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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】プリフォームコーティング装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20220131BHJP
   B05C 9/14 20060101ALI20220131BHJP
   B05C 13/02 20060101ALI20220131BHJP
   B29C 49/22 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C9/14
B05C13/02
B29C49/22
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019562058
(86)(22)【出願日】2018-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2018047684
(87)【国際公開番号】W WO2019131686
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2017248465
(32)【優先日】2017-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100174942
【弁理士】
【氏名又は名称】平方 伸治
(72)【発明者】
【氏名】西山 優範
(72)【発明者】
【氏名】泊 一朗
(72)【発明者】
【氏名】山根 亮
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-064640(JP,A)
【文献】特開2014-151632(JP,A)
【文献】特開平05-034068(JP,A)
【文献】実開平03-098975(JP,U)
【文献】特開2015-199012(JP,A)
【文献】特開昭59-216654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00-13/02
B05D 1/00-7/26
B29C 49/00-49/80
B29B 11/00-11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリフォームを搬送する搬送部と、
前記プリフォームに向かってコーティング液を吐出するディスペンサーと、
前記搬送部の搬送経路に沿って前記ディスペンサーから離間されて配置されると共に、前記プリフォームに塗布されたコーティング液に赤外線を照射することによって、前記プリフォームに塗布されたコーティング液を乾燥させる乾燥機と、
前記搬送部の前記搬送経路に沿って前記乾燥機の下流側に離間されて配置されると共に、前記乾燥機の下流側から前記赤外線が照射された前記プリフォームに向けて風を送る、送風機構と、
を備える、プリフォームコーティング装置。
【請求項2】
前記送風機構における前記風の流量を調節するための流量調節機構を更に備える、請求項1に記載のプリフォームコーティング装置。
【請求項3】
前記プリフォームを挟んで前記乾燥機と対向する位置に配置された反射部をさらに備える、請求項1又は請求項2に記載のプリフォームコーティング装置。
【請求項4】
前記送風機構は、常温の風を送る、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプリフォームコーティング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックボトル用のプリフォームをコーティング液でコーティングするためのプリフォームコーティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のプラスチック容器(ペットボトル)等のプラスチックボトルが飲料又は食料を収容するのに広く使用されている。プラスチックボトルは、試験管状のプリフォームを延伸ブロー成形で膨らませることによって成形される。
【0003】
特許文献1に開示されるように、酸素及び二酸化炭素のようなガスがプラスチックボトルの内外に透過することを低減すべく、プリフォームの外周面にバリアコーティングを形成することが知られている。バリアコーティングは、コーティング液をプリフォームの外周面に塗布し、塗布されたコーティング液を乾燥させることによって形成される。
