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特許7016983GLS1遺伝子阻害用化粧料組成物、GLS1遺伝子阻害剤、老化細胞除去用化粧料組成物及び老化細胞除去剤
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  • 特許-GLS1遺伝子阻害用化粧料組成物、GLS1遺伝子阻害剤、老化細胞除去用化粧料組成物及び老化細胞除去剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】GLS1遺伝子阻害用化粧料組成物、GLS1遺伝子阻害剤、老化細胞除去用化粧料組成物及び老化細胞除去剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/97 20170101AFI20220131BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 36/05 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220131BHJP
   A61K 48/00 20060101ALN20220131BHJP
【FI】
A61K8/97
A61Q19/08
A61K36/05
A61P43/00 105
A61P17/00
A61K48/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021087829
(22)【出願日】2021-05-25
【審査請求日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2021008208
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506141225
【氏名又は名称】株式会社ユーグレナ
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健吾
(72)【発明者】
【氏名】中島 綾香
(72)【発明者】
【氏名】安田 光祐
(72)【発明者】
【氏名】三輪 由布子
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/159705(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/095971(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/072507(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/156339(WO,A1)
【文献】Journal of Cell Science,2008年,Vol.121, Page2235-2245
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61P 43/00
A61P 17/00
A23L 33/10
A61K 48/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーグレナ由来物質を有効成分として含有し、皮膚におけるGLS1遺伝子の発現を阻害するために用いられ
前記ユーグレナ由来物質が、ユーグレナ水性溶媒抽出物又はユーグレナ属に属する藻類の細胞を蛋白質酵素分解して抽出される水溶性成分であり、
経皮的に適用されることを特徴とするGLS1遺伝子阻害用化粧料組成物。
【請求項2】
ユーグレナ由来物質を有効成分として含有し、皮膚におけるGLS1遺伝子の発現を阻害するために用いられ
前記ユーグレナ由来物質が、ユーグレナ水性溶媒抽出物又はユーグレナ属に属する藻類の細胞を蛋白質酵素分解して抽出される水溶性成分であり、
経皮的に適用されることを特徴とするGLS1遺伝子阻害剤。
【請求項3】
ユーグレナ由来物質を有効成分として含有し、皮膚の老化細胞を除去するために用いられ
前記ユーグレナ由来物質が、ユーグレナ水性溶媒抽出物又はユーグレナ属に属する藻類の細胞を蛋白質酵素分解して抽出される水溶性成分であり、
経皮的に適用されることを特徴とする老化細胞除去用化粧料組成物。
【請求項4】
ユーグレナ由来物質を有効成分として含有し、皮膚の老化細胞を除去するために用いられ
前記ユーグレナ由来物質が、ユーグレナ水性溶媒抽出物又はユーグレナ属に属する藻類の細胞を蛋白質酵素分解して抽出される水溶性成分であり、
経皮的に適用されることを特徴とする老化細胞除去剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GLS1遺伝子阻害用化粧料組成物、GLS1遺伝子阻害剤、老化細胞除去用化粧料組成物及び老化細胞除去剤に関する。
【背景技術】
【0002】
超高齢化社会におけるQOL(Quality of life)向上の観点から、健康寿命の延長やアンチエイジングに関する技術が注目を集めている。健康寿命の延長を目的として、細胞老化及び老化制御機構についての研究が盛んになされている。
