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特許7016955環境応力亀裂抵抗を有するポリエチレン組成物
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  • 特許-環境応力亀裂抵抗を有するポリエチレン組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】環境応力亀裂抵抗を有するポリエチレン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/02 20060101AFI20220131BHJP
【FI】
C08F10/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020530681
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 EP2018084550
(87)【国際公開番号】W WO2019121234
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】17207910.5
(32)【優先日】2017-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500289758
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ダイアナ・デッチュ
(72)【発明者】
【氏名】バーンド・ローター・マークジンク
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルドゥス・マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ・シュラー
(72)【発明者】
【氏名】クラウディオ・フィブラ
(72)【発明者】
【氏名】レインナー・ザッテル
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ビッソン
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/206959(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/206958(WO,A1)
【文献】特表2015-532348(JP,A)
【文献】特表2015-532349(JP,A)
【文献】特表2017-533990(JP,A)
【文献】特表2007-514813(JP,A)
【文献】特表2006-528271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のA)およびB)
A) 密度が0.960g/cm 以上であり、ISO 1133にしたがって2.16kgの荷重下で190℃で測定した溶融流れ指数MIEが2~20g/10分である、30~70重量%のエチレン単独重合体または共重合体;
B) A)のMIE値よりも低いMIE値を有する30~70重量%のエチレン共重合体
を含み、下記の特徴を有するポリエチレン組成物:
1) 23℃でISO 1183にしたがって測定した、0.940~0.955g/c 密度;
2) 12~40のMIF/MIP比、ここでMIFは21.60kgの荷重下の190℃での溶融流れ指数であり、MIPは5kgの荷重下の190℃での溶融流れ指数であり、両方ともISO 1133-1にしたがって測定したもの;
3) 500,000~3,500,000g/molのMz、ここでMzはGPCで測定したz-平均分子量;
4) 80,000~300,000Pa・sのη0.02;ここでη0.02は190℃の温度でプレート-プレート回転型レオメータでの動的振動剪断(dynamic oscillatory shear)によって測定される、0.02rad/sの角振動数における複合剪断粘度;
5) ~10のHMWcopo指数;
前記HMWcopoの指数は下記の式にしたがって測定される:
HMWcopo = (η0.02×tmaxDSC)/(10
前記式において、η0.02は0.02rad/sの角周波数の印加による動的振動剪断モード(dynamic oscillatory shear mode)で平行板レオメータで190℃の温度で測定された溶融物の複合剪断粘度(Pas)であり;tmaxDSCは示差走査熱量計装置において等温モードで測定した静止状態下で124℃の温度で結晶化の熱流の最大値に達するのに必要な時間(分)である;
6) 6.4未満のMz/Mw×LCBI、LCBIは、1,000,000g/molのモル重量でGPC-MALLSで測定した測定平均二乗回転半径R対、同一の分子量を有する線形PEに対する平均二乗回転半径の比である。
【請求項2】
1種以上のエチレン共重合体からなるか、またはこれを含む、請求項1に記載のポリエチレン組成物。
【請求項3】
下記の追加的な特徴を有する、請求項1に記載のポリエチレン組成物:
- MIFが4~15g/10分でる。
【請求項4】
下記の追加的な特徴を有する、請求項1に記載のポリエチレン組成物:
- 1000とLCBIで割ったη 0.02 である、比(η 0.02 /1000)/LCBIが、150以上である。
【請求項5】
下記の追加的な特徴を有する、請求項1に記載のポリエチレン組成物:
- 共単量体含量が組成物の総重量を基準に2重量%以下である。
【請求項6】
下記の追加的な特徴を有する、請求項1に記載のポリエチレン組成物:
- LCBIが0.65以上である。
【請求項7】
請求項1に記載のポリエチレン組成物を含む製造品。
【請求項8】
ブロー成形中空物品の形態の請求項7に記載の製造品。
【請求項9】
すべての重合ステップをMgCl上に担持されたチーグラー-ナッタ重合触媒の存在下で行う、請求項1に記載のポリエチレン組成物の製造方法。
【請求項10】
下記のステップを任意の相互順序で含む、請求項9に記載の方法:
a) 水素の存在下で気相反応器においてエチレンを任意選択的に1種以上の共単量体とともに重合するステップ;
b) ステップa)より少ない量の水素の存在下で、別の気相反応器においてエチレンを1種以上の共単量体と共重合するステップ;
ここで、前記気相反応器のうち少なくとも1つにおいて、成長する重合体粒子は高速流動化または輸送条件下で、第1重合ゾーンを通って上方に流れ、前記上昇管を離れた後、第2重合ゾーンに入り、第2重合ゾーンを通ってそれらは重力の作用下で下方に流れ、前記第2重合ゾーンを離れた後、前記第1重合ゾーンに再び投入されることによって前記2つの重合ゾーンの間に重合体の循環を確立する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、様々な種類の成形品の製造に適したポリエチレン組成物に関する。具体的には、向上した環境応力亀裂抵抗(FNCT)及び衝撃抵抗、最終製品の高品質の表面及び寸法安定性により、本組成物はドラム、容器、ガソリン用貯蔵タンク等の押出ブロー成形中空物品の作製に適する。
【背景技術】
【0002】
本発明のポリエチレン組成物は、同様の用途の従来のポリエチレン組成物、特に米国特許第6,201,078号及び国際公開公報WO2014/064062号に開示された組成物に比べて機械的性質と加工性に優れたバランスを提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は以下の特徴を有するポリエチレン組成物を提供する。
