(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】顔料組成物、着色組成物、塗料、インキ、インキセット、印刷物、及び包装材料
(51)【国際特許分類】
C09B 57/04 20060101AFI20220201BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20220201BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20220201BHJP
C09B 67/22 20060101ALI20220201BHJP
C09D 7/41 20180101ALI20220201BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20220201BHJP
C09D 11/328 20140101ALI20220201BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
C09B57/04
B41M5/00 120
C09B67/20 J
C09B67/22 F
C09D7/41
C09D11/037
C09D11/328
C09D201/00
(21)【出願番号】P 2021095559
(22)【出願日】2021-06-08
【審査請求日】2021-06-11
(31)【優先権主張番号】P 2020121014
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河野 孝佳
(72)【発明者】
【氏名】瀧尻 孝平
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛士
(72)【発明者】
【氏名】坂本 昌平
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112537(JP,A)
【文献】特表2009-543917(JP,A)
【文献】特開2020-090627(JP,A)
【文献】特開2008-103474(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101654565(CN,A)
【文献】特開平05-132630(JP,A)
【文献】特開平03-153761(JP,A)
【文献】特開昭57-035565(JP,A)
【文献】特開昭53-000225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 57/04
B41M 5/00
C09B 67/20
C09B 67/22
C09D 7/41
C09D 11/037
C09D 11/328
C09D 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)で表されるイソインドリン化合物と、下式(2)で表されるイソインドリン化合物とを含む顔料組成物。
【化1】
[式中、R
1~R
4は、水素原子を表し、
R
5、R
6は、それぞれ独立してアルキル基を表し、
AおよびA’は、下式(3)、下式(4)、又は下式(5)で表される基を表し、
【化2】
式中、Xは-O-又は-NH-を表し、R
7はアルキル基又はアリール基を表し、
R
8
およびR
9
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、
アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、チオアルキル基、又はチオアリール基を表
し、
R
10
~R
14
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキ
シ基、アリール基、アリールオキシ基、チオアルキル基、又はチオアリール基を表す。]
【請求項2】
請求項1に記載の顔料組成物および分散媒体を含む、着色組成物。
【請求項3】
請求項2記載の着色組成物を含む、成形用組成物。
【請求項4】
請求項2に記載の着色組成物を含む、トナー。
【請求項5】
請求項2に記載の着色組成物を含む、塗料。
【請求項6】
請求項2に記載の着色組成物を含む、印刷インキ。
【請求項7】
請求項2に記載の着色組成物を含む、インクジェットインキ。
【請求項8】
少なくとも、イエローインキ、シアンインキ、及びマゼンタインキを含むインキセットであって、
前記イエローインキが、請求項2記載の着色組成物を含むインキである、インキセット。
【請求項9】
少なくとも、イエローインキ、シアンインキ、及びマゼンタインキを含むグラビア印刷インキセットであって、
前記イエローインキが、請求項2記載の着色組成物を含むインキである、グラビア印刷インキセット。
【請求項10】
さらに、クリアインキを含む、請求項9に記載のグラビア印刷インキセット。
【請求項11】
基材、および請求項9に記載のグラビア印刷インキセットから形成される印刷層を含む、印刷物。
【請求項12】
基材、請求項9に記載のグラビア印刷インキセットから形成される印刷層、およびクリアインキから形成される脱離層を含む、印刷物。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の印刷物を含む、包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソインドリン化合物を含む顔料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品、トナー、塗料、及び印刷インキなどの用途で使用される代表的な着色剤として、顔料が挙げられる。顔料は、無機顔料と有機顔料とに大別され、有機顔料は、一般的に、無機顔料と比べて耐候性及び耐熱性に劣る傾向がある。しかし、有機顔料は、色の鮮明性及び着色力の観点では無機顔料よりも優れることから、様々な用途で使用されている。例えば、有機顔料として、アゾ顔料、キノフタロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、アントラキノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、及びキナクリドン顔料などが知られている。
【0003】
一方、近年、環境影響の低減や安全衛生性担保の観点から、第一級芳香族アミン、及び重金属などを含まない有機顔料及び着色剤の需要が増大している。黄色から紅色の色相を有する有機顔料として、主にアゾ顔料が使用されているが、アゾ顔料には、使用されている原料、あるいは光又は熱による分解によって、成分中に第一級芳香族アミンが含まれることがある。そのため、近年では、環境適合性・安全衛生性の観点から、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー139、及びC.I.ピグメントレッド260といった、第一級芳香族アミンを含まないイソインドリン顔料が注目されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、プラスチックの着色用途に向けたイソインドリン顔料を開示している。また、特許文献2は、水、分散剤、及びイソインドリン顔料を含む、インクジェットインキ用の分散体を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2009-543917号公報
【文献】特開平10-140066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のイソインドリン化合物は、分散が難しく、かつ分散安定性が悪かった。また、イソインドリン化合物を含む着色組成物は、耐候性や耐熱性が不足する問題もあった。
さらにイソインドリン化合物を水性インクジェットインキ用途に使用する場合、保存安定性の面でインキのpH値を7以上10以下に設定する必要があるが、塩基性雰囲気下では、経時退色の問題があった。
【0007】
本発明は、分散性、耐候性および耐熱性に優れ、保存安定性が良好であり、塩基性雰囲気下での経時退色を抑制する、イソインドリン化合物を含む顔料組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の顔料組成物は、下式(1)で表されるイソインドリン化合物と、下式(2)で表されるイソインドリン化合物とを含む。
【0009】
【0010】
式中、R
1~R
4は、水素原子を表し、R
5、R
6は、それぞれ独立して、アルキル基を表し、A及びA’は、下式(3)、下式(4)、又は下式(5)で表される基を表し、
【化2】
【0011】
式中、Xは-O-又は-NH-を表し、R7はアルキル基又はアリール基を表し、
R8~R14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、チオアルキル基、又はチオアリール基を表す。
【発明の効果】
【0012】
上記の本発明によれば、分散性、耐候性および耐熱性に優れ、保存安定性が良好であり、塩基性雰囲気下での経時退色を抑制する、イソインドリン化合物を含む顔料組成物を提供できる。また、分散性・保存安定性が良好であり、彩度の高い画像等を形成できるイエローインキを含むインキセット、印刷物、及び包装材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、製造例1-1で得たイソインドリン化合物のX線回折スペクトルである
【
図2】
図2は、製造例1-2で得たイソインドリン化合物のX線回折スペクトルである
【
図3】
図3は、実施例1-1で得たイソインドリン化合物のX線回折スペクトルである
【
図4】
図4は、実施例1-2で得たイソインドリン化合物のX線回折スペクトルである
【
図5】
図5は、実施例1-4で得たイソインドリン化合物のX線回折スペクトルである
【
図6】
図6は、実施例1-5で得たイソインドリン化合物のX線回折スペクトルである
【
図7】
図7は、実施例1-8で得たイソインドリン化合物のX線回折スペクトルである
【
図8】
図8は、実施例1-11で得たイソインドリン化合物のX線回折スペクトルである
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず本明細書の用語を定義する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、又は「(メタ)アクリルアミド」と表記した場合、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル及び/又はメタクリル」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、又は「アクリルアミド及び/又はメタクリルアミド」を意味する。また、「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
【0015】
<顔料組成物>
本発明の顔料組成物は、式(1)で表されるイソインドリン化合物と、式(2)で表されるイソインドリン化合物を含む。
【0016】
本発明の顔料組成物は、上記の通り2種類のイソインドリン化合物を含むことで、従来、イソインドリン化合物の弱点であった分散性、耐候性、耐熱性、保存安定性、塩基性雰囲気下での経時退色の問題を解決できる。本発明の顔料組成物は、プラスチック成形体、トナー、塗料、印刷インキ、インクジェットインキ等の幅広い用途に使用できる。
【0017】
[イソインドリン化合物(1)]及び[イソインドリン化合物(2)]
以下、式(1)で表されるイソインドリン化合物をイソインドリン化合物(1)といい、式(2)で表されるイソインドリン化合物をイソインドリン化合物(2)という。
【0018】
【0019】
顔料組成物100質量%中、イソインドリン化合物(1)の含有量は、50~99質量%が好ましく、70~95質量%がより好ましい。
【0020】
式(1)中、R1~R4は、水素原子を表す。
R5、及びR6は、それぞれ独立してアルキル基を表す。
A及びA’は、下式(3)、下式(4)、又は下式(5)で表される基を表す。
【0021】
【0022】
式(3)中、Xは-O-又は-NH-を表し、R7はアルキル基又はアリール基を表す。
式(4)及び式(5)中、R8~R14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、チオアルキル基、又はチオアリール基を表す。
【0023】
