(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】燃料電池用加湿器
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20220131BHJP
【FI】
H01M8/04 N
(21)【出願番号】P 2019552590
(86)(22)【出願日】2018-02-23
(86)【国際出願番号】 KR2018002258
(87)【国際公開番号】W WO2018182178
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-08-21
(31)【優先権主張番号】10-2017-0038205
(32)【優先日】2017-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】アン、ウンジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ギョンジュ
(72)【発明者】
【氏名】オ、ヨンソク
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】アン、ナヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リー、チャン-ハ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン-ユ
【審査官】西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-147484(JP,A)
【文献】特開2003-065566(JP,A)
【文献】特開2005-156001(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0077531(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04 - 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給される空気を燃料電池スタックから排出される排ガス(off-gas)内の水分(moisture)で加湿し、前記加湿された空気を前記燃料電池スタックに供給する燃料電池用加湿器において、
ハウジングと、前記ハウジング内に配置された多数の中空糸膜とを含む加湿モジュールと、
前記加湿された空気を前記燃料電池スタックに供給するための空気排出ポートを有し、前記加湿モジュールの第1末端に結合された第1キャップであって、前記空気排出ポートは、前記加湿モジュールから離隔している、第1キャップと、
前記加湿された空気から発生する凝縮水を前記排ガスが流れる前記ハウジングの内部空間に送るためのバイパスチューブとを含み、
前記バイパスチューブの本体は前記第1キャップの内部空間に位置し、前記バイパスチューブの
第1端は、前記空気排出ポート内に位置し、
前記バイパスチューブの第2端は前記ハウジングの内部空間に位置することで、前記バイパスチューブの
前記第2端を通して前記バイパスチューブが前記ハウジングの内部空間と流体連通する、燃料電池用加湿器。
【請求項2】
前記外部から供給される空気を受け入れるための空気流入ポートを有し、前記第1末端の反対側の前記加湿モジュールの第2末端に結合された第2キャップをさらに含む、請求項1に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項3】
前記第1キャップの内面と前記加湿モジュールの第1末端によって定められる前記第1キャップの内部空間と、前記第2キャップの内面と前記加湿モジュールの第2末端によって定められる前記第2キャップの内部空間とは、前記中空糸膜の中空(lumens)を通してのみ互いに流体連通する、請求項2に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記燃料電池スタックから前記排ガスを受け入れるための排ガス流入ポートと、前記排ガスを排出するための排ガス排出ポートとを有する、請求項1に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項5】
前記ハウジングは、
前記中空糸膜が入っている第1ハウジングと、
前記第1ハウジングを取り囲み、前記排ガス流入ポートおよび前記排ガス排出ポートを有する第2ハウジングとを含み、
前記第1ハウジングは、前記排ガス流入ポートに対応する第1グループの開口と、前記排ガス排出ポートに対応する第2グループの開口とを有する、請求項4に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項6】
前記中空糸膜は、2以上の中空糸膜束を含み、
前記ハウジングは、
前記2以上の中空糸膜束がそれぞれ入っている2以上の第1ハウジングと、
前記第1ハウジングを取り囲み、前記排ガス流入ポートおよび前記排ガス排出ポートを有する第2ハウジングとを含み、
