(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】車載カメラ用レンズ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 13/04 20060101AFI20220131BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20220131BHJP
【FI】
G02B13/04 D
G02B13/18
(21)【出願番号】P 2020551432
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(86)【国際出願番号】 CN2019085195
(87)【国際公開番号】W WO2019242411
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2020-09-16
(31)【優先権主張番号】201810629640.7
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520360408
【氏名又は名称】江西聯創電子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 偉建
(72)【発明者】
【氏名】鮑 宇旻
(72)【発明者】
【氏名】劉 緒明
(72)【発明者】
【氏名】曽 吉勇
(72)【発明者】
【氏名】王 克民
(72)【発明者】
【氏名】王 卓
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108072966(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103676092(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載カメラ用レンズ装置であって、
物体側から像面側へ順に配列される、
負の屈折力を有し、物体側面が凸面であり、像面側面が凹面である第1レンズと、
負の屈折力を有し、物体側面が凹面であり、像面側面が凸面である第2レンズと、
正の屈折力を有し、物体側面と像面側面との両面が凸面である第3レンズと、
絞りと、
正の屈折力を有し、物体側面と像面側面との両面が凸面である第4レンズと、
負の屈折力を有し、物体側面が凹面であり、前記第4レンズとともに接合レンズを構成する第5レンズと、
正の屈折力を有し、物体側面が凸面である第6レンズと、
光学フィルタと、
からなり、
前記第2レンズ、前記第3レンズ、前記第4レンズ、及び前記第5レンズは、いずれも球面ガラスレンズであり、
前記第1レンズ及び前記第6レンズは、非球面ガラスレンズであ
り、
下式を満たし、
-1.5<R
21
/f<-0.8
R
41
/f<1.8
f/R
52
<0.2
ただし、R
21
は、前記第2レンズの物体側面の曲率半径を示し、R
41
は、前記第4レンズの物体側面の曲率半径を示し、R
52
は、前記第5レンズの像面側面の曲率半径を示し、fは、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離を示す
ことを特徴とする車載カメラ用レンズ装置。
【請求項2】
車載カメラ用レンズ装置であって、
物体側から像面側へ順に配列される、
負の屈折力を有し、物体側面が凸面であり、像面側面が凹面である第1レンズと、
負の屈折力を有し、物体側面が凹面であり、像面側面が凸面である第2レンズと、
正の屈折力を有し、物体側面と像面側面との両面が凸面である第3レンズと、
絞りと、
正の屈折力を有し、物体側面と像面側面との両面が凸面である第4レンズと、
負の屈折力を有し、物体側面が凹面であり、前記第4レンズとともに接合レンズを構成する第5レンズと、
正の屈折力を有し、物体側面が凸面である第6レンズと、
光学フィルタと、からなり、
前記第2レンズ、前記第3レンズ、前記第4レンズ、及び前記第5レンズは、いずれも球面ガラスレンズであり、
前記第1レンズ及び前記第6レンズは、非球面ガラスレンズであり、
下式を満たし、
R
61
/f>2
f/f
6
<0.5
ただし、R
61
は、前記第6レンズの物体側面中心の曲率半径を示し、fは、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離を示し、f
6
は、前記第6レンズの焦点距離を示す
ことを特徴とする車載カメラ用レンズ装置。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の車載カメラ用レンズ装置であって、
下式を満たし、
D
1/(Y
IH×f)<0.25
(1/mm)
ただし、D
1は、前記第1レンズの最大有効口径を示し、Y
IHは、前記車載カメラ用レンズ装置の最大像半径を示し、fは、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離を示す
ことを特徴とする車載カメラ用レンズ装置。
【請求項4】
請求項1