【0003】
特許文献1には、生体内の老化細胞を除去するための薬剤であって、グルタミナーゼ阻害剤を有効成分として含有する老化細胞除去剤が記載されている。特許文献1には、グルタミナーゼ阻害剤として、少なくともKGA(kidney-type glutaminase)の活性を阻害するものであればよく、KGAをコードする遺伝子(GLS1)をノックアウトするためのsiRNAやmiRNAなどの核酸をグルタミナーゼ阻害剤として使用してもよいことも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2020/095971号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の背景技術があり、老化細胞を除去する技術が求められている。本発明の目的は、GLS1遺伝子阻害用化粧料組成物、GLS1遺伝子阻害剤、老化細胞除去用化粧料組成物及び老化細胞除去剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、ユーグレナ由来物質を有効成分として含有し、皮膚におけるGLS1遺伝子の発現を阻害するために用いられ、前記ユーグレナ由来物質が、ユーグレナ水性溶媒抽出物又はユーグレナ属に属する藻類の細胞を蛋白質酵素分解して抽出される水溶性成分であり、経皮的に適用されることを特徴とするGLS1遺伝子阻害用化粧料組成物により解決される
前記課題は、ユーグレナ由来物質を有効成分として含有し、皮膚におけるGLS1遺伝子の発現を阻害するために用いられ、前記ユーグレナ由来物質が、ユーグレナ水性溶媒抽出物又はユーグレナ属に属する藻類の細胞を蛋白質酵素分解して抽出される水溶性成分であり、経皮的に適用されることを特徴とするGLS1遺伝子阻害により解決される。
前記課題は、ユーグレナ由来物質を有効成分として含有し、皮膚の老化細胞を除去するために用いられ、前記ユーグレナ由来物質が、ユーグレナ水性溶媒抽出物又はユーグレナ属に属する藻類の細胞を蛋白質酵素分解して抽出される水溶性成分であり、経皮的に適用されることを特徴とする老化細胞除去用化粧料組成物により解決される
前記課題は、ユーグレナ由来物質を有効成分として含有し、皮膚の老化細胞を除去するために用いられ、前記ユーグレナ由来物質が、ユーグレナ水性溶媒抽出物又はユーグレナ属に属する藻類の細胞を蛋白質酵素分解して抽出される水溶性成分であり、経皮的に適用されることを特徴とする老化細胞除去剤により解決される。
このとき、前記ユーグレナ由来物質が、ユーグレナ抽出物であるとよい。
このとき、前記ユーグレナ由来物質が、ユーグレナ水性溶媒抽出物又はユーグレナ属に属する藻類の細胞を蛋白質酵素分解して抽出される水溶性成分であるとよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、GLS1遺伝子の発現を阻害することが可能なGLS1遺伝子阻害用化粧料組成物及びGLS1遺伝子阻害剤を提供できる。また、本発明によれば、老化細胞を除去することが可能な老化細胞除去用化粧料組成物及び老化細胞除去剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ヒト表皮角化細胞において、ユーグレナ由来物質によるGSL1遺伝子に対する影響を検討した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図1を参照しながら説明する。本実施形態は、ユーグレナ由来物質を有効成分として含有するGLS1遺伝子阻害用化粧料組成物、GLS1遺伝子阻害用食品組成物、GLS1遺伝子阻害剤、老化細胞除去用化粧料組成物、老化細胞除去用食品組成物及び老化細胞除去剤に関するものである。
【0010】
<細胞老化と老化細胞>
ヒトの正常な体細胞には分裂可能回数に限界がある。本施形態において、「細胞老化」とは、この分裂限界に向かって進行する細胞の変化を意味する。また、「老化細胞」とは、細胞増殖または細胞周期が不可逆的に停止した細胞を意味する。細胞が老化細胞であるか否かは、細胞老化の特徴を基準として判断すればよい。具体的には、老化細胞では、正常な細胞と比べて老化マーカーの発現量の上昇を示す。老化マーカーとしては、老化関連酸性β-ガラクトシダーゼ、P53、P16INK4a、P21CIP1などが例示されるが特に限定されるものではない。
【0011】
<GLS1遺伝子阻害剤>
本実施形態に係るGLS1遺伝子阻害剤は、ユーグレナ由来物質を有効成分として含有し、GLS1遺伝子の発現を阻害するために用いられるものである。「GLS1遺伝子の発現を阻害する」とは、転写レベルでの発現(mRNAとしての発現)のみならず、翻訳レベルでの発現(タンパク質としての発現)も含まれる。
【0012】
(GLS1遺伝子)
「GLS1遺伝子」は、グルタミン代謝に関する遺伝子であるが、老化細胞の生存に必要な遺伝子であることが知られている。GLS1(グルタミナーゼ1)は、アミドヒドラーゼ酵素の一種で、グルタミンからグルタミン酸、およびアンモニアを産生する。細胞内小器官の異常に起因して、老化細胞内は酸性に傾いており、GLS1が過剰に働いて中和することで、細胞を維持している。
