.4ゲートウェイ4a、4bを介して、それぞれのカスタマイズされた送信スケジュールを各位置送信機6a、6b、6cに送信する。次いで、各位置送信機6a、6b、6cは、その特定の送信スケジュールに従って、間隔をあけて超音波測位信号を送信する。カスタマイズされた送信スケジュールはすべて共通のマスター送信スケジュールに基づいているが、送信先の装置のローカルクロックに合わせて調整される。それらは、位置送信機6a、6b、6cがすべて実質的に同時にそれらの位置IDを送信するように配置される。位置送信機6a、6b、6cは、互いに実質的に同時に3D測位信号を送信するように調整されてもよい。タイムスロット機構を使用するのではなく、超音波メッセージを同時に送信すると、システムの待ち時間が改善され、タグ3a、3bの電池寿命が長くなり、スリープ状態により多くの時間を費やすことができる。それにもかかわらず、実際には、超音波信号が互いに破壊的に干渉する「デッドスポット」を克服するために、いくつかの時間オフセットまたは変化するスケジュールを組み込むことが望ましい場合がある。1つのオプションは、すべての位置送信機6a、6b、6cを1つの送信サイクルで同時に送信し、その後、デッドスポットでの干渉を回避するために、1つ以上の後続サイクルで、それらの一部を決定された方法で無音にすることである。
【0078】
大まかな測位の場合、タグ3a、3bの超音波プロトコルおよび超音波デコーダは、デコーダが複数の超音波位置送信機6a、6b、6cを区別でき、超音波メッセージが同時に送信される場合、飛行時間と信号強度情報の両方に基づいて、最も近い位置送信機6a、6b、6cを識別できるように設計される。
【0079】
タグ3a、3bは、位置送信機6a、6b、6cのうちの1つから超音波位置ID信号を受信すると、信号を復号化して、信号を送信した位置送信機6a、6b、6cの身元を決定する。次に、タグ3a、3bは、タグ3a、3bの識別および位置送信機6a、6b、6cの識別を符号化するマルチキャスト802.11メッセージを送信する。他の情報も送信する場合がある。タグ3a、3bは、衝突の可能性を減らすために802.11の送信をずらすことができる。
【0080】
802.11アクセスポイント7a、7bは、タグ3a、3bからのマルチキャストメッセージを待ち受け、受信したマルチキャストメッセージからの情報をサーバ2に中継する。
【0081】
もちろん、他の実施形態は、情報をサーバ2に送信した802.15.4ゲートウェイ4a、4bに無線メッセージを送信するタグ3a、3bなど、タグ3a、3bからサーバ2に識別情報を転送する代替手段を使用してもよい。場合によっては、システム1は802.11アクセスポイント7a、7bをまったく必要とせず、いくつかの好ましい実施形態は、802.15.4ベースの通信のみを使用し、802.11と比較して電力を節約できる。
【0082】
サーバ2は、特定のタグ3a、3bおよび特定の位置送信機6a、6b、6cを識別するメッセージを受信すると、この情報を使用して、サーバ2のデータベース内のタグの大まかな位置推定値を更新する。タグ3a、3bもまた精密な3D測位を必要とする場合、これは以下で説明するように実行できる。
【0083】
サーバ2は、ドップラー誘導速度情報を使用してタグ3a、3bの動きを決定することができ、タグ3a、3bは、タグの位置推定値を改良するために使用することができる。
【0084】
位置送信機6a、6b、6cのための特注の送信スケジュールは、位置送信機6a、6b、6cにおけるクロックのそれぞれのドリフトおよびオフセットに関する、サーバ2に記憶された情報に基づいて、サーバ2によって生成される。サーバ2は、位置送信機6a、6b、6cおよびタグ3a、3bによって802.15.4ゲートウェイ4a、4bに送信されるルーチン802.15.4メッセージ用の送信および受信タイムスタンプに基づいて、位置送信機6a、6b、6c、タグ3a、3b、および802.15.4ゲートウェイ4a、4bにおける各クロックのそれぞれのドリフトおよびオフセット情報を決定する。サーバ2は、タグ3a、3bのいずれか1つが2つのゲートウェイ4a、4bの範囲内にある場合は常にゲートウェイ4a、4bのクロックに関する情報を決定し、両方のゲートウェイ4a、4bがタグから同じルーチン802.15.4メッセージを受信するようにする(これは、無線信号が光の速度で移動するため、同時に発生すると想定できる)。
【0085】
正確な3次元測位のために、サーバ2は、2つの方法のいずれかでタグ3a、3bのクロックのモデルを使用してもよい。サーバ2は、参照のために、マスター送信スケジュールのカスタマイズされたバージョンをタグ3a、3bに送信してもよく、タグは、これを使用して、タグの内部クロックに従って、測位信号の予定送信時間とタグへの測定到着時間の差に基づいて、超音波信号の飛行時間を計算できる。あるいは、サーバ2は、タグ3a、3bから到着時間のタイムスタンプを受信し(タグのローカルクロックによってスタンプされる)、タグのクロックの記憶されたモデルを使用して、受信したタイムスタンプをシステムのマスタークロックに一致する修正されたタイムスタンプに変換する。マスタークロックは、サーバ2の内部クロック、またはたとえば位置送信機6a、6b、6cのマスター上のクロックなどであり得る。サーバ2は、これらの修正されたタイムスタンプと送信スケジュールの知識を使用して、飛行時間を計算できる。