上式(2)中、R5、及びR6は、それぞれ独立して、アルキル基を表す。アルキル基(-R)の炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましい。アルキル基は、直鎖構造、分岐構造、単環構造、又は縮合多環構造のいずれであってもよい。
【0024】
特に限定されないが、アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、2-エチルヘキシル基、2-ヘキシルドデシル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、tert-オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、4-デシルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0025】
上記アルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子などの他の置換基で置換されてもよい。すなわち、上記アルキル基は、フルオロアルキル基であってよく、パーフルオロアルキル基であってもよい。フルオロアルキル基は、例えば、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基が挙げられる。
【0026】
R5及びR6は、同じアルキル基であることがより好ましい。アルキル基は、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、炭素数1又は2のアルキル基(メチル基、エチル基)がさらに好ましい。
【0027】
上式(3)中、Xは、-O-又は-NH-を表しており、好ましくは-NH-である。
R7において、アルキル基及びアリール基は、先の説明と同義である。耐熱性、耐候性、及び分散安定性の観点から、アルキル基は、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がより好ましい。
【0028】
式(4)及び式(5)中、R8~R14におけるハロゲン原子は、特に限定されないが、例えば、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素が挙げられる。
【0029】
式(4)及び式(5)中、R8~R14におけるアルキル基(-R)の炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましい。アルキル基は、直鎖構造、分岐構造、単環構造、又は縮合多環構造のいずれであってもよい。
特に限定されないが、アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、2-エチルヘキシル基、2-ヘキシルドデシル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、tert-オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、又は4-デシルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0030】
上記アルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子などの他の置換基で置換されてもよい。すなわち、上記アルキル基は、フルオロアルキル基であってよく、パーフルオロアルキル基であってもよい。フルオロアルキル基は、例えば、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基が挙げられる。
【0031】
上記アルキル基は、2以上のアルキル基(但し、一方はアルキレン基となる)が連結基を介して互いに結合した構造を有してもよい。連結基の具体例として、エステル結合(-COO-)、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)が挙げられる。すなわち、本明細書において、アルキル基は、例えば、「-R’-O-R」で表される基が挙げられる(R’は上記アルキル基から水素原子を1つ除いた原子団を表す)。具体例として、-C2H4-O-C2H5が挙げられる。
【0032】
本明細書において、アルキル基は、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がさらに好ましい。
【0033】
上式(4)及び式(5)中、R8~R14におけるアルコキシ基は、上述のアルキル基(-R)に酸素原子が結合した基(-OR)である。
【0034】
上式(4)及び式(5)中、R8~R14おけるアリール基(-Ar)は、芳香族炭化水素から水素原子を1つ除いた原子団である。炭素数は6~30が好ましく、6~20がより好ましい。
上記アリール基は、例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、クオーターフェニリル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、又はオバレニル基等が挙げられる。これらの中でもフェニル基が好ましい。
【0035】
上式(4)及び式(5)中、R8~R14におけるアリールオキシ基は、上述のアリール基(-Ar)に酸素原子が結合した基(-OAr)である。本明細書において、アリールオキシ基は、フェノキシ基であることが好ましい。
【0036】
上式(4)及び式(5)中、R8~R14おけるチオアルキル基は、上述のアルキル基に硫黄原子が結合した基(-SR)である。一実施形態において、チオアルキル基は、好ましくは、直鎖構造を有するアルキル基に硫黄原子が結合した基が挙げられる。また、チオアリール基は、上述のアリール基に硫黄原子が結合した基(-SAr)である。これらの中でもチオアリール基は、チオフェニル基が好ましい。
【0037】
本明細書において、上式(4)及び式(5)中、R8~R14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のフルオロアルキル基、アルコキシ基(アルキル基の炭素数は1~6)、フェニル基、フェノキシ基、チオアルキル基(アルキル基の炭素数は1~6)、及びチオフェニル基からなる群から選択されることが好ましい。
【0038】
上式(4)及び式(5)中、R8~R14におけるアリールオキシ基は、上述のアリール基(-Ar)に酸素原子が結合した基(-OAr)である。本明細書において、アリールオキシ基は、フェノキシ基であることが好ましい。
【0039】
上式(4)及び式(5)中、R8~R14おけるチオアルキル基は、上述のアルキル基に硫黄原子が結合した基(-SR)である。一実施形態において、チオアルキル基は、好
ましくは、直鎖構造を有するアルキル基に硫黄原子が結合した基が挙げられる。また、チオアリール基は、上述のアリール基に硫黄原子が結合した基(-SAr)である。これらの中でもチオアリール基は、チオフェニル基が好ましい。
【0040】
上式(4)及び式(5)中、R8~R14は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のフルオロアルキル基、アルコキシ基(アルキル基の炭素数は1~6)、フェニル基、フェノキシ基、チオアルキル基(アルキル基の炭素数は1~6)、及びチオフェニル基からなる群から選択されることが好ましい。
【0041】
イソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)は、それぞれ単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0042】
[イソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)の製造方法]
本実施形態の顔料組成物に使用するイソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)は、公知の合成方法によって製造ができる。例えば、下記スキーム1に示すように、式(6)で表されるフタロニトリル(以下、化合物(6)という)、又は式(7)で表される1,3-ジイミノイソインドリン(以下、化合物(7)という)を出発原料として合成できる。
以下、イソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)の具体例に沿って、合成方法を説明する。以下の説明では、各式で記載した番号を化合物の番号として記載する。
【0043】
(AおよびA’が式(3)である化合物)
一実施形態において、イソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)は、下記スキーム1-1、1-2に従って製造できる。
【0044】
【0045】
スキーム1-1は、溶媒中、化合物(6)と塩基とを反応させて化合物(7)を得る第一工程(S1);次いで、水の存在下で、化合物(7)と、化合物(8)とを反応させる第二工程(S2);次いで、酢酸の存在下で、化合物(9)と、化合物(10)とを反応させる第三工程(S3)を含んでよい。スキーム1-1における各工程での反応温度は、10~100℃程度が好ましい。
【0046】
スキーム1-2も同様に、溶媒中、化合物(6)と塩基とを反応させて化合物(7)を得る第一工程(S1);次いで、水の存在下で、化合物(7)と、化合物(8)とを反応させる第二工程(S2);次いで、酢酸の存在下で、化合物(9)と、化合物(12)とを反応させる第三工程(S3)を含んでよい。スキーム1-2における各工程での反応温度は、10~100℃程度が好ましい。
【0047】
化合物(12)の置換基R5とR6の関係が非対称となる場合、最終生成物は、異性体を含む混合物として得られる。
一方、化合物(12)の置換基R5とR6の関係が全て対称である場合、最終生成物は単一の化合物となる。
顔料組成物を構成するイソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)は、異性体を含む混合物、及びそれぞれ単一の化合物のいずれであってもよい。
【0048】
第一工程(S1)に用いる溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、及びグリコールなどのアルコール、グリコールエーテル、及びテトラヒドロフラン等のエーテル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドン等の非環状又は環状のアミドが挙げられる。これらの中でも、非環状又は環状のアミドが好ましく、テトラヒドロフラン又はホルムアミドがより好ましい。
【0049】
溶媒は、単独または2種類以上を併用して使用できる。溶媒の使用量は、化合物(6)の100質量部に対して、5~15倍の量が好ましく、5~10倍の量がより好ましい。
【0050】
塩基は、例えば、アルカリ金属水酸化物、リチウム、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属、アルカリ金属アミド、アルカリ金属水素化物;及び炭素数1~10のアルキル鎖、又はアルキレン鎖を有する第1級、第2級又は第3級脂肪族アルコール由来の、アルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキシドが挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム、又は炭酸カリウムが好ましい。
【0051】
また、別の合成法として、イソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2
)は、例えば、下記スキーム2-1、2-2に従って製造できる。
【化7】
【0052】
スキーム2-1は、アンモニア水溶液の存在下で、化合物(7)と、化合物(8)とを反応させる第二工程(S2);次いで、酢酸の存在下で、化合物(9)と、化合物(10)と反応させる第三工程(S3)を含んでよい。
同様にスキーム2-2は、アンモニア水溶液の存在下で、化合物(7)と、化合物(8)とを反応させる第二工程(S2);次いで、酢酸の存在下で、化合物(9)と、化合物(12)と反応させる第三工程(S3)を含んでよい。
スキーム2-1および2-2の第二工程(S2)において、アンモニア水溶液の使用量は、28%アンモニア水溶液を用いる場合、化合物(7)の100質量部に対して、1~20倍の量が好ましく、1~5倍の量がより好ましい。
