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特許7016961アウトフェージング電力増幅器、並びに、電力増幅器の出力マッチングの実現方法および装置、並びに、電力増幅ブランチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】アウトフェージング電力増幅器、並びに、電力増幅器の出力マッチングの実現方法および装置、並びに、電力増幅ブランチ
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/02 20060101AFI20220131BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20220131BHJP
   H03F 3/68 20060101ALI20220131BHJP
   H03F 3/60 20060101ALI20220131BHJP
   H03F 1/32 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
H03F1/02 194
H03F3/24
H03F3/68
H03F3/60
H03F1/32
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020536847
(86)(22)【出願日】2019-01-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-08
(86)【国際出願番号】 CN2019070703
(87)【国際公開番号】W WO2019134702
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-07-01
(31)【優先権主張番号】201810011482.9
(32)【優先日】2018-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511151662
【氏名又は名称】中興通訊股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZTE CORPORATION
【住所又は居所原語表記】ZTE Plaza,Keji Road South,Hi-Tech Industrial Park,Nanshan Shenzhen,Guangdong 518057 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】余敏徳
(72)【発明者】
【氏名】秦天銀
(72)【発明者】
【氏名】彭瑞敏
(72)【発明者】
【氏名】張暁毅
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-135829(JP,A)
【文献】特開平05-029851(JP,A)
【文献】特開2015-012578(JP,A)
【文献】特開2015-080080(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0273234(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0241625(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/02
H03F 3/24
H03F 3/68
H03F 3/60
H03F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号分離器と、2つ以上の電力増幅ブランチと、コンバイナと、を含む、アウトフェージング電力増幅器であって、
前記2つ以上の電力増幅ブランチの各電力増幅ブランチは、入力マッチング回路と、パワーチューブと、出力マッチング回路と、を含み、
信号分離器は、信号源をアウトフェージングの2つの定包絡線信号に分離し、前記2つ以上の電力増幅ブランチのうちの2つの入力マッチング回路にそれぞれ出力するように構成され、
入力マッチング回路は、信号源の出力インピーダンスとパワーチューブの入力インピーダンスとの間のマッチングを実現するように構成され、
パワーチューブは、受信した信号を増幅するように構成され、
出力マッチング回路は、パワーチューブのピーク出力電力と平均出力電力に対応する最適インピーダンスをコンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングするように構成され、
コンバイナは、2つのパワーチューブの出力電力を1つの信号に結合して出力するように構成され
前記出力マッチング回路における基本波マッチング回路は、
前記パワーチューブからの信号源の信号ピーク対平均比に基づいて前記コンバイナの補償角度を決定し、前記コンバイナの補償角度は、次の式によって計算され、



OPBOは、前記信号ピーク対平均比を示し、
決定された補償角度に基づき、パワーチューブのピーク出力電力に対応する最適インピーダンスZ m1 とパワーチューブの平均出力電力に対応する最適インピーダンスZ m2 の比である定在波比を決定し、
負荷牽引方式を使用し、前記定在波比から得られた等定在波比円の大きさからパワーチューブの最大電力ポイントインピーダンスZoptを決定し、最大電力ポイントインピーダンスZoptを基準点として、等定在波比円上のバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを見出し、
最大電力ポイントインピーダンスZoptに対応するインピーダンス値とバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effに対応するインピーダンス値を、前記コンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングするように構成される、アウトフェージング電力増幅器。
【請求項2】
前記各電力増幅ブランチは、
