IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社スギノマシンの特許一覧

<>
  • 特許-立形工作機械及び工具交換方法 図1
  • 特許-立形工作機械及び工具交換方法 図2
  • 特許-立形工作機械及び工具交換方法 図3
  • 特許-立形工作機械及び工具交換方法 図4
  • 特許-立形工作機械及び工具交換方法 図5
  • 特許-立形工作機械及び工具交換方法 図6
  • 特許-立形工作機械及び工具交換方法 図7
  • 特許-立形工作機械及び工具交換方法 図8
  • 特許-立形工作機械及び工具交換方法 図9
  • 特許-立形工作機械及び工具交換方法 図10
  • 特許-立形工作機械及び工具交換方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】立形工作機械及び工具交換方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/157 20060101AFI20220131BHJP
【FI】
B23Q3/157 B
B23Q3/157 M
B23Q3/157 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020153801
(22)【出願日】2020-09-14
【審査請求日】2021-03-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】森口 卓也
(72)【発明者】
【氏名】冨永 泰裕
【審査官】中里 翔平
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-071228(JP,A)
【文献】特開平04-087748(JP,A)
【文献】特開2006-326709(JP,A)
【文献】実開平06-057536(JP,U)
【文献】特開平11-254261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155-3/157
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
工具を装着可能な主軸穴を有する主軸と、
前記フレームに設置され、前記主軸を前記フレームに対して相対的に移動させる移動装置と、
マガジンであって、
複数のポット保持穴を有するポット保持体と、
前記ポット保持穴のそれぞれを貫通し、前記工具を収納する複数のポットであって、上昇位置と受け渡し位置とを昇降可能な複数のポットと、
を有するマガジンと、
前記フレームに設置され、ポット工具交換位置にある前記ポットを昇降させるポットリフタと、
前記フレームに設置された直動ガイドと、
前記直動ガイドに設置された中間アーム組立体であって、
第1グリッパと、第2グリッパと、を有するアームと、
前記第1グリッパと前記第2グリッパのいずれかをポット位相と主軸位相のいずれかに割り出すアーム回転装置と、
を有する中間アーム組立体と、
前記中間アーム組立体を、前記マガジン側のマガジン位置と、前記主軸側の主軸位置と、前記マガジン位置と前記主軸位置の間に位置する中間位置と、の間で移動させる中間アーム送り装置と、
を有し、
前記マガジンは、
前記ポット保持穴にそれぞれ対応して、前記ポット保持体に配置されたガイドブッシュと、
前記ポットと接続され、前記ガイドブッシュ内を摺動するガイドと、
を有する、立形工作機械。
【請求項2】
前記中間アーム組立体は、前記マガジン位置において、前記第1グリッパ及び前記第2グリッパのいずれかと、受け渡し位置にある前記ポットとの間で、前記工具を受け渡し可能であり、
前記中間アーム組立体は、前記主軸位置において、前記第1グリッパ及び前記第2グリッパのいずれかと、主軸工具交換位置にある前記主軸との間で、前記工具を受け渡し可能である、
請求項1に記載の立形工作機械。
【請求項3】
前記マガジンは、
前記ポット保持体の上方に配置され、前記ポット及び前記ガイドと接続し、前記ポット及び前記ガイドと一体として昇降する天板を有する、
請求項1又は2に記載の立形工作機械。
【請求項4】
前記ポットリフタは、
前記フレームに固定され、前記ポットと接続され、前記ポットを昇降可能なシリンダを有する、
請求項1~3のいずれかに記載の立形工作機械。
【請求項5】
前記マガジンは、前記ポットの上方に設けられ、前記ポットと一体として昇降するつまみを有し、
