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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】イソトレチノインとペプチドの結合体
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/64 20170101AFI20220131BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20220131BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20220131BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20220131BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20220131BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 31/203 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
A61K47/64
C07K7/08 ZNA
A61P17/10
A61P31/04
A61P29/00
A61P39/06
A61K8/67
A61K8/64
A61Q19/00
A61Q19/10
A61Q5/12
A61Q5/02
A61Q5/06
A61K31/203
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019561984
(86)(22)【出願日】2018-05-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 KR2018005447
(87)【国際公開番号】W WO2018208124
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2019-12-18
(31)【優先権主張番号】10-2017-0058866
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510271129
【氏名又は名称】ケアジェン カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAREGEN CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン ヨンジ
(72)【発明者】
【氏名】キム ウンミ
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-530657(JP,A)
【文献】特表2010-539245(JP,A)
【文献】特表2005-507934(JP,A)
【文献】特表2008-515770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 31/00-31/80
A61K 8/00- 8/99
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソトレチノインとペプチドが共有結合で連結された構造を有する化合物であって、
前記ペプチドは、配列番号1から構成されるアミノ酸配列を有するペプチドである化合物。
【請求項2】
請求項に記載の化合物を含有する抗菌、抗炎症又は抗酸化用の薬学的組成物。
【請求項3】
請求項に記載の化合物を含有する抗菌、抗炎症又は抗酸化用の化粧料組成物。
【請求項4】
柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレー、パウダー、ヘアトニック、ヘアクリーム、ヘアローション、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアスプレー、ヘアエアロゾル、ポマード、ゾルゲル、エマルジョン、オイル、ワックス及びエアロゾルからなる群より選択される剤形を有する、請求項に記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソトレチノインとペプチドが共有結合で連結された構造を有する化合物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
イソトレチノイン(isotretinoin、13-cis-retinoic acid)は、主にニキビを治療するために用いられる口腔医薬品であって、皮脂分泌、面皰、ニキビ菌であるプロピオニバクテリウムアクネス(Propionibacterium acnes)、毛孔の過多角化症を全て抑制して半永久的効果があるので、ニキビ、特に非常に深刻な結晶嚢性ニキビ 結晶嚢性にきび 結晶嚢性にきびに最も効果的な薬のうちの1つとして知られている。また、イソトレチノインは、まれに扁平上皮癌のような特定の皮膚癌やその他の癌の予防又は治療のために用いられることもあり、致命的な皮膚疾患の一つであるハーレークイン魚鱗癬及び層状魚鱗癬を治療するためにも用いられ得る。イソトレチノインは、ビタミンAに関するレチノイドであって、少ない量ではあるが体内で自然に発見され、この異性質体のトレチノインもまたニキビ治療剤である。
【0003】
イソトレチノインの作用メカニズムは、小さな濾胞上皮(follicular epithelium)の角質化過程を正常化させ、皮脂合成を減少させながらセボサイト(sebocyte)の数を減少させ、ニキビの炎症の原因となる微生物であるプロピオニバクテリウムアクネスを減少させることによりニキビの症状を治療すると報告されている。イソトレチノインは脂溶性であるため水に対する溶解度が低く、食べ物とともに摂取する際に吸収が増加し、空腹時の生体利用率は20%程度である。経口投与の際に最高血中濃度に到達する時間は2~4時間程度であり、投与後6時間以後には活性代謝体である4-ヨウ素-イソトレチノインの血中濃度がイソトレチノインの血中濃度より高いと報告されている。