前記出力マッチング回路と前記パワーチューブとの間に接続される第1高調波同調回路と、
前記出力マッチング回路と前記コンバイナとの間に接続される第2高調波同調回路と、の少なくとも1つを含む、請求項1に記載のアウトフェージング電力増幅器。
【請求項3】
前記コンバイナは、キレイクスChireix非分離コンバイナであり、または、前記コンバイナは、低インピーダンスChireix非分離コンバイナである、請求項1または2に記載のアウトフェージング電力増幅器。
【請求項4】
パワーチューブの信号源の信号ピーク対平均比に基づき、最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを決定することと、
決定された最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを、コンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングすることと、を含み、
前記パワーチューブの信号源の信号ピーク対平均比に基づき、最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを決定することは、
前記パワーチューブからの信号源の信号ピーク対平均比に基づいて前記コンバイナの補償角度を決定することと、
前記補償角度に基づき、パワーチューブのピーク出力電力に対応する最適インピーダンスZ m1 とパワーチューブの平均出力電力に対応する最適インピーダンスZ m2 の比である定在波比を決定することと、
負荷牽引方式を使用し、前記定在波比から得られた等定在波比円の大きさからパワーチューブの最大電力ポイントインピーダンスZoptを決定し、最大電力ポイントインピーダンスZoptを基準点として、等定在波比円上のバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを捜索することと、を含み、
前記コンバイナの補償角度は、次の式によって計算され、



OPBOは、前記信号ピーク対平均比を示す、電力増幅器の出力マッチングの実現方法。
【請求項5】
請求項4に記載の電力増幅器の出力マッチングの実現方法を実行するように構成されるコンピュータ実行可能命令を記憶する、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項6】
パワーチューブの信号源の信号ピーク対平均比に基づき、最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを決定するように構成される決定モジュールと、
決定された最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを、コンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングするように構成されるマッチングモジュールと、を含み、
前記決定モジュールは、
前記パワーチューブからの信号源の信号ピーク対平均比に基づいて前記コンバイナの補償角度を決定し、前記コンバイナの補償角度は、次の式によって計算され、



OPBOは、前記信号ピーク対平均比を示し、
前記補償角度に基づき、パワーチューブのピーク出力電力に対応する最適インピーダンスZ m1 とパワーチューブの平均出力電力に対応する最適インピーダンスZ m2 の比である定在波比を決定し、
負荷牽引方式を使用し、前記定在波比から得られた等定在波比円の大きさからパワーチューブの最大電力ポイントインピーダンスZoptを決定し、最大電力ポイントインピーダンスZoptを基準点として、等定在波比円上のバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを捜索するように構成される、電力増幅器の出力マッチングの実現装置。
【請求項7】
信号源の出力インピーダンスとパワーチューブの入力インピーダンスとの間のマッチングを実現するように構成される入力マッチング回路と、
受信した信号を増幅するように構成されるパワーチューブと、
パワーチューブのピーク出力電力と平均出力電力に対応する最適インピーダンスをコンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングするように構成される出力マッチング回路と、を含み、
前記出力マッチング回路は、
前記パワーチューブからの信号源の信号ピーク対平均比に基づいてコンバイナの補償角度を決定し、前記コンバイナの補償角度は、次の式によって計算され、



OPBOは、前記信号ピーク対平均比を示し、
前記補償角度に基づき、パワーチューブのピーク出力電力に対応する最適インピーダンスZ m1 とパワーチューブの平均出力電力に対応する最適インピーダンスZ m2 の比である定在波比を決定し、
負荷牽引方式を使用し、前記定在波比から得られた等定在波比円の大きさからパワーチューブの最大電力ポイントインピーダンスZoptを決定し、最大電力ポイントインピーダンスZoptを基準点として、等定在波比円上のバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを見出し、
最大電力ポイントインピーダンスZoptに対応するインピーダンス値とバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effに対応するインピーダンス値を、前記コンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングするように構成される、電力増幅ブランチ。
【請求項8】
プロセッサと、プロセッサで動作可能なコンピュータ実行可能命令を記憶しているメモリと、を含む、出力マッチングの実現機器であって、前記コンピュータ実行可能命令がプロセッサに実行されると、パワーチューブの信号源の信号ピーク対平均比に基づき、最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを決定し、決定された最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを、コンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングする操作を実行する、
