(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】防火性建具
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20220131BHJP
E06B 1/28 20060101ALI20220131BHJP
E06B 3/22 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B1/28
E06B3/22
(21)【出願番号】P 2020128728
(22)【出願日】2020-07-29
(62)【分割の表示】P 2015149258の分割
【原出願日】2015-07-29
【審査請求日】2020-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2015028852
(32)【優先日】2015-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島本 倫男
(72)【発明者】
【氏名】矢野 秀明
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-072218(JP,A)
【文献】特開2015-148056(JP,A)
【文献】特開2014-009495(JP,A)
【文献】特開2005-351009(JP,A)
【文献】特開2014-077309(JP,A)
【文献】特開2016-56558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-1/70
E06B 3/04-3/46
E06B 3/50-3/52
E06B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する開口枠体と、該開口枠体の開口部を閉塞する板材と、該板材の外周を支持する外周枠体とを有する建具を構成する開口枠体であって、開口枠体は、左右の縦枠材と上下の横枠材とから構成され、
該開口枠体に、第1の熱膨張性耐火材と、第1の熱膨張性
耐火材よりも低い温度で膨張を開始する第2の熱膨張性耐火材とが配置され、
左右の縦枠材の下部と下側の横枠材とが接して構成される開口枠体の2つの角部において、左右の縦枠材の下部に、第2の熱膨張性耐火材が配置されていることを特徴とす
る開口枠体。
【請求項2】
下側の横枠材に第2の熱膨張性
耐火材が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の開口枠体。
【請求項3】
開口枠体の各辺が、前記各辺の長手方向に沿って延びる空洞を有し、複数の熱膨張性耐火材が前記空洞内に間隔を空けて配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の開口枠体。
【請求項4】
開口部を有する開口枠体と、該開口枠体の開口部を閉塞する板材と、該板材の外周を支持する外周枠体とを有する建具を構成する外周枠体であって、外周枠体は、左右の縦框材と上下の横框材とから構成され、
該外周枠体に、第1の熱膨張性耐火材と、第1の熱膨張性
耐火材よりも低い温度で膨張を開始する第2の熱膨張性
耐火材とが配置され、
左右の縦框材の下部と下側の横框材とが接して構成される外周枠体の2つの角部において、左右の縦框材の下部に、第2の熱膨張性耐火材が配置されていることを特徴とする外周枠体。
【請求項5】
下側の横框材に第2の熱膨張性
耐火材が配置されていることを特徴とする請求項4に記載の外周枠体。
【請求項6】
外周枠体の各辺が、前記各辺の長手方向に沿って延びる空洞を有し、複数の熱膨張性耐火材が前記空洞内に間隔を空けて配置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の
外周枠体。
【請求項7】
請求項1~3のいずれかに記載の開口枠体及び請求項4~6のいずれかに記載の外周枠体のうちの少なくとも一方と、該枠体の開口部を閉塞する板材とを有する建具。
【請求項8】
窓又はドアである請求項7に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の構造物の開口部に使用する建具枠体および建具に関し、詳細には、各種サッシ窓の窓枠やドアのドア枠等を構成する防火性の建具枠体および建具に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の構造物の開口部に使用する窓、障子、扉(すなわちドア)、戸、ふすま、及び欄間等の建具に要求される性能の一つに防火性能があり、防火性能を高めるために、建具に熱膨張性耐火材を装着することが行われている。従来、構造物の開口部に設置される建具の枠体には、火炎が貫通しないように、枠体の全周に熱膨張性材料が装着されていた。例えば、特許文献1には、防火性樹脂サッシの開口枠体の内部の複数の空洞の全長に、熱膨張性耐火材を挿入することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は一種類の熱膨張性耐火材が用いられていたが、火災時、火は上方へ向かうので、サッシやドア等の建具の下部の温度が上昇しにくく、熱膨張性耐火材が膨張せずに耐火性が出せないことがあった。また、サッシやドア等の建具が部屋の隅にある場合、建具の角の部分は2つの壁と天井が区画する空間の端に存在するため、温度が上がりにくい環境で、同様に耐火性が出せないことがあった。 さらに、一種類の熱膨張性耐火材が火災等による加熱によりいったん膨張すると、別のタイミングで追加で膨張することは困難であるため、例えば建具の枠体が熱により変形しても、枠体の変形に合わせて熱膨張性耐火材が追加で熱膨張性耐火材が膨張することは困難であるため、熱膨張性耐火材と建具との間に隙間が生じ、耐火性が損なわれる場合があった。
【0005】
本発明の目的は、温度が上がりにくい環境でもより良好な防火性能を発揮する建具枠体および建具を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、膨張のタイミングが制御された建具枠体および建具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく、建具の枠体の周囲に、複数の熱膨張性耐火材を間隔をあけて配置して、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0009】
項1.開口部を有する開口枠体と、該開口枠体の開口部を閉塞する板材と、該板材の外周を支持する外周枠体とを有する建具を構成する開口枠体であって、開口枠体は、左右の縦枠材と上下の横枠材とから構成され、該開口枠体に、第1の熱膨張性耐火材と、第1の熱膨張性耐火材よりも低い温度で膨張を開始する第2の熱膨張性耐火材とが配置され、左右の縦枠材の下部と下側の横枠材とが接して構成される開口枠体の2つの角部において、左右の縦枠材の下部に、第2の熱膨張性耐火材が配置されていることを特徴とする開口枠体。
【0010】
項2.下側の横枠材に第2の熱膨張性耐火材が配置されていることを特徴とする項1に記載の開口枠体。