【0004】
しかし、このようなイソトレチノインを使用すると、皮膚に適用後に相当な不便さを与える皮膚剥脱、皮膚炎、皮膚乾燥、掻痒症、皮膚弱化などの副作用が生じ得るため、敏感性皮膚を有する使用者がこのような化合物を用いる場合にはしばしば損傷を被るようになる。また、イソトレチノインは水に対する溶解度が低いので、これを可溶化するために多様な有機溶媒を添加する必要があるが、これによりイソトレチノインを含む組成物に不便さを増すことになり得る。
【0005】
したがって、前記のようなイソトレチノインの問題点、特に水に対する低い溶解度の問題を改善し、イソトレチノインの生理学的効能もさらに強化させることができる新規の化合物の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国公開特許第10-2002-0033751号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】SK Yang et al., J. Kor. Pharm. Sci., Vol. 37, No. 4, 255-261, 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記のような従来のイソトレチノインが有している問題点を改善するためのものであって、自然型のイソトレチノインが単独で存在する場合と比べて同一であるかさらに優れた生理学的活性を示しながらも、水に対する溶解度などの特性に優れた物質を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するために、本発明は、イソトレチノインとペプチドが共有結合で連結された構造を有する化合物を提供する。
【0010】
本発明の一具現例によれば、前記ペプチドは、2から30個、好ましくは5から20個、さらに好ましくは8から15個、さらに好ましくは10から12個のアミノ酸配列からなっていてもよいが、これに限定されるものではない。
【0011】
本発明の他の具現例によれば、前記ペプチドは、水溶性ペプチドであることが好ましいが、これに限定されるものではない。本発明の好ましい具現例によれば、前記水溶性ペプチドは、親水性側鎖(side chain)を有するアミノ酸の比率が50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは100%と高いことが好ましい。本発明の他の好ましい具現例によれば、前記水溶性ペプチドは、疎水性側鎖を有するアミノ酸が5個以下、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下、より好ましくは2個以下、より好ましくは1個以下で存在し、存在しないことが最も好ましい。
【0012】
本発明の他の具現例によれば、前記ペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列から構成されるペプチドであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0013】
また、本発明は、前記で開示されたいずれかの化合物を含む抗菌、抗炎症又は抗酸化用の薬学的組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、前記で開示されたいずれかの化合物を含む抗菌、抗炎症又は抗酸化用の化粧料組成物を提供する。
【0015】
本発明の一具現例によれば、前記化粧料組成物は、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレー、パウダー、ヘアトニック、ヘアクリーム、ヘアローション、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアスプレー、ヘアエアロゾル、ポマード、ゾルゲル、エマルジョン、オイル、ワックス、エアロゾルのような剤形を有してもよいが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0016】
本発明のイソトレチノインとペプチドが共有結合で連結された構造を有する化合物は、抗菌、抗炎症、又は抗酸化作用のような生理活性に優れるだけではなく、水での溶解度などの特性に優れるため、医薬品又は化粧品などの多様な分野に有用に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の化合物及びイソトレチノインの水に対する溶解度を示す写真である。
図2a】本発明の化合物及びイソトレチノインがセボサイトで発現される皮脂形成信号伝達に連関された遺伝子の発現に及ぶ影響を示すRT-PCR の写真である。
図2b】本発明の化合物及びイソトレチノインがセボサイトで発現される皮脂形成信号伝達に連関された遺伝子の発現に及ぶ影響を示すウェスタンブロット( Western Blot )の写真である。
図3a】本発明の化合物及びイソトレチノインが3T3-L1脂肪前駆細胞で脂肪形成(lipogenesis)に連関された遺伝子の発現に及ぶ影響を示すRT-PCR写真である。
図3b】本発明の化合物及びイソトレチノインが3T3-L1脂肪前駆細胞で脂肪形成(lipogenesis)に連関された遺伝子の発現に及ぶ影響を示すオイルレッド(Oil Red)Oの染色写真である。
図4】本発明の化合物及びイソトレチノインがHaCaT角質細胞で炎症と関連された遺伝子の発現に及ぶ影響を示すRT-PCRの電気泳動写真である。
図5】本発明の化合物及びイソトレチノインがHaCaT角質細胞でMMP(matrix metalloproteinase)の活性に及ぶ影響を示す電気泳動写真及びグラフである。
図6】本発明の化合物及びイソトレチノインがセボサイトで細胞内の活性酸素種の含量に及ぶ影響を示すグラフである。
図7】本発明の化合物及びイソトレチノインが3T3-L1脂肪前駆細胞でガラスグリセロールの放出に及ぶ影響を示すグラフである。