【0013】
老化細胞では、GLS1アイソフォームの1つであるKGAの発現が顕著に増加しており、ヒトの皮膚でもKGAの発現と年齢に正の相関がある。正常細胞および老化細胞におけるGLS1阻害の影響の検討結果から、GLS1を阻害することで、老化細胞を選択的に死滅させることが報告されている(特許文献1)。
【0014】
具体的には、老化細胞のグルタミノリシス(グルタミン代謝)を阻害すると、老化細胞に選択的な細胞死が誘導される。グルタミノリシスは、いくつかの反応段階によって構成されるが、なかでも、グルタミンからグルタミン酸を生成する反応段階を阻害することで老化細胞特異的な細胞死が効率的に誘導される。
【0015】
<老化細胞除去剤>
本実施形態に係る老化細胞除去剤は、ユーグレナ由来物質を有効成分として含有し、生体内の老化細胞を除去するために用いられるものである。ここで、「老化細胞除去」とは、老化細胞を組織又は器官などから取り除くことを意味するか、又は老化細胞を死滅させることを意味し、例えば、in vivoまたはin vitroにおいて老化細胞に細胞死を誘導し、老化細胞を含む細胞集団から、老化細胞を選択的に除去することを意味する。
【0016】
様々な器官や組織において、加齢と共に老化細胞の数は増加する。老化した組織において老化細胞が蓄積すると、様々な機能障害や疾患、再生能力の減少につながり得る。細胞は、ストレスを受けることで老化細胞に誘導される。老化細胞が蓄積した老化組織は、増殖が必要とされるストレスに応答する能力が無いことから、健康性の低減が生じてしまう。
【0017】
本実施形態に係る老化細胞除去剤の有効成分であるユーグレナ由来物質は、GLS1遺伝子の発現を阻害する作用を有していることから、老化細胞を選択的に死滅させることが可能である。したがって、本実施形態に係る老化細胞除去剤によれば、老化細胞が蓄積することを抑制し、健康性が低減してしまうことを抑制できる。
【0018】
(対象となる老化細胞について)
対象となる老化細胞は、特に限定されるものではないが、真核細胞が例示される。老化細胞の例としては、例えば、ケラチノサイト(角化細胞)、上皮細胞、線維芽細胞、毛乳頭細胞などの皮膚に関連する細胞が例示されるが、除去可能な老化細胞であれば、その他の細胞であってもよい。
【0019】
<ユーグレナ>
本実施形態において、「ユーグレナ」とは、分類学上、ユーグレナ属(Euglena)に分類される微生物、その変種、その変異種及びユーグレナ科(Euglenaceae)の近縁種を含む。ここで、ユーグレナ属(Euglena)とは、真核生物のうち、エクスカバータ、ユーグレノゾア門、ユーグレナ藻綱、ユーグレナ目、ユーグレナ科に属する生物の一群である。
【0020】
ユーグレナ属に含まれる種として、具体的には、Euglena chadefaudii、Euglena deses、Euglena gracilis、Euglena granulata、Euglena mutabilis、Euglena proxima、Euglena spirogyra、Euglena viridisなどが挙げられる。ユーグレナとして、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis),特に、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株を用いることができるが、そのほか、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株の変異株SM-ZK株(葉緑体欠損株)や変種のE. gracilis var. bacillaris、これらの種の葉緑体の変異株等の遺伝子変異株、Astasia longa等のその他のユーグレナ類であってもよい。
【0021】
ユーグレナ属は、池や沼などの淡水中に広く分布しており、これらから分離して使用しても良く、また、既に単離されている任意のユーグレナ属を使用してもよい。ユーグレナ属は、その全ての変異株を包含する。また、これらの変異株の中には、遺伝的方法、たとえば組換え、形質導入、形質転換等により得られたものも含有される。
【0022】
(ユーグレナ藻体)
本実施形態では、ユーグレナとしてユーグレナ藻体を用いることが可能である。ユーグレナ藻体として、遠心分離,濾過又は沈降等によって分離したユーグレナ生細胞をそのまま用いることができる。ユーグレナ生細胞は、培養槽から収穫後そのままの状態で使用することもできるが、水若しくは生理食塩水で洗浄するのが好ましい。また、ユーグレナ藻体が水などの液体に分散した分散液の状態で用いてもよい。本実施形態において、ユーグレナ生細胞を凍結乾燥処理やスプレー乾燥処理して得たユーグレナの乾燥藻体(ユーグレナ粉末)をユーグレナ藻体として用いると好適である。
【0023】
更に、ユーグレナ生細胞を超音波照射処理や、ホモゲナイズ等の機械処理を行うことにより得た藻体の機械的処理物をユーグレナ藻体として用いてもよい。また、機械的処理物に乾燥処理を施した機械的処理物乾燥物をユーグレナ藻体として用いてもよい。
【0024】
