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特許7016923含フッ素エーテル化合物、磁気記録媒体用潤滑剤および磁気記録媒体
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  • 特許-含フッ素エーテル化合物、磁気記録媒体用潤滑剤および磁気記録媒体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】含フッ素エーテル化合物、磁気記録媒体用潤滑剤および磁気記録媒体
(51)【国際特許分類】
   C07C 43/23 20060101AFI20220131BHJP
   C07D 333/16 20060101ALI20220131BHJP
   C07D 231/12 20060101ALI20220131BHJP
   C07D 277/24 20060101ALI20220131BHJP
   C07D 307/42 20060101ALI20220131BHJP
   C07C 43/178 20060101ALI20220131BHJP
   C08G 65/331 20060101ALI20220131BHJP
   C10M 105/54 20060101ALI20220131BHJP
   C10M 105/70 20060101ALI20220131BHJP
   C10M 105/72 20060101ALI20220131BHJP
   C10M 107/38 20060101ALI20220131BHJP
   G11B 5/725 20060101ALI20220131BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20220131BHJP
   C10N 40/18 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
C07C43/23 E CSP
C07D333/16
C07D231/12 C
C07D277/24
C07D307/42
C07C43/178 D
C08G65/331
C10M105/54
C10M105/70
C10M105/72
C10M107/38
G11B5/725
C10N20:04
C10N40:18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020129365
(22)【出願日】2020-07-30
(62)【分割の表示】P 2018504048の分割
【原出願日】2017-01-30
(65)【公開番号】P2020193204
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2020-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2016047359
(32)【優先日】2016-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】柳生 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕太
(72)【発明者】
【氏名】福本 直也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】植竹 祥子
(72)【発明者】
【氏名】冨田 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 隆太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直子
(72)【発明者】
【氏名】太田 一朗
(72)【発明者】
【氏名】室伏 克己
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/123043(WO,A1)
【文献】特開2012-009090(JP,A)
【文献】特開2013-163667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C、C07D
C10M、C10N
G11B
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されることを特徴とする含フッ素エーテル化合物。
-R-CH-R-CH-R (1)
(式(1)中、Rはフェニル基、メトキシフェニル基、ナフチル基、ベンジル基、メトキシベンジル基、ナフチルメチル基、メトキシナフチル基、ピロリル基、ピラゾリル基、メチルピラゾリルメチル基、イミダゾリル基、フリル基、フルフリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チエニル基、チエニルエチル基、チアゾリル基、メチルチアゾリルエチル基、イソチアゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、インドリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フタラジニル基又はシンノリニル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、プロピニル基、プロパルギル基、ブチニル基、メチルブチニル基、ペンチニル基、メチルペンチニル基、ヘキシニル基、シアノエチル基のいずれかであり、R-O-または下記式(6)で表され、はパーフルオロポリエーテル鎖であり、Rは2つまたは3つの水酸基を含み、各水酸基がそれぞれ異なる炭素原子に結合し、前記水酸基の結合している全ての炭素原子同士が、水酸基の結合していない炭素原子を含む連結基を介して結合している末端基である。)
【化1】
(式(6)中、wは1を表す。)
【請求項2】
前記式(1)におけるRが、フェニル基、p-メトキシフェニル基、ナフチル基、p-メトキシベンジル基、チエニルエチル基、メチルピラゾリルメチル基、メチルチアゾリルエチル基、フルフリル基、ブテニル基、アリル基、プロパルギル基、ベンジル基、ナフチルメチル基のいずれかである、請求項1に記載の含フッ素エーテル化合物。
【請求項3】
前記式(1)におけるRが、3つの水酸基を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の含フッ素エーテル化合物。
【請求項4】
前記式(1)におけるRが、下記式(3)で表されることを特徴とする請求項1~請求項のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル化合物。
【化2】
(式(3)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【請求項5】
前記式(1)におけるRが、下記式(4)または下記式(5)で表されることを特徴とする請求項1~請求項のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル化合物。
【化3】
(式(4)中、uは1~30を表す。)
【化4】
(式(5)中、vは1~30を表す。)
【請求項6】
数平均分子量が500~10000の範囲内である請求項1~請求項のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル化合物。
【請求項7】
請求項1~請求項のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル化合物を含むことを特徴とする磁気記録媒体用潤滑剤。
【請求項8】
基板上に、少なくとも磁性層と、保護層と、潤滑層とが順次設けられた磁気記録媒体であって、前記潤滑層が、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル化合物を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項9】
前記潤滑層の平均膜厚が、0.5nm~3nmである請求項に記載の磁気記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体の潤滑剤用途に好適な含フッ素エーテル化合物に関する。
本出願は、2016年3月10日に日本に出願された特願2016-047359に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録再生装置の記録密度を向上させるために、高記録密度に適した磁気記録媒体の開発が進められている。
従来、磁気記録媒体として、基板上に記録層を形成し、記録層上にカーボン等の保護層を形成したものがある。保護層は、記録層に記録された情報を保護するとともに、磁気ヘッドの摺動性を高める。しかし、記録層上に保護層を設けただけでは、磁気記録媒体の耐久性は十分に得られない。このため、一般に、保護層の表面に潤滑剤を塗布して潤滑層を形成している。
【0003】
磁気記録媒体の潤滑層を形成する際に用いられる潤滑剤としては、例えば、CFを含む繰り返し構造を有するフッ素系のポリマーの末端に、水酸基等の極性基を有する化合物を含有するものが提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
例えば、特許文献1には、両方の末端部分に複数のヒドロキシル基を有し、該ヒドロキシル基間の最短距離が3原子以上離れている置換基が配置された化合物が開示されている。また、特許文献2には、片方の末端に芳香族を有し、他方の末端に水酸基を有するフルオロポリエーテル化合物が開示されている。また、特許文献3には、パーフルオロポリエーテル主鎖を有し、分子の末端に芳香族基とヒドロキシル基を有し、芳香族基とヒドロキシル基はそれぞれ異なる炭素原子と結合している化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4632144号公報
【文献】特許第5909837号公報
【文献】特許第5465454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気記録再生装置においては、より一層、磁気ヘッドの浮上量を小さくすることが要求されている。このため、磁気記録媒体における潤滑層の厚みを、より薄くすることが求められている。
しかし、一般的に潤滑層の厚みを薄くすると、潤滑層の被覆性が低下して、磁気記録媒体の化学物質耐性および耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、厚みが薄くても優れた化学物質耐性および耐摩耗性が得られる潤滑層を形成できる磁気記録媒体用潤滑剤の材料として、好適な含フッ素エーテル化合物を提供することを課題とする。
また、本発明は、本発明の含フッ素エーテル化合物を含む磁気記録媒体用潤滑剤を提供することを課題とする。
また、本発明は、本発明の含フッ素エーテル化合物を含む潤滑層を有する優れた信頼性および耐久性を有する磁気記録媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。
その結果、パーフルオロポリエーテル鎖の一端に、二重結合または三重結合を少なくとも一つ有する有機基を含む末端基を、エーテル性酸素によって結合する2価の連結基を介して配置し、パーフルオロポリエーテル鎖の他端に、2つまたは3つの極性基を含み、各極性基がそれぞれ異なる炭素原子に結合し、前記極性基の結合している炭素原子同士が、極性基の結合していない炭素原子を含む連結基を介して結合している末端基を配置した含フッ素エーテル化合物とすればよいことを見出し、本発明を想到した。
すなわち、本発明は以下の事項に関する。
【0008】
[1] 下記式(1)で表されることを特徴とする含フッ素エーテル化合物。
-R-CH-R-CH-R (1)