図8a】本発明の化合物及びイソトレチノインが3T3-L1脂肪前駆細胞で脂肪の分解と関連する遺伝子の発現に及ぶ影響を示すRT-PCR写真である。
図8b】本発明の化合物及びイソトレチノインが3T3-L1脂肪前駆細胞で脂肪の分解と関連する遺伝子の発現に及ぶ影響を示すオイルレッドOの染色写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
前記課題を達成するために、本発明は、イソトレチノインとペプチドが共有結合で連結された構造を有する化合物を提供する。
【0019】
前記イソトレチノインは、化学式13-シスレチノイン酸を表すものであって、下記化学式で表される化学的構造を有する。
【0020】
【化1】
【0021】
本明細書において、「ペプチド」という用語は、ペプチド結合によりアミノ酸が互いに結合されて形成された線形の分子を意味する。前記ペプチドは、本技術分野に公知の通常の生物学的又は化学的合成方法、特に固相合成技術(solid-phasesynthesistechniques)によって製造されてもよい(Merrifield,J.Amer.Chem.Soc.,85:2149-54(1963);Stewartetal.,SolidPhasePeptideSynthesis,2nded.、PierceChem.Co.Rockford,111(1984))。
【0022】
前記ペプチドは、好ましくはイソトレチノインの水溶性を増加させるためのものであり、このような側面で、前記ペプチドは水溶性ペプチドであることが好ましいが、これに限定されるものではない。本発明の一具現例によれば、前記ペプチドは、2から30個、好ましくは5から20個、さらに好ましくは8から15個、さらに好ましくは10から12個のアミノ酸配列からなる。本発明の好ましい具現例によれば、前記ペプチドは、親水性側鎖を有するアミノ酸の比率が50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは100%と高いことが好ましい。他の一方、前記ペプチドは、疎水性側鎖を有するアミノ酸の比率が50%未満、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、最も好ましくは0%と低いことが好ましい。
【0023】
本発明において、「親水性側鎖を有するアミノ酸」は、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、リシン(Lys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、システイン(Cys)、セレノシステイン(Sec)、グリシン(Gly)及びプロリン(Pro)を示し、「疎水性側鎖を有するアミノ酸」は、アラニン(Ala)、バリン(Val)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)及びトリプトファン(Trp)を示すが、これに限定されるものではなく、前記のような自然界に存在するアミノ酸以外にもこれらの変形体なども制限なく用いられてもよい。本発明の好ましい具現例によれば、前記疎水性側鎖を有するアミノ酸は、前記ペプチド内に5個以下、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下、より好ましくは2個以下、より好ましくは1個以下で存在し、存在しないことが最も好ましい。本発明の一具現例によれば、前記ペプチドは、配列番号1から配列番号4のアミノ酸配列から構成されるペプチドであることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0024】
本発明の一具現例によれば、本発明の化合物は、水に対する溶解度が優れ(図1参照)、また皮脂の形成に連関された信号伝達遺伝子及びタンパク質の発現を顕著に減少させることができる(図2a及び図2b参照)。本発明の他の具現例によれば、本発明の化合物は、脂肪形成に連関された遺伝子の発現を顕著に減少させ、かつ、濃度依存的に細胞内の脂肪蓄積を減少させることができる(図3a及び図3b参照)。本発明の他の具現例によれば、本発明の化合物は、炎症及び皮膚のしわの形成に関する遺伝子の発現と細胞内の活性酸素種の形成を顕著に減少させることができる(図4から図6参照)。本発明の他の具現例によれば、本発明の化合物は、従来に知られているイソトレチノインのニキビ治療効果以外にも、脂肪分解によるグリセロールの放出と脂肪分解に連関された遺伝子の発現を顕著に増加させるだけでなく、細胞内の脂肪蓄積を減少させる可能性があることを確認した(図7図8a及び図8b)。
【0025】
本発明の化合物は、それ自体でも安定性に優れるが、化合物に結合されたペプチドを構成する任意のアミノ酸を変形させることにより安定性がさらに向上され得る。本発明の一具現例によれば、前記ペプチドのN-末端はアセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基及びポリエチレングリコール(PEG)からなる群より選択される保護基が結合されて安定性をさらに向上させることができる。本発明の他の具現例によれば、前記ペプチドはアセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基及びポリエチレングリコール(PEG)からなる群より選択される保護基が結合されて安定性をさらに向上させることができる。
【0026】
前述したようなアミノ酸の変形は、本発明の化合物の安定性を大きく改善する作用をする。本明細書において、「安定性」という用語は、「生体内(in vivo)」安定性だけではなく、貯蔵安定性(例えば、常温貯蔵安定性)のような「試験管内(in vitro)」安定性も包括する意味として用いられる。また、前述した保護基は、生体内及び試験管内でタンパク質切断酵素の攻撃から本発明の化合物を保護する作用をする。
【0027】