1) 23℃でISO 1183にしたがって測定した、0.940~0.955g/cm、好ましくは0.940~0.951g/cm、特に0.945~0.952g/cm、または0.946~0.952g/cm、または0.945~0.951g/cmまたは0.946~0.951g/cmの密度;
2) 12~40、特に15~38または17~35のMIF/MIP比、ここでMIFは21.60kgの荷重下の190℃での溶融流れ指数であり、MIPは5kgの荷重下の190℃での溶融流れ指数であり、両方ともISO 1133-1にしたがって測定したもの;
3) 500,000~3,500,000g/mol、好ましくは800,000~3,300,000g/mol、特に800,000~3,000,000g/molのMz、ここでMzはGPCで測定したz-平均分子量;
4) 80,000~300,000Pa.s、または85,000~250,000Pa.sのη0.02;ここでη0.02は190℃の温度でプレート-プレート回転型レオメータでの動的振動剪断(dynamic oscillatory shear)によって測定される、0.02rad/sの角振動数における複合剪断粘度;
5) 1~15、好ましくは1~14、特に1~10または1~9または1~8のHMWcopo指数;
HMWcopo指数は下記の式にしたがって測定される:
HMWcopo = (η0.02 x tmaxDSC)/(10^5)
前記式において、η0.02は0.02rad/sの角周波数の印加による動的振動剪断モード(dynamic oscillatory shear mode)で平行板(またはいわゆるプレート-プレート)レオメータで190℃の温度で測定された溶融物の複合剪断粘度(Pa.s)であり;tmaxDSCは示差走査熱量計(DSC)装置において等温モードで測定した静止状態下で124℃の温度で結晶化の熱流の最大値(mW)に達するのに必要な時間(分)(結晶化のハーフタイム(t1/2)に該当する最大結晶化速度が達成される時間)である;
6) 6.4未満のMz/Mw*LCBI;
LCBI(長鎖分岐指数)は、1,000,000g/molのモル重量でGPC-MALLSで測定した測定平均二乗回転半径R対、同一の分子量を有する線形PEに対する平均二乗回転半径の比である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本発明の上記のおよび他の特徴、様態および利点は下記の説明、添付の特許請求の範囲および添付の図面を参照してより良好に理解されるであろう。
【0005】
図1】図面は本明細書に開示されているエチレン重合方法の様々な実施形態によって使用するのに適した2つの直列連結気相反応器において、本明細書に開示されたポリエチレン組成物の様々な実施形態を生産する工程を簡略化したフローチャートの例示的な実施形態である。
【0006】
様々な実施形態は図面に示した配置および手段に限定されるものではないことを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
「ポリエチレン組成物」という表現は、代替例として、単一エチレン重合体およびエチレン重合体組成物、特に好ましくは分子量が異なる2種以上のエチレン重合体成分で構成された組成物の両方を含むことであり、また、このような組成物は関連分野で「バイモーダル(bimodal)」または「マルチモーダル(multimodal)」重合体と指称される。
【0008】
一般的に、本発明のポリエチレン組成物は1種以上のエチレン共重合体からなるか、またはこれを含む。
【0009】
上記の定義された特徴1)~6)を含む本明細書で定義するすべての特徴は前記エチレン重合体またはエチレン重合体組成物を指すものである。当該技術分野において通常適用される添加剤のような他の成分を添加することにより、前記特徴のうち、1つ以上を変形させることができる。
【0010】
MIF/MIP比は分子量分布の流動学的測定値を提供する。
【0011】
分子量分布のまた別の測定値はM/M比によって提供され、ここでMは重量平均分子量であり、Mは数平均分子量であり、両方とも実施例に説明されているようにGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって測定される。
【0012】
本発明のポリエチレン組成物のM/M値は好ましくは15~40、特に20~35の範囲である。
【0013】
値は、好ましくは150,000g/mol~500,000g/mol、特に200,000g/mol~450,000g/molである。
【0014】
Mz/MwにLCBIの掛けのMz/Mw*LCBIの好ましい値は、6.0以下、特に5.9以下である。
【0015】
Mz/Mw*LCBIの好ましい範囲は:
【0016】
-3.2~6.4未満;または
【0017】
-3.2~6.0;または
【0018】
-3.2~5.9;または
【0019】
-3.5~6.4未満;または
【0020】
-3.5~6.0;または
【0021】
-3.5~5.9。
【0022】
さらに、本発明のポリエチレン組成物は以下の追加的な特徴のうち少なくとも1つを有することが好ましい。
-MIFが4~15g/10分、好ましくは5~12g/10分であり;
-比(η0.02/1000)/LCBIは1000とLCBIで割ったη0.02であって、150以上、または190超過、特に150~300、または190~300、または190~250であり;
-共単量体含量が組成物の総重量を基準にして2重量%以下、特に0.5~2重量%であり;
-LCBIが0.65以上、好ましくは0.70以上、特に0.72以上であり、
【0023】
LCBI値の好ましい範囲は以下の通りである。
【0024】
-0.65~0.90;または
【0025】
-0.65~0.85;または
【0026】
-0.70~0.90;または
【0027】
-0.70~0.85;または
【0028】
-0.70~0.82;または
【0029】
-0.72~0.90;または
【0030】
-0.72~0.85;または
【0031】
-0.72~0.82。
【0032】
エチレン共重合体に存在する共単量体または共単量体らは一般的に一般式CH2=CHRを有するオレフィンから選択され、ここでRは1~10個の炭素原子を有する線状もしくは分枝状のアルキルラジカルである。
【0033】
具体例としては、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1およびデセン-1である。特に好ましい共単量体はヘキセン-1である。
【0034】
特に、好ましい実施形態において、本発明の組成物は下記のA)およびB)を含む:
A) 密度が0.960g/cm以上であり、ISO 1133にしたがって2.16kgの荷重下で190℃で測定した溶融流れ指数MIEが2g/10分以上、好ましくは5g/10分以上である30~70重量%、好ましくは40~60重量%のエチレン単独重合体または共重合体(単独重合体が好ましい);
B) A)のMIE値よりも低いMIE値、好ましくは0.5g/10分未満のMIE値を有する30~70重量%、好ましくは40~60重量%のエチレン共重合体。
【0035】
前記百分率の量は、A)+B)の総重量に対して与えられる。
【0036】
