(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-28
(45)【発行日】2022-02-07
(54)【発明の名称】車両運搬用補助具
(51)【国際特許分類】
B60P 3/073 20060101AFI20220131BHJP
【FI】
B60P3/073
(21)【出願番号】P 2021120979
(22)【出願日】2021-07-21
【審査請求日】2021-09-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510084910
【氏名又は名称】木村 弘信
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】木村 弘信
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-224043(JP,A)
【文献】特開2009-262639(JP,A)
【文献】特許第2986725(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2007/0020077(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0065494(US,A1)
【文献】米国特許第05795115(US,A)
【文献】中国特許出願公開第106740425(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/073- 3/079
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナにより車両を運搬する際に車輪のホイールに取り付けて使用する補助具であって、
第1外径寸法を有し、軸線方向に延びる円筒部と、
前記円筒部に対して前記軸線方向の一方側につながり、前記第1外径寸法よりも大である第2外径寸法を有する円環状の第1フランジ部と、
前記円筒部に対して前記軸線方向の他方側につながり、前記第2外径寸法よりも大である第3外径寸法を有する円環状の第2フランジ部と、を備え、
前記第1フランジ部の内周部および前記第2フランジ部の内周部は、それぞれ角丸め形状とされている、車両運搬用補助具。
【請求項2】
前記円筒部、前記第1フランジ部、前記第2フランジ部の各部は、金属材料により構成される、請求項1に記載の車両運搬用補助具。
【請求項3】
前記円筒部、前記第1フランジ部、前記第2フランジ部の各部の厚さは、1.5mm~3.0mmの範囲である、請求項2に記載の車両運搬用補助具。
【請求項4】
前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との前記軸線方向における間隔は、2.5mm~4.0mmの範囲である、請求項2または3に記載の車両運搬用補助具。
【請求項5】
前記円筒部、前記第1フランジ
部および前記第2フランジ部の少なくともいずれかは、永久磁石を含む、請求項2ないし4のいずれかに記載の車両運搬用補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナによって車両を運搬する際に用いられる車両運搬用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両を海運輸送により運搬する場合には、当該車両をコンテナに収容して船積みする方法が一般に採用されている。従来、コンテナ内により多くの車両を収容するために種々の工夫がなされており、たとえば車両を傾斜姿勢でコンテナに収容してコンテナ内の収容空間を有効に利用する方法が知られている。そして、このようなコンテナによる車両の運搬に際しては、たとえば当該車両を傾斜姿勢で保持するための車両運搬用架台が用いられる(たとえば、特許文献1を参照)。
【0003】