前記ポットリフタは、前記シリンダに接続され、前記ポット保持体が回転するときに前記つまみが通過する通過穴と、前記ポット保持体が前記ポットをポット受け渡し位置に割り出したときに、前記つまみを引っ掛ける爪と、を有する引掛け部材を有する、
請求項4に記載の立形工作機械。
【請求項6】
前記シリンダは、ガイド付きシリンダである、
請求項4又は5に記載の立形工作機械。
【請求項7】
前記ポットリフタは、
前記ポット保持体に沿って配置されたレバーであって、
第1端に配置され、前記ポットに回動可能に接続された作用点と、
前記第1端の反対である第2端に配置され、前記シリンダに回動可能に接続された力点と、
中央部に配置され、前記フレームに固定された支点と、を有し、
前記支点を中心に回動可能なレバーと、
前記ポットを上下方向にガイドする直動ガイドと、
を有する、請求項4又は5に記載の立形工作機械。
【請求項8】
前記工具は、キー溝を有し、
前記第1グリッパ及び前記第2グリッパは、それぞれ、
前記アームに回転可能に支持された一対の把持爪と、
前記一対の把持爪に挟まれて前記アームに配置され、前記キー溝に挿入可能なキーと、
前記把持爪に配置され、前記把持爪が閉じる方向に付勢する弾性部材と、
を有する、
請求項1~7のいずれかに記載の立形工作機械。
【請求項9】
前記アームは、L字状である、
請求項1~8のいずれかに記載の立形工作機械。
【請求項10】
主軸の回転を停止し、
前記主軸が主軸工具交換位置に移動し、
アームが第1グリッパを主軸位相に割出し、
前記アームがマガジンと主軸との間の中間位置から、主軸位置に移動して、前記第1グリッパが前記主軸に装着されている第1工具を把持し、
前記主軸が前記第1工具をアンクランプして、前記第1工具が前記主軸から離間する位置まで上昇し、
前記アームが第2工具を把持した第2グリッパを前記主軸位相に割出し、
前記主軸が下降して、前記第2工具をクランプし、
前記アームがマガジン位置へ向けて移動して、前記第2グリッパが前記第2工具を解放し、
前記第1グリッパをマガジン位相に割出し、
前記アームが前記マガジン位置に移動して、前記第1工具が空の第1ポットの下方に位置し、
ポットリフタが下降して、前記第1工具を前記第1ポットに収納し、
前記アームが退避位置まで退避し、前記第1グリッパは前記第1工具を解放し、
ポット保持体が、第3工具が装着された第2ポットをポット工具交換位置に割出し、
前記アームが前記第2グリッパを前記マガジン位相に割出し、
前記アームが前記マガジン位置に移動し、前記第2グリッパが前記第3工具を把持し、
前記ポットリフタが前記第2ポットを上昇させて、前記第3工具を前記第2グリッパに受け渡し、
前記アームが前記中間位置に移動する、
工具交換方法。
【請求項11】
前記ポットリフタが前記第2ポットを上昇させて、前記第3工具を前記第2グリッパに受け渡した後に、
前記アームが前記退避位置へ退避し、
前記ポットリフタが下降し、
前記ポット保持体が、前記第2工具に対応する空の第3ポットを前記ポット工具交換位置に割出し、
前記ポットリフタが前記第3ポットを上昇させ
その後、前記アームが前記中間位置に移動する、
請求項10の工具交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立形工作機械及び工具交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械における工具交換装置に、工具を保持するために工具ポットが利用されている(特許第4028782号公報)。また、工具を把持するためにグリッパが利用されている(特許第2761813号公報)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、工具交換装置を小型化できる立形工作機械及び工具交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の側面は、立形工作機械であって、
フレームと、
工具を装着可能な主軸穴を有する主軸と、
前記フレームに設置され、前記主軸を前記フレームに対して相対的に移動させる移動装置と、
マガジンであって、
複数のポット保持穴を有するポット保持体と、
前記ポット保持穴のそれぞれを貫通し、前記工具を収納する複数のポットであって、上昇位置と受け渡し位置とを昇降可能な複数のポットと、
を有するマガジンと、
前記フレームに設置され、ポット工具交換位置にある前記ポットを昇降させるポットリフタと、
前記フレームに設置された直動ガイドと、
前記直動ガイドに設置された中間アーム組立体であって、
第1グリッパと、第2グリッパと、を有するアームと、