なお、イソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)は、スキーム2-1、2-2に従って製造することが好ましい。
【0053】
(AおよびA’が式(4)である化合物)
一実施形態において、イソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)は、下記スキーム3-1、3-2に従って製造できる。
【化8】
【0054】
スキーム3-1は、溶媒中、化合物(6)と塩基とを反応させて化合物(7)を得る第一工程(S1);次いで、酢酸の存在下で、化合物(7)と、化合物(10)と反応させる第二工程(S2);次いで、酢酸の存在下で、化合物(14)と、化合物(10)とを反応させる第三工程(S3)を含んでよい。スキーム3-1における各工程での反応は、10~100℃で行うことが好ましい。
【0055】
同様にスキーム3-2は、溶媒中、化合物(6)と塩基とを反応させて化合物(7)を得る第一工程(S1);次いで、酢酸の存在下で、化合物(7)と、化合物(12)と反応させる第二工程(S2);次いで、酢酸の存在下で、化合物(16)と、化合物(17)とを反応させる第三工程(S3)を含んでよい。スキーム3-2における各工程での反応は、10~100℃で行うことが好ましい。
【0056】
化合物(12)の置換基R5とR6の関係が非対称となる場合、生成物は、異性体としてE体及びZ体を含む混合物として得られる。さらに、化合物(17)の置換基R8とR9の関係が非対称となる場合、生成物は、異性体としてE体及びZ体を含む混合物として得られる。
一方、化合物(12)の置換基R5とR6、及び化合物(17)の置換基R8とR9の関係が全て対称である場合、最終生成物は単一の化合物となる。
顔料組成物を構成するイソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)は、異性体を含む混合物、及び単一の化合物のいずれであってもよい。
【0057】
第一工程(S1)に用いる溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、グリコールなどのアルコール;グリコールエーテル、及びテトラヒドロフランなどのエーテル;及びホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどの非環状又は環状のアミドが挙げられる。これらの中でも
、非環状又は環状のアミドが好ましく、テトラヒドロフラン又はホルムアミドがより好ましい。
【0058】
溶媒は、単独または2種類以上を併用して使用できる。溶媒の使用量は、化合物(6)の100質量部に対して、5~15倍の量が好ましく、5~10倍の量がより好ましい。
【0059】
塩基は、例えば、アルカリ金属水酸化物、リチウム、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属、アルカリ金属アミド、アルカリ金属水素化物;及び炭素数1~10のアルキル鎖、またはアルキレン鎖を有する第1級、第2級又は第3級脂肪族アルコール由来の、アルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキシドが挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム、又は炭酸カリウムが好ましい。
【0060】
また、別の合成法として、イソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)は、下記スキーム4-1、4-2に従って製造できる。
【0061】
【0062】
スキーム4-1は、酢酸の存在下で、化合物(7)と、化合物(10)とを反応させる第二工程(S2);次いで、酢酸の存在下で、化合物(14)と化合物(10)とを反応させる第三工程(S3)を含んでよい。
【0063】
同様にスキーム4-2は、酢酸の存在下で、化合物(7)と、化合物(12)とを反応させる第二工程(S2);次いで、酢酸の存在下で、化合物(16)と化合物(17)とを反応させる第三工程(S3)を含んでよい。
【0064】
(Aが式(5)である化合物)
一実施形態において、イソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)は、下記スキーム5-1、5-2に従って製造できる。
【0065】
【0066】
スキーム5-1は、溶媒中、化合物(6)と塩基とを反応させて化合物(7)を得る第一工程(S1);次いで、水の存在下で、化合物(7)と、化合物(19)とを反応させる第二工程(S2);次いで、酢酸の存在下で、化合物(20)と、化合物(10)とを反応させる第三工程(S3)を含んでよい。スキーム5-1における各工程での反応温度は、10~100℃が好ましい。
【0067】
同様にスキーム5-2は、溶媒中、化合物(6)と塩基とを反応させて化合物(7)を得る第一工程(S1);次いで、水の存在下で、化合物(7)と、化合物(19)とを反応させる第二工程(S2);次いで、酢酸の存在下で、化合物(20)と、化合物(12)とを反応させる第三工程(S3)を含んでよい。スキーム5-2における各工程での反応温度は、10~100℃が好ましい。
【0068】
化合物(12)の置換基R5とR6の関係が非対称となる場合、最終生成物は、異性体を含む混合物として得られる。
一方、化合物(12)の置換基R5とR6の関係が対称である場合、最終生成物は単一の化合物となる。
顔料組成物を構成するイソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)は、異性体を含む混合物、及び単一の化合物のいずれであってもよい。
【0069】
第一工程(S1)に用いる溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、及びグリコールなどのアルコール;グリコールエーテル、及びテトラヒドロフランなどのエーテル;ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドンなどの非環状又は環状のアミドが挙げられる。これらの中でも、非環状又は環状アミドが好ましく、テトラヒドロフラン又はホルムアミドが好ましい。
【0070】
単独または2種類以上を併用して使用できる。溶媒の使用量は、化合物(6)の100質量部に対して、5~15倍の量が好ましく、5~10倍の量がより好ましい。
【0071】
塩基は、例えば、アルカリ金属水酸化物、リチウム、ナトリウム又はカリウムなどのアルカリ金属、アルカリ金属アミド、アルカリ金属水素化物;及び炭素数1~10のアルキル鎖、又はアルキレン鎖を有する第1級、第2級又は第3級脂肪族アルコール由来の、アルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキシドが挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム、又は炭酸カリウムが好ましい。
【0072】
また、別の合成法として、イソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)は、下記スキーム6-1、6-2に従って製造できる。
【化13】
【0073】
スキーム6-1は、アンモニア水溶液の存在下で、化合物(7)と、化合物(19)とを反応させる第二工程(S2);次いで、酢酸の存在下で、化合物(20)と、化合物(10)とを反応させる第三工程(S3)を含んでよい。
スキーム6-1の第二工程(S2)において、アンモニア水溶液の使用量は、28%アンモニア水溶液を用いた場合、化合物(7)の100質量部に対して、1~20倍の量が好ましく、1~5倍の量がより好ましい。
【0074】
同様にスキーム6-2は、アンモニア水溶液の存在下で、化合物(7)と、化合物(19)とを反応させる第二工程(S2);次いで、酢酸の存在下で、化合物(20)と、化合物(12)とを反応させる第三工程(S3)を含んでよい。
スキーム6-2の第二工程(S2)において、アンモニア水溶液の使用量は、28%アンモニア水溶液を用いた場合、化合物(7)の100質量部に対して、1~20倍の量が好ましく、1~5倍の量がより好ましい。
【0075】
顔料組成物で使用する上記イソインドリン化合物(2)は、上述した式(2)において、R5及びR6がアルキル基である。所定の位置にアルキル基を導入したイソインドリン化合物を含有することによって、所定の位置にアルキル基を持たない従来のイソインドリン顔料との対比において、分散性、耐候性、耐熱性および塩基性雰囲気下における耐性を著しく向上できる。そのため、本明細書の顔料組成物は、従来、イソインドリン顔料の適用が困難であった水系の塗料、印刷インキ、インクジェットインキ等の用途にも使用できる。さらにシアンインキ、マゼンタインキ、ブラックインキと組み合わせた4色インキセットに加え、さらにホワイトインキを含む5色インキセットとしても好適に使用できる。
【0076】
一般的に、複数の顔料を含む顔料組成物が、物理的混合物のX線回折図とは異なるX線回折図を示す場合には、その顔料組成物は固溶体と呼ばれる。固溶体には明瞭に区別される2つの型「ゲスト-ホスト型固溶体」と「固体化合物型固溶体」が存在する。「ゲスト-ホスト型固溶体」は、その固溶体のX線回折図が、固溶体成分のうちのホストと呼ばれる成分の1つのX線回折図と実質的に同じである固溶体である。ホスト成分は、他の成分すなわちゲストをその結晶格子の中に受容するといわれる。「固体化合物型固溶体」は
、2つの成分が互いに連携して、それら2つの成分のいずれの成分または物理的混合物のX線回折図とは異なる1つのX線回折図をつくり出している固溶体である。
【0077】
本発明の顔料組成物は、イソインドリン化合物(1)およびイソインドリン化合物(2)が単なる混合物ではなく固溶体である場合、インキ組成物における透明性、着色組成物における分散粒径などがより向上する。
【0078】
イソインドリン化合物(1)およびイソインドリン化合物(2)は、それぞれ、または一緒に、微細化処理を行い微細粒子に加工してから使用することが好ましく、一緒に処理することがより好ましい。微細化処理は、例えば、アシッドペースティングに代表される溶解析出法やソルベントソルトミリング、ドライミリング等が挙げられる。微細化後の顔料粒子径は、平均一次粒子径は、20~300nmが好ましく、50~150nmがより好ましい。なお、ソルベントソルトミリングの条件によっては、顔料粒子の粒子径が成長する場合もある。
【0079】
イソインドリン化合物(1)およびイソインドリン化合物(2)を含む顔料組成物の製造方法を以下例示する。
(I)2種以上を一度に合成する方法(共合成法)、(II)分散体の作製時にイソインドリン化合物(1)とイソインドリン化合物(2)を混合する方法、(III)イソインドリン化合物(1)とイソインドリン化合物(2)を一緒にアシッドペースティング法、アシッドスラリー法、ドライミリング法、ソルトミリング法、ソルベントソルトミリング法、ソルベント法(アルコールや芳香族溶媒などの高沸点溶媒中で加熱処理すること)等を用いて顔料化する方法、(IV)上記方法を組み合わせた方法。
中でも好ましくは、(I)共合成法、(III)イソインドリン化合物(1)とイソインドリン化合物(2)を一緒にアシッドペースティング法、ソルベントソルトミリング法を用いて顔料化する方法、(IV)(I)と(III)とを組み合わせた方法である。
【0080】
アシッドペースティングによる微細化は、顔料を濃硫酸に溶解し、それを大過剰の水と混合することによって、微細な顔料粒子を析出させる。その後、濾過、及び水洗を繰り返し、乾燥することによって、微細化された顔料粒子が得られる。
【0081】
アシッドペースティングは、例えば、顔料をその5~30質量倍の98%硫酸に溶解し、得られた硫酸溶液をその5~30質量倍の水と混合する方法が挙げられる。顔料を硫酸に溶解する時の温度は、原料の分解及びスルホン化などの反応が起こらなければよい。上記溶解時の温度は、例えば3~40℃が好ましい。また、顔料の硫酸溶液と水とを混合する方法、及び混合温度などの条件も特に限定されない。多くの場合、高温よりも低温で混合した時に、析出する顔料粒子は微細となる傾向がある。そのため、上記混合時の温度は、例えば0℃~60℃が好ましい。混合時に使用する水は、工業的に使用可能な水であればよい。ただし、析出時の温度上昇を低減する観点から、予め冷却した水が好ましい。