上記の車両運搬用架台は、運搬する車両に適したものが作製され、通常は1回の車両運搬のみに使用される。したがって、当該架台の作製コストが比較的高くつく。一方、車輪のホイールとしてスチールホイールが装備された車両においては、当該コンテナに収容して運搬する際、たとえばワイヤを用いて車両を吊り上げる方法が採用される。ワイヤを用いて車両を吊る場合、スチールホイールに設けられた孔にワイヤを通しつつ当該ワイヤをコンテナの係止具に係止させて張設する。すべての車輪について、各車輪毎に複数のワイヤを張設して所望の高さに配置することにより、車両を傾斜姿勢で吊ることができる。ワイヤを用いて車両を吊る手法によれば、低コストでコンテナ内に複数の車両を所望の傾斜姿勢で配置することが可能である。
【0004】
しかしながら、コンテナに収容した車両を船積みして海運輸送する際、当該海運輸送時の揺れにより、スチールホイールの孔に係止されたワイヤには繰り返し荷重がかかる。このようにワイヤに繰り返し荷重がかかると、ワイヤを構成する線材が徐々に切れてワイヤが切断するおそれがあり、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、コンテナにより車両を運搬する際、車輪のホイールに取り付けて使用するのに適した車両運搬用補助具を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明によって提供される車両運搬用補助具は、コンテナにより車両を運搬する際に車輪のホイールに取り付けて使用する補助具であって、第1外径寸法を有し、軸線方向に延びる円筒部と、前記円筒部に対して前記軸線方向の一方側につながり、前記第1外径寸法よりも大である第2外径寸法を有する円環状の第1フランジ部と、前記円筒部に対して前記軸線方向の他方側につながり、前記第2外径寸法よりも大である第3外径寸法を有する円環状の第2フランジ部と、を備え、前記第1フランジ部の内周部および前記第2フランジ部の内周部は、それぞれ角丸め形状とされている。
【0009】
好ましい実施の形態においては、前記円筒部、前記第1フランジ部、前記第2フランジ部の各部は、金属材料により構成される。
【0010】
好ましい実施の形態においては、前記円筒部、前記第1フランジ部、前記第2フランジ部の各部の厚さは、1.5mm~3.0mmの範囲である。
【0011】
好ましい実施の形態においては、前記第1フランジ部と前記第2フランジ部との前記軸線方向における間隔は、2.5mm~4.0mmの範囲である。
【0012】
好ましい実施の形態においては、前記円筒部、前記第1フランジ部および前記第2フランジ部の少なくともいずれかは、永久磁石を含む。
【0013】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る車両運搬用補助具の一例を示す平面図である。
【
図2】
図1に示した車両運搬用補助具の正面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿う断面図である。
【
図4】
図1に示した車両運搬用補助具の使用方法を説明するための断面図である。
【
図5】
図1に示した車両運搬用補助具の使用方法を説明するための断面図である。
【
図6】
図1に示した車両運搬用補助具の使用状態の一例を示す図である。
【
図7】
図1に示した車両運搬用補助具の使用状態の一例を示す図であり、
図6の部分拡大図である。
【
図9】
図8のIX-IX線に沿う拡大断面図である。
【
図10】本発明に係る車両運搬用補助具の他の例を示す、
図3と同様の断面図である。
【
図11】本発明に係る車両運搬用補助具の他の例を示す、
図3と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
図1~
図3は、本発明に係る車両運搬用補助具の一例を示す。本実施形態の車両運搬用補助具A1は、車両をコンテナにより運搬する際、車輪のホイールに取り付けて使用するものである。車両運搬用補助具A1は、円筒部1、第1フランジ部2および第2フランジ部3を備えている。
図1は、車両運搬用補助具A1を示す平面図である。
図2は、車両運搬用補助具A1の正面図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿う断面図である。
【0017】
円筒部1は、内周面11および外周面12を有し、軸線CLに沿って延びている。円筒部1(内周面11)の内径寸法(
図3に示す内径寸法d0)は、たとえば9mm~18mm程度である。円筒部1(外周面12)の外径寸法(第1外径寸法d1)は、たとえば10mm~26mm程度である。円筒部1の厚さt1は、たとえば1.5mm~3.0mmである。