又は2に記載の車載カメラ用レンズ装置であって、
下式を満たし、
R
1/f<1
-3<f
1/f<-1
(Y
12-Y
ref12)/Y
ref12<-4.5%
ただし、R
1は、前記第1レンズの物体側面中心の曲率半径を示し、f
1は、前記第1レンズの焦点距離を示し、fは、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離を示し、Y
12は、視野角が12°である場合における前記車載カメラ用レンズ装置の実際像高を示し、Y
ref12は、視野角が12°である場合における前記車載カメラ用レンズ装置の理想近軸像高を示す
ことを特徴とする車載カメラ用レンズ装置。
【請求項5】
請求項1
又は2に記載の車載カメラ用レンズ装置であって、
下式を満たし、
TTL/f<4.5
ただし、TTLは、前記車載カメラ用レンズ装置の光学全長を示し、fは、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離を示す
ことを特徴とする車載カメラ用レンズ装置。
【請求項6】
請求項1
又は2に記載の車載カメラ用レンズ装置であって、
下式を満たし、
f
3/f<2
ただし、f
3は、前記第3レンズの焦点距離を示し、fは、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離を示す
ことを特徴とする車載カメラ用レンズ装置。
【請求項7】
請求項1
又は2に記載の車載カメラ用レンズ装置であって、
下式を満たし、
(dn/dt)4<-5×10
-6/℃
f
4/f<1.5
ただし、(dn/dt)4は、前記第4レンズの屈折率温度係数を示し、fは、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離を示し、f
4は、前記第4レンズの焦点距離を示す
ことを特徴とする車載カメラ用レンズ装置。
【請求項8】
請求項1
又は2に記載の車載カメラ用レンズ装置であって、
下式を満たし、
Nd
1>1.8
Vd
4>55
Vd
5<25
Vd
6>60
ただし、Vd
4、Vd
5、及びVd
6は、それぞれ前記第4レンズ、前記第5レンズ、及び第6レンズのアッベ数を示し、Nd
1は、前記第1レンズの材料の屈折率を示す
ことを特徴とする車載カメラ用レンズ装置。
【請求項9】
請求項1
又は2に記載の車載カメラ用レンズ装置であって、
前記第1レンズ及び前記第6レンズのそれぞれの非球面形状は、以下の式(1)を満たし、
【数1】
ただし、zは、光軸方向における曲面と曲面頂点との間の距離を示し、hは、光軸から曲面までの間の距離を示し、cは、曲面頂点の曲率を示し、Kは、二次曲面係数を示し、B、C、D、E、Fは、それぞれ四次、六次、八次、十次、十二次曲面係数を示す
ことを特徴とする車載カメラ用レンズ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学レンズ装置技術領域に関し、特に車載カメラ用レンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先進運転支援システム(Advanced Driver Assistant System,ADASと略称する)は、情報収集と情報処理によって、運転者に起こり得る危険への認識をアシストし、さらに積極的に介入するアクティブセーフティ技術である。技術的な観点からADASは、無人運転技術を蓄積するためのかけ橋であり、自動車会社が無人運転領域に切り込むための進む道である。様々なADASシステムでは、画像を基礎とする運転支援システムは、最も高い市場シェアを占めている。その主な理由は、コストが低く、ドライブレコーダと組み合わせて使用することができ、検知結果を映像、音声等で運転者に提示することができる。検知範囲は赤外線やレーダほど良くないが、幅広く人気がある。
【0003】
車線逸脱警報システム(Lane Departure Warning System,LDWS)と前方衝突警報システム(Forward Collision Warning System,FCWS)は、世界各国で重視されており、当該技術分野において競い合って開発されている最も重要な2つの画像式ADAS機能である。LDWSの主な機能は、カメラレンズ装置を通じて車両前のシーンを撮影し、画像処理と計算により、車線検知の結果を生成することである。方向指示器がオンにされていない場合に車両が車線から逸脱し始めると、システムは、運転者が即座に反応して事故を回避できるように様々な警告信号を自動的に送信する。FCWSの主な機能は、カメラレンズ装置を通じて車両前のシーンを撮影し、画像処理と計算により、前方の車両を検知し、2台の車両間の距離を推定することである。2台の車両が適切な走行距離を超えた場合、システムは自動的に運転者に警告する。
【0004】