【0082】
硫酸溶液と水との混合方法は特に限定されず、顔料を完全に析出できればどのような方法で混合してもよい。例えば、硫酸溶液を予め調製した氷水に注入する方法、及びアスピレーターなどの装置を使用して流水中に連続的に注入する方法などによって顔料粒子を析出させることができる。
【0083】
以上の方法で得られたスラリーを濾過、洗浄して酸性成分を除去し、その後、乾燥、粉砕することによって、所望の粒子径に調整した顔料が得られる。スラリーを濾過する際に、硫酸溶液と水とを混合したスラリーをそのまま濾過してもよいが、スラリーの濾過性が悪い場合は、スラリーを加熱撹拌してから濾過してもよい。また、スラリーを塩基で中和した後に濾過してもよい。
【0084】
ソルベントソルトミリングによる微細化は、顔料、水溶性無機塩及び水溶性溶剤の少なくとも三成分からなる粘土状の混合物を、ニーダー等を使用して強力に混練する。混練後の混合物を水中に投入し、各種撹拌機で撹拌してスラリー化する。得られたスラリーを濾過することにより、水溶性無機塩及び水溶性溶剤を除去する。以上のスラリー化と濾過、及び水洗を繰り返し、微細化された顔料を得ることができる。
【0085】
水溶性無機塩は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、及び塩化カリウムなどを使用できる。これらの無機塩は、顔料の1質量倍以上、好ましくは20質量倍以下の範囲で用いる。無機塩の量を1質量倍以上とした場合、顔料を十分に微細化できる。また、無機塩の量を20重量倍以下とした場合、混練後に水溶性の無機塩及び水溶性溶剤を除去するための多大な労力が不要であると同時に、一回に処理できる顔料の量が減少しないため、生産性の観点で好ましい。
【0086】
顔料の微細化は、混練に伴って発熱することが多い。そのため、安全性の観点から、沸点が120~250℃程度の水溶性溶剤を使用することが好ましい。水溶性溶剤の具体例としては、2-(メトキシメトキシ)エタノール、2-ブトキシエタノール、2-(イソペンチルオキシ)エタノール、2-(ヘキシルオキシ)エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、及び低分子量ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0087】
ドライミリングによる微細化は、各種粉砕機を用いて顔料を乾式粉砕することによって微細化する。この方法において、粉砕は、粉砕メディア同士の衝突又は摩擦を通じて進行する。ドライミリングを行うために使用する装置は特に限定されないが、具体例としては、ビーズ等の粉砕メディアを内蔵した乾式粉砕装置である、ボールミル、アトライター、及び振動ミルなどが挙げられる。これらの装置を使用して乾式粉砕する際に、必要に応じて、粉砕容器の内部を減圧したり、及び窒素ガスなどの不活性ガスを充填したりしてもよい。また、ドライミリングした後に、上記のソルベントソルトミリング、及び溶剤中での撹拌処理などを行ってもよい。
【0088】
<着色組成物>
本発明の着色組成物は、上記顔料組成物および分散媒体を含むことが好ましい。
【0089】
[分散媒体]
分散媒体は、樹脂、溶剤が挙げられる。樹脂は、樹脂型分散剤、バインダー樹脂が挙げられる。溶剤は、水、有機溶剤が挙げられる。なお、必要に応じて界面活性剤等の低分子分散剤を使用できる。
【0090】
樹脂型分散剤は、例えばBASFジャパン社製 JONCRYL67、JONCRYL
678、JONCRYL586、JONCRYL611、JONCRYL683、JONCRYL690、JONCRYL57J、JONCRYL60J、JONCRYL61J
、JONCRYL62J、JONCRYL63J、JONCRYLHPD-96J、JONCRYL501J、JONCRYLPDX-6102B、ビックケミー社製、DISPERBYK180、DISPERBYK187、DISPERBYK190、DISPERBYK191、DISPERBYK194、DISPERBYK2010、DISPERBYK2015、DISPERBYK2090、DISPERBYK2091、DISPERBYK2095、DISPERBYK2155、日本ルーブリゾール社製SOLSPERSE24000、SOLSPERSE32000、SOLSPERSE41000、サートマー社製SMA1000H、SMA1440H、SMA2000H、SMA3000H、SMA17352H等が挙げられる。
【0091】
バインダー樹脂は、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン共重合体、アクリル樹脂、及びこれらの変性樹脂であってよい。具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタレン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体等のスチレン共重合体;アクリル樹脂、メタクリル樹脂等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースエステル樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩素化ポリオレフィン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、石油樹脂、及びこれらの変性樹脂等が挙げられる。
【0092】
有機溶剤は、水溶性溶剤、非水溶性溶剤に分類できる。
水溶性溶剤は、例えばエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセリン等が挙げられる。非水溶性溶剤は、例えばトルエン、キシレン、ブチルアセテート、メチルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルアルコール、及び脂肪族炭化水素等が挙げられる。
【0093】
着色組成物を構成する各材料は、それぞれ単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0094】
(水系着色組成物)
本明細書で着色組成物は、水系着色組成物として使用することが好ましい。
水系着色組成物は、顔料組成物、分散媒体として樹脂、水、水溶性溶剤を含むことが好ましい。
上記分散媒体として使用される樹脂は、樹脂型分散剤が好ましい。樹脂の種類は、例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸、ビニルナフタレン-(メタ)アクリル酸共重合物、スチレン-マレイン酸共重合物、マレイン酸-無水マレイン酸共重合物、αオレフィン-(無水)マレイン酸共重合物、αオレフィン-(無水)マレイン酸-ポリアルキレングリコールアリルエーテル共重合物ビニルナフタレン-マレイン酸共重合物、ポリエステル変性(メタ)アクリル酸重合体およびこれらの塩等が挙げられる。
【0095】
また、樹脂の形態は、水溶性樹脂、エマルション(水不溶性樹脂)等が挙げられる。
【0096】
水は、イオン交換水、蒸留水が好ましい。
【0097】
水溶性溶剤は、例えば、2-(メトキシメトキシ)エタノール、2-ブトキシエタノール、2-(イソペンチルオキシ)エタノール、2-(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、液体ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0098】
水系着色組成物は、界面活性剤を含有できる。界面活性剤は、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0099】
アニオン性界面活性剤は、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、およびポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0100】
ノニオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセロールボレイト脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0101】
界面活性剤の含有量は、水系着色組成物100質量部中、0.3~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。
【0102】
水系着色組成物は、その他添加剤を含有できる。その他添加剤は、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、湿潤剤等が挙げられる。
【0103】
防腐剤は、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピリジンチオン-1-オキサイド、ジンクピリジンチオン-1-オキサイド、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、1-ベンズイソチアゾリン-3-オンのアミン塩等が挙げられる。防腐剤の含有量は、水系着色組成物100質量部中、0.1~2質量%が好ましい。
【0104】
pH調整剤は、例えば、各種アミン、無機塩、アンモニア、各種緩衝液等が挙げられる。
【0105】
消泡剤は、水系着色組成物を製造する際の泡の発生を防止するために使用する。消泡剤の市販品は、例えば、サーフィノール104E、サーフィノール104H、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104DPM、サーフィノール104PA、サーフィノール104PG-50、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノールPSA-336(いずれも日信化学工業社製)、ADDITOL VXW6211、ADDITOL VXW4973、ADDITOL VXW6235、ADDITOL XW375、ADDITOL XW376、ADDITOL VXW6381、ADDITOL VXW6386、ADDITOL VXW6392、ADDITOL VXW6393、ADDITOL VXW6399、ADDITOL XW6544等(いずれもAllnex社製)が挙げられる。
【0106】
湿潤剤は、印刷や塗工の際、平滑な被膜を得るために使用する。湿潤剤の市販品は、例えば、ADDITOL VXL6237N、ADDITOL XL260N、ADDITOL VXL6212、ADDITOL UVX7301/65、ADDITOL XW330、ADDITOL VXW6200、ADDITOL VXW6205、ADDITOL VXW6394、ADDITOL VXW6208、ADDITOL VXW6208/60、ADDITOL VXW6374(いずれもAllnex社製)等が挙げられる。
【0107】
水系着色組成物の作製に使用する各材料は、それぞれ単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0108】
水系着色組成物は、顔料組成物、樹脂、水、および必要に応じてその他添加剤等の材料を分散処理して作製できる。
【0109】
前記分散処理に使用する分散機は、例えば、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニュラー型ビーズミル、アトライター、マイクロフルイタイザー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェーカー、ロールミル、石臼式ミル、超音波分散機、対向衝突型高圧分散機、斜向衝突型高圧分散機等が挙げられる。
【0110】
より具体的には、上記樹脂として水溶性樹脂である樹脂型分散剤を使用する場合、後述する実施例に記載した方法、すなわち、顔料組成物、樹脂型分散剤、水等を混合したのち、上記分散機を使用して分散処理を行う方法により、本発明の水系着色組成物を得ることができる。
【0111】
また、上記樹脂として水不溶性樹脂である樹脂型分散剤を使用する場合、例えば、前記水不溶性樹脂を溶解させることができる有機溶剤に前記樹脂型分散剤を溶解させたのち、顔料組成物と混合し、上記分散機を使用して分散処理を行う。その後、水を用いて転相乳化させたのち、前記有機溶剤を留去する方法により、本発明の水系着色組成物を得ることができる。
【0112】