前記第1ハウジングそれぞれは、前記排ガス流入ポートに対応する第1グループの開口と、前記排ガス排出ポートに対応する第2グループの開口とを有することを特徴とする、請求項4に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項7】
前記凝縮水は、前記第1キャップの内部空間で発生したり、前記中空糸膜から前記第1キャップの内部空間に流入したりした後、前記バイパスチューブを通して前記ハウジングの内部空間に送られる、請求項1に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項8】
前記空気排出ポートの長手方向と前記中空糸膜の長手方向とは、平行でないことを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項9】
前記第1キャップは、前記凝縮水が前記空気排出ポートを通して前記燃料電池スタックに送られるのを防止できるように構成されたリブ(rib)を有し、前記リブは、前記空気排出ポート内に配置され、
前記バイパスチューブの
第1端は、前記リブに隣接して位置することを特徴とする、請求項1または8に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項10】
前記凝縮水に螺旋状経路(spiral path)を提供するためのねじ山(screw thread)が前記空気排出ポートの内面上に形成されていることを特徴とする、請求項1または8に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項11】
前記空気排出ポートに流入して前記螺旋状経路を通して前記ねじ山の末端部(termination portion)に到達する前記凝縮水を前記ハウジングの内部空間に送るために、前記バイパスチューブの
第1端は、前記ねじ山の末端部に隣接して位置することを特徴とする、請求項10に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項12】
前記バイパスチューブは、
前記第1キャップに固定された第1チューブと、
前記加湿モジュールに固定された第2チューブとを含み、
前記第1および第2チューブは、分離可能に結合されたことを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用加湿器。
【請求項13】
前記バイパスチューブは、外部に露出しないことを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池用加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用加湿器に関し、さらに具体的には、稼働中の燃料電池スタックに凝縮水が流入するのを完璧にまたはほぼ完璧に防止することができる燃料電池用加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料の水素を空気中の酸素と反応させて水を生成しながら電気を発生させる装置である。高純度の水素が水素貯蔵タンクから燃料電池用スタックの燃料極(anode)に供給され、ブロワのような空気供給装置を介して大気中の空気が燃料電池用スタックの空気極(cathode)に供給される。
【0003】
燃料電池用スタックの燃料極に供給された水素は、水素イオンと電子とに分離される。水素イオンは、燃料極と空気極との間の高分子電解質膜を介して空気極に移動し、電子は外部導線を介して空気極に移動する。燃料電池用スタックの空気極に供給された酸素が電子および水素イオンと結合して水を生成しながら電気エネルギーを発生させる。
【0004】
燃料電池用スタックの高分子電解質膜のイオン伝導度が高いほど、水素イオンが燃料極から空気極により良く送られる。高分子電解質膜のイオン伝導度は含水率と密接な関係がある。すなわち、高分子電解質膜が十分に濡れているほど、水素イオンが燃料極から空気極により良く送られる。
【0005】
したがって、燃料電池が稼働する時、高分子電解質膜に水分を持続的に供給することで含水率を一定水準以上に維持させることにより、燃料電池の発電効率が急激に低下するのを防止する必要がある。このような目的で、燃料電池用スタックの空気極に供給される空気に水分を提供可能な加湿器が採用される。
【0006】
燃料電池用加湿器は、外部から供給される空気をスタックの空気極から排出される排ガス内の水分で加湿し、このように加湿された空気をスタックの空気極に供給する。
【0007】
加湿された空気が加湿器の物理的構造(例えば、加湿のための中空糸膜、加湿された空気が流れる通路構造など)と接触することにより、加湿器内で凝縮水が生じることは必然である。稼働中の燃料電池スタックに凝縮水が流入すれば、発電効率の低下をもたらす。したがって、稼働中の燃料電池スタックに凝縮水が流入するのを防止するための手段が講じられなければならない。
【0008】