(式(1)中、Rは二重結合または三重結合を少なくとも一つ有する有機基を含む末端基であり、Rはエーテル性酸素によってRと結合する2価の連結基であり、Rはパーフルオロポリエーテル鎖であり、Rは2つまたは3つの極性基を含み、各極性基がそれぞれ異なる炭素原子に結合し、前記極性基の結合している炭素原子同士が、極性基の結合していない炭素原子を含む連結基を介して結合している末端基である。)
[2]前記式(1)におけるRの極性基が水酸基である[1]に記載の含フッ素エーテル化合物。
【0009】
[3] 前記式(1)におけるRは下記式(2-1)~(2-4)のいずれかの末端基である[1]または[2]に記載の含フッ素エーテル化合物。
【0010】
【化1】
(式(2-1)中、p1は1~2を表し、p2は1~5を表す。)
【0011】
【化2】
(式(2-2)中、sは2~5を表す。)
【0012】
【化3】
(式(2-3)中、tは1~5を表す。)
【0013】
【化4】
(式(2-4)中、qは2~5を表す。)
【0014】
[4] 前記式(1)におけるRが、下記式(3)で表されることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の含フッ素エーテル化合物。
【0015】
【化5】
(式(3)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0016】
[5] 前記式(1)におけるRが、下記式(4)または下記式(5)で表されることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の含フッ素エーテル化合物。
【0017】
【化6】
(式(4)中、uは1~30を表す。)
【0018】
【化7】
(式(5)中、vは1~30を表す。)
【0019】
[6] 前記式(1)におけるRが、芳香族環を含む末端基、複素環を含む末端基、アルケニル基を含む末端基、またはアルキニル基を含む末端基のいずれかであることを特徴とする[1]~[5]のいずれかに記載の含フッ素エーテル化合物。
【0020】
[7] 前記式(1)におけるRが、-O-または下記式(6)で表されることを特徴とする[1]~[6]のいずれかに記載の含フッ素エーテル化合物。
【0021】
【化8】
(式(6)中、wは1~4を表す。)
【0022】
[8] 前記式(1)におけるRが、3つの極性基を含むことを特徴とする[1]~[7]のいずれかに記載の含フッ素エーテル化合物。
【0023】
[9] 数平均分子量が500~10000の範囲内である[1]~[8]のいずれかに記載の含フッ素エーテル化合物。
【0024】
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の含フッ素エーテル化合物を含むことを特徴とする磁気記録媒体用潤滑剤。
【0025】
[11] 基板上に、少なくとも磁性層と、保護層と、潤滑層とが順次設けられた磁気記録媒体であって、前記潤滑層が、[1]~[9]のいずれかに記載の含フッ素エーテル化合物を含むことを特徴とする磁気記録媒体。
【0026】
[12] 前記潤滑層の平均膜厚が、0.5nm~3nmである[11]に記載の磁気記録媒体。
【発明の効果】
【0027】
本発明の含フッ素エーテル化合物は、上記式(1)で表される化合物であり、磁気記録媒体用潤滑剤の材料として好適である。
本発明の磁気記録媒体用潤滑剤は、本発明の含フッ素エーテル化合物を含むため、厚みが薄くても優れた化学物質耐性および耐摩耗性が得られる潤滑層を形成できる。
本発明の磁気記録媒体は、優れた化学物質耐性および耐摩耗性を有する潤滑層が設けられているものであるため、優れた信頼性および耐久性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の磁気記録媒体の一実施形態を示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の含フッ素エーテル化合物、磁気記録媒体用潤滑剤および磁気記録媒体について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態のみに限定されるものではない。
【0030】
[含フッ素エーテル化合物]
本実施形態の含フッ素エーテル化合物は、下記式(1)で表される。
-R-CH-R-CH-R (1)
(式(1)中、Rは二重結合または三重結合を少なくとも一つ有する有機基を含む末端基であり、Rはエーテル性酸素によってRと結合する2価の連結基であり、Rはパーフルオロポリエーテル鎖であり、Rは2つまたは3つの極性基を含み、各極性基がそれぞれ異なる炭素原子に結合し、前記極性基の結合している炭素原子同士が、極性基の結合していない炭素原子を含む連結基を介して結合している末端基である。)
【0031】
ここで、本実施形態の含フッ素エーテル化合物を含む磁気記録媒体用潤滑剤(以下「潤滑剤」と略記する場合がある。)を用いて、磁気記録媒体の保護層上に潤滑層を形成した場合に、厚みが薄くても、優れた化学物質耐性および耐摩耗性が得られる理由について説明する。
【0032】
本実施形態の含フッ素エーテル化合物は、式(1)に示すように、Rで表されるパーフルオロポリエーテル鎖(以下「PFPE鎖」と略記する場合がある。)の一端に、Rで表されるエーテル性酸素によってRと結合する2価の連結基を介して、Rで表される二重結合または三重結合を少なくとも一つ有する有機基を含む末端基が配置されている。PFPE鎖は、本実施形態の含フッ素エーテル化合物を含む潤滑層において、保護層の表面を被覆するとともに、磁気ヘッドと保護層との摩擦力を低減させる。また、Rで表される二重結合または三重結合を少なくとも一つ有する有機基を含む末端基は、二重結合または三重結合を少なくとも一つ有する有機基の分子間相互作用、および/または該有機基と保護層との相互作用により、本実施形態の含フッ素エーテル化合物を含む潤滑層における耐摩耗性を向上させる。したがって、本実施形態の含フッ素エーテル化合物を含む潤滑層は、例えば、Rで表される末端基に代えて、水酸基が配置された含フッ素エーテル化合物を含む潤滑層と比較して、優れた耐摩耗性が得られる。
【0033】
また、式(1)のRで表されるPFPE鎖のRと反対側の端部(他端)には、Rで表される末端基が配置されている。Rで表される末端基は、2つまたは3つの極性基を含む。Rで表される末端基に含まれる2つまたは3つの極性基は、本実施形態の含フッ素エーテル化合物を含む潤滑層において、含フッ素エーテル化合物と保護層とを密着させて、化学物質耐性および耐摩耗性を向上させるとともに、ピックアップを抑制する。
【0034】
また、上記の潤滑層では、Rで表される末端基に含まれる2つまたは3つの極性基が、それぞれ異なる炭素原子に結合し、前記極性基の結合している炭素原子同士が、極性基の結合していない炭素原子を含む連結基を介して結合している。Rで表される末端基を有する含フッ素エーテル化合物は、例えば、末端基に含まれる2つの極性基が、それぞれ異なる炭素原子に結合し、極性基の結合している炭素原子同士が結合しているフッ素エーテル化合物と比較して、凝集しにくい。よって、本実施形態の含フッ素エーテル化合物を含む潤滑層では、保護層に密着(吸着)せずに存在している含フッ素エーテル化合物が凝集して、異物(スメア)として磁気ヘッドに付着することを防止でき、ピックアップが抑制される。また、含フッ素エーテル化合物同士が凝集しにくいため、潤滑層中の含フッ素エーテル化合物が、保護層上で面方向に広がって延在した状態で配置されやすい。よって、上記の含フッ素エーテル化合物を含む潤滑剤では、厚みを薄くしても、高い被覆率で保護層の表面を被覆でき、優れた化学物質耐性を有する潤滑層を形成できると推定される。
【0035】
式(1)で表される本実施形態の含フッ素エーテル化合物において、Rは、2つまたは3つの極性基を含み、各極性基がそれぞれ異なる炭素原子に結合し、前記極性基の結合している炭素原子同士が、極性基の結合していない炭素原子を含む連結基を介して結合している末端基である。Rで表される末端基は、本実施形態の含フッ素エーテル化合物を含む潤滑剤の塗布される保護層と、潤滑剤を塗布して形成した潤滑層との密着性に寄与する。式(1)におけるRは、含フッ素エーテル化合物を含む潤滑剤に求められる性能などに応じて適宜選択できる。
【0036】
また、式(1)で表される本実施形態の含フッ素エーテル化合物は、PFPE鎖(R)の両末端にそれぞれ異なる末端基(R、R)が結合した非対称の化合物である。両末端にそれぞれ異なる末端基が結合している化合物では、分子末端にそれぞれ結合された異なる機能を有する末端基(R、R)の相乗効果によって、両末端に同じ末端基が結合している化合物と比較して、優れた化学物質耐性および耐摩耗性が得られる。
【0037】
における極性基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基およびチオール基などが挙げられる。なお、エーテル結合(-O-)は、Rにおける極性基には含まれない。
の2つまたは3つの極性基を含む末端基における極性基は、保護層との密着性が良好な含フッ素エーテル化合物を含む潤滑層が得られるため、水酸基であることが好ましい。
【0038】
式(1)におけるRは、下記式(2-1)~(2-4)のいずれかの末端基であることが好ましい。このようなRは、本実施形態の含フッ素エーテル化合物を含む潤滑剤の塗布される保護層と、潤滑剤を塗布して形成した潤滑層との高い密着性および被覆率に寄与する。
【0039】
【化9】
(式(2-1)中、p1は1~2を表し、p2は1~5を表す。)
【0040】
式(2-1)において、p1は1~2である。
式(2-1)において、p2が1~5である場合、式(2-1)で表される末端基中の水酸基間の距離が適正となり、保護層との密着性に優れ、被覆率の高い潤滑層を形成できる。p2は1~2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。
【0041】
【化10】
(式(2-2)中、sは2~5を表す。)
【0042】
式(2-2)において、sが2~5である場合、R側の水酸基と末端の水酸基との間の距離が適正となり、保護層との密着性に優れ、被覆率の高い潤滑層を形成できるものとなる。sは2~3であることが好ましく、2であることが最も好ましい。
【0043】
【化11】
(式(2-3)中、tは1~5を表す。)
【0044】
式(2-3)において、tが1~5である場合、R側の水酸基と末端の水酸基との間の距離が適正となり、保護層との密着性に優れ、被覆率の高い潤滑層を形成できるものとなる。tは1~2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。
【0045】
【化12】
(式(2-4)中、qは2~5を表す。)
【0046】
式(2-4)において、qが2~5である場合、R側の水酸基と末端の水酸基との間の距離が適正となり、保護層との密着性に優れ、被覆率の高い潤滑層を形成できるものとなる。qは2~3であることが好ましい。
【0047】
式(1)中、Rはパーフルオロポリエーテル鎖(PFPE鎖)である。PFPE鎖は、含フッ素エーテル化合物を含む潤滑剤を保護層上に塗布して潤滑層を形成した場合に、保護層の表面を被覆するとともに、潤滑層に潤滑性を付与して磁気ヘッドと保護層との摩擦力を低減させる。
は、特に限定されるものではなく、含フッ素エーテル化合物を含む潤滑剤に求められる性能などに応じて適宜選択できる。
式(1)においてRは、含フッ素エーテル化合物の合成が容易であるため、下記式(3)で表されるPFPE鎖であることが好ましい。
【0048】
【化13】
(式(3)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0049】