一方、水系着色組成物中の顔料組成物の分散性及び分散安定性を特段に高めることができる点から、顔料組成物表面の樹脂型分散剤を架橋することが好ましい。このような、表面に存在する樹脂型分散剤が架橋された顔料組成物(以下、「顔料組成物含有架橋樹脂粒子」ともいう)を用いた水性インクジェットインキでは、再分散性(水性インクジェットインキが乾燥し凝集・増粘した後に、水を添加することで、前記水性インクジェットインキ中の顔料組成物が再度分散可能となる)にも優れるため、例えば、連続印刷する際のノズル目詰まりや「かすれ」の抑制が可能となる。また、架橋された樹脂型分散剤で顔料組成物を被覆することで、耐候性やpH耐性の改善も実現できる。
【0113】
上記顔料組成物含有架橋樹脂粒子を含む水系着色組成物を製造する方法は、例えば、以下の4つが挙げられる。
【0114】
[[方法(i)]]
以下の4つの工程を経て、顔料組成物含有架橋樹脂粒子を製造する方法である。
・工程(i-1):顔料組成物;架橋性官能基及びカルボキシ基を有し、当該カルボキシル基が塩基性化合物により中和されることで親水化されている樹脂型分散剤;及び、水を用いて分散処理を行う工程。
・工程(i-2):上記工程(i-1)で作製した顔料組成物の分散液に酸性化合物を添加し、当該分散液のpHを中性または酸性化させることで、前記樹脂型分散剤を顔料組成物表面で析出及び固着させる工程。
・工程(i-3):上記工程(i-2)の後、樹脂型分散剤内のカルボキシ基を、塩基性化合物(工程(i-1)で使用した塩基性化合物と同じものであっても異なるものであってもよい)を用いて中和し、樹脂型分散剤が固着した顔料組成物を、水中に再分散させる工程。
・工程(i-4):上記工程(i-3)の後に、樹脂型分散剤内の架橋性官能基と、架橋剤とを反応させて架橋させ、顔料組成物含有架橋樹脂粒子を含む水系着色組成物を得る工程。なお前記架橋剤は、工程(i-4)の開始時に添加してもよいし、上記工程(i-1)~(i-3)のいずれかの段階で添加していてもよい。
【0115】
[[方法(ii)]]
樹脂型分散剤として、自己架橋性官能基及びカルボキシ基を有し、当該カルボキシ基が塩基性化合物により中和されることで親水化されている樹脂型分散剤を使用する以外は、上述した工程(i-1)~(i-3)と同様にして、樹脂型分散剤が固着した顔料組成物を、水中に再分散させる。その後、樹脂型分散剤を自己架橋させ、顔料組成物含有架橋樹脂粒子を含む水系着色組成物を得る方法である。
【0116】
[[方法(iii)]]
以下の2つの工程を経て、顔料組成物含有架橋樹脂粒子を製造する方法である。
・工程(iii-1):顔料、カルボキシ基を有する樹脂、塩基性化合物、及び、水を混合する工程。
・工程(iii-2):上記工程(iii-1)の後、架橋剤を添加して架橋処理し、顔料組成物含有架橋樹脂粒子を含む水系着色組成物を得る工程。
【0117】
[[方法(iv)]]
以下の2つの工程を経て、顔料組成物含有架橋樹脂粒子を製造する方法である。
・工程(iv-1):顔料、カルボキシ基を有する樹脂、及び、有機溶剤を混合する工程。
・工程(iv-2):上記工程(iv-1)の後、水を添加し、減圧蒸留などにより有機溶剤を除去する工程。
・工程(iv-3):上記工程(iv-2)の後、架橋剤を添加して架橋処理し、顔料組成物含有架橋樹脂粒子を含む水系着色組成物を得る工程。
【0118】
上述した方法で得られた水系着色組成物に対し、加熱処理や後処理を行うとイソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)の分散安定性が向上する。加熱処理は、水系着色組成物を30~80℃に加熱し、数時間~1週間程度保持する処理である。後処理は、水系着色組成物を超音波分散機又は衝突型ビーズレス分散機を用いて分散処理する。
【0119】
なお、分散処理の前に、水や水溶性溶剤を使用せずにプレ分散処理を行うことができる。プレ分散処理に使用する装置は、例えば、ニーダー、3本ロールミル等の練肉混合機;2本ロールミル等の不揮発分散機、MKミキサー等のメディアレス分散機等が挙げられる。
【0120】
本明細書の着色組成物の態様は、例えば、顔料組成物、および樹脂を含む態様1(例えば、成形用組成物、トナー)。顔料組成物、および有機溶剤を含む態様2(例えば、溶剤系着色組成物)。上段で詳しく説明した顔料組成物、樹脂および水を含む態様3(例えば、水系着色組成物)等が挙げられる。
【0121】
各態様の用途を説明すると、前記態様1は、例えば成形用組成物、トナー、無溶剤系インクジェットインキ等が挙げられる。前記態様2は、溶剤系着色組成物であり、塗料、印刷インキ、インクジェットインキ等が挙げられる。前記態様3は、水系着色組成物であり、水性塗料、水性印刷インキ、水性インクジェットインキ等が挙げられる。本明細書で溶剤が水を含む場合、「水性」と記載するが、溶剤が「有機溶剤」の場合、特に「溶剤系」と記載しない。なお、水は、金属イオン等を除去したイオン交換水、蒸留水が好ましい。
【0122】
<成形用組成物>
本発明の成形用組成物は、着色組成物(顔料組成物、樹脂)を含有する。成形用組成物は、樹脂に熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂を含む成形用組成物は、溶融・混錬し、所望の形状に成形して成形体を作製することが好ましい。成形用組成物は、例えば、300℃で溶融・混錬を行う場合、耐熱性が高いイソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)を含むため、色彩変化を抑制できる。なお、樹脂は、熱可塑性樹脂に限定されない。
【0123】
熱可塑性樹脂は、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、スチレン等をモノマー成分として用いたホモポリマー又はコポリマー等が挙げられる。より具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。その他の有用な樹脂の具体例として、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、及び熱可塑性アイオノマー樹脂等が挙げられる。これらの中でもポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。なお、熱可塑性樹脂の数平均分子量は、30,000を超え、200,000以下が好ましい。
【0124】
熱可塑性樹脂の含有量は、イソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)の合計100質量部に対して、10,000~10,000,000質量部が好ましく、10,000~2,000,000質量部がより好ましい。
【0125】
成形用組成物は、ワックスを含有できる。ワックスは、低分子量ポリオレフィン類からなる。これらは、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィンモノマーの重合体であり、ブロック、ランダムコポリマーまたはターポリマーであっても構わない。具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)のようなα-オレフィン類の重合体である。
【0126】
ワックスの数平均分子量は、1,000~30,000が好ましく、2,000~25,000がより好ましい。この範囲内にあることでワックスが適度に成形体表面へ移行するため、摺動性とブリードアウト抑制のバランスに優れる。
【0127】
ワックスの融点は60~150℃が好ましく、70~140℃がより好ましい。この範囲内にあることで熱可塑性樹脂とワックスとを溶融混練する際の加工性が良好となる。
【0128】
なお、ワックスのJIS K-7210に準拠して求めたメルトフローレイト(MFR)は、100g/10分より大きいことが好ましい。
【0129】
ワックスの配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましい。
【0130】
成形用組成物は、その他添加剤を含有できる。その他添加剤は、成形体の技術分野で一般に使用される材料であり、酸化防止剤、光安定剤、分散剤、金属石けん、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、充填剤、イソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)以外の着色剤等が挙げられる。
【0131】
成形用組成物は、例えば、成形体の組成比で製造できる。または、イソインドリン化合
物(1)及びイソインドリン化合物(2)を高濃度で含有するマスターバッチとして製造できる。本明細書では、イソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)を成形体中に均一に分散し易い面でマスターバッチが好ましい。
マスターバッチは、例えば、熱可塑性樹脂と顔料組成物を溶融混練し、次いで、次工程で使用しやすい様に任意の形状に成形することが好ましい。次いで、前記マスターバッチと希釈樹脂(例えば、マスターバッチに使用した熱可塑性樹脂)とを溶融混練し、所望の形状の成形体を成形できる。マスターバッチの形状は、例えば、ペレット状、粉末状、板状等が挙げられる。なお、顔料組成物の凝集を防ぐため、予め、顔料組成物とワックスを溶融混練した分散体を製造した後、熱可塑性樹脂と共に、溶融混錬してマスターバッチを製造することが好ましい。分散体に使用する装置は、例えば、ブレンドミキサーや3本ロールミル等が好ましい。
【0132】
成形用樹脂組成物をマスターバッチとして製造する場合、熱可塑性樹脂100質量部に対して、イソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)を1~200質量部配合することが好ましく5~700質量部がより好ましい。マスターバッチ(X)と、成形体の母材樹脂となる希釈樹脂(Y)との質量比は、X/Y=1/1~1/100が好ましく、1/3~2/100がより好ましい。この範囲にすると成形体にイソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)が均一に分散し、良好な着色が得やすい。
【0133】
希釈樹脂(Y)は、マスターバッチで使用する熱可塑性樹脂の使用が好ましいが、相溶性に問題なければ、他の熱可塑性樹脂を使用しても構わない。
【0134】
溶融混練は、例えば、単軸混練押出機、二軸混練押出機、タンデム式二軸混練押出機等が挙げられる。溶融混錬温度は、熱可塑性樹脂の種類により異なるが、通常150~300℃程度である。
【0135】
成形用組成物の用途は、例えば、プラスチック成形体、シート、フィルム等が挙げられる。
【0136】
<トナー>
本明細書のトナーは、着色組成物(顔料組成物、樹脂)を含有する。トナーで樹脂は、結着樹脂といい熱可塑性樹脂が好ましい。トナーは、乾式トナー、湿式トナーが挙げられるところ乾式トナーが好ましい。例えば、乾式トナーは、顔料組成物、および結着樹脂を溶融混練し、冷却した後、粉砕、及び分級工程を行う。次いで、添加剤を配合し混合する後処理工程を行い、製造できる。
【0137】
結着樹脂は、例えば、スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタレン共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。
【0138】
これらの中でもポリエステル樹脂、スチレン系共重合体が好ましく、ポリエステル樹脂がより好ましい。本明細書の顔料組成物は、ポリエステル樹脂に対する相溶性が特に優れ
ているため、トナー中にイソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)を均一かつ微細に分散されるため、高品質のトナーが得られる。
【0139】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000以上が好ましく、10,000~1,000,000がより好ましく、20,000~100,000がさらに好ましい。適度なMwのポリエステル樹脂を使用すると耐オフセット性及び低温定着性が良好なトナーが得られる。
【0140】
ポリエステル樹脂の酸価は、10~60mgKOH/gが好ましく、15~55mgKOH/gがより好ましい。適度な酸価のポリエステル樹脂を使用すると離型剤の遊離抑制し易く、高湿環境における画像濃度の低下が生じ難い。