自動車用電子技術及び自動車用画像技術の進歩に伴い、画像処理のアルゴリズムは日々革新されている。例えば、ADASシステムのアルゴリズムにおいて、レンズに対して狭い視野角範囲で大きい歪曲収差が発生することが要求されている。しかしながら、従来のレンズは、ADASシステムにおけるこれらの特殊なアルゴリズム要求を満たすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、狭い視野角範囲で大きい歪曲収差が発生する車載カメラ用レンズ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、車載カメラ用レンズ装置は、物体側から像面側へ順に配列される、負の屈折力を有し、物体側面が凸面であり、像面側面が凹面である第1レンズと、負の屈折力を有し、物体側面が凹面であり、像面側面が凸面である第2レンズと、正の屈折力を有し、物体側面と像面側面との両面が凸面である第3レンズと、絞りと、正の屈折力を有し、物体側面と像面側面との両面が凸面である第4レンズと、負の屈折力を有し、物体側面が凹面であり、前記第4レンズとともに接合レンズを構成する第5レンズと、正の屈折力を有し、物体側面が凸面である第6レンズと、光学フィルタと、を含み、前記第2レンズ、前記第3レンズ、前記第4レンズ、及び前記第5レンズは、いずれも球面ガラスレンズであり、前記第1レンズ及び前記第6レンズは、非球面ガラスレンズである。
【0007】
本発明により提供される車載カメラ用レンズ装置は、ガラス球面と非球面を組み合わせることにより、特殊な歪曲収差をレンズに提供することができる。従来の車載カメラ用レンズ装置に比べ、以下の利点を有する。狭い視野角範囲におけるレンズ装置の歪曲収差を大幅に増大することで、車載システムの特殊なアルゴリズム要求を満たすことができる。また、大口径が図られてレンズ装置全体の解像感が向上するとともに、レンズ装置全体の口径と長さが効果的に制御され、レンズ装置全体の小口径とレンズ系の大口径が実現される。さらに、ガラスレンズ材料の合理的な組み合わせことにより、大きな温度差環境でフォーカスシフト及び解像度が大幅に低下する問題を克服し、車載カメラ用レンズ装置が大きな温度差環境でも優れた結像品質を有することを保証することができ、実際のアプリケーションニーズを満たすことができる。
【0008】
また、前記車載カメラ用レンズ装置は、下式を満たし、
D1/(YIH×f)<0.25
ただし、D1は、前記第1レンズの最大有効口径を示し、YIHは、前記車載カメラ用レンズ装置の最大像半径を示し、fは、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離を示す。上式を満すことにより、焦点距離が一定である条件で、レンズ装置全体の小口径とレンズ系の大口径を実現することができる。
【0009】
また、前記車載カメラ用レンズ装置は、下式を満たし、
R1/f<1
-3<f1/f<-1
(Y12-Yref12)/Yref12<-4.5%
ただし、R1は、前記第1レンズの物体側面中心の曲率半径を示し、f1は、前記第1レンズの焦点距離を示し、fは、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離を示し、Y12は、視野角が12°である場合における前記車載カメラ用レンズ装置の実際像高を示し、Yref12は、視野角が12°である場合における前記車載カメラ用レンズ装置の理想近軸像高を示す。上式を満すことにより、車載カメラ用レンズ装置の狭い視野角範囲における歪曲収差を大幅に増大することで、車両画像システムのアルゴリズム要求を満たすことができる。
【0010】
また、前記車載カメラ用レンズ装置は、下式を満たし、
TTL/f<4.5
ただし、TTLは、前記車載カメラ用レンズ装置の光学全長を示し、fは、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離を示す。上式を満すことにより、焦点距離が一定である条件で、レンズ装置の長さが有効に制限される。
【0011】
また、前記車載カメラ用レンズ装置は、下式を満たし、
-1.5<R21/f<-0.8
R41/f<1.8
f/R52<0.2
ただし、R21は、前記第2レンズの物体側面の曲率半径を示し、R41は、前記第4レンズの物体側面の曲率半径を示し、R52は、前記第5レンズの像面側面の曲率半径を示し、fは、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離を示す。上式を満すことにより、レンズ装置のゴースト現象が改善され、ゴーストがイメージセンサーチップ(CMOS)において焦点を合わせるエネルギーを低減することができる。
【0012】
また、前記車載カメラ用レンズ装置は、下式を満たし、
R61/f>2
f/f6<0.5
ただし、R61は、前記第6レンズの物体側面中心の曲率半径を示し、fは、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離を示し、f6は、前記第6レンズの焦点距離を示す。上式を満すことにより、第6レンズの表面で反射されて発生するゴーストがイメージセンサーチップ(CMOS)において焦点を合わせるエネルギーを低減することができる。
【0013】
また、前記車載カメラ用レンズ装置は、下式を満たし、
f3/f<2