前記プロセッサは、
前記パワーチューブからの信号源の信号ピーク対平均比に基づいてコンバイナの補償角度を決定し、前記コンバイナの補償角度は、次の式によって計算され、



OPBOは、前記信号ピーク対平均比を示し、
前記補償角度に基づき、パワーチューブのピーク出力電力に対応する最適インピーダンスZ m1 とパワーチューブの平均出力電力に対応する最適インピーダンスZ m2 の比である定在波比を決定し、
負荷牽引方式を使用し、前記定在波比から得られた等定在波比円の大きさからパワーチューブの最大電力ポイントインピーダンスZoptを決定し、最大電力ポイントインピーダンスZoptを基準点として、等定在波比円上のバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを見出し、
最大電力ポイントインピーダンスZoptに対応するインピーダンス値とバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effに対応するインピーダンス値を、前記コンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングするように構成される、出力マッチングの実現機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、出願番号201810011482.9、出願日2018年1月5日の中国特許出願に基づいて提出し、該中国特許出願の優先権を主張するものであり、該中国特許出願の全ての内容が引用により本出願に援用される。
【0002】
本出願は、電力増幅技術に関するがそれに限定されず、例えば、アウトフェージング電力増幅器、並びに、電力増幅器の出力マッチングの実現方法および装置、並びに、電力増幅ブランチに関する。
【背景技術】
【0003】
現在、無線通信市場の競争が激しくなるにつれ、基地局製品の性能の高さはすでに業界競争の主要な焦点となっている。電力増幅器(単に「電力増幅」と称することがある)は基地局の重要な構成部分として、基地局によって送信される信号の品質と通信効果に直接関係している。限られた帯域幅でより高速なデータ伝送を実現するために、現代の無線通信システムでは複雑なデジタル変調技術が用いられている。これらの複雑な変調技術にマルチキャリア構成を加えると、信号ピーク対平均比(PAR)が向上する。PARの向上は、線形指標の難しさの向上だけでなく、高効率という目標を実現することも困難にする。これは現在の電力増幅器の設計に大きな挑戦をもたらし、つまり、電力増幅器は、線形性の増大を克服すると同時に、高いバックオフ効率を実現することが求められる。
【0004】
送信機が高効率と高線形性を同時に有することを確保するためには、関連する送信機構造を改善し、高効率スイッチングモード電力増幅器を応用し、線形化技術を使用してシステムの線形性を確保する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願は、設計の複雑さを低減することができる、アウトフェージング電力増幅器、並びに、電力増幅器の出力マッチングの実現方法および装置、並びに、電力増幅ブランチを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願は、信号分離器と、2つ以上の電力増幅ブランチと、コンバイナと、を含む、アウトフェージング電力増幅器であって、
前記2つ以上の電力増幅ブランチの各電力増幅ブランチは、入力マッチング回路と、パワーチューブと、出力マッチング回路と、を含み、
信号分離器は、信号源をアウトフェージングの2つの定包絡線信号に分離し、2つの入力マッチング回路にそれぞれ出力するように構成され、
入力マッチング回路は、信号源の出力インピーダンスとパワーチューブの入力インピーダンスとの間のマッチングを実現するように構成され、
パワーチューブは、受信した信号を増幅するように構成され、
出力マッチング回路は、パワーチューブのピーク出力電力と平均出力電力に対応する最適インピーダンスをコンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングするように構成され、
コンバイナは、2つのパワーチューブの出力電力を1つの信号に結合して出力するように構成される、アウトフェージング電力増幅器を提供する。
【0007】
本出願は、パワーチューブの信号源の信号ピーク対平均比に基づき、最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを決定することと、
決定された最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを、コンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングすることと、を含む、電力増幅器の出力マッチングの実現方法をさらに提供する。
【0008】
本出願は、上述したいずれか1つに記載の電力増幅器の出力マッチングの実現方法を実行するように構成されるコンピュータ実行可能命令を記憶する、コンピュータ可読記憶媒体をさらに提供する。
【0009】
本出願は、パワーチューブの信号源の信号ピーク対平均比に基づき、最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを決定するように構成される決定モジュールと、
決定された最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを、コンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングするように構成されるマッチングモジュールと、を含む、電力増幅器の出力マッチングの実現装置をさらに提供する。