【0004】
コーティングを形成するための装置として、例えば特許文献2,3に記載されるプリフォームコーティング装置が知られている。これらの装置では、1つ又は複数のプリフォームがベルトコンベア又はチェーンコンベア等の搬送部に沿って搬送され、保持されたプリフォームに向かってディスペンサーからコーティング液が吐出される。塗布されたコーティング液は、乾燥機によって乾燥される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-250771号公報
【文献】特開2017-64640号公報
【文献】特開2017-65149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本技術分野においては、プリフォームの品質を向上することができる装置の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、プリフォームを搬送する搬送部と、プリフォームに向かってコーティング液を吐出するディスペンサーと、搬送部の搬送経路に沿ってディスペンサーから離間されて配置されると共に、プリフォームに塗布されたコーティング液に赤外線を照射することによって、プリフォームに塗布されたコーティング液を乾燥させる乾燥機と、搬送部の搬送経路に沿って乾燥機から離間されて配置されると共に、赤外線が照射されたプリフォームに向けて風を送る、送風機構と、を備える、プリフォームコーティング装置である。
【0008】
本開示の一態様によるプリフォームコーティング装置では、プリフォームに塗布されたコーティング液は、赤外線の照射に起因する分子の振動によって、乾燥される。赤外線の照射によって、プリフォームの温度が上昇する。プリフォームの温度が過度に上昇すると、プリフォームの軟化及び/又は白化が生じ得る。本開示の一態様によるプリフォームコーティング装置では、乾燥機の下流側に、プリフォームに向けて風を送る送風機構が設けられている。したがって、乾燥機による乾燥に加えて、乾燥機の下流側において風によりコーティング液を乾燥させることができる。よって、乾燥機によりコーティング液を乾燥させるための時間を短くすること、すなわち、乾燥機によりプリフォームに赤外線を照射する時間を短くすることが可能となり、プリフォームの過度の昇温を防止し得る。よって、プリフォームの品質を向上することができる。
【0009】
プリフォームコーティング装置は、送風機構における風の流量を調節するための流量調節機構を更に備えてもよい。この場合、コーティング液を乾燥させるために、流量を最適化できる。
【0010】
プリフォームコーティング装置は、プリフォームを挟んで乾燥機と対向する位置に配置された反射部をさらに備えてもよい。この場合、乾燥機から放出された赤外線を再びプリフォームに向けることができる。したがって、コーティング液を効率的に乾燥することができる。
【0011】
送風機構は、常温の風を送ってもよい。この場合、簡単な送風機構を採用することができる。したがって、装置のコスト上昇を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プリフォームの品質を向上することができる装置を提供することが可能である。また、送風だけでも乾燥できることを見出したことから、送風機構を設けることで、ヒータを短くしても乾燥できるので、装置全体にかかる費用や製造コストをより低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、プラスチックボトル用のプリフォームを示す。
図2図2(a)~(d)は、プリフォームからプラスチックボトルを成形するための延伸ブロー成形法を示す。
図3図3は、プリフォームから成形されたプラスチックボトルを示す。
図4図4は、本発明の実施形態に係るプリフォームコーティング装置の主要部分の概略正面図である。
図5図5は、コーティング液を塗布しているときのプリフォームコーティング装置の概略部分側面図である。
図6図6は、図4中の概略的なVI-VI矢視断面図である。
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0015】
<プラスチックボトルの成形方法>