ただし、f3は、前記第3レンズの焦点距離を示し、fは、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離を示す。上式を満すことにより、結像システムの全体の球面収差の減少に有利である。
【0014】
また、前記車載カメラ用レンズ装置は、下式を満たし、
(dn/dt)4<-5×10-6/℃
f4/f<1.5
ただし、(dn/dt)4は、前記第4レンズの屈折率温度係数を示し、fは、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離を示し、f4は、前記第4レンズの焦点距離を示す。上式を満すことにより、車載カメラ用レンズ装置が大きな温度差環境でも優れた結像品質を有することを保証することができる。
【0015】
また、前記車載カメラ用レンズ装置は、下式を満たし、
Nd1>1.8
Vd4>55
Vd5<25
Vd6>60
ただし、Vd4、Vd5、及びVd6は、それぞれ前記第4レンズ、前記第5レンズ、及び第6レンズのアッベ数を示し、Nd1は、前記第1レンズの材料の屈折率を示す。上式を満すことにより、車載カメラ用レンズ装置の長さの制限に有利であり、レンズ装置の色収差の補正に有利である。
【0016】
また、前記第1レンズ及び前記第6レンズのそれぞれの非球面形状は、以下の式(1)を満たし、
【数1】
式中、zは、光軸方向における曲面と曲面頂点との間の距離を示し、hは、光軸と曲面との間の距離を示し、cは、曲面頂点の曲率を示し、Kは、二次曲面係数を示し、B、C、D、E、Fは、それぞれ四次、六次、八次、十次、十二次曲面係数を示す。
【0017】
上述した条件を満たす車載カメラ用レンズ装置によれば、レンズ装置の外径と長さを小さく保つことができる。また、第1レンズが非球面ガラスレンズであるため、レンズ装置に特殊な歪曲収差を提供することができる。また、第6レンズが非球面ガラスレンズであるため、車載カメラ用レンズ装置の非点収差を有効に低減することができ、レンズ装置の解像度パフォーマンスが大きく向上する。さらに、本発明に係る車載カメラ用レンズ装置によれば、レンズの形を制御することにより、レンズ装置のゴースト現象が改善され、レンズ装置の結像品質が向上する。また、オールガラスレンズ材料を使用することにより、レンズ装置が大きな温度差環境でも優れた結像品質を有することを保証することができ、実際のアプリケーションニーズを満たすことができる。
【0018】
本発明の利点は、以下の説明で部分的に示され、その一部は、以下の説明から明らかになるか、本発明の実施を通じて理解される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の上記及び/または追加の態様及び利点は、以下の図面を参照しながら実施形態の説明から明らかになり、理解しやすくなる。
【0020】
【
図1】本発明の第1実施例に係る車載カメラ用レンズ装置の断面構造模式図である。
【
図2A】本発明の第1実施例に係る車載カメラ用レンズ装置の像面湾曲図である。
【
図2B】本発明の第1実施例に係る車載カメラ用レンズ装置の歪曲収差図である。
【
図3】本発明の第2実施例に係る車載カメラ用レンズ装置の断面構造模式図である。
【
図4A】本発明の第2実施例に係る車載カメラ用レンズ装置の像面湾曲図である。
【
図4B】本発明の第2実施例に係る車載カメラ用レンズ装置の歪曲収差図である。
【
図5】本発明の第3実施例に係る車載カメラ用レンズ装置の断面構造模式図である。
【
図6A】本発明の第3実施例に係る車載カメラ用レンズ装置の像面湾曲図である。
【
図6B】本発明の第3実施例に係る車載カメラ用レンズ装置の歪曲収差図である。
【
図7】本発明の第4実施例に係る車載カメラ用レンズ装置の断面構造模式図である。
【
図8A】本発明の第4実施例に係る車載カメラ用レンズ装置の像面湾曲図である。
【
図8B】本発明の第4実施例に係る車載カメラ用レンズ装置の歪曲収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の技術特徴及び利点をより理解しやすくするために、明細書の添付図面を参考しながら本発明の好適な実施形態を詳しく説明する。本発明は、種々の態様の実施例で実現可能であり、本明細書に記載の実施例に限定されるものではない。逆に、下記の実施例は、本発明の公開内容をより分かりやすくすることを目的とする。
【0022】
以下、特に定義されない限り、本発明で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明に係る技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の説明で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を限定することを意図するものではない。また、本発明で使用される「及び/または」という用語は、一つまたは複数の関連する列挙アイテムの任意及びすべての組み合わせを含む。
【0023】
図1に示すように、本発明のある様態によれば、車載カメラ用レンズ装置は、物体側から像面側へ順に配列される、
