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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】プリフォームコーティング装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20220131BHJP
   B05C 13/02 20060101ALI20220131BHJP
   B29C 49/22 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C13/02
B29C49/22
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019562054
(86)(22)【出願日】2018-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2018047669
(87)【国際公開番号】W WO2019131681
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2017248456
(32)【優先日】2017-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100174942
【弁理士】
【氏名又は名称】平方 伸治
(72)【発明者】
【氏名】西山 優範
(72)【発明者】
【氏名】泊 一朗
(72)【発明者】
【氏名】山根 亮
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-064640(JP,A)
【文献】特開2014-151632(JP,A)
【文献】特開2015-199012(JP,A)
【文献】特開昭59-216654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00-13/02
B05D 1/00-7/26
B29C 49/00-49/80
B29B 11/00-11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリフォームを水平方向に保持すると共に、該プリフォームを該プリフォームの軸線回りに回転させる回転保持部であって、前記プリフォームの口部を把持する、回転保持部と、
前記回転保持部を移動させることによって前記プリフォームを搬送する搬送部と、
前記プリフォームに向かってコーティング液を吐出するディスペンサーと、
前記ディスペンサーがコーティング液を吐出している間、前記プリフォームの円筒状胴部の底部側端部を支持するプリフォーム支持部と、
前記ディスペンサーがコーティング液を吐出している間、前記プリフォームの口部の外周面を支持する口部支持部と、
を備え、
前記口部支持部は、該プリフォームの前記口部の前記外周面のうち、該プリフォームの前記軸線を中心にして径方向の最も外側に突出する部分を、該プリフォームの前記軸線と前記回転保持部の回転軸の軸線とが同一となるように支持する、プリフォームコーティング装置。
【請求項2】
前記回転保持部が、前記プリフォームの前記口部の内側を把持する、請求項1に記載のプリフォームコーティング装置。
【請求項3】
前記プリフォームが、炭酸飲料のプラスチックボトル用である、請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載のプリフォームコーティング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックボトル用のプリフォームをコーティング液でコーティングするためのプリフォームコーティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のプラスチック容器(ペットボトル)等のプラスチックボトルが飲料又は食料を収容するのに広く使用されている。プラスチックボトルは、試験管状のプリフォームを延伸ブロー成形で膨らませることによって成形される。
【0003】
特許文献1に開示されるように、酸素及び二酸化炭素のようなガスがプラスチックボトルの内外に透過することを低減すべく、プリフォームの外周面にバリアコーティングを形成することが知られている。バリアコーティングは、コーティング液をプリフォームの外周面に塗布し、塗布されたコーティング液を乾燥させることによって形成される。