米国特許US7,264,233(以下、’233特許)は、加湿された空気が流れるダウンストリームヘッド(downstream head)3の内部の下部領域(liquid pool area)33に溜まる凝縮水を、排ガスが流れる引き込みマニホールド(lead-in manifold)5に送り可能な加湿器1を開示している。このために、’233特許の加湿器1は、凝縮水が溜まる下部領域(liquid pool area)33と引き込みマニホールド5とを連結するコミュニケーティングチューブ(communicating tube)6を含む。すなわち、凝縮水が重力によって落下してダウンストリームヘッド3の内部の下部領域(「liquid pool area」と称される)33に必ず集まることを前提とする。
【0009】
しかし、’233特許は、(i)加湿が行われる中空糸膜42内でも凝縮水が発生する点、および(ii)低電流モードから高電流モードに切り替えることにより、急に外部空気が高圧で供給される時、中空糸膜42内にとどまっていた凝縮水が前記高圧空気とともに前記中空糸膜42から吐出された後、ダウンストリームヘッド3の内部の下部領域を経ることなく直ちに加湿器1から排出されて燃料電池スタックに流入する点、を見逃している。すなわち、’233特許は、稼働中の燃料電池スタックに相当量の凝縮水が依然として流入するほかなく、それによる発電効率の低下を防止することができない。
【0010】
また、ダウンストリームヘッド3上に形成された’233特許の連通路6は、外部に露出しているため、酷寒の環境で凝縮水がコミュニケーティングチューブ6内で結氷する危険が大きい。このようなコミュニケーティングチューブ6内での凝縮水の結氷は、ダウンストリームヘッド3の内部の下部領域(liquid pool area)33に集まった凝縮水が前記コミュニケーティングチューブ6を通して前記下部領域(liquid pool area)33から抜け出ることを妨げ、その結果、凝縮水が燃料電池スタックに流入して発電効率の低下をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上記の関連技術の制限および欠点に起因する問題点を防止することができる燃料電池用加湿器に関する。
【0012】
本発明の一つの観点は、稼働中の燃料電池スタックに凝縮水が流入するのを完璧にまたはほぼ完璧に防止することができる燃料電池用加湿器を提供することである。
【0013】
上記で言及された本発明の観点以外にも、本発明の他の特徴および利点が以下に説明されたり、そのような説明から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の本発明の一つの観点により、外部から供給される空気を燃料電池スタックから排出される排ガス(off-gas)内の水分(moisture)で加湿し、前記加湿された空気を前記燃料電池スタックに供給する燃料電池用加湿器であって、ハウジングと、前記ハウジング内に配置された多数の中空糸膜とを含む加湿モジュールと、前記加湿された空気を前記燃料電池スタックに供給するための空気排出ポートを有し、前記加湿モジュールの第1末端に結合された第1キャップ(前記空気排出ポートは、前記加湿モジュールから離隔している)と、前記加湿された空気から発生する凝縮水を前記排ガスが流れる前記ハウジングの内部空間に送るためのバイパスチューブとを含み、前記バイパスチューブの一端は、前記空気排出ポート内に位置し、前記バイパスチューブの他端を通して前記バイパスチューブが前記ハウジングの内部空間と流体連通する、燃料電池用加湿器が提供される。
【0015】
前記燃料電池用加湿器は、前記外部から供給される空気を受け入れるための空気流入ポートを有し、前記第1末端の反対側の前記加湿モジュールの第2末端に結合された第2キャップをさらに含んでもよい。
【0016】
前記第1キャップの内面と前記加湿モジュールの第1末端によって定められる前記第1キャップの内部空間と、前記第2キャップの内面と前記加湿モジュールの第2末端によって定められる前記第2キャップの内部空間とは、前記中空糸膜の中空(lumens)を通してのみ互いに流体連通することができる。
【0017】
前記ハウジングは、前記燃料電池スタックから前記排ガスを受け入れるための排ガス流入ポートと、前記排ガスを排出するための排ガス排出ポートとを有することができる。
【0018】
前記ハウジングは、前記中空糸膜が入っている第1ハウジングと、前記第1ハウジングを取り囲み、前記排ガス流入ポートおよび前記排ガス排出ポートを有する第2ハウジングとを含むことができ、前記第1ハウジングは、前記排ガス流入ポートに対応する第1グループの開口と、前記排ガス排出ポートに対応する第2グループの開口とを有することができる。
【0019】
前記中空糸膜は、2以上の中空糸膜束を含むことができ、前記ハウジングは、前記2以上の中空糸膜束がそれぞれ入っている2以上の第1ハウジングと、前記第1ハウジングを取り囲み、前記排ガス流入ポートおよび前記排ガス排出ポートを有する第2ハウジングとを含むことができ、前記第1ハウジングそれぞれは、前記排ガス流入ポートに対応する第1グループの開口と、前記排ガス排出ポートに対応する第2グループの開口とを有することができる。