【0018】
第1フランジ部2は、円筒部1に対して軸線CL方向の一方側(
図1における図中下側、
図3における図中左側)につながっており、円環状をなしている。第1フランジ部2は、内周部21、外周部22および内側面23を有する。内周部21は、円周方向全体にわたって丸みを帯びた角丸め形状とされている。具体的には、
図3に示すように、内周部21において、軸線CL方向の一方側(図中左側)の角部が丸められた形状である。内周部21の角丸めの半径は、たとえば2.0mm~3.0mm程度である。外周部22の外径寸法(第2外径寸法d2)は、円筒部1の第1外径寸法d1よりも大であり、たとえば10mm~30mm程度である。第1フランジ部2の厚さt2は、たとえば1.5mm~3.0mmである。内側面23は、第1フランジ部2において軸線CL方向の他方側(
図1における図中上側、
図3における図中右側)を向く平面である。
【0019】
第2フランジ部3は、円筒部1に対して軸線CL方向の他方側(
図1における図中上側、
図3における図中右側)につながっており、円環状をなしている。第2フランジ部3は、内周部31、外周部32および内側面33を有する。内周部31は、円周方向全体にわたって丸みを帯びた角丸め形状とされている。具体的には、
図3に示すように、内周部31において、軸線CL方向の他方側(図中右側)の角部が丸められた形状である。内周部31の角丸めの半径は、たとえば2.0mm~3.0mm程度である。外周部32の外径寸法(第3外径寸法d3)は、第1フランジ部2(外周部22)の外径寸法(第2外径寸法d2)よりも大であり、たとえば20mm~40mm程度である。第2フランジ部3の厚さt3は、たとえば1.5mm~3.0mmである。内側面33は、第2フランジ部3において軸線CL方向の一方側(
図1における図中下側、
図3における図中左側)を向く平面である。
【0020】
図3に示すように、円筒部1の外周面12と、第1フランジ部2の内側面23と、第2フランジ部3の内側面33とで囲まれた部位は、凹溝状とされている。第1フランジ部2(内側面23)と第2フランジ部3(内側面33)との軸線CL方向における間隔L1は、たとえば2.5mm~4.0mmである。
【0021】
本実施形態において、車両運搬用補助具A1(円筒部1、第1フランジ部2および第2フランジ部3の各部)は、金属材料により構成される。円筒部1、第1フランジ部2および第2フランジ部3の各部を構成する金属材料は特に限定されず、たとえば鉄または鉄を主成分とする合金が挙げられる。鉄または鉄を主成分とする合金は、車両運搬用補助具A1が所定の強度を確保する上で適している。車両運搬用補助具A1を作製する手法としては、たとえば鍛造加工や鍛造により得られた鍛造材の切削加工が挙げられる。また、車両運搬用補助具A1の各部において許容される寸法精度によっては、車両運搬用補助具A1を鋳造などの手法により作製してもよい。
【0022】
次に、上記構成の車両運搬用補助具A1の使用方法について説明する。
【0023】
車両運搬用補助具A1は、たとえばコンテナ内において車両を傾斜姿勢で配置する際に使用される。
図7を参照すると理解されるように、車両運搬用補助具A1は、車輪6のホイール61に取り付けられる。当該ホイール61は、いわゆるスチールホイールであり、主板部611および複数の孔612を有する。主板部611は、所定厚さを有する板状であり、適宜湾曲している。主板部611の厚さt4は、車両運搬用補助具A1における第1フランジ部2と第2フランジ部3との間隔L1(
図3参照)よりも小であり、たとえば2.0mm~2.5mm程度である。複数の孔612は、各々、主板部611の板厚方向に貫通する貫通孔である。複数の孔612は、ホイール61の円周方向に沿って一定ピッチで配置されている。
図7に示した例では、主板部611には16個の孔612が形成されている。なお、複数の孔612の各々は、主板部611の湾曲部分に形成される場合もあるが、
図4以降の図面においては図示説明の便宜上、孔612が主板部611の平板部分に形成されるように表している。
【0024】
孔612の内径寸法(