前記第1グリッパと前記第2グリッパのいずれかをポット位相と主軸位相のいずれかに割り出すアーム回転装置と、
を有する中間アーム組立体と、
前記中間アーム組立体を、前記マガジン側のマガジン位置と、前記主軸側の主軸位置と、前記マガジン位置と前記主軸位置の間に位置する中間位置と、の間で移動させる中間アーム送り装置と、
を有する。
【0005】
本発明の第2の側面は、工具交換方法であって、
主軸の回転を停止し、
前記主軸が主軸工具交換位置に移動し、
アームが第1グリッパを主軸位相に割出し、
前記アームがマガジンと主軸との間の中間位置から、前記主軸工具交換位置に移動して、前記第1グリッパが前記主軸に装着されている第1工具を把持し、
前記主軸が前記第1工具をアンクランプして、前記第1工具が前記主軸から離間する位置まで上昇し、
前記アームが第2工具を把持した第2グリッパを前記主軸位相に割出し、
前記主軸が下降して、前記第2工具をクランプし、
前記アームがマガジン位置に移動して、前記第2グリッパが前記第2工具を解放し、
前記第1グリッパをマガジン位相に割出し、
前記アームが前記マガジン位置に移動して、前記第1工具が空の第1ポットの下方に位置し、
ポットリフタが下降して、前記第1工具を前記第1ポットに収納し、
前記アームが退避位置まで退避し、前記第1グリッパは前記第1工具を解放し、
ポット保持体が、第3工具が装着された第2ポットをポット工具交換位置に割出し、
前記アームが前記第2グリッパを前記マガジン位相に割出し、
前記アームが前記マガジン位置に移動し、前記第2グリッパが前記第3工具を把持し、
前記ポットリフタが前記第2ポットを上昇させて、前記第3工具を前記第2グリッパに受け渡し、
前記アームが前記中間位置に移動する、
方法である。
【0006】
立形工作機械は、切削加工を行う工作機械である。切削加工は、主軸ヘッドに装着された刃具によって行われる。
主軸は、主軸穴と、工具クランプ装置を有する。
【0007】
ポット保持体は、例えば、マガジンディスクやマガジンチェーンである。
ポットは、工具保持部と、工具保持穴と、工具クランプ装置とを有する。
【0008】
ポットリフタに接続された直動ガイドは、例えば、直線ガイドや、ボールスプライン、ガイドブッシュとガイドブッシュに摺動するガイドとの組み合わせである。
【0009】
ポットの昇降をガイドする直動ガイドは、例えば、直線ガイドや、ボールスプライン、ガイドブッシュとガイドブッシュ内を摺動するガイドとの組合せである。
また、直動ガイドは、フレームに固定されたガイドフレームと、ガイドフレーム上を鉛直方向に沿って上下するガイドと、を有してよい。例えば、ガイドフレームは鉛直方向に設けられたガイド溝を有し、ガイドはポットに接続され、ガイド溝を貫通してガイド溝に沿って移動できるピンでも良い。
【0010】
工具は、それぞれに割り当てられた特定のポットに収納されて良い。このときは、ポット番号を収納する工具の工具番号として良い。また、工具は、特定のポットではなく、空のポットのいずれかに収納されても良い。このときは、収納された工具の工具番号は、ポット番号に関連付けて記憶される。
【0011】
アームは、例えば、L字形状又は直線形状である。アームの先端は、工具を把持するグリッパを有する。複数(例えば、2~4本)のアームを有しても良い。3本のアームであれば、T字形形状でもよい。4本のアームであれば、十字形状でもよい。
【0012】
アーム回転装置は、サーボモータ、ステッピングモータ、やモータとカム装置との組み合わせである。
中間アーム送り装置は、例えば、ラック・ピニオン機構やサーボモータ・ボールねじ機構である。
【0013】
好ましくは、立形工作機械は、数値制御装置を有する。移動装置は、数値制御される。移動装置は、3~5軸の移動装置である。移動装置は、例えば、正面から見て左右方向(X軸)、前後方向(Y軸)、上下方向(Z軸)の並進軸を有する。移動装置は、左右方向を中心に回転する回転軸(A軸)、上下方向を中心に回転する回転軸(C軸)、前後方向を中心に回転する回転軸(B軸)を有して良い。上記の並進軸及び回転軸は、主軸ヘッドとテーブルのいずれに配置しても良い。
【0014】
主軸と中間アーム組立体との間にはシャッタを設け、切削加工によって発生する切りくずがマガジン側に入らないようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の立形工作機械及び工具交換方法によれば、工具交換装置を小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の立形工作機械の斜視図
図2】第1実施形態のポットリフタの縦断面図