【0010】
本出願は、信号源の出力インピーダンスとパワーチューブの入力インピーダンスとの間のマッチングを実現するように構成される入力マッチング回路と、
受信した信号を増幅するように構成されるパワーチューブと、
パワーチューブのピーク出力電力と平均出力電力に対応する最適インピーダンスをコンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングするように構成される出力マッチング回路と、を含む、電力増幅ブランチをさらに提供する。
【0011】
本出願は、プロセッサと、プロセッサで動作可能なコンピュータ実行可能命令を記憶しているメモリと、を含む、出力マッチングの実現機器であって、前記コンピュータ実行可能命令がプロセッサに実行されると、パワーチューブの信号源の信号ピーク対平均比に基づき、最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを決定し、決定された最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを、コンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングする操作を実行する、出力マッチングの実現機器をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面は、本出願の技術案の更なる理解を提供するために用いられ、明細書の一部を構成し、本出願の実施例とともに本出願の技術案を解釈するためのものであり、本出願の技術案に対して制限するものではない。
図1】関連技術に係るoutphasing送信機システムの構成模式図である。
図2】関連技術に係るスイッチングモード電力増幅器を採用したoutphasing電力増幅器の構成模式図である。
図3】本出願に係るoutphasing電力増幅器の構成模式図である。
図4】本出願に係るoutphasing電力増幅器の出力マッチングの実現方法のフローチャートである。
図5図5(a)は、本出願に係る補償角度が23度である場合、コンバイナの入力ポートに示されるアウトフェージング角度と伴うサセプタンスBの変化曲線の模式図である。 図5(b)は、本出願に係る補償角度が23度である場合、コンバイナの入力ポートに示されるアウトフェージング角度と伴うコンダクタンスGの変化曲線の模式図である。
図6】本出願に係る負荷牽引方式を使用してパワーチューブのインピーダンスポイントを決定する模式図である。
図7】本出願に係る出力マッチング回路がマッチングを実現する実施例の模式図である。
図8】本出願に係るマルチブランチoutphasing電力増幅器の構成模式図である。
図9】本出願に係るoutphasing電力増幅器の他の実施例の構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に関連して本出願の実施例を詳細に説明する。なお、衝突しない場合、本出願の実施例および実施例の特徴を任意に組み合わせることができる。
【0014】
新型の高効率送信機構造には、アウトフェージング(outphasing)技術、包絡線除去と復元(Envelope Elimination and Restoration、EER)技術、包絡線追跡(Envelope Tracking、ET)技術、負荷変調(load modulation)およびパルス幅変調(Pulse Width Modulation、PWM)技術などがあり、outphasing技術が信号に対する分離によって送信機の線形性に影響を与えずに高効率のスイッチングモード電力増幅器を応用できるため、outphasing技術は、高効率電力増幅器および線形化技術の研究の焦点の1つとなっている。
【0015】
関連技術では、outphasingシステムは主に2つ以上のブランチの電力増幅器を採用し、このうち、2つのブランチのoutphasing増幅器は、回路設計が比較的簡単なため、すでに現在の応用の主流となっている。図1は、関連技術に係るoutphasing送信機システムの構成模式図であり、図1に示すように、outphasing送信機システムは、主に信号分離器(Singal Componet Separator、SCS)と、高効率電力増幅器(Power Amplifier、PA)と、電力コンバイナ(Power Combiner)と、の3つの部分を含む。SCSは、振幅変調/位相変調信号を2つのアウトフェージングの定包絡信号に分離し、2つのアウトフェージングの定包絡信号は、それぞれ2つの高効率outphasing電力増幅器によって増幅された後、電力コンバイナによって振幅増幅後の振幅変調/位相変調信号に復元される。一般に、電力コンバイナは、キレイクス(Chireix)非分離コンバイナを使用する必要があり、このように、入力信号のアウトフェージング角度が変化すると、2つのアウトフェージング増幅器の負荷が互いに牽引するため、電力増幅器の負荷がアウトフェージング角度の変化に従ってそれぞれ最大電力ポイントと最大効率ポイントに到達し、出力電力と効率を向上させる目的を達成する。
【0016】
上記の原理から、システムの高効率の稼働を実現するために、outphasing電力増幅器設計は、電力増幅器負荷が一定の範囲で変化しても、引き続き比較的に高い稼働効率を維持できることを保証しなければならない。そのため、outphasing技術が効率を向上できる1つの重要なポイントは、効率が負荷の変化に敏感でない高効率電力増幅器を選択することである。例えば、クラスE(Class E)とクラスF(Class F)のスイッチングモード電力増幅器(Switch Mode PA、SMPA)は、outphasingシステムにおいて、比較的に広く使用されている。図2は、関連技術に係るスイッチングモード電力増幅器を採用したoutphasing電力増幅器の構成模式図であり、図2に示すように、スイッチングモード電力増幅器(SMPA)型のoutphasing電力増幅器は、主に入力マッチング回路、パワーチューブ、電力増幅器出力および高調波制御回路を含む。