式(3)において、繰り返し単位である(CF-CF-O)と(CF-O)との配列順序には、特に制限はない。式(3)において(CF-CF-O)の数mと(CF-O)の数nは同じであってもよいし、異なっていてもよい。式(3)は、モノマー単位(CF-CF-O)と(CF-O)とからなるランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれかを含むものであってもよい。
【0050】
式(1)におけるRが式(3)である場合、mは1~30であり、1~20であることが好ましく、さらに1~15であることが好ましい。式(1)においてRが式(3)である場合、nは0~30であり、0~20であることが好ましく、さらに0~15であることが好ましい。また、nが0の場合、mは1~17であることが好ましい。
【0051】
式(1)においてRは、下記式(4)または下記式(5)であってもよい。
【0052】
【化14】
(式(4)中、uは1~30を表す。)
【0053】
式(4)において、uが1~30である場合、本実施形態の含フッ素エーテル化合物の数平均分子量が好ましい範囲になりやすい。uは3~20であることが好ましく、4~10であることがより好ましい。
【0054】
【化15】
(式(5)中、vは1~30を表す。)
【0055】
式(5)において、vが1~30である場合、本実施形態の含フッ素エーテル化合物の数平均分子量が好ましい範囲になりやすい。vは3~20であることが好ましく、4~10であることがより好ましい。
【0056】
式(1)におけるRが、式(3)~式(5)のいずれかである場合、含フッ素エーテル化合物の合成が容易であり好ましい。また、式(1)におけるRが、式(3)~式(5)のいずれかである場合、パーフルオロポリエーテル鎖中の炭素原子数に対する酸素原子数(エーテル結合(-O-)数)の割合が適正である。このため、適度な硬さを有する含フッ素エーテル化合物となる。よって、保護層上に塗布された含フッ素エーテル化合物が、保護層上で凝集しにくく、より一層厚みの薄い潤滑層を十分な被覆率で形成できる。また、式(1)におけるRが式(3)である場合、原料入手が容易であるため、より好ましい。
【0057】
式(1)におけるRは、二重結合または三重結合を少なくとも一つ有する有機基を含む末端基である。Rは、芳香族環を含む末端基、複素環を含む末端基、アルケニル基を含む末端基、またはアルキニル基を含む末端基のいずれかであることが好ましい。
として用いる二重結合または三重結合を少なくとも一つ有する有機基を含む末端基としては、具体的には、例えば、フェニル基、メトキシフェニル基、ナフチル基、ベンジル基、メトキシベンジル基、ナフチルメチル基、メトキシナフチル基、ピロリル基、ピラゾリル基、メチルピラゾリルメチル基、イミダゾリル基、フリル基、フルフリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チエニル基、チエニルエチル基、チアゾリル基、メチルチアゾリルエチル基、イソチアゾリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、インドリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フタラジニル基又はシンノリニル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、プロピニル基、プロパルギル基、ブチニル基、メチルブチニル基、ペンチニル基、メチルペンチニル基、ヘキシニル基、シアノエチル基などが挙げられる。これらの二重結合または三重結合を少なくとも一つ有する有機基を含む末端基は、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、チオール基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基などの置換基を有しても良い。
は特に、フェニル基、p-メトキシフェニル基、ナフチル基、p-メトキシベンジル基、チエニルエチル基、メチルピラゾリルメチル基、メチルチアゾリルエチル基、フルフリル基、ブテニル基、アリル基、プロパルギル基、ベンジル基、ナフチルメチル基のいずれかであることが好ましい。Rが、これらの好ましい例であると、より優れた耐摩耗性を有する潤滑層を形成できる含フッ素エーテル化合物となる。
【0058】
式(1)におけるRは、エーテル性酸素によってRと結合する2価の連結基である。Rで表される2価の連結基は、エーテル性酸素によってRと結合するものであれば特に限定されるものではなく、含フッ素エーテル化合物を含む潤滑剤に求められる性能などに応じて適宜選択できる。
【0059】
で表される2価の連結基は、含フッ素エーテル化合物を含む潤滑剤の塗布される保護層と、潤滑剤を塗布して形成した潤滑層との密着性を向上させるために、1つ以上の極性基を有することが好ましい。連結基に含まれる極性基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミノカルボキシル基などが挙げられ、水酸基であることが好ましい。Rで表される2価の連結基が少なくとも1つの水酸基を含むものであると、特に、潤滑剤の塗布される保護層が、炭素または窒素を含む炭素で形成されている場合に、保護層と含フッ素エーテル化合物を含む潤滑層との密着性がより一層向上する。
【0060】
で表される2価の連結基が1つ以上の極性基を有する場合、連結基の有する極性基の数は、特に限定されるものではなく、1つであってもよいし、複数であってもよい。連結基の有する極性基の数は、含フッ素エーテル化合物の数平均分子量が大きくなりすぎることを防止するために、4つ以下であることが好ましい。
【0061】
式(1)において、Rで表される2価の連結基は、炭素原子数が1~20のものあることが好ましい。炭素原子数が20以下であると、含フッ素エーテル化合物の数平均分子量が大きくなりすぎることを防止できる。連結基の炭素原子数は、3~12であることがより好ましい。
式(1)におけるRは、具体的には、下記式(6)で表されるものであることが好ましい。
【0062】
【化16】
(式(6)中、wは1~4を表す。)
【0063】
式(6)において、wが1以上であると、Rで表される2価の連結基が1つ以上の水酸基を含むことにより、保護層と潤滑層との密着性がより良好となり、好ましい。また、wが4以下である場合、含フッ素エーテル化合物の数平均分子量が大きくなりすぎることを防止でき、好ましい。wは1~2であることがより好ましい。
【0064】
式(1)におけるRは、含フッ素エーテル化合物の合成が容易であるため、-O-であってもよい。
【0065】
本実施形態の含フッ素エーテル化合物は、具体的には下記式(A)~(AC)で表されるいずれかの化合物であることが好ましい。なお、式(A)~(AC)中のm、nなどの繰り返し数は、平均値を示す値であるため、必ずしも整数とはならない。
【0066】
【化17】
(式(A)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0067】
【化18】
(式(B)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0068】
【化19】
(式(C)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0069】
【化20】
(式(D)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0070】
【化21】
(式(E)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0071】
【化22】
(式(F)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0072】
【化23】
(式(G)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0073】
【化24】
(式(H)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0074】
【化25】
(式(I)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0075】
【化26】
(式(J)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0076】
【化27】
(式(K)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0077】
【化28】
(式(L)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0078】
【化29】
(式(M)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0079】
【化30】
(式(N)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0080】
【化31】
(式(O)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0081】
【化32】
(式(P)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0082】
【化33】
(式(Q)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0083】
【化34】
(式(R)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0084】
【化35】
(式(S)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0085】
【化36】
(式(T)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0086】
【化37】
(式(U)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0087】
【化38】
(式(V)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0088】
【化39】
(式(W)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0089】
【化40】
(式(X)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0090】
【化41】
(式(Y)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0091】
【化42】
(式(AB)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
(式(AC)中、mは1~30を表し、nは0~30を表す。)
【0092】
式(1)で表わされる化合物が上記式(A)~(AC)で表されるいずれかの化合物であると、原料が入手しやすく、厚みが薄くても優れた化学物質耐性および耐摩耗性が得られる潤滑層を形成できるため好ましい。
【0093】
本実施形態の含フッ素エーテル化合物は、数平均分子量が500~10000の範囲内であることが好ましい。数平均分子量が500以上であると、本実施形態の含フッ素エーテル化合物を含む潤滑剤が蒸散しにくいものとなり、潤滑剤が蒸散して磁気ヘッドに移着することを防止できる。含フッ素エーテル化合物の数平均分子量は、1000以上であることがより好ましい。また、数平均分子量が10000以下であると、含フッ素エーテル化合物の粘度が適正なものとなり、これを含む潤滑剤を塗布することによって、容易に厚みの薄い潤滑層を形成できる。含フッ素エーテル化合物の数平均分子量は、潤滑剤に適用した場合に扱いやすい粘度となるため、3000以下であることが好ましい。