最初に、図1図3を参照して、プリフォームからプラスチックボトルを成形する方法について簡単に説明する。なお、本明細書において、プラスチックボトルとは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレン(PE)のようなプラスチックから構成されるボトルを意味し、ペットボトルに限定されない。
【0016】
図1は、プラスチックボトル用のプリフォーム1を示す。プリフォーム1はインジェクション(射出)成形法又はPCM(プリフォームコンプレッションモールディング)成形法によって樹脂から成形される。プリフォーム1は、プラスチックボトルのキャップと嵌合する口部1aと、口部1aと隣接する円筒状胴部1bと、円筒状胴部1bの一方の端部を閉塞する底部1cとから成り、試験管のような形状を有する。口部1aの外周面には、プラスチックボトルのキャップの雌ネジと螺合する雄ネジが形成される。プリフォーム1の口部1a側の端部は開いている。
【0017】
プリフォーム1の成形後、プリフォーム1の外周面にはバリアコーティングが形成される。バリアコーティングは、コーティング液をプリフォーム1の外周面に塗布し、塗布されたコーティング液を乾燥させることによって形成される。バリアコーティングは、酸素及び二酸化炭素のようなガスが、プリフォーム1から成形されたプラスチックボトルの内外に透過することを低減し、プラスチックボトルに収容される飲料等の保存寿命を延ばすことができる。また、バリアコーティングは、プラスチックボトルの引掻耐性、防湿性等も向上させることができる。
【0018】
プラスチックボトルは延伸ブロー成形によってプリフォーム1から成形される。図2(a)~(d)は、プリフォーム1からプラスチックボトル3を成形するための延伸ブロー成形法を示す。最初に、図2(a)に示されるように、プリフォーム1がプリフォーム加熱装置40で加熱される。次いで、図2(b)に示されるように、プリフォーム1が金型2に挿入され、金型2が閉じられる。次いで、図2(c)に示されるように、プリフォーム1が延伸ロッド(図示せず)で縦方向に延伸され且つ加圧空気で横方向に延伸される。次いで、図2(d)に示されるように、プリフォーム1が所望の形状まで膨らむと、冷却空気でプラスチックボトル3の内面が冷却され、最終的に、プラスチックボトル3が金型2から取り出される。図3は、プリフォーム1から成形されたプラスチックボトル3を示す。
【0019】
<プリフォームコーティング装置>
以下、図4図6を参照して、本発明の実施形態に係るプリフォームコーティング装置について詳細に説明する。図4は、本発明の実施形態に係るプリフォームコーティング装置5の主要部分の概略正面図である。
【0020】
プリフォームコーティング装置5は、プリフォーム1にコーティング液を塗布し、塗布されたコーティング液を乾燥させることによってプリフォーム1の外周面にバリアコーティングを形成するように構成される。このため、プリフォームコーティング装置5は、プリフォーム1にコーティング液を塗布するディスペンサー6と、塗布されたコーティング液を乾燥させる乾燥機7とを備える。乾燥機7はディスペンサー6から離間されて配置される。本実施形態では、乾燥機7はディスペンサー6から水平方向に離間されて配置される。
【0021】
プリフォームコーティング装置5は、プリフォーム1を搬送する搬送部8を更に備える。搬送部8はプリフォーム1をディスペンサー6の位置から乾燥機7の位置に向かって移動させる。本実施形態では、搬送部8はベルトコンベアである。搬送部8は、二つのプーリー81a、81bと、プーリー81a、81bに掛けられたベルト82とを有する。プーリー81a、81bは、水平方向に延在するプーリー支持板20に回転可能に固定されている。プーリー支持板20は、鉛直方向に延在する二つの支柱21a、21bによって支持されている。プーリー81a、81bのいずれか一方はモータ(図示せず)によって駆動される。プーリー81a、81bのいずれか一方を図4における時計回りに回転させることによって、ベルト82が図4における時計回りに駆動される。このことによって、搬送部8はプリフォーム1を搬送することができる。なお、プーリーの数は3つ以上であってもよい。また、搬送部8は、プリフォーム1を搬送することができれば、チェーンコンベア等の他の機構であってもよい。
【0022】