【0017】
outphasingシステムで使用されているクラスEとクラスFの2種類のSMPAは、いずれも比較的に高い効率と一定の帯域幅を得ることができるが、スイッチングモード電力増幅器の固有の特性により、基本波の2次、3次、さらに高次の高調波振幅と位相を処理する必要があることが避けられず、このような高調波を制御する場合、対応する回路が増加するため、outphasingシステムには、回路設計が複雑で、プリント回路ボード(Printed Circuit Board、PCB)の占有面積が大きく、さらにデバッグが困難などの欠点がある。その中で、Class Eの電力増幅器準負荷に敏感でない技術を使用して実現される場合、パワーチューブのパッケージパラメータに対して比較的に深い理解がさらに必要であり、これらのパラメータは、パワーチューブメーカーが必ずしも提供したいわけではないため、該技術の応用をさらに制限した。
【0018】
図3は本出願に係るoutphasing電力増幅器の構成模式図であり、図3に示すように、アウトフェージング電力増幅器は、信号分離器と、2つ以上の電力増幅ブランチと、コンバイナと、を含み、各電力増幅ブランチは、入力マッチング回路と、パワーチューブと、出力マッチング回路と、を含む。
【0019】
信号分離器は、信号源をアウトフェージングの2つの定包絡線信号に分離し、2つの入力マッチング回路にそれぞれ出力するように構成される。
【0020】
入力マッチング回路は、信号源の出力インピーダンスとパワーチューブの入力インピーダンスとの間のマッチングを実現するように構成される。
【0021】
パワーチューブは、受信した信号を増幅するように構成される。
【0022】
出力マッチング回路は、パワーチューブのピーク出力電力と平均出力電力に対応する最適インピーダンスをコンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングするように構成される。
【0023】
コンバイナは、2つのパワーチューブの出力電力を1つの信号に結合して出力するように構成される。
【0024】
本出願に係るoutphasing電力増幅器では、コンバイナにマッチングしたインピーダンスが、負荷変調に要求されるインピーダンス値を満たすため、outphasing電力増幅器の出力電力が最大であることを確保し、電力増幅器の高効率の動作が実現した。また、本出願のoutphasing電力増幅器は、基本波の2次、3次、さらに高次の高調波振幅と位相を処理する必要がないため、例えば、回路設計の複雑さが簡略化したなど、設計の複雑さを低減し、PCBの占有面積を減少し、デバッグの難しさも低減した。
【0025】
1つの実施例では、コンバイナは、Chireix非分離コンバイナであってもよく、コンバイナの2つの入力端は、それぞれ2つのパワーチューブの出力マッチング回路に接続され、Chireix非分離コンバイナの出力端は、50オームの終端負荷に接続される。
【0026】
1つの実施例では、コンバイナは、低インピーダンスChireix非分離コンバイナであってもよい。
【0027】
1つの実施例では、前記各電力増幅ブランチは、出力マッチング回路とパワーチューブとの間に接続される第1高調波同調回路と、出力マッチング回路とコンバイナとの間に接続される第2高調波同調回路と、の少なくとも1つを含む。ここで、高調波同調回路は、電力増幅器の効率をさらに高めるために使用される。
【0028】
1つの実施例では、出力マッチング回路は、信号源の信号電力バックオフ量(Output Power Back-Off、OPBO)、すなわち、信号ピーク対平均比に基づいてコンバイナの補償角度を計算し、
計算によって得られた補償角度に基づき、パワーチューブのピーク出力電力に対応する最適インピーダンスZm1とパワーチューブの平均出力電力に対応する最適インピーダンスZm2の比である定在波比を決定し、
負荷牽引(Load_Pull)方式を使用し、定在波比から得られた等定在波比円の大きさからパワーチューブの最大電力ポイントインピーダンスZoptを決定し、最大電力ポイントインピーダンスZoptを基準点として、等定在波比円上のバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを見出し、
最大電力ポイントインピーダンスZoptに対応するインピーダンス値とバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effに対応するインピーダンス値を、コンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングするように構成される。
【0029】
1つの実施例では、式(1)に従ってコンバイナの補償角度φcompを計算してもよい。
【0030】
【数1】

(1)
【0031】
1つの実施例では、定在波比を決定することは、以下を含む。
【0032】
Chireix非分離コンバイナは、マイクロストリップ回路を使用して式(3)におけるZ0のような適切なインピーダンスと式(2)におけるθのような適切な電気長によって実現してもよく、回路原理図および回路パラメータを図4に示し、図4において、
【0033】
【数2】
【0034】
式(2)と式(3)は補償角度φcompにより、信号ピーク対平均比をChireix非分離コンバイナのマイクロストリップインピーダンス電気長に対応させ、通常Zinは50オーム(Ω)であり、Rは25Ωであり、対応するChireix非分離コンバイナは50Ωである。
【0035】
Chireix非分離コンバイナの入力ポートに示されるアドミタンスY、コンダクタンスG、およびサセプタンスBは、次の式で取得できる。
【0036】
【数3】
【0037】