(ユーグレナ抽出物)
本実施形態では、ユーグレナとしてユーグレナ抽出物(ユーグレナエキス)を用いることも可能であり、特にユーグレナ水性溶媒抽出物を用いると好適である。本実施形態において、「ユーグレナ水性溶媒抽出物」とは、水性溶媒を用いてユーグレナから抽出される抽出物を意味し、特に、水性溶媒として水やアルコール類、グリコール類を用い、5℃~600℃で、数秒~数十時間抽出したユーグレナの水抽出物、熱水抽出物、アルコール抽出物、グリコール抽出物を用いることが好ましい。抽出に使用する水は、必ずしも蒸留水や、純水、又は超純水である必要はなく、例えば、水道水や不純物を含むものであってもよいが、活性成分の抽出を妨げる成分を含まない水が好ましい。
【0025】
本実施形態において、「水抽出物」とは、0~50℃(0℃を除く。)の水による抽出物を意味する。ここで、「水」とは、0~50℃(0℃を除く。)の水を意味する。水の温度は、活性成分に影響を与えずに、活性成分を十分に抽出できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、好ましくは1~40℃、より好ましくは5~35℃、特に好ましくは10~30℃である。
【0026】
本実施形態において、「熱水抽出物」とは、50℃よりも高い温度の水による抽出物を意味し、「温水抽出物」とも呼ぶことができる。ここで、「熱水」とは、50℃よりも高温の水を意味し、「熱湯」も含む概念であり、沸騰状態にある水も含まれる。また、液体状態の熱水に限定されることなく、気体状態及び超臨界状態の熱水も含まれる。熱水の温度は、活性成分に影響を与えずに、活性成分を十分に抽出できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、好ましくは50℃より高く120℃以下、より好ましくは50℃より高く100℃以下である。
【0027】
抽出に使用する水のpHは、活性成分に影響を与えずに、活性成分を十分抽出できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、好ましくはpH4~10、より好ましくはpH5~9、特に好ましくはpH6~8であるとよい。
【0028】
なお、本実施形態では、水性溶媒として、活性成分に影響を与えずに、活性成分を十分抽出できるものであって、通常、抽出に用いることができる溶媒を1種または2種以上選択して用いてもよい。例えば、水、アルコール類、グリコール類などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。アルコール類としては、エタノール、メタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。グリコール類としては、1,3-ブチレングリコール(BG)及びプロピレングリコール等が挙げられる。その他の水性溶媒としては、アセトン等が挙げられる。これらの溶媒は単独或いは水溶液として用いても良く、任意の2種または3種以上の混合溶媒として用いてもよい。
【0029】
抽出に用いる水性溶媒の温度は、例えば、0℃以上であり、活性成分に影響を与えないのであれば特に限定されることはない。沸騰状態又は超臨界状態にある水性溶媒を使用することもできるが、5℃~600℃の水性溶媒を使用するのが好ましく、10℃~200℃の水性溶媒を使用するのがより好ましい。したがって、抽出用の水性溶媒とは、沸騰状態や超臨界状態にある水性溶媒も含むものである。抽出に使用する水性溶媒の量は、ユーグレナ中に含まれる水溶性活性成分を十分に溶解することができる量であることが好ましい。
【0030】
抽出方法も特に限定されず、例えば、以下に示す方法により抽出を行うことができるが、これに限定されることなく、通常の抽出方法を自由に選択して用いることができる。例えば、ユーグレナの藻体乾燥粉末を水性溶媒に所定時間浸漬した後に遠心分離又は濾過する方法、ユーグレナの藻体乾燥粉末を水性溶媒に加えて震盪して均一に分散させた後に遠心分離又は濾過する方法、などが挙げられる。また、抽出を促進するために、ユーグレナを添加後の水性溶媒を加熱することも可能である。
【0031】
ユーグレナの水抽出は、以下に示すような通常の方法で行うことができるが、これに限定されるものではない。例えば、ユーグレナ組織及び水を容器に入れ、適宜攪拌又は震盪しながら所定時間静置し、得られた抽出液は、そのまま水抽出物として使用可能である。また、例えば、そのような抽出液を遠心して得られる上清を水抽出物として使用することもできる。また、そのような抽出液又は上清を濃縮、乾燥して水分を除去し、これを水抽出物として使用することもできる。水抽出は、抽出効率を上げて抽出時間を短縮するために、水に、少量、例えば、10質量%以下のアルコール、好ましくはエタノールを添加して行ってもよい。水抽出を行う場合の抽出時間は、活性成分が抽出される時間であれば特に限定されず、数秒~数十時間の範囲で、抽出の温度に応じて適宜設定することができる。
【0032】