【0011】
項3.開口枠体の各辺が、前記各辺の長手方向に沿って延びる空洞を有し、複数の熱膨張性耐火材が前記空洞内に間隔を空けて配置されていることを特徴とする項1に記載の開口枠体。
【0012】
項4.開口部を有する開口枠体と、該開口枠体の開口部を閉塞する板材と、該板材の外周を支持する外周枠体とを有する建具を構成する外周枠体であって、外周枠体は、左右の縦框材と上下の横框材とから構成され、該外周枠体に、第1の熱膨張性耐火材と、第1の熱膨張性耐火材よりも低い温度で膨張を開始する第2の熱膨張性耐火材とが配置され、左右の縦框材の下部と下側の横框材とが接して構成される外周枠体の2つの角部において、左右の縦框材の下部に、第2の熱膨張性耐火材が配置されていることを特徴とする外周枠体。
【0013】
項5.下側の横框材に第2の熱膨張性耐火材が配置されていることを特徴とする請求項4に記載の外周枠体。
【0014】
項6.外周枠体の各辺が、前記各辺の長手方向に沿って延びる空洞を有し、複数の熱膨張性耐火材が前記空洞内に間隔を空けて配置されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の外周枠体。
【0015】
項7.請求項1~3のいずれかに記載の開口枠体及び請求項4~6のいずれかに記載の外周枠体のうちの少なくとも一方と、該枠体の開口部を閉塞する板材とを有する建具。
【0016】
項8.窓又はドアである請求項7に記載の建具。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、建具の取り付け位置に係わらず、より良好な防火性能を付与することができ、構造物の耐火性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る防火性サッシの正面図。
【
図3】開口枠体における熱膨張性耐火シートの配置を説明する要部略正面図。
【
図4】障子における熱膨張性耐火シートの配置を説明する要部略正面図。
【
図5】開口枠体における熱膨張性耐火シートの配置の別例を示す要部略正面図。
【
図6】開口枠体における熱膨張性耐火シートの配置の別例を示す要部略正面図。
【
図7】開口枠体における熱膨張性耐火シートの配置の別例を示す要部略正面図。
【
図8】開口枠体における熱膨張性耐火シートの配置の別例を示す要部略正面図。
【
図9】開口枠体における熱膨張性耐火シートの配置の別例を示す要部略正面図。
【
図10】熱膨張性耐火シートの配置の別例を示す要部断面図。
【
図11】本発明の第2実施形態に係るドアの正面図。
【
図12】(A)
図11のB-B線における要部横断面図、(B)火災が生じた場合の
図12(A)の耐火シート15の防火性能を示す略断面図。
【
図13】比較例1の開口枠体における熱膨張性耐火シートの配置を示す略正面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
本発明をサッシに具体化した第1実施形態について
図1~4に従って説明する。
【0023】
図1は、本実施形態に係る防火性樹脂サッシとしての引き違いサッシの正面図、
図2は、
図1のA-A線に沿う要部断面図である。
図1,2において、防火性樹脂サッシ1は住宅等の構造物に形成された矩形の開口部に固定されるものであって、外周の、開口部を有する矩形の開口枠体10と、その内部に水平方向に移動可能の引き違いの2枚の障子20,20とを備えている。
【0024】
建具枠体としての開口枠体10は左右の縦枠材11,12と上下の横枠材13,14とから構成され、各枠材11~14に囲まれた内部が開口部となっている。そして、建具枠体としての2枚の障子20は前記の開口部を閉塞するもので構造的には略同一構成であり、左右の縦框材21,22と上下の横框材23,24から矩形に形成され、中央側の縦框材が前後に重なって召し合わせ部となっている。開口枠体10及び障子20,20は、合成樹脂製部材である縦横の枠材11~14と、縦横の框材21~24とをそれぞれ組み合わせて構成されている。
【0025】
防火性樹脂サッシ1は、前記のように開口枠体10に、2枚の障子20,20がスライド可能に支持されるものであり、障子20,20の外周枠体を構成する縦横の框材21~24が、内部に位置する鉄製網入りガラスからなる窓ガラス25を支持している。窓ガラス25は耐火性板材を構成し、防火性樹脂サッシ1の室外と室内を仕切る仕切り面を構成している。なお、耐火性板材としては透光性を有する窓ガラスに限らず、金属板材やケイカル板のような遮光性を有するものでもよい。
【0026】
本実施形態の防火性樹脂サッシ1の構成は、特に限定されるものではなく、サッシを構成する上下左右の各枠材11~14、各框材21~24は、合成樹脂の押出し材で形成され長手方向に沿って延びる空洞を有し、長手方向と直交する横断面の形状が一つあるいは複数の空洞の空間を有するものであれば、周知のいずれの形態であってもよい。またサッシを構成する各枠材、各框材に用いられる合成樹脂は、硬質ポリ塩化ビニルやABS樹脂等いずれでもよいが、防火性能に有利という観点からは硬質塩化ビニルが好ましい。
【0027】
開口枠体10を構成する縦枠材11,12は、硬質塩化ビニル等の合成樹脂を押出し成型した長尺材を切断して形成したものであり、縦枠材11,12を長手方向に貫通して延びる空洞11a,12aをそれぞれ備えている。また、開口枠体10を構成する横枠材13,14も、図示していないが同様に、横枠材13,14を長手方向に貫通して延びる空洞を備えている。
【0028】
障子20を構成する左右の縦框材21,22は、同様に合成樹脂を押出し成型した長尺材を切断して形成したものであり、横断面には長手方向に貫通して延びる空洞21a,22aをそれぞれ備えている。また、障子20を構成する横框材23,24も、図示していないが同様に長手方向に貫通して延びる空洞を備えている。そして、縦横の框材の内部空間には鉄製網入りガラスからなる窓ガラス25が嵌め込まれている。窓ガラス25は縦框材21,22の段差部に位置しており、ゴムシール材やシーリング剤26で固定されている。
【0029】
本実施形態に示す防火性樹脂サッシ1は、開口枠体10、及び障子20を構成する合成樹脂製部材である各枠材11~14、及び各框材21~24の空洞に、熱膨張性耐火材料からなる耐火シートが挿入されていることを特徴としている。すなわち、縦枠材11の空
洞11a,12aには熱膨張性耐火材料のシートを短冊状に切断した耐火シート15が縦枠材11の長手方向に沿って挿入されている。耐火シート15は片面に粘着層を有しており、縦枠材11の2つの空洞にそれぞれ挿入され、粘着層により貼り付けられている。なお、図示していないが、横枠材13,14にも長手方向に貫通して延びる空洞内に、同様に耐火シートが挿入されている。
【0030】
また、障子20の縦框材21,22の空洞21a,22aにも、熱膨張性耐火材料のシートを短冊状に切断した耐火シート16が挿入されている。耐火シート16は平板状であり、それぞれ空洞のガラス面と平行な壁面に対接した状態で挿入されている。そして、障子20の上下の横框材23,24にも、図示していないが長手方向に貫通して延びる空洞内に耐火シートが挿入されている。