式(4)と式(5)から分かるように、Chireix非分離コンバイナは入力アウトフェージング角度φの変化過程において、2つのPAブランチが直面する負荷インピーダンスは常に変化し、2つのPAブランチの負荷は、補償角度φcompと補償角度φcompの45°に関する鏡像の2点のみで同じであり、かついずれも実数であり、残りの時間の直面するインピーダンスはいずれも同じではない。2つのPAブランチの2つのインピーダンス交差点は交差点m1と交差点m2であり、交差点m1と交差点m2のインピーダンスは補償角度φcompによって決定される。式(4)と式(5)で得られた入力ポート1のアドミタンスY1と入力ポート2のアドミタンスY2が等しいと仮定すると、交差点m1と交差点m2の2点のインピーダンス(すなわち、交差点m1のインピーダンスZm1と交差点m2のZm2)の関係は、式(6)に示すように得られる。
【0038】
【数4】
【0039】
システム効率を確保するために、本出願では、交差点m1のインピーダンスZm1は、最大電力ポイントインピーダンスZoptに対応し、交差点m2のインピーダンスZm2は電力バックオフポイントインピーダンスZbk_effに対応する。
【0040】
本出願のoutphasing電力増幅器では、2つのPAブランチが、2点の負荷インピーダンスのみが等しいため、本出願では、この2点を設計の境界条件とし、交差点m1と交差点m2をいずれも高効率であることを同時に満足する場合のみ、outphasing電力増幅器の高効率を実現することを確保することができる。式(6)は、終端負荷の定在波比を決定し、したがって対応する最大電力ポイントインピーダンスZoptと電力バックオフポイントインピーダンスZbk_effの定在波比も
【0041】
【数5】
【0042】
であることをさらに決定した。
【0043】
本出願の出願人は、PAがインピーダンス変化の全過程において、高効率の状態を維持する必要があると考える。実際の応用では、信号のPDF分布から見ると、最大電力ポイントと、バックオフ電力ポイントとの間の高い瞬間効率のみを確保すれば、PAが高い平均効率を有することを確保できる。したがって、式(6)の等定在波比円の大きさにより、loadpullの方式を使用してパワーチューブの最大電力ポイントインピーダンスZoptを見出し、また最大電力ポイントインピーダンスZoptを基準点として、上述した等定在波比円上のバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを捜索する(すなわち、見出す)。また、最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを、対応するインピーダンス値として交差点m1と交差点m2の2点にそれぞれマッチングし、この時、出力マッチング回路の伝達関数H(s)は、式(7)と式(8)の要件を同時に満たす必要がある。
【0044】
【数6】
【0045】
式(7)と式(8)では、Zopt(s)とZbk_eff(s)はそれぞれ周波数によって変化するZoptとZbk_effの特性関数を表す。実際の応用では、H(s)はマイクロストリップ回路を使用して実現してもよく、通常、Zm1は、50Ωなどのシステムインピーダンスである。
【0046】
本出願は、上述したいずれか1つに記載の電力増幅器の出力マッチングの実現方法を実行するように構成されるコンピュータ実行可能命令を記憶する、コンピュータ可読記憶媒体をさらに提供する。
【0047】
本出願は、パワーチューブの信号源の信号ピーク対平均比に基づき、最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを決定するように構成される決定モジュールと、
決定された最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを、コンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングするように構成されるマッチングモジュールと、を含む、電力増幅器の出力マッチングの実現装置をさらに提供する。
【0048】
1つの実施例では、前記決定モジュールは、前記パワーチューブからの信号源の信号ピーク対平均比に基づいて前記コンバイナの補償角度を決定し、前記補償角度に基づき、パワーチューブのピーク出力電力に対応する最適インピーダンスZm1とパワーチューブの平均出力電力に対応する最適インピーダンスZm2の比である定在波比を決定し、負荷牽引方式を使用し、前記定在波比から得られた等定在波比円の大きさからパワーチューブの最大電力ポイントインピーダンスZoptを決定し、最大電力ポイントインピーダンスZoptを基準点として、等定在波比円上のバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを捜索するように構成される。
【0049】
本出願は、信号源の出力インピーダンスとパワーチューブの入力インピーダンスとの間のマッチングを実現するように構成される入力マッチング回路と、
受信した信号を増幅するように構成されるパワーチューブと、
パワーチューブのピーク出力電力と平均出力電力に対応する最適インピーダンスをコンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングするように構成される出力マッチング回路はと、を含む、電力増幅ブランチをさらに提供する。
【0050】
1つの実施例では、前記出力マッチング回路は、
前記パワーチューブからの信号源の信号ピーク対平均比に基づいてコンバイナの補償角度を決定し、
決定された補償角度に基づき、パワーチューブのピーク出力電力に対応する最適インピーダンスZm1とパワーチューブの平均出力電力に対応する最適インピーダンスZm2の比である定在波比を決定し、
負荷牽引方式を使用し、前記定在波比から得られた等定在波比円の大きさからパワーチューブの最大電力ポイントインピーダンスZoptを決定し、最大電力ポイントインピーダンスZoptを基準点として、等定在波比円上のバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを見出し、