図5は、コーティング液を塗布しているときのプリフォームコーティング装置5の概略部分側面図である。プリフォームコーティング装置5は、プリフォーム1を水平方向に保持すると共に、プリフォーム1をプリフォーム1の軸線A回りに回転させる回転保持部9を更に備える。回転保持部9は、プリフォーム1の口部1aを把持するチャック91と、チャック91に連結された回転軸92とを有する。
【0023】
回転保持部9は、チャック91でプリフォーム1の口部1aを把持することによってプリフォーム1を水平方向に保持する。したがって、プリフォーム1は回転保持部9によって片持ちされる。チャック91は、例えば、エアーでプリフォーム1を吸着する真空チャック又はプリフォーム1を機械的に把持するメカチャックである。なお、本実施形態においてチャック91はプリフォーム1の口部1aの内側を把持しているが、チャック91はプリフォーム1の口部1aの外側を把持してもよい。
【0024】
回転軸92はモータ(図示せず)によって駆動されてチャック91と共に回転する。回転軸92の軸線はプリフォーム1の軸線Aと同軸である。したがって、回転保持部9を回転させることによってプリフォーム1をプリフォーム1の軸線A回りに回転させることができる。回転保持部9は、図4に示されるように、ベルト82に連結される。このため、搬送部8は回転保持部9を移動させることによってプリフォーム1を搬送することができる。
【0025】
ディスペンサー6はプリフォーム1の円筒状胴部1bの上部に配置される。ディスペンサー6は、コーティング液を収容すると共に、プリフォーム1に向かってコーティング液を吐出する。コーティング液はポンプ等によってディスペンサー6に供給される。
【0026】
ディスペンサー6は、プリフォーム1の円筒状胴部1bに向かってコーティング液を吐出するノズル61を有する。ノズル61の先端にはスロットが形成されている。ディスペンサー6はプリフォーム1に向かってスロットからコーティング液を面状に吐出する。スロットの横幅(プリフォーム1の軸線方向における長さ)は、調整可能であり、例えば15mm~40mmである。また、スロットの縦幅(プリフォーム1の軸線方向と垂直な方向における長さ)は、調整可能であり、例えば0.1mm~1.0mmである。また、ディスペンサー6は鉛直方向に移動可能である。このため、ノズル61のスロットとプリフォーム1の円筒状胴部1bとの間の距離を調整することができる。なお、本実施形態ではプリフォーム1の上部からコーティング液が吐出されているが、他の方向、例えばプリフォーム1の下部からコーティング液が吐出されてもよい。この場合も、ディスペンサー6は、ノズル61のスロットとプリフォーム1の円筒状胴部1bとの間の距離を調整することができるように構成される。
【0027】
搬送部8は、ディスペンサー6がコーティング液を吐出している間、回転保持部9を移動させない。一方、回転保持部9は、ディスペンサー6がコーティング液を吐出している間、プリフォーム1を回転させる。ディスペンサー6は、プリフォーム1がほぼ一回転する間、コーティング液を吐出し続ける。吐出されたコーティング液はプリフォーム1の円筒状胴部1bの外周面によって巻き取られる。このことによって、プリフォーム1の円筒状胴部1bの外周面全体にコーティング液が塗布される。このとき、プリフォーム1が水平方向に保持されているため、重力によってコーティング液の膜厚がプリフォーム1の底部1cに向かって次第に厚くなることが防止される。
【0028】
しかしながら、本実施形態では、プリフォーム1が回転保持部9によって片持ちされているため、プリフォーム1の回転によってプリフォーム1の底部1c側の外周面がプリフォーム1の軸線Aから離れようとする。言い換えれば、プリフォーム1の回転によってプリフォーム1が偏心する。この結果、プリフォーム1に塗布されるコーティング液の膜厚が不均一になる場合がある。
【0029】
そこで、本実施形態では、プリフォーム1の偏心を抑制すべく、プリフォームコーティング装置5はプリフォーム支持部10を更に備える。プリフォーム支持部10は支柱21cによって支持されている。プリフォーム支持部10は、少なくともディスペンサー6がコーティング液を吐出している間、プリフォーム1を回転可能に支持する。プリフォーム支持部10は、塗布されたコーティング液に接触しないように、プリフォーム1の円筒状胴部1bの底部1c側端部を支持する。プリフォーム支持部10の少なくともプリフォーム1との接触部分は、樹脂から構成され、好ましくはポリオキシメチレン(POM)から構成される。このことによって、プリフォーム1の偏心を効果的に抑制しつつ、プリフォーム支持部10とプリフォーム1との接触によってプリフォーム1が傷つくことを抑制することができる。