図3】第1実施形態の中間アーム組立体の平面図
図4】中間アーム組立体の断面図
図5】工具交換方法を示すフローチャート
図6】工具交換状態を示す斜視図
図7】工具交換状態を示す斜視図
図8】工具交換状態を示す斜視図
図9】工具交換状態を示す斜視図
図10】工具交換方法の追加形態を示すフローチャート
図11】第2実施形態のポットリフタの断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
図1に示すように、工作機械はフレーム2と、主軸ヘッド14と、主軸10と、移動装置11と、マガジン20と、ポット30と、ポットリフタ40と、中間アーム組立体50と、直動ガイド60と、中間アーム送り装置70と、を有する。
【0018】
図1及び図7に示すように、移動装置11は、フレーム2に設置される。主軸ヘッド14は、移動装置11に設置される。主軸10は、主軸穴10aを有し、主軸ヘッド14に回転可能に支持される。主軸10は、鉛直下向きに延びる。主軸10は、移動装置11により、フレーム2に対して自在に移動する。
【0019】
図1及び図2に示すように、マガジン20は、マガジンディスク(ポット保持体)21と、ポット30と、天板33と、ガイドブッシュ23と、ガイド36と、を有する。マガジンディスク21は、ポット保持穴22を有する。マガジンディスク21は、円板状であり、水平に配置される。ポット保持穴22は、貫通穴であり、マガジンディスク21の外周に一定角度で配置される。マガジンディスク21は、旋回軸21aを中心に回転可能に支持される。マガジンディスク21は、例えば、サーボモータ、カム(いずれも不図示)で駆動される。マガジンディスク21は、任意のポット30をポット工具交換位置Hに割り出す。
【0020】
図2は、上昇位置Jにおけるポット30及びポットリフタ40を、ZX平面で切断した断面図である。ただし、中心にガイド36の中心軸が切断面上に位置するように回転して表示している。
ガイドブッシュ23は、ポット30の両側に、マガジンディスク21を貫通して配置される。
【0021】
複数のポット30が、ポット保持穴22にそれぞれ鉛直方向に貫通して配置される。ポット30は、昇降可能に設置される。ポット30は、工具を保持する工具保持穴35と、外周面である円筒面31と、を有する。円筒面31は、ポット保持穴22に摺動しても良い。
【0022】
天板33は、ポット30の上方にそれぞれ設置される。天板33は、例えば、菱形状である。天板33は、円筒面31の外径より大きい。
ガイド36は、天板33の下方に延びて、ポット30の両側に設置される。ガイド36は、ガイドブッシュ23を貫通し、ガイドブッシュ23内を上下方向に摺動する。ポット30が昇降するときに、ガイド36およびガイドブッシュ23は、ポット30をガイドする。
【0023】
つまみ34は、円筒軸部34aと、円板部34bを有する。円筒軸部34aは、ポット30と同軸に、天板33に締結される。円板部34bは、円筒軸部34aの上方に、ポット30と同軸に配置される。
【0024】
ポット30と、天板33と、つまみ34と、ガイド36は、一体となって上昇位置J(図6参照)と受け渡し位置K(図1参照)との間を昇降する。
ここで、受け渡し位置Kは、天板33がマガジンディスク21に載るまで天板33が下がる位置をいう。受け渡し位置Kにおいて、ポット30は、第1グリッパ51又は第2グリッパ52(いずれも後述)に工具12を渡す。そして、ポット30が受け渡し位置Kにあるときに、マガジンディスク21が回転する。
【0025】
上昇位置Jは、第1グリッパ51又は第2グリッパ52が把持した工具12と、ポット30とが完全に離れた位置である。ポット30が上昇位置Jにあるときに、工具12を把持した第1グリッパ51又は第2グリッパ52が、工具12とポット30が干渉することなく、ポット30の下方をくぐって前後に移動できる。マガジンディスク21に保持される複数のポット30の間隔が空いている場合は、第1グリッパ51又は第2グリッパ52が回転しても良い。
【0026】
ポット工具交換位置Hにおいて、ポット30の中心軸39は、工具を交換する位相に位置する。
ポットリフタ40は、ポット工具交換位置Hにあるポット30の中心軸39上に設置される。ポットリフタ40は、シリンダ41と、引掛け部材42とを有する。ポットリフタ40は、フレーム2に固定される。
【0027】
シリンダ41は、ガイド付きシリンダである。例えば、シリンダ41は、ボディ45と、ピストンロッド43と、プレート46と、ガイドシャフト44とを有する。プレート46とガイドシャフト44は、ピストンロッド43と一体となって昇降する。シリンダ41の中心軸は、中心軸39と同軸である。ガイド付きシリンダに替えて、複動シリンダと直動ガイドを設けても良い。