図4に示す内径寸法d4)は、車両運搬用補助具A1における第1フランジ部2の外径寸法である第2外径寸法d2(
図3参照)よりも少し大きい。これにより、
図4、
図5に示すように、第1フランジ部2は、孔612を通過することが可能である。一方、車両運搬用補助具A1における第2フランジ部3の外径寸法である第3外径寸法d3(
図3参照)は、孔612の内径寸法(
図4に示す内径寸法d4)よりも大である。これにより、第2フランジ部3は、孔612を通過できない。このような構成により、
図5に示すように、車両運搬用補助具A1において円筒部1(外周面12)、第1フランジ部2(内側面23)および第2フランジ部3(内側面33)によって囲まれた凹溝状部分に、主板部611における孔612の周縁部を係止させることができる。なお、主板部611における孔612の周縁部は、比較的鋭利な角形状とされている。
【0025】
図6は、コンテナC内において、複数の車両運搬用補助具A1を用いて複数の車両Bを傾斜姿勢で配置した状態の一例を示す。傾斜姿勢で配置される車両Bにおいては、車輪6のホイール61の孔612にワイヤ81を通しつつ、当該ワイヤ81を、コンテナCに設けられた環状の係止具7に係止させて張設する。各ワイヤ81の張設した状態は、複数のワイヤクリップ82により固定することで保持される。
図6に示すように、すべての車輪6について、各車輪6毎に複数のワイヤ81を張設して所望の高さに配置することにより、車両Bを傾斜姿勢で吊ることができる。
【0026】
図7は、
図6の部分拡大図であり、1つの車輪6についてのワイヤ81の張設状態を示している。
図7に示すように、1つの車輪6について、上方に2本のワイヤ81を張設し、且つ下方に1本のワイヤ81を張設することによって、当該車輪6が所望位置に配置される。
図7に示すように、各ワイヤ81は、ホイール61の2つの孔612に通される。ワイヤ81を通す各孔612には、
図4、
図5に示した手順によって、予め車両運搬用補助具A1を取り付けておく。そして、各ワイヤ81は、孔612に取り付けられた車両運搬用補助具A1の円筒部1に挿通されている。
【0027】
図8は、
図7の部分拡大図であり、
図9は、
図8のIX-IX線に沿う拡大断面図である。上述のように、各ワイヤ81は、車両運搬用補助具A1の円筒部1に挿通されており、車両運搬用補助具A1は、孔612に取り付けられている。これにより、張設されたワイヤ81は、環状の車両運搬用補助具A1のみに接触しつつ孔612に挿通している。
【0028】
車両運搬用補助具A1は、軸線CL方向に延びる円筒部1と、円筒部1に対して軸線CL方向の一方側につながる第1フランジ部2と、円筒部1に対して軸線CL方向の他方側につながる第2フランジ部3と、を備える。
図9に示されるように、車両運搬用補助具A1に挿通されつつ張設されたワイヤ81により、第1フランジ部2の内周部21および第2フランジ部3の内周部31のワイヤ81当接部位には大きな荷重がかかる。コンテナCに収容した車両Bを船積みして海運輸送する際、当該海運輸送時の揺れにより、ワイヤ81においては、第1フランジ部2の内周部21および第2フランジ部3の内周部31の当接部位に繰り返し荷重がかかる。本実施形態においては、第1フランジ部2の内周部21および第2フランジ部3の内周部31は、それぞれ角丸め形状とされている。このような構成によれば、ワイヤ81を構成する線材が切れるといった不都合は防止される。したがって、ワイヤ81の切断を適切に防止することができ、車両Bを吊った状態におけるワイヤ81の耐久性を向上させることができる。
【0029】
第1フランジ部2(外周部22)の第2外径寸法d2は、円筒部1の第1外径寸法d1よりも大であり、第2フランジ部3(外周部32)の第3外径寸法d3は、第2外径寸法d2よりも大である。このような構成によれば、第1フランジ部2についてはホイール61に形成された孔612の通過を許容し、且つ第2フランジ部3については孔612の通過を阻止することができる。したがって、円筒部1(外周面12)、第1フランジ部2(内側面23)および第2フランジ部3(内側面33)によって囲まれた凹溝状部分に、主板部611における孔612の周縁部を係止させることができる。
【0030】
