(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】樹脂酸フェニレフリン粒子の製造プロセス
(51)【国際特許分類】
A61K 31/137 20060101AFI20220131BHJP
A61K 47/58 20170101ALI20220131BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220131BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
A61K31/137
A61K47/58
A61K47/38
A61P11/02
(21)【出願番号】P 2020080087
(22)【出願日】2020-04-30
(62)【分割の表示】P 2017531236の分割
【原出願日】2015-12-11
【審査請求日】2020-04-30
(32)【優先日】2014-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515233487
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・コンシューマー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Consumer Inc.
【住所又は居所原語表記】199 Grandview Road, Skillman, NJ 08558, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】チェン・ビンセント・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】リ・シュン-ポル
(72)【発明者】
【氏名】コック・エドワード・エイ
(72)【発明者】
【氏名】リー・デア-ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ワルドマン・ジョエル
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-530298(JP,A)
【文献】国際公開第2014/149525(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物-樹脂複合体を調製するためのプロセスであって、
工程A:
精製水とカチオン性ポリスチレンスルホン酸である樹脂とを容器内で混合して第1の混合物を形成することと、
前記第1の混合物を濾過して、樹脂を含む湿ったケークを形成することと、
前記樹脂を含む湿ったケークを精製水ですすぐことと、
すすがれた前記樹脂を含む湿ったケークを濾過することと、
工程B:
精製した薬物と水とを容器内で混合して薬物溶液を形成することであって、前記薬物はフェニレフリンであり、工程Aで提供された濾過された前記樹脂を含む湿ったケーク中の樹脂の全重量に対する工程Bで提供された
前記薬剤溶液中の薬剤の全重量の比が約1より大きい、ことと、
工程C:
工程Aで提供された濾過された前記樹脂を含む湿ったケークと工程Bで提供された前記薬物溶液の第1の部分とを容器内で混合して、第2の混合物を形成することと、
前記第2の混合物を濾過して、第1の搭載された樹脂酸塩を形成することと、
工程D:
工程Cで提供された前記第1の搭載された樹脂酸塩と工程Bで提供された前記薬物溶液の第2の部分とを容器内で混合して、第3の混合物を形成することと、
前記第3の混合物を濾過して、第2の搭載された樹脂酸塩を形成することと、
工程E:
任意選択的に、工程Bで提供された全ての前記薬物溶液が、前の工程で提供された前記搭載された樹脂酸塩と混合されて、搭載された樹脂酸塩を提供するまで、工程Dを複数回繰り返すことと、
工程F:
前記搭載された樹脂酸塩を乾燥さ
せることと、
工程G:
行程Fで提供された乾燥した前記搭載された樹脂酸塩を、酢酸セルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースを含むコーティング溶液でコーティングして、前記薬物-樹脂複合体を形成することと、を含み、
前記薬物-樹脂複合体は、26.4mg以下の量で前記樹脂を含む、プロセス。
【請求項2】
前記カチオン性ポリスチレンスルホン酸が、前記フェニレフリンと組み合わされる前に約74μm~約177μmの粒径を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
工程Aで提供された濾過された前記樹脂を含む湿ったケーク中の樹脂の全重量に対する工程Bで提供された
前記薬剤溶液中の薬剤の全重量の比が約1.25である、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
工程Aで提供された濾過された前記樹脂を含む湿ったケーク中の樹脂の全重量に対する工程Bで提供された
前記薬剤溶液中の薬剤の全重量の比が約1.33である、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項5】
工程Aで提供された濾過された前記樹脂を含む湿ったケーク中の樹脂の全重量に対する工程Bで提供された
前記薬剤溶液中の薬剤の全重量の比が約1.4である、請求項1または2に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体、半固体、又は液体剤形に好適なフェニレフリン粒子に関する。フェニレフリン粒子(被覆されていてもよい)は、長期間にわたって薬学的に好適な血漿濃度を提供する速度でフェニレフリンを放出する。本発明は、フェニレフリン粒子を含む剤形を製造するプロセス、及び剤形の経口投与によってヒト被験体における鼻及び呼吸器の鬱血を軽減する方法にも関する。剤形は、更に、抗ヒスタミン剤、鬱血除去剤、鎮痛剤、抗炎症剤、解熱剤、鎮咳剤、及び去痰剤からなる群のうちの1つ以上から選択される1つ以上の追加の治療的に有効な薬剤を含むことができる。
【背景技術】
【0002】
フェニレフリンは、直接的及び間接的の両方の交感神経刺激効果を有する強力な血管収縮剤である[Hoffman 2001]。優位且つ直接的な効果は、α1-アドレナリン受容体におけるアゴニズムである。鼻粘膜の容量血管(後毛細管小静脈)に位置するα1-アドレナリン受容体を刺激すると、血管収縮、血液量の減少、及び鼻粘膜の体積減少(抗鼻充血)が生じる[Johnson 1993]。血管収縮により、鼻、喉、及び洞の内膜に入る流体が少なくなり、粘膜産生の減少に加えて鼻粘膜の炎症の減少が生じる[Johnson 1993]。したがって、血管、主に鼻道に位置するものを収縮させることによって、フェニレフリンは、鼻充血を減少させる[Hoffman 2001、Empey 1981]。
【0003】
フェニレフリンは、第I類(一般的に安全且つ有効と認められるもの(GRASE:Generally Regarded as Safe and Effective))の一般用医薬品(OTC)経口抗鼻充血剤である。世界的に、フェニレフリンは、1960年代から利用可能であり、1996年から、フェニレフリンは、米国で広く用いられている。OTCの成人及び小児用の鎮咳及び風邪薬で広く用いられている塩酸フェニレフリンは、一般的な風邪、花粉症、又は他の上気道アレルギー(アレルギー性鼻炎)による鼻充血を一時的に緩和するための成人及び小児による使用が示されている。成人における経口投与のために10mgの錠剤で市販されている。投与計画は、24時間で60mg(6用量)を超えないように、4時間ごとに1つの10mgのフェニレフリンを投与するものである。完全な情報は、承認薬のOTCモノグラフラベルにおいて入手可能である。
【0004】
フェニレフリン、化学名(R)-1-(3-ヒドロキシフェニル)-2-メチルアミノエタノールは、塩酸塩として市販されている。実験式は、C9H13NO2・HClであり、分子量は、203.67である。白からオフホワイトの結晶質粉末である化合物は、以下の化学構造を有する:
【0005】
【0006】
フェニレフリン代謝の主な経路は、硫酸抱合(主に、腸壁における)、並びにA形態とB形態との両方のモノアミンオキシダーゼによる酸化的脱アミノである[Suzuki 1979]。グルクロン酸抱合も生じるが、より少ない程度である。ある研究では、8時間にわたって30mg用量を経口投与した後[Ibrahim 1983]、フェニレフリンは、それぞれ、用量の47%、30%、12%、及び6%で硫酸フェニレフリン、m-ヒドロキシマンデル酸、フェニレフリン-グルクロニド、及びm-ヒドロキシ-フェニルグリコール硫酸に代謝された。脱アミンは、フェニレフリンの静脈内注射後の主な代謝系路であるが[Hengstmann 1982]、硫酸抱合は、経口投与後の主な経路である。ヒトにおけるフェニレフリンの第I相及び第II相代謝産物を以下に示す。略図中の百分率の値は、Ibrahimによって報告された経口用量の百分率を指す。
【0007】
【0008】
成人における即時放出フェニレフリンの使用の臨床試験から得られた有効性データは、フェニレフリンが有効な抗鼻充血剤であることを示す。
【0009】
アセトアミノフェンは、鎮痛及び解熱活性を有するパラアミノフェノール誘導体である。これは、一般的な風邪、腰痛、頭痛、歯痛、生理痛、及び筋肉痛に伴う軽微な痛み及び疼痛を一時的に緩和するため、並びに関節炎の軽微な痛みを一時的に緩和するため、及び解熱のために用いられる。米国におけるアセトアミノフェンの成人用量は、4~6時間ごとに1000mgであり、24時間で最高4000mgである。徐放アセトアミノフェンの成人用量は、8時間ごとに1300mgであり、24時間で最高3900mgである。