【0028】
引掛け部材42は、プレート46に配置される。引掛け部材42は、爪47と、通過穴48とを有する。通過穴48は、マガジンディスク21の円周方向に延びて、引掛け部材42を貫通する。通過穴48は、T字状の横断面を有する。ポットリフタ40が受け渡し位置Kに下降したときに、マガジンディスク21が回転すると、天板33に設けられたつまみ34が通過穴48を通過する。爪47は、通過穴48の下方に、左右から中央に向けて延びる。爪47は、つまみ34の下方を通過する。シリンダ41が昇降したときに、爪47がつまみ34に引っ掛かり、ポット30が昇降する。
【0029】
図4に示すように、直動ガイド60は、ガイドレール60aと、ガイドブロック60bとを有する。ガイドレール60aは、Y軸方向に延びて、フレーム2に固定される。
図1に示すように、中間アーム組立体50は、主軸10とマガジンディスク21との間に、直動ガイド60に往復可能に設置される。
【0030】
図4に示すように、中間アーム組立体50は、ボディ62と、アーム53と、アーム回転軸58と、アーム回転装置59と、を有する。ボディ62は、ガイドブロック60bに対して移動可能に設置される。中間アーム送り装置(不図示)により、ボディ62は、工具を受け渡しするマガジン位置A、中間位置B、主軸位置Cを往復移動する。
【0031】
アーム回転軸58は、軸受61を介して、ボディ62に支持される。アーム回転軸58は、鉛直方向に延びる。
アーム回転装置59は、ボディ62に配置され、アーム回転軸58を回転駆動する。アーム回転装置59は、サーボモータ59aと、原動プーリ59bと、従動プーリ59cと、無端歯付ベルト59dと、を有する。原動プーリ59bは、サーボモータ59aの出力軸に締結される。従動プーリ59cは、アーム回転軸58に締結される。無端歯付ベルト59dは、原動プーリ59bと従動プーリ59cの間に架けられる。
なお、本実施形態の構成に限られず、モータと、減速機と、アームを組み合わせてもよいし、モータを直接アームに接続しても良い。
【0032】
アーム53は、アーム回転軸58に締結される。図3に示すように、アーム53は、例えば、ダブルアームであり、2つのアーム53a、53bがアーム回転軸58から延びる。例えば、2つのアーム53a、53bは、90度の角度で配置されてL字状を成す。アーム53は、アーム回転軸58と一体となって回転する。
【0033】
第1グリッパ51と第2グリッパ52は、アーム53の先端部にそれぞれ配置される。第1グリッパ51は、主軸10に装着された工具12を取り外し、マガジン20に戻す。第2グリッパ52は、マガジン20から工具12を取り外し、主軸10に装着する。
【0034】
第1グリッパ51は、一対の把持爪54と、支持ピン55と、弾性部材56と、キー57とを有する。把持爪54は、爪部54aと、収容部54bとを有する。
爪部54aは、支持ピン55の先端側に配置される。爪部54aは、工具12のフランジ15の円周のおよそ半分に当接する。収容部54bは、有底の円筒穴である。収容部54bは、支持ピン55の基端側の端部の内側に配置される。ここで、アーム回転軸58の中心から第1グリッパ51の中心を結ぶ線を中心線53a1とする。中心線53a1と中心軸39とに直交する線を、中心線53a2とする。収容部54bは、中心線53a1に対して垂直に延び、中心線53a2に対して平行に延びる。
【0035】
支持ピン55は、アーム回転軸58に平行に固定される。また、支持ピン55は、アーム53aの先端部において、アーム53aの中心線53a1に対称に配置される。一対の把持爪54は、中心線53a1に対称に配置される。各把持爪54は、その中央部において、支持ピン55により回動自在に支持される。収容部54bは、互いに向かい合って配置される。
弾性部材56は、例えば、圧縮コイルねじである。弾性部材56は、一対の収容部54bの内部に配置される。弾性部材56は、把持爪54が閉じる方向に付勢する。
【0036】
キー57は、一対の把持爪54の中間部において、アーム53aの先端に配置される。キー57は、把持爪54及び工具12の回り止めとして働く。キー57は、把持爪54の閉じる方向のメカストッパである。また、工具12を第1グリッパ51が把持するときに、キー57は工具12のキー溝13にはまり込む。
第2グリッパ52は、第1グリッパ51と同じ構造である。
【0037】