【0004】
コーティングを形成するための装置として、例えば特許文献2,3に記載されるプリフォームコーティング装置が知られている。これらの装置では、1つ又は複数のプリフォームがベルトコンベア又はチェーンコンベア等の搬送部に沿って搬送され、水平方向に保持されたプリフォームに向かってディスペンサーからコーティング液が吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-250771号公報
【文献】特開2017-64640号公報
【文献】特開2017-65149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本技術分野においては、プリフォームにコーティング層がより均一になることができる装置の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、プリフォームを水平方向に保持すると共に、該プリフォームを該プリフォームの軸線回りに回転させる回転保持部であって、プリフォームの口部を把持する、回転保持部と、回転保持部を移動させることによってプリフォームを搬送する搬送部と、プリフォームに向かってコーティング液を吐出するディスペンサーと、ディスペンサーがコーティング液を吐出している間、プリフォームの円筒状胴部の底部側端部を支持するプリフォーム支持部と、ディスペンサーがコーティング液を吐出している間、プリフォームの口部の外周面を支持する口部支持部と、を備える、プリフォームコーティング装置である。
【0008】
本開示の一態様によるプリフォームコーティング装置は、プリフォームの円筒状胴部の底部側端部を支持するプリフォーム支持部と、プリフォームの口部の外周面を支持する口部支持部と、を備える。したがって、回転保持部の上下方向の位置精度及び/又は保持精度に因らずに、プリフォームの底部側端部と口部とが一定の位置に支持される。よって、回転の際のプリフォームの偏心が抑制され、プリフォームにコーティングをより正確に形成することができる。
【0009】
口部支持部は、プリフォームの口部の外周面のうち、様々な部分を支持することができる。例えば、口部支持部は、軸線を中心にして径方向の最も外側に突出する部分を支持してもよい。
【0010】
回転保持部は、プリフォームの口部のうち、様々な部分を把持することができる。例えば、回転保持部は、プリフォームの口部の内側を把持してもよい。
【0011】
プリフォームが、炭酸飲料のプラスチックボトル用であってもよい。炭酸飲料のプラスチックボトルは、内圧に耐えるために、高い強度を有するように、したがって、より高い重量を有するように形成され得る。このため、高重量によって、プリフォームの偏心が起こる可能性がある。よって、本発明の効果が好適に発揮され得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プリフォームにコーティング層がより均一にすることができる装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、プラスチックボトル用のプリフォームを示す。
図2図2(a)~(d)は、プリフォームからプラスチックボトルを成形するための延伸ブロー成形法を示す。
図3図3は、プリフォームから成形されたプラスチックボトルを示す。
図4図4は、本発明の第1実施形態に係るプリフォームコーティング装置の主要部分の概略正面図である。
図5図5は、コーティング液を塗布しているときの第1実施形態に係るプリフォームコーティング装置の概略部分側面図である。
図6図6は、ディスペンサーの部分的な正面図である。
図7図7は、本発明の第2実施形態に係るプリフォームコーティング装置の主要部分の概略正面図である。
図8図8は、コーティング液を塗布しているときの上向きのノズルを有するディスペンサーの概略部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0015】
<プラスチックボトルの成形方法>
最初に、図1図3を参照して、プリフォームからプラスチックボトルを成形する方法について簡単に説明する。なお、本明細書において、プラスチックボトルとは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレン(PE)のようなプラスチックから構成されるボトルを意味し、ペットボトルに限定されない。