【0030】
プリフォーム1は、コーティング液が塗布された後、搬送部8によって乾燥機7の位置まで搬送される。搬送部8は、プリフォーム1を水平方向に保持した状態で搬送する。このことによって、プリフォーム1の搬送中にコーティング液が重力によってプリフォーム1の底部1cに向かって移動することが抑制される。したがって、本実施形態によれば、プリフォーム1の外周面におけるコーティング層の膜厚のバラツキを低減することができる。
【0031】
乾燥機7は、搬送部8の搬送経路に沿ってディスペンサー6の下流側にディスペンサー6から離間されて配置されている。乾燥機7は、プリフォーム1に塗布されたコーティング液に向かって赤外線を照射する。プリフォーム1に塗布されたコーティング液は、赤外線の照射に起因する分子の振動によって乾燥される。乾燥機7は例えばカーボンヒータ又は遠赤外線ヒータである。乾燥機7は、例えば、搬送部8の搬送経路に沿って延在することができる。プリフォームコーティング装置5は、乾燥機7を固定するための取付け具71を有することができる。回転保持部9は、乾燥機7がコーティング液を乾燥させている間、プリフォーム1を回転させる。このことによって、プリフォーム1に塗布されたコーティング液を均一に乾燥させることができる。
【0032】
図6は、図4中の概略的なVI-VI矢視断面図である。図6を参照して、本実施形態では、プリフォームコーティング装置5は、反射部72をさらに備える。反射部72は、プリフォーム1を挟んで乾燥機7と対向する位置に配置されている。反射部72は、例えば、搬送部8の搬送経路に沿って延在することができる。反射部72は、乾燥機7から放出された赤外線を再びプリフォーム1に向かわせるように構成されている。反射部72の乾燥機7と対向する面は、例えば、概ね円弧状又は概ねU字状等の断面を有することができる。反射部72は、例えば、乾燥機7と対向する面が鏡面仕上げされている、金属部材(例えば、ステンレス又は他の金属の板)であってもよい。
【0033】
図4を参照して、プリフォームコーティング装置5は、乾燥機7による乾燥中にプリフォーム1に風を送る第1の送風機構31と、乾燥機7の表面に風を送る第2の送風機構32と、乾燥機7の下流においてプリフォーム1に風を送る第3の送風機構33と、を更に備える。
【0034】
図6を参照して、第1の送風機構31は、プリフォーム1が乾燥機7によって赤外線を照射される位置において、プリフォーム1の昇温を低減するための風をプリフォーム1に向けて送る。本実施形態では、第1の送風機構31は、搬送部8の搬送経路において乾燥機7の概ね中央付近において、斜め上方から風を送るように構成されている。第1の送風機構31は、他の場所において、他の方向から風を送るように構成されてもよい。第1の送風機構31は、風を送るための配管31aを有している。配管31aは、例えば、不図示の送風機又は圧縮機等に接続されることができる。
【0035】
赤外線がプリフォーム1を照射しているときに、プリフォーム1の温度は上昇する。プリフォーム1の軟化及び白化を防止するために、第1の送風機構31は、プリフォーム1の温度を所定の温度以下に保つようにプリフォーム1に風を送る。第1の送風機構31は、例えば、常温の風(例えば、空気又は他の気体)をプリフォーム1に向けて送ってもよい。常温の空気とは、追加の装置によって意図的に加熱又は冷却されていない空気(例えば、送風機又は圧縮機周りの空気)であることができる。第1の送風機構31は、例えば、必要があれば、プリフォーム1の昇温を低減することができる範囲内で加熱された風を送ってもよく、又は、冷却された風を送ってもよい。プリフォームコーティング装置5は、プリフォーム1の表面、乾燥機7の表面、並びに、プリフォーム1及び乾燥機7の周囲のうちの少なくとも1つの温度を測ることが可能な温度計(不図示)を備えてもよい。
【0036】
図4を参照して、第1の送風機構31は、流量を調節するための流量調節機構31bを有している。流量調節機構31bは、例えば、流量計及び/又はバルブ等を有することができる。例えば、流量が小さすぎると、プリフォーム1の昇温を十分に低減できない可能性がある。また、例えば、流量が大きすぎると、プリフォーム1に塗布されたコーティング液がなびく可能性があり、コーティング液の厚さにばらつきが生じる可能性がある。この場合、大きい厚さを有する部分のコーティング液が、十分に乾燥されない可能性がある。第1の送風機構31における流量は、例えば、100km3/minであることができる。なお、当該値は、単なる例示であることに留意すべきである。