【0094】
数平均分子量は、ブルカー・バイオスピン社製AVANCEIII400によるH-NMRおよび19F-NMRによって測定された値である。NMR(核磁気共鳴)の測定において、試料をヘキサフルオロベンゼン/d-アセトン(4/1v/v)溶媒へ希釈し、測定に使用した。19F-NMRケミカルシフトの基準は、ヘキサフルオロベンゼンのピークを-164.7ppmとし、H-NMRケミカルシフトの基準は、アセトンのピークを2.2ppmとした。
【0095】
「製造方法」
本実施形態の含フッ素エーテル化合物の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の製造方法を用いて製造できる。本実施形態の含フッ素エーテル化合物は、例えば、以下に示す製造方法を用いて製造できる。
まず、式(1)におけるRに対応するパーフルオロポリエーテル鎖の両末端に、それぞれヒドロキシメチル基(-CHOH)が配置されたフッ素系化合物を用意する。
【0096】
次いで、フッ素系化合物の一方の末端に配置されたヒドロキシメチル基の水酸基を、式(1)におけるR-R-からなる末端基に置換する(第1反応)。その後、他方の末端に配置されたヒドロキシメチル基の水酸基を、式(1)における-Rからなる末端基に置換する(第2反応)。
第1反応および第2反応は、従来公知の方法を用いて行うことができ、式(1)におけるR、R、Rの種類などに応じて適宜決定できる。また、第1反応と第2反応のうち、どちらの反応を先に行ってもよい。
以上の方法により、式(1)で表される化合物が得られる。
【0097】
本実施形態において、Rが式(6)で表される含フッ素エーテル化合物を製造する場合、エポキシ化合物を用いて製造することが好ましい。このエポキシ化合物は、製造する含フッ素エーテル化合物のRで表される末端基に対応する構造を有するアルコールと、エピクロロヒドリンまたはエピブロモヒドリンとを用いて合成できる。
具体的には、例えば、後述する式(12)で表されるエポキシ化合物の場合、チオフェンエタノールとエピクロロヒドリンを塩基の存在下反応させ、得ることが出来る。
【0098】
本実施形態の含フッ素エーテル化合物は、上記式(1)で表される化合物である。したがって、これを含む潤滑剤を用いて保護層上に潤滑層を形成すると、式(1)においてRで表されるPFPE鎖によって、保護層の表面が被覆されるとともに、磁気ヘッドと保護層との摩擦力が低減される。また、本実施形態の含フッ素エーテル化合物を含む潤滑剤を用いて形成した潤滑層では、Rで表される末端基における分子間相互作用および/または該末端基と保護層の相互作用により、優れた耐摩耗性が得られる。
【0099】
また、本実施形態の含フッ素エーテル化合物では、PFPE鎖が、PFPE鎖に連結されたRの有する2つまたは3つの極性基と保護層との結合によって、保護層上に密着される。したがって、本実施形態の含フッ素エーテル化合物によれば、潤滑層と保護層とが強固に結合され、優れた化学物質耐性および耐摩耗性を有する潤滑層が得られる。
【0100】
[磁気記録媒体用潤滑剤]
本実施形態の磁気記録媒体用潤滑剤は、式(1)で表される含フッ素エーテル化合物を含む。
本実施形態の潤滑剤は、式(1)で表される含フッ素エーテル化合物を含むことによる特性を損なわない範囲内であれば、潤滑剤の材料として使用されている公知の材料を、必要に応じて混合して用いることができる。
公知の材料の具体例としては、例えば、FOMBLIN(登録商標) ZDIAC、FOMBLIN ZDEAL、FOMBLIN AM-2001(以上Solvey Solexis社製)、Moresco A20H(Moresco社製)などが挙げられる。本実施形態の潤滑剤と混合して用いる公知の材料は、数平均分子量が1000~10000であることが好ましい。
【0101】
本実施形態の潤滑剤が、式(1)で表される含フッ素エーテル化合物の他の材料を含む場合、本実施形態の潤滑剤中の式(1)で表される含フッ素エーテル化合物の含有量が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0102】
本実施形態の潤滑剤は、式(1)で表される含フッ素エーテル化合物を含むため、厚みを薄くしても、高い被覆率で保護層の表面を被覆でき、保護層との密着性に優れる潤滑層を形成できる。よって、本実施形態の潤滑剤によれば、厚みが薄くても、優れた化学物質耐性および耐摩耗性を有する潤滑層が得られる。
また、本実施形態の潤滑剤は、式(1)で表される含フッ素エーテル化合物を含むため、保護層に密着(吸着)せずに存在している潤滑剤層中の含フッ素エーテル化合物が、凝集しにくい。よって、含フッ素エーテル化合物が凝集して、異物(スメア)として磁気ヘッドに付着することを防止でき、ピックアップが抑制される。
また、本実施形態の潤滑剤は、式(1)で表される含フッ素エーテル化合物を含むため、Rで表される末端基中の二重結合または三重結合を少なくとも一つ有する有機基における分子間相互作用および/または該有機基と保護層との相互作用により、優れた耐摩耗性を有する潤滑層が得られる。
【0103】
[磁気記録媒体]
図1は、本発明の磁気記録媒体の一実施形態を示した概略断面図である。
本実施形態の磁気記録媒体10は、基板11上に、付着層12と、軟磁性層13と、第1下地層14と、第2下地層15と、磁性層16と、保護層17と、潤滑層18とが順次設けられた構造をなしている。
【0104】
「基板」
基板11としては、例えば、AlもしくはAl合金などの金属または合金材料からなる基体上に、NiPまたはNiP合金からなる膜が形成された非磁性基板等を用いることができる。
また、基板11としては、ガラス、セラミックス、シリコン、シリコンカーバイド、カーボン、樹脂などの非金属材料からなる非磁性基板を用いてもよいし、これらの非金属材料からなる基体上にNiPまたはNiP合金の膜を形成した非磁性基板を用いてもよい。
【0105】
「付着層」
付着層12は、基板11と、付着層12上に設けられる軟磁性層13とを接して配置した場合に、基板11の腐食の進行を防止する。
付着層12の材料は、例えば、Cr、Cr合金、Ti、Ti合金等から適宜選択できる。付着層12は、例えば、スパッタリング法により形成できる。
【0106】
「軟磁性層」
軟磁性層13は、第1軟磁性膜と、Ru膜からなる中間層と、第2軟磁性膜とが順に積層された構造を有していることが好ましい。すなわち、軟磁性層13は、2層の軟磁性膜の間にRu膜からなる中間層を挟み込むことによって、中間層の上下の軟磁性膜がアンチ・フェロ・カップリング(AFC)結合した構造を有していることが好ましい。軟磁性層13がAFC結合した構造を有していると、外部からの磁界に対しての耐性、並びに、垂直磁気記録特有の問題であるWATE(Wide Area Tack Erasure)現象に対しての耐性を高めることができる。
【0107】
第1軟磁性膜および第2軟磁性膜は、CoFe合金からなる膜であることが好ましい。第1軟磁性膜および第2軟磁性膜がCoFe合金からなる膜である場合、高い飽和磁束密度Bs(1.4(T)以上)を実現できる。
また、第1軟磁性膜および第2軟磁性膜に使用されるCoFe合金には、Zr、Ta、Nbの何れかを添加することが好ましい。これにより、第1軟磁性膜および第2軟磁性膜の非晶質化が促進され、第1下地層(シード層)の配向性を向上させることが可能になるとともに、磁気ヘッドの浮上量を低減することが可能となる。
軟磁性層13は、例えば、スパッタリング法により形成できる。
【0108】
「第1下地層」
第1下地層14は、その上に設けられる第2下地層15および磁性層16の配向や結晶サイズを制御するための層である。第1下地層14は、磁気ヘッドから発生する磁束の基板面に対する垂直方向成分を大きくするとともに、磁性層16の磁化の方向をより強固に基板11と垂直な方向に固定するために設けられている。
第1下地層14は、NiW合金からなる層であることが好ましい。第1下地層14がNiW合金からなる層である場合、必要に応じてNiW合金にB、Mn、Ru、Pt、Mo、Taなどの他の元素を添加してもよい。
第1下地層14は、例えば、スパッタリング法により形成できる。
【0109】
「第2下地層」
第2下地層15は、磁性層16の配向が良好になるように制御する層である。第2下地層15は、RuまたはRu合金からなる層であることが好ましい。
第2下地層15は、1層からなる層であってもよいし、複数層から構成されていてもよい。第2下地層15が複数層からなる場合、全ての層が同じ材料から構成されていてもよいし、少なくとも一層が異なる材料から構成されていてもよい。
第2下地層15は、例えば、スパッタリング法により形成できる。
【0110】
「磁性層」
磁性層16は、磁化容易軸が基板面に対して垂直または水平方向を向いた磁性膜からなる。磁性層16は、CoとPtを含む層であり、さらにSNR特性を改善するために、酸化物や、Cr、B、Cu、Ta、Zr等を含む層であってもよい。
磁性層16に含有される酸化物としては、SiO、SiO、Cr、CoO、Ta、TiO等が挙げられる。
【0111】
磁性層16は、1層から構成されていてもよいし、組成の異なる材料からなる複数の磁性層から構成されていてもよい。
例えば、磁性層16が、第1磁性層と第2磁性層と第3磁性層の3層からなる場合、第1磁性層は、Co、Cr、Ptを含み、さらに酸化物を含んだ材料からなるグラニュラー構造であることが好ましい。第1磁性層に含有される酸化物としては、例えば、Cr、Si、Ta、Al、Ti、Mg、Co等の酸化物を用いることが好ましい。その中でも、特に、TiO、Cr、SiO等を好適に用いることができる。また、第1磁性層は、酸化物を2種類以上添加した複合酸化物からなることが好ましい。その中でも、特に、Cr-SiO、Cr-TiO、SiO-TiO等を好適に用いることができる。
【0112】
第1磁性層は、Co、Cr、Pt、酸化物の他に、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reの中から選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。上記元素を1種類以上含むことにより、磁性粒子の微細化を促進、または結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性、熱揺らぎ特性を得ることができる。
【0113】
第2磁性層には、第1磁性層と同様の材料を用いることができる。第2磁性層は、グラニュラー構造であることが好ましい。
第3磁性層は、Co、Cr、Ptを含み、酸化物を含まない材料からなる非グラニュラー構造であることが好ましい。第3磁性層は、Co、Cr、Ptの他に、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Re、Mnの中から選ばれる1種類以上の元素を含むことができる。第3磁性層がCo、Cr、Ptの他に上記元素を含むことにより、磁性粒子の微細化を促進、または結晶性や配向性を向上させることができ、より高密度記録に適した記録再生特性および熱揺らぎ特性が得られる。
【0114】
磁性層16が複数の磁性層で形成されている場合、隣接する磁性層の間には、非磁性層を設けることが好ましい。磁性層16が、第1磁性層と第2磁性層と第3磁性層の3層からなる場合、第1磁性層と第2磁性層との間と、第2磁性層と第3磁性層との間に、非磁性層を設けることが好ましい。
隣接する磁性層間に非磁性層を適度な厚みで設けることで、個々の膜の磁化反転が容易になり、磁性粒子全体の磁化反転の分散を小さくすることができ、S/N比をより向上させることができる。
【0115】
磁性層16の隣接する磁性層間に設けられる非磁性層は、例えば、Ru、Ru合金、CoCr合金、CoCrX1合金(X1は、Pt、Ta、Zr、Re,Ru、Cu、Nb、Ni、Mn、Ge、Si、O、N、W、Mo、Ti、V、Zr、Bの中から選ばれる1種または2種以上の元素を表す。)等を好適に用いることができる。