【0016】
図1は、プラスチックボトル用のプリフォーム1を示す。プリフォーム1はインジェクション(射出)成形法又はPCM(プリフォームコンプレッションモールディング)成形法によって樹脂から成形される。プリフォーム1は、プラスチックボトルのキャップと嵌合する口部1aと、口部1aと隣接する円筒状胴部1bと、円筒状胴部1bの一方の端部を閉塞する底部1cとから成り、試験管のような形状を有する。口部1aの外周面には、プラスチックボトルのキャップの雌ネジと螺合する雄ネジが形成される。プリフォーム1の口部1a側の端部は開いている。
【0017】
プリフォーム1の成形後、プリフォーム1の外周面にはバリアコーティングが形成される。バリアコーティングは、コーティング液をプリフォーム1の外周面に塗布し、塗布されたコーティング液を乾燥させることによって形成される。バリアコーティングは、酸素及び二酸化炭素のようなガスが、プリフォーム1から成形されたプラスチックボトルの内外に透過することを低減し、プラスチックボトルに収容される飲料等の保存寿命を延ばすことができる。また、バリアコーティングは、プラスチックボトルの引掻耐性、防湿性等も向上させることができる。
【0018】
プラスチックボトルは延伸ブロー成形によってプリフォーム1から成形される。図2(a)~(d)は、プリフォーム1からプラスチックボトル3を成形するための延伸ブロー成形法を示す。最初に、図2(a)に示されるように、プリフォーム1がプリフォーム加熱装置40で加熱される。次いで、図2(b)に示されるように、プリフォーム1が金型2に挿入され、金型2が閉じられる。次いで、図2(c)に示されるように、プリフォーム1が延伸ロッド(図示せず)で縦方向に延伸され且つ加圧空気で横方向に延伸される。次いで、図2(d)に示されるように、プリフォーム1が所望の形状まで膨らむと、冷却空気でプラスチックボトル3の内面が冷却され、最終的に、プラスチックボトル3が金型2から取り出される。図3は、プリフォーム1から成形されたプラスチックボトル3を示す。
【0019】
<プリフォームコーティング装置>
以下、図4図6を参照して、本発明の第1実施形態に係るプリフォームコーティング装置について詳細に説明する。図4は、本発明の第1実施形態に係るプリフォームコーティング装置5の主要部分の概略正面図である。
【0020】
プリフォームコーティング装置5は、プリフォーム1にコーティング液を塗布し、塗布されたコーティング液を乾燥させることによってプリフォーム1の外周面にバリアコーティングを形成するように構成される。このため、プリフォームコーティング装置5は、プリフォーム1にコーティング液を塗布するディスペンサー6と、塗布されたコーティング液を乾燥させる乾燥機7とを備える。乾燥機7はディスペンサー6から離間されて配置される。本実施形態では、乾燥機7はディスペンサー6から水平方向に離間されて配置される。
【0021】
プリフォームコーティング装置5は、プリフォーム1を搬送する搬送部8を更に備える。搬送部8はプリフォーム1をディスペンサー6の位置から乾燥機7の位置に向かって移動させる。本実施形態では、搬送部8はベルトコンベアである。搬送部8は、二つのプーリー81a、81bと、プーリー81a、81bに掛けられたベルト82とを有する。プーリー81a、81bは、水平方向に延在するプーリー支持板20に回転可能に固定されている。プーリー支持板20は、鉛直方向に延在する二つの支柱21a、21bによって支持されている。プーリー81a、81bのいずれか一方はモータ(図示せず)によって駆動される。プーリー81a、81bのいずれか一方を図4における時計回りに回転させることによって、ベルト82が図4における時計回りに駆動される。このことによって、搬送部8はプリフォーム1を搬送することができる。なお、プーリーの数は3つ以上であってもよい。また、搬送部8は、プリフォーム1を搬送することができれば、チェーンコンベア等の他の機構であってもよい。
【0022】