熱水による抽出は、以下に示すような、通常用いられている方法で行なうことができるが、これに限定されるものではない。ユーグレナを、通常用いられる抽出器に水とともに導入した後に、加熱することで抽出を行う。沸騰水または超臨界状態にある水を使用して抽出する場合には、水の蒸気圧に耐え得る抽出器を使用する必要がある。抽出時の圧力は1~5000気圧に設定することができ、60~400気圧に設定するのが好ましい。
【0033】
高温高圧下で抽出を行なう場合には、抽出時間が長過ぎると活性成分が分解したり、化学反応を起こすことがある。従って、高温高圧下で抽出を行なうときには、抽出時間を短時間、例えば、3分以内とするのが好ましく、1分以内とするのがより好ましく、30秒以内とすることが特に好ましい。
【0034】
抽出したユーグレナ抽出物は、そのままでも本実施形態に係るGLS1遺伝子阻害剤及び老化細胞除去剤の有効成分として用いることができるが、当該抽出物を更に、適当な分離手段(例えば、分配抽出、ゲル濾過法、シリカゲルクロマトグラフィー、逆相若しくは順相の高速液体クロマトグラフィーなど)により活性の高い画分を分画して用いることも可能である。また、ユーグレナ抽出物やその画分を、濃縮、乾燥して水性溶媒を除去し、これを水性溶媒抽出物として使用することもできる。
【0035】
また、ユーグレナ抽出物として、BGを用いて抽出したエキスを用いてもよい。ユーグレナ抽出物は、浸透型コラーゲン、浸透型エラスチン、浸透型ヒアルロン酸、ヘキサペプチド-33を多層構造のカプセルにするなど、他の化粧品原料と複合化した形態としても良い。
【0036】
(加水分解ユーグレナエキス)
ユーグレナ抽出物として、ユーグレナ属に属する藻類の細胞を蛋白質酵素分解して抽出される水溶性成分、具体的には、ユーグレナ粉末(ユーグレナ藻体)を酵素で加水分解抽出した加水分解ユーグレナエキスを用いても良い。加水分解ユーグレナエキスは、特開2010-90065号記載の方法に従い、調製することが可能である。
【0037】
以下、加水分解ユーグレナエキスの調製方法について説明をする。ユーグレナの乾燥体(重量)に対し、好ましくは100倍量(重量)の精製水を加え、加圧加熱処理を行う。その後、蛋白質分解酵素を添加し藻体を処理する。処理終了後、例えば90℃で失活し、遠心分離または濾過することにより、残渣と水溶性成分を分離する。
【0038】
具体的には、加圧加熱処理条件は、オートクレーブを用いて100~150℃、大気圧~0.255MPa、1分~30分の加熱加圧処理であることが好ましく、例えば、0.1~0.14MPa、121℃で10分間の加熱加圧処理をするとよい。蛋白質分解酵素としては、例えばペプシン、パンクレアチン、パパインなど一般的に用いられるプロテアーゼ活性を有する酵素を単独または併用すればよい特に、ポリペプチド鎖の途中のペプチド結合を加水分解し、幾つかのペプチドに分解するためにエンド型ペプチダーゼを採用することが好ましい。
【0039】
市販の蛋白質分解酵素としては、ヤクルト薬品工業社製のパンチダーゼMP、アロアー
ゼAP-10なども採用できる。酵素の添加濃度、反応液のpHや反応温度、その他の条件等は、各酵素剤にとって最適な条件を選択すればよい。
【0040】
このようにして得られた水溶性成分は、そのまま用いることもできるが、本発明の効果を失わない範囲内で分画、脱臭,脱色,濃縮等の精製操作を加えて用いることもできる。
【0041】
<パラミロン>
「パラミロン(paramylon)」とは、約700個のグルコースがβ-1,3-結合により重合した高分子体(β-1,3-グルカン)で多孔質であり、ユーグレナ属が含有する貯蔵多糖である。パラミロン粒子は、扁平な回転楕円体粒子であり、β-1,3-グルカン鎖がらせん状に絡まりあって形成されている。
【0042】
パラミロンは、すべての種,変種のユーグレナ細胞内に顆粒として存在し、その個数,形状,粒子の均一性は、種により特徴がある。パラミロンは、グルコースのみからなり、E. gracilis Zの野生株と葉緑体欠損株SM-ZKから得られたパラミロンの平均重合度は、グルコース単位で約700である。パラミロンは、水,熱水には不溶性であるが、希アルカリ,濃い酸,ジメチルスルホキシド,ホルムアルデヒド,ギ酸に溶ける。パラミロンの平均密度は、E. gracilis Zでは1.53、E. gracilis var. bacillaris SM-L1では1.63である。
【0043】
パラミロンは、粉末図形法を用いたX線解析によれば、3本の直鎖状β-1,3-グルカンが右巻きの縄のようにねじれあったゆるやかならせん構造をとっている。このグルカン分子がいくつか集まってパラミロン顆粒を形成する。パラミロン顆粒は結晶構造部分が非常に多く約90%を占め、多糖類の中で最も結晶構造率の高い化合物である(ユーグレナ 生理と生化学,北岡正三郎編,学会出版センター)。なお、パラミロン((株)ユーグレナ製)の粒度分布は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置で測定したときのメジアン径が、1.5~2.5μmである。
【0044】