【0116】
磁性層16の隣接する磁性層間に設けられる非磁性層には、酸化物、金属窒化物、または金属炭化物を含んだ合金材料を使用することが好ましい。具体的には、酸化物として、例えば、SiO、Al、Ta、Cr、MgO、Y、TiO等を用いることができる。金属窒化物として、例えば、AlN、Si、TaN、CrN等を用いることができる。金属炭化物として、例えば、TaC、BC、SiC等を用いることができる。
非磁性層は、例えば、スパッタリング法により形成できる。
【0117】
磁性層16は、より高い記録密度を実現するために、磁化容易軸が基板面に対して垂直方向を向いた垂直磁気記録の磁性層であることが好ましいが、面内磁気記録であってもよい。
磁性層16は、蒸着法、イオンビームスパッタ法、マグネトロンスパッタ法等、従来の公知のいかなる方法によって形成してもよいが、通常、スパッタリング法により形成される。
【0118】
「保護層」
保護層17は、磁性層16を保護するための層である。保護層17は、一層から構成されていてもよいし、複数層から構成されていてもよい。保護層17の材料としては、炭素、窒素を含む炭素、炭化ケイ素などが挙げられる。
保護層17の成膜方法としては、炭素を含むターゲット材を用いるスパッタ法や、エチレンやトルエン等の炭化水素原料を用いるCVD(化学蒸着法)法、IBD(イオンビーム蒸着)法等を用いることができる。
【0119】
「潤滑層」
潤滑層18は、磁気記録媒体10の汚染を防止する。また、潤滑層18は、磁気記録媒体10上を摺動する磁気記録再生装置の磁気ヘッドの摩擦力を低減させて、磁気記録媒体10の耐久性を向上させる。
潤滑層18は、図1に示すように、保護層17上に接して形成されている。潤滑層18は、保護層17上に上述した実施形態の磁気記録媒体用潤滑剤を塗布することにより形成されたものである。したがって、潤滑層18は、上述の(本発明の)含フッ素エーテル化合物を含む。
【0120】
潤滑層18は、潤滑層18の下に配置されている保護層17が、炭素、窒素を含む炭素、炭化ケイ素で形成されている場合、保護層17に含まれる(本発明の)含フッ素エーテル化合物と高い結合力で結合される。その結果、潤滑層18の厚みが薄くても、高い被覆率で保護層17の表面が被覆された磁気記録媒体10が得られやすくなり、磁気記録媒体10の表面の汚染を効果的に防止できる。
【0121】
潤滑層18の平均膜厚は、0.5nm(5Å)~3nm(30Å)であることが好ましく、0.5nm(5Å)~2nm(20Å)であることがより好ましい。
潤滑層18の平均膜厚が0.5nm以上であると、潤滑層18がアイランド状または網目状とならずに均一の膜厚で形成される。このため、潤滑層18によって、保護層17の表面を高い被覆率で被覆できる。また、潤滑層18の平均膜厚を3nm以下にすることで、磁気ヘッドの浮上量を十分小さくして、磁気記録媒体10の記録密度を高くできる。
【0122】
保護層17の表面が潤滑層18によって十分に高い被覆率で被覆されていない場合、磁気記録媒体10の表面に吸着した環境物質が、潤滑層18の隙間を通り抜けて、潤滑層18の下に侵入する。潤滑層18の下層に侵入した環境物質は、保護層17と吸着、結合し汚染物質を生成する。そして、磁気記録再生の際に、この汚染物質(凝集成分)がスメアとして磁気ヘッドに付着(転写)して、磁気ヘッドを破損したり、磁気記録再生装置の磁気記録再生特性を低下させたりする。
【0123】
汚染物質を生成させる環境物質としては、例えば、シロキサン化合物(環状シロキサン、直鎖シロキサン)、イオン性化合物、オクタコサン等の比較的分子量の高い炭化水素、フタル酸ジオクチル等の可塑剤等が挙げられる。イオン性不純物に含まれる金属イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン等を挙げることができる。イオン性不純物に含まれる無機イオンとしては、例えば、塩素イオン、臭素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、アンモニウムイオン等を挙げることができる。イオン性不純物に含まれる有機物イオンとしては、例えば、シュウ酸イオン、蟻酸イオン等を挙げることができる。
【0124】
「潤滑層の形成方法」
潤滑層18を形成するには、例えば、基板11上に保護層17までの各層が形成された製造途中の磁気記録媒体を用意し、保護層17上に潤滑層形成用溶液を塗布する方法が挙げられる。
【0125】
潤滑層形成用溶液は、上述の実施形態の磁気記録媒体用潤滑剤を必要に応じて溶媒で希釈し、塗布方法に適した粘度および濃度とすることにより得られる。
潤滑層形成用溶液に用いられる溶媒としては、例えば、バートレル(登録商標)XF(商品名、三井デュポンフロロケミカル社製)等のフッ素系溶媒等が挙げられる。
【0126】
潤滑層形成用溶液の塗布方法は、特に限定されないが、例えば、スピンコート法やディップ法等が挙げられる。
ディップ法を用いる場合、例えば、以下に示す方法を用いることができる。まず、ディップコート装置の浸漬槽に入れられた潤滑層形成用溶液中に、保護層17までの各層が形成された基板11を浸漬する。次いで、浸漬槽から基板11を所定の速度で引き上げる。このことにより、潤滑層形成用溶液を基板11の保護層17上の表面に塗布する。
ディップ法を用いることで、潤滑層形成用溶液を保護層17の表面に均一に塗布することができ、保護層17上に均一な膜厚で潤滑層18を形成できる。
【0127】
本実施形態の磁気記録媒体10は、基板11上に、少なくとも磁性層16と、保護層17と、潤滑層18とが順次設けられたものである。本実施形態の磁気記録媒体10では、保護層17上に接して上述の含フッ素エーテル化合物を含む潤滑層18が形成されている。この潤滑層18は、厚みが薄くても、高い被覆率で保護層17の表面を被覆している。よって、本実施形態の磁気記録媒体10では、イオン性不純物などの汚染物質を生成させる環境物質が、潤滑層18の隙間から侵入することが防止されている。したがって、本実施形態の磁気記録媒体10は、表面上に存在する汚染物質が少ないものである。また、本実施形態の磁気記録媒体10における潤滑層18は、異物(スメア)を生じさせにくく、ピックアップを抑制できる。また、本実施形態の磁気記録媒体10における潤滑層18は、優れた化学物質耐性および耐摩耗性を有する。このため、本実施形態の磁気記録媒体10は、優れた信頼性および耐久性を有する。
【実施例
【0128】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0129】
「潤滑剤の製造」
(実施例1)
以下に示す方法により、上記式(A)で示される化合物を製造した。
【0130】
窒素ガス雰囲気下、100mLナスフラスコにHOCHCFO(CFCFO)(CFO)CFCHOH(式中のqは6であり、rは6である。)で表される化合物(数平均分子量1270、分子量分布1.1)25.4gと、下記式(7)で示されるグリシジルフェニルエーテル1.50gと、t-BuOH10mLとを仕込み、室温で均一になるまで撹拌した。この均一の液にさらにt-BuOKを0.900g加え、70℃で8時間撹拌して反応させた。
得られた反応生成物を25℃に冷却し、0.5mol/Lの塩酸で中和後、三井デュポンフロロケミカル社製バートレルXF(以下、バートレルXF)で抽出し、有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムによって脱水した。乾燥剤を濾別後、濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して、下記式(8)で示される化合物7.25gを得た。
【0131】
【化43】
(式(8)中、mは6であり、nは6である。)
【0132】
窒素ガス雰囲気下で200mLナスフラスコに、上記で得られた式(8)で示される化合物7.10gと、下記式(9)で示される化合物1.05gと、t-BuOH50mLを仕込み、室温で均一になるまで撹拌した。この均一の液にt-BuOKを0.187g加え、70℃で16時間撹拌して反応させた。
得られた反応生成物を25℃に冷却し、0.1mol/Lの塩酸で中和後、バートレルXFで抽出し、有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムによって脱水した。乾燥剤を濾別後、濾液を濃縮した。
なお、下記式(9)で示される化合物は、エチレングリコールtert-ブチルエーテルとエピブロモヒドリンから合成した。
【0133】
【化44】
【0134】
得られた残渣に室温で、水0.75mL、トリフルオロ酢酸7.5mLを加え、室温で6時間撹拌した。水、トリフルオロ酢酸を35℃以下で留去し、得られた残渣に5%重曹水を30mL加え、バートレルXFで抽出し、有機層を水洗し、濃縮した。得られた残渣にメタノール5mLと1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液20mLとを加え、室温で1時間撹拌した。メタノールを留去し、バートレルXFで抽出し、有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムによる脱水を行った。乾燥剤を濾別後、濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して、化合物(A)を4.75g得た。
【0135】
得られた化合物(A)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(A);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]3.40~3.55(3H)、3.55~3.90(11H)、3.95~4.15(4H)、6.80~7.30(5H)
【0136】
(実施例2)
式(7)で示される化合物の代わりに下記式(10)で示される化合物を1.80g用いたこと以外は、実施例1と同様な操作を行い、化合物(B)を4.85g得た。
【0137】
得られた化合物(B)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(B);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]3.45~3.60(3H)、3.60~4.00(14H)3.95~4.15(4H)、6.75~6.85(2H)、7.10~7.20(2H)
【0138】
【化45】
【0139】
(実施例3)
式(7)で示される化合物の代わりに下記式(11)で示される化合物を2.00g用いたこと以外は、実施例1と同様な操作を行い、化合物(C)を4.80g得た。
なお、下記式(11)で示される化合物は、ナフトールとエピクロロヒドリンから合成した。
【0140】
得られた化合物(C)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(C);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]3.40~3.55(3H)、3.60~3.90(11H)、4.00~4.15(4H)、7.00~7.70(7H)
【0141】
【化46】
【0142】
(実施例4)
式(7)で示される化合物の代わりに下記式(12)で示される化合物を1.85g用いたこと以外は、実施例1と同様な操作を行い、化合物(D)を4.95g得た。
なお、下記式(12)で示される化合物は、チオフェンエタノールとエピクロロヒドリンから合成した。
【0143】
得られた化合物(D)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(D);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V)):