また、本発明は、前記化合物を有効成分として含む抗菌、抗炎症又は抗酸化用組成物を提供する。本発明の他の具現例によれば、本発明は、前記化合物を有効成分として含む皮膚状態改善用組成物を提供する。本発明において、前記組成物は、薬学的組成物又は化粧料組成物の形態であってもよいが、これに限定されるものではない。また、本発明の一具現例によれば、本発明の化合物による皮膚状態の改善は、ニキビの改善、しわの改善、皮膚弾力の改善、皮膚老化の防止、皮膚保湿の改善、傷の除去又は皮膚の再生であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0028】
本発明の組成物は、前述した本発明の化合物を有効成分として含むため、この2つの間に共通された内容は、本明細書の過度な複雑性を避けるためにその記載を省略する。
【0029】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の組成物は、(a)前述した本発明の化合物の薬学的有効量;及び(b)薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物である。
【0030】
本明細書において、「薬学的有効量」という用語は、前述した本発明の化合物の効能又は活性の達成に十分な量を意味する。
【0031】
本発明の薬学的組成物に含まれる薬学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、オキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイル等を含むが、これに限定されるものではない。本発明の薬学的組成物は、前記成分以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁液剤、保存剤等をさらに含んでよい。好適な薬学的に許容される担体及び製剤は、Remington´s Pharmaceutical Sciences(19thed., 1995)に詳しく記載されている。
【0032】
本発明の薬学的組成物は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施し得る方法によって、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することにより、単位容量の形態に製造されるか又は多用量の容器内に内入させて製造されてよい。このとき、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態や、エックス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤又はゲル(例えば、ヒドロゲル)の形態であってもよく、分散剤又は安定化剤をさらに含んでよい。
【0033】
本発明による薬学的組成物は、臨床投与時に経口又は非経口で投与が可能であり、一般的な医薬品製剤の形態で用いられてよい。すなわち、本発明の薬学的組成物は、実際の臨床投与時に経口及び非経口のさまざまな剤形で投与されてよく、製剤化する場合には、通常用いる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤等の希釈剤又は賦形剤を用いて調剤される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等が含まれ、このような固形製剤は、生薬抽出物又は生薬発酵物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース又はラクトース、ゼラチン等を交ぜて調剤される。また、単純な賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤も用いられる。経口投与のための液状製剤としては、懸濁液剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤等が該当されるところ、よく用いられる単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外にさまざまな賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤等が含まれてよい。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁液剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステル等が用いられてよい。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール、マクロゴール、ツイン61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチン等が用いられてよい。
【0034】
投薬の単位は、例えば、個別投薬量の1、2、3又は4倍で、又は1/2、1/3又は1/4倍で含有し得る。個別投薬量は、有効薬物が1回に投与される量を含有し、これは通常、1日投与量の全部、1/2、1/3又は1/4倍に該当する。
【0035】
本発明の薬学的組成物は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施することができる方法によって、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することにより、単位容量の形態に製造されるか又は多用量の容器内に内入させて製造されてよい。このとき、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態や、エックス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤又はゲル(例えば、ヒドロゲル)の形態であってもよく、分散剤又は安定化剤をさらに含んでよい。