【0031】
このように、開口枠体10の空洞と、障子20,20の空洞には、多数の耐火シート15,16が窓ガラス25の面に沿って平行な状態に並べられ、空洞の内壁面に粘着層で密着しており、耐火面を形成している。
【0032】
耐火シート15,16は、熱膨張性耐火材料の厚さが数mmのシート材を短冊状に切断し、この耐火シートを空洞の窓ガラス25の面と平行な壁面に沿わせて挿入している。熱膨張性耐火材料は、合成樹脂製部材の空洞内に挿入するために、その空洞の形状と寸法に合った成形体でもよく、空洞の形状や寸法に関係なく挿入可能になることから、短冊状またはテープ状の成形体が好ましい。なお、耐火シート15,16を構成する熱膨張性耐火材料の詳細(組成等)については、後述する。
【0033】
本実施形態で用いられる耐火シート15,16を構成する熱膨張性耐火材料とは、火災時等の高温にさらされると、体積膨張して膨張断熱層を形成する材料のことであり、火災の際に各枠材11~14と各框材21~24等の合成樹脂製部材が燃焼して焼失した部分を、熱膨張性耐火材料の膨張断熱層が埋めて、火炎の貫通を防止する材料であれば、特に限定されない。熱膨張性耐火材料としては、後述する樹脂成分に熱膨張性黒鉛が含有された樹脂組成物から調製される成形体等が挙げられる。
【0034】
耐火シート15,16を構成する熱膨張性耐火材料は、前記のように合成樹脂製部材が燃焼して焼失した部分を膨張成分が埋める材料であれば特に限定されないが、好ましくは50kW/m2の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3~50倍の材料であ
る。体積膨張率が3倍以上であると、膨張成分が合成樹脂の焼失部分を埋め、防火性能が発揮される。また体積膨張率が50倍以下であると、膨張断熱層の強度が維持され、火炎の貫通を防止する効果が発揮されるため、前記の範囲が好ましい。より好ましくは、体積膨張率が5~40倍であり、さらに好ましくは8~35倍である。
【0035】
図3は、開口枠体10における耐火シート15の配置を説明する熱膨張性耐火シートの配置を説明する要部略正面図であり、
図2において下側に配置された耐火シート15のみを図示している。本実施形態において、耐火シート15は、合成樹脂と、第1の膨張開始温度を有する熱膨張性黒鉛と、無機充填剤とを含む第1の熱膨張性材料から形成された第1の耐火シート15Aと、合成樹脂と、第1の膨張開始温度よりも低い第2の膨張開始温度を有する第2の熱膨張性黒鉛と、無機充填剤とを含む第2の熱膨張性材料から形成された第2の耐火シート15Bとの2種類の耐火シート15からなる。第2の耐火シート15Bを構成する第2の熱膨張性材料は第1の耐火シート15Aを構成する第1の熱膨張性材料よりも低い温度で膨張を開始する。
【0036】
より具体的には、開口枠体10の一つの角部に、低い温度でも膨張を開始する第2の耐火シート15Bが配置され、開口枠体10の他の部分に第2の耐火シート15Bよりも高
い温度で膨張を開始する第1の耐火シート15Aが配置されている。具体的には、第2の耐火シート15Bが左側の縦枠材11の上部と、上側の横枠材13の左部とに配置され、左側の枠材11及び上側の横枠材13の残りの部分、右側の縦枠材12及び下側の横枠材14には第1の第2の耐火シート15Aが配置されている。第1の耐火シート15A及び第2の耐火シート15Bは開口枠体10の四つの辺、すなわち枠材11~14に連続して配置されている。
【0037】
図3の左上が、建物の上側かつ外側に対応する場合、上記開口枠体10の一つの角部には熱が伝わりにくいが、火災時には第2の耐火シート15Bが第1の耐火シート15Aよりも低い温度でも膨張を開始するため、加熱時には第2の耐火シート15Bが、同じ箇所に第1の耐火シート15Aを用いた場合よりも早く膨張を開始し、耐火シート15A,15Bが膨張し、開口枠体10上で連続的な防火性能を発揮する。このような開口枠体10は温度が上がりにくい環境でもより良好な防火性能を発揮すると共に、第1の耐火シート15A,第2の耐火シート15Bの選択により膨張のタイミングを制御することができる。
【0038】
図4に示すように、障子20(一枚のみ示す)でも、耐火シート
16は外周枠体を構成する縦横の框材21~24の空洞に配置される。耐火シート16は、合成樹脂と、熱膨張性黒鉛と、無機充填剤とを含む一種類の熱膨張材料から形成された耐火シートでもよいし、耐火シート15と同様に、合成樹脂と、第1の膨張開始温度を有する熱膨張性黒鉛と、無機充填剤とを含む第1の熱膨張材料から形成された第1の耐火シート16Aと、合成樹脂と、第1の膨張開始温度よりも低い第2の膨張開始温度を有する熱膨張性黒鉛と、無機充填剤とを含む熱膨張性材料から形成され、第1の耐火シートよりも低い温度で膨張を開始する第2の耐火シート16Bとからなってもよい。かかる障子20で
も、温度が上がりにくい環境でもより良好な防火性能を発揮すると共に、第1の耐火シート16A,第2の耐火シート16Bの選択により膨張のタイミングを制御することができる。
【0039】
耐火シート15,16の幅は、空洞の幅より短くても長くても一致してもよいが、長い場合は折り曲げ、或いは丸めた状態で挿入してもよい。また耐火シート15,16の厚みは、防火性能を満足するのであれば、薄くても厚くてもよいが、変形させる場合は、挿入可能な厚みより薄くしなければならない。
【0040】
耐火シート15,16の空洞内の固定は、短冊状又はテープ状の成形体の場合、粘着剤又は接着剤を用いる方法、ねじで固定する方法、空洞とシートの空間に丸型等の発泡体等を挿入する法、あるいは発泡体の原料を注入したあと発泡させて固定する方法等が挙げられる。また空洞の形状と寸法に合った成形体の場合は、そのまま挿入するだけでもよく、前記した固定方法を用いてもよい。
【0041】
耐火シート15,16を構成する熱膨張性耐火材は、空洞内への挿入や固定のしやすさから、剛性のある材料が好ましい。例えば、熱膨張性耐火材を形成する材料のデュロメータ硬さが、JISK7215に準拠してタイプAで測定した場合に、65以上が好ましい。75以上であれば、より好ましく、80以上であれば、さらに好ましい。デュロメータ硬さが大きくなる程、熱膨張性耐火材の剛性が増し、空洞内へ挿入することがより簡便になるばかりでなく、空洞内への固定も容易にすることができ、防火性樹脂サッシの製造を簡略化することができる。
【0042】
つぎに、前記した耐火シート15,16を構成する熱膨張性耐火材料について詳細に説明する。熱膨張性耐火材料は、膨張性黒鉛を混練した合成樹脂等の、加熱により膨張する材料であり、通常、熱可塑性樹脂、ゴム物質、又は熱硬化性樹脂等の合成樹脂と、膨張性黒鉛と、無機充填剤とを含む。
【0043】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0044】