プリフォームコーティング装置5は、プリフォーム1を水平方向に保持すると共に、プリフォーム1をプリフォーム1の軸線A回りに回転させる、複数(本実施形態では2つ)の回転保持部9を更に備える。複数の回転保持部9は、所定の間隔で搬送部8の搬送経路に沿って配置されている。複数の回転保持部9の間の間隔は、例えば、搬送部8のベルト又はチェーンのピッチ、及び、プリフォームの直径等を考慮して、任意に決定され得る。プリフォームコーティング装置5は、3つ以上の回転保持部9を備えてもよい。また、プリフォームコーティング装置5は、搬送部8の搬送経路の全周に沿って、複数の回転保持部9を備えてもよい。この場合、搬送部8を拡大することなくより多くのプリフォーム1を搬送するためには、複数の回転保持部9の間の間隔はできるだけ小さいことが望ましい。また、複数の回転保持部9は、複数のバッチに分割されてもよい。この場合、バッチの間の間隔は、回転保持部9の間の間隔と異なってもよい。
【0023】
図5は、コーティング液を塗布しているときのプリフォームコーティング装置5の概略部分側面図である。なお、図5は、図4において右側から見たプリフォームコーティング装置5を示しており、したがって、1つの回転保持部9のみ(及び1つのノズル61のみ)が示されていることに留意されたい。回転保持部9は、プリフォーム1の口部1aを把持するチャック91と、チャック91に連結された回転軸92とを有する。
【0024】
回転保持部9は、チャック91でプリフォーム1の口部1aを把持することによってプリフォーム1を水平方向に保持する。したがって、プリフォーム1は回転保持部9によって片持ちされる。チャック91は、例えば、エアーでプリフォーム1を吸着する真空チャック又はプリフォーム1を機械的に把持するメカチャックである。なお、本実施形態においてチャック91はプリフォーム1の口部1aの内側を把持しているが、チャック91はプリフォーム1の口部1aの外側を把持してもよい。
【0025】
回転軸92はモータ(図示せず)によって駆動されてチャック91と共に回転する。回転軸92の軸線はプリフォーム1の軸線Aと同軸である。したがって、回転保持部9を回転させることによってプリフォーム1をプリフォーム1の軸線A回りに回転させることができる。回転保持部9は、図4に示されるように、ベルト82に連結される。このため、搬送部8は回転保持部9を移動させることによってプリフォーム1を搬送することができる。
【0026】
ディスペンサー6はプリフォーム1の円筒状胴部1bの上部に配置される。ディスペンサー6は、コーティング液を収容すると共に、プリフォーム1に向かってコーティング液を吐出する。コーティング液はポンプ等によってディスペンサー6に供給される。
【0027】
図6は、ディスペンサー6の部分的な正面図である。図6を参照して、ディスペンサー6は、ヘッド60と、シャフト62と、プレート63と、複数(本実施形態では2つ)のノズル61と、を有する。なお、ディスペンサー6は、3つ以上のノズル61を有していてもよい。ディスペンサー6は、例えば、任意の固定具を用いて不図示のフレーム又は床等に固定されることができる。
【0028】
ヘッド60は、コーティング液をノズル61に送り出すための機構、例えば、一軸偏心ネジポンプ若しくは他のポンプ、又は、圧縮空気の力でコーティング液を吐出するエアー式ディスペンサー等を有し得る。
【0029】
シャフト62は、ヘッド60から下方に延びる。シャフト62は、ヘッド60の送り出し機構と流体連通する流路を有している。プレート63は、長尺の平板形状を有しており、その長手方向が、シャフト62の中心軸線に対して垂直になるように、かつ、搬送部8の搬送方向に沿うように、シャフト62の下端に取り付けられている。プレート63は、シャフト62の流路と流体連通する流路を有しており、この流路は、プレート63の長手方向に沿って2方向に分岐している。
【0030】
各ノズル61は、プレート63の下面から下方に延びる。複数のノズル61は、プレート63の長手方向に沿って(すなわち、搬送部8の搬送経路に沿って)所定の間隔でプレート63に取り付けられている。複数のノズル61の間の間隔は、複数の回転保持部9の間の距離と等しく設定されている。各ノズル61は、プレート63の分岐した流路のうちの1つと流体連通する流路を有している。各ノズル61は、長さ調節機構65と、流量調節機構66と、を有している。
【0031】
長さ調節機構65は、ノズル61の上端に形成された雄ねじ65aと、ナット65bと、を含んでいる。雄ねじ65aは、プレート63に形成された雌ねじ(不図示)と係合することができ、ノズル61をプレート63に対して所望の位置においてナット65bで固定することによって、ヘッド60から各ノズル61のスロットまでの距離が他のノズル61と独立に調節可能である。
【0032】