最大電力ポイントインピーダンスZoptに対応するインピーダンス値とバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effに対応するインピーダンス値を、前記コンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングするように構成される。
【0051】
本出願は、プロセッサと、プロセッサで動作可能なコンピュータ実行可能命令を記憶しているメモリと、を含む、出力マッチングの実現機器であって、前記コンピュータ実行可能命令がプロセッサに実行されると、パワーチューブの信号源の信号ピーク対平均比に基づき、最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを決定し、決定された最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを、コンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングする操作を実行する、出力マッチングの実現機器をさらに提供する。
【0052】
本出願は、outphasing電力増幅器の出力マッチングの実現方法をさらに提供し、ステップ1からステップ4を含む。
【0053】
ステップ1において、信号源の信号電力バックオフ量(OPBO)、すなわち、信号ピーク対平均比に基づいてコンバイナの補償角度を計算する。
【0054】
本ステップの実現は、式(1)を参照して実現してもよい。
【0055】
ステップ2において、計算によって得られた補償角度に基づき、パワーチューブのピーク出力電力に対応する最適インピーダンスZm1とパワーチューブの平均出力電力に対応する最適インピーダンスZm2の比である定在波比を決定する。
【0056】
本ステップの定在波比は、式(6)を参照してもよい。
【0057】
システム効率を確保するために、本出願では、交差点m1のインピーダンスZm1は、最大電力ポイントインピーダンスZoptに対応し、交差点m2のインピーダンスZm2は電力バックオフポイントインピーダンスZbk_effに対応する。
【0058】
本出願のoutphasing電力増幅器では、2つのPAブランチが、2点の負荷インピーダンスのみが等しいため、本出願では、この2点を設計の境界条件とし、交差点m1と交差点m2をいずれも高効率であることを同時に満足する場合のみ、outphasing電力増幅器の高効率を実現することを確保することができる。式(6)は、終端負荷の定在波比を決定し、したがって対応する最大電力ポイントインピーダンスZoptと電力バックオフポイントインピーダンスZbk_effの定在波比も
【0059】
【数7】
【0060】
であることをさらに決定した。
【0061】
交差点m1と交差点m2は、図3に示す本出願のoutphasing電力増幅器の2つのPAブランチの2つのインピーダンス交差点であり、交差点m1と交差点m2のインピーダンスは補償角度φcompによって決定される。
【0062】
ステップ3において、負荷牽引(Load_Pull)方式を使用し、等定在波比円の大きさからパワーチューブの最大電力ポイントインピーダンスZoptを決定し、最大電力ポイントインピーダンスZoptを基準点として、等定在波比円上のバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを見出す。
【0063】
本出願の出願人は、PAがインピーダンス変化の全過程において、高効率の状態を維持する必要があると考える。実際の応用では、信号の確率密度関数(Probability Density Function、PDF)分布から見ると、最大電力ポイントと、バックオフ電力ポイントとの間の高い瞬間効率のみを確保すれば、PAが高い平均効率を有することを確保できる。したがって、式(6)の等定在波比円の大きさにより、Load_Pullの方式を使用してパワーチューブの最大電力ポイントインピーダンスZoptを見出し、また最大電力ポイントインピーダンスZoptを基準点として、上述した等定在波比円上のバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを見出す。また、最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを、対応するインピーダンス値として交差点m1と交差点m2の2点にそれぞれマッチングし、この時、出力マッチング回路の伝達関数H(s)は、式(7)と式(8)の要件を同時に満たす必要がある。
【0064】
ステップ4において、最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを、対応するインピーダンス値として、コンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングする。
【0065】
本出願に係るoutphasing電力増幅器の出力マッチングの実現方法では、コンバイナにマッチングしたインピーダンスが、負荷変調に要求されるインピーダンス値を満たすため、outphasing電力増幅器の出力電力が最大であることを確保し、電力増幅器の高効率の動作が実現した。また、本出願のoutphasing電力増幅器は、基本波の2次、3次、さらに高次の高調波振幅と位相を処理する必要がないため、例えば、回路設計の複雑さが簡略化したなど、設計の複雑さを低減し、PCBの占有面積を減少し、デバッグの難しさも低減した。
【0066】
以下、応用実施例に結び付けて本出願の技術案を詳細に説明する。
【0067】
ロングタームエボリューション(LTE)システムの7dB程度の信号源を例にとり、該信号源のピーク対平均比に対応する補償角度は約23度である。図5(a)および図5(b)に示すように、対応するコンダクタンスGおよびサセプタンスBは、上記の式によって得られる。
【0068】