ゴム物質としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ポリブタジエンゴム(1,2-BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレンゴム(EPR、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、多加硫ゴム(T)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM、FZ)、ウレタンゴム(U)等が挙げられる。
【0045】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等が挙げられる。
【0046】
これらの樹脂は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの樹脂のうち、後述する熱膨張性黒鉛を配合する場合に、その膨張温度以下で成形可能であるという観点から、ポリオレフィン系樹脂またはゴム物質が好ましく、中でもポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0047】
また、防火性能をより向上させるために、充填剤を多量に配合することが可能であるという観点からは、上述のゴム物質が好ましい。
【0048】
さらに前記したように、熱膨張性耐火材料からなる耐火シート15,16を合成樹脂製部材の空洞内に固定、あるいは後述する型鋼部材との貼り合わせを可能にするため、樹脂組成物自体に粘着性を有することが好ましく、その方法としては、例えば、ゴム物質に粘着付与樹脂、可塑剤、油脂類、低分子量化合物等を添加することが挙げられる。粘着付与樹脂としては特に限定されず、例えば、ロジン、ロジン誘導体、ダンマル樹脂、コーパル、クマロン-インデン樹脂、ポリテルペン、非反応性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、石油系炭化水素樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0049】
粘着性を付与する可塑剤は、単独で粘着性を発現させることは難しいが、前記粘着付与樹脂との併用で粘着性を向上させることができる。可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、セバシン酸エステル系可塑剤、リシノール酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、塩化パラフィン等が挙げられる。
【0050】
さらに、樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、フェノール樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。特に分子構造の選択が広範囲で、樹脂組成物の防火性能や力学物性を調整することが容易であることから、エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、基本的にはエポキシ基を持つモノマーと硬化剤を反応させて得られる樹脂である。エポキシ基をもつモノマーとしては、2官能のグリシジルエーテル型、2官能のグリシジルエステル型、多官能のグリシジルエーテル型が挙げられる。
【0051】
また、エポキシ樹脂には、他の樹脂が添加されていてもよい。特許第4691324号
に記載したように、エポキシ樹脂には、種々の形状または寸法の空洞内に挿入することが可能になるように、可撓性が付与されてもよく、可撓性を付与する方法は特許第4691324号に記載されている。前記エポキシ樹脂の可撓性を調整することによって、硬い板状物から柔軟性を有する成形体が得られ、種々の空洞の形状及び寸法に応じて、耐火シート15,16を挿入することが可能となる。
【0052】
耐火シート15,16を構成する熱膨張性耐火材料に含有される膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたもので、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。このように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、さらにアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和したものを使用するのが好ましい。
【0053】
脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0054】
膨張性黒鉛の膨張開始温度は材料によって異なり、第1の耐火シート15Aを構成する第1の膨張開始温度を有する熱膨張性黒鉛と、第2の耐火シート15Bを構成する、第1の膨張開始温度よりも低い第2の膨張開始温度を有する熱膨張性黒鉛とを当業者は適宜選択し得る。例えば、第1の耐火シート15Aを構成する熱膨張性黒鉛としては、エア・ウォーター株式会社製CA-60(膨張開始温度210℃)が挙げられ、第2の耐火シート15Bを構成する熱膨張性黒鉛としては、エア・ウォーター株式会社製50LTE-UN(膨張開始温度170℃)が挙げられる。
【0055】
熱膨張性黒鉛の粒度は、20~200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュかそれより大きいと、黒鉛の膨張度が膨張断熱層が得るのに十分であり、また粒度が20メッシュかそれより小さいと、樹脂に配合する際の分散性が良く、物性が良好である。熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP-EG」、GRAFTECH社製「GRAFGUARD」等が挙げられる。
【0056】
熱膨張性耐火材を構成する樹脂組成物に、さらに無機充填剤を配合することが好ましい。無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩等が挙げられる。
【0057】
また、無機充填剤としては、これらの他に、硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」(商品名)、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モ
リブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。無機充填剤の中でも、含水無機物及び/又は金属炭酸塩が好ましい。含水無機物の中でも、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物は、生成する水の量が多く、より防火性能を発揮するため特に好ましい。金属炭酸塩の中でも、周期律表II族に属する金属炭酸塩、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウムは、炭酸反応が生起しやすいため、特に好ましい。
【0058】