δ[ppm]=3.15(2H)、3.40~3.55(8H)、3.60~3.95(8H)、4.00~4.15(4H)、6.80(2H)、7.03(1H)
【0144】
【化47】
【0145】
(実施例5)
式(7)で示される化合物の代わりに下記式(13)で示される化合物を1.69g用いたこと以外は、実施例1と同様な操作を行い、化合物(E)を4.55g得た。
なお、下記(13)で示される化合物は、N-メチルピラゾールメタノールとエピクロロヒドリンから合成した。
【0146】
得られた化合物(E)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(E);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V)):
δ[ppm]=3.40~3.55(3H)、3.60~3.90(16H)、4.05~4.20(4H)、6.00(1H)、7.25(1H)
【0147】
【化48】
【0148】
(実施例6)
式(7)で示される化合物の代わりに下記式(14)で示される化合物を2.00g用いたこと以外は、実施例1と同様な操作を行い、化合物(F)を4.40g得た。
なお、下記(14)で示される化合物は、メチルチアゾールエタノールとエピクロロヒドリンから合成した。
【0149】
得られた化合物(F)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(F);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V)):
δ[ppm]=2.35(3H)、3.00(2H)、3.40~3.55(3H)、3.60~3.90(13H)、4.05~4.20(4H)、8.40(1H)
【0150】
【化49】
【0151】
(実施例7)
式(7)で示される化合物の代わりに下記式(15)で示される化合物を1.55g用いたこと以外は、実施例1と同様な操作を行い、化合物(G)を4.77g得た。
なお、下記(15)で示される化合物は、フランメタノールとエピクロロヒドリンから合成した。
【0152】
得られた化合物(G)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(G);1H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V)):
δ[ppm]=3.40~3.55(3H)、3.60~3.95(11H)、4.00~4.15(4H)、4.45(2H)、6.35(1H)、7.35(2H)
【0153】
【化50】
【0154】
(実施例8)
式(7)で示される化合物の代わりに下記式(16)で示される化合物を1.15g用いたこと以外は、実施例1と同様な操作を行い、化合物(H)を4.69g得た。
【0155】
得られた化合物(H)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(H);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V)):
δ[ppm]=3.40~3.55(3H)、3.60~3.95(11H)、4.00~4.15(6H)、5.15(2H)、5.30(1H)、5.90~6.00(1H)
【0156】
【化51】
【0157】
(実施例9)
以下に示す方法により、上記式(I)で示される化合物を製造した。
窒素ガス雰囲気下、300mLナスフラスコにHOCHCFO(CFCFO)(CFO)CFCHOH(式中のqは4.5であり、rは4.5である。)で表される化合物(数平均分子量997、分子量分布1.1)20.0と、下記式(17)で示される化合物3.42gと、炭酸カリウム8.29gと、アセトン60mLとを仕込み、還流下で24時間撹拌して反応させた。
得られた反応生成物を25℃に冷却し、アセトンを留去した。残渣にバートレルXFを加え、水洗、無水硫酸ナトリウムによる脱水を行った。乾燥剤を濾別後、濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して、下記式(18)で示される化合物7.52gを得た。
【0158】
【化52】
(式(18)中、mは4.5であり、nは4.5である。)
【0159】
窒素ガス雰囲気下、500mLナスフラスコに、エチレングリコール12mLと、ジクロロメタン150mLと、トリチルクロライド20.0gとを仕込み、均一になるまで撹拌した。さらに上記ナスフラスコに、氷冷下で、トリエチルアミン20mL/ジクロロメタン50mL溶液を30分かけて加えた。さらに上記ナスフラスコに、室温で4-ジメチルアミノピリジン0.900gを加え、40℃で10時間反応させた。得られた反応生成物を25℃に冷却し、水洗し、無水硫酸ナトリウムによる脱水を行った。乾燥剤を濾別後、濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して、下記式(19)で示される化合物を19.0g得た。
【0160】
【化53】
【0161】
窒素ガス雰囲気下、500mLナスフラスコに、化合物(19)を15.0g(49.3mmol)と、テトラヒドロフランを150mLと、アリルグリシジルエーテル7.00mLとを仕込み、均一になるまで撹拌した。この均一の液にt-BuOKを6.00g加え、70℃で4時間撹拌して反応させた。得られた反応生成物を25℃に冷却し、テトラヒドロフランを留去した。残渣にトルエンを加え、水洗し、無水硫酸ナトリウムによる脱水を行った。乾燥剤を濾別後、濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して、下記式(20)で示される化合物を12.0g得た。
【0162】
【化54】
【0163】
300mLナスフラスコに、氷冷下で、式(20)で示される化合物5.00gと、ジクロロメタン50mLと、メタクロロ過安息香酸5.00gとを仕込み、同温で1時間、室温で12時間撹拌した。この反応液に氷冷下で、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液10mLを加え、30分撹拌した後、室温で30分撹拌した。分液漏斗へ移液し、有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムによる脱水を行った。乾燥剤を濾別後、濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して、化合物(21)を4.50g得た。
【0164】
得られた化合物(21)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(21)H-NMR(CDCl);
δ[ppm]2.62(1H)、2.81(1H)、3.18(1H)、3.28(2H)、3.48(1H)、3.50~3.75(6H)、3.85(1H)、4.03(1H)、7.18~7.38(9H)、7.45(6H)
【0165】
【化55】
【0166】
窒素ガス雰囲気下、100mLナスフラスコに、上記で得られた式(18)で示される化合物5.98gと、式(21)で示される化合物1.52gと、t-BuOH30mLとを仕込み、室温で均一になるまで撹拌した。この均一の液にt-BuOKを0.200g(1.78mmol)加え、70℃で12時間撹拌して反応させた。得られた反応生成物を25℃に冷却し、0.1mol/Lの塩酸で中和した。その後、バートレルXFで抽出し、有機層を水洗して、無水硫酸ナトリウムによる脱水を行った。乾燥剤を濾別後、濾液を濃縮した。
【0167】
得られた残渣に室温で、バートレルXF8mLと、水0.75mLと、トリフルオロ酢酸7.5mLとを加え、室温で1時間撹拌した。バートレルXF、水、トリフルオロ酢酸を35℃以下で留去し、得られた残渣に5%重曹水を30mL加え、バートレルXFで抽出し、有機層の水洗を行い、濃縮した。得られた残渣にメタノール5mLと、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液14mLとを加え、室温で1時間撹拌した。メタノールを留去し、バートレルXFで抽出し、有機層を1mol/Lの塩酸と水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムによる脱水を行った。乾燥剤を濾別後、濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(I)を3.30g得た。
【0168】
得られた化合物(I)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(I);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]δ[ppm]3.45~3.90(14H)、3.95~4.15(4H)、4.90(2H)、7.45~7.75(5H)
【0169】
(実施例10)
式(17)で示される化合物の代わりに下記式(22)で示される化合物を4.42g用いたこと以外は、実施例9と同様な操作を行い、化合物(J)を3.40g得た。
【0170】
得られた化合物(J)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(J);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]3.45~3.90(14H)、3.95~4.15(4H)、4.95(2H)、7.45~7.75(7H)
【0171】
【化56】
【0172】
(実施例11)
式(17)で示される化合物の代わりに下記式(23)で示される化合物を2.42g用いたこと以外は、実施例9と同様な操作を行い、化合物(K)を3.02g得た。
【0173】
得られた化合物(K)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(K);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]3.45~3.90(14H)、3.95~4.15(6H)、5.10~5.30(2H)、5.90~6.00(1H)
【0174】
【化57】
【0175】
(実施例12)
窒素ガス雰囲気下、200mLナスフラスコに、上記で得られた式(8)で示される化合物4.90gと、t-BuOH45mLと、エピブロモヒドリン2.30gとを仕込み、均一になるまで撹拌した。この均一の液にt-BuOKを0.500g加え、70℃で6時間撹拌して反応させた。得られた反応生成物を25℃に冷却し、0.1mol/Lの塩酸で中和後、バートレルXFで抽出し、有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムによる脱水を行った。乾燥剤を濾別後、濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、下記式(24)で示される化合物を5.00g得た。
【0176】
【化58】
(式(24)中、mは6であり、nは6である。)
【0177】
窒素ガス雰囲気下、100mLナスフラスコに、式(24)で示される化合物3.19gと、t-BuOH28mLと、プロピレングリコール3.50gとを仕込み、均一になるまで撹拌した。この均一の液にt-BuOKを0.700g加え、70℃で6時間撹拌して反応させた。得られた反応生成物を25℃に冷却し、0.1mol/Lの塩酸で中和した後、バートレルXFで抽出し、有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムによる脱水を行った。乾燥剤を濾別後、濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(L)を2.14g得た。