【0020】
前記凝縮水は、前記第1キャップの内部空間で発生したり、前記中空糸膜から前記第1キャップの内部空間に流入したりした後、前記バイパスチューブを通して前記ハウジングの内部空間に送られる。
【0021】
前記空気排出ポートの長手方向と前記中空糸膜の長手方向とは、平行でなくてもよい。
【0022】
前記第1キャップは、前記凝縮水が前記空気排出ポートを通して前記燃料電池スタックに送られるのを防止するためのリブ(rib)を有することができ(前記リブは、前記空気排出ポート内に配置される)、前記バイパスチューブの一端は、前記リブに隣接して位置してもよい。
【0023】
前記凝縮水に螺旋状経路(spiral path)を提供するためのねじ山(screw thread)が前記空気排出ポートの内面上に形成されてもよい。
【0024】
前記空気排出ポートに流入して前記螺旋状経路を通して前記ねじ山の末端部(termination portion)に到達する前記凝縮水を前記ハウジングの内部空間に送るために、前記バイパスチューブの一端は、前記ねじ山の末端部に隣接して位置してもよい。
【0025】
前記バイパスチューブは、前記第1キャップに固定された第1チューブと、前記加湿モジュールに固定された第2チューブとを含むことができ、前記第1および第2チューブは、分離可能に結合されてもよい。
【0026】
前記バイパスチューブは、外部に露出しないものであってもよい。
【0027】
上記のような一般的記述および以下の詳細な説明はいずれも本発明を例示または説明するためのものに過ぎず、特許請求の範囲の発明に関するより詳細な説明を提供するためのものと理解されなければならない。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、加湿された空気の凝結によって発生するすべての凝縮水、すなわち、第1キャップの内部空間で発生する凝縮水はもちろんのこと、中空糸膜の中空で発生して前記第1キャップの内部空間に流入する凝縮水までもハウジングの内部空間(すなわち、排ガスの流れる空間)に送ることにより、稼働中の燃料電池スタックに凝縮水が流入するのを完璧にまたはほぼ完璧に防止することができる。したがって、燃料電池スタックへの凝縮水の流入による発電効率の低下が防止可能である。
【0029】
また、本発明の一実施形態によれば、本発明のバイパスチューブは、外部に露出しないため、寒い環境でもバイパスチューブ内で凝縮水が結氷することが防止可能である。したがって、バイパスチューブ内での凝縮水の結氷によって凝縮水がバイパスされずに燃料電池スタックに流入することが防止可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
添付した図面は、本発明の理解を助け本明細書の一部を構成するためのものであって、本発明の実施例を例示し、発明の詳細な説明とともに本発明の原理を説明する。
【
図1】本発明の第1実施形態に係る燃料電池用加湿器の断面図であり、
【
図2】本発明の第2実施形態に係る燃料電池用加湿器の断面図であり、
【
図3】本発明の第3実施形態に係る燃料電池用加湿器の第1キャップおよびバイパスチューブを概略的に示し、
【
図4】本発明の一実施形態に係るバイパスチューブを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明の第1実施形態に係る燃料電池用加湿器の断面図である。
【0033】
本発明の燃料電池用加湿器100は、外部から供給される空気を燃料電池スタック(図示せず)から排出される排ガス(off-gas)内の水分(moisture)で加湿し、前記加湿された空気を前記燃料電池スタックに供給する装置である。
【0034】
図1に示されるように、本発明の加湿器100は、第1および第2末端110a、110bを有する加湿モジュール110と、加湿された空気を前記燃料電池スタックに供給するための空気排出ポートOP1を有し、前記第1末端110aに結合された第1キャップ120と、外部から供給される空気を受け入れるための空気流入ポートIP1を有し、前記第2末端110bに結合された第2キャップ130とを含む。
【0035】
前記第1キャップ120の空気排出ポートOP1および前記第2キャップ130の空気流入ポートIP1は、前記加湿モジュール110からそれぞれ離隔している。
【0036】
前記加湿モジュール110は、ハウジング111と、前記ハウジング111内に配置された多数の中空糸膜112とを含む。前記ハウジング111は、燃料電池スタックから排ガスを受け入れるための排ガス流入ポートIP2と、前記排ガスを排出するための排ガス排出ポートOP2とを有する。