無機充填剤の粒径としては、0.5~100μmが好ましく、より好ましくは1~50μmである。無機充填剤は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、0.5μm以上であると、分散性が良好である。添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることで樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、粒径の大きいものが好ましいが、100μm以下の粒径が成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性の点で望ましい。
【0059】
無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウムでは、粒径18μmの「ハイジライトH-31」(昭和電工社製)、粒径25μmの「B325」(ALCOA社製)、炭酸カルシウムでは、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工業社製)等が挙げられる。
【0060】
熱膨張性耐火材を構成する樹脂組成物では、膨張断熱層の強度を増加させ防火性能を向上させるために、前記の各成分に加えて、さらにリン化合物を添加してもよい。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類;ポリリン酸メラミン;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム類、及び、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コスト等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0061】
【0062】
化学式(1)中、R1及びR3は、水素、炭素数1~16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、または、炭素数6~16のアリール基を表す。R2は、水酸基、炭素数1~16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1~16の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシル基、炭素数6~16のアリール基、または、炭素数6~16のアリールオキシ基を表す。
【0063】
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用
いられる。ポリリン酸アンモニウム類としては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取り扱い性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR
CROS 484」、「FR CROS 487」等が挙げられる。
【0064】
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2-メチルプロピルホスホン酸、t-ブチルホスホン酸、2,3-ジメチル-ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4-メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t-ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0065】
リン化合物は、火災等の高温にさらされると、ポリリン酸系化合物へと変化し、それが無機バインダーとして働き、膨張断熱層の強度を向上させる効果を発揮する。また前記の金属炭酸塩のうち、周期律表II族に属する金属炭酸塩、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウムは、前記リン化合物、特にポリリン酸アンモニウムと併用すると、金属炭酸塩の脱炭酸反応の温度が低下するため、膨張断熱層の形成を促進する。さらに、前記化合物を併用することにより、リン化合物のポリリン酸系化合物への変化を促進し、膨張断熱層の強度をさらに向上する効果を発揮する。特に、ポリリン酸アンモニウムと炭酸カルシウムを併用すると、前記の両方の効果が最も発揮されるため好ましい。
【0066】
熱膨張性耐火材料を構成する樹脂組成物において、熱膨張性黒鉛の配合量は、樹脂成分100重量部に対して10~300重量部が好ましい。配合量が10重量部以上では、体積膨張率が低く樹脂サッシを構成する合成樹脂製部材が焼失した部分を埋めるよう防火性能を発揮し、300重量部以下であると機械的強度が維持される。より好ましくは、20~250重量部である。
【0067】
樹脂組成物において、無機充填剤の配合量は、樹脂成分100重量部に対して30~400重量部が好ましい。配合量が30重量部以上では、熱容量が高く十分な防火性能が得られ、400重量部以下では機械的強度が維持される。より好ましくは40~350重量部である。
【0068】
樹脂組成物において、リン化合物を添加する場合、リン化合物の配合量は、樹脂成分100重量部に対して30~300重量部である。配合量が30重量部以上であると、膨張断熱層の強度を向上させる効果を奏し、300重量部以下であると、機械的強度が維持される。より好ましくは40~250重量部である。
【0069】
熱膨張性黒鉛と無機充填剤の合計量は、樹脂成分100重量部に対して40~500重量部が好ましい。合計量が40重量部以上であると、十分な膨張断熱層が得られ、500重量部以下であると、機械的強度が維持される。より好ましくは、70~400重量部である。
【0070】
さらにリン化合物を添加させる場合、リン化合物、熱膨張性黒鉛及び無機充填剤の合計量は、樹脂成分100重量部に対して70~500重量部が好ましい。合計量が70重量
部以上であると十分な膨張断熱層が得られ、500重量部以下であると機械的強度が維持される。より好ましくは100~400重量部である。
【0071】
また、樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、さらにフェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料等が添加されてもよい。また、一般的な難燃剤を添加してもよく、難燃剤による燃焼抑制効果により防火性能を向上させることができる。
【0072】
熱膨張性耐火材を構成する樹脂組成物の成形体は、前記の樹脂組成物の混練物を作製した後成形することにより、空洞の形状及び寸法に合った成形体を、またシート状またはロール状の成形体を作製してから切断することにより、短冊状またはテープ状の成形体を得ることができる。さらに溶剤を混練時に添加してから成形後、溶剤を揮発させる方法であってもよい。
【0073】