成分A)の具体的なMIE範囲は:
【0037】
-2~20g/10分;または
【0038】
-3~20g/10分;または
【0039】
-2~15g/10分;または
【0040】
-3~15g/10分である。
【0041】
前述のように、本発明のポリエチレン組成物はブロー成形品を製造するのに有利に使用することができる。
【0042】
実際に、好ましくは、下記の特性らを特徴とする:
- FNCT 4 MPa/80℃で測定した500時間超過、特に800時間超過の環境応力亀裂抵抗;
- 140%超過のスウェル比;
- -30℃における80kJ/m以上のノッチ引張衝撃AZK;
- 700μm超過のゲル直径を有するゲルが実質的に存在しない。
【0043】
試験方法の詳細は実施例に記載されている。
【0044】
ブロー成形工程は一般的に最初に180~250℃範囲の温度でポリエチレン組成物を押出機で可塑化させた後、それをダイを通してブロー金型に押出し、そこで冷却することによって行われる。
【0045】
用いられる重合方法と触媒の種類には原則的に制限がないが、本発明のポリエチレン組成物はチーグラーナッタ触媒の存在下で気相重合方法によって製造することができることが明らかになった。
【0046】
チーグラー-ナッタ触媒は元素周期表の1、2または13族の有機金属化合物と元素周期表の4~10族の遷移金属化合物(新表記法による)との反応生成物を含む。特に、遷移金属化合物はTi、V、Zr、CrおよびHfの化合物から選択することができ、好ましくはMgCl上に担持される。
【0047】
好ましい有機金属化合物は有機Al化合物である。
【0048】
したがって、好ましい実施形態において、本発明のポリエチレン組成物はチーグラー-ナッタ重合触媒、好ましくは下記A)~C)の反応生成物を含むチーグラー-ナッタ触媒を用いることによって得られる。
A) Ti,Mg,塩素および1つ以上の内部電子供与体化合物EDを含む固体触媒成分;
B) 有機Al化合物;および任意選択的に
C) 外部電子供与体化合物EDext
【0049】
特に、固体触媒成分A)は、脂肪族モノカルボン酸(EAA)のエステルから選択された1つの内部電子供与体ED及び環状エーテル(CE)から選択された別の内部供与体EDを、EAA/CEモル比が0.02~20未満の範囲となる量で含む。
【0050】
好ましくは、EAA/CEモル比は0.2~16、より好ましくは0.5~10、の範囲である。
【0051】
内部電子供与体化合物(EAA)は、C-C10、好ましくはC-C、脂肪族モノカルボン酸のC-C10、好ましくはC-Cアルキルエステルから選択するのが好ましい。これらの中でも、エチルアセテートが特に好ましい。
【0052】
(CE)内部供与体は、3~5個の炭素原子を有する環状エーテルから選択するのが好ましく、これらの中でも、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン及びジオキサンが最も好ましく、テトラヒドロフランが特に好ましい。
【0053】
(EAA+CE)/Tiのモル比は、好ましくは1.5超過であり、より好ましくは2.0~10、特に2.5~8の範囲である。
【0054】
(EAA)の含量は、典型的には、固体触媒成分の総重量に対して1~30重量%、より好ましくは2~20重量%の範囲である。(CE)の含量は、典型的には、固体触媒成分の総重量に対して1~20重量%、より好ましくは2~10重量%の範囲である。
【0055】
Mg/Tiモル比は、好ましくは5~50、より好ましくは10~40の範囲である。
【0056】
上記に開示したように、触媒成分は、電子供与体化合物の以外にTi、Mg及び塩素を含む。Ti原子は、好ましくは少なくともTi-ハロゲン結合を含有するTi化合物から誘導され、Mg原子は、好ましくは二塩化マグネシウムから誘導される。望ましいチタニウム化合物はテトラハライドまたは式TiX(OR4-nの化合物であり、式中、0<n<3であり、Xはハロゲン、好ましくは塩素であり、RはC-C10炭化水素基である。四塩化チタニウムが好ましいチタニウム化合物である。
【0057】
本発明の触媒成分は、異なる方法に従って製造され得る。
【0058】
1つの好ましい方法は、以下のステップを含む:(a)R基がC-C20炭化水素基であり、XがハロゲンであるMgX(ROH)付加物を、Ti/Mgモル比が3より大きい量で、少なくともTi-Cl結合を有するTi化合物を含む液体媒体と接触させ、固体中間体を形成するステップ;
【0059】
(b)前述のような内部供与体化合物(EAA)及び(CE)をステップ(a)から来る固体中間生成物と接触させた後、得られた生成物を洗浄するステップ。
【0060】
好ましい出発MgX(ROH)付加物は、R基がC-C10アルキル基であり、Xが塩素であり、mが0.5~4であり、より好ましくは0.5~2であるものなどである。このような類型の付加物は一般的に付加物と非混和性である不活性炭化水素の存在下でアルコールと塩化マグネシウムとを混合し、付加物の溶融点(100~130℃)にて攪拌条件下で操作することで得られる。次いで、エマルジョンが急速にクエンチングされ、それによって付加物が球状粒子の形態で固化されるようにする。これら球状付加物を製造する代表的な方法は、例えば米国特許第4,469,648号、米国特許第4,399,054号および国際公開公報WO98/44009号に報告されている球状化に使用可能な別の方法としては、例えば米国特許第5,100,849号および第4,829,034号に記述された噴霧冷却方法が挙げられる。
【0061】
MgCl(EtOH)付加物が特に興味深く、ここでmは0.15~1.5であり、粒径が10~100μmの範囲であり、これはより高いアルコール含量を有する付加物を、アルコール含量が上記の値に減少されるまで50~150℃の間に含まれる温度で窒素流動中で行われる熱脱アルコール化工程を受けさせることで得られる。このような類型の工程はEP395083に記述されている。
【0062】
また、脱アルコール化は付加物をアルコール基と反応可能な化合物と接触させることで化学的に行うことができる。
【0063】
一般的にこれらの脱アルコール化された付加物はまた半径1μm以下の孔による多孔性(水銀法によって測定)が0.15~2.5cm/g、好ましくは0.25~1.5cm/gの範囲であることを特徴とする。
【0064】
Ti化合物との反応は付加物をTiCl(一般的に冷却された状態)に懸濁することで行うことができる。引き続き、混合物は80~130℃の範囲の温度まで加熱され、その温度で0.5~2時間保持される。チタニウム化合物を用いた処理は1回以上行うことができる。好ましくは2回行われる。工程の終了時、中間固体は通常の方法(例えば、液体の沈降および除去、濾過、および遠心分離)を通じて懸濁液の分離によって回収され、溶媒を用いて洗浄され得る。洗浄は一般的に不活性炭化水素溶液で行うが、ハロゲン化炭化水素等のようなより極性の溶媒(例えば、誘電率がより高い溶媒)を用いることも可能である。
【0065】
上述のように、中間固体は、ステップ(b)において、0.02~20未満の範囲のEAA/CEモル比が満たされるように固体上に一定量の供与体を固定するなどの条件下で内部供与体化合物と接触する。
【0066】