本実施例では、補償角度が23度であると選択した場合、対応する負荷インピーダンスのサセプタンス値は23度と67度で0にそれぞれ補償され、つまり、補償角度が23度と67度でのPAの負荷は純抵抗状態であり、式(6)を使用してこれらの2点の交差点M4と交差点M7の定在波比の関係は5.66であることを得ることができる。図5(a)と図5(b)に示すように、アウトフェージング角度が0°から90°に変化する過程において、図5(a)と図5(b)の矢印で示される出力電力が大から小に変化し、PAの負荷インピーダンスが徐々に大きくなる傾向である。本実施例のPAは、インピーダンス変化の全過程において、高効率の状態を維持する。しかし、実際の応用では、信号のPDF分布から見ると、最大電力ポイントと、バックオフ電力ポイントとの間の高い瞬間効率のみを確保すれば、PAが高い平均効率を有することを確保できる。したがって、式(6)によって得られた比率から等定在波比円の大きさを決定し、図6に示すように、loadpull負荷牽引の方式を使用してパワーチューブの最大電力ポイントインピーダンスZoptを見出し、また最大電力ポイントインピーダンスZoptを基準点として、上述した等定在波比円上のバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを見出す。最後に、図3の出力マッチング回路により、最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを、図5(b)の交差点M4と交差点M7の2点にそれぞれマッチングして対応するインピーダンス値とする。
【0069】
図7は本出願に係る出力マッチング回路がマッチングを実現する実施例の模式図であり、図7に示すように、型番がCREE CGH40045であるパワーチューブを例にとり、信号ピーク対平均比が7dBであると仮定すると、上記の分析から、理論的にパワーチューブの最大電力ポイントインピーダンスとバックオフ高効率ポイントインピーダンスに対応する定在波比は、5.66であることを得られる。ただし、実際の実現におけるデバイスの非理想性を考慮すると、インピーダンス変化範囲を確保するために、定在波比の比率を適切に高めてもよく、例えば定在波比を10%程度上げ、この場合、実際のインピーダンス変換比すなわち定在波比は6.3となる。
【0070】
測定を容易にするために、本実施例では、最大電力ポイントに対応する終端負荷インピーダンスZLを50Ωであると仮定し、その場合、式(6)に従うと、バックオフ高効率ポイントに対応する負荷インピーダンスZL’は315Ωとなる。50Ωをパワーチューブの最大電力ポイントにマッチングし、315Ωをバックオフ高効率ポイントにマッチングし、関連するインピーダンス関係を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
続いて、図6に示すように、まず、電力等高線と効率等高線に基づき、目標飽和電力を満足し、かつ効率も比較的高い1つのインピーダンスポイントを最大電力ポイントインピーダンスZoptとして選択し、次に、最大電力ポイントインピーダンスZoptを基準点として、定在波比6.3の円において、バックオフ電力が目標の7dBに達し、かつ効率が比較的に高い1つのポイントをバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effとして見出し、最後に、ADSなどの関連回路シミュレーションツールを用いて、最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを、出力マッチング回路によってそれぞれ50Ωと315Ωにマッチングする。
【0073】
上記の本出願に係る出力マッチングネットワークを実現する方法からわかるように、電力増幅器負荷が1:6.3の定在波比範囲で変化しても、電力増幅器が依然として比較的に高い効率を維持する。
【0074】
1つの実施例では、本出願のコンバイナは、特性インピーダンスが7.93Ωである低インピーダンスChireix非分離コンバイナのような低インピーダンスChireix非分離コンバイナであってもよい。この場合、電力インピーダンスポイントの出力マッチング回路のインピーダンス対応関係を表2に示す。
【0075】
【表2】
【0076】
1つの実施例では、本出願は、マルチブランチoutphasingシステムに使用してもよく、図8に示すように、図8は4つのブランチのoutphasing電力増幅器の構成アーキテクチャを示した。
【0077】
1つの実施例では、図9は本出願に係るoutphasing電力増幅器の他の実施例の構成模式図であり、図9に示すように、本実施例において、電力インピーダンスポイントマッチングネットワーク、すなわち出力マッチング回路の前後に、いずれも高調波同調回路を追加することにより、電力増幅器の効率をさらに向上させる。
【0078】
本出願実施例は、上述したいずれか1つに記載の電力増幅器の出力マッチングの実現方法を実行するように構成されるコンピュータ実行可能命令を記憶する、コンピュータ可読記憶媒体をさらに提供する。
【0079】
本出願実施例は、プロセッサと、プロセッサで動作可能なコンピュータプログラムを記憶しているメモリと、を含む、メディア伝送の実現装置であって、信号源の信号電力バックオフ量(OPBO)、すなわち、信号ピーク対平均比に基づいてコンバイナの補償角度を計算し、計算によって得られた補償角度に基づき、パワーチューブのピーク出力電力に対応する最適インピーダンスZm1とパワーチューブの平均出力電力に対応する最適インピーダンスZm2の比である定在波比を決定し、負荷牽引(Load_Pull)方式を使用し、等定在波比円の大きさからパワーチューブの最大電力ポイントインピーダンスZoptを決定し、最大電力ポイントインピーダンスZoptを基準点として、等定在波比円上のバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを見出し、最大電力ポイントインピーダンスZoptとバックオフ高効率ポイントインピーダンスZbk_effを、対応するインピーダンス値として、コンバイナの2つの入力端にそれぞれマッチングする、メディア伝送の実現装置をさらに提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9