樹脂組成物の混練物は、前記の各成分を押出機、ハンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール等、またエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の場合は、さらに、ライカイ機、遊星式撹絆機等、公知の混練装置を用いることにより得ることができる。また二液性の熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂の場合は、二液それぞれと充填剤の混練物を、前記混練方法にて別々に作製しておき、プランジャーポンプ、スネークポンプ、ギアポンプ等でそれぞれの混練物を供給し、スタティックミキサー、ダイナミックミキサー等で混合を行って混錬物を作製してもよい。
【0074】
樹脂組成物の成形方法としては、前記の混練物を例えば、プレス成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等、公知の方法を用いて成形することができる。また二液性の熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂の成形方法としては、さらにSMC(Sheet Molding Compound)等によるロール成形、ロールコーターやブレードコーターによるコーター成形等、適宜形状に応じて公知の方法を用いることができる。
【0075】
熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂の硬化方法は、特に限定されず、前記プレスやロールによる加熱、または成形ライン中の加熱炉等、成形と硬化を連続で行う方法、あるいは成形後加熱炉に投入する方法等、公知の方法によって行うことができる。また、溶剤を用いて成形する場合は、前記と同様な方法にて溶剤を揮発することができる。
【0076】
前記の成形方法によって成形されたシート状またはロール状の成形体を、短冊状またはテープ状に成形する方法としては、切断加工、スリット加工、輪切り加工等公知の方法を用いることができる。樹脂組成物の成形体が短冊状あるいはテープ状の場合の厚みは、0.1~6mmが好ましい。厚みが0.1mm以上であると、加熱によって形成される膨張断熱層の厚みによって、十分な防火性能を発揮することができる。また、6mm以下であれば、空洞内への挿入が容易であり得る。より好ましくは厚みは0.3~4mmである。
【0077】
樹脂組成物は、膨張断熱層の強度をさらに向上させるために、不燃性繊維状材料からなるネットまたはマットが積層されていてもよい。不燃性繊維状材料からなるネットまたはマットとしては、無機繊維あるいは金属繊維状材料からなるものが好ましく、例えば、ガラス繊維の織布(ガラスクロス、ロービングクロス、コンティニュアスストランドマット等)あるいは不織布(チョップドストランドマット等)、セラミック繊維の織布(セラミッククロス等)あるいは不織布(セラミックマット等)、炭素繊維の織布あるいは不織布、ラスまたは金網から形成されるネットまたはマットが好適に用いられる。
【0078】
これらのネットまたはマットのうち、熱膨張性耐火材料を製造する場合の容易さとコストの観点から、ガラス繊維の織布あるいは不織布が好ましく、製造時にガラスの飛散が少
なくないことから、ガラスクロスがより好ましい。さらに、取り扱い性が向上すること、及び樹脂との接着性がよくなることから、ガラスクロスをメラミン樹脂やアクリル樹脂等で処理してもよい。また熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂の場合は、前記ネットまたはマットが樹脂組成物中に含浸されていてもよい。
【0079】
不燃性繊維状材料からなるネットまたはマットの1m2当たりの重量は、5~2000
gである。1m2当たりの重量が5g未満であると、膨張断熱層の形状保持性を向上させ
る効果が低下し、2000gを超えるとシートが重くなって施工が困難になる。より好ましくは10~1000gである。この不燃性繊維状材料からなるネットまたはマットの厚みは、0.05~6mmが好ましい。厚みが0.05mm以上であると、熱膨張性耐火材が膨張する際にその膨張圧に耐え得る。また、厚さが6mm以下であると、熱膨張性耐火材を折り曲げや丸めた状態での挿入が容易である。より好ましくは、0.1~4mmである。
【0080】
熱膨張性耐火材は、樹脂組成物の成形体の片面または両面に、施工性や膨張層の強度を改善する目的で基材層が積層されていてもよい。基材層に用いられる材料としては、例えば、布、ポリエステルやポリプロピレン等からなる不織布、紙、プラスチックフィルム、割布、ガラスクロス、アルミガラスクロス、アルミ箔、アルミ蒸着フィルム、アルミニウム箔積層紙、及び、これらの材料の積層体等が挙げられる。これらの基材層のうち、粘着剤または接着剤の塗工や塗布がしやすいことから、ポリエチレンラミネートポリエステル不織布が、防火性能上有利に働くことから、アルミニウム箔積層紙、アルミガラスクロスが好ましい。また基材層の厚みは、防火性能あるいは施工上影響を及ぼさなければいずれでもよいが、好ましくは0.25mm以下である。
【0081】
さらに、熱膨張性耐火材は、不燃性繊維状材料からなるネットまたはマットと基材層との積層体を、樹脂組成物からなるシート表面に積層して形成してもよい。積層体としては、例えば、アルミガラスクロスあるいはポリフィルムとガラスクロスの積層体等が挙げられる。基材層または不燃性繊維状材料からなるネットまたはマットを積層あるいは含浸させる方法としては、樹脂組成物を成形する段階で一体化する方法が挙げられる。
【0082】
熱膨張性耐火材に、粘着剤または接着剤を予め塗工あるいは施工時に塗布し、合成樹脂製部材の空洞内に固定する場合、用いる粘着剤または接着剤としては、合成樹脂製部材の樹脂に接着または粘着するものであればいずれでもよいが、例えば、アクリル系、エポキシ系、ゴム系等が挙げられる。また、予め成形体に粘着剤または接着剤層を有する基材を積層する場合は、成形時に積層してもよく、両面に粘着剤または接着剤を有する基材を成形体に積層してもよい。
【0083】
熱膨張性耐火材は、前記のように防火性能に優れているため、防火性能を発現するのに必要な熱膨張性材料を減らすことが可能になるため、防火性樹脂サッシの軽量化と低コスト化を図ることが可能となる。また、前記のように、公知の技術を用いて簡単に短冊状またはテープ状成形体を製造可能であり、空洞内の形状及び寸法に関係なく容易に挿入することができ、簡便に防火性樹脂サッシを製造することが可能となる。
【0084】
前記の如く構成された本実施形態の防火性樹脂サッシ1は、合成樹脂からなる樹脂製部材の空洞内に、熱膨張耐火材料からなる耐火シート15,16を、窓ガラス等の面に沿う方向に耐火面が形成されるように選択して挿入することにより、火災時に合成樹脂製部材の樹脂部分が燃焼して焼失した部分を、耐火シートの膨張断熱層が埋めて火炎の貫通や、熱の進入を防止することができる。
【0085】
防火性樹脂サッシ1の室内側、あるいは室外側で火災が発生すると、火災の熱が合成樹
脂製部材の空洞内に挿入された耐火シート15,16を加熱する。耐火シートは全ての面が窓ガラス25に沿って平行に配置され、防火性樹脂サッシ1を例えば窓ガラス25に対し垂直な方向から見たとき大部分の面積が耐火シート15,16により占められているため、熱膨張により形成された耐火断熱層がほぼ全面に隙間無く形成され、部分的な弱点が無くなり防火性能が安定する。