車両運搬用補助具A1において、円筒部1、第1フランジ部2および第2フランジ部3の各部は、金属材料により構成されている。このような構成によれば、車両運搬用補助具A1は、その使用時において張設されたワイヤ81により荷重を受けても破損しない十分な強度を確保することが可能である。
【0031】
本実施形態において、円筒部1、第1フランジ部2および第2フランジ部3の各部の厚さt1~t3は、1.5mm~3.0mmである。このような構成によれば、車両運搬用補助具A1を孔612に取り付け易く、且つ適度な強度を維持することが可能である。
【0032】
本実施形態において、第1フランジ部2(内側面23)と第2フランジ部3(内側面33)との軸線CL方向における間隔L1は、2.5mm~4.0mmである。このような構成によれば、円筒部1(外周面12)、第1フランジ部2(内側面23)および第2フランジ部3(内側面33)によって囲まれた凹溝状部分に主板部611における孔612の周縁部を係止させた際に、当該孔612の周縁部と第2フランジ部3との間の隙間が過大となることは回避される。したがって、車両運搬用補助具A1が主板部611に対して過度に傾くことなく、孔612の周縁部に適切に係止させることができる。
【0033】
図10、
図11は、本発明に係る車両運搬用補助具の他の例を示す。なお、
図10以降の図面において、上記実施形態の車両運搬用補助具A1と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
【0034】
図10に示した車両運搬用補助具A2は、円筒部1、第1フランジ部2および第2フランジ部3の各部の材質が上記実施形態の車両運搬用補助具A1と異なっている。車両運搬用補助具A2において、円筒部1、第1フランジ部2および第2フランジ部3の各部は、保磁力が高い材料を含んで構成された永久磁石である。当該永久磁石の種類は特に限定されず、たとえばネオジム磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石などを採用することができる。
【0035】
車両運搬用補助具A2は、軸線CL方向に延びる円筒部1と、円筒部1に対して軸線CL方向の一方側につながる第1フランジ部2と、円筒部1に対して軸線CL方向の他方側につながる第2フランジ部3と、を備える。車両運搬用補助具A2の使用時には、車両運搬用補助具A2に挿通されつつ張設されたワイヤ81により、第1フランジ部2の内周部21および第2フランジ部3の内周部31のワイヤ81当接部位には大きな荷重がかかる。コンテナCに収容した車両Bを船積みして海運輸送する際(
図6参照)、当該海運輸送時の揺れにより、ワイヤ81においては、第1フランジ部2の内周部21および第2フランジ部3の内周部31の当接部位に繰り返し荷重がかかる。本実施形態の車両運搬用補助具A2においては、第1フランジ部2の内周部21および第2フランジ部3の内周部31は、それぞれ角丸め形状とされている。このような構成によれば、ワイヤ81を構成する線材が切れるといった不都合は防止される。したがって、ワイヤ81の切断を適切に防止することができ、車両Bを吊った状態におけるワイヤ81の耐久性を向上させることができる。
【0036】
車両運搬用補助具A2は、円筒部1、第1フランジ部2および第2フランジ部3の各部は、保磁力が高い材料を含んで構成された永久磁石である。このような構成によれば、車両運搬用補助具A2をホイール61の孔612に取り付ける際、車両運搬用補助具A2の磁力によって当該車両運搬用補助具A2が孔612の周縁部に吸着保持される。これにより、車両運搬用補助具A2を孔612に取り付けた後、車両運搬用補助具A2にワイヤ81を通す作業が行いやすい。その他にも、上記実施形態の車両運搬用補助具A1と同様の作用効果を奏する。
【0037】
図11に示した車両運搬用補助具A3は、主に円筒部1の構成が上記実施形態の車両運搬用補助具A1と異なっている。車両運搬用補助具A3において、円筒部1は、内側円筒部1Aおよび外側円筒部1Bを含んで構成される。内側円筒部1Aと、第1フランジ部と、第2フランジ部3とは一体につながっており、たとえば金属母材の切削加工により作製される。内側円筒部1Aは、内周面11を有する。外側円筒部1Bは、内側円筒部1Aの外周を覆っている。外側円筒部1Bは、外周面12を有する。外側円筒部1Bは、保磁力が高い材料を含んで構成された永久磁石である。当該永久磁石の種類は特に限定されず、たとえばネオジム磁石、フェライト磁石、アルニコ磁石などを採用することができる。外側円筒部1Bは、たとえば2つ割りまたは3つ割りの部分円筒形状とされており、これら2つまたは3つの部材全体により、略円筒状をなしている。