【0178】
得られた化合物(L)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(L);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]1.79(2H)、3.40~3.55(3H)、3.55~3.90(11H)、3.95~4.15(4H)、6.80~7.30(5H)
【0179】
(実施例13)
式(8)で示される化合物の代わりに、実施例2の合成中間体である下記式(25)で示される化合物を5.00g用いたこと以外は、実施例12と同様な操作を行い、化合物(M)を2.34g得た。
【0180】
得られた化合物(M)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(M);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]1.79(2H)、3.45~3.60(3H)、3.60~4.00(14H)、3.95~4.15(4H)、6.75~6.85(2H)、7.10~7.20(2H)
【0181】
【化59】
(式(25)中、mは6であり、nは6である。)
【0182】
(実施例14)
式(8)で示される化合物の代わりに、実施例4の合成中間体である下記式(26)で示される化合物を5.02g用いたこと以外は、実施例12と同様な操作を行い、化合物(N)を2.26g得た。
【0183】
得られた化合物(N)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(N);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]=1.79(2H)、3.15(2H)、3.40~3.55(8H)、3.60~3.95(8H)、4.00~4.15(4H)、6.80(2H)、7.05(1H)
【0184】
【化60】
(式(26)中、mは6であり、nは6である。)
【0185】
(実施例15)
式(8)で示される化合物の代わりに、実施例8の合成中間体である下記式(27)で示される化合物を4.77g用いたこと以外は、実施例12と同様な操作を行い、化合物(O)を2.33g得た。
【0186】
得られた化合物(O)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(O);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]1.79(2H)、3.45~3.90(14H)、3.95~4.15(6H)、5.10~5.30(2H)、5.90~6.00(1H)
【0187】
【化61】
(式(27)中、mは6であり、nは6である。)
【0188】
(実施例16)
窒素ガス雰囲気下、100mLナスフラスコに、上記で得られた式(24)で示される化合物3.19gと、t-BuOH28mLと、2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジオール4.00gとを仕込み、均一になるまで撹拌した。この均一の液にt-BuOK0.112g加え、70℃で6時間撹拌して反応させた。得られた反応生成物を25℃に冷却し、0.1mol/Lの塩酸で中和した後、バートレルXFで抽出し、有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムによる脱水を行った。乾燥剤を濾別後、濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(P)を2.32g得た。
【0189】
得られた化合物(P)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(P);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]3.40~3.55(3H)、3.55~3.95(11H)、4.00~4.20(4H)、6.80~7.30(5H)
【0190】
(実施例17)
式(24)で示される化合物の代わりに、実施例13の合成中間体である下記式(28)で示される化合物を3.26g用いたこと以外は、実施例16と同様な操作を行い、化合物(Q)を2.38g得た。
【0191】
得られた化合物(Q)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(Q);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]3.45~3.60(3H)、3.60~4.00(14H)、4.00~4.20(4H)、6.75~6.85(2H)、7.10~7.20(2H)
【0192】
【化62】
(式(28)中、mは6であり、nは6である。)
【0193】
(実施例18)
式(24)で示される化合物の代わりに、実施例14の合成中間体である下記式(29)で示される化合物を3.26g用いたこと以外は、実施例16と同様な操作を行い、化合物(R)を2.21g得た。
【0194】
得られた化合物(R)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(R);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]=3.15(2H)、3.40~3.55(8H)、3.60~3.95(8H)、4.00~4.15(4H)、6.80(2H)、7.05(1H)
【0195】
【化63】
(式(29)中、mは6であり、nは6である。)
【0196】
(実施例19)
式(24)で示される化合物の代わりに、実施例15の合成中間体である下記式(30)で示される化合物を3.12g用いたこと以外は、実施例16と同様な操作を行い、化合物(S)を2.28g得た。
【0197】
得られた化合物(S)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(S);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V)):
δ[ppm]=3.40~3.55(3H)、3.60~3.95(11H)、4.00~4.15(6H)、5.15(2H)、5.30(1H)、5.90~6.00(1H)
【0198】
【化64】
(式(30)中、mは6であり、nは6である。)
【0199】
(実施例20)
500mLナスフラスコに、3-ブテニルアセテート(12.0g)と、ジクロロメタン100mLとを仕込み、室温で撹拌し、均一な溶液とした。この溶液に、氷冷下で、m-クロロ過安息香酸31.0gを加え、同温で1時間撹拌し、さらに室温で10時間撹拌した。その後、氷冷下で飽和炭酸水素ナトリウム水溶液20mLおよび、飽和亜硫酸ナトリウム水溶液20mLを加え、30分間同温で撹拌した。反応液から水層を分離し、有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムによる脱水を行った。乾燥剤を濾別後、濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(31)を6.40g得た。
【0200】
得られた化合物(31)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(31)H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]1.73(1H)、1.88(1H)、2.01(3H)、2.41(1H)、2.67(1H)、2.88(1H)、4.12(2H)
【0201】
【化65】
【0202】
窒素ガス雰囲気下、200mLナスフラスコに、式(8)で示される化合物7.10gと、式(31)で示される化合物0.781gと、t-BuOH50mLとを仕込み、室温で均一になるまで撹拌した。この均一の液にt-BuOKを0.225g加え、70℃で30時間撹拌して反応させた。得られた反応生成物を25℃に冷却し、0.1mol/Lの塩酸で中和した後、バートレルXFで抽出し、有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムによる脱水を行った。乾燥剤を濾別後、濾液を濃縮した。
得られた残渣に室温で、メタノール30mLと、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液30mLとを加え、室温で1時間撹拌した。メタノールを留去し、バートレルXFで抽出し、有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムによる脱水を行った。乾燥剤を濾別後、濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(T)を4.62g得た。
【0203】
得られた化合物(T)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(T);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]1.54~1.76(2H)、3.55~3.80(5H)、3.82~4.20(9H)、6.80~7.30(5H)
【0204】
(実施例21)
式(8)で示される化合物の代わりに、式(25)で示される化合物を7.25g用いたこと以外は、実施例20と同様な操作を行い、化合物(U)を5.02g得た。
【0205】
得られた化合物(U)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(U);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]1.54~1.76(2H)、3.55~3.80(8H)、3.82~4.20(9H)、6.55~6.60(2H)、6.70~6.75(2H)
【0206】
(実施例22)
式(8)で示される化合物の代わりに、実施例10の中間体である下記式(32)で示される化合物を7.35g用いたこと以外は、実施例20と同様な操作を行い、化合物(V)を4.89g得た。
【0207】
得られた化合物(V)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(V);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]1.54~1.76(2H)、3.55~3.80(5H)、3.82~4.20(9H)、7.00~7.50(7H)
【0208】
【化66】
(式(32)中、mは6であり、nは6である。)
【0209】
(実施例23)
式(8)で示される化合物の代わりに、式(26)で示される化合物を7.27g用いたこと以外は、実施例20と同様な操作を行い、化合物(W)を4.55g得た。
【0210】
得られた化合物(W)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(W);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]1.54~1.76(2H)、3.55~3.80(5H)、3.80~4.20(9H)、6.80(2H)、7.05(1H)
【0211】
(実施例24)
式(8)で示される化合物の代わりに、実施例6の中間体である下記式(33)で示される化合物を7.35g用いたこと以外は、実施例20と同様な操作を行い、化合物(X)を4.24g得た。
【0212】