負の屈折力を有し、物体側面S1が凸面であり、像面側面S2が凹面である第1レンズL1と、
負の屈折力を有し、物体側面S3が凹面であり、像面側面S4が凸面である第2レンズL2と、
正の屈折力を有し、物体側面S5と像面側面S6との両面が凸面である第3レンズL3と、
絞りS7と、
正の屈折力を有し、物体側面S8と像面側面S9との両面が凸面である第4レンズL4と、
負の屈折力を有し、物体側面S10が凹面であり、像面側面S11が凹面又は凸面であり、前記第4レンズL4とともに接合レンズを構成する第5レンズL5と、
正の屈折力を有し、物体側面S12が凸面であり、像面側面S13が凹面又は凸面である第6レンズL6と、
物体側面がS14であり、像面側面がS15である光学フィルタG1と、を含み、
前記第2レンズL2、前記第3レンズL3、前記第4レンズL4、及び前記第5レンズL5は、いずれも球面ガラスレンズであり、前記第1レンズL1及び前記第6レンズL6は、非球面ガラスレンズである。G2は、保護ガラスであり、その物体側面がS16であり、像面側面がS17であり、S18は、像面である。
【0024】
前記車載カメラ用レンズ装置は、ガラス球面と非球面を組み合わせることにより、特殊な歪曲収差をレンズに提供することができる。従来の車載カメラ用レンズ装置に比べ、以下の利点を有する。狭い視野角範囲におけるレンズ装置の歪曲収差を大幅に増大することで、車載システムの特殊なアルゴリズム要求を満たすことができる。また、大口径が図られてレンズ装置全体の解像感が向上するとともに、レンズ装置全体の口径と長さが効果的に制御され、レンズ装置全体の小口径とレンズ系の大口径が実現される。さらに、ガラスレンズ材料の合理的な組み合わせことにより、大きな温度差環境でフォーカスシフト及び解像度が大幅に低下する問題を克服し、車載カメラ用レンズ装置が大きな温度差環境でも優れた結像品質を有することを保証することができ、実際のアプリケーションニーズを満たすことができる。
【0025】
本様態において、車載カメラ用レンズ装置は、下式を満たし、
D1/(YIH×f)<0.25
ただし、D1は、前記第1レンズL1の最大有効口径を示し、YIHは、前記車載カメラ用レンズ装置の最大像半径を示し、fは、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離を示す。
【0026】
本様態において、車載カメラ用レンズ装置は、下式を満たし、
R1/f<1
-3<f1/f<-1
(Y12-Yref12)/Yref12<-4.5%
ただし、R1は、前記第1レンズL1の物体側面中心の曲率半径を示し、f1は、前記第1レンズL1の焦点距離を示し、fは、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離を示し、Y12は、視野角が12°である場合における前記車載カメラ用レンズ装置の実際像高を示し、Yref12は、視野角が12°である場合における前記車載カメラ用レンズ装置の理想近軸像高を示す。
【0027】
本様態において、車載カメラ用レンズ装置は、下式を満たし、
TTL/f<4.5
ただし、TTLは、前記車載カメラ用レンズ装置の光学全長を示し、fは、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離を示す。
【0028】
本様態において、車載カメラ用レンズ装置は、下式を満たし、
-1.5<R21/f<-0.8
R41/f<1.8
f/R52<0.2
ただし、R21は、前記第2レンズL2の物体側面の曲率半径を示し、R41は、前記第4レンズL4の物体側面の曲率半径を示し、R52は、前記第5レンズL5の像面側面の曲率半径を示す。
【0029】
本様態において、車載カメラ用レンズ装置は、下式を満たし、
R61/f>2
f/f6<0.5
ただし、R61は、前記第6レンズL6の物体側面中心の曲率半径を示し、fは、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離を示し、f6は、前記第6レンズL6の焦点距離を示す。
【0030】
本様態において、車載カメラ用レンズ装置は、下式を満たし、
f3/f<2
ただし、f3は、前記第3レンズL3の焦点距離を示し、fは、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離を示す。
【0031】
本様態において、車載カメラ用レンズ装置は、下式を満たし、
(dn/dt)4<-5×10-6/℃
f4/f<1.5
ただし、(dn/dt)4は、前記第4レンズL4の屈折率温度係数を示し、fは、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離を示し、f4は、前記第4レンズL4の焦点距離を示す。
【0032】
本様態において、車載カメラ用レンズ装置は、下式を満たし、
Nd1>1.8
Vd4>55
Vd5<25
Vd6>60
ただし、Vd4、Vd5、及びVd6は、それぞれ第4レンズL4、第5レンズL5、及び第6レンズL6のアッベ数を示し、Nd1は、前記第1レンズL1の材料の屈折率を示す。