【0037】
第2の送風機構32は、乾燥機7の表面の昇温を低減するための風を乾燥機7の表面に送る。本実施形態では、第2の送風機構32は、搬送部8の搬送経路において上流側から乾燥機7の表面に風を送るように構成されている。第2の送風機構32は、下流側から又は他の場所から乾燥機7の表面に風を送るように構成されてもよい。第2の送風機構32は、風を送るための配管32aを有している。配管32aは、例えば、不図示の送風機又は圧縮機等に接続されることができる。
【0038】
赤外線がプリフォーム1を照射しているときに、乾燥機7の表面の温度は上昇する。乾燥機7の表面の温度が過度に上昇すると、プリフォーム1に余分な熱を与える可能性がある。本発明者らは、乾燥機7は、赤外線の照射に起因する分子の振動によってコーティング液を乾燥させるため、乾燥機7の表面の温度を低下させても、コーティング液を乾燥させるための時間は変わらない又は略変わらないことを見出した。第2の送風機構32は、乾燥機7の表面の昇温を低減することによって、プリフォーム1に余分な熱が伝わることを防止し得る。第2の送風機構32は、例えば、常温の風を乾燥機7の表面に向けて送ってもよい。第2の送風機構32は、例えば、必要があれば、乾燥機7の表面の昇温を低減することができる範囲内で加熱された風を送ってもよく、又は、冷却された風を送ってもよい。
【0039】
第2の送風機構32は、流量を調節するための流量調節機構32bを有している。流量調節機構32bは、例えば、流量計及び/又はバルブ等を有することができる。第2の送風機構32における流量は、例えば、第1の送風機構31における流量よりも大きくてもよく、例えば、500km3/minであることができる。なお、当該値は、単なる例示であることに留意すべきである。
【0040】
第3の送風機構33は、搬送部8の搬送経路に沿って乾燥機7の下流側に乾燥機7から離間されて配置されている。第3の送風機構33は、赤外線が照射されたプリフォーム1に向けて風を送る。第3の送風機構33は、風を送るための配管33aを有している。配管33aは、例えば、不図示の送風機又は圧縮機等に接続されることができる。
【0041】
赤外線が照射されたプリフォーム1の温度は、しばらくの間、常温まで下がらない。したがって、コーティング液が未乾燥の状態でプリフォーム1を乾燥機7の下流に搬送しても、余熱によってコーティング液が乾燥され得る。この状態のプリフォーム1に風を送ることによって、コーティング液の乾燥を促進することができる。このため、第3の送風機構33は、乾燥機7によってプリフォーム1に赤外線を照射する時間を短くし得る。第3の送風機構33は、例えば、常温の風をプリフォーム1に向けて送ってもよい。第3の送風機構33は、例えば、必要があれば、加熱された風を送ってもよく、又は、冷却された風を送ってもよい。
【0042】
第3の送風機構33は、流量を調節するための流量調節機構33bを有している。流量調節機構33bは、例えば、流量計及び/又はバルブ等を有することができる。例えば、流量が小さすぎると、プリフォーム1に塗布されたコーティング液を乾燥させるために、数分を要する可能性がある。また、例えば、流量が大きすぎると、プリフォーム1に塗布されたコーティング液がなびく可能性があり、コーティング液の厚さにばらつきが生じる可能性がある。この場合、大きい厚さを有する部分のコーティング液が、十分に乾燥されない可能性がある。第3の送風機構33における流量は、例えば、100km3/minであることができる。なお、当該値は、単なる例示であることに留意すべきである。
【0043】
コーティング液を乾燥させた後、搬送部8はプリフォーム1を第3の送風機構33の下流側に搬送する。その後、回転保持部9はプリフォーム1を解放し、プリフォーム1はプリフォームコーティング装置5から取り出される。したがって、プリフォームコーティング装置5によれば、プリフォーム1の外周面におけるバリアコーティングの形成を自動化することができる。
【0044】