流量調節機構66は、例えば、絞り弁のような機構を含んでもよい。流量調節機構66は、例えば、ナット66aを締めることによって、ノズル61の流路を狭めるように、かつ、ナット66aを緩めることによって、ノズル61の流路を広めるように、構成されることができる。このような構成によって、各ノズル61からのコーティング液の吐出量が調節可能である。
【0033】
各ノズル61の先端にはスロットが形成されている。各ノズル61はプリフォーム1の円筒状胴部1bに向かってスロットからコーティング液を面状に吐出する。スロットの横幅(プリフォーム1の軸線方向における長さ)は、調整可能であり、例えば15mm~40mmである。また、スロットの縦幅(プリフォーム1の軸線方向と垂直な方向における長さ)は、調整可能であり、例えば0.1mm~1.0mmである。また、図6の矢印Zで示されるように、ディスペンサー6は鉛直方向に移動可能である。このため、ノズル61のスロットとプリフォーム1の円筒状胴部1bとの間の距離を調整することができる。なお、本実施形態ではプリフォーム1の上部からコーティング液が吐出されているが、他の方向、例えばプリフォーム1の下部からコーティング液が吐出されてもよい。この場合も、ディスペンサー6は、ノズル61のスロットとプリフォーム1の円筒状胴部1bとの間の距離を調整することができるように構成される。
【0034】
搬送部8は、ディスペンサー6がコーティング液を吐出している間、回転保持部9を移動させない。一方、回転保持部9は、ディスペンサー6がコーティング液を吐出している間、プリフォーム1を回転させる。ディスペンサー6は、プリフォーム1がほぼ一回転する間、コーティング液を吐出し続ける。吐出されたコーティング液はプリフォーム1の円筒状胴部1bの外周面によって巻き取られる。このことによって、プリフォーム1の円筒状胴部1bの外周面全体にコーティング液が塗布される。このとき、プリフォーム1が水平方向に保持されているため、重力によってコーティング液の膜厚がプリフォーム1の底部1cに向かって次第に厚くなることが防止される。
【0035】
しかしながら、本実施形態では、プリフォーム1が回転保持部9によって片持ちされているため、プリフォーム1の回転によってプリフォーム1の底部1c側の外周面がプリフォーム1の軸線Aから離れようとする。言い換えれば、プリフォーム1の回転によってプリフォーム1が偏心する。この結果、プリフォーム1に塗布されるコーティング液の膜厚が不均一になる場合がある。
【0036】
図5を参照して、そこで、本実施形態では、プリフォーム1の偏心を抑制すべく、プリフォームコーティング装置5はプリフォーム支持部10を更に備える。プリフォーム支持部10は、例えば、プリフォーム1と接する平面を有することができる。また、プリフォーム支持部10のプリフォーム1と接する面には、移動するプリフォーム1との滑らかな接触のために、面取りが形成されていてもよい。プリフォーム支持部10は支柱21cによって支持され固定されている。プリフォーム支持部10は、少なくともディスペンサー6がコーティング液を吐出している間、プリフォーム1を回転可能に支持する。プリフォーム支持部10は、塗布されたコーティング液に接触しないように、プリフォーム1の円筒状胴部1bの底部1c側端部を支持する。プリフォーム支持部10の少なくともプリフォーム1との接触部分は、樹脂から構成され、好ましくはポリオキシメチレン(POM)から構成される。このことによって、プリフォーム1の偏心を効果的に抑制しつつ、プリフォーム支持部10とプリフォーム1との接触によってプリフォーム1が傷つくことを抑制することができる。本実施形態では、プリフォーム支持部10は、複数のプリフォーム1を支持することができる(図4参照)。
【0037】
本発明者らは、プリフォーム1が回転保持部9及びプリフォーム支持部10によって両端を支持されるにもかかわらず、いくつかの場合(例えば、プリフォーム1が、炭酸飲料のプラスチックボトル用であり、比較的長い及び/又は重い場合)、プリフォーム1が偏心し得ることを見出した。本発明者らは、回転保持部9のチャック91の上下方向の位置精度及び/又は保持精度等が、プリフォーム1の偏心に影響を与え得ることを見出した。本発明者らは、プリフォーム1の口部1aの外周面を支持することで、チャック91の上下方向の位置精度及び/又は保持精度等に因らずに、プリフォーム1の偏心を低減できることを想到するに至った。
【0038】