【0033】
本様態において、第1レンズL1及び前記第6レンズL6のそれぞれの非球面形状は、以下の式(2)を満たし、
【数2】
ただし、zは、光軸方向における曲面と曲面頂点との間の距離を示し、hは、光軸と曲面との間の距離を示し、cは、曲面頂点の曲率を示し、Kは、二次曲面係数を示し、B、C、D、E、Fは、それぞれ四次、六次、八次、十次、十二次曲面係数を示す。
【0034】
上述した条件を満たす車載カメラ用レンズ装置によれば、レンズ装置の外径と長さを小さく保つことができる。また、第1レンズL1が非球面ガラスレンズであるため、レンズ装置に特殊な歪曲収差の方式を提供することができる。また、第6レンズL6が非球面ガラスレンズであるため、車載カメラ用レンズ装置の非点収差を有効に低減することができる、レンズ装置の解像度パフォーマンスが大きく向上する。さらに、本発明に係る車載カメラ用レンズ装置によれば、レンズの形を制御することにより、レンズ装置のゴースト現象が改善され、レンズ装置の結像品質が向上する。また、オールガラスレンズ材料を使用することにより、レンズ装置が大きな温度差環境でも長期使用安定性を有することを保証することができる。
【0035】
以下、複数の実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。以下の各実施例では、車載カメラ用レンズ装置の各レンズの厚さや曲率半径が異なり、詳細について各実施例のパラメータ表を参照する。下記の実施例は、本発明の好適例に過ぎず、本発明の実施形態は、これらの実施例に限定されるものではなく、他の改変、代替、組み合わせ又は簡略化を行ったものであっても、本発明の保護範囲に含まれる。
【0036】
実施例1
本実施例に係る車載カメラ用レンズ装置の断面構造模式図は、
図1に示され、本実施例に係る車載カメラ用レンズ装置の像面湾曲図、歪曲収差図は、
図2A、2Bに示される。本実施例に係る車載カメラ用レンズ装置における各レンズの関連パラメータは、表1-1に示される。
【0037】
【0038】
本実施例に係る第1レンズL1及び第6レンズL6の非球面のパラメータは表1-2に示される。
【0039】
【0040】
実施例2
本発明の第2実施例に係る車載カメラ用レンズ装置の断面構造模式図は、
図3に示され、当該車載カメラ用レンズ装置の像面湾曲図、歪曲収差図は、
図4A、
図4Bに示される。具体的には、当該車載カメラ用レンズ装置の関連パラメータは、表2-1に示される。
【0041】
【0042】
本実施例に係る第1レンズL1及び第6レンズL6の非球面のパラメータは表2-2に示される。
【0043】
【0044】
実施例3
本発明の第3実施例に係る車載カメラ用レンズ装置の断面構造模式図は、
図5に示され、当該車載カメラ用レンズ装置の像面湾曲図、歪曲収差図は、
図6A、
図6Bに示される。具体的には、当該車載カメラ用レンズ装置の関連パラメータは、表3-1に示される。
【0045】
【0046】
本実施例に係る第1レンズL1及び第6レンズL6の非球面のパラメータは表3-2に示される。
【0047】
【0048】
実施例4
本発明の第4実施例に係る車載カメラ用レンズ装置の断面構造模式図は、
図7に示され、当該車載カメラ用レンズ装置の像面湾曲図、歪曲収差図は、
図8A、
図8Bに示される。具体的には、当該車載カメラ用レンズ装置の関連パラメータは、表4-1に示される。
【0049】
【0050】
本実施例に係る第1レンズL1及び第6レンズL6の非球面のパラメータは表4-2に示される。
【0051】
【0052】
上記実施例1から実施例4の説明を踏まえ、本発明に係る車載用レンズ装置の光学パラメータを表5に示す。
【0053】
表5には、前記各実施例に対応する光学特性が示される。光学特性は、前記車載カメラ用レンズ装置の焦点距離f、レンズ装置の光学全長TTL、絞りの数F#及び視野角2θを含む。
【0054】
【0055】
本明細書に記載の「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例」、「具体例」または「いくつかの例」等の用語は、この実施例または例に記載の具体的な特徴、構造、材料または特性が本発明の少なくとも一つの実施例または例に含まれることを意図している。本明細書において、前記用語に対する概略的な説明は、同じ実施例または例を指すわけではない。また、説明される具体的な特徴、構造、材料または特性は、任意の一つもしくは複数の実施例または例において適切な方式で組み合わせることができる。
【0056】
以上の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を説明のみを説明するものであり、比較的具体的で詳しく述べたが、本発明の特許請求の範囲を制限するものであると理解されるべきではない。当業者であれば、本発明の思想から逸脱しない限り、いくつかの変形または改良を行うことができ、これらの変形および改良はいずれも本発明の保護範囲に含まれる。したがって、本発明の保護範囲は添付する特許請求の範囲に準ずる。