厳格に要求されるものではないが、接触は一般的に液体炭化水素のような液体媒質で行われる。接触が行われる温度は試薬の性質によって変わり得る。一般的に、温度は-10~150℃、好ましくは0~120℃の範囲に含まれる。任意の特定試薬の分解または劣化を引き起こす温度は、たとえこの温度が一般的に適切な範囲内に含まれるとしても、回避すべきであるのが明白である。また、処理時間は試薬の性質、温度、濃度などのような他の条件によって変わり得る。一般的に、この接触ステップは10分~10時間、より頻繁には0.5~5時間持続できる。必要に応じ、最終供与体の含量をさらに増加させるために、このステップが1回以上繰り返されてもよい。
【0067】
このステップの終了時、固体は通常の方法(例えば、液体の沈降および除去、濾過、および遠心分離)を通じて懸濁液の分離によって回収され、溶媒を用いて洗浄され得る。洗浄は通常不活性炭化水素液体で行われるが、ハロゲン化炭化水素または含酸素炭化水素のようなより極性の溶媒(例えば、より高い誘電率を有する)を用いることも可能である。
【0068】
特定の実施形態によって、ステップ(b)の以後に、ステップ(b)から来る固体触媒成分を70~150℃の温度で行われる熱処理に適用することによってさらなるステップ(c)が行われることが特に好ましい。
【0069】
方法のステップ(c)において、ステップ(b)から回収された固体生成物は、70~150℃、好ましくは80℃~130℃、より好ましくは85~100℃の範囲の温度で行われる熱処理を経る。
【0070】
熱処理は、いくつかの方法で行われ得る。これらのうちの1つによって、ステップ(b)から来る固体は、炭化水素のような不活性希釈剤に懸濁し、次いでシステムを撹拌下で維持しながら加熱させる。
【0071】
代替的技術によって、固体は、ジャケット付き加熱壁を有する装置にこれを挿入することによって乾燥状態で加熱することができる。前記装置内に配置された機械的攪拌機によって撹拌を提供することができるが、回転装置を使用して撹拌を起こさせることが好ましい。
【0072】
さらに他の実施形態によれば、ステップ(b)から来る固体は、それを窒素のような熱い不活性気体の流れに適用させることによって、好ましくは流動化条件下で固体を維持させることによって加熱することができる。
【0073】
また加熱時間は固定されていないが、最高到達温度のような他の条件によって変わり得る。それは一般に0.1~10時間、より具体的には0.5~6時間の範囲である。通常、温度が高いほど加熱時間は短くなり得、温度が低いほどより長い反応時間を必要とし得る。
【0074】
記述されたような工程において、それぞれのステップ(b)~(c)は、以前のステップから来る固体生成物を分離する必要なしに、以前のステップの直後に行われ得る。しかしながら、必要に応じて、1つのステップから来る固体生成物は、後続ステップを行う前に分離させて洗浄することができる。
【0075】
特定の実施形態によって、工程の好ましい変形例は、ステップ(b)を行う前にステップ(a)から来る固体を予備重合ステップ(a2)に適用させることを含む。
【0076】
予備重合は、任意のオレフィンCH=CHR(ここで、RはHまたはC-C10炭化水素基である)で行うことができる。特に、エチレンもしくはプロピレンまたはこれらの混合物を1つ以上のα-オレフィンと予備重合させ、前記混合物はα-オレフィンの20モル%以下を含有し、固体中間体1グラム当たり約0.1g~約1000g、好ましくは固体中間体1グラム当たり約0.5~約500g、より好ましくは固体中間体1グラム当たり0.5~50g、特に固体中間体1グラム当たり0.5~5gの量の重合体を形成するのが好ましい。予備重合ステップは液相または気相で0~80℃、好ましくは5~70℃の温度で行うことができる。中間体1グラム当たり0.5~20gの範囲の量の重合体を製造するためにエチレンまたはプロピレンによる中間体の予備重合が特に好ましい。予備重合は有機アルミニウム化合物のような適切な助触媒を使用して行われる。固体中間体がプロピレンで予備重合されると、予備重合は、好ましくは一般式R Si(OR(ここで、a及びbは0~2の整数であり、cは1~3の整数であり、合計(a+b+c)は0であり;R、R、及びRは、任意選択的にヘテロ原子を含有する1~18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリールラジカルである)のケイ素化合物からなる群から選択される1つ以上の外部供与体の存在下で行われることが特に好ましい。aが1であり、bが1であり、cが2であり、R及びRのうちの少なくとも1つが任意選択的にヘテロ原子を含有する3~10個の炭素原子を有する分岐型アルキル、シクロアルキルまたはアリール基から選択され、RがC-C10アルキル基、特にメチルであるシリコン化合物が特に好ましい。このような好ましいケイ素化合物の例は、メチルシクロヘキシルジメトキシシラン(C供与体)、ジフェニルジメトキシシラン、メチル-t-ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン(D供与体)およびジイソプロピルジメトキシシランである。
【0077】
上述の工程すべては、実質的に球状の形態及び5~150μm、好ましくは10~100μmを含む平均直径を有する固体触媒成分の粒子の製造に適している。実質的に球状の形態を有する粒子としては、より大きい軸とより小さい軸との間の比が1.5以下、好ましくは1.3未満のものを意味する。
【0078】
一般に、上記の方法に従って得られる固体触媒成分は、一般に10~200m/g、好ましくは20~80m/gの表面積(B.E.T.方法による)及び0.15cm/g超過、好ましくは0.2~0.6cm/gの総多孔性(B.E.T.方法による)を示す。10.000Åまでの半径を有する気孔による多孔性(Hg方法)は、一般に0.25~1cm/g、好ましくは0.35~0.8cm/gの範囲である。
【0079】
前述のように、本開示の触媒成分は、Al-アルキル化合物との反応によって重合触媒を形成する。特に、Al-トリアルキル化合物、例えばAl-トリメチル、Al-トリエチル、Al-トリ-n-ブチル、Al-トリイソブチルが好ましい。Al/Ti比は、1より大きく、一般に5~800の間に含まれる。
【0080】
また、アルキルアルミニウムハライド及び特にアルキルアルミニウムクロライド、例えば、ジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)、ジイソブチルアルミニウムクロライド、Al-セスキクロライド及びジメチルアルミニウムクロライド(DMAC)が使用され得る。トリアルキルアルミニウム化合物とアルキルアルミニウムハライドとの混合物を使用することも可能であり、ある場合にはこのような使用が好ましい。それらの中でも混合物TEAL/DEAC及びTIBA/DEACが特に好ましい。
【0081】
任意選択的に、重合中に外部電子供与体(EDext)を使用することができる。外部電子供与体化合物は、固体触媒成分で用いられる内部供与体と同一であっても異っていてもよい。好ましくは、エーテル、エステル、アミン、ケトン、ニトリル、シランおよびこれらの混合物からなる群より選択される。特に、有利には、C-C20脂肪族エーテルから、特に、好ましくは炭素数3~5の環状エーテルから、例えばテトラヒドロフランおよびジオキサンから選択できる。
【0082】