図5を参照して、本実施形態では、プリフォーム1の偏心をさらに抑制すべく、プリフォームコーティング装置5は、口部支持部11を更に備える。口部支持部11は、例えば、口部1aと接する平面を有することができる。また、口部支持部11の口部1aと接する面には、移動するプリフォーム1との滑らかな接触のために、面取りが形成されていてもよい。口部支持部11は支柱21dによって支持され固定されている。口部支持部11は、少なくともディスペンサー6がコーティング液を吐出している間、プリフォーム1の口部1aの外周面を回転可能に支持する。これによって、プリフォーム1の口部1aは、チャック91の上下方向の位置精度及び/又は保持精度等に因らずに、口部支持部11によって一定の位置に配置される。このため、プリフォーム1の偏心を効果的に抑制することができる。
【0039】
図1を参照して、口部支持部11は、口部1a(すなわち、コーティング液が塗布されず、かつ、開口を有する、プリフォーム1の部分)の外周面の様々な部分を支持することができる。例えば、口部支持部11は、口部1aの外周面のうち、軸線を中心にして径方向の最も外側に突出する部分、雄ネジが形成されている部分、及び、径方向の最も外側に突出する部分と円筒状胴部1bとの間の部分、のうちの1箇所又は複数箇所を支持してもよい。また、口部支持部11は、チャック91が口部1aの外側を把持する場合は、チャック91と干渉しない部分を支持することができる。口部支持部11の少なくとも口部1aとの接触部分は、樹脂から構成され、好ましくはポリオキシメチレンから構成される。このことによって、口部支持部11と口部1aとの接触によって口部1aが傷つくことを抑制することができる。本実施形態では、口部支持部11は、複数のプリフォーム1の口部1aを支持する。
【0040】
図4を参照して、プリフォーム1は、コーティング液が塗布された後、搬送部8によって乾燥機7の位置まで搬送される。搬送部8は、プリフォーム1を水平方向に保持した状態で搬送する。このことによって、プリフォーム1の搬送中にコーティング液が重力によってプリフォーム1の底部1cに向かって移動することが抑制される。したがって、本実施形態によれば、プリフォーム1の外周面におけるコーティング層の膜厚のバラツキを低減することができる。
【0041】
乾燥機7は例えばカーボンヒータ又は遠赤外線ヒータである。なお、カーボンヒータ及び遠赤外線ヒータの両方が乾燥機7として用いられてもよい。また、乾燥機7は光又は風によってコーティング液を乾燥させるように構成されてもよい。回転保持部9は、乾燥機7がコーティング液を乾燥させている間、プリフォーム1を回転させる。このことによって、プリフォーム1に塗布されたコーティング液を均一に乾燥させることができる。
【0042】
コーティング液を乾燥させた後、搬送部8はプリフォーム1を乾燥機7の下流側に搬送する。その後、回転保持部9はプリフォーム1を解放し、プリフォーム1はプリフォームコーティング装置5から取り出される。したがって、プリフォームコーティング装置5によれば、プリフォーム1の外周面におけるバリアコーティングの形成を自動化することができる。
【0043】
本実施形態において用いられるコーティング液は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)溶液のようなガスバリア性を有するバリアコーティング液である。なお、コーティング液は、水溶性ポリアミド、水溶性ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリグリコール酸のようなバリア樹脂の溶液等であってもよい。また、コーティング液は、上記いずれかの溶液に無機材料が添加されたものであってもよい。バリアコーティング液の粘度は例えば25mPa・s以上10000mPa・s以下である。
【0044】
なお、プリフォーム1に塗布されたバリアコーティング液を乾燥させた後、バリアコーティング液を保護する保護コーティング液をバリアコーティング液の上に更に塗布してもよい。保護コーティング液は、例えば、ポリオレフィン分散溶液、各種変性ポリオレフィン分散溶液、ポリビニルブチラール(PVB)のような非水溶性のコーティング剤である。保護コーティング液の粘度は例えば0.5mPa・s以上100mPa・s以下である。保護コーティング液もバリアコーティング液と同様にプリフォームコーティング装置5を使用してプリフォーム1にコーティングすることができる。
【0045】