【0010】
アセトアミノフェンは、3つの主な平行経路:グルクロン酸抱合、硫酸化、及び酸化を介して肝臓によって主に代謝される[Miners 1983;Slattery 1989;Lee 1992;Miners 1992]。グルクロン酸及び酸化経路の両方は、一次速度プロセスに従い、これは、代謝されるアセトアミノフェンの濃度が、肝臓中の濃度が増大するにつれて増大することを意味する。硫酸経路は、ミカエリス-メンテン速度式に従い、これは、肝臓中の濃度がいったん飽和レベルを超えると、代謝されるアセトアミノフェンの濃度が一定に保たれることを意味する。
【0011】
アセトアミノフェン代謝の略図を以下に示す。治療用量の9%未満が、変化せずに尿に排出される[Miners 1992]。主な代謝経路は、グルクロン酸抱合であり、この場合、アセトアミノフェン用量の47%~62%がグルクロニドと抱合する。これらのグルクロニド抱合体は、不活性且つ非毒性であり[Koch-Weser 1976]、胆汁に分泌され、尿に排出される。グルクロン酸抱合体は、必須補助因子としてのウリジン5’-ジホスホグルクロン酸と共に、グルクロニルトランスフェラーゼ(UGT1A6)[Court 2001]の1つのイソ型によって主に触媒される。
【0012】
アセトアミノフェン代謝の第2の主な経路は、硫酸化であり、この場合、用量の25%~36%が硫酸と抱合する。これらの硫酸エステル抱合体も、不活性且つ非毒性であり[Koch-Weser 1976]、即座に尿に排出される。硫酸化は、異種細胞質内酵素であるスルホトランスフェラーゼによって媒介され、3’-ホスホアデノシン5’-リン酸が補助因子である。硫酸の枯渇ではなくスルホトランスフェラーゼ活性が、アセトアミノフェンの硫酸化の律速因子である[Blackledge 1991]。
【0013】
第3の経路は、酸化であり、この場合、アセトアミノフェンの用量の5%~8%が、シトクロームP-450酵素系を介して代謝される。アセトアミノフェンの代謝に主に関与しているシトクロームP-450アイソエンザイムは、CYP2E1である[Manyike 2000]。アセトアミノフェンがCYP2E1によって代謝されるとき、それは、反応性の高い中間体であるN-アセチル-p-ベンゾキノンイミン(NAPQI)を形成する。NAPQIは反応性が高いので、肝臓外で測定することができず、貯留することもできない。この中間体は、グルタチオンの肝細胞貯蔵によって速やかに不活化されて、システイン及びメルカプツレート抱合体を形成し、これは、不活性且つ非毒性である[Koch-Weser 1976]。これらの抱合体は、尿に排出される[Mitchell 1974]。
【0014】
【0015】
送達頻度がより低いフェニレフリンに対する必要性がある。投与頻度を下げることにより、患者のコンプライアンスが改善される。更に、活性成分の治療血漿濃度が一定であることにより、従来の即時放出製剤を複数回投与したときにみられる変動に比べて、より有効であり更には効果的にすることができる。有効濃度が持続することにより、高いピーク血漿濃度でみられる副作用の重篤度及び頻度を低下させることができる。したがって、例えば、6、8、12、16、20、又は24時間に1回等の低頻度で投与することができるフェニレフリンの製剤が必要とされている。
【0016】
また、即時放出フェニレフリンよりも長い持続時間を提供する活性物質とフェニレフリンの持続時間とを一致させる必要もある。
【0017】
米国特許出願公開第20070281020号(Schering-Plough Corporation)は、30mgのフェニレフリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、Kollidon CL-M、コロイド状二酸化ケイ素、及びステアリン酸マグネシウムを含む持続放出錠剤のヒト被験体への投与、並びに前記持続放出錠剤と10mgの即時放出フェニレフリンの3回投与との比較について開示している。
【0018】
米国特許第8,282,957号(McNeil-PPC,Inc.)は、Eudragit RS PO、アセチルトリブチルシトレート、及びステアリン酸マグネシウムを含む第1のコーティング層、並びにEudragit NE30D(商標)、Eudragit FS30D(商標)、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、及びシメチコンを含む第2のコーティング層で被覆された、フェニレフリンHClと、加工デンプンと、Eudragit NE30D(商標)とを含む被覆されたフェニレフリン粒子、並びにアセトアミノフェンを含む剤形を含む医薬剤形におけるその使用について開示している。
【0019】
米国特許第6,001,392号(Warner Lambert Company)は、ジビニルベンゼンで架橋されたAmberlite(商標)IR69の被覆されているものと被覆されていないものとの混合物を含む薬物/樹脂複合体について開示している。
【0020】
米国特許出願公開第20100068280号(Schering-Plough Corporation)は、持続放出形態のフェニレフリンを含む医薬剤形について開示している。ある実施形態によれば、生物学的同等性試験において、30mgのフェニレフリン、ラクトース一水和物、Methocel K100M CR、Klucel EXF、及びステアリン酸マグネシウムを含む錠剤中の単一用量のフェニレフリンを、4時間間隔で投与した2つの10mgのフェニレフリン即時放出錠剤と比較した。
【0021】
米国特許出願公開第20050266032号及び同第20060057205号(Sovereign Pharmaceuticals)は、フェニレフリンを含む医薬剤形について開示している。ある実施形態によれば、フェニレフリンは、例えば、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムを用いてイオン交換樹脂複合体に配合され、例えば、Eudragit(登録商標)L 100、Kollidon(登録商標)MAE、及びAquacoat(登録商標)cPD等の遅延放出ポリマーで被覆される。この実施形態における製剤は、45mgの持続放出フェニレフリンと15mgの即時放出フェニレフリンとを含有している。
【0022】
米国特許第8,062,667号(Tris Pharma,Inc.)は、被覆された薬物-イオン交換樹脂複合体について開示している。ある実施形態によれば、フェニレフリンは、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムを用いてイオン交換樹脂複合体に配合され、KOLLICOAT(商標)SR-30D、トリアセチン、及び水で被覆される。
【0023】
米国特許第8,394,415号(McNeil-PPC,Inc.)は、特定の成分を含む第1及び第2のコーティング層で被覆された即時放出イブプロフェン及び徐放フェニレフリン-特定のイオン交換樹脂複合体を含む液体製剤について開示している。
【0024】
米国特許出願公開第20080311201号(McNeil-PPC,Inc.)は、エチルセルロースを含む第1のコーティング層及び保護コーティングを含む第2のコーティング層で被覆されたイブプロフェン(IR)及びフェニレフリンを含む固体組成物について開示している。
【0025】
米国特許第8,883,213号(Coating Place,Inc.)は、1つ以上の薬物を1つ以上のイオン交換樹脂粒子に搭載して、薬物搭載樹脂粒子を形成する方法及び組成物について開示している。
【0026】
米国特許出願第20120064167号は、フェニレフリン及びイブプロフェンを含む制御放出組成物について開示している。
【0027】
米国特許出願公開第20140271891号、同第20140271892号、及び同第20130202700号(McNeil-PPC,Inc.)は、フェニレフリン及びカチオン性ポリスチレンスルホン酸を含む薬物-樹脂複合体であって、カチオン性ポリスチレンスルホン酸が、フェニレフリンと組み合わされる前に約74μm~約177μmの粒径を含む、複合体について開示している。この粒子は、酢酸セルロース及びヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース材料で被覆されてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
上述の特質を有するフェニレフリン製品が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、摂取後約0.1~約16時間、好ましくは約0.5~約5時間、より好ましくは約1~約4.5時間で、フェニレフリンのピーク血漿濃度を提供するように、それを必要としている被験体に、フェニレフリン又はその薬学的に許容される塩を送達するフェニレフリン粒子であって、フェニレフリンが、摂取後少なくとも約6、約8、約12、約16、約20、及び/又は約24時間、約20、約40、約60、約80、約100、約120、約140、約160、約180、又は約200pg/mL超の濃度で維持される粒子を目的とする。
【0030】
好ましい実施形態によれば、本発明は、摂取後約0.1~約16時間、好ましくは約0.5~約5時間、より好ましくは約1~約4.5時間で、フェニレフリンのピーク血漿濃度を提供するように、それを必要としている被験体に、フェニレフリン又はその薬学的に許容される塩を送達する、被覆されたフェニレフリン樹脂酸塩粒子であって、フェニレフリンが、摂取後少なくとも約6、約8、約12、約16、約20、及び/又は約24時間、約20、約40、約60、約80、約100、約120、約140、約160、約180、又は約200pg/mL超の濃度で維持される粒子を目的とする。