アルミニウムアルキル助触媒(B)及び成分(C)としての外部電子供与体(EDext)の可能な使用に加えて、活性増強剤としてハロゲン化化合物(D)を使用することができる。前記化合物は、好ましくはモノ-またはジハロゲン化炭化水素である。1つの好ましい実施形態において、ハロゲンが2次炭素原子に連結されたモノハロゲン化炭化水素の中から選択される。ハロゲンは、好ましくは塩化物及び臭化物の中から選択される。
【0083】
(D)に対する非限定的な例示的化合物は、プロピルクロライド、i-プロピルクロライド、ブチルクロライド、s-ブチルクロライド、t-ブチルクロライド2-クロロブタン、シクロペンチルクロライド、シクロヘキシルクロライド、1,2-ジクロロエタン、1,6-ジクロロヘキサン、プロピルブロマイド、i-プロピルブロマイド、ブチルブロマイド、s-ブチルブロマイド、t-ブチルブロマイド、i-ブチルブロマイド、i-ペンチルブロマイド及びt-ペンチルブロマイドである。これらの中で、i-プロピルクロライド、2-クロロブタン、シクロペンチルクロライド、シクロヘキシルクロライド、1,4-ジクロロブタン及び2-ブロモプロパンが特に好ましい。
【0084】
別の実施形態によって、化合物は、ハロゲン化アルコール、2,2,2-トリクロロエタノール、エチルトリクロロアセテート、ブチルペルクロロクロトネート、2-クロロプロピオネート及び2-クロロ-テトラヒドロフランのようなエステルまたはエーテルの中から選択され得る。
【0085】
活性増強剤は、(B)/(D)モル比が3超過であり、好ましくは5~50の範囲、より好ましくは10~40の範囲となるような量で使用され得る。
【0086】
上述の成分(A)~(D)は、これらの活性を利用することができる重合反応条件下で反応器内に別々に供給することができる。しかしながら、これは、特に有利な実施形態において、任意選択的に少量のオレフィンの存在下で、1分~10時間の範囲、好ましくは2~7時間の範囲の期間にわたって上記成分の予備接触を構成する。予備接触は、0~90℃の範囲、好ましくは20~70℃の範囲の温度で液体希釈剤の中で行うことができる。
【0087】
1つ以上のアルキルアルミニウム化合物またはそれらの混合物が予備接触に使用され得る。1つ超過のアルキルアルミニウム化合物が予備接触に使用される場合、これらは一緒に使用され得るか、または予備接触タンクに順次に添加され得る。予備接触が行われたとしても、このステップでアルミニウムアルキル化合物の全量を添加する必要はない。それの一部を予備接触に添加することができる一方、残りの一定分量を重合反応器に供給することができる。さらに、1つ超過のアルミニウムアルキル化合物を使用する場合、予備接触工程において1つ以上を使用し、また反応器に供給される他の(複数)を使用することもできる。
【0088】
好ましい実施形態のうちの1つにおいて、予備接触は、先ず、触媒成分をトリ-n-ヘキシルアルミニウム(THA)のようなアルミニウムトリアルキルと接触させた後、別のアルミニウムアルキル化合物、好ましくはジエチルアルミニウムクロライドを混合物に添加し、最終的に第3成分として別のトリアルキルアルミニウム、好ましくはトリエチルアルミニウムを予備接触混合物に添加する。この方法の変形例によって、最終アルミニウムトリアルキルが重合反応器に添加される。
【0089】
アルミニウムアルキル化合物の総使用量は広い範囲内で変えられ得るが、好ましくは固体触媒成分中の内部供与体1モル当たり2~10モルの範囲である。
【0090】
前述の重合触媒を使用することによって本発明のポリエチレン組成物は下記のステップを任意の相互順序で含む方法で製造され得ることが明らかになった:
a) 水素の存在下で気相反応器においてエチレンを任意選択的に1種以上の共単量体とともに重合するステップ;
b) ステップa)より少ない量の水素の存在下で、別の気相反応器においてエチレンを1種以上の共単量体と共重合するステップ;
ここで、前記気相反応器のうち少なくとも1つにおいて、成長する重合体粒子が高速流動化または輸送条件下で、第1重合ゾーン(上昇管(riser))を通って上方に流れ、前記上昇管を離れた後、第2重合ゾーン(下降管(downdomer))に入り、前記第2重合ゾーンを通ってそれらは重力の作用下で下方に流れ、前記下降管を離れた後、前記上昇管内に再び投入されることによって前記2つの重合ゾーンの間に重合体の循環を確立する。
【0091】
第1重合ゾーン(上昇管)において、高速流動条件は1つ以上のオレフィン(エチレンおよび共単量体)を含むガス混合物を重合体粒子の輸送速度よりも速い速度で供給することにより確立される。前記反応ガス混合物の速度は、好ましくは0.5~15m/s、より好ましくは0.8~5m/sである。「搬送速度」および「高速流動条件」という用語は、当該分野において周知であり、その定義については、例えば左記を参照されたい:「D. Geldart, Gas Fluidisation Technology, page 155 et seq., J. Wiley & Sons Ltd., 1986」。
【0092】
第2重合ゾーン(下降管)において、重合体粒子は、高密度化形態で重力の作用下で流れ、その結果、固体の密度が高い値(反応器の体積当たりの重合体の質量)に達し、これは重合体のバルク密度に近接する。
【0093】
言い換えれば、重合体がプラグ流れ(充填流れモード)で下降管を通って垂直下向して流れ、その結果、重合体粒子の間に少量のガスのみが飛沫同伴(entrain)される。
【0094】
このような方法により、ステップb)から得られるエチレン共重合体よりも分子量が低いエチレン重合体をステップa)から得ることができる。
【0095】
好ましくは、比較的低分子量のエチレン共重合体を製造するためのエチレンの重合(ステップa)は、比較的高分子量のエチレン共重合体を製造するためのエチレンの共重合(ステップb)の上流で行われる。この目標達成のために、ステップa)からエチレン、水素、任意選択的には共単量体および不活性ガスを含むガス混合物を第1気相反応器、好ましくは気相流動床反応器に供給する。重合は前述のチーグラー-ナッタ触媒の存在下で行われる。
【0096】
水素の供給量は特定の触媒の使用可否によって変化し、いかなる場合でもステップa)で得られたエチレン重合体の溶融流れ指数MIEは5g/10分以上であることが適している。上記範囲のMIEを得るために、ステップa)で水素/エチレンのモル比は0.8~3であり、エチレン単量体の量は重合反応器に存在するガスの総体積を基準に2~20体積%、好ましくは5~15体積%である。供給混合物の残りの部分は、存在する場合、不活性ガスおよび1種以上の共単量体で構成される。重合反応によって発生された熱を消散させるのに必要な不活性ガスは窒素または飽和炭化水素から便利に選択され、最も好ましいものはプロパンである。
【0097】
ステップa)において、反応器内の操作温度は50~120℃の範囲から選択され、好ましくは65~100℃の範囲から選択され、操作圧力は0.5~10MPa、好ましくは2.0~3.5MPaである。
【0098】
好ましい実施形態において、ステップa)で得られたエチレン重合体は全方法、すなわち直列連結された第1および第2反応器で生成されたエチレン重合体の総重量の30~70%を占める。
【0099】
次いで、ステップa)から出たエチレン重合体と同伴ガスは第1重合反応器から出たガス混合物がステップb)の反応器(第2気相重合反応器)に導入されることを防止するために固体/ガス分離ステップが行われる。前記ガス混合物は第1重合反応器に再循環され、分離されたエチレン重合体はステップb)の反応器に供給される。第2反応器に重合体を導入する適切な供給点は固体濃度が特に低い下降管と上昇管との連結部位に位置するため、流動条件に悪影響を与えない。