【0036】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の組成物は、(a)前述した本発明の化合物の化粧品学的有効量(cosmetically effective amount);及び(b)化粧品学的に許容される担体を含む化粧品組成物であってもよい。
【0037】
本明細書において、「化粧品学的有効量」という用語は、前述した本発明の組成物の皮膚改善効能の達成に十分な量を意味する。
【0038】
本発明の化粧品組成物は、本技術分野で通常製造される任意の剤形にも製造されてよく、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、せっけん、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション及びスプレー等に剤形化されてよいが、これらに限定されるものではない。より具体的には、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレー、パウダー、ヘアトニック、ヘアクリーム、ヘアローション、ヘアシャンプー、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアスプレー、ヘアエアロゾル、ポマード、ゲル等のように、溶液、ゾルゲル、エマルジョン、オイル、ワックス、エアロゾル等の多様な形態に製造されてよいが、これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明の剤形がペースト、クリーム又はゲルである場合には、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク又は酸化亜鉛等が用いられてよい。
【0040】
本発明の剤形がパウダー又はスプレーである場合には、担体成分としてラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート又はポリアミドパウダーが用いられてよく、特にスプレーの場合には、追加的にクロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタン又はジメチルエーテルのような推進体を含んでよいが、これらに限定されるものではない。
【0041】
本発明の剤形が溶液又は乳濁液である場合には、担体成分として溶媒、溶解化剤又は乳濁化剤が用いられ、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカルボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール又はソルビタンの脂肪酸エステルが用いられてよいが、これらに限定されるものではない。
【0042】
本発明の剤形が懸濁液の場合には、担体成分として水、エタノール又はプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁液剤、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガー又はトラガカント等が用いられてよいが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本発明の剤形が界面活性剤含有クレンジングである場合には、担体成分として、脂肪族アルコールスルフェート、脂肪族アルコールエーテルスルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イセチオン酸、イミダゾリウム誘導体、メチルタウリン、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルスルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体又はエトキシ化グリセリン脂肪酸エステル等が利用されてよいが、これらに限定されるものではない。
【0044】
本発明の剤形がヘアシャンプーである場合には、本発明の化合物に、増粘剤、界面活性剤、粘度調節剤、保湿剤、pH調節剤、防腐剤、エッセンシャルオイル等のように、シャンプーを組成するためのベース成分を混合する。増粘剤としてはCDEが用いられてよく、界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤であるLESと両性界面活性剤であるココベタイン、粘度調節剤としてはポリクオタニウム、保湿剤としてグリセリン、pH調節剤としてクエン酸、水酸化ナトリウム、防腐剤としてはグレープフルーツ抽出物が用いられてよく、それ以外にもシダーウッド、ペパーミント、ローズマリー等のエッセンシャルオイルと、シルクアミノ酸、ペンタノール、ビタミンEが添加されてよい。本発明の一具現例によれば、前記本発明の化合物を100重量部にするとき、CDE5~10重量部、LES30~40重量部、ココベタイン10~20重量部、ポリクオタニウム0.1~0.2重量部、グリセリン5~10重量部、グレープフルーツ抽出物0.1~1.01重量部、シルクアミノ酸0.5~1重量部、ペンタノール0.5~1重量部、ビタミンE0.5~2重量部、エッセンシャルオイルとしてシダーウッド、ペパーミント、ローズマリーのうち一つが0.01~0.1重量部混合されてよいが、これらに限定されるものではない。
【0045】
本発明の化粧品組成物に含まれる成分は、有効成分としての本発明の化合物と担体成分の他に化粧品組成物に通常用いられる成分を含み、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料及び香料のような通常の補助剤を含んでよいが、これらに限定されるものではない。
【実施例
【0046】
以下、実施例を介して本発明を詳しく説明する。
但し、下記実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の内容が下記実施例によって限定されるものではない。
【0047】
実施例1.本発明の化合物の合成
<1-1>配列番号1のペプチドの合成