本実施形態において用いられるコーティング液は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)溶液のようなガスバリア性を有するバリアコーティング液である。なお、コーティング液は、水溶性ポリアミド、水溶性ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリグリコール酸のようなバリア樹脂の溶液等であってもよい。また、コーティング液は、上記いずれかの溶液に無機材料が添加されたものであってもよい。バリアコーティング液の粘度は例えば25mPa・s以上10000mPa・s以下である。
【0045】
なお、プリフォーム1に塗布されたバリアコーティング液を乾燥させた後、バリアコーティング液を保護する保護コーティング液をバリアコーティング液の上に更に塗布してもよい。保護コーティング液は、例えば、ポリオレフィン分散溶液、各種変性ポリオレフィン分散溶液、ポリビニルブチラール(PVB)のような非水溶性のコーティング剤である。保護コーティング液の粘度は例えば0.5mPa・s以上100mPa・s以下である。保護コーティング液もバリアコーティング液と同様にプリフォームコーティング装置5を使用してプリフォーム1にコーティングすることができる。
【0046】
以上、本実施形態に係るプリフォームコーティング装置5では、プリフォーム1に塗布されたコーティング液は、赤外線の照射に起因する分子の振動によって、乾燥される。赤外線の照射によって、プリフォーム1の温度が上昇する。プリフォーム1の温度が過度に上昇すると、プリフォーム1の軟化及び/又は白化が生じ得る。プリフォームコーティング装置5では、プリフォーム1が乾燥機7によって赤外線を照射される位置において、第1の送風機構31によって、プリフォーム1の昇温を低減するための風がプリフォーム1に向けて送られる。したがって、プリフォーム1の過度の昇温を防止し得る。よって、プリフォーム1の品質を向上することができる。
【0047】
また、プリフォームコーティング装置5は、第1の送風機構31における風の流量を調節するための流量調節機構31bを更に備えている。したがって、プリフォーム1の昇温を低減するために、流量を最適化できる。
【0048】
また、プリフォームコーティング装置5は、プリフォーム1を挟んで乾燥機7と対向する位置に配置された反射部72をさらに備えている。したがって、乾燥機7から放出された赤外線を再びプリフォーム1に向けることができる。したがって、コーティング液を効率的に乾燥することができる。
【0049】
また、第1の送風機構31は、常温の風を送る。したがって、簡単な送風機構を採用することができ、装置のコスト上昇を抑制することができる。
【0050】
また、プリフォームコーティング装置5は、乾燥機7の表面の昇温を低減するための風を乾燥機7の表面に送る第2の送風機構32を更に備える。したがって、乾燥機7の表面からプリフォーム1に余分な熱が伝わることを防止し得る。
【0051】
また、プリフォームコーティング装置5は、第2の送風機構32における風の流量を調節するための流量調節機構32bを更に備える。したがって、乾燥機7の表面の昇温を低減するために、流量を最適化できる。
【0052】
また、第2の送風機構32は、常温の風を送る。したがって、簡単な送風機構を採用することができ、装置のコスト上昇を抑制することができる。
【0053】
また、プリフォームコーティング装置5では、乾燥機7の下流側に、プリフォーム1に向けて風を送る第3の送風機構33が設けられている。したがって、乾燥機7による乾燥に加えて、乾燥機7の下流側において風によりコーティング液を乾燥させることができる。よって、乾燥機7によりコーティング液を乾燥させるための時間を短くすること、すなわち、乾燥機7によりプリフォーム1に赤外線を照射する時間を短くすることが可能となり、プリフォーム1の過度の昇温を防止し得る。よって、プリフォーム1の品質を向上することができる。
【0054】
また、プリフォームコーティング装置5は、第3の送風機構33における風の流量を調節するための流量調節機構33bを更に備えている。したがって、コーティング液を乾燥させるために、流量を最適化できる。
【0055】
また、第3の送風機構33は、常温の風を送る。したがって、簡単な送風機構を採用することができ、装置のコスト上昇を抑制することができる。
【0056】
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。例えば、プリフォームコーティング装置5は複数の回転保持部9を備えてもよい。この場合、複数の回転保持部9は搬送部8のベルト82に沿って所定の間隔で離間されて配置され、搬送部8は複数のプリフォーム1を連続的に搬送することができる。この構成によって、複数のプリフォーム1を連続的にコーティングすることができ、ひいてはプリフォーム1の生産性を向上させることができる。