パラミロン粒子は、培養されたユーグレナ細胞から任意の適切な方法で単離及び微粒子状に精製され、通常、粉末体として提供されている。例えば、パラミロン粒子は、(1)任意の適切な培地中でのユーグレナ細胞の培養、(2)当該培地からのユーグレナ細胞の分離、(3)分離されたユーグレナ細胞からのパラミロンの単離、(4)単離されたパラミロンの精製、および必要に応じて(5)冷却及びその後の凍結乾燥によって得ることができる。パラミロンの単離は、例えば、大部分が生物分解される種類の非イオン性又は陰イオン性の界面活性剤を用いて行われる。パラミロンの精製は、実質的には単離と同時に行われる。
【0045】
(パラミロンの加工品)
パラミロンの加工品としては、公知の種々の方法によりパラミロンを化学的又は物理的に処理して得た水溶性パラミロン、硫酸化パラミロン等や、パラミロン誘導体も含まれる。
【0046】
パラミロンの加工品としては、例えば、アモルファスパラミロンやエマルジョンパラミロンが挙げられる。アモルファスパラミロンとは、ユーグレナ由来の結晶性パラミロンをアモルファス化した物質である。アモルファスパラミロンは、ユーグレナから公知の方法で生成された結晶性のパラミロンに対する相対結晶度が、1~20%である。但し、この相対結晶度は、特開2011-184592号記載の方法により求めたものである。
【0047】
つまり、アモルファスパラミロン及びパラミロンを、それぞれ、粉砕機(Retsh社製ボールミルMM400)にて、振動数20回/秒で5分間粉砕後、X線回折装置(スペクトリス社製H‘PertPRO)を用い、管電圧45KV、管電流40mAにて、2θが5°乃至30°の範囲でスキャンを行い、パラミロンとアモルファスパラミロンの2θ=20°の付近の回折ピークPc,Paを得る。このPc,Paの値を用い、アモルファスパラミロンの相対結晶度を、アモルファスパラミロンの相対結晶度=Pa/Pc×100(%)により算出する。
【0048】
アモルファスパラミロンは、特開2011-184592号記載の方法に従い、結晶性のパラミロン粉末を、アルカリ処理した後に酸で中和し、その後洗浄、水分除去工程を経て、乾燥を行うことにより調製される。パラミロンの加工品としては、そのほか、公知の種々の方法によりパラミロンを化学的又は物理的に処理して得た水溶性パラミロン、硫酸化パラミロン等や、パラミロン誘導体も含まれる。
【0049】
「エマルジョンパラミロン」とは、その加工方法及び物性が乳化物に類似していることから、エマルジョンパラミロンとも呼ばれる物質であって、特開2016-199650号記載の方法に従い、パラミロンに水を加えて得た流体を超高圧で細孔ノズルから噴出させて被衝突物に衝突させる衝突処理を行うことにより得られ、4倍以上の水と結合して膨潤した加工パラミロンである。
【0050】
エマルジョンパラミロンは、粉体等の固体に水溶性溶媒を加えたスラリーを、細孔ノズルから超高圧で噴出させて被衝突物に衝突させる公知の物性改質装置(例えば、特開2011-88108号公報、特開平6-47264号公報記載の装置)で、噴出時のノズル圧力245MPaで、1回以上衝突処理を行うことにより得ることができる。
【0051】
エマルジョンパラミロンは、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置で粒度を測定したときのメジアン径が、パラミロンの5倍以上であり、7μm以上であって、光学電子顕微鏡により、粒子が、隣接する粒子と付着していることが観察され、パラミロンに対して4倍以上の水と結合して膨潤している。
【0052】
原料パラミロンと水を混合したスラリーは、さらさらした流体であるが、エマルジョンパラミロンは、パラミロンが水分子中に分散して、粘度が増加して粘性を有し、触ったときに手に付着するような粘着性と、弾力性を有し、糊のような触感を備えている。なお、その処理方法と物性から、得られた加工パラミロンを本明細書においてエマルジョンパラミロンと呼んでいるが、エマルジョン化しているか否かは不明であり、パラミロンが水と結合して膨潤している状態である。
【0053】
<用途>
本実施形態に係るGLS1遺伝子阻害剤及び老化細胞除去剤は、化粧料組成物、健康食品等の食品組成物、医薬組成物として構成され、老化細胞を除去するために、予防的に使用・摂取・投与される。ユーグレナ、ユーグレナ抽出物、パラミロンといったユーグレナ由来物質は、食品としても摂取可能で副作用がないため、継続的に使用・摂取・投与可能である。
【0054】
(化粧料組成物)
本実施形態に係るGLS1遺伝子阻害剤及び老化細胞除去剤は、GLS1遺伝子阻害作用及び老化細胞除去作用を利用して、化粧料組成物に好適に用いることができる。該化粧料組成物は、あらゆる形態の化粧料に適用することができる。例えば、クレンジング剤、洗顔材、化粧水、ローション、乳液、クリーム、美容液、パック、スクラブ剤などのスキンケア化粧料、ファンデーション、コンシーラー、化粧下地、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナーなどのメイクアップ化粧料、日焼け止め化粧料などに適用することができる。
【0055】