【0141】
ポリエステル樹脂の水酸基価は、20mgKOH/g以下が好ましく、15mgKOH/g以下がより好ましい。適度な水酸基価のポリエステル樹脂を使用すると高湿環境において画像濃度の低下が生じ難い。
【0142】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50~70℃が好ましく、50~65℃がより好ましい。適度なTgによりトナーの凝集を抑制できる。なお、Tgは、示差走査熱量計(装置:DSC-6、島津製作所社製)で測定できる。
【0143】
トナーは、さらに荷電制御剤を含有できる。荷電制御剤を使用すると、帯電量の安定したトナーが得やすい。荷電制御剤は、正又は負の荷電制御剤を適宜選択して使用できる。
【0144】
トナーが正帯電性トナーである場合、正の荷電制御剤は、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、有機錫オキサイド、四級アンモニウム塩化合物、及び四級アンモニウム塩を官能基としてスチレン・アクリル樹脂に共重合したスチレン・アクリル系ポリマー等が挙げられる。これらの中でも、四級アンモニウム塩化合物が好ましい。四級アンモニウム塩化合物は、例えば、四級アンモニウム塩と有機スルホン酸又はモリブデン酸との造塩化合物が挙げられる。有機スルホン酸は、ナフタレンスルホン酸が好ましい。
【0145】
トナーが負帯電性トナーである場合、負の荷電制御剤は、例えば、モノアゾ染料の金属錯体、スルホン酸を官能基としてスチレン・アクリル樹脂に共重合したスチレン・アクリル系ポリマー、芳香族ヒドロキシカルボン酸の金属塩化合物、芳香族ヒドロキシカルボン酸の金属錯体、フェノール系縮合物、及びホスホニウム系化合物等が挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸は、サリチル酸、3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-フェニルサリチル酸が好ましい。また、金属塩化合物に用いられる金属は、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、クロム、及びアルミニウム等が挙げられる。
【0146】
トナーは、離型剤を含有できる。離型剤は、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス等の炭化水素系ワックス類、合成エステルワックス類、カルナバワックス、ライスワックス等の天然エステル系ワックス類等が挙げられる。
【0147】
トナーは、必要に応じて、滑剤、流動化剤、研磨剤、導電性付与剤、画像剥離防止剤等を添加できる。
【0148】
滑剤は、ポリフッ化ビニリデン、及びステアリン酸亜鉛等が挙げられる。流動化剤は、乾式法又は湿式法で製造したシリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪素アルミニウム共酸化物、および珪素チタン共酸化物、ならびにこれらを疎水性化処理物等が挙げられる
。これらの中でも疎水化処理されたシリカ、珪素アルミニウム共酸化物、及び珪素チタン共酸化物微粉体が好ましい。これら微粉体の疎水化処理方法は、シリコンオイル又はテトラメチルジシラザン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤による処理等が挙げられる。
研磨剤は、窒化珪素、酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム、タングステンカーバイド、炭酸カルシウム、及びこれらを疎水化処理したもの等が挙げられる。導電性付与剤は、酸化錫等が挙げられる。
【0149】
また、本明細書でトナーは、一成分系現像剤、または二成分系現像剤として使用できる。二成分系現像剤は、さらにキャリアを含有できる。
【0150】
キャリアは、例えば、鉄粉、フェライト粉、およびニッケル粉等の磁性粉体、ならびにこれらの表面を樹脂等による被覆処理物が挙げられる。キャリア表面を被覆する樹脂は、例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、フッ素含有樹脂、シリコーン含有樹脂、ポリアミド樹脂、アイオノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等が挙げられる。これらの中でも、スペントトナーの形成が少ないシリコーン含有樹脂が好ましい。キャリアの重量平均粒径は30~100μmが好ましい。
【0151】
二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの混合比( 質量比)は、トナー:キャリア
=1:100~30:100が好ましい。
【0152】
<塗料>
本明細書の塗料は、着色組成物(顔料組成物、樹脂、溶剤)を含有する。
前記樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、ガラス転移温度が、10℃以上の樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂の種類は、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂は、硬化剤と反応可能な官能基を有することが好ましい。前記官能基は、例えば、カルボキシル基、水酸基等が挙げられる。硬化剤は、例えば、イソシアネート硬化剤、エポキシ硬化剤、アジリジン硬化剤、アミン硬化剤等が挙げられる。
熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が30℃以上の樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、例えば、ニトロセルロース、ポリエステル等が挙げられる。なお、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂は併用できる、
【0153】
前記溶剤の中で非水溶性溶剤は、例えば、トルエン、キシレン、ブチルアセテート、メチルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルアルコール、及び脂肪族炭化水素等が挙げられる。
前記溶剤の中で水溶性溶剤は、例えば、水、一価アルコール、二価のアルコール、グリコールが挙げられる。水溶性溶剤は、例えば、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセリンが挙げられる。また、多価アルコールから誘導された水希釈性モノエーテルもあげられる。その具体例は、メトキシプロパノール又はメトキシブタノールが挙げられる。また、例えば、ブチルグリコール又はブチルジグリコールなどの水希釈性グリコールエーテルも挙げられる。なお、塗料は、既に説明した通り溶剤に水を含む場合、水性塗料という。
【0154】
塗料は、さらに公知の添加剤を含有できる。
【0155】
塗料の用途は、例えば、金属用塗料、プラスチック用塗料等が挙げられる。
【0156】
<印刷インキ>
本明細書の印刷インキは、着色組成物(顔料組成物、樹脂、溶剤)を含有する。印刷インキは、インジェットインキ以外のインキであり、例えば、オフセット印刷用インキ、フレキソ印刷用インキ、グラビア印刷用インキ、シルクスクリーン印刷インキ、カラーフィルタ用インキ等が挙げられる。なお、上記の通り、溶剤が水を含む場合水性印刷インキという。
【0157】
前記樹脂は、例えば、ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ポリウレタン、ニトロセルロース、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、石油樹脂等が挙げられる。
【0158】
溶剤のうち非水溶性溶剤は、例えば、トルエン、キシレン、ブチルアセテート、メチルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルアルコール、脂肪族炭化水素等が挙げられる。
【0159】
溶剤のうち水溶性溶剤はエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンが挙げられる。また、多価アルコールから誘導された水希釈性モノエーテルも挙げられる。例えば、メトキシプロパノール又はメトキシブタノールが挙げられる。また、ブチルグリコール又はブチルジグリコールなどの水希釈性グリコールエーテルも挙げられる。
【0160】
印刷インキは、さらに光輝材を含有できる。光輝材は、平均厚み0.5~10μm及び平均粒子径5~50μmの粒子であり、金属フレーク、マイカ、被覆ガラスフレークが挙げられる。金属フレークは、例えば、アルミフレーク、金粉等が挙げられる。マイカは、例えば、通常のマイカ、被覆マイカ等が挙げられる。被覆ガラスフレークは、例えば、酸化チタン等の金属酸化物で被覆されたガラスフレーク等が挙げられる。
【0161】
光輝材の含有量は、印刷インキ100質量%中、0.1~10質量%が好ましい。また、その他、当技術分野において通常使用されるその他の着色顔料、及び種々の添加剤を必要に応じて配合してもよい。印刷インキの製造方法、また塗布方法、及び乾燥方法は特に限定されず、当技術分野で周知の方法を使用できる。
【0162】
印刷インキは、さらに公知の添加剤を含有できる。
【0163】
<インクジェットインキ>
本発明のインクジェットインキは、顔料組成物、および樹脂を含有し、さらに溶剤を含有することが好ましい。インクジェットインキは、溶剤有無やその種類により、(溶剤系)インクジェットインキ、水性インクジェットインキ、無溶剤インクジェットインキに大別できる。本明細書では、イソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)の良好な分散性が生きる水性インクジェットインキが好ましい。以下、水性インクジェットインキを中心に説明する。
【0164】
顔料組成物の含有量は、水性インクジェットインキ100質量%中、0.5~30質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましい。
【0165】
水性インクジェットインキで使用する樹脂は、被印刷物(基材)に対するインキの定着性を得るために重要である。
樹脂の種類は、例えば、アクリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。また、樹脂の形態は、水溶性樹脂、エマルション粒子等が挙げられる。これらの中でも、エマルション粒子が好ましい。エマルション粒子は、単一組成粒子、コアシェル型粒子等があり任意に選択して使用できる。エマルション粒子を使用すると水性インクジェットインキの低粘度化が容易であり、耐水性に優れた記録物が容易に得られる。樹脂は、必要に応じて、アンモニア、各種アミン、各種無機アルカリ等のpH調整剤によって酸性官能基を中和して使用できる。
【0166】
樹脂の含有量は、インクジェットインキの不揮発分100質量%中、2~30質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましい。適度に含有すると吐出安定性が向上し、定着性も向上する。
【0167】
溶剤は、非水溶性溶剤、水、水溶性溶剤が挙げられる。水溶性溶剤は、水溶性溶剤は、グリコールエーテル類、ジオール類が挙げられる、これらの溶剤は基材への浸透が非常に速く、コート紙、アート紙や塩化ビニルシート、フィルム、布帛といった低吸液性や非吸液性の基材に対しても、浸透が速い。そのため、印刷時の乾燥が速く、正確な印字を実現することができる。また、沸点が高いため、湿潤剤としても作用する。
【0168】
水溶性溶剤は、水性インクジェットインキのプリンターヘッドにおけるノズル部分での乾燥、固化を防止し、インキの吐出安定性を得るために重要である。水溶性溶剤は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ケトンアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1,2-ヘキサンジオール、N-メチル-2-ピロリドン、置換ピロリドン、2,4,6-ヘキサントリオール、テトラフルフリルアルコール、4-メトキシ-4メチルペンタノン等が挙げられる。
【0169】