得られた化合物(X)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(X);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]1.54~1.76(2H)、2.35(3H)、3.00(2H)、3.55~3.80(5H)、3.82~4.20(11H)、8.40(1H)
【0213】
【化67】
(式(33)中、mは6であり、nは6である。)
【0214】
(実施例25)
式(8)で示される化合物の代わりに、式(27)で示される化合物を6.92g用いたこと以外は、実施例20と同様な操作を行い、化合物(Y)を4.66g得た。
【0215】
得られた化合物(Y)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(Y);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]1.54~1.76(2H)、3.55~3.80(5H)、3.82~4.20(11H)、5.20~5.30(2H)、5.80~5.90(1H)
【0216】
(実施例26)
窒素ガス雰囲気下、200mLナスフラスコに、HOCHCFO(CFCFO)CFCHOH(式中のxは8である。)で表される化合物(数平均分子量1106、分子量分布1.1)22.1gと、化合物(7)1.50gと、t-BuOH10mLとを仕込み、室温で均一になるまで撹拌した。この均一の液にt-BuOKを0.900g加え、70℃で8時間撹拌して反応させた。得られた反応生成物を25℃に冷却し、0.5mol/Lの塩酸で中和した後、バートレルXFで抽出し、有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムによる脱水を行った。乾燥剤を濾別後、濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して、化合物(34)を6.29g得た。
【0217】
【化68】
(式(34)中、xは8である。)
【0218】
窒素ガス雰囲気下、200mLナスフラスコに、上記で得られた式(34)で示される化合物6.28gと、式(9)で示される化合物1.05gと、t-BuOH50mLとを仕込み、室温で均一になるまで撹拌した。この均一の液に、t-BuOKを0.224g加え、70℃で16時間撹拌して反応させた。得られた反応生成物を25℃に冷却し、0.1mol/Lの塩酸で中和した後、バートレルXFで抽出し、有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムによる脱水を行った。乾燥剤を濾別後、濾液を濃縮した。
【0219】
得られた残渣に室温で、水0.75mLと、トリフルオロ酢酸7.5mLとを加え、室温で6時間撹拌した。水、トリフルオロ酢酸を35℃以下で留去し、得られた残渣に5%重曹水を30mL加え、バートレルXFで抽出し、有機層を水洗し、濃縮した。得られた残渣にメタノール5mLと1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液20mLとを加え、室温で1時間撹拌した。メタノールを留去し、バートレルXFで抽出し、有機層を水洗し、無水硫酸ナトリウムによる脱水を行った。乾燥剤を濾別後、濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、化合物(Z)を4.28g得た。
【0220】
得られた化合物(Z)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(Z);H-NMR(C/CDCOCD=4/1(V/V));
δ[ppm]3.40~3.55(3H)、3.88~4.20(15H)、6.90~7.20(5H)
【0221】
(実施例27)
式(7)で示される化合物の代わりに、下記式(35)で示される化合物を1.12g用いたこと以外は、実施例1と同様な操作を行い、化合物(AB)を4.05g得た。
【0222】
得られた化合物(AB)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(AB);H-NMR(CDCOCD);
δ[ppm]2.50(1H)、3.45~3.65(8H)、3.65~3.90(6H)、4.00~4.20(6H)
【0223】
【化69】
【0224】
参考例28)
式(7)で示される化合物の代わりに、下記式(36)で示される化合物を1.88g用いたこと以外は、実施例1と同様な操作を行い、化合物(AC)を3.85g得た。なお、下記式(36)で示される化合物は、グリセリンジアリルエーテルを片側だけ酸化して合成した。
【0225】
得られた化合物(AC)のH-NMR測定を行い、以下の結果により構造を同定した。
化合物(AC);H-NMR(CDCOCD);
δ[ppm]3.35~3.95(19H)、3.95~4.15(6H)、5.05~5.15(1H)、5.20~5.30(1H)、5.80~6.00(1H)
【0226】
【化70】
【0227】
「比較例1」
下記式(AA)で表される化合物を特許文献1に記載の方法で合成した。
【0228】
【化71】
(式(AA)中、mは6であり、nは6である。)
【0229】
「比較例2」
下記式(BB)で表される化合物を特許文献2に記載の方法で合成した。
【0230】
【化72】
(式(BB)中、mは6であり、nは6である。)
【0231】
「比較例3」
下記式(CC)で表される化合物を特許文献3に記載の方法で合成した。
【0232】
【化73】
(式(CC)中、mは6であり、nは6である。)
【0233】
このようにして得られた実施例1~27、参考例28および比較例1~3の化合物を、式(1)に当てはめたときのR~Rの構造を表1~表4に示す。また、実施例1~27、参考例28の化合物の数平均分子量を、上述したH-NMRおよび19F-NMRの測定により求めた。その結果を表1~表4に示す。
【0234】
【表1】
【0235】
【表2】
【0236】
【表3】
【0237】
【表4】
【0238】
次に、以下に示す方法により、実施例1~27、参考例28および比較例1~3で得られた化合物を用いて潤滑層形成用溶液を調製した。そして、得られた潤滑層形成用溶液を用いて、以下に示す方法により、磁気記録媒体の潤滑層を形成し、実施例1~27、参考例28および比較例1~3の磁気記録媒体を得た。
【0239】
「潤滑層形成用溶液」
実施例1~27、参考例28および比較例1~3で得られた化合物を、それぞれフッ素系溶媒であるバートレル(登録商標)XF(商品名、三井デュポンフロロケミカル社製)に溶解し、保護層上に塗布した時の膜厚が9Å~11Åになるようにバートレルで希釈し、化合物の濃度が0.0005質量%~0.001質量%である潤滑層形成用溶液とした。
【0240】
「磁気記録媒体」
直径65mmの基板上に、付着層と軟磁性層と第1下地層と第2下地層と磁性層と保護層とを順次設けた磁気記録媒体を用意した。保護層は、炭素からなるものとした。
保護層までの各層の形成された磁気記録媒体の保護層上に、実施例1~27、参考例28および比較例1~3の潤滑層形成用溶液を、それぞれディップ法により塗布した。なお、ディップ法は、浸漬速度10mm/sec、浸漬時間30sec、引き上げ速度1.2mm/secの条件で行った。
その後、潤滑層形成用溶液を塗布した磁気記録媒体を、120℃の恒温槽に入れ、10分間加熱して潤滑層形成用溶液中の溶媒を除去することにより、保護層上に潤滑層を形成し、磁気記録媒体を得た。
【0241】
このようにして得られた実施例1~27、参考例28および比較例1~3の磁気記録媒体の有する潤滑層の膜厚を、FT-IR(商品名:Nicolet iS50、Thermo Fisher Scientific社製)を用いて測定した。その結果を表5に示す。
【0242】
次に、実施例1~27、参考例28および比較例1~3の磁気記録媒体に対して、以下に示す化学物質耐性試験を行なった。
(化学物質耐性試験)
この評価手法は、高温環境下において汚染物質を生成させる環境物質による磁気記録媒体の汚染を調べる評価手法である。以下に示す耐環境性の評価手法では、環境物質としてSiイオンを用い、環境物質によって生成された磁気記録媒体を汚染する汚染物質の量としてSi吸着量を測定した。
【0243】
具体的には、評価対象である磁気記録媒体を、温度85℃、湿度0%の高温環境下で、シロキサン系Siゴムの存在下に240時間保持した。次に、磁気記録媒体の表面に存在するSi吸着量を、二次イオン質量分析法(SIMS)を用いて分析測定し、Siイオンによる汚染の程度をSi吸着量として評価した。Si吸着量の評価は、比較例2の結果を1.00としたときの数値を用いて評価した。その結果を表5に示す。
【0244】
【表5】
【0245】
表5より、実施例1~27、参考例28の磁気記録媒体では、比較例1~3の磁気記録媒体と比較して、潤滑層の膜厚が薄いにも関わらず、Si吸着量が少なく、高温環境下において環境物質によって汚染されにくいことが明らかになった。
また、実施例2は、潤滑層を形成している式(1)で表される化合物中のRにおける水酸基の結合している炭素原子同士が、水酸基の結合していない炭素原子を含む連結基を介して結合している場合である。これに対し、比較例2は、潤滑層を形成している式(1)で表される化合物中のRにおける水酸基の結合している炭素原子同士が結合している場合である。表5に示す実施例2と比較例2の結果から、Rにおける水酸基の結合している炭素原子同士が、水酸基の結合していない炭素原子を含む連結基を介して結合していることにより、化学物質耐性が向上することが分かる。
【0246】
また、実施例1~27、参考例28および比較例1~3の磁気記録媒体に対して、以下に示す耐摩耗性試験を行なった。
(耐摩耗性試験)
ピンオンディスク型摩擦摩耗試験機を用い、接触子としての直径2mmのアルミナの球を、荷重40gf、摺動速度0.25m/secで、磁気記録媒体の潤滑層上で摺動させ、潤滑層の表面の摩擦係数を測定した。そして、潤滑層の表面の摩擦係数が急激に増大するまでの摺動時間を測定した。摩擦係数が急激に増大するまでの摺動時間は、各磁気記録媒体の潤滑層について4回ずつ測定し、その平均値(時間)を潤滑剤塗膜の耐摩耗性の指標とした。実施例1~27、参考例28の化合物および比較例1~3の化合物を用いた磁気記録媒体の結果を表5に示す。摩擦係数増大時間の評価は、以下のとおりとした。
◎:650sec以上
○:550sec以上、650sec未満
△:450sec以上、550sec未満
×:450sec未満
【0247】
なお、摩擦係数が急激に増大するまでの時間は、以下に示す理由により、潤滑層の耐摩耗性の指標として用いることができる。磁気記録媒体の潤滑層は、磁気記録媒体を使用することにより摩耗が進行し、摩耗により潤滑層が無くなると、接触子と保護層とが直接接触して、摩擦係数が急激に増大するためである。本摩擦係数が急激に増大するまでの時間は、フリクション試験とも相間があると考えられる。
【0248】
表5に示すように、実施例1~27、参考例28の磁気記録媒体は、比較例1~3の磁気記録媒体と比較して、潤滑層の膜厚が薄いにも関わらず、摩擦係数が急激に増大するまでの摺動時間が長く、耐摩耗性が良好であった。
これは、実施例1~27、参考例28の磁気記録媒体では、潤滑層を形成している式(1)で表される化合物中のRが、二重結合または三重結合を少なくとも一つ有する有機基を含む末端基であることよるものであると推定される。
【産業上の利用可能性】
【0249】
本発明の含フッ素エーテル化合物を含む磁気記録媒体用潤滑剤を用いることにより、厚みが薄くても、優れた化学物質耐性および耐摩耗性を実現できる潤滑層を形成できる。
【符号の説明】
【0250】
10・・・磁気記録媒体、11・・・基板、12・・・付着層、13・・・軟磁性層、14・・・第1下地層、15・・・第2下地層、16・・・磁性層、17・・・保護層、18・・・潤滑層。
図1