【0031】
本発明は、また、摂取後約0.1~約16時間、好ましくは約0.5~約5時間、より好ましくは約1~約4.5時間で、フェニレフリンのピーク血漿濃度を提供するように、それを必要としている被験体に、フェニレフリン又はその薬学的に許容される塩を送達するフェニレフリン粒子であって、フェニレフリンが、摂取後少なくとも約6、約8、約12、約16、約20、及び/又は約24時間、約20、約40、約60、約80、約100、約120、約140、約160、約180、又は約200pg/mL超の濃度で維持される粒子を含む医薬剤形も目的とする。
【0032】
別の実施形態では、フェニレフリンの徐放を提供するフェニレフリン粒子を、即時放出型のフェニレフリンと組み合わせる。
【0033】
別の実施形態では、フェニレフリン粒子を、即時放出又は持続放出のための1つ以上の追加の治療剤(複数可)と組み合わせる。このような薬剤(複数可)を、摂取時に即時放出させるために、持続放出させるために、フェニレフリンのうちの少なくとも一部と同時に結腸で放出させるために、又はこれらの任意の組み合わせのために処方してよい。1つの実施形態では、追加の治療剤は、被覆されない。別の実施形態では、追加の治療剤は、被覆される。
【0034】
追加の治療剤は、風邪、季節性アレルギー及び他のアレルギー、花粉症、又は鼻の疾患(これらはいずれも鼻汁の増加を引き起し得る)の症状を軽減するのに有用な、抗ヒスタミン剤、鬱血除去剤、鎮痛剤、抗炎症剤、解熱剤、鎮咳剤、去痰剤、若しくは任意の他の治療剤、又はこのような薬剤の組み合わせであってよい。好ましくは、1つ以上の追加の治療剤は、アセトアミノフェンである。
【0035】
抗ヒスタミン剤及び鬱血除去剤の例としては、ブロモフェニラミン、クロルシクリジン、デクスブロムフェニラミン、ブロムヘキサン、フェニンダミン、フェニラミン、ピリラミン、トンジルアミン、プリポリジン(pripolidine)、エフェドリン、プソイドエフェドリン、フェニルプロパノールアミン、クロルフェニラミン、デキストロメトルファン、ジフェンヒドラミン、ドキシルアミン、アステミゾール、テルフェナジン、フェキソフェナジン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、モンテルカスト、プロピルヘキサドリン、トリプロリジン、クレマスチン、アクリバスチン、プロメタジン、オキソメマジン、メキタジン、ブクリジン、ブロムヘキシン、ケトチフェン、テルフェナジン、エバスチン、オキサタミド、キシロメアゾリン(xylomeazoline)、ロラタジン、デスロラタジン、及びセチリジン;これらの異性体、並びにこれらの薬学的に許容される塩及びエステル類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
好適な鎮痛剤、抗炎症剤、及び解熱剤の例としては、プロピオン酸誘導体(例えばイブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、フルプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、及びスプロフェン)並びにCOX阻害剤(セレコキシブ)などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID);アセトアミノフェン;アセチルサリチル酸;酢酸誘導体(例えばインドメタシン、ジクロフェナク、スリンダク、及びトルメチン);フェナム酸誘導体(例えばメフェナム酸、メクロフェナム酸、及びフルフェナム酸);ビフェニルカルボン酸(biphenylcarbodylic acid)誘導体(例えばジフルニサル及びフルフェニサル);並びにオキシカム(例えばピロキシカム、スドキシカム、イソキシカム、及びメロキシカム);これらの異性体、並びにこれらの薬学的に許容される塩及びプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
鎮咳剤及び去痰剤の例としては、ジフェンヒドラミン、デキストロメトルファン、ノスカピン、クロフェジアノール、メントール、ベンゾナテート、エチルモルホン(ethylmorphone)、コデイン、アセチルシステイン、カルボシステイン、アンブロキソール、ベラドンナアルカノイド、ソブレノール(sobrenol)、グアヤコール、及びグアイフェネシン;これらの異性体、並びにこれらの薬学的に許容される塩及びプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本発明の別の態様は、本発明のフェニレフリン粒子を投与することを含む、それを必要としている被験体における風邪、インフルエンザ、アレルギー、又は非アレルギー性鼻炎の症状を治療する方法である。特定の実施形態では、フェニレフリン粒子は、約6、8、12、16、20、又は24時間ごとに投与される。好ましい一実施形態では、フェニレフリン粒子を、約12時間毎に投与する。別の好ましい実施形態では、フェニレフリン粒子は、約8時間ごとに投与される。
【0039】
本発明の特定の実施形態は、被験体におけるフェニレフリンの持続バイオアベイラビリティを維持する方法であって、被験体にフェニレフリン粒子を経口投与することを含み、フェニレフリンの少なくとも一部が結腸から吸収され、被験体の血漿中のフェニレフリン濃度が、組成物の投与の約6時間後に少なくとも約20、約40、約60、約80、約100、約120、約140、約160、約180、又は約200pg/mLである方法である。特定の実施形態では、被験体の血漿中のフェニレフリンの濃度は、組成物の投与の約8時間後に少なくとも約20、約40、約60、約80、約100、約120、約140、約160、約180、又は約200pg/mLである。特定の実施形態では、被験体の血漿中のフェニレフリンの濃度は、組成物の投与の約12時間後に少なくとも約20、約40、約60、約80、約100、約120、約140、約160、約180、又は約200pg/mLである。特定の実施形態では、被験体の血漿中のフェニレフリンの濃度は、組成物の投与の約20時間後に少なくとも約20、約40、約60、約80、約100、約120、約140、約160、約180、又は約200pg/mLである。特定の実施形態では、被験体の血漿中のフェニレフリンの濃度は、組成物の投与の約24時間後に少なくとも約20、約40、約60、約80、約100、約120、約140、約160、約180、又は約200pg/mLである。本発明の特定の実施形態は、被験体にフェニレフリンを投与する方法であって、フェニレフリン粒子を経口投与することを含み、前記組成物が、フェニレフリンの少なくとも一部を結腸に送達し、フェニレフリンが、結腸で放出され、結腸から吸収される方法である。
【0040】
本発明は、以下の図面、詳細な説明、及び実施例を参照することによって、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】樹脂酸塩薬剤(薬物/樹脂比:1.25:1)のアッセイ成分に対する粒径分布の影響を示す図である。
【
図2】薬物:樹脂比1.33:1で適用された薬物量に対する搭載された薬物を示す図である(3工程プロセス、パイロットスケール)。
【
図3】3工程薬物搭載プロセスの各搭載工程における薬物搭載効率を示す図である(パイロットスケールバッチ)。
【
図4】薬物搭載効率の%に対する薬物搭載工程の効果を示す図である(薬物/樹脂比1.33:1での3工程プロセス対、4レベルの薬物/樹脂比での1工程プロセス)。
【
図5】40%コーティングレベルで被覆された樹脂酸フェニレフリン(phenylephringe)(パイロットスケール)と、1工程搭載樹脂酸塩を利用した臨床用バッチ(実験室スケール)とを対比した、溶解プロファイルを示す図である。
【
図6】3工程薬物搭載樹脂酸塩を利用した35、40、45及び50%のコーティングレベル(パイロットスケール)と、1工程薬物搭載樹脂酸塩を利用した臨床用バッチ40%コーティングレベル(実験室スケール)とを対比した、被覆された樹脂酸フェニレフリンの溶解プロファイルを示す図である。
【
図7】42.5%の薬物搭載樹脂酸塩を利用した40%、42.5%コーティングされた薬物樹脂酸塩を含む錠剤と、29.5%の薬物搭載樹脂酸塩:錠剤処方を利用した40%コーティングされた薬物樹脂酸塩を含む臨床用錠剤とを対比した、シミュレーションされた溶解プロファイルを示す図である。
【
図8】様々なCA/HPC比でコーティングされた樹脂酸フェニレフリンの溶解プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
当業者であれば、本明細書の記載に基づいて本発明を最大限利用できると考えられる。以下の具体的な実施形態は、単なる例示であり、いかなる意味においても以下の開示を限定するものではないと解釈すべきである。
【0043】
特段の記載がない限り、本明細書で用いられる全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野における当業者が共通に解釈するのと同じ意味を有する。更に、本明細書において言及する刊行物、特許出願、特許、及び他の引用文献はすべてこれを援用するものである。本明細書で使用するとき、すべての百分率は、特に規定しない限り、重量による。更に、本明細書に記載するすべての範囲は、両端を含んで、2つの端点間の値の任意の組み合わせをすべて含むことを意味する。
【0044】
定義