【0086】
また、耐火シート15,16は火災の熱源と幅広面で対面するため、熱が効率良く伝わって速やかに膨張する。このため、火災が発生した場合、迅速に防火性能を発揮することができる。すなわち、耐火シートが仕切り面と垂直に配置されると、火災等の熱は耐火シートの端面から伝達されるのみで熱膨張が遅くなり、迅速に防火性能を発揮することができないが、本発明では迅速な熱膨張が可能となる。
【0087】
さらに、熱膨張性耐火材である耐火シート15,16と、耐火性板材である鉄製網入りガラスからなる窓ガラス25とで、防火性樹脂サッシ1の開口部を覆うように構成し、開口部が耐火面で覆われているため、火災時における局所的な弱点を除去することができ、防火性能を向上させることができる。耐火シート15自体が粘着性を有するか、あるいは片面に粘着剤が塗工されていると、合成樹脂製部材の空洞に挿入されたときに、空洞の内壁面に粘着できて施工が容易となる。
【0088】
そして、体積膨張率が高く、断熱膨張層の強度がある熱膨張性耐火材を用いることにより、挿入する熱膨張性耐火材を減少することが可能となり、さらなる低コストを図ることができる。さらに樹脂組成物からなる成形体の耐火シートを用いることにより、公知の技術を用いて簡単に短冊状またはテープ状成形体を製造可能であり、空洞内の形状及び寸法に関係なく容易に挿入することができ、簡便に防火性樹脂サッシを製造することが可能となる。
【0089】
ここまで、本発明を第1実施形態を例にとって説明してきたが、本発明はこれに限られず、以下のような種々の変形が可能である。
・
図3の実施形態では、第2の耐火シート15Bが左側の縦枠材11の上部と、上側の横枠材13の左部とに配置されているが、どちらか一方のみ第2の耐火シート15Bが配置され、別の一方は第1の耐火シート15Aであってもよい。この場合も、開口枠体10の一つの角部に耐火シート15Bが配置されていると言える。
・
図3の実施形態では、第1の耐火シート15A及び第2の耐火シート15Bは開口枠体10の四つの辺の枠材11~14に連続して配置されているが、
図5に示されるように、耐火シート15A,Bは、各辺の枠材11~14の長手方向に間隔を空けて整列した構成となっていてもよい。この場合、隣り合う2つの耐火シート15A,Bの間の間隔は、間隔が大き過ぎると火災時に火が通過して防火性能が損なわれるためるが、好ましくは加熱時に耐火シート15A,Bが膨張して隣り合う2つの耐火シート間の間隔が埋められ、それらの耐火シート同士が接触する大きさに設定される。ただし、開口枠体10自体が耐火性を有するため、隣り合う2つの耐火シート間の間隔が埋められない場合であっても本発明の範囲に包含される。一実施形態としては、枠体の各辺または各枠材に配置される複数の熱膨張性耐火シートの長さの合計が、その枠体の全長の40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、又は80%以上の長さである。
・
図3の実施形態では、第2の耐火シート15Bが左側の縦枠材11の上部と、上側の横枠材13の左部とに配置されているが、開口枠体10の別の枠材の位置に第2の耐火シート15Bが配置されてもよい。例えば
図6に示すように、上側の横枠材13と下側の横枠材14に第2の耐火シート15Bが配置され、左右の縦枠材11,12に第1の耐火シート15Aが配置されてもよい。枠材11,12上の第1の耐火シート15Aと枠材13,14上の第2の耐火シート15Bとは環状に連続的に配置されている。火災が発生したとき、火は上方に向かうため、サッシの下側の温度が低くても下側の横枠材14上の第2の
耐火シート15Bは第1の耐火シート15Aよりも低い温度で膨張を開始し、より良好な防火性能を発揮する。また、上側の横枠材13の第2の耐火シート15Bを、第1の耐火シート15Aに変えてもよいし、耐火シート15A,15Bは
図5に示したように一つの枠材上に複数の耐火シートが離間して配置されてもよい。このような開口枠体10も、温度が上がりにくい環境でもより良好な防火性能を発揮すると共に、第1の耐火シート15A,第2の耐火シート15Bの選択により膨張のタイミングを制御することができる。
・
図7に示されるように、下側の横枠材14に第2の耐火シート15Bが配置され、上側の横枠材13、左右の縦枠材11,12の3辺に第1の耐火シート15Aが配置されてもよい。この図では、上下の横枠材13,14に一つの連続的な耐火シート15A,15Bがそれぞれ配置され、左右の縦枠材11,12に、複数の耐火シート15Aが間隔を空けて配置され、左右の縦枠材11,12の各々の上の耐火シート15は、横枠材13,14の上の耐火シートと連続し、かつ上下方向に離間した状態で示されているが、縦枠材11,12に一つの連続的な耐火シート15Aが配置されていてもよいし、上下の横枠材13,14の各々に複数の不連続な耐火シート15A,15Bが間隔を空けて配置されてもよい。上下の横枠材13,14の上の耐火シート15の長さは、枠材の全長の40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、又は80%以上の長さであることが好ましい。一実施形態としては、縦枠材11,12に配置される複数の熱膨張性耐火シートの長さの合計は枠材の全長の40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、又は80%以上の長さであるが、これに限定されない。火災時に全ての枠材の面を膨張材で塞がなくても、枠体自体にもある程度耐火性があるため、横枠材13,14や欠損部分等のような弱い部分に少なくとも耐火シートを貼り付ければ、耐火性を発揮する。また、放熱性も確保できる。
・
図8に示すように、下側の横枠材14に加え、左右の縦枠材11,12の下部にさらに第2の耐火シート15Bが配置されてもよい。
・
図9に示すように、第2の耐火シート15Bが左側の縦枠材11の上部と、上側の横枠材13の左部と、下側の横枠材14とに第2の耐火シート15Bが配置されてもよい。
・枠材11~14の各々の上の耐火シート15は、一つの耐火シート15が連続的に配置されてもよいし、複数の耐火シート15が間隔を空けて配置されてもよい。また、ある辺の耐火シート15は、隣の辺の耐火シート15とは連続していてもしていなくてもよい。・耐火シート15の配置と、耐火シート16の配置とは同じでも異なっていてもよい。
・耐火シート15が配置される位置は、枠材11~14の空洞に枠材11~14の長手方向に延びるものに限定されない。例えば、サッシ1の枠材11~14に樹脂製の部品(ピース部材)が設けられている箇所や、サッシ1が特にアルミサッシである場合の枠材11~14の欠損部分(ビスで穴を開けている箇所や、切欠がある箇所)には、火が通過しやすいため、その上下15cm内の周囲に耐火シート15を優先的に配置することが望まれる。さらには、耐火シート15は枠材11~14の外表面に配置されてもよい。加熱時に開口枠体10と障子20との間の空間を埋める位置で、枠材11~14の外表面に貼り付ければ、建具に防火性能が付与される。