中間アーム送り装置70は、フレーム2に固定される。中間アーム送り装置70は、例えば、サーボモータ・ボールねじ機構、ラック・ピニオン機構シリンダである。中間アーム送り装置70は、中間アーム組立体50を往復させる。
【0038】
図1及び図5図8を参照して、本実施形態のメモリーランダム方式による工具交換方法を説明する。
主軸10が原点まで回転し、主軸10が主軸工具交換位置D(図6参照)に移動する(S1)。
アーム回転装置59が、第1グリッパ51を主軸位相E(図6参照)に割り出す(S2)。
【0039】
図6に示すように、中間アーム組立体50は、マガジンディスク21と主軸10との間の中間位置B(図1参照)から、主軸位置Cに移動する(S3)。すると、第1グリッパ51が、主軸10に装着されている第1工具12aを把持する。このとき、第1グリッパ51に設けられたキー57がキー溝13に挿入され、弾性部材56の弾性力により把持爪54が第1工具12aを把持する。
【0040】
ここで、中間位置Bは、中間アーム組立体50が待機する位置である。例えば、中間位置Bは、中間アーム組立体50が、シャッタ(不図示)の内側でシャッタに干渉しない位置である。また、主軸位置Cは、第1グリッパ51又は第2グリッパ52が主軸位相Eにあるときに、第1グリッパ51又は第2グリッパ52が工具12を主軸10との間で交換可能な中間アーム組立体50の位置である。このときの主軸10の位置が、主軸工具交換位置Dである。
ステップS2及びS3は、同時に実行されて良い。
【0041】
次に、図7に示すように、主軸10が第1工具12aをアンクランプする。そして、第1工具12aが主軸10から離間する位置まで、移動装置11によって、主軸10が上昇する(S4)。このとき、第1工具12aが主軸10から外れて、第1グリッパ51に渡される。
続いて、アーム回転装置59が、第2工具12bを把持した第2グリッパ52を主軸位相Eに割出す(S5)。図7では、上方から見て反時計回りに90度、第2グリッパ52が回転する。すると、第2工具12bが主軸10の軸線上で下方に位置する。
移動装置11によって、主軸10が下降して、第2工具12bをクランプする(S6)。
【0042】
次に、中間アーム組立体50がマガジン位置Aに移動する(S7)。中間アーム組立体50が移動を始めたときに、把持爪54がフランジによって押し開かれ、第2グリッパ52が第2工具12bを解放する。そして第2グリッパ52が空になる。
主軸10を回転させる(S16)。主軸10はワークを加工する(S17)。
【0043】
続いて、図8に示すように、アーム回転装置59が第1グリッパ51をマガジン位相Gに割出す(S8)。すると、第1工具12aが空の第1ポット30aの下方に、ポット30の軸線上に位置する。つまり、マガジン位相Gとは、中間アーム組立体50がマガジン位置Aにあるときに、第1グリッパ51又は第2グリッパ52に把持された工具12がポット30の中心軸39上に位置する、アーム53の位相である。
【0044】
ステップS7及びS8は、同時に実行されて良い。ここで、好ましくは、ステップS8が終了した後に、ステップS7が終了する。つまり、好ましくは、第1グリッパ51がマガジン位相Gに割り出された後に、中間アーム組立体50がマガジン位置Aに到達する。
【0045】
続いて、シリンダ41が伸びて、ポットリフタ40がポット30aを下降させる(S9)。このとき、引掛け部材42が下降し、爪47がつまみ34を押して、ポット30が受け渡し位置K(図1参照)まで下降する。すると、第1工具12aが第1ポット30aに収納される。
【0046】
次に、図9に示すように、アーム53が退避位置Fまで退避する(S10)。すると、第1グリッパ51は第1工具12aを解放する(S10)。ここで、退避位置Fは、マガジン20が旋回したときに、第1グリッパ51が、ポット30及びポット30に収納された工具12と干渉しない程度にマガジン20から離間した中間アーム組立体50の位置である。なお、退避位置Fは中間位置Bと同一の位置であっても良い。
【0047】
マガジン20は、第3工具12cが装着された第2ポット30bをポット工具交換位置Hに割出す(S11)。
アーム回転装置59が、第2グリッパ52をマガジン位相Gに割り出す(S12)。ステップS12は、ステップS11と同時に実行されて良い。
【0048】
続いて、中間アーム組立体50がマガジン位置Aに移動する(S13)。すると、第2グリッパ52が、第3工具12cを把持する。
続いて、シリンダ41が、ピストンロッド43を上昇させる(S14)。すると、爪47がつまみ34を引っ掛けて、第2ポット30bが上昇する。そして、第3工具12cが第2ポット30bから外れて、第2ポット30bが第3工具12cを第2グリッパ52に受け渡す。