700mgのクロロトリチルクロリド樹脂(Chloro trityl chloride resin;CTL resin,Nova biochem[0064]CatNo.01-64-0021)を反応容器に入れ、メチレンクロリド(MC)10mlを加えて3分間撹拌した。溶液を除去し、ジメチルホルムアミド(DMF)10mlを入れて3分間の間撹拌した後、再び溶媒を除去した。反応器に10mlのジクロロメタン溶液を入れ、Fmoc-Cys(trt)-OH(Bachem、Swiss)200mmole及びジイソプロピルエチルアミン(DIEA)400mmoleを入れた後、撹拌してよく溶かし、1時間の間撹拌しながら反応させた。反応後、洗浄してメタノールとDIEA(2:1)をDCM(dichloromethane)に溶かし、10分間反応させて過量のDCM/DMF(1:1)で洗浄した。溶液を除去し、ジメチルホルムアミド(DMF)を10ml入れて3分間撹拌した後、再び溶媒を除去した。脱保護溶液(20%のピペリジン/DMF)10mlを反応容器に入れ、10分間常温で撹拌した後、溶液を除去した。同量の脱保護溶液を入れて再び10分間反応を維持した後、溶液を除去してそれぞれ3分ずつDMFで2回、MCで1回、DMFで1回洗浄してMet-CTL樹脂を製造した。
【0048】
新たな反応器に10mlのDMF溶液を入れ、Fmoc-Val-OH(Bachem、Swiss)200mmole、HoBt200mmole及びBop200mmoleを入れた後、撹拌してよく溶かした。反応器に400mmoleのDIEAを分画して2回にわたって入れた後、全ての固体が溶けるまで最小限5分間撹拌した。溶かしたアミノ酸混合溶液を、脱保護された樹脂がある反応容器に入れ、1時間の間常温で撹拌しながら反応させた。反応液を除去し、DMF溶液で3回5分ずつ撹拌した後、除去した。反応樹脂を少量採取してカイザーテスト(Nihydrin Test)を用いて反応の程度を点検した。脱保護溶液で前記と同様に2回脱保護反応させ、Val-Met-CTL樹脂を製造した。DMFとMCで十分洗浄し、再度カイザーテストを行った後、前記と同様に下記のアミノ酸付着実験を行った。
【0049】
選定されたアミノ酸配列に基づき、Fmoc-Leu、Fmoc-Phe、Fmoc-Asn(Trt)、Fmoc-Ala、Fmoc-Asn(Trt)、Fmoc-Thr(tBu)、Fmoc-Arg(Pbf)、Fmoc-Asp(tBu)、Fmoc-Ile、Fmoc-Leu、Fmoc-Arg(Pbf)、及びFmoc-Arg(Pbf)の順で連鎖反応をさせた。Fmoc-保護基を脱保護溶液で10分ずつ2回反応させた後、よく洗浄して除去した。無水酢酸とDIEA、HoBtを入れて1時間の間アセチル化を行った後、製造されたペプチジル樹脂をDMF、MC及びメタノールでそれぞれ3回洗浄し、窒素空気をゆっくり流して乾燥した後、P下で真空に減圧して完全に乾燥してから、脱漏溶液[トリフルオロ酢酸95%、蒸溜水2.5%、チオアニソール(Thioanisole)2.5%]30mlを入れた後、常温で時々振りながら2時間反応を維持した。フィルタリングを行って樹脂を濾過し、樹脂を少量のTFA溶液で洗浄した後、母液と合わせた。減圧を用いて全体の体積が半分程度残るように蒸溜し、50mlの冷たいエーテルを加えて沈澱を誘導した後、遠心分離して沈澱を集め、さらに2回冷たいエーテルで洗浄した。母液を除去して窒素下で十分乾燥し、精製前のRRLIDRTNANFLVMペプチド(配列番号1)を1.49g合成した(収率:86.5%)。分子量測定器を用いて測定したとき、分子量1719.1(理論値:1719.2)を得ることができた。
【0050】
【表1】
【0051】
<1-2>本発明の化合物の合成
ペブタイト反応器に脱保護されたペプチド(1mmol)とジメチルホルムアミド(DMF)10mlを入れ、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)270mg(2.0equiv.)とヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(PyBOP)1.04g(2.0equiv.)とイソトレチノイン277mg(2.0equiv.)を添加して30分間反応させた。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)388mg(3equiv.)を添加し、常温で2~4時間の間反応させ、ジエチルエーテル10ml(10mmol)を用いて再結晶をして濾過後、ハイブリッドペプチドを収得した。
【0052】
実験例1.本発明の化合物の溶解度テスト
前記実施例<1-2>で製造されたイソトレチノイン-ペプチド化合物とイソトレチノインをそれぞれ10mg/mlの濃度で蒸溜水に溶解させた。
その結果、イソトレチノイン自体は水に殆ど溶解されないのと対照的に、本発明のイソトレチノイン-ペプチド化合物は、いずれも水に完全に溶解されることを確認した(図1)。
【0053】
実験例2.本発明の化合物の皮脂形成信号伝達の遺伝子発現抑制の効果
実施例<1-2>で合成された本発明のイソトレチノイン-ペプチド化合物が皮脂形成に連関された信号伝達遺伝子の発現に及ぶ影響を確認するため、RT-PCR分析を行った。具体的に、セボサイトに刺激源として100μMのアラキドン酸を処理して刺激させた後、1又は10μMの本発明のイソトレチノイン-ペプチド化合物又はイソトレチノインを処理し、24時間培養した後、培養された細胞から下記のような方法でRNAを分離した後、下記表2に記載されたプライマーを用いて前記化合物が皮脂の形成に関与する信号伝達分子であるcEBPα、PPARγ及びSREBP1cの発現に及ぶ影響を確認した。RNA抽出キット(Qiagen RNeasy kit)を用いて細胞の全体RNAを抽出し、RNAから単一本DNAを合成するために3μgRNA、ランダムヘキサマー2μgとDEPCを処理した水を加え、65℃で5分間反応させた。5×ファーストストランドバッファ5×ファーストストランドバッファー、0.1 M DTT、10mM dNTP、逆転写酵素を入れて総20mlとなるようにし、42℃で1時間の間反応させた。