本実施形態に係る化粧料組成物には、本実施形態に係るGLS1遺伝子阻害剤及び老化細胞除去剤に加え、通常化粧料組成物に用いることができる成分を、1種または2種以上自由に選択して配合することが可能である。例えば、基材、保存剤、乳化剤、着色剤、防腐剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、紫外線吸収剤、香料、防腐防黴剤、体質顔料、着色顔料、アルコール、水などの、化粧品分野で通常使用し得る全ての添加剤を含有させることができる。
【0056】
本実施形態に係る化粧料組成物において、GLS1遺伝子阻害剤及び老化細胞除去剤の含有量は特に限定されず、目的に応じて自由に設定することが可能である。
【0057】
(食品組成物)
本実施形態のGLS1遺伝子阻害剤及び老化細胞除去剤は、食品の分野では、GLS1遺伝子阻害作用及び老化細胞除去作用を有効に発揮できる有効な量のユーグレナ由来物質を食品素材として、各種食品に配合することにより、当該作用を有する食品組成物を提供することができる。すなわち、本発明は、食品の分野において、老化細胞除去用等と表示された食品の食品組成物を提供することができる。当該食品組成物としては、一般の食品のほか、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、病院患者用食品、サプリメント等が挙げられる。また、食品添加物として用いることもできる。
【0058】
当該食品組成物としては、例えば、調味料、畜肉加工品、農産加工品、飲料(乳酸菌飲料、清涼飲料、アルコール飲料、炭酸飲料、乳飲料、果汁飲料、茶、コーヒー、栄養ドリンク等)、粉末飲料(粉末ジュース、粉末スープ等)、濃縮飲料、菓子類(キャンディ(のど飴)、クッキー、ビスケット、ガム、グミ、チュアブル、タブレット剤、チョコレート等)、パン、シリアル等が挙げられる。また、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の場合、カプセル、トローチ、シロップ、顆粒、粉末等の形状であっても良い。
【0059】
ここで特定保健用食品とは、生理学的機能等に影響を与える保健機能成分を含む食品であって、消費者庁長官の許可を得て特定の保健の用途に適する旨を表示可能なものである。本発明においては、老化細胞除去に関する特定の保健用途を表示して販売される食品となる。
【0060】
また栄養機能食品とは、栄養成分(ビタミン、ミネラル)の補給のために利用される食品であって、栄養成分の機能を表示するものである。栄養機能食品として販売するためには、一日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量が定められた上限値、下限値の範囲内にある必要があり、栄養機能表示だけでなく注意喚起表示等もする必要がある。
【0061】
また機能性表示食品とは、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品である。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたものである。
【0062】
本実施形態に係る食品組成物には、ユーグレナ由来物質に加え、通常食品組成物に用いることができる成分を、1種または2種以上自由に選択して配合することが可能である。例えば、各種調味料、保存剤、乳化剤、安定剤、香料、着色剤、防腐剤、pH調整剤などの、食品分野で通常使用し得る全ての添加剤を含有させることができる。
【0063】
(医薬組成物)
本実施形態のGLS1遺伝子阻害剤及び老化細胞除去剤は、医薬の分野では、GLS1遺伝子阻害作用及び老化細胞除去作用を有効に発揮できる量のユーグレナ由来物質と共に、薬学的に許容される担体や添加剤を配合することにより、当該作用を有する医薬組成物が提供される。当該医薬組成物は、医薬品であっても医薬部外品であってもよい。
【0064】
当該医薬組成物は、内用的に適用されても、また外用的に適用されても良い。従って、当該医薬組成物は、内服剤、静脈注射、皮下注射、皮内注射、筋肉注射及び/又は腹腔内注射等の注射剤、経粘膜適用剤、経皮適用剤等の製剤形態で使用することができる。当該医薬組成物の剤型としては、適用の形態により、適当に設定できるが、例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、粉末剤、散剤などの固形製剤、液剤、懸濁剤などの液状製剤、軟膏剤、またはゲル剤等の半固形剤が挙げられる。
【0065】
本実施形態に係る医薬組成物には、薬学的に許容される添加剤を1種または2種以上自由に選択して含有させることができる。例えば、本実施形態に係る医薬組成物を経口剤に適用させる場合、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、保存剤、着色剤、矯味剤、香料、安定化剤、防腐剤、酸化防止剤等の、医薬製剤の分野で通常使用し得る全ての添加剤を含有させることができる。また、ドラックデリバリーシステム(DDS)を利用して、徐放性製剤等にすることもできる。
【実施例
【0066】
以下、具体的実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0067】