【0057】
また、例えば、プリフォームコーティング装置5は、複数のディスペンサー6を備えてもよい。また、例えば、ディスペンサー6は、複数のノズル61を備えてもよい。
【0058】
また、例えば、プリフォームコーティング装置5は、反射部72を備えてなくてもよい。この場合、プリフォームコーティング装置5は、図6に示される、プリフォーム1の上方に配置された乾燥機7に加えて、乾燥機7と対向する位置に配置された(プリフォーム1の下方に配置された)別の乾燥機を備えてもよい。この場合、追加の乾燥機に対しても、第2の送風機構が設けられてもよい。
【0059】
また、例えば、回転保持部9は、プリフォーム1を水平方向以外の方向に保持してもよい。
【実施例
【0060】
第1の送風機構及び第3の送風機構の効果を確認するために、以下の条件で、プリフォームに塗布されたコーティング液を乾燥させた。
コーティング液:PVA溶液
コーティング液塗布量:230mg
乾燥機:プリフォームの上方及び下方に配置されたヒータ
第1の送風機構の流量:100km3/min(なお、第1の送風機構の流量及び第3の送風機構の流量が160km3/min以上では、コーティング液がなびいて、乾燥不良が発生した。)
第3の送風機構の流量:100km3/min
【0061】
結果を、表1に示す。表1中の乾燥時間は、コーティング液を乾燥させるために要した時間を示す。第3の送風機構を用いる実施例2~5では、乾燥時間として、ヒータ及び/又は第1の送風機構による乾燥時間(上側の値)に加えて、第3の送風機構による乾燥時間(下側の値)も示されている。
【0062】
【表1】
【0063】
比較例では、ヒータのみによってコーティング液を乾燥させた。ヒータ温度は、550℃であった。プリフォームには、最も大きな軟化が発生した。また、プリフォームには、白化が発生した。
【0064】
実施例1では、ヒータ及び第1の送風機構によってコーティング液を乾燥させた。ヒータ温度は、550℃であった。プリフォームには、大きな軟化が発生したが、白化は発生しなかった。比較例及び実施例1を比較することによって、第1の送風機構は、プリフォームの品質を向上することができることがわかる。
【0065】
実施例2では、ヒータ、第1の送風機構及び第3の送風機構によってコーティング液を乾燥させた。ヒータ温度は、550℃であった。プリフォームには、中程度の軟化が発生した。実施例1及び実施例2を比較することによって、第3の送風機構は、プリフォームの品質をさらに向上することができることがわかる。
【0066】
実施例3では、ヒータ、第1の送風機構及び第3の送風機構によってコーティング液を乾燥させた。ヒータ温度は、300℃であった。プリフォームには、小さな軟化が発生した。
【0067】
実施例4では、ヒータ、第1の送風機構及び第3の送風機構によってコーティング液を乾燥させた。ヒータ温度は、100℃であった。プリフォームには、軟化は発生しなかった。
【0068】
実施例5では、ヒータ及び第3の送風機構によってコーティング液を乾燥させた。ヒータ温度は、100℃であった。プリフォームには、軟化は発生しなかった。
【0069】
反射部の効果を確認するために、以下の条件で、プリフォームに塗布されたコーティング液を乾燥させた。
コーティング液:PVA溶液
コーティング液塗布量:230mg
乾燥機:プリフォームの上方及び下方に配置されたヒータ
乾燥機の温度:300℃
反射部:鏡面加工されたステンレスの板
【0070】
結果を、表2に示す。表2中の乾燥時間は、コーティング液を乾燥させるために要した時間を示す。
【0071】
【表2】
【0072】
実施例7及び実施例8を比較することによって、反射部を用いることによって乾燥時間が150秒から120秒まで低減されたことがわかる。これによって、反射部を用いることによって、コーティング液を効率的に乾燥することができることがわかる。
【符号の説明】
【0073】
1 プリフォーム
5 プリフォームコーティング装置
6 ディスペンサー
7 乾燥機
8 搬送部
31 第1の送風機構
31b 流量調節機構
32 第2の送風機構
32b 流量調節機構
33 第3の送風機構
33b 流量調節機構
72 反射部
図1
図2
図3
図4
図5
図6