再び95℃で5分間加熱した後、蒸溜水20mlを加えて最終40mlのcDNAを作った。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、3μl cDNA、cEBPα、PPARγ、SREBP1c及びGAPDHの各遺伝子に特異的な、下記表2に示した10pmoleのプライマー、10×Tagバッファ、10mM dNTP及びi-Tag DNA重合酵素を混合して行った。PCR条件は94℃で30秒、55~56℃で30秒、72℃で30秒で反応させた。サイクル数の遺伝子は、PCR結果が指数的に増幅し得る条件で分析した。5mlのPCR産物を得て1%のアガローズゲルに電気泳動し、臭化エチジウム(ethidium bromide)で染色して皮脂形成信号伝達遺伝子であるcEBPα、PPARγ、SREBP1cのmRNAレベルを確認した。
【0054】
【表2】
【0055】
また、セボサイトに対し、刺激源としてニキビ菌であるプロピオニバクテリウムアクネス(100μg/ml)を48時間の間処理して刺激させた後、1又は10μMの本発明のイソトレチノイン-ペプチド化合物又はイソトレチノインを処理し、皮脂の形成に連関された信号伝達タンパク質であるCEBPα及びPPARγの発現をウェスタンブロット分析で確認した。その結果、本発明のイソトレチノインとペプチドが共有結合で連結された構造を有する化合物は、イソトレチノインと比べてかなり低い濃度でも皮脂の形成に連関された信号伝達遺伝子及びタンパク質の発現をより顕著に減少させる可能性があることを確認した(図2a及び図2b)。
【0056】
実験例3.本発明の化合物の脂肪形成抑制の効果
実施例<1-2>で合成された本発明のイソトレチノイン-ペプチド化合物が脂肪形成に連関された遺伝子の発現に及ぶ影響を確認するため、RT-PCR分析を行った。具体的に、3T3 L1脂肪前駆細胞を2×10細胞/ウェルで24ウェルプレートに接種して培養した後、0.5mM IBMX、0.25μMデキサメタゾン、1μg/mlインシュリンが含まれた分化培地に交換し、10μMの本発明のイソトレチノイン-ペプチド化合物又はイソトレチノイン10μMとともに10日間培養した後、前記化合物が脂肪形成に関与する遺伝子であるPPARγ、ACC及びaP2の発現に及ぶ影響を確認した。このため、PPARγ、ACC及びaP2に特異的なプライマーとして下記表3で示したプライマーを用いたことを除いては、前記実験例2と同一の方式でRT-PCRを行った。
【0057】
【表3】
【0058】
また、本発明のイソトレチノイン-ペプチド化合物による脂肪の蓄積抑制の効果を測定するため、3T3 L1細胞を2×10細胞/ウェルで24ウェルプレートに接種して培養した後、10μg/mlインシュリン、0.1μMデキサメタゾン及び0.5μM IBMXが含まれた分化培地に交換し、本発明のイソトレチノイン-ペプチド化合物又はイソトレチノインを処理した。その後2日ごとに10ug/mlのインシュリンが含まれた培地に交換し、分化誘導9日目オイル-レッドO染色の分析を行った。このため、細胞をPBSで洗浄した後、4%パラホルムアルデヒドを10分間処理して固定し、蒸溜水で洗浄した後、60%イソプロパノールで5-10分間インキュベーションした。固定された細胞は、オイルレッド溶液[イソプロパノール内の1%オイルレッドを6:4の体積比でdH2Oに希薄]で30分間染色させた後、再びPBSで洗浄した。染色された細胞は、光学顕微鏡で観察した後、蒸溜水で洗浄し、100%イソプロパノールを1mlずつ入れて4℃で混ぜた後、翌日510nm波長で定量した。その結果、本発明のイソトレチノインとペプチドが共有結合で連結された構造を有する化合物は、イソトレチノインと比べて脂肪形成に連関された遺伝子の発現を顕著に減少させ(図3a)、また化合物に依存的な細胞内脂肪蓄積の程度が減少することを確認した(図3b)。
【0059】
実験例4.本発明の化合物の炎症抑制の効果
実施例<1-2>で合成された本発明のイソトレチノイン-ペプチド化合物がニキビ菌によって誘導される炎症に及ぶ影響を確認するため、RT-PCR分析を行った。具体的に、6ウェルプレートの各ウェルにHaCaT角質細胞を300,000細胞ずつ接種した後、10%FBSを含むDMEM培養液(Gibco、米国)で24時間の間、37℃、5%CO条件下で培養した。新鮮な培地に交換した後、50μg/mlのニキビ菌(P.acnes)、50μMのサリチル酸及び10μM又は50μMのCG-Dinflaを処理し、処理されたニキビ菌に本発明のイソトレチノイン-ペプチド化合物と良性対照群として用いられたイソトレチノインを1又は10μMの濃度で処理した後、前記と同一の条件で24時間の間培養した後、前記化合物が炎症形成に関与する遺伝子であるIFN-γ、IL-1β、IL-6、IL-17A及びTNF-αの発現に及ぶ影響を確認した。このため、IFN-γ、IL-1β、IL-6、IL-17A及びTNF-αに特異的なプライマーとして下記表4に示したプライマーを用いたことを除いては、前記実験例2と同一の方式でRT-PCRを行った。
【0060】
【表4】
【0061】
その結果、本発明のイソトレチノインとペプチドが共有結合で連結された構造を有する化合物は、イソトレチノインと比べて遥かに低い濃度でも炎症の形成に連関された遺伝子の発現をより顕著に減少させる可能性があることを確認した(図4)。
【0062】
実験例5.本発明の化合物のMMP活性抑制の効果
実施例<1-2>で合成された本発明のイソトレチノイン-ペプチド化合物がニキビ菌によって誘導されるMMPの活性に及ぶ影響を確認した。具体的に、HaCaT角質細胞を培養後、1又は10μMの本発明のイソトレチノイン-ペプチド化合物又はイソトレチノインを細胞に前処理し、30分後に刺激剤であるニキビ菌(P.acnes)を処理した。48時間培養した後、培養液を収去し、前記培養液とザイモグラフィー(zymography)バッファ(シグマアルドリッチ)を1:1で反応させた後、20μlの反応液を8%SDS-PAGE(sodium dodecylsulfate-polyacrylamide gel electrophoresis)(10% gelatin)で電気泳動した。その後、ゲルを0.1%Triton X-100バッファ(シグマアルドリッチ)で10分間3回洗浄し、TNCBバッファ(シグマアルドリッチ)で活性化させ、クマシブルー染色した後、バンドの強度を測定した。