<実施例1:加水分解ユーグレナエキス>
ユーグレナ由来物質として、ユーグレナ・グラシリスの細胞を蛋白質酵素分解して抽出される水溶性成分である加水分解ユーグレナエキスを用いた。加水分解ユーグレナエキスは、ユーグレナ・グラシリス粉末(ユーグレナ藻体、(株)ユーグレナ製)1gにその100倍量の精製水を加え、圧力0.1MPa、温度12℃に加熱して10分間の加熱加圧処理をした。その後、エンド型プロテアーゼのタンパク質分解酵素(例えば、ヤクルト薬品工業社製:パンチダーゼMP)を全量の5%添加し、35℃、16時間、攪拌反応させた。反応後、濾紙を用いて濾過することで水溶性成分を分取した。得られた水溶性成分を0.45μmフィルター滅菌したサンプルを、加水分解ユーグレナエキス原液100%とした。
【0068】
<実施例2:ユーグレナ抽出物>
ユーグレナ由来物質として、ユーグレナ抽出物を用いた。ユーグレナ抽出物は、原料としてユーグレナ・グラシリス粉末(ユーグレナ藻体、(株)ユーグレナ製)を用い、溶媒として1,3-ブチレングリコール(BG)を用いて調製した。
【0069】
ユーグレナ粉末(ユーグレナ・グラシリス、Lot.EU-16189、(株)ユーグレナ製)0.5gに、BG1mlを加え震盪し、均一に分散した後、室温(25℃)で10分間抽出した。遠心分離(3000rpm、3分、25℃)により得られた上清を分取し、0.45μm滅菌フィルターにて濾過することで、ユーグレナ抽出物を調製した。
【0070】
<試験1>
試験1では、加水分解ユーグレナエキス(実施例1)による皮膚表皮細胞の遺伝子に与える影響を評価した。
【0071】
(試験1の方法)
正常ヒト表皮細胞(3.0×104 cells/well)をHuMedia-KG2培地を用いて12ウェルプレートに播種した。次に、加水分解ユーグレナエキスをHuMedia-KB2培地(非増殖培地)に溶解させ、培地を交換した。培地を交換した後、24時間培養して、培養上清を除去して細胞をRNAiso Plusを用いてtotal RNAを単離したあと、NucleoSpin(登録商標)RNAを用いて精製した。RNAライブラリーの構築およびシークエンスは、TruSeq Stranded mRNA Library Prep KitおよびNovaSeq 6000 (Illumina Inc, USA)を用いて行った。本試験では(n=1)、FPKM値を算出して、|logFC|>0.5の遺伝子を変動遺伝子とした。
【0072】
(試験1の結果)
加水分解ユーグレナエキスによるヒト表皮角化細胞の遺伝子変化を、次世代シーケンサーを用いて網羅的に解析した結果、全57,643遺伝子のうち、14,586遺伝子で十分なリード数が確保できた。加水分解ユーグレナエキスを5%添加したとき、1,145遺伝子(46.8%)が減少し、1,308遺伝子(53.2%)が増加した。GLS1遺伝子について、その発現量は、コントロールでは198.515であり、加水分解ユーグレナエキスを添加した場合127.003であった。
【0073】
<試験2>
試験2では、加水分解ユーグレナエキス(実施例1)及びユーグレナ抽出物(実施例2)が長寿関連遺伝子(GLS1)に与える影響を評価した。
【0074】
(試験2の方法)
正常ヒト表皮細胞(3.0×104 cells/well)をHuMedia-KG2培地を用いて12ウェルプレートに播種した。次に、加水分解ユーグレナエキス(実施例1)、またはユーグレナ抽出物(実施例2)をHuMedia-KB2培地(非増殖培地)に溶解させ、培地を交換した。培地を交換した後、24時間培養して、培養上清を除去して細胞をRNAiso Plusを用いてtotal RNAを単離した。RNAを逆転写してcDNAを合成し、リアルタイムPCRにより遺伝子発現量を評価した。
【0075】
(試験2の結果)
図1に、ヒト表皮角化細胞において、ユーグレナ由来物質によるGSL1遺伝子に対する影響を検討した結果を示す。加水分解ユーグレナエキス(実施例1)を添加したとき、GLS1遺伝子の発現量が低値であった。ユーグレナ抽出物(実施例2)を添加したとき、GLS1遺伝子の発現量が有意に低下した。
【0076】
以上の結果から、ユーグレナ由来物質が、ヒト表皮角化細胞におけるGLS1遺伝子の発現を阻害することが示された。つまり、有効成分としてユーグレナ由来物質を用いることで、GLS1遺伝子の発現を阻害したり、生体内の老化細胞を除去したりできることが示唆された。
【要約】
【課題】GLS1遺伝子阻害用化粧料組成物、GLS1遺伝子阻害用食品組成物、GLS1遺伝子阻害剤、老化細胞除去用化粧料組成物、老化細胞除去用食品組成物及び老化細胞除去剤を提供する。
【解決手段】ユーグレナ由来物質を有効成分として含有し、GLS1遺伝子の発現を阻害するために用いられることを特徴とするGLS1遺伝子阻害用化粧料組成物、GLS1遺伝子阻害用食品組成物、GLS1遺伝子阻害剤により解決される。
また、ユーグレナ由来物質を有効成分として含有し、生体内の老化細胞を除去するために用いられることを特徴とする老化細胞除去用化粧料組成物、老化細胞除去用食品組成物及び老化細胞除去剤により解決される。
【選択図】図1
図1