【0086】
いくつかの代替実施形態では、タグは同期されない。代わりに、タグに到着する超音波信号の飛行時間差(TDOF)情報を使用して、タグの3D位置を決定する。これは、飛行時間(TOF)情報を使用して3D位置を決定する代替手段であり、送信がいつ行われるかをタグが知る必要はない。いくつかのそのような実施形態では、タグは、無線受信機をまったく持つ必要がない。 ただし、このアプローチの欠点は、通常、TOF情報が利用可能な場合と比較して正確な位置推定を得るために、少なくとも1つの追加の到着時間(TOA)測定値を取得するタグが必要になることである。
【0087】
詳細な3D測位を容易にするために、各位置送信機6a、6b、6cは複数の指向性ラウドスピーカを備えている。
【0088】
図2は、位置送信機6の第1の設計を示しており、位置送信機6は、サイズが約20cm×15cm×5cmの長方形ユニットで、位置送信機6の長方形の前面および周囲の縁部を覆う成形されたプラスチックカバー8を有する。位置送信機6の背面(図示せず)は、天井または壁にぴったりと取り付けられるように意図されている。カバー8の前面の縁部の周りの開口部には、無指向性超音波スピーカ(トランスデューサ)9および4つの指向性超音波スピーカ(トランスデューサ)10、11、12、13が取り付けられている。2つの指向性スピーカ10、12は、長方形の前面の対向する短端部(S)に取り付けられ、他の2つの指向性スピーカ11、13は、長方形の前面の対向する長端部(L)に取り付けられる。したがって、典型的な長方形の部屋では、位置送信機6を天井に取り付けることができ、部屋の各壁を指す異なる指向性スピーカを有することができる。
【0089】
スピーカ9、10、11、12、13のそれぞれは、軸の周りで回転可能であり(位置送信機6が天井に取り付けられている場合、仰角を変更する)、スピーカの軸は、 (i)位置送信機6の前面の平面から垂直に前方から(すなわち、天井に取り付けられたときに床に真っ直ぐ下方に)(ii)位置送信機6から離れて前面の平面に平行(すなわち天井に取り付けた場合、天井に平行に)まで、任意の位置に配置できる。
【0090】
仰角を調整すると、壁からの反射を最適に励起することができる(例えば、布のカーテンを避けるようにスピーカを傾けることにより、反射を大幅に減らすことができる)。
【0091】
無指向性スピーカ9は、その軸の周りに半球パターンでほぼ均一に超音波を放射する。例えば、プラスチック製スピーカハウジング内の直径4mmの円形オリフィスの後ろに取り付けられたMurata Manufacturing Co., Ltd.(株式会社村田製作所)(登録商標)のMA40S4Sトランスデューサを含んでもよい。オリフィスは、超音波を広く回折させる。
【0092】
図2の実施形態の指向性スピーカ10、11、12、13は、Murata(登録商標)製のプレーンなMA40S4Sトランスデューサで、トランスデューサの前に障害物や導波管はない。これにより、約40度のビーム(電力半値幅)が生成される。
【0093】
図3は、位置送信機6 'の代替設計を示しており、これは、無指向性スピーカ9 'を引き続き備えているが、指向性スピーカ10'、11 '、12'、13 'はトランスデューサの前に長方形ホーン導波管を備えている。トランスデューサは、依然としてMurata(登録商標) MA40S4Sトランスデューサであってもよく、ただし、導波管を使用すると、少なくとも1つの軸において、プレーントランスデューサよりも潜在的に狭いカスタムビーム形状を提供できる。導波管の形状および方向により、音の広がりをかなり制御できる。
【0094】
当然、他の位置送信機の設計も可能である。いくつかの実施形態では、位置送信機は、キャリア周波数で約波長以下の間隔で互いに分離された超音波スピーカのアレイ、およびフェーズドアレイとして機能するスピーカから指向性信号を送信するように構成された回路を備えてもよい。これにより、位置送信機は、壁や窓などの特定の反射構造に意図的に向けることを含め、さまざまな角度で超音波のビームを向けることができる。
【0095】
超音波の伝播速度が遅い(344m/s)ので、3D測位に超音波を使用する魅力的な機能は、飛行時間(TOF)を計時して距離、または一対の受信機間の飛行時間差(TDOF)を計時して距離差を測定することができる機能である。これを数センチメートルの精度で行うには、電磁ベースの信号のタイミング精度が100ピコ秒であるのに対して、約100マイクロ秒のタイミング精度が必要である。
【0096】
3つ以上の既知の送信機位置からタグ3a、3bへのTOF測定を組み合わせることにより、三辺測量の原理を使用してタグ3a、3bの位置を導き出すことができる。TDOFの場合、4つ以上の送信機位置が必要である。タグ位置の測位精度は、送信機位置の有効なベースライン(つまり、送信機の距離)と距離測定の精度によって決まる。
【0097】
複数の別個の送信機ユニットを使用して広いベースライン広がりを与えるのではなく、本発明は、非常に広い仮想ベースラインを与えるために部屋の表面からの反射を活用する。