本明細書で使用するとき、フェニレフリンの薬学的に許容される塩としては、塩酸フェニレフリン、重酒石酸フェニレフリン、タンニン酸フェニレフリン等が挙げられるが、これらに限定されない。1つの好ましい実施形態では、フェニレフリンの薬学的に許容される塩は、塩酸フェニレフリンである。
【0045】
「AUC」とは、本明細書で使用するとき、任意の所与の薬物について、台形公式によって計算した、薬物の投与又は活性化からある時点までの「濃度-時間曲線下面積」を意味する。AUCは、経時的な薬物の累積血漿濃度を示すパラメータであり、血漿中の薬物の総量及びアベイラビリティの指標である。
【0046】
「Cmax」とは、本明細書で使用するとき、薬物を投与した後且つ第2の用量の投与前に、試験した領域において薬物が達する最大(又はピーク)濃度を意味する。
【0047】
本明細書で使用するとき、「結晶質形態」は、可視光を回折する能力が挙げられるが、これらに限定されない結晶様特性を示すような、活性成分の非晶質ではない形態を意味するものとする。また、結晶質は、純粋形態、すなわち、例えば他の賦形剤が添加されていない活性成分を記載するためにも用いてもよい。
【0048】
「遅延放出」とは、投与後、活性成分が剤形から放出を開始しない少なくとも1期間が存在する、すなわち、経口投与の直後以外の時間に活性成分(複数可)の放出が生じることを意味する。
【0049】
本明細書で使用するとき、「溶解媒体」とは、例えば、製品の試験のために用いられるインビトロ溶解媒体又は胃腸液等の、本発明の懸濁剤形が溶解し得る任意の好適な液体環境を意味するものとする。本発明の懸濁剤形からの活性成分(複数可)の溶解を試験するために用いられる好適なインビトロ溶解媒体としては、米国薬局方に記載されているものが挙げられる。
【0050】
「投与量」、「剤形」、又は「用量」とは、本明細書で使用するとき、一度に投与される治療活性剤(複数可)を含む医薬組成物の量を意味する。「投与量」、「剤形」、又は「用量」は、同時に投与される1つ以上の単位の医薬組成物の投与を含む。1つの実施形態では、剤形は、錠剤である。1つの実施形態では、剤形は、多層錠剤である。多層錠剤を含む実施形態では、1つの層は、即時放出部分を含んでよく、別の層は、徐放部分を含んでよい。多層錠剤を含む実施形態では、1つの層は、フェニレフリン樹脂酸塩粒子を含んでよく、別の層は、即時放出型のフェニレフリン及び/又は第2の活性成分を含んでよい。1つの実施形態では、フェニレフリン樹脂酸塩粒子を含む剤形は、液体充填ソフトゲルである。
【0051】
本明細書で使用するとき、「薬物-樹脂複合体」とは、医薬活性成分が挙げられるが、これに限定されない活性成分及びイオン交換樹脂の結合型を意味するものとする。また、薬物-樹脂複合体は、当該技術分野において「樹脂酸塩」とも呼ばれる。本発明に従って用いてよいイオン交換樹脂は、Amberlite(商標)IRP 69(The Dow Chemical Company)であり、これは、スチレンとジビニルベンゼンとのスルホン化コポリマーに由来する不溶性、強酸性、ナトリウム型カチオン交換樹脂である。移動性又は交換性カチオンは、ナトリウムであり、これは、例えば、銅、亜鉛、鉄、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、及びリチウムを含む多くのカチオン性(塩基性)種に交換又は置換してもよい。薬物/樹脂複合体を形成するためのイオン交換樹脂粒子への薬物の吸着は、米国特許第2,990,332号及び同第4,221,778号に示されているように、周知の技術である。一般には、薬物を樹脂の水性懸濁液と混合し、次いで、複合体を洗浄及び乾燥する。樹脂への薬物の吸着は、反応媒体のpHの変化を測定することによって、又はナトリウム若しくは薬物の濃度の変化を測定することによって検出してもよい。形成された薬物/樹脂複合体を回収し、エタノール及び/又は水で洗浄して、あらゆる未結合薬物を確実に除去することができる。複合体は、通常、室温又は高温で、トレー内で空気乾燥する。これらは遠心分離、濾過、加圧濾過、炉内乾燥、及び流動床乾燥などの方法によって乾燥させることもできる。薬物/樹脂複合体は、フェニレフリン対樹脂の比が、約1:1、より好ましくは約1:1~約1.8:1、より好ましくは約1.2:1~約1.6:1、より好ましくは約1.4:1である。
【0052】
「腸溶性」とは、腸内でみられる約5.0超、又は約5.5超、又は約6.0超のpHで溶解できることを意味するものとする。
【0053】
「徐放」とは、投与後、実質的に連続的な管理された方式で剤形から活性成分が放出され、完全に放出するのにかかる時間、すなわち、剤形から活性成分が枯渇するまでの時間が、同様物の即時放出剤形に関する時間よりも長いことを意味する。徐放の種類としては、制御、持続、延長、ゼロ次、一次、拍動性等が挙げられる。
【0054】
本明細書で使用するとき、「即時放出」とは、少なくとも1つの活性成分の溶解特性が、その活性成分を含む即時放出錠剤についてのUSP規格を満たすことを意味する。即時放出特性を有する活性成分は、活性成分の溶解を遅延又は延長する意図なく、胃腸内容物に溶解し得る。
【0055】
「液体剤形」は、非排他的に、活性成分のうちの1つ以上が溶解しているか、部分的に溶解しているか、又は未溶解若しくは懸濁状態である懸濁剤又はエリキシル剤を含んでよい。
【0056】
本明細書で使用するとき、「調節放出」とは、胃腸液等の溶解媒体への活性成分の放出又は溶解の変化に適用するものとする。調節放出の種類としては、1)徐放、又は2)遅延放出が挙げられる。一般に、調節放出剤形は、活性成分(複数可)を摂取後長時間にわたって利用可能にし、それによって、従来の剤形における同じ活性成分(複数可)の投与と比べて投与頻度を低減するために処方される。また、調節放出剤形は、1つの活性成分の持続時間が別の活性成分の持続時間と異なっていてもよい、活性成分の組み合わせの使用を可能にする。
【0057】
本明細書で使用するとき、「薬力学」又は「PD」とは、作用部位における薬物濃度と得られる効果との間の関係についての研究である。
【0058】
本明細書で使用するとき、「薬物動態学」又は「PK」とは、薬物の吸収、分布、代謝、及び排泄の時間経過の研究である。
【0059】
本明細書で使用するとき、用語「フェニレフリン」とは、ベンザインメタノール、3-ヒドロキシ-α-[(メチルアミノ)メチル]を意味し、その薬学的に許容される塩類、エステル類、異性体、又は誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書で使用するとき、薬物の「放出速度」とは、単位時間当たりの剤形から放出される薬物の量、例えば、1時間当たりの放出される薬物のミリグラム(mg/時)を指す。薬物放出速度は、当該技術分野において公知のインビトロ剤形溶解試験条件下で計算される。本明細書で使用するとき、「投与後」の規定時間において得られる薬物放出速度とは、例えば、USP 24(United States Pharmacopeia 24,United States Pharmacopeia Convention,Inc.,Rockville,MD)に記載されているもの等、適切な溶解試験の開始後の規定時間において得られるインビトロ薬物放出速度を指す。
【0061】
「半透性」とは、本明細書で使用するとき、膜が適切な溶解媒体、例えば、胃腸液又はインビトロ溶解媒体と接触したときに、水は通過することができ、塩類及び本明細書に記載する活性成分を含む他の分子は、このような膜を通じてゆっくり拡散することを意味するものとする。
【0062】
「半固体剤形」とは、高度に粘性であり、(1)それに圧力を印加し、その形状を変形させる何かに実質的に従う能力を有する特性、(2)液体と同程度容易に流動する能力を有しない特性が挙げられるが、これらに限定されない液体の特性の一部を共有する剤形を意味するものとする。また、半固体剤形は、高密度及び明確な形状が挙げられるが、これらに限定されない固体の特性の一部も共有する。半固体としては、非排他的に、ゲル剤、チューイー(chewy)な剤形、ペクチン系のチューイーな形態、糖菓のチューイーな形態、成形性のゼラチン型の形態を挙げ得る。
【0063】
「固体剤形」とは、室温で実質的に固体であり、少なくとも約0.5g/ccの密度を有する剤形を意味するものとする。固体剤形としては、非排他的に、凝集錠剤、カプセル様医薬、粉末又は顆粒充填カプセル剤、粉末又は顆粒充填サッシェ剤、圧縮錠剤、コーティング錠、咀嚼剤形、及び速溶性剤形を挙げ得る。
【0064】
本明細書で使用するとき、粒子に関して「実質的に被覆されている」とは、粒子の表面積の約20%未満、例えば、約15%未満、又は約1.0%未満しか、所望のコーティングに曝露されていない、例えば、覆われていないことを意味するものとする。本明細書で使用するとき、用語「実質的に覆う」又は「実質的に連続」とは、コーティングを記述するために用いられる場合、コーティングは概して連続であり、概してコア又は下層の表面全体を覆い、その結果、活性成分又は下層がわずかにしか又は全く露出していないことを意味する。粒子に塗布されるコーティングは、層状とすることができ、各層は、水性(水ベース)又は有機溶媒系で調製され、所望のコーティングレベルが得られるまで連続して添加される。
【0065】
「治療効果」とは、本明細書で使用するとき、疾患を診断、治療、治癒、緩和、若しくは予防するか、身体の構造又はいずれかの機能に影響を与えることを意図する活性成分の任意の効果又は作用を意味するものとする。
【0066】
本発明の特定の実施形態は、以下の実施例を通して例証される。本発明は、これら実施例に記載する特定の制限に限定されるものではない。
【実施例】
【0067】