【0100】
ステップb)の操作温度は65~95℃の範囲であり、圧力は1.5~4.0MPaの範囲である。第2気相反応器はエチレンと1種以上の共単量体とを共重合して相対的に高分子量のエチレン共重合体を生成することを目的とする。さらに、最終エチレン重合体の分子量分布を広げるために、上昇管と下降管内で単量体および水素濃度の異なる条件を確立することによってステップb)の反応器を便利に操作することができる。
【0101】
上記の目的のために、ステップb)で重合体粒子を同伴し、かつ上昇管から出たガス混合物が下降管に進入することを部分的にまたは全体的に防止するので、2つの異なるガス組成ゾーンを得る。これは下降管の適切な地点、好ましくはその上部に位置するラインを通じて下降管の内部にガスおよび/または液体混合物を供給することにより達成できる。前記ガス及び/または液体混合物は、上昇管内にあるガス混合物とは異なる適切な組成を有するべきである。前記ガス及び/または液体混合物は、ポリマー粒子の流れに対して向流のガスの上向き流れが、特にその上部で発生し、上昇管から来るポリマー粒子と同伴されるガス混合物に対するバリアとして作用するように調整することができる。特に、水素含有量が低い混合物を供給して下降管内の高分子量重合体の画分を生成することが有利である。ステップb)の下降管に1種以上の共単量体を任意選択的にエチレン、プロパンまたは他の不活性ガスとともに供給してもよい。
【0102】
ステップb)の下降管における水素/エチレンのモル比は0.005~0.2の範囲であり、下降管内に存在するガスの総体積を基準にしたとき、エチレン濃度は0.5~15体積%、好ましくは0.5~10体積%であり、共単量体濃度は0.1~1.5体積%である。残りはプロパンまたは類似の不活性ガスである。下降管内に存在する水素のモル濃度が極めて低いため、本発明の方法を行うことにより相対的に多量の共単量体を高分子量のポリエチレン画分に結合させることが可能になる。
【0103】
下降管から出た重合体粒子はステップb)の上昇管に再導入される。
【0104】
重合体粒子が引き続き反応し、共単量体はそれ以上上昇管に供給されないため、上記共単量体の濃度は前記上昇管に存在するガスの総体積を基準として0.1~1.2体積%にまで低下する。実際には、最終ポリエチレンの密度が所望の値になるように共単量体の含有量を調整する。ステップb)の上昇管において、水素/エチレンのモル比は0.01~0.5の範囲であり、エチレン濃度は上昇管に存在するガスの総体積を基準として5~20体積%の範囲である。残りはプロパンまたはそれ以外の不活性ガスである。
【0105】
上述の重合方法に関するさらなる詳細はWO2005/019280で提供される。
【実施例
【0106】
本明細書において提供されるような様々な実施形態、組成物および方法の実施及び利点は、以下の実施例で説明する。これら実施例は、単に例示的なものに過ぎず、いかなる形においても付属する請求の範囲を限定することを意図しない。
【0107】
以下の分析方法は、重合体組成物を特性化するのに使用される。
【0108】
密度
23℃でISO 1183にしたがって測定した。
【0109】
複合剪断粘度η 0.02 (eta(0.02))
下記のように0.02rad/sの角周波数および190℃で測定した。
検体を200℃および200バール下で4分間1mm厚のプレートに溶融圧縮した。直径25mmのディスク標本がスタンピングされ、190℃で予熱したレオメータに挿入した。市販されている任意の回転型レオメータを用いて測定を行うことができる。ここでプレート-プレートジオメトリが備えられたAnton Paar MCR 300を用いた。いわゆる振動数掃引(frequency-sweep)を5%の一定する歪み振幅下でT=190℃で行い(測定温度で検体を4分間アニーリングした後)、628~0.02rad/sの励起振動数ωの範囲で物質の応力反応の測定および分析を行った。標準化された基本ソフトウェアを用いて流動学的特性、すなわち貯蔵弾性率G′、損失弾性率G″、位相遅れδ(=arctan(G″/G′))および複素粘度η*を、適用された振動数の関数として計算し、すなわち、η*(ω)=[G′(ω)+G″(ω)1/2/ωである。0.02rad/sの適用された振動数ωでの後者の値はη0.02である。
【0110】
HMWcopo指数
重合体の結晶化ポテンシャルおよび加工性ポテンシャルを定量化するために、HMWcopo(高分子量共重合体)指数が使用されるが、下記の式によって定義される:
HMWcopo=(η0.02xtmaxDSC)/(10^5)
【0111】
この指数は重合体の容易な加工(低い溶融粘度)ポテンシャルと急速結晶化ポテンシャルが増加するにつれて減少する。これはまた上述のように測定された0.02rad/sの振動数で溶融複合剪断粘度(η0.02)と関連のある高分子量画分の量と、静止結晶化(quiescent crystallization)に関する最大熱流時間(tmaxDSC)によって定量化される、結晶化を遅延させる共単量体の導入量に対する説明であり、定量法である。
【0112】
maxDSCは示差走査熱量計装置(TA Instruments Q2000)を使用して124℃の一定温度で等温条件下で測定される。サンプル5~6mgを秤量してアルミニウムDSCパン(pans)に移す。熱履歴を除去するためにサンプルを20K/分の速度で最大200℃まで加熱し、また20K/分で試験温度まで冷却させる。冷却直後、等温試験を直ちに開始して結晶化が起こるまでの時間を記録する。結晶化熱流最大(ピーク)、tmaxDSCまでの時間間隔を供給者ソフトウェア(TA Instruments)を使用して測定する。測定を3回繰り返した後、平均値(分単位)を計算する。120分以上これらの条件下で結晶化が観察されなければ、tmaxDSC=120分の値をHMWcopo指数のさらなる計算に使用する。
【0113】
溶融粘度η0.02値にtmaxDSC値を掛けて算出された値を因数100000(10^5)で標準化する。
【0114】
分子量分布の測定
モル質量分布およびそれから由来する平均Mn、Mw、MzおよびMw/Mnの測定は、2003年発行のISO 16014-1,-2,-4に記載された方法を使用して高温ゲル浸透クロマトグラフィーにより実行した。言及されたISO標準による説明は下記の通りである:溶媒は1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)、装置および溶液の温度135℃および濃度検出器としてTCBとともに使用可能なPolymerChar(Valencia, Paterna 46980, Spain)IR-4赤外線検出器。直列で連結された下記の予備カラムSHODEX UT-Gおよび分離カラムSHODEX UT 806 M(3x)並びにSHODEX UT 807(Showa Denko Europe GmbH, Konrad-Zuse-Platz 4,81829 Muenchen, Germany)が備えられたウォーターズアライアンス(WATERS Alliance)2000を使用した。
【0115】