【0098】
表面からの超音波反射は、電磁波の相互作用と比較して非常に決定論なプロセスである。ほとんどの壁は、超音波の波長(9mm)よりも大幅に小さい寸法の構造を持ち、超音波の吸収が少ないため、効果的に鏡と見なすことができる。これは、位置送信機6a、6b、6cからの超音波信号の反射が、実際の位置送信機の反映バージョンである新しい仮想位置送信機を効果的に作成することを意味する。
【0099】
5つの比較的きれいな表面(4つの壁および1つの床)がある部屋では、これは部屋の天井に取り付けられた単一の位置送信機6a、6b、6cから完全な観察可能性を達成できることを意味する。このアプローチは、構造面が湾曲している部屋を含め、不規則な形状の部屋にも適用できる。複数の表面からの反射も同様に説明でき、タグ3a、3bの観察可能性がさらに向上する。
【0100】
図4は、タグ3を含む部屋14内の位置送信機6の例示的な設置を示している。位置送信機6は、部屋14の天井15に設置されている。部屋14の側壁16および後壁17が示されている。(当然、部屋14には、ここには示されていない他の壁と床がある)。無指向性スピーカ9からの音は、タグ3が部屋14のどこにあっても、経路が遮られない限り、直接経路に沿ってタグ3に到達できる必要がある。指向性スピーカ10のうちの1つは、その軸が側壁16に向けられるように角度が付けられている。別の指向性スピーカ11は、その軸が後壁17に向くように角度が付けられている。これらの指向性スピーカ10、11の指向性に依存して、直接経路に沿ってそれらからタグ3に到達する音エネルギーはほとんど、またはまったくない。ただし、側壁16に向かって指向性スピーカ10から放出される超音波信号は、側壁16で反射され、側壁16から比較的高い信号強度でタグ3に到達する(信号が遮られたり、タグ3が遠すぎない限り)。同様に、後壁17に向かって傾斜した指向性スピーカ11によって送信された超音波信号は、後壁17で反射され、後壁17から比較的高い信号強度でタグ3に到達する(信号が遮られたり、タグ3が遠すぎない限り)。
【0101】
後壁17から受信した信号は、タグ3に対して、後壁17の後ろに位置する別の位置送信機106の指向性スピーカ111から来るように見える。この仮想位置送信機106上のスピーカの位置は、実位置送信機6上のスピーカの位置の鏡像である。同様に、側壁16からタグ3によって受信される信号は、タグ3から側壁16の遠い側に位置するさらなる仮想位置送信機206上の指向性スピーカ210から来るように見える。再び、この仮想位置送信機206は、実際の位置送信機6の鏡像である。
【0102】
TOFまたはTDOF測位の課題は、ノイズが存在する場合にうまく機能する、3つのTOF測定値または任意の数のTDOF測定値からタグの位置を計算する分析式がないことである。TOFの分析的アプローチは存在するが(Chanの方法)、4つの経路の知識に依存しているため、位置決定プロセス中と同様に配置がより複雑になる。
【0103】
したがって、サーバ2は、反復最小2乗最小化アプローチを使用して、タグ3a、3bの位置を推定する。そのような反復法は、経路が実際のおよび/または仮想の位置送信機の位置(経路の割り当て)に正しく関連付けられ、適切な初期タグ位置の推定ができる場合にのみ収束する。サーバ2で実施される方法は、受信信号強度インジケータ(RSSI)データを使用して経路割り当てを実行する。サーバ2は、後続の反復タイミングベースの計算のために初期位置推定値も計算する。タグ3a、3bが正常に配置され、超音波信号の連続カバレッジの下にとどまると、タグの最新の位置計算は、次の測位サイクルの初期推定として使用できる(任意選択的に、推定速度および/または加速度計ベクトルを使用して推定し、これは、以前の位置推定値から、および/またはタグによって受信された超音波信号の分析によって決定されたドップラー誘導速度情報から計算されてもよい)。
【0104】
したがって、3D測位動作は、3つの異なる動作を含み、
(1)各受信信号を、実際のスピーカまたは仮想スピーカ9、10、11、12、13の1つからの一意の直接または反射経路に関連付ける(ここでは「経路割り当て」と呼ぶ)、
(2)次のステージに入力するために、タグ3の初期位置推定値を計算する(この動作は最初にのみ必要であり、後続の測位サイクルでは必要ない場合がある)、
(3)到着時間測定を使用して、タグ3から各タイミング測定に対応する実際の位置送信機と仮想位置送信機までの直線経路に基づいて、三辺測量を実行してタグ3を特定する。
【0105】
第1の動作は信号強度およびタイミング情報を使用し、第3の動作はタイミング情報のみを使用する。
【0106】
位置送信機6のスピーカ9、10、11、12、13の1つからの超音波信号の到着時間(TOA)の正確な測定を容易にするために、送信された信号は、バーカーコードなどの少なくとも1つのチッピングシーケンスを含む。送信された信号は、大まかな測位のためにゾーンIDおよび領域ID部分を含み、その後に1つ以上のチッピングシーケンスを含む3D測位部分が続く。いくつかの実施形態では、信号は複数のバーカーコードを含んでもよく、例えば、国際公開第2012/137017号に記載されているような信号であってもよい。各スピーカ9、10、11、12、13のIDは、送信する各超音波信号に符号化される。ただし、経路割り当ての課題は、特定のスピーカからのすべての直接信号と反射信号が同じ識別子を運ぶため、符号化に基づいて区別できないことである。代わりに、信号強度や到着時間などの他の要因が使用される。