水を含む水溶性溶剤の含有量は、インクジェットインキ100質量%中、15~50質量%が好ましい。
【0170】
インクジェットインキは、さらに添加剤を含有できる。添加剤は、例えば、乾燥促進剤、浸透剤、防腐剤、キレート剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0171】
乾燥促進剤は、水性インクジェットインキの印字後の乾燥を速めるために使用する。乾燥促進剤は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールが挙げられる。乾燥促進剤の含有量は、水性インクジェットインキ100質量%中、1~50質量%が好ましい。
【0172】
浸透剤は、基材が紙のような浸透性の素材である場合、基材へのインキの浸透を促進し、見掛けの乾燥性を早くするために使用する。浸透剤は、水溶性溶剤に加え、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の界面活性剤等が挙げられる。浸透剤の使用量は、水性インクジェットインキ100質量%中、0.1~5質量%が好ましい。適量使用すると印字の滲み、及びインキの紙抜けなどの不具合が生じ難い。
【0173】
防腐剤は、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピリジンチオン-1-オキサイド、ジンクピリジンチオン-1-オキサイド、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、1-ベンズイソチアゾリン-3-オンのアミン塩等が挙げられる。防腐剤の使用量は、水性インクジェットインキ100質量%中、0.05~1.0質量%が好ましい。
【0174】
キレート剤は、水性インクジェットインキ中に含まれる金属イオンを捕捉し、ノズル部
又はインキ中における不溶性物の析出を防止するために使用する。キレート剤は、例えば、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩、エチレンジアミン四酢酸のジアンモニウム塩、エチレンジアミン四酢酸のテトラアンモニウム塩等が挙げられる。キレート剤の使用量は、水性インクジェットインキ100質量%中、0.005~0.5質量%が好ましい。
【0175】
pH調整剤は、例えば、各種アミン、無機塩、アンモニア、各種緩衝液等が挙げられる。
【0176】
インクジェットインキは、各材料を配合して、混合して作製する。混合は、羽を用いた撹拌機、各種分散機、乳化機等が挙げられる。各材料の添加順序、及び混合方法は任意である。
【0177】
インクジェットインキは、混合後、濾過や遠心分離を行い粗大粒子を除去することが好ましい。これによりインクジェットプリンターからの吐出性が良好となる。濾過や遠心分離は、公知の方法を使用できる。
【0178】
本明細書のインクジェットインキは、各種のインクジェット方式を使用できる。インクジェット方式としては、例えば、荷電制御型、スプレー型等の連続噴射型、ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式等が挙げられる。
【0179】
[色素誘導体]
本発明に用いる顔料、着色組成物、着色硬化性組成物には、必要に応じて色素誘導体を添加することができる。
【0180】
色素誘導体は、有機色素残基に酸性基、塩基性基、中性基などを有する公知の色素誘導体を用いることができる。例えば、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基などの酸性置換基を有する化合物及びこれらのアミン塩や、スルホンアミド基や末端に3級アミノ基などの塩基性置換基を有する化合物、フェニル基やフタルイミドアルキル基などの中性置換基を有する化合物が挙げられる。
【0181】
有機色素は、例えばジケトピロロピロール系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チアジンインジゴ系顔料、トリアジン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ベンゾイソインドール等のインドール系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、ナフトール系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料等が挙げられる。
具体的には、ジケトピロロピロール系色素誘導体としては、特開2001-220520号公報、WO2009/081930号パンフレット、WO2011/052617号パンフレット、WO2012/102399号パンフレット、特開2017-156397号公報、フタロシアニン系色素誘導体としては、特開2007-226161号公報、WO2016/163351号パンフレット、特開2017-165820号公報、特許第5753266号公報、アントラキノン系色素誘導体としては、特開昭63-264674号公報、特開平09-272812号公報、特開平10-245501号公報、特開平10-265697号公報、特開2007-079094号公報、WO2009/025325号パンフレット、キナクリドン系色素誘導体としては、特開昭48-54128号公報、特開平03-9961号公報、特開2000-273383号公報、ジオキサジン系色素誘導体としては、特開2011-162662号公報、チアジンインジゴ系色素誘導体としては、特開2007-314785号公報、トリアジン系色素誘導体としては、特開昭61-246261号公報、特開平11-199796号公報、特開2003-165922号公報、特開2003-168208号公報、特開2004-217842号公報、特開2007-314681号公報、ベンゾイソインドール系色素誘導体としては、特開2009-57478号公報、キノフタロン系色素誘導体としては、特開2003-167112号公報、特開2006-291194号公報、特開2008-31281号公報、特開2012-226110号公報、ナフトール系色素誘導体としては、特開2012-208329号公報、特開2014-5439号公報、アゾ系色素誘導体としては、特開2001-172520号公報、特開2012-172092号公報、酸性置換基としては、特開2004-307854号公報、塩基性置換基としては、特開2002-201377号公報、特開2003-171594号公報、特開2005-181383号公報、特開2005-213404号公報、などに記載の公知の色素誘導体が挙げられる。なおこれらの文献には、色素誘導体を誘導体、顔料誘導体、分散剤、顔料分散剤若しくは単に化合物などと記載している場合があるが、前記した有機色素残基に酸性基、塩基性基、中性基などの置換基を有する化合物は、色素誘導体と同義である。
【0182】
色素誘導体は、単独又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0183】
<インキセット>
本発明のインキセットは、少なくとも、イエローインキ、シアンインキ、及びマゼンタインキを含むインキセットであって、前記イエローインキが、前記着色組成物を含むインキを含むことが好ましい。
【0184】
本発明のインキセットは、さらに墨インキ(ブラックインキ)、白インキ(ホワイトインキ)、特色インキ等のその他インキを含有できる。
【0185】
本発明のインキセットは、オフセット印刷インキ、フレキソ印刷インキ、グラビア印刷インキ、スクリーン印刷インキ等の印刷インキセット及びインクジェットインキのインキセットに使用できる。これらの中でも包装材料に使用するグラビア印刷インキセットおよびインクジェットインキセットが好ましく、グラビア印刷インキセットがより好ましい。
【0186】
<イエローインキ>
本発明におけるイエローインキは、上記顔料組成物と、バインダー樹脂とを含む。
前記イエローインキは、上記の通り2種類のイソインドリン化合物を含むことで、従来、イソインドリン化合物の弱点であった分散性、保存安定性が向上する。
【0187】
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂は、例えば、ポリウレタン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、ブチラール、石油樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0188】
バインダー樹脂の含有量は、イエローインキ中、4~25質量%が好ましく、6~20質量%がより好ましい。
【0189】
イエローインキは、さらに他の顔料、樹脂、有機溶剤、その他必要に応じて顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、ワックス、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有できる。
【0190】
<シアンインキ>
本発明におけるシアンインキは、シアン色が得られるインキであり、顔料、およびバインダー樹脂を含む。なお、バインダー樹脂は、既に説明した樹脂を使用できる。
【0191】
<マゼンタインキ>
本発明におけるマゼンタインキは、マゼンタ色が得られるインキであり、顔料、およびバインダー樹脂を含む。なお、バインダー樹脂は、既に説明した樹脂を使用できる。
【0192】
<顔料>
顔料は、有機顔料、無機顔料が挙げられる。本明細書では、例えば、以下の顔料を使用できる。
【0193】
[有機顔料]
顔料は、有機顔料が好ましい。有機顔料は、例えば、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系等が挙げられる。
【0194】
顔料の例を、C.I.ピグメントナンバーで示す。
【0195】
藍色顔料は、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60等が挙げられる。また、アルミニウムフタロシアニン(化合物(30))や、チタニルフタロシアニン(化合物(31))などのフタロシアニン顔料も挙げられる。
シアンインキは、上記藍色顔料を含むことが好ましい。これらの中でもC.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4及びC.I.ピグメントブルー16がより好ましい。
【0196】
【0197】
赤色顔料は、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド32、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド174、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド188、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド214、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド260、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド269、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
マゼンタインキは、上記赤色顔料を含むことが好ましい。これらの中でもC.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド185、及びC.I.ピグメントバイオレット19がより好ましい。
【0198】
黄色顔料は、例えば、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー234等が挙げられる。
本発明のインキセットを構成するイエローインキに用いる場合、上記黄色顔料を含んでもよい。
【0199】
紫色顔料は、例えば、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット37等が挙げられる。
【0200】
緑色顔料は、例えば、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0201】
橙色顔料は、例えば、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64等が挙げられる。
【0202】