液体及び固体剤形へと処方するために、フェニレフリン徐放性粒子を開発した。フェニレフリン徐放性粒子は、フェニレフリンよりも長い持続時間を提供する場合がある他の活性物質(特に、痛み活性物質)と、持続時間を一致させるために用いることができる。このような活性物質としては、アセトアミノフェン、イブプロフェン、及びナプロキセン、並びにこれらの塩類及び誘導体類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
(1)フェニレフリン搭載レベルを増加させ、かつ(2)フェニレフリン搭載効率を増加させるために、複数の工程搭載プロセスが開発された。好ましくは、このプロセスは、約40%超(例えば約43%)のフェニレフリン搭載効率をもたらす。
【0069】
2つ以上の搭載段階を使用するDowのAmberlite(商標)IRP69に関する文献では、これらの段階の間で樹脂を液相から分離することが、樹脂上への薬物の最大限搭載を達成する有効な手段であることが開示されている。http://www.dow.com/assets/attachments/business/process_chemicals/amberlite_and_duolite_pharmaceutical_grade_resins/amberlite_irp69/tds/amberlite_irp69.pdf.(2006)を参照のこと。本発明者らは、複数の搭載工程で同じ量の薬物を用いたときに、同様の薬物搭載効率を達成し得ることを見出した(例えば薬物1.4部/樹脂1部を用い、3工程搭載プロセスを採用した場合、各工程の薬物量は、搭載効率に有意な影響を与えることなしに変化させることができる(例えば、使用する薬物合計量の50%、25%及び25%、又は例えば、使用する薬物合計量の、33-1/3%、33-1/3%、33-1/3%))。
【0070】
材料:
(1)下記の表Aに示す粒径を有するAmberlite(商標)イオン交換樹脂:
【0071】
【0072】
(2)フェニレフリンHCl USP
実施例1:搭載済み樹脂酸フェニレフリンの実験室での生産:40℃で3倍搭載
薬物搭載工程は表1に示す順序に従う。
【0073】
パートA:樹脂酸塩の洗浄
1.好適な大きさの容器内に、200.0gの精製水を秤量した。
2.混合しながら、70.0gのAmberlite(商標)イオン交換樹脂をゆっくりと加え、15分間混合した。
3.この内容物を濾過漏斗に移し、減圧下で濾過して、ウェットケークを形成した。
4.このウェットケークを200.0gの精製水ですすいだ(洗浄1)。
5.このウェットケークを再び200.0gの精製水ですすいだ(洗浄2)。
【0074】
パートB:樹脂への薬物搭載
工程A
1.好適な大きさの容器に200.0gの精製水を加え、40℃に加熱した。
2.45.5gのフェニレフリンHClを加え、40℃で10分間混合しながら溶かした。
3.ゆっくり混合しながらAmberlite(商標)イオン交換樹脂を加え、ミキサー速度を調節して、強い流れを維持した。
4.60分間混合した後、内容物を減圧下で濾過した。
【0075】
工程B
1.好適な大きさの容器に200.0gの精製水を加え、40℃に加熱した。
2.31.5gのフェニレフリンHClを加え、40℃で10分間混合しながら溶かした。
3.ゆっくり混合しながら、工程Aからの湿った搭載済み樹脂酸塩を加え、強い流れを維持するようにミキサー速度を調節した。
4.60分間混合した後、内容物を減圧下で濾過した。
【0076】
工程C
1.好適な大きさの容器に200.0gの精製水を加え、40℃に加熱した。
2.10.5gのフェニレフリンHClを加え、40℃で10分間混合しながら溶かした。
3.ゆっくり混合しながら、工程Bからの湿った搭載済み樹脂酸塩を加え、強い流れを維持するようにミキサー速度を調節した。
4.60分間混合した後、内容物を減圧下で濾過した。
5.濾過した内容物を200mLずつの精製水で5回洗浄した。洗浄した薬物搭載樹脂を回収し、40℃の炉で24時間乾燥させた。
【0077】
【表2】
*薬物/樹脂比が1.6/1とは、112gの薬物と70gの未搭載樹脂酸塩を表す。薬物搭載樹脂酸塩の半分は分析試験用に除去されるため、パートAの樹脂酸塩で1.6/1搭載を達成するには、追加で24.5gの薬物が必要になる。よって、薬物搭載プロセスを完了させて1.6/1搭載を達成するには、24.5gの薬物の半分のみ(12.5g)が必要であった。
【0078】
実施例2:搭載済み樹脂酸フェニレフリンの実験室での生産:室温(25℃)で3倍搭載
薬物搭載工程は表1に示す順序に従う。
【0079】
パートA:樹脂酸塩の洗浄
1.好適な大きさの容器内に、200.0gの精製水を秤量した。
2.混合しながら、70.0gのAmberlite(商標)イオン交換樹脂をゆっくりと加え、15分間混合した。
3.この内容物を濾過漏斗に移し、減圧下で濾過して、ウェットケークを形成した。
4.このウェットケークを200.0gの精製水ですすいだ(洗浄1)。
5.このウェットケークを再び200.0gの精製水ですすいだ(洗浄2)。
【0080】
パートB:樹脂への薬物搭載
工程A
1.好適な大きさの容器内に、室温で200.0gの精製水を加えた。
2.45.5gのフェニレフリンHClを加え、室温で10分間混合しながら溶かした。
3.ゆっくり混合しながらAmberlite(商標)イオン交換樹脂を加え、強い流れを維持するようにミキサー速度を調節した。
4.60分間混合した後、内容物を減圧下で濾過した。
【0081】
工程B
1.好適な大きさの容器に、室温で200gの精製水を加えた。
2.31.5gのフェニレフリンHClを加え、10分間混合しながら溶かした。
3.ゆっくり混合しながら、工程Aからの湿った搭載済み樹脂酸塩を加え、強い流れを維持するようにミキサー速度を調節した。
4.60分間混合した後、内容物を減圧下で濾過した。
【0082】
工程C
1.好適な大きさの容器に、室温で200gの精製水を加えた。
2.10.5gのフェニレフリンHClを加え、10分間混合しながら溶かした。
3.ゆっくり混合しながら、工程Bからの湿った搭載済み樹脂酸塩を加え、強い流れを維持するようにミキサー速度を調節した。
4.60分間混合した後、内容物を減圧下で濾過した。
5.濾過した内容物を200mLずつの精製水で5回洗浄した。洗浄した薬物搭載樹脂を回収し、40℃の炉で24時間乾燥させた。
【0083】
実施例3:搭載済み樹脂酸フェニレフリンの実験室での生産:短い混合時間で室温(25℃)で3倍搭載
実施例3は、実施例2の工程に従い、ただし各工程の60分間の混合時間を、60分間から15分間へと短縮した。
【0084】
実施例4:搭載済み樹脂酸フェニレフリンの実験室での生産:濾過工程を減らして室温(25℃)で3倍搭載
実施例4は、実施例2の工程に従い、ただし工程A及び工程Bの濾過工程を省略した。
【0085】
実施例5:搭載済み樹脂酸フェニレフリンの実験室での生産:各搭載工程で等量のフェニレフリンを使用し、室温(25℃)で3倍搭載
薬物搭載工程は表2に示す順序に従う。
【0086】
パートA:樹脂酸塩の洗浄
1.好適な大きさの容器内に、200.0gの精製水を秤量した。
2.混合しながら、70.0gのAmberlite(商標)イオン交換樹脂をゆっくりと加え、15分間混合した。
3.この内容物を濾過漏斗に移し、減圧下で濾過して、ウェットケークを形成した。
4.このウェットケークを200.0gの精製水ですすいだ(洗浄1)。
5.このウェットケークを再び200.0gの精製水ですすいだ(洗浄2)。
【0087】
パートB:樹脂への薬物搭載
工程A
1.好適な大きさの容器に、室温で200.0gの精製水を加えた。
2.29.2gのフェニレフリンHClを加え、室温で10分間混合しながら溶かした。
3.ゆっくり混合しながらAmberlite(商標)イオン交換樹脂を加え、強い流れを維持するようにミキサー速度を調節した。
4.60分間混合した後、内容物を回収した。
【0088】
工程B
1.好適な大きさの容器に、室温で200gの精製水を加えた。
2.29.2gのフェニレフリンHClを加え、10分間混合しながら溶かした。
3.ゆっくり混合しながら、工程Aからの湿った搭載済み樹脂酸塩を加え、強い流れを維持するようにミキサー速度を調節した。
4.60分間混合した後、内容物を回収した。
【0089】
工程C
1.好適な大きさの容器に、室温で200gの精製水を加えた。
2.29.1gのフェニレフリンHClを加え、10分間混合しながら溶かした。
3.ゆっくり混合しながら、工程Bからの湿った搭載済み樹脂酸塩を加え、強い流れを維持するようにミキサー速度を調節した。
4.60分間混合した後、内容物を減圧下で濾過した。
5.濾過した内容物を200mLずつの精製水で5回洗浄した。洗浄した薬物搭載樹脂を回収し、40℃の炉で24時間乾燥させた。
【0090】
【表3】
*薬物/樹脂比:工程A:29.2/70=0.417/1、工程B:58.4/70=0.834/1、工程C:87.5/70=1.25/1。
【0091】
実施例6:搭載済み樹脂酸フェニレフリンの実験室での生産:室温(25℃)で2倍搭載
薬物搭載工程は表3に示す順序に従う。
【0092】
パートA:樹脂酸塩の洗浄
1.好適な大きさの容器内に、200.0gの精製水を秤量した。
2.混合しながら、70.0gのAmberlite(商標)イオン交換樹脂をゆっくりと加え、15分間混合した。
3.この内容物を濾過漏斗に移し、減圧下で濾過して、ウェットケークを形成した。
4.このウェットケークを200.0gの精製水ですすいだ(洗浄1)。
5.このウェットケークを再び200.0gの精製水ですすいだ(洗浄2)。
【0093】
パートB:樹脂への薬物搭載
工程A