以上、本実施形態に係るプリフォームコーティング装置5では、ディスペンサー6が、1つのヘッド60に対して、複数のノズル61を有している。したがって、比較的高価なヘッド60を増やすことなく、複数のノズル61で同時にコーティング液を吐出することができる。また、複数のノズル61の間の間隔が、複数の回転保持部9の間の間隔と等しくなるように設定されている。したがって、搬送部8を拡大することなく複数のプリフォーム1に同時にコーティングを形成することができる。よって、設置面積及び製造コストを増大させることなく、短時間でより多くのプリフォーム1にコーティングを形成することができる。
【0046】
また、プリフォームコーティング装置5では、各ノズル61が、ヘッド60から当該ノズル61のスロットまでの距離を調節するための長さ調節機構65を有する。したがって、ヘッド60の位置を変えることなく、ノズル61のスロットと、プリフォーム1と、の間の間隔を調節することができる。よって例えば、複数のノズル61のコーティング液の吐出範囲にばらつきがある場合に、同様な範囲のコーティングが複数のプリフォーム1に形成されるように、ヘッド60からノズル61のスロットまでの距離を調節することができる。
【0047】
また、プリフォームコーティング装置5では、各ノズル61が、当該ノズル61からのコーティング液の吐出量を調節するための流量調節機構66を有する。したがって、同様なコーティングが複数のプリフォーム1に形成されるように、ノズル61からのコーティング液の吐出量を調節することができる。
【0048】
また、プリフォームコーティング装置5は、プリフォーム1の円筒状胴部1bの底部側端部1cを支持するプリフォーム支持部10と、プリフォーム1の口部1aの外周面を支持する口部支持部11と、を備える。したがって、回転保持部9の上下方向の位置精度及び/又は保持精度に因らずに、プリフォーム1の底部側端部1cと口部1aとが一定の位置に支持される。よって、回転の際のプリフォーム1の偏心が抑制され、プリフォーム1にコーティングをより正確に形成することができる。
【0049】
また、プリフォームコーティング装置5では、口部支持部11は、プリフォーム1の口部1aの外周面のうち、様々な部分を支持することができる。例えば、口部支持部11は、軸線Aを中心にして径方向の最も外側に突出する部分を支持してもよい。
【0050】
また、プリフォームコーティング装置5では、回転保持部9は、プリフォーム1の口部1aのうち、様々な部分を支持することができる。例えば、回転保持部9は、プリフォーム1の口部1aの内側を把持してもよい。
【0051】
また、プリフォームコーティング装置5では、プリフォーム1が、炭酸飲料のプラスチックボトル用であってもよい。炭酸飲料のプラスチックボトルは、内圧に耐えるために、高い強度を有するように、したがって、より高い重量を有するように形成され得る。このため、高重量によって、プリフォーム1の偏心が起こる可能性がある。よって、偏心を抑制するという効果が好適に発揮され得る。
【0052】
次に、第2実施形態に係るプリフォームコーティング装置50について説明する。
【0053】
図7は、本発明の第2実施形態に係るプリフォームコーティング装置50の主要部分の概略正面図である。図7を参照して、プリフォームコーティング装置50は、主に、2つのディスペンサー6A,6Bを備える点で、第1実施形態に係るプリフォームコーティング装置5と異なる。
【0054】
ディスペンサー6Aは、複数(本実施形態では2つ)のノズル61の間隔が、第1実施形態に係るディスペンサー6の複数のノズル61の間隔よりも大きい点で、第1実施形態に係るディスペンサー6と異なる。ディスペンサー6Aのその他の要素は、ディスペンサー6の対応する要素と同様に構成されることができる。
【0055】
ディスペンサー6Bは、ディスペンサー6Aと同様な構成を有するが、ディスペンサー6Bは、ディスペンサー6Aと逆向きに配置されている。具体的には、ディスペンサー6Aは、第1実施形態に係るディスペンサー6と同様に、下向きにコーティング液を吐出する下向きの複数のノズル61を有しており、吐出すべきプリフォーム1の上方に配置されている。対照的に、ディスペンサー6Bは、上向きにコーティング液を吐出する上向きの複数のノズル61を有しており、吐出すべきプリフォーム1の下方に配置されている。
【0056】