【0107】
各タグ3a、3bは、関連する周波数帯域(例えば、約40kHz)でそのマイクロフォンで受信された信号の観測されたピークから到着時間およびRSSI値を測定する。マイク信号のピークの識別は、強力なピーク相関をもたらすバーカーDSSSコードを使用することで容易になる。いくつかの実施形態では、タグ3a、3bはバーカー相関演算を実行して受信信号の相関ピークの位置および相関強度を特定し、そのようなピーク情報を無線でサーバ2に送信する(通常802.11アクセスポイント7a、7bを介して、または802.15.4ゲートウェイ4a、4bを介して)。
【0108】
図5は、Barker-7コードの自己相関関数を示しており、強い相関ピークがはっきりと見えている。
【0109】
標準的なアプローチを使用して、受信した信号をバーカーコードと相関させると、約10cmの精度のタイミング分解能が得られることがわかっている。ただし、現在のシステムでは、バーカー相関データのオーバーサンプリングに基づくアプローチを使用しているため、より良い解像度が得られる。
【0110】
DSSSチップレートは通常4,000/sで、これはMurata(登録商標)超音波トランスデューサの帯域幅によく適合している。チップレートは、キャリア周波数(40kHz)よりも低い整数係数10であり、これはデコーダアルゴリズムの利点である。
【0111】
デコーダの処理は、
1.マイク信号は、キャリア周波数の4倍でサンプリングされ、すなわち 160 kS/s(キロサンプル/秒)、
2.サンプルは、2×40 kS/sのベースバンドで複素信号ストリームを取得するために、キャリア周波数(40kHz)で直交混合され、
3.デシメーションまたは平均化により、情報を失うことなくサンプルレートをさらに削減でき、サンプルは、10の係数でデシメーションまたは平均化するときにクリティカルにサンプリングされ、これにより、2×4 kS/sの複雑なIQデータストリームが生成されるが、例えば5サンプル(2×8 Ks/s)ごとにより緩やかに平均化することにより、ピーク形状から距離精度が大幅に向上する。
【0112】
チップレートを2の係数(2×8 kS/s)でオーバーサンプリングすることにより、バーカー相関強度データを使用して、サブ波長分解能(8.5mm以上)を取得できる。
【0113】
鋭いピークの自己相関特性を有するチッピングシーケンスの場合、次の3点ピーク検出アルゴリズムを使用して、正確なピーク位置の推定値を取得でき、
-点xn:a=xn+1-xnおよびb=xn-xn-1の両側の勾配を計算する、
-a<0かつ b>0 かつxnが適切なしきい値を超える場合、xn付近のピークの存在を検出する、
-正確なピーク位置を次のように計算する、n+b/(b-a)-0.5。
【0114】
勾配aとbの大きさが等しい場合、位置はnとして与えられる。aがbより急な場合、ピーク位置はnより下のサンプルの半分まで配置され、bがaより急な場合、ピーク位置はnより上のサンプルの半分まで配置される。
【0115】
この3点ピークファインダーを使用すると、低しきい値が使用されている場合、典型的には、位置送信機6の5つのスピーカ9、10、11、12、13のそれぞれに対して多くのピーク(スピーカチャネルごとにおよそ30~100)が見つかる。サーバ2は、各ピークの飛行時間を非常に正確に(数ミリメートルまで)知っている。いくつかの実施形態は、より複雑な方法を使用して、サブサンプル精度で推定ピーク位置を見つけることができる(例えば、相関曲線の形状を考慮する)が、これらはより複雑な計算を必要とする。
【0116】
この数を減らすために、大まかな距離ベースのフィルタが適用され、低すぎる信号振幅に関連するピークが破棄される。そのようなピークは、位置がシステムに認識されていない小さな反射面から来る可能性が高いため、これらは正当化される。すべての距離で平坦な振幅しきい値を適用するのではなく、距離に応じて振幅が減少するようにする(到着時間で表される)。一実施形態では、振幅が閾値/(距離^ 2)より大きいピークのみが保持される。
【0117】
位置送信機6の無指向性スピーカ9は重要な役割を果たす。最初に、無指向性信号のため、位置送信機6の近くにあるすべてのタグ3で受信される可能性が最も高いのはチャネルである。第2に、指向性チャネルと無指向性チャネル(指向性チャネルと同じ表面で反射)の大きさの比は、指向性チャネルを介した信号の経路方向に関する重要な情報を提供する。
【0118】
この理由から、残りのピークは、最大の大きさを有するn個の無指向性ピークのみを保持することにより、再度フィルタリングされ、nは通常、6~10の範囲にあってもよい。
【0119】