【0049】
次に、中間アーム組立体50が中間位置Bに移動する(S15)。これにより、工具交換は終了する。工具交換が終了した時点で、第1グリッパ51は空となり、第2グリッパ52は、次に交換される第3工具12cを把持する。ステップS8~S15は、ステップS16、S17と並行して実行される。次に工具交換が行われるまで、中間アーム組立体50は中間位置Bで待機する。
【0050】
図10は、固定番地方式におけるステップS21~S24のフローチャートである。ステップS21~S24は、ステップS14とS15の間に挿入される。
ステップS14を実施した後に、アーム53は退避位置Fへ退避する(S21)。ポットリフタ40が、ポット30を下降させる(S22)。マガジン20が旋回して、第2工具12bに対応する第3ポット30cをポット工具交換位置Hに割出す(S23)。ポットリフタ40が、第3ポット30cを上昇させる(S24)。
【0051】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態のポットリフタ80のYZ軸面の断面図である。図11に示すように、本実施形態のポットリフタ80は、シリンダ81と、レバー82と、引掛け部材83と、直動ガイド89と、を有する。
【0052】
引掛け部材83は、前後方向に延びる平板状であり、爪47と、通過穴48と、トラニオン部84と、ガイドピン92と、を有する。爪47は、引掛け部材83の中央部下側に配置される。ガイドピン92は、引掛け部材83の両端部に設置される。
シリンダ81は、ロッド88を有する。シリンダ81は、例えば、マガジンディスク21の旋回軸上に配置される。シリンダ81は、ロッド88を上下方向に昇降する。
【0053】
レバー82は、支点87と、作用点85と、力点86と、を有する。支点87は、レバー82の中央部に位置する。作用点85は、レバー82のポット30側の第1端に位置する。力点86は、レバー82のシリンダ81側の第2端に位置する。支点87は、フレーム2に固定される。レバー82は、支点87を中心として回動する。作用点85には、トラニオン部84が回動可能に接続される。力点86には、ロッド88が回動可能に接続される。
【0054】
直動ガイド89は、ガイドプレート93と、ガイド溝94と、ガイドピン92と、を有する。ガイドプレート93は、逆U字状を成して、YZ方向に延びる。ガイドプレート93は、フレーム2に固定される。ガイド溝94は、ガイドプレート93の両端に配置され、上下方向に延びる。ガイド溝94は、ガイドプレート93を貫通しても良い。引掛け部材83に設けられたガイドピン92は、ガイド溝94を摺動する。直動ガイド89は、引掛け部材83が昇降するときに、引掛け部材83をガイドし、引掛け部材83の姿勢を水平方向に保つ。なお、直動ガイド89は、例えば、ボールスプラインや直線ガイド、ガイドブッシュとガイドピンとの組合せでも良い。
【0055】
ポットリフタ80によれば、ロッド88が昇降し、レバー82を介して、てこの原理で引掛け部材83を昇降させる。例えば、ロッド88が下降すると、ロッド88と接続された力点86が下降し、作用点85と接続された引掛け部材83が上昇する。これとは反対に、ロッド88が上昇すると、引掛け部材83が下降する。
【0056】
本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1 工作機械(立形工作機械)
2 フレーム
10 主軸
11 移動装置
12、12a、12b、12c 工具
20 マガジン
21 マガジンディスク
22 ポット保持穴
30 ポット
40 ポットリフタ
50 中間アーム組立体
51 第1グリッパ
52 第2グリッパ
59 アーム回転装置
60 直動ガイド
【要約】
【課題】工具交換装置を小型化する。
【解決手段】立形工作機械は、フレーム2と、主軸10と、主軸10を移動させる移動装置11と、回転するポット保持体21に設置された昇降する複数のポット30を有するマガジン20と、ポット工具交換位置Hにあるポット30を昇降するポットリフタ40と、マガジン位置Aと、中間位置Bと、主軸位置Cと、の間を往復する中間アーム組立体50と、を有する。中間アーム組立体50は、第1グリッパ51及び第2グリッパ52を有するアーム53と、第1グリッパ51と第2グリッパ52のいずれかをポット位相と主軸位相のいずれかに割り出すアーム回転装置59とを有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11