溶媒を窒素下で真空蒸溜して2、6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール0.025重量%を使用して安定化した。使用された流速は1ml/分であり、注入量は500μlであり、重合体濃度は0.01%<濃度<0.05%(w/w)の範囲であった。分子量の較正は、Polymer Laboratories(現在Agilent Technologies, Herrenberger Str. 130, 71034 Boeblingen, Germany)の単分散ポリスチレン(PS)の標準を580g/mol~11600000g/molの範囲で使用し、付加的にヘキサデカンと共に使用して実行した。
【0116】
次に較正曲線を汎用較正(Universal Calibration)方法(Benoit H., Rempp P. and Grubisic Z., & in J. Polymer Sci., Phys. Ed., 5, 753(1967))でポリエチレン(PE)に適合させた。したがって、使用されたマルク-ホウインク(Mark-Houwink)パラメータはPSの場合、kPS=0.000121dl/g、αPS=0.706であり、PEの場合、kPE=0.000406dl/g、αPE=0.725であり、135℃でTCBにおいて有効であった。データの記録、較正および計算はそれぞれNTGPC_Control_V6.02.03およびNTGPC_V6.4.24(hs GmbH、Hauptstrasse36、D-55437 Ober-Hilbersheim, Germany)を使用して実行した。
【0117】
溶融流れ指数
特定の荷重下で190℃でISO 1133にしたがって測定した。
【0118】
長鎖分岐指数(LCBI)
LCB指数は10g/molの分子量に対して測定された分岐因子g′に相応する。高いMwで長鎖分岐を測定できるようにする分岐因子g′を多角度レーザー光散乱法(MALLS)と結合されたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した。GPCから溶出したそれぞれの画分に対する回転半径(前記記載のとおりであるが、0.6ml/分の流速および30μm粒子で充填されたカラムを使用)はMALLS(検出器Wyatt Dawn EOS, Wyatt Technology, Santa Barbara, Calif.)を使用して様々な角度から光散乱を分析することによって測定する。波長658nmの120mWのレーザー光源を使用した。比屈折率(specific index of refraction)が0.104ml/gで得られた。データ評価はWyatt ASTRA 4.7.3およびCORONA 1.4ソフトウェアで実行した。LCB指数は下記に記載されたように測定する。
【0119】
パラメータg′は同一の分子量を有する線形重合体の測定平均二乗回転半径に対する測定平均二乗回転半径の比である。線形分子は1のg′値を示すが、LCBの存在下では1未満の値を示す。分子量Mの関数としてのg′の値は、下記の式から計算した:
g′(M)=<Rgサンプル、M/<Rg線形参照、M
ここで、<Rg>、Mは分子量Mの画分に対する平均二乗根回転半径である。
【0120】
GPCから溶出されたそれぞれの画分に対する回転半径(前記記載のとおりであるが、0.6ml/分の流速および30μm粒子で充填されたカラムを使用)は様々な角度から光散乱を分析することによって測定される。したがって、このようなMALLS構成から分子量Mおよび<Rgサンプル、Mを測定し、測定M=10g/molからg′を定義することが可能である。<Rg線形参照、Mは溶液中の線形重合体に対する回転半径と分子量との間の確立された関係によって計算され(Zimm and Stock-mayer WH1949)、記載された同一の装置および方法論を使用して線形PEの参照を測定することによって確認される。
【0121】
同一のプロトコルが下記の文献に記載されている。
Zimm BH, Stockmayer WH (1949) The dimensions of chain molecules containing branches and rings. J Chem Phys 17
Rubinstein M., Colby RH. (2003), Polymer Physics, Oxford University Press
【0122】
共単量体含量
共単量体含有量はBrukerのFT-IR分光光度計Tensor27を使用してASTM D 6248 98にしたがってIRで測定して、共単量体としてブテンまたはヘキセンそれぞれに対してPE内のエチル-またはブチル-測鎖を測定するためのケモメトリックモデルを使用して較正する。結果は重合方法のマスバランス(mass-balance)から由来された予測された共単量体含有量と比較して一致することが確認された。
【0123】
スウェル比
研究対象重合体のスウェル比は市販の30/2/2/20ダイ(全長30mm、有効長さ2mm、半径2mm、L/D=2/2、入口角20°)と押出ストランドの厚さを測定する光学装置(Gottfert社のレーザーダイオード)を備えた毛細管レオメータであるGottfert Rheotester2000およびRheograph25を用いて温度190℃で測定する。サンプルを毛細管バレル内で190℃で6分間溶解し、1440s-1のダイで得られた剪断速度に対応するピストン速度で押出する。
【0124】
ピストンがダイ入口から96mmの位置に到逹した瞬間に、押出物をダイ出口から150mmの距離で(Gottfertの自動切断装置により)切断する。押出物の半径を時間の関数としてダイ出口から78mm離れた位置からレーザーダイオードで測定する。最大値はDextrudateに対応する。スウェル比を下記の式により決定する。
SR=(Dextrudate-Ddie)100%/Ddie
【0125】
上記式でDdieはレーザーダイオードで測定したダイ出口における対応半径である。
【0126】
ノッチ引張衝撃試験AZK
引張衝撃強度を方法Aによって類型1の二重ノッチ標本でISO 8256:2004を用いて測定する。試験片(4×10×80mm)をISO 1872-2要件(平均冷却速度15K/分および冷却ステップの間の高圧)にしたがって製造した圧縮成形シートから切り取る。試験片を45°のV字状ノッチで2つの面にノッチする。深さは2±0.1mmであり、ノッチディップ(notch dip)での曲率半径は1.0±0.05mmである。
【0127】
グリップ間の自由長さは30±2mmである。測定の前に、試験片をすべて-30℃の一定の温度で2~3時間コンディショニングする。方法Aによるエネルギー較正を含む引張衝撃強度の測定手順はISO 8256に記述されている。
【0128】
全面ノッチクリープ試験(FNCT)による環境応力亀裂抵抗
重合体サンプルの環境応力亀裂抵抗は水性界面活性剤溶液内で国際標準ISO 16770(FNCT)によって決定する。重合体サンプルから厚さ10mmの圧縮成形シートを製造する。正方形断面(10×10×100mm)を有するバー(bar)は、応力方向に対して垂直に4つの側面にかみそりの刃を使用してノッチを入れる。M.Fleissner in Kunststoffe 77(1987),pp.45に記載されているようなノッチ装置は、深さ1.6mmの鋭いノッチのために使用する。
【0129】