経路識別のプロセスは、識別された無指向性ピークに時間的に近接したピークを示す他のスピーカチャネルを見つけることによって進む。このようなペアリングまたはクラスタが存在するという事実は、特定の経路について、単一の位置送信機6(実際または仮想)から発信されるすべてのスピーカ信号が、デバイス上の無指向性スピーカ9からの指向性スピーカ10、11、12、13の実際の分離によって定義される、互いの最大飛行時間距離窓内にあるという事実の結果である。ピークを識別する際の解像度の制限を考慮して、これらのクラスタを識別するための無指向性スピーカ分離しきい値から指向性スピーカ分離しきい値に追加の距離マージンを追加できる(例えば、5 cm+無指向性スピーカ9とそれぞれの指向性スピーカ10、11、12、13との間の位置送信機6の実際の分離距離)。
【0120】
位置送信機6からタグ3への1つ以上の反射面を介した複数の異なる経路は同様の経路距離を有しているため、各無指向性ピーク近辺の距離窓内で各指向性スピーカチャネルに対して複数のピークが発生する可能性がある。したがって、各無指向性ピークは、各スピーカチャネルのk個の関連するピークに関連付けられ、ここで、0≦k≦4である。2つのLT経路の距離が重なる場合、例えば、6~10個のピークが近くにある可能性がある。これらのピークは、2つのLT位置間で分離する必要がある。これは、特定の無指向性ピークに対する指向性スピーカチャネルピークのすべての組み合わせを特定し、続いてこれらの候補ピーククラスタを、受信信号強度インジケータ(RSSI)および到着時間差(TDOA)に基づいて、最も妥当な候補を選択するように、整合性について分析することにより行われる。
【0121】
各無指向性ピークに関連付けられた候補をフィルタリングする第1のステップは、位置送信機6の長辺側にあるスピーカ11、13(「長辺」を表すL)からのものであるか、または位置送信機6の短辺側にあるスピーカ10、12(「短辺」を表すS)からのものであるかによって分離することである。次に、グループL、Sごとに、振幅を降順で並べる。それらをL、Sタイプで分類する理由は、LとSの対のそれぞれの指向性および反対の性質により、同じ経路に沿った対向するスピーカのLとSタイプ内の顕著なピークを発見する可能性が非常に低いからである。また、最も顕著なLピークとSピークを選択することはまた、信号経路が位置送信機6の周囲のどの象限から由来しているか効果的に決定され、各象限は長方形の位置送信機の異なるそれぞれの角に中心が置かれる(つまり、図2を見ると左上、右上、右下、左下、図2を表示すると)。
【0122】
各無指向性ピークに関連付けられたピーク候補をLまたはSタイプで分類した後、タグ3またはサーバ2は、振幅比とタイムラグを適格にする組み合わせ<L、S、X>を発見することによって進み、ここで、L、S、Xはここでは、長辺スピーカ11、13、短辺スピーカ10、12、および無指向性スピーカ9にそれぞれ関連する相関ピーク(およびこれらのピークの大きさ)を示す。
【0123】
最初に、LおよびSピーク比が無指向性ピークの大きさと比較される。この背後にある考え方は、LおよびSトランスデューサ対の反対方向の性質により、大きなマグニチュードLまたはSピークが主な関心事であるということである。したがって、サーバ2は、各無指向性ピークXについて、その無指向性ピークXに関連付けられたすべてのピークL、Sの振幅比L/XおよびS/Xの調和平均を計算する。調和平均、または0.25のいずれか大きい方が、その無指向性ピークXのL、Sピークの組み合わせをフィルタリングするためのしきい値として使用される。
【0124】
タグの位置は、球面座標(r、θ、φ)での実位置または仮想位置送信機からの直線経路と見なすことができ、ここで、rは距離、θは送信機6の前面8の平面への法線からの仰角(傾斜または偏角)であり、φは、送信機6の前面8の平面内(すなわち、位置送信機が天井に取り付けられている場合は天井の平面内)の方位角である。
【0125】
経験的に、スピーカ10、11、12、13が送信機6の前面8の法線に対して60度に設定されている場合、次の振幅比は球面傾斜角θでほぼ線形であることが分かった。
【0126】
【数1】
【0127】
この値Sumratioの境界は、L、S、およびXスピーカの角度設定から計算できる。送信機6の前面8の法線から60度の仰角にあるLおよびS、ならびに0度のXの場合、境界は0.5≦Sumratio≦0.9である。これを上記の調和平均しきい値と組み合わせると、L、S、Xピークの組み合わせをフィルタリングできる。
【0128】
スピーカ10、11、12、13が60度に設定されている図2に示されている位置送信機のθの適切な推定値は、次のとおりである。
【0129】
【数2】
【0130】
スピーカ10、11、12、13が異なる角度に設定されている場合、測定またはシミュレーションを通じて代替の関係を決定できる。
【0131】
次に、振幅比から到着角を推定する。
【0132】
一貫したL、S、X振幅の組み合わせの場合、経路角を推定できる。仰角は、上記の合計比に基づいて推定できる。第2の経路角である方位角φは、別の比率を使用して推定できる。
【0133】
【数3】
【0134】
であり、
【0135】
【数4】
【0136】