1.好適な大きさの容器に200.0gの精製水を加え、40℃に加熱した。
2.45.5gのフェニレフリンHClを加え、室温で10分間混合しながら溶かした。
3.ゆっくり混合しながらAmberlite(商標)イオン交換樹脂を加え、強い流れを維持するようにミキサー速度を調節した。
4.60分間混合した後、内容物を回収した。
【0094】
工程B
1.好適な大きさの容器に、室温で200gの精製水を加えた。
2.42.0gのフェニレフリンHClを加え、10分間混合しながら溶かした。
3.ゆっくり混合しながら、工程Aからの湿った搭載済み樹脂酸塩を加え、強い流れを維持するようにミキサー速度を調節した。
4.60分間混合した後、内容物を減圧下で濾過した。
5.濾過した内容物を200mLずつの精製水で5回洗浄した。洗浄した薬物搭載樹脂を回収し、40℃の炉で24時間乾燥させた。
【0095】
【表4】
*薬物樹脂比:45.5/70=0.65、42/70=0.6、0.65+0.6=1.25
【0096】
実施例7:搭載済み樹脂酸フェニレフリンの実験室での生産:室温(25℃)で1倍搭載
薬物搭載工程は表4に示す順序に従う。
【0097】
パートA:樹脂酸塩の洗浄
1.好適な大きさの容器内に、200.0gの精製水を秤量した。
2.混合しながら、70.0gのAmberlite(商標)イオン交換樹脂をゆっくりと加え、15分間混合した。
3.この内容物を濾過漏斗に移し、減圧下で濾過して、ウェットケークを形成した。
4.このウェットケークを200.0gの精製水ですすいだ(洗浄1)。
5.このウェットケークを再び200.0gの精製水ですすいだ(洗浄2)。
【0098】
パートB:樹脂への薬物搭載
工程A
1.好適な大きさの容器に200.0gの精製水を加え、40℃に加熱した。
2.87.5gのフェニレフリンHClを加え、室温で10分間混合しながら溶かした。
3.ゆっくり混合しながらAmberlite(商標)イオン交換樹脂を加え、強い流れを維持するようにミキサー速度を調節した。
4.60分間混合した後、内容物を減圧下で濾過した。
5.濾過した内容物を200mLずつの精製水で5回洗浄した。洗浄した薬物搭載樹脂を回収し、40℃の炉で24時間乾燥させた。
【0099】
【表5】
*薬物樹脂比:45.5/70=0.65、42/70=0.6、0.65+0.6=1.25
【0100】
実施例8:搭載済み樹脂酸フェニレフリンの実験室での生産:室温(25℃)で4倍搭載
薬物搭載工程は表5に示す順序に従う。
【0101】
パートA:樹脂酸塩の洗浄
1.好適な大きさの容器内に、200.0gの精製水を秤量した。
2.混合しながら、70.0gのAmberlite(商標)イオン交換樹脂をゆっくりと加え、15分間混合した。
3.この内容物を濾過漏斗に移し、減圧下で濾過して、ウェットケークを形成した。
4.このウェットケークを200.0gの精製水ですすいだ(洗浄1)。
5.このウェットケークを再び200.0gの精製水ですすいだ(洗浄2)。
【0102】
パートB:樹脂への薬物搭載
工程A
1.好適な大きさの容器に200.0gの精製水を加え、40℃に加熱した。
2.21.9gのフェニレフリンHClを加え、室温で10分間混合しながら溶かした。
3.ゆっくり混合しながらAmberlite(商標)イオン交換樹脂を加え、強い流れを維持するようにミキサー速度を調節した。
4.60分間混合した後、内容物を回収した。
【0103】
工程B
1.好適な大きさの容器に、室温で200gの精製水を加えた。
2.21.9gのフェニレフリンHClを加え、10分間混合しながら溶かした。
3.ゆっくり混合しながら、工程Aからの湿った搭載済み樹脂酸塩を加え、強い流れを維持するようにミキサー速度を調節した。
4.60分間混合した後、内容物を回収した。
【0104】
工程C
1.好適な大きさの容器に、室温で200gの精製水を加えた。
2.21.9gのフェニレフリンHClを加え、10分間混合しながら溶かした。
3.ゆっくり混合しながら、工程Bからの湿った搭載済み樹脂酸塩を加え、強い流れを維持するようにミキサー速度を調節した。
4.60分間混合した後、内容物を回収した。
【0105】
工程D
1.好適な大きさの容器に、室温で200gの精製水を加えた。
2.21.8gのフェニレフリンHClを加え、10分間混合しながら溶かした。
3.ゆっくり混合しながら、工程Cからの湿った搭載済み樹脂酸塩を加え、強い流れを維持するようにミキサー速度を調節した。
4.60分間混合した後、内容物を減圧下で濾過した。
5.濾過した内容物を200mLずつの精製水で5回洗浄した。洗浄した薬物搭載樹脂を回収し、40℃の炉で24時間乾燥させた。
【0106】
【表6】
*薬物/樹脂比:工程A:21.9/70=0.312/1、工程B:43.8/70=0.625/1、工程C:65.7/70=0.938/1、工程D:87.5/1
【0107】
実施例9:搭載済み樹脂酸フェニレフリンの実験室での生産:等量のフェニレフリンで、短い混合時間で3倍搭載
薬物搭載工程は表6に示す順序に従う。
【0108】
パートA:樹脂酸塩の洗浄
1.好適な大きさの容器内に、114.0gの精製水を秤量した。
2.混合しながら、40.0gのAmberlite(商標)イオン交換樹脂をゆっくりと加え、15分間混合した。
3.この内容物を濾過漏斗に移し、減圧下で濾過して、ウェットケークを形成した。
4.このウェットケークを200.0gの精製水ですすいだ(洗浄1)。
5.このウェットケークを再び200.0gの精製水ですすいだ(洗浄2)。
【0109】
パートB:樹脂への薬物搭載
工程A
1.好適な大きさの容器に、室温で114.0gの精製水を加えた。
2.16.67gのフェニレフリンHClを加え、室温で10分間混合しながら溶かした。
3.ゆっくり混合しながらAmberlite(商標)イオン交換樹脂を加え、強い流れを維持するようにミキサー速度を調節した。
4.30分間混合した後、内容物を減圧下で濾過した。
【0110】
工程B
1.好適な大きさの容器に、室温で114.0gの精製水を加えた。
2.16.67gのフェニレフリンHClを加え、室温で10分間混合しながら溶かした。
3.ゆっくり混合しながら、工程Aの湿った搭載済み樹脂酸塩を加え、強い流れを維持するようにミキサー速度を調節した。
4.30分間混合した後、内容物を減圧下で濾過した。
【0111】
工程C
1.好適な大きさの容器に、室温で114.0gの精製水を加えた。
2.16.66gのフェニレフリンHClを加え、室温で10分間混合しながら溶かした。
3.ゆっくり混合しながら、工程Bの湿った搭載済み樹脂酸塩を加え、強い流れを維持するようにミキサー速度を調節した。
4.30分間混合した後、内容物を減圧下で濾過した。
5.濾過した内容物を200mLずつの精製水で5回洗浄した。洗浄した薬物搭載樹脂を回収し、40℃の炉で24時間乾燥させた。
【0112】
【表7】
*薬物/樹脂比:工程A:16.67/40=0.417/1、工程B:33.34/40=0.834/1、工程C:50/40=1.25/1
【0113】
実施例10:搭載済み樹脂酸フェニレフリンの実験室での生産:等量のフェニレフリンで、短い混合時間で3倍搭載
薬物搭載工程は表6に示す順序に従い、追加のロットの樹脂を用いる。
【0114】
実施例11:搭載済み樹脂酸フェニレフリンの実験室での生産:等量のフェニレフリンで、短い混合時間で3倍搭載
薬物搭載工程は表6に示す順序に従い、追加のロットの樹脂を用いる。
【0115】
表7:フェニレフリンのアッセイ結果:
上述の実施例は、%フェニレフリンについて試験が行われ、工程に応じて、樹脂酸塩に搭載された量を測定した。
【0116】
【0117】
実施例12(A及びB):搭載済み樹脂酸フェニレフリンの生産スケール:等量のフェニレフリンで、短い混合時間で3倍搭載
薬物搭載工程は表8に示す順序に従う。
【0118】
12A
パートA:樹脂酸塩の洗浄
1.空気圧ミキサーを備えた0.2キロリットル(50ガロン)のケトル内に、36.0kgの精製水を秤量した。
2.混合しながら、18.0kgのAmberlite(商標)イオン交換樹脂(無水物)をゆっくりと加え、30分間混合した。
3.この内容物を濾過チャンバに移し、濾過して、ウェットケークを形成した。
4.このウェットケークを4.0kgの精製水ですすぎ(洗浄1)、加圧空気を用いて濾過した。
5.このウェットケークを再び36.10kgの精製水ですすいだ(洗浄2)。
【0119】
パートB:樹脂への薬物搭載
工程A
1.空気圧ミキサーを備えた0.21キロリットル(55ガロン)のステンレス鋼製タンクに、69.1kgの精製水を加えた。
2.123.94kgのフェニレフリンHClを加え、室温で10分間混合しながら溶かし、フェニレフリン溶液を形成した。
3.工程2からの31.0kgのフェニレフリンHCl溶液を、0.2キロリットル(50ガロン)のケトルに加えた。
4.ゆっくり混合しながら、Amberlite(商標)イオン交換樹脂を加えた。
5.30分間混合した後、この内容物を濾過チャンバに移し、加圧空気を用いて濾過した。
【0120】
工程B
1.工程A(2)からの31.0kgのフェニレフリン溶液を、室温で、0.2キロリットル(50ガロン)のケトルに加えた。
2.ゆっくり混合しながら、工程Aからの35.45kgの湿った搭載済み樹脂酸塩を加えた。
3.30分間混合した後、この内容物を濾過チャンバに移し、加圧空気を用いて濾過した。
【0121】
工程C
1.工程A(2)の30.7kgのフェニレフリン溶液を、室温で、0.2キロリットル(50ガロン)のケトルに加えた。
2.ゆっくり混合しながら、工程Bの39.17kgの湿った搭載済み樹脂酸塩を加え、強い流れを維持するようにミキサー速度を調節した。