加えられた荷重は、初期靱帯面積で割った引張力から計算する。靭帯面積は、残りの面積=試料の総断面積からノッチ面積を引いたものである。FNCT試料の場合:10×10mm-台形ノッチ面積の4倍=46.24mm(破損プロセス/亀裂伝播のための残りの断面積)。試験片にISO 16770が提示する標準条件によって非イオン性界面活性剤ARKOPAL N100の2重量%の水溶液内で80℃で4MPaの一定の負荷を加える。試験片が破裂するまでに要する時間を検出する。
【0130】
実施例1
球状触媒担体の製造
米国特許第4,399,054号の実施例2に記載されている方法にしたがうが、しかし10000RPMの代わりに2000RPMの速度で操作して約3モルのアルコールを含む塩化マグネシウムとアルコールの付加物を調製した。
【0131】
こうして得られた付加物を、窒素ストリーム下で、50~150℃の温度範囲で、熱処理により、25重量%までのアルコール量に脱アルコール化した。
【0132】
固体触媒成分の調製
窒素でパージした2Lの4口丸底フラスコ中に1LのTiClを0℃において導入した。次いで、同一の温度において上記のように調製した25重量%のエタノールを含む70gの球状MgCl/EtOH付加物を撹拌下で加えた。温度を3時間で130℃に昇温し、60分間保持した。次いで、撹拌を停止して固体生成物を沈降させて上澄液を吸い出した。新鮮なTiClを総容量1Lまで添加し、130℃で60分間の処理を繰り返した。沈降および吸い出しの後、固体残渣を50℃でヘキサンで5回、25℃でヘキサンで2回洗浄し、真空下で30℃において乾燥した。
【0133】
攪拌機が備えられた2L四つ口ガラス反応器に、10℃で812ccのヘキサンを添加し、上記のように製造した50gの触媒成分を10℃で攪拌しながら導入した。内部温度を一定に保持しながら、ヘキサン中15cmのトリ-n-オクチルアルミニウム(TNOA)(約80g/l)および例えばTNOA/CMMSモル比が50になる量のシクロヘキシルメチル-ジメトキシシラン(CMMS)を反応器に徐々に導入し、温度を10℃に維持した。10分間攪拌した後、一定速度で6.5時間にかけて同一の温度で65gのプロピレンを注意深く反応器に導入した。その後、内容物全体を濾過し、30℃(100g/l)の温度でヘキサンで3回洗浄した。乾燥後、得られた予備重合触媒(A)を分析し、55重量%のポリプロピレン、2.0重量%のTi、9.85重量%のMg及び0.31重量%のAlを含有することがわかった。
【0134】
上記のように製造された約100gの固体予備重合触媒を窒素でパージングしたガラス反応器に入れ、50℃で1.0Lのヘプタンでスラリー化した。
【0135】
その後、エチルアセテート(EAA)およびトラヒドロフラン(CE)をMg/EAA間に4、そしてMgとCEの間に4のモル比を有するようにする量で注意深く(60分間)滴下した。
【0136】
スラリーを内部温度として50℃を有するようにしながら1.5時間攪拌下に保持させた。次いで、撹拌を停止して固体生成物を沈降させて上澄液を吸い出した。固体を50℃で容量1Lまで無水ヘプタンを添加しかつ1回の撹拌下で洗浄した後、撹拌を停止して固体生成物を沈降させて上澄液を吸い出した。次いで、無水ヘプタンで容量を1Lに復元し、温度を85℃まで上昇させ、撹拌下で2時間維持させた。次いで、撹拌を停止して固体生成物を沈降させて上澄液を吸い出した。
【0137】
固体を25℃において無水ヘキサン(3×1000mL)で3回洗浄し、回収し、真空下で乾燥させて分析した。得られたEAA/CEモル比は0.93であることが確認された。
【0138】
重合
前述したように製造された8.9g/hの固体触媒を、1.1kg/hの液体プロパンを使用して第1攪拌予備接触容器に供給し、ここにトリイソブチルアルミニウム(TIBA)およびジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)をまた投入した。トリイソブチルアルミニウムおよびジエチルアルミニウムクロリドの重量比は7:1であった。アルミニウムアルキル対チーグラー触媒の比は5:1であった。第1の予備接触容器を50℃で平均滞留時間100分に維持させた。第1の予備接触容器の触媒懸濁液を第2の撹拌予備接触容器に連続的に移し、これを平均滞留時間100分で操作し、また50℃に維持させた。触媒懸濁液を、ライン10を介して流動床反応器(FBR)1に連続的に移した。
【0139】
第1反応器で分子量調節剤としてHを使用し、不活性希釈剤としてプロパンの存在下でエチレンを重合した。エチレン48kg/h及び水素130g/hを、ライン9を介して第1の反応器に供給した。第1反応器にはいかなる共単量体も供給しなかった。
【0140】
重合温度80℃において、かつ圧力2.8MPaにおいて重合を実施した。第1反応器で得られた重合体をライン11を介して不連続的に排出し、ガス/固体分離器12でガスから分離し、ライン14を介して第2気相反応器に再導入した。
【0141】
第1反応器で生成された重合体の溶融指数MIEは約12g/10分、密度は0.965g/cmであった。
【0142】
第2反応器を約85℃、圧力2.4MPaの重合条件下で操作した。上昇管は内径200mm、長さ19mであった。下降管は全長18m、内径300mmを有する上部5m及び内径150mmを有する下部13mを有する。最終エチレン重合体の分子量分布を広げるために、上昇管32と下降管33内で単量体および水素濃度の異なる条件が確立されるように第2反応器を操作した。これはライン52を介して下降管33の上部に330kg/hの液体流れ(液体バリア)を供給することによって達成される。前記液体流れは上昇管に存在するガス混合物の組成とは異なる組成を有する。第2反応器の上昇管と下降管内の単量体および水素の前記異なる濃度、さらに液体バリアの組成を表1に示した。ライン52の液体流れは48℃で2.5MPaの作動条件下で行われた凝縮器49の凝縮ステップから得られ、凝縮器では再循環流れの一部が冷却および部分的に凝縮される。図に示されたように、分離容器とポンプは凝縮器49の下流側に順に位置する。3つの位置(ライン46)で下降管に単量体を供給した。バリアの真下に位置した投入地点1で14kg/hのエチレンおよび1.22kg/hの1-ヘキセンを導入した。投入地点1から2.3メートルの下に位置した投入地点2で、3kg/hのエチレンを導入した。投入地点3から4メートルの下に位置した投入地点2で、3kg/hのエチレンを導入した。3つの投入地点それぞれにおいて、流れ52から得られた液体を1:1のエチレンに対する比率でさらに供給した。5kg/hのプロパン、26kg/hのエチレンおよび30g/h水素をライン45を通して再循環システムに供給した。
【0143】
最終ポリマーはライン54を介して不連続的に排出された。
【0144】
第2反応器での重合工程は比較的高分子量のポリエチレン画分を生成した。表1において最終生成物等の性質が明示される。最終生成物の溶融指数は第1反応器で製造されたエチレン樹脂と比較して減少し、第2反応器で高分子量分画の形成を示していることが分かる。
【0145】
第1反応器は第1および第2反応器の両方によって製造された最終ポリエチレン樹脂の総量の約50重量%(スプリット重量%)を製造した。
【0146】
共単量体(ヘキセン-1)の量は約1.2重量%であった。
【0147】
比較例1
この比較例の重合体は、クロム含有触媒を用いて気相で製造され、LyondellBasellによって商標名Lupolen 4261AG UV 60005で販売されているポリエチレン組成物である。
【0148】
【表1】
図1