φ=45の値は、L、S対の等振幅の線を表する。この方程式の2番目の部分は、この等振幅の対角線からの角度偏差である。第3の部分は、考慮される実際のL、S対によって定義される、象限に対するオフセットである。変数nは象限の番号であり、ここで、象限は位置送信機の周りに時計回りに番号が付けられている。
【0137】
各指向性スピーカiがそれぞれのデカルトベクトル位置[ri3]にあり、無指向性スピーカXを原点としているとする。位置送信機からタグまでの経路のほとんどすべての実際的な状況では、トランスデューサ間の距離は位置送信機からタグまでの距離Rに比べて小さくなる。これらの条件下では、位置送信機のすべてのスピーカは部屋のタグの観点からの観察の本質的に同じ角度にある。既知の観測角度を使用して、チャネル間のタイムラグ(または等価的に経路間の距離)を計算できる。
【0138】
まず、サーバ2はデカルト正規化経路ベクトルRnormを計算すると、
【0139】
【数5】
【0140】
特定のLまたはSスピーカの経路距離iと、物理的なピーク経路クラスタの無指向性スピーカ9までの距離の差は、次のように近似でき、
【0141】
【数6】
【0142】
これは、無指向性スピーカ9に対するスピーカiの変位ベクトルの、タグへの経路への投影である。
【0143】
この関係は、サーバ2が、観測された振幅と相対距離の整合性についてピークの組み合わせをチェックできることを意味する。この整合性チェックは、最初にピーク位置に基づいて測定された相対トランスデューサ距離(ΔRi3)に対して、そして次に、上述した信号の大きさの比から推定された相対トランスデューサ距離(ΔRi3)に対して、すべてのピーククラスタ候補(距離窓内の異なるLおよびSピークの組み合わせに関連付けられた無指向性スピーカピーク)を評価することによって実行される。測定された相対距離と推定された相対距離の平均二乗誤差の合計は、単一の同一のLTソース(実際または仮想)から発生する可能性が高いピークの組み合わせを選択するために使用される客観的な測定値を提供する。
【0144】
要約すると、
1.無指向性からL~Sまでのすべてのピーク組み合わせ候補から、サーバ2はまず、振幅比に基づいて、大きく物理的に一貫した比率(組の最大比率値内の制限されたSumratio)を有するL、S、Xの組み合わせを選択する、
2.それぞれの有効なL、S、Xの組み合わせに対して、サーバ2は観測の球面角度つまり方位角および仰角を計算する、
3.観測角度から、サーバ2は各L、Sトランスデューサに対して、Xトランスデューサからの予想経路長の差を計算する、
4.サーバ2は、観測された経路長差を推定された経路長差と比較し、2乗した経路長誤差の合計を計算する、
a.L、S、Xの最適な組み合わせを選択できるようになり、最小の合計2乗誤差を有し、個々の合計2乗誤差のしきい値を満たしているものである。
【0145】
この手順の結果は、位置送信機とタグの間の物理的に一貫した経路に属すると識別された、別々に符号化されたスピーカチャネル全体の相関ピークの組の識別である(つまり、振幅とタイムラグの整合性を示す) 。
【0146】
上記の手順を使用して、サーバ2は、位置送信機の5つのスピーカから生じる相関ピークのクラスタに基づいて、タグ(経路)の観点から位置送信機の観測ベクトルを特定できる。これは、振幅とタイムラグが整合している3つのL、S、Xピークの組み合わせが観察される限り実行できる。後残っているのは、これらの観測ベクトルが関連付けられている可能な位置送信機の位置を見つけることである。位置送信機が実際の物理ユニットである場合、各位置送信機が使用するコードまたはタイムスロットが異なるため、これは通常の課題ではない。ただし、反射の場合、仮想位置送信機を簡単に区別したり、実際の位置送信機と区別したりすることはできない。
【0147】
仮想位置送信機は、任意の顕著な反射面(壁、天井、床、窓など)で実際の位置送信機6をミラーリングするプロセスによって生成できる。ほとんどの状況では、通常の部屋で観察できる最も顕著なピーククラスタを最大2次ミラーリング(つまり、最大2回の反射)で十分にカバーすると考えられている。このプロセスでは、必要に応じて、反射面による吸収による減衰を考慮することができることに留意されたい。
【0148】
位置送信機のすべての特性はミラーリングされ、反射下で減衰される。
【0149】
天井に取り付けられたユニットの場合、サーバ2は、長方形の部屋の4つの壁すべて(サーバ2に位置がわかっている)での1次、2次、場合によっては3次の反射を考慮でき、12個の仮想位置送信機の位置および1つの実際の位置送信機位置をもたらす。3次は、2次の壁の反射が床面でミラーリングされるなど、いくつかの異常な状況で役立つ場合がある。
【0150】
サーバ2が、位置送信機(実または仮想)とタグの間の単一経路に属する可能性が高い物理的に整合したピークの組み合わせを特定すると、サーバ2は、観測されたタイムラグに基づいて観測角度(方位角および仰角)を調整できる。サーバ2は、前述の同期されたスケジュールと正確な3点ピーク検出動作により、タグと位置送信機間の距離を非常に正確に認識する。したがって、飛行時間差(TDOF)アプローチを使用して、到着角の推定値を改善することができる。
【0151】
方法は、
【0152】
【数7】
【0153】