【0063】
その結果、本発明のイソトレチノインとペプチドが共有結合で連結された構造を有する化合物は、イソトレチノインと比べて遥かに低い濃度でも皮膚しわの形成に連関されたMMP-9遺伝子の発現をより顕著に減少させる可能性があることを確認した(図5)。
【0064】
実験例6.本発明の化合物の細胞内の活性酸素種抑制の効果
実施例<1-2>で合成された本発明のイソトレチノイン-ペプチド化合物がニキビ菌によって誘導される細胞内の活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)の形成に及ぶ影響を確認した。具体的に、セボサイトを1×10細胞/ウェルで6ウェルプレートに接種し、一晩の間培養した。本発明のイソトレチノイン-ペプチド化合物又はイソトレチノインを細胞に前処理して30分後に刺激剤であるニキビ菌(P.acnes)を100ug/mlの濃度で処理し、48時間の間培養した。DCF-DHを処理して30分後、FACSを用いて蛍光の程度に酸化活性を測定した。
【0065】
その結果、本発明のイソトレチノインとペプチドが共有結合で連結された構造を有する化合物は、イソトレチノインと比べてニキビ菌により誘導される細胞内ROSの形成をより顕著に減少させる可能性があることを確認した(図6)。
【0066】
実施例7.本発明の化合物の脂肪分解の効果(1)
脂肪細胞は、余分のエネルギーを脂肪滴(lipid droplet)中に中性脂肪の形態で貯蔵するが、エネルギーが必要となると、脂肪トリグリセリドリパーゼ(adipose triglyceride lipase)とHSL、モノグリセリドリパーゼ(monoglyceride lipase)のような酵素により脂肪酸とグリセロールに分解され、エネルギーを生産したり細胞信号の伝達又は脂肪合成に用いる。よって、本発明者は、実施例<1-2>で合成された本発明のイソトレチノイン-ペプチド化合物が脂肪分解(lipolysis)に及ぶ影響を確認するため、ガラスグリセロールの放出及び細胞内のトリグリセロール含量分析を行った。具体的に、3T3-L1細胞を2×10細胞/ウェルで24ウェルプレートに接種した後(DMEM、10%BCS)、2日間培養した。10%FBSを含むDMEM培地に交換した後、2日間培養し、0.5mM IBMX、0.25μMデキサメタゾン及び10μg/mlインシュリンを含むDMEM(10%FBS)で2日間さらに培養した。以後、1μg/mlインシュリンを含むDMEM(10%FBS)で2日間培養した後、再び1μg/mlインシュリンを含むDMEM(10%FBS)で3日間培養した。FBS培地に交替するとき、本発明のイソトレチノイン-ペプチド化合物又はイソトレチノインを細胞に処理し、分化8日目の培養液を収去してグリセロール比色分析キット(Cayman)を用いてグリセロール分析を行った。
【0067】
その結果、本発明のイソトレチノインとペプチドが共有結合で連結された構造を有する化合物は、イソトレチノインと比べて脂肪分解によるグリセロールの放出を顕著に増加させた(図7)。
【0068】
実施例8.本発明の化合物の脂肪分解の効果(2)
実施例<1-2>で合成された本発明のイソトレチノイン-ペプチド化合物が脂肪分解に連関された遺伝子の発現に及ぶ影響を確認するため、前記実験例3に開示されたものと同一の方法でRT-PCR分析及びオイルレッドO染色を行った。このとき、脂肪分解に関与する遺伝子としては、CPT1a、Acox、HSL及びATGLを用いて、前記遺伝子に特異的なプライマーとして下記表5に示したプライマーを用いた。対照群として用いられたTNF-αの場合、一般的に脂肪分解の効果が知られており、脂肪分解因子であるHSLのリン酸化及びATGLの発現増加の機能を有しており、これを対照群として用いることにより本発明の化合物の効果を比べた。
【0069】
【表5】
【0070】
その結果、本発明のイソトレチノインとペプチドが共有結合で連結された構造を有する化合物は、イソトレチノインと比べて脂肪分解に連関された遺伝子の発現を顕著に増加させ(図8a)、また細胞内の脂肪蓄積を減少させる可能性があることを確認した(図8b)。
【0071】
製剤例1:柔軟化粧水
前記実施例<1-2>で製造された本発明の化合物を含み、下記組成からなる柔軟化粧水を一般的な化粧水の製造方法により製造した。
【0072】
【表6】
【0073】
製剤例2.栄養クリーム
前記実施例<1-2>で製造された本発明の化合物を含み、下記組成からなる栄養クリームを一般的な栄養クリームの製造方法により製造した。
【0074】
【表7】
【0075】
製剤例3.栄養化粧水
前記実施例<1-2>で製造された本発明の化合物を含み、下記組成からなる栄養化粧水を一般的な化粧水の製造方法により製造した。
【0076】
【表8】
【0077】
製剤例4.エッセンス
前記実施例<1-2>で製造された本発明の化合物を含み、下記組成からなるエッセンスを一般的なエッセンスの製造方法により製造した。
【0078】
【表9】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のイソトレチノインとペプチドが共有結合で連結された構造を有する化合物は、抗菌、抗炎症、又は抗酸化作用のような生理活性に優れるだけではなく、水での溶解度などの特性に優れるため、医薬品又は化粧品などの多様な産業分野に適用される。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
【配列表】
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