・耐火シート16の配置のパターンは、
図4に示すものに限定されず、耐火シート15の
図5の別例など、耐火シート15と同様なパターンで障子20の一対のうちの少なくとも一方の、少なくとも一辺、すなわち障子10を構成する4つの枠材21~24のうちの少なくとも一つの辺を構成する枠材に、複数の耐火シート16が配置されていればよい。
・耐火シート16が配置される位置も、框材21~24の空洞に枠材21~24の長手方向に延びるものに限定されない。例えば、鍵(クレセント)や取っ手の部分の取り付けのビス穴などの障子20の框材21~24における欠損部分(例えば)には、火が通過しやすいため、その上下15cm内の周囲に耐火シート16を優先的に配置することが望まれる。
・耐火シート15の各々は同じ形状かつ同じ大きさでなくてもよく、異なる形状及び/又は異なる同じ大きさでもよい。
・
図2に示した耐火シート15の代わりに又は耐火シート15に加えて、
図10に示すよ
うに、縦枠材11,12の空洞11a,12a並びに図示しない横枠材13,14の空洞の窓ガラス25のガラス面と垂直な壁面に耐火シート15’が挿入されていてもよい。耐火シート15’も耐火シート15と同様、第1の熱膨張性材料から形成された第1の耐火シート15Aと、第2の熱膨張性材料から形成された第2の耐火シート15Bとからなる平板状の熱膨張性耐火材である。耐火シート15’は、枠材11~14からなる開口枠体10の少なくとも一辺に配置され得る。例えば、耐火シート15’は枠材11~14に配置され、上下の横枠材13,14の少なくとも一方に耐火シート15Bが配置され、左右の縦枠材11,12に第1の耐火シート15Aが配置される。
・本発明は、防火性樹脂サッシだけでなく、金属、木、又は金属、木、及び樹脂のうちの少なくとも2つからなる複合材料から形成されたサッシや、障子、ドア(すなわち扉)、戸、ふすま、及び欄間等の建具にも適用される。
(第2実施形態)
図11,12は本発明を防火ドアに具現化した第2実施形態を示す。
図11は防火ドアの例を示す略図であり、
図11(A)は
図11のB-B線における要部横断面図、
図12(B)火災が生じた場合の
図11(A)の耐火シート15の防火性能を示す略断面図である。
【0090】
図11において、防火ドア2は、開口部を有する矩形の枠体30と、その内部にヒンジ35を介して回動する耐火性板材としてのドア本体40とを備えている。ドア本体40は取っ手42を有する。
図11において、左上が建物の上側かつ外側に対応する。
【0091】
建具枠体としての枠体30は左右の縦枠材31,32と上下の横枠材33,34とから構成され、各枠材31~34に囲まれた内部が開口部となっている。
図11,
図12(A)を参照すると、枠体30の枠材31,32,33,34の各々には耐火シート15が枠材31,32,33,34の長手方向に沿って配置されている。この複数の耐火シート15の配置については上記の第1実施形態で説明した通りである。
【0092】
図12(B)に示されるように、矢印の方向から火災が発生すると耐火シート15が熱により膨張し、間隙36を塞ぐ。これにより、ドア本体40と枠体30との間からの火災や煙の侵入が低減又は防止され、防火性が大きく改善される。
【0093】
第2の実施形態も、耐火シート15A,15Bの配置を、第1の実施形態の別例で説明したのと同様に、種々の態様に変形可能である。
【0094】
本明細書中に引用されているすべての特許出願および文献の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0095】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0096】
1.熱膨張性耐火シートの製造
表1に示した配合量の、ビスフェノールF型エポキシモノマー(油化シェル社製「E807」)又はウレタン変性ビスフェノールA型エポキシモノマー(油化シェル社製「E292」)、ジアミン系硬化剤(油化シェル社製「EKFL052」)、熱膨張性黒鉛(東ソー社製「GREP-EG」)、ポリリン酸アンモニウム(スミセーフP、住友化学社製)、ポリリン酸メラミン(MPP-A、株式会社 三和ケミカル)、及び炭酸カルシウム
(備北粉化社製「ホワイトンBF-300」)を混練ロールで混練して、耐火性樹脂組成物を得た。得られた耐火樹脂組成物をプレス成形にて150℃で15分間プレスして硬化させ、耐火性評価及び形状保持性の評価に用いる厚さ1.6mmの熱膨張性耐火シートを
得た(第1の耐火シート15A)。
【0097】
次に、エア・ウォーター株式会社製50LTE-UNをGREP-EGに変更し、プレス条件を120℃とした以外は、同様の方法で厚さ1.6mmの熱膨張性耐火シートを得た(第1の耐火シート15Aよりも熱膨張開始温度が低い第2の耐火シート15B)。
【0098】
【0099】
2. 耐火性試験
鉄製扉(高さ2500mm×幅850mm、扉厚さ40mm、扉芯材 紙製ハニカム構造(1.2kg/m2)、芯材の両面の鉄板の厚さ各0.6mm)に、幅15mmの「1.熱膨張性耐火シートの製造」にて作成した耐火シートを図の様に貼付した。
【0100】
実施例1では
図13に示すように、扉の枠体30の上側の横枠材33と、左右の縦枠材31,32の上端部に第2の耐火シート15Bを貼り付け、左右の縦枠材31,32の下端部と下側の横枠材34とに第1の耐火シート15Aを貼り付けた。
【0101】
また、実施例2では
図7に示すように、扉の枠体30の上側の横枠材33と、左右の縦枠材31,32の上端部に第1の耐火シート15Aを貼り付け、下側の横枠材34に第2の耐火シート15Bを貼り付けた。
【0102】
さらに、比較例1(陽性対照)では、枠体の4辺全周に隙間無く第1の耐火シート15Aを貼り付けた。
【0103】
各扉の両面において、ISO834曲線に準拠した60分間の加熱試験をそれぞれ実施した。60分間で下記の1.~3.の3つすべての判定に適合したものを○(合格)とした。扉の枠体30の上側の横枠材33と、左右の縦枠材31,32の上端部に
1.加熱裏面側において10秒以上の継続した発炎がない
2.加熱裏面側へ10秒以上の継続した火炎の噴出がない
3.亀裂あるいは損傷、隙間などが発生しない
結果は、実施例1,2および比較例1共に屋外側及び屋内側のいずれの加熱試験でも60分間後に扉は耐火合格基準を満たした(表2)。また、実施例1,2は比較例1と比較して、第2の耐火シート15Bの膨張が早いため、試験体である扉の反り等の変形が抑えられた。
【0104】
【符号の説明】
【0105】
1・・・建具としての防火性樹脂サッシ、2・・・建具としての防火性ドア、10,30・・・枠体としての開口枠体、20・・・枠体としての外周枠体、11a,12a,21a,22a・・・空洞、15,15’・・・熱膨張性耐火材としての耐火シート、15A,16A・・・第1の耐火シート、15B,16B・・・第2の耐火シート、25・・・板材としての窓ガラス、40・・・板材としてのドア本体、11,12,13,14,21,22,23,24,31,32,33,34・・・枠体。