の2乗項の合計を最小化することに依存している。計算された遅れと観測された遅れの間の誤差は、ΔRi3式の線形化されたバージョンを使用して観測角度xを繰り返し近似することにより最小化される、
【0154】
【数8】
【0155】
各反復で、サーバ2はマトリックスを計算する。
【0156】
【数9】
【0157】
角度xの最新の推定値を使用する。
【0158】
振幅比SumratioおよびMinratioからの観測角度は、最小化動作の開始条件として使用される。
【0159】
観測角xの新しい更新は、xの次の線形方程式を解くことで計算できるようになった、
【0160】
【数10】
【0161】
これには、少なくとも3つの異なるピーク<L、S、X>の最小値が正しく識別されている必要があり、この場合、2×2マトリックスHが取得される。
【0162】
角度の変化が所定のしきい値を下回るか、収束しない場合は、しきい値の反復回数に達した後、反復手順は停止する。
【0163】
最後に、観測された遅れに基づいた到着角の改善された推定値を使用して、サーバ2は実際の位置送信機の座標系の経路の観測ベクトルを計算できるようになった。
【0164】
観測ベクトルを元来の実位置または仮想位置送信機に割り当てるプロセスは、方向情報や距離に基づいて最も簡単に実行できる。その信頼性および計算効率は、スピーカの位置および指向性を適切に設計選択することで大幅に向上できる。さまざまな割り当て方法が可能である。
【0165】
A.ジオメトリベース
部屋の主要なリフレクタは通常、壁と床で構成されている。この洞察は、各指向性(または導波管)スピーカが異なる壁に面し、無指向性トランスデューサが床に面するように位置送信機6を配置することで使用できる。次に、各観測ベクトルの振幅および距離の情報の組み合わせを使用して、次のように、観測ベクトルを元来の実際のおよび仮想位置送信機の位置に割り当てることができる。
【0166】
1.距離情報に基づいて観測ベクトルをクラスタ化する。これにより、同じ実位置または仮想位置送信機から発信される観測ベクトル<L、S、X>のグループが生成される。タグが2つの位置送信機の位置から等距離にある場合、観測ベクトルの振幅および方向の情報を使用して、重複する経路を分離する。
2.各<L、S、X>クラスタの受信信号強度インジケータ(RSSI)情報を使用して、対応する候補の位置送信機位置の組を作成する。各スピーカは異なるリフレクタに向けられているため、各位置送信機の位置にはそれぞれの支配的な経路があり、これは、減衰レベルが最も低い経路を意味する。クラスタの振幅情報により、サーバ2は、各クラスタの経路を生成する可能性が高い位置送信機画像を推定できる。
3.それぞれの位置送信機候補の組を考えると、各<L、S、X>クラスタは、その距離情報に基づいて元来の位置送信機に割り当てることができる。クラスタの距離情報により、元来の位置送信機の次数(見通し、1次反射、…、n次反射)を推定できる。
【0167】
B.角度ベース
同じ位置送信機から発信される観測ベクトルのクラスタ<L、S、X>が与えられると、サーバ2は、位置送信機の位置を知ることなく、その到着角度を推定できる(上記参照)。次のように、この情報を使用して、各クラスタを元来の位置送信機に割り当てることができる。
【0168】
1.距離情報に基づいて観測ベクトルをクラスタ化する。これにより、同じ実位置または仮想位置送信機から発信される観測ベクトル<L、S、X>のグループが生成される。タグが2つの位置送信機の位置から等距離にある場合、観測ベクトルの振幅および方向の情報を使用して、重複する経路を分離する。
2.各クラスタの到着角度を推定する。観測ベクトルの距離情報(TOF)を追加する。これにより、各クラスタの到着ベクトルが生成される。クラスタが正しい位置送信機に割り当てられている場合、ベクトルはタグ位置を指すはずである。距離情報が利用できない場合(例えば、TDOFのみを使用する場合)、到着のベクトルを無限の線で置き換えることができる。
3.タグの位置の大まかな推定値が利用可能な場合、各クラスタは、その到着ベクトルがタグの位置推定値に最も近いものを指す実位置または仮想位置送信機位置に割り当てることができる。TDOFを使用する場合、基準はタグ位置推定に最も近い線の点である。
4.それ以外の場合、<クラスタ、位置送信機>の組み合わせを見つけて、ベクトルの到着点の最小グループを作成する。それらはすべて、エラーマージン内で同じ位置を指す必要がある。TDOFを使用する場合、基準は各ペアワイズ到着線の交点である。
【0169】
C.象限ベース
このアプローチは、位置送信機のスピーカのレイアウトが異なるため、奇数個の反射を有する仮想位置送信機が、実際の位置送信機および偶数個の反射を有する仮想位置送信機から区別できるという事実を利用する。アプローチは次のとおりである。
【0170】
1.クラスタ内のLおよびSスピーカのIDから、ピークの大まかな選別(距離に依存する振幅しきい値を使用して、フィルタリングされた最大n個のXピーク)に基づいて、最短距離の経路の象限を特定する。
2.適切なエラーマージンを使用して、象限(実際の位置送信機の位置および方向、ならびに壁、床、天井の位置を知っている)に基づいてタグ位置の境界を計算する。