3.30分間混合した後、この内容物を濾過チャンバに移し、加圧空気を用いて濾過した。
4.洗浄No.1:工程3からの湿った樹脂酸塩が入った濾過チャンバに、22.0kgの精製水を加え、加圧空気を用いて濾過した。
5.洗浄No.2:工程4の湿った樹脂酸塩が入った濾過チャンバに、22.0kgの精製水を加え、加圧空気を用いて濾過した。
6.洗浄No.3:工程5からの湿った樹脂酸塩が入った濾過チャンバに、22.0kgの精製水を加え、加圧空気を用いて濾過した。
7.洗浄No.4:工程6からの湿った樹脂酸塩が入った濾過チャンバに、22.0kgの精製水を加え、加圧空気を用いて濾過した。
8.湿った樹脂酸塩を流動床乾燥機に移して、流入温度60℃(140°F)、流動空気流量15,574L/分(550cfm)、外気温度エンドポイント43℃(110°F)で乾燥させた。
【0122】
【表9】
*薬物/樹脂比:工程A:7.98/18=0.443/1、工程B:15.96/18=0.887/1、工程C:23.94/18=1.33/1
【0123】
【0124】
12B
実施例12Aを繰り返し、
図2~4に示すデータを取得した。
【0125】
考察
上述の結果は、下記のことを実証する:
(1)複数工程の搭載プロセスにより、粒子中のフェニレフリンレベルが増大する。すなわち、一定の薬物/樹脂比を適用した場合、4工程>3工程>2工程>単工程となる。
(2)搭載工程の間にすすぎを行うことで、対イオンが除去されることにより、粒子中のフェニレフリンレベルが増大する。
(3)薬物/樹脂比は搭載レベルを決定する要因であるが、温度及び混合時間は有意な影響を有しない。
(4)4つの異なる樹脂ロットで、本研究に使用されたナトリウム含量範囲内では、フェニレフリン搭載レベルに有意な差は観察されなかった。
(5)実験室スケールとパイロットスケールとの間では同様の結果が達成された。すなわち、このプロセスは最小限の修正により最大450倍にスケールアップすることができる。
(6)本研究では樹脂の粒径の差は搭載効率に影響していない。
(7)搭載の最初の工程はより高い効率を有し、追加の工程ごとに、搭載効率の増加は減少する。これは、樹脂の結合部位の利用可能性及びアクセス可能性によるものであり得る。
(8)単工程搭載プロセスは、高い薬物/樹脂比ではフェニレフリン搭載レベルに限界があると見られるが、複数工程プロセスでは、同じ薬物/樹脂比で、より高い搭載レベルを達成する。
【0126】
結論
様々な薬物/樹脂比において、複数工程搭載プロセスにより、より高い効率で、フェニレフリンHClの目標の薬物搭載レベルを達成することができる。複数工程搭載は、コストを低減し、処方におけるイオン交換樹脂の使用量を低減して、剤形中のポリスチレクス樹脂に関して公布されている規制限度量に適合するために必要な搭載レベルを達成することができる。
【0127】
実施例13:樹脂酸フェニレフリン粒子のコーティング
酢酸セルロース/ヒドロキシプロピルセルロースのコポリマー系(CA/HPC)を用いたインビトロの薬物放出プロファイルに対する、複数工程搭載プロセスによるフェニレフリンのより高い搭載量の影響が、観察された。
【0128】
実験は、2つの単工程搭載された樹脂酸塩(フェニレフリンレベルはそれぞれ29重量%及び38重量%)と、1つの複数工程搭載された樹脂酸塩(フェニレフリンレベル43重量%)について、同じコーティング処方(すなわち、90/10のアセトン/水系中で、CA/HPC:3/1)、及び、同様のプロセス装置及びパラメータを用いて実施された。
【0129】
処方の性能は、最長24時間の、フェニレフリンのインビトロ放出プロファイルにより評価された。
【0130】
パートA:コーティング溶液の調製
酢酸セルロース及びヒドロキシプロピルセルロースを3:1の比で含むコーティング溶液が、次のように調製された。
1.精製水及びアセトンを、ステンレス鋼製容器に加えた。
2.ヒドロキシプロピルセルロースNFを容器にゆっくり加え、溶解するまで混合した。
3.酢酸セルロースNFをゆっくり加え、溶解するまで混合した。
4.溶液が所望の重量になるまでアセトンを加えた。
5.溶液の最終濃度は、溶液中6%の固体であった(4.5%酢酸セルロース及び1.5%ヒドロキシプロピルセルロース)。
【0131】
パートB:樹脂酸塩粒子のコーティング
表10及び表11に従って調製された樹脂酸フェニレフリン粒子が、流動床18インチウルスター(Wurster)コーティングユニットを用いてコーティングされた。コーティング中は、下記のプロセスパラメータに準拠した:
流入空気温度:38℃
溶液のスプレー速度:220g/分
流出空気温度:28℃
噴霧空気圧:0.6MPa(80psi)
初期コーティング変化重量:19.0kg
露点:32℃(0℃)が望ましい
アセトンを500ppm未満にする乾燥条件(例えば、60℃の炉内で24~48時間)
ふるい分けにより凝集を除去
【0132】
【0133】
【0134】
表10及び11を下記に示す。
【0135】
量的処方及びバッチ処方をそれぞれ表12及び13に示す。
【0136】
【表13】
122.5mgのフェニレフリンHClを含む粒子の単位用量は、約74.48mgである。実際の重量は、粒子中のフェニレフリンHClのアッセイ量に依存する。
2量は、遊離塩基を表す(1mgのフェニレフリンHClは、0.821mgのフェニレフリン遊離塩基に等しい)。
3プロセス中にアセトン及び精製水は除去される。
【0137】
【表14】
11mgのフェニレフリンHClは、0.821mgのフェニレフリン遊離塩基と等価である。
2プロセス中にアセトン及び精製水は除去される。
【0138】
実施例14:コーティングされたフェニレフリン樹脂粒子の溶解分析
実施例13で得られたコーティングされた樹脂酸フェニレフリン粒子を、米国薬局方General Chapter<711>Dissolutionに記載の装置、Apparatus II(回転パドル、274nmでのUV検出を利用)を用いて、0時間から24時間における溶解について試験した。溶解媒体は、最初の1時間については750mLの0.1N HClであり、次いで、2~24時間については、1000mLの0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)であった。温度は37℃、回転速度は75rpmであった。溶解は、製剤中フェニレフリンの量100%で調製した標準に対して、放出された割合が、1時間で50%以下、3時間で30%以下、8時間で50%以下であることを示した。
【0139】
溶解方法は、USP Apparatus 2(パドル)を用いて、75rpmで、下記の工程に準拠した:
1.溶解媒体の温度が標的値に達していることを確認する。
2.750mLの0.1N塩酸が入ったそれぞれの容器にサンプルを(媒体溶液の表面に)加え、パドル速度75rpmで溶解試験を開始する。0.1N塩酸中での1時間の操作後、1時間サンプルを採取し、次いで即座に250mLの0.20Mリン酸三ナトリウムを加えることにより緩衝液段階に進む。媒体のpHは、6.8±0.05であるべきである。
3.1時間後、2時間後、3時間後、6時間後(任意選択)、8時間後、12時間後、及び24時間後に、各容器から溶解サンプル溶液10mLを採取する。Varian Full Flow FIlters(10μm)を通してサンプル溶液を濾過する。
4.溶解しているフェニレフリンの量は、274nmの波長における標準溶液のUV吸光度と比較したUV吸光度から決定することができる。また、溶解しているフェニレフリンの量は、フェニレフリンアッセイ方法を用いて決定することができる。
5.より早い時点で注いだ量を加えることによって、3、6、及び8時間における溶解した量を補正する。溶解プログラム(若しくは同等物)を用いて、又は手動で、中間体サンプリング及びサンプルの採取を補正する。
【0140】
表14を下記に示す。
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
考察
・コーティング後、複数工程の搭載によるフェニレフリンレベルは、同じコーティングレベルでの単工程プロセスのフェニレフリンレベルよりも高いままである(40%)。
・特定のコーティングレベル(例えば40%)で、フェニレフリン搭載レベルが高いほうが、より低い搭載レベルのものよりも放出速度がわずかに早い。
・同じフェニレフリン搭載及びポリマーコーティングレベルで、同様の結果が観察された。
・複数工程搭載について:
-放出速度は、フェニレフリン搭載レベルに反比例しており、すなわち、コーティングレベルが高いほど(35%~50%)、放出速度は遅くなる(2時間時点で83%~42%)。
-所与の単工程搭載された樹脂酸塩の放出プロファイルは、調製されたコーティングレベルにより、対応する複数工程搭載された樹脂酸塩に一致させることができる。
・これによって、1単位の最終製品に必要な樹脂量を、45.7mgから26.4mgへと低減することができ、公布されている規制限度に適合する要件を達成することができる。
【0145】
結論
結果は、本研究で特定された搭載レベル範囲において、コーティングされたポリスチレクス粒子から放出されるフェニレフリンHClが、コーティングプロセス中に適用されたコーティングレベルによって概ね制御され、一方、薬物搭載プロセス中に適用された搭載レベル及び工程の数は大きな影響を有しないことを示している。ただし、ある搭載済み樹脂酸塩を別のものに切り替えたときに同じ溶解プロファイルを達成するためには、コーティングレベル及びプロセスパラメータの小幅な調整が必要な場合がある。
【0146】