本実施形態では、ディスペンサー6Aの複数のノズル61と、ディスペンサー6Bの複数のノズル61とが、搬送部8の搬送経路に沿う方向において、交互に配置されている。したがって、ディスペンサー6Aとディスペンサー6Bとが、搬送部8の搬送経路に沿う方向において、重複する領域を有している。
【0057】
下向きのノズル61の下部に配置されている、プリフォーム支持部10及び口部支持部11(図7において不図示)は、上記の第1実施形態と略同様に構成されることができる。なお、図7に示されるように、本実施形態では、下向きの複数のノズル61の各々に対して、プリフォーム支持部10及び口部支持部11が配置されていることに留意されたい。したがって、プリフォーム1が1本ずつ支持される。また、図7において右側の支柱21cは、ディスペンサー6Bを示すために、一部示されていないことに留意されたい。
【0058】
図8は、コーティング液を塗布しているときの上向きのノズル61を有するディスペンサー6Bの概略部分側面図である。なお、図8は、図7において右側から見たディスペンサー6Bを示しており、したがって、1つのノズル61のみが示されていることに留意されたい。図8に示されるように、上向きのノズル61は、上向きにコーティング液を吐出する。上向きの各ノズル61に対して、プリフォーム支持部10及び口部支持部11が、ノズル61の上部に配置される。したがって、プリフォーム1は、上部のプリフォーム支持部10及び口部支持部11によって支持される。プリフォーム支持部10及び口部支持部11は、例えば、それぞれ支柱21e及び支柱21fに固定されることができる。支柱21e及び支柱21fは、例えば、水平方向に延在する支柱21gに垂下されることができる。支柱21gは、例えば、任意の固定具を用いて不図示のフレーム等に固定されることができる。
【0059】
第2実施形態に係るプリフォームコーティング装置50は、第1実施形態に係るプリフォームコーティング装置5と同様な効果を奏し得る。また、プリフォームコーティング装置50は、ディスペンサー6Aと同様な構成を有するディスペンサー6Bを更に備えており、ディスペンサー6Bが、プリフォーム1の下方に配置されており、ディスペンサー6Aが、プリフォーム1の上方に配置されている。したがって、ディスペンサー6A,6Bを固定するための不図示の固定具及びフレーム等の構成要素の干渉を防止することができる。したがって、装置の拡大を防止することができる。また、ディスペンサーでは、気体がスロットから進入して、気泡がディスペンサーの内部に存在する場合がある。気泡はコーティングの品質に影響を与える場合があり、したがって、気泡をディスペンサーの内部から取り除くことが好ましい。上向きにコーティング液を吐出するディスペンサー6Bでは、気泡は、ノズル内を自然に上昇して、スロットから排出される。したがって、ディスペンサー6Bは、気泡を容易に取り除くことができる。
【0060】
また、プリフォームコーティング装置50では、ディスペンサー6Aの複数のノズル61と、ディスペンサー6Bの複数のノズル61とが、搬送経路に沿う方向において、交互に配置されている。したがって、ディスペンサー6A,6Bは、搬送経路に沿う方向において、重複する領域を有する。したがって、ディスペンサー6A,6Bを配置するための領域を低減することができる。したがって、装置の拡大を防止することができる。
【0061】
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。例えば、第2実施形態に係るプリフォームコーティング装置50では、ディスペンサー6A,6Bが、搬送経路に沿う方向において重複する領域を有している。しかしながら、ディスペンサー6A,6Bが、搬送経路に沿う方向において重複する領域を有していなくてもよく、上向きの複数のノズル61の上流又は下流に、下向きの複数のノズル61が配置されてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 プリフォーム
1a 口部
1b 円筒状胴部
1c 底部
5 プリフォームコーティング装置
6 ディスペンサー(第1のディスペンサー)
6A ディスペンサー(第1のディスペンサー、第2のディスペンサー)
6B ディスペンサー(第1のディスペンサー、第2のディスペンサー)
60 ヘッド
61 ノズル
8 搬送部
9 回転保持部
10 プリフォーム支持部
11 口部支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8