3.観測ベクトルと実際のまたは仮想の位置送信機のどの組み合わせが物理的な部屋内のタグ位置になるかを試して、それらを保持する。
【0171】
これらの割り当て方法はいずれも、精度と整合性を向上させてタグの位置を計算するための後続の処理で使用できる、多数の経路と関連する位置送信機の位置候補を提供する。
【0172】
タグの位置は、さまざまな三辺測量技術を使用して経路と位置送信機候補の多くの組み合わせを試すことによって最終的に計算される。
【0173】
TOFまたはTDOF測定の不正確性により、標準の三辺測量技術では、タグの位置を確実に推定することができない。幾何学的精度低下率(GDOP)の原理は、屋内測位システムの主要な関心事であり、典型的に、誤差測定はおよそセンチメートルであり、ランドマーク間の距離はメートルに制限される。
【0174】
この点で最も強力なアルゴリズムは、経路長と推定タグ位置の間の最小二乗誤差の合計を取得するための非線形逐次近似アルゴリズムである。ヤコビアンの分析式を使用すると、速度が大幅に向上する。アルゴリズムの変形は、この非線形法と線形最小二乗法の組み合わせである。両方の方法は、W. MurphyおよびW. Heremanによる「Determination of a position in three dimensions using trilateration and approximate distances」、テクニカルレポートMCS-95-07、数学、コンピュータサイエンス学部、コロラドスクールオブマインズ、ゴールデン、コロラド州(1995)に説明されている。
【0175】
ヤコビアン行列の解析式を使用する非線形法は、位置送信機の位置への経路の割り当てが正しく行われていると仮定して、初期位置入力に関係なく非常に正確な位置推定を提供する。ただし、初期位置を適切に推定すると、方法の収束時間を大幅に短縮できる。QR分解を使用した線形法は非常に高速であるが、水平方向の座標は非常に正確であるが、垂直方向の位置推定は非常に不正確になる。したがって、線形方法は、好ましくは、現在の測位サイクルについて、最終的な3D位置推定値を得るための非線形方法への入力として提供できる2D初期位置推定値を取得するためにサーバ2によって使用される。後続の測位サイクルでは、前のサイクルからの位置推定値を次のサイクルの推定値として使用できる。
【0176】
識別された経路が3つ未満の場合、三辺測量アプローチは実行できない。代わりに、単一の最も近いLT位置にある3つ以上のトランスデューサからのTDOA情報を使用して、上記の
【0177】
【数11】
【0178】
の2乗項の合計を最小化するアプローチを使用して、正確な到着角の推定値を決定する。最も近いLTは、遅れと無指向性スピーカからタグまでの距離に基づいて識別できる。おそらく驚くべきことに、このアプローチは、2つのLT位置に関連する情報を使用するよりも正確な位置推定をもたらすことがわかっているため、これがサーバ2がこの状況で初期位置推定を取得するのに行うことである。
【0179】
直線に沿って位置する実際および仮想の位置送信機の位置を含む組み合わせは、直線に直交する方向の解像度が低下する可能性があるため、サーバ2は、有利なことに、使用されるLT位置間の角度をチェックすることによって試行解決策でそのような位置送信機の位置の組み合わせを回避しようとする。
【0180】
最小二乗誤差の推定値は、サーバ2による位置推定アルゴリズムから取得でき、このアルゴリズムを使用して、位置送信機の位置と経路の最も正確な組み合わせを選択できる。
【0181】
サーバ2がタグの最終的な位置推定値に到達すると、適切な方法で(例えば、部屋の3次元表現でタグを表示することにより)ユーザにこれを出力できる。サーバ2は、タグを追跡する際の精度をさらに向上させるために、ドップラーシフト測定からの速度情報、または時間的または空間的連続性の仮定などの追加情報を使用してもよい。
【0182】
電力使用量と処理能力の最適なトレードオフに応じて、サーバ2に割り当てられた測位動作の一部またはすべてを、代わりにタグ3(またはタグと同じ機能を提供するモバイル装置)で実施できる。例えば、タグがスマートフォンに組み込まれている場合、サーバ2ではなくスマートフォン自体で上記の測位タスクを実行するのに十分な処理能力がある。これは、ユーザの位置がモバイル装置で生成され、誰とも共有されないという点で、ユーザのプライバシーの観点からも有利である。
【0183】
逆に、いくつかの実施形態では、タグ3またはモバイル装置は、超音波信号の最小限の処理のみを実行して(例えば、帯域幅を削減する)、受信した超音波信号をサーバ2に全体的に送信する。これには、従来のオーディオストリーミング技術を使用できる。このようにして、タグ3に影響を与えることなく、インフラストラクチャとサーバアプリケーションを簡単に更新および変更できる。
【0184】
本発明は、その1つ以上の複数の特定の実施形態を説明することによって例示されているが、これらの実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲内で、多くの変形および修正が可能であることを当業者は理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5