よって、この複数工程の高レベル搭載されたフェニレフリンコーティングされた樹脂酸塩で観察されたのと同様の放出性能で、フェニレフリンHCl処方の12時間持続放出を達成し、25mg/日の用量というイオン交換樹脂の賦形剤ガイドラインに準拠することができる。
【0147】
前述の実施例は、特許請求の範囲において設定され得る本発明の範囲を限定することを意図するものではない。特に、前述の開示を考慮して様々な等価物及び代替物が当業者に認識され、これらは、本発明の範囲内であると企図される。
【0148】
参考文献
Blackledge HM,O’Farrell J,Minton NA,et al.The effect of therapeutic doses of paracetamol on sulphur metabolism in man.Hum Exp Toxicol 1991 May;10(3):159~65。
【0149】
Court MH,Duan SX,Von Moltke LL,et al.Interindividual variability in acetaminophen glucuronidation by human liver microsomes:Identification of relevant acetaminophen UDP-glucuronosyltransferase isoforms.J Pharmacol Exp Ther 2001;299(3):998~1006。
【0150】
Empey DW and Medder KT.Nasal Decongestants.Drugs 1981;21:438~443。
【0151】
Hengstmann JH,Goronzy J.Pharmacokinetics of 3H-phenylephrine in man.Eur J Clin
Pharmacol 1982;21:335~341。
【0152】
Hoffman BB.Chapter 10:Catecholamines,Sympathomimetic Drugs,and Adrenergic Receptor Antagonists.In:Goodman & Gilman’s The Pharmacologic Basis of Therapeutics-10th Ed.Hardman JG and Limbird LE,eds.McGraw-Hill,Medical Publishing Division,USA,2001。
【0153】
Ibrahim KE,Midgley JM,Crowley IR,and Willaims CM.The mammalian metabolism of R-(-)-m-synephrine.J Pharm Pharmacol.1983;35:144~147。
【0154】
Johnson DA,Hricik JG.The pharmacology of a-adrenergic decongestants.Pharmacother 1993;13:110S~115S。
【0155】
Koch-Weser J.Medical Intelligence:Drug Therapy.N Engl J Med 1976 Dec 2;295(23):1297~1300。
【0156】
Manyike PT,Kharasch ED,Kalhorn TF,et al.Contribution of CYP2E1 and CYP3A to acetaminophen reactive metabolite formation.Clin Pharmacol Ther 2000 Mar;67(3):275~282。
【0157】
Miners JO,Atwood J,Birkett DJ.Influence of sex and oral contraceptive steroids on paracetamol metabolism.Br J Clin Pharmacol 1983;16:503~509。
【0158】
Miners JO,Osborne NJ,Tonkin AL,et al.Perturbation of paracetamol urinary metabolic ratios by urine flow rate.Br J Clin Pharmacol 1992;34:359~362。
【0159】
Mitchell JR,Thorgeirsson SS,Potter WZ,et al.Acetaminophen-induced injury:Protective role of glutathione in man and rationale for therapy.Clin Pharmacol Ther 1974;16:676~684。
【0160】
Slattery JT,McRorie TI,Reynolds R,et al.Lack of effect of cimetidine on acetaminophen disposition in humans.Clin Pharmacol Ther 1989 Nov;46(5):591~597。
【0161】
Suzuki O.Matsumoto T.Oya M,Katsumata Y.Oxidation of synephrine by type A and type B monoamine oxidase.Experientia 1979;35:1283~1284。
【0162】
〔実施の態様〕
(1) フェニレフリン及びカチオン性ポリスチレンスルホン酸を含む薬物-樹脂複合体であって、前記カチオン性ポリスチレンスルホン酸が、前記フェニレフリンと組み合わされる前に約74μm~約177μmの粒径を含み、かつ、前記薬物樹脂複合体が、フェニレフリン:樹脂を約1:1超の比で含む、複合体。
(2) 前記カチオンが、ナトリウム、銅、亜鉛、鉄、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、及びリチウムからなる群から選択される、実施態様1に記載の薬物-樹脂複合体。
(3) 前記カチオンが、ナトリウムである、実施態様2に記載の薬物-樹脂複合体。
(4) コーティングで被覆された実施態様3に記載の薬物-樹脂複合体を含む、徐放性粒子。
(5) 前記コーティングが、セルロース材料を含む、実施態様4に記載の徐放性粒子。
【0163】
(6) 前記セルロース材料が、酢酸セルロース及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択される、実施態様5に記載の徐放性粒子。
(7) 実施態様6に記載の徐放性粒子を含む、医薬製剤。
(8) 即時放出型のフェニレフリンを更に含む、実施態様7に記載の医薬製剤。
(9) 実施態様1に記載の薬物-樹脂複合体を被覆することを含む、被覆された薬物-樹脂複合体を形成する方法。
(10) 前記粒子の少なくとも約50%が、約74μm~約177μmの粒径を有する、実施態様1に記載の薬物-樹脂複合体。
【0164】
(11) 前記粒子の少なくとも約80%が、約74μm~約177μmの粒径を有する、実施態様10に記載の薬物-樹脂複合体。
(12) 前記粒子の少なくとも約90%が、約74μm~約177μmの粒径を有する、実施態様11に記載の薬物-樹脂複合体。
(13) 前記粒子の15%未満が、約44μm未満の粒径を有する、実施態様1に記載の薬物-樹脂複合体。
(14) 前記薬物樹脂複合体が、フェニレフリン:樹脂を約1.25:1の比で含む、実施態様1に記載の薬物樹脂複合体。
(15) 前記薬物樹脂複合体が、フェニレフリン:樹脂を約1.33:1の比で含む、実施態様1に記載の薬物樹脂複合体。
【0165】
(16) 前記薬物樹脂複合体が、フェニレフリン:樹脂を約1.4:1の比で含む、実施態様1に記載の薬物樹脂複合体。
(17) 前記薬物樹脂複合体が、フェニレフリン:樹脂を約1.5:1の比で含む、実施態様1に記載の薬物樹脂複合体。
(18) 前記薬物樹脂複合体が、フェニレフリン:樹脂を約1.6:1の比で含む、実施態様1に記載の薬物樹脂複合体。
(19) 薬物-樹脂複合体を調製するためのプロセスであって、
工程A:
精製水と樹脂とを容器内で混合して第1の混合物を形成することと、
前記第1の混合物を濾過して、樹脂を含む湿ったケークを形成することと、
前記樹脂を含む湿ったケークを精製水ですすぐことと、
前記樹脂を含むすすいだ湿ったケークを濾過することと、
工程B:
精製した薬物と水とを容器内で混合して薬物溶液を形成することと、
工程C:
前記樹脂を含む濾過した湿ったケークと前記薬物溶液の一部とを容器内で混合して、第2の混合物を形成することと、
前記第2の混合物を濾過して、第1の搭載された樹脂酸塩(first loaded resinate)を形成することと、
工程D:
前記第1の搭載された樹脂酸塩と前記薬物溶液の一部とを容器内で混合して、第3の混合物を形成することと、
前記第3の混合物を濾過して、第2の搭載された樹脂酸塩を形成することと、
工程E:
任意選択的に、工程Dを複数回繰り返すことと、
工程F:
前記搭載された樹脂酸塩を乾燥させて、前記薬物-樹脂複合体を形成することと、を含む、プロセス。
(20) 前記薬物がフェニレフリンである、実施態様19に記載のプロセス。
【0166】
(21) 前記樹脂がカチオン性ポリスチレンスルホン酸である、実施態様20に記載のプロセス。
(22) 前記カチオン性ポリスチレンスルホン酸が、前記フェニレフリンと組み合わされる前に約74μm~約177μmの粒径を含む、実施態様21に記載のプロセス。
(23) 前記薬物樹脂複合体が、フェニレフリン:樹脂を約1:1超の比で含む、実施態様22に記載のプロセス。
(24) 前記薬物樹脂複合体が、フェニレフリン:樹脂を約1.4:1の比で含む、実施態様23に記載のプロセス。