【0037】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係るハウジング111は、中空糸膜112が入っている第1ハウジング111aと、前記第1ハウジング111aを取り囲み、前記排ガス流入ポートIP2および前記排ガス排出ポートOP2を有する第2ハウジング111bとを含み、前記第1ハウジング111aは、前記排ガス流入ポートIP2に対応する第1グループの開口H1と、前記排ガス排出ポートOP2に対応する第2グループの開口H2とを有する。
【0038】
中空糸膜112の両末端は、前記第1ハウジング111aの両末端内にそれぞれ形成されている第1固定層113にそれぞれポッティングされており、前記第1ハウジング111aの両末端は、第2固定層114を介して前記第2ハウジング111bの両末端にそれぞれ固定されている。
【0039】
代案的に、本発明のハウジング111は、中空糸膜112が入っている単一ハウジング(single housing)であってもよい。この場合、中空糸膜112の両末端は、前記単一ハウジングの両末端内にそれぞれ形成される固定層にそれぞれポッティングされていてもよい。
【0040】
本発明の他の実施形態によれば、前記中空糸膜112は、2以上の中空糸膜束を含むことができ、前記ハウジング111は、前記2以上の中空糸膜束がそれぞれ入っている2以上の第1ハウジング111aと、前記第1ハウジング111aを取り囲み、前記排ガス流入ポートIP2および前記排ガス排出ポートOP2を有する第2ハウジング111bとを含むことができ、前記第1ハウジング111aそれぞれは、前記排ガス流入ポートIP2に対応する第1グループの開口H1と、前記排ガス排出ポートOP2に対応する第2グループの開口H2とを有することができる。
【0041】
本発明によれば、前記第1キャップ120の内部空間と前記第2キャップ130の内部空間とは、前記中空糸膜112の中空(lumens)を通してのみ互いに流体連通する。前記第1キャップ120の内部空間は、前記第1キャップ120の内面と前記加湿モジュール110の第1末端110aによって定められ、前記第2キャップ130の内部空間は、前記第2キャップ130の内面と前記加湿モジュール110の第2末端110bによって定められる。
【0042】
前記排ガス流入ポートIP2を通してハウジング111内に流入する排ガスは、前記ハウジング111の内部空間内で流れて前記中空糸膜112と接触した後、前記排ガス排出ポートOP2を通してハウジング111の外に排出される。
【0043】
前記空気流入ポートIP1を通して外部から前記第2キャップ130の内部空間に流入した空気は、前記中空糸膜112の中空を通して前記第1キャップ120の内部空間に流れ込んだ後、前記空気排出ポートOP1を通して燃料電池スタックに供給される。
【0044】
空気が前記中空糸膜112の中空に沿って流れる時、ハウジング111の内部空間を流れる排ガス内に含有された水分が前記中空糸膜112を通過して空気に送られることにより前記空気が加湿され、このように加湿された空気が前記第1キャップ120の内部空間に流れ込んだ後、前記空気排出ポートOP1を通して燃料電池スタックに供給される。
【0045】
前述のように、前記加湿された空気が中空糸膜112の中空内でまたは前記第1キャップ120の内部空間内で凝結されることにより発生する凝縮水が燃料電池スタックに流入するのを防止しなければならない。このために、
図1に示されるように、本発明の燃料電池用加湿器100は、バイパスチューブ140をさらに含む。
【0046】
本発明のバイパスチューブ140は、前記第1キャップ120の内部空間で発生したり、前記中空糸膜112から前記第1キャップ120の内部空間に流入したりする凝縮水を排ガスが流れる前記ハウジング111の内部空間に送る。
【0047】
本発明によれば、バイパスチューブ140の一端は、前記空気排出ポートOP1内に位置し、前記バイパスチューブ140の他端を通して前記バイパスチューブ140が前記ハウジング111の内部空間(すなわち、排ガスの流れる空間)と流体連通する。例えば、前記バイパスチューブ140の他端は、前記ハウジング111の内部空間(すなわち、排ガスの流れる空間)内に位置してもよい。前記空気排出ポートOP1に入る凝縮水が気圧の差によって前記バイパスチューブ140に沿ってハウジング111の内部空間に流れることにより、前記凝縮水が燃料電池スタックに送られることが防止可能である。
【0048】
第1キャップ120の内部空間で発生したり、中空糸膜112から第1キャップ120の内部空間に流入したりする凝縮水が燃料電池スタックに移動するためには、第1キャップ120の空気排出ポートOP1を必ず通過しなければならないため、バイパスチューブ140の一端を前記空気排出ポートOP1内に位置させることにより、加湿された空気の凝結によって発生する凝縮水が燃料電池スタックに流入するのを大いに防止することができる。
【0049】
本発明において、前記バイパスチューブ140の位置が特に限定されるものではないが、