【0038】
車両運搬用補助具A3は、軸線CL方向に延びる円筒部1と、円筒部1に対して軸線CL方向の一方側につながる第1フランジ部2と、円筒部1に対して軸線CL方向の他方側につながる第2フランジ部3と、を備える。車両運搬用補助具A3の使用時には、車両運搬用補助具A1に挿通されつつ張設されたワイヤ81により、第1フランジ部2の内周部21および第2フランジ部3の内周部31のワイヤ81当接部位には大きな荷重がかかる。コンテナCに収容した車両Bを船積みして海運輸送する際(
図6参照)、当該海運輸送時の揺れにより、ワイヤ81においては、第1フランジ部2の内周部21および第2フランジ部3の内周部31の当接部位に繰り返し荷重がかかる。本実施形態の車両運搬用補助具A3においては、第1フランジ部2の内周部21および第2フランジ部3の内周部31は、それぞれ角丸め形状とされている。このような構成によれば、ワイヤ81を構成する線材が切れるといった不都合は防止される。したがって、ワイヤ81の切断を適切に防止することができ、車両Bを吊った状態におけるワイヤ81の耐久性を向上させることができる。
【0039】
車両運搬用補助具A3において、円筒部1を構成する外側円筒部1Bは、保磁力が高い材料を含んで構成された永久磁石である。このような構成によれば、車両運搬用補助具A3をホイール61の孔612に取り付ける際、外側円筒部1Bの磁力によって車両運搬用補助具A3が孔612の周縁部に吸着保持される。これにより、車両運搬用補助具A3を孔612に取り付けた後、車両運搬用補助具A3にワイヤ81を通す作業が行いやすい。その他にも、上記実施形態の車両運搬用補助具A1と同様の作用効果を奏する。
【0040】
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。本発明に係る車両運搬用補助具の各部の具体的な形状や材質なども、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態において、円筒部、第1フランジ部、第2フランジ部の各部が金属材料により構成される場合について説明したが、たとえばエンジニアリングプラスチックなど所定の強度を有する合成樹脂材料により構成してもよい。
【符号の説明】
【0041】
A1,A2,A3:車両運搬用補助具
B :車両
C :コンテナ
1 :円筒部
1A :内側円筒部
1B :外側円筒部
11 :内周面
12 :外周面
2 :第1フランジ部
21 :内周部
22 :外周部
23 :内側面
3 :第2フランジ部
31 :内周部
32 :外周部
33 :内側面
6 :車輪
61 :ホイール
611 :主板部
612 :孔
7 :係止具
81 :ワイヤ
82 :ワイヤクリップ
d0 :(円筒部の)内径寸法
d1 :第1外径寸法
d2 :第2外径寸法
d3 :第3外径寸法
d4 :(孔の)内径寸法
t1 :(円筒部の)厚さ
t2 :(第1フランジ部の)厚さ
t3 :(第2フランジ部の)厚さ
t4 :(主板部の)厚さ
CL :軸線
L1 :(第1フランジ部と第2フランジ部との軸線方向における)間隔
【要約】
【課題】コンテナにより車両を運搬する際、車輪のホイールに取り付けて使用するのに適した車両運搬用補助具を提供する。
【解決手段】コンテナにより車両を運搬する際に車輪のホイールに取り付けて使用する車両運搬用補助具A1であって、第1外径寸法d1を有し、軸線CL方向に延びる円筒部1と、円筒部1に対して軸線CL方向の一方側につながり、第1外径寸法d1よりも大である第2外径寸法d2を有する円環状の第1フランジ部2と、円筒部1に対して軸線CL方向の他方側につながり、第2外径寸法d2よりも大である第3外径寸法d3を有する円環状の第2フランジ部3と、を備え、第1フランジ部2の内周部21および第2フランジ部3の内周部31は、それぞれ角丸め形状とされている。
【選択図】
図3