図1に示されるように、前記バイパスチューブ140が外部に露出しないように、第1キャップ120の内部空間およびハウジング111の内部空間に配置される。前記バイパスチューブ140が外部に露出していなければ、寒い環境でもバイパスチューブ140内で凝縮水が結氷することが防止可能である。したがって、バイパスチューブ140内での凝縮水の結氷によって凝縮水がバイパスされずに燃料電池スタックに流入することが防止可能である。
【0050】
図1に示されるように、凝縮水が前記空気排出ポートOP1を通して燃料電池スタックに送られるのを防止するためのリブ(rib)121が前記空気排出ポートOP1内に提供される。前記リブ121は、空気排出ポートOP1に入った凝縮水がそれ以上燃料電池スタックに向かって流れることを阻止する。前記リブ121によって流れの阻止された凝縮水が前記リブ121の下に集まる。したがって、
図1に示されるように、バイパスチューブ140の一端は、前記リブ121に隣接して位置してもよい。すなわち、第1キャップ120の本体と空気排出ポートOP1との境界部と第1リブ121との間にバイパスチューブ140の一端が位置してもよい。
【0051】
前述のように、低電流モードから高電流モードに切り替えることにより、急に外部空気が高圧で供給される時、中空糸膜112内にとどまっていた凝縮水が前記高圧空気とともに前記中空糸膜112から吐出されて空気排出ポートOP1に流入する。しかし、前記リブ121が空気排出ポートOP1の通路全体を遮るわけではないので、中空糸膜112から吐出されて空気排出ポートOP1に流入する凝縮水の一部が前記リブ121によって阻止されずに燃料電池スタックに送られる危険が全くないとはいえない。
【0052】
このような危険を最小化するために、
図2に示されるように、本発明の他の実施形態に係る第1キャップ120’の空気排出ポートOP1’は、中空糸膜112の長手方向と平行でない長手方向を有することができる。例えば、加湿された空気が所定角度で上を向いて流れることができるように空気排出ポートOP1’を形成することにより、中空糸膜112の長手方向に吐出される凝縮水の大部分がリブ121’によって阻止できる。
【0053】
しかし、凝縮水の流れを阻止可能にするためには、前記リブ121、121’がある程度以上の大きさを有することが要求されるだけでなく、加湿された空気の流れに垂直な面を有するため、加湿された空気の流れに過度の抵抗がかかって燃料電池の発電効率が低下する危険がある。
【0054】
このような危険を払拭するために、
図3に示されるように、本発明のさらに他の実施形態に係る第1キャップ120”は、空気排出ポートOP1”の内面上に形成されたねじ山(screw thread)122を含むことができる。前記ねじ山122は、空気排出ポートOP1”に流入する凝縮水に螺旋状経路(spiral path)を提供する。
【0055】
前記ねじ山122は、
図1のリブ121を代替することができる。すなわち、中空糸膜112の長手方向に平行な方向に延びた空気排出ポートOP1の内面上にも本発明のねじ山122が形成されてもよい。しかし、
図3に示されるように、加湿された空気が所定角度で上を向いて流れることができるように空気排出ポートOP1”が傾いていれば、空気排出ポートOP1”に流入するほぼすべての凝縮水が前記ねじ山122によって案内を受けられる点でより有利である。
【0056】
空気排出ポートOP1”に流入して螺旋状経路を通して前記ねじ山122の末端部(termination portion)に到達する凝縮水をハウジング111の内部空間に送るために、バイパスチューブ140”の一端は、前記ねじ山122の末端部に隣接して位置してもよい。すなわち、前記バイパスチューブ140”の一端は、前記螺旋状経路を通して前記ねじ山122の末端部に移動した凝縮水をすべて受け入れられるように配置される。
【0057】
図3に示された本発明の実施形態によれば、加湿された空気の流れに過度の抵抗がかかって燃料電池の発電効率が低下するのを防止できるだけでなく、加湿された空気の凝結によって発生するすべての凝縮水、すなわち、第1キャップ120”の内部空間で発生する凝縮水はもちろんのこと、中空糸膜112の中空で発生して前記第1キャップ120”の内部空間に流入する凝縮水までもハウジング111の内部空間(すなわち、排ガスの流れる空間)に送ることにより、稼働中の燃料電池スタックに凝縮水が流入するのを完璧にまたはほぼ完璧に防止することができる。
【0058】
図1~
図3にそれぞれ例示された本発明のバイパスチューブ140、140’、140”は、1つの一体型チューブ(single monolithic tube)であってもよい。
【0059】
代案的に、
図4に示されるように、本発明のバイパスチューブ140、140’、140”は、前記第1キャップ120、120’、120”に固定された第1チューブ141と、前記加湿モジュール110に固定された第2チューブ142とを含むことができ、前記第1および第2チューブ141、142は、分離可能に結合されてもよい。すなわち、第1キャップ120、120’、120”を加湿モジュール110に結合する時、第1チューブ141も第2チューブ142に結合可能で、加湿器100製造工程の便宜性および生産が向上できる。