特色インキとしては、シアン、マゼンタ、イエロー以外の、紫、草、朱などのインキが挙げられ、上記の紫色顔料、緑色顔料、橙色顔料等を含むことが好ましい。
【0203】
本発明のインキセットは、例えば、シアンインキにはC.I.ピグメントブルー16、マゼンタインキにはC.I.ピグメントバイオレット19及びC.I.ピグメントレッド122の1種以上を含むことが好ましい。これは、上記顔料を含むことで、インキの環境適合性や安全衛生性を向上できる。
【0204】
[無機顔料]
無機顔料は、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、リトボン、アンチモンホワイト、石膏等の白色無機顔料、カーボンブラック、鉄黒、銅・クロム複合酸化物等の黒色無機顔料、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、ジルコン等が挙げられる。
【0205】
墨インキ(ブラックインキ)には、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性に優れる観点から、カーボンブラックを使用することが好ましく、例えば、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。また、白インキ(ホワイトインキ)には、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性に優れる観点から、酸化チタンを使用することが好ましい。酸化チタンは、印刷性能の観点から、シリカ及び/又はアルミナで表面処理されているものが好ましい。
【0206】
各インキは、目的の色調を得るため、顔料を単独または2種類以上併用して使用できる。
【0207】
顔料の平均一次粒子径は、好ましくは10~200nmの範囲であり、より好ましくは50~150nmの範囲である。
インキ中の顔料の含有量は、インキの濃度・着色力を確保するために、インキの質量を基準として、好ましくは1~60質量%の範囲であり、インキの不揮発分質量を基準として、好ましくは10~90質量%の範囲である。
【0208】
<グラビア印刷インキセット>
本発明のグラビア印刷インキセットは、上記インキセットを含むことが好ましい。
【0209】
[ポリウレタン樹脂]
本発明のグラビア印刷インキセットに使用するバインダー樹脂は、ポリウレタン樹脂が好ましい。なお、ポリウレタン樹脂は、ポリウレタンウレア樹脂を含む。
ポリウレタン樹脂の合成は、例えば、(1)ポリオールとジイソシアネート化合物とをイソシアネート基が過剰となる割合で反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成する。次いで溶剤中でイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに前記アミノ基を有する鎖伸長剤及び/又は末端封鎖剤と反応させて合成する二段法、(2)ポリプロピレングリコール、ポリオール、ジイソシアネート化合物、ならびにアミノ基を有する鎖伸長剤及び/又は末端封鎖剤を、適切な溶剤中で一度に反応させる一段法等が挙げられる。
合成に使用する溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノールなどのアルコール系溶剤;メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤;あるいはこれらの混合溶剤;が挙げられる。
これらの方法の中でも、より均一なポリウレタン樹脂が得られるという観点から、好ましくは二段法である。ポリウレタン樹脂を二段法で製造する場合、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と、鎖伸長剤及び末端封鎖剤のアミノ基との当量比(イソシアネート基のモル/アミノ基のモル)は、1/1.3~1/0.9が好ましい。イソシアネート基とアミノ基との当量比が1/1.3以上であると、未反応のまま残存する鎖伸長剤及び/又は末端封鎖剤が低減し、ポリウレタン樹脂の黄変、及び印刷後臭気を抑制することができる。イソシアネート基とアミノ基との当量比が1/0.9以下であると、得られるポリウレタン樹脂の分子量が適切となり、印刷後に好適な膜強度をもたらす樹脂を得ることができる。
【0210】
上記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは、15,000~100,000の範囲である。ポリウレタン樹脂の重量平均分子量が15,000以上であると、インキの耐ブロッキング性、印刷被膜の強度、及び耐油性に優れ、100,000以下であると、得られるインキの粘度が適切な範囲となり、印刷被膜の光沢に優れる。
【0211】
また、上記ポリウレタン樹脂は、印刷適性及びラミネート強度の観点からアミン価を有するものが好ましい。アミン価は0.5~20mgKOH/gが好ましく、1~15mgKOH/gがより好ましい。
【0212】
各色インキ中における、バインダー樹脂の含有量は、各インキ中、好ましくは4~25質量%であり、より好ましくは6~20質量%の範囲である。
【0213】
[有機溶剤]
本発明のグラビア印刷インキセットに使用する有機溶剤は、公例えば、トルエン、キシレン等の芳香族有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等エステル系有機溶剤;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノールなどのアルコール系有機溶剤;エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤;が挙げられる。これらの有機溶剤は、2種以上を混合して使用することが好ましい。
グラビア印刷インキセットにおいては、エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤との混合溶剤を使用することが好ましい。エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤との質量比(エステル系有機溶剤の質量:アルコール系有機溶剤の質量)は、好ましくは95:5~40:60であり、より好ましくは90:10~50:50である。
各色インキ中における、有機溶剤の含有率は、インキの質量を基準として、好ましくは60~90質量%であり、より好ましくは70~85質量%の範囲である。
【0214】
各色インキの粘度は、顔料の沈降を防ぎ適度に分散させる観点から好ましくは10mPa・s以上であり、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から好ましくは1,000mPa・s以下である。尚、上記粘度は、トキメック社製B型粘度計で25℃において測定された値である。
【0215】
[水]
本発明のグラビア印刷インキセットは、さらに、水を含むことができる。所定量の水を含むことで、ポリウレタン樹脂による顔料分散性が向上し、ハイライト転移性、版かぶり性、トラッピング性等の印刷適性が向上する。
水の含有率は、グラビア印刷インキの質量を基準として、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.5~7質量%であり、さらに好ましくは0.5~5質量%であり、特に好ましくは0.5~4質量%である。
【0216】
[シリカ粒子]
本発明のグラビア印刷インキセットは、さらに、シリカ粒子を含有できる。シリカ粒子を含むことで、重ね印刷時のインキの濡れ・広がりが促進され、トラッピング性が向上し、ハイライト転移性も維持される。
シリカ粒子は、天然産、合成品、あるいは結晶性、非結晶性、あるいは疎水性、親水性のものが挙げられる。シリカ粒子の合成法は、乾式、湿式法があり、乾式法では燃焼法、アーク法、湿式法では沈降法、ゲル法が知られており、いずれの方法で合成されたものでもよい。また、シリカ粒子は、表面に親水性官能基を有する親水性シリカでもよいし、親水性官能基をアルキルシラン等で変性して疎水化した疎水性シリカでもよい。好ましくは親水性シリカである。
このようなシリカ粒子は、例えば、東ソー・シリカ社製のニップジェルシリーズ、ニップシルシリーズ、水澤化学社製のミズカシルシリーズが挙げられる。
【0217】
シリカ粒子は、インキ層の表面に凹凸を作るため、平均粒子径が1~10μmであることが好ましい。より好ましくは1~8μmであり、さらに好ましくは1~6μmである。シリカ粒子の平均粒子径は、粒度分布における積算値50%(D50)での粒径を意味し、コールターカウンター法によって求めることができる。
シリカ粒子の比表面積は、BET法で50~600m2/gであることが好ましい。より好ましくは100~450m2/gである。本発明のグラビア印刷インキで使用するシリカ粒子は、平均粒子径又はBET法比表面積の異なるものを2種以上組み合わせて使用できる。
【0218】
シリカ粒子の含有率は、グラビア印刷インキの質量を基準として、好ましくは0.1~3質量%であり、より好ましくは0.2~2.5質量%であり、さらに好ましくは0.2~2質量%であり、特に好ましくは0.2~1.5質量%である。
【0219】
[その他添加剤]
本発明のグラビア印刷インキセットは、必要に応じて、体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、ワックス、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤等のその他添加剤を含むことができる。
【0220】
<クリアインキ>
本発明のグラビア印刷インキセットは、さらに、クリアインキを含有できる。当該クリアインキから形成する脱離層は、アルカリ水溶液で中和され、溶解又は膨潤することにより、基材から剥離する機能を有する。
上記アルカリ水溶液に使用する塩基性化合物は、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、アンモニア、水酸化バリウム(Ba(OH)2)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)が挙げられる。より好ましくは水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
なお、本明細書において、アルカリ水溶液で中和し、溶解又は膨潤する工程を「アルカリ処理」と言う場合がある。また、アルカリ処理により脱離性を有する層を「脱離層」と言う場合がある。すなわち、当該クリアインキにより形成される印刷層は、脱離性を有する層(脱離層)に該当する。
【0221】
[カルボキシ基含有樹脂]
クリアインキは、カルボキシ基含有樹脂を含有することが好ましい。例えば、色インキより前に基材上に印刷するプライマー組成物として機能する。
前記カルボキシ基含有樹脂は、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、セルロースが挙げられる。これらの中でも、ラミネート適性が良好であることから、ウレタン樹脂が好ましい。
【0222】
カルボキシ基含有ウレタン樹脂の水酸基価は、好ましくは1~35mgKOH/gであり、より好ましくは10~30mgKOH/gである。1mgKOH/g以上であると、アルカリ水溶液による脱離性が良好となるため好ましく、35mgKOH/g以下であると、基材密着性が良好となるため好ましい。
カルボキシ基含有ウレタン樹脂の酸価は、好ましくは15mgKOH/g以上であり、より好ましくは15~70mgKOH/gであり、さらに好ましくは20~50mgKOH/gである。15mgKOH/g以上であると、アルカリ水溶液による脱離性が良好となるため好ましく、70mgKOH/g以下であると、基材密着性が向上し、包装材料とした際の耐レトルト性が良好になる。なお、水酸基価及び酸価は、いずれもJISK0070に従って測定した値である。
【0223】
カルボキシ基含有ウレタン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10,000~100,000であり、より好ましくは15,000~70,000であり、さらに好ましくは15,000~50,000である。
【0224】
カルボキシ基含有ウレタン樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、6以下であることが好ましい。分子量分布が6以下である場合、過剰な高分子量成分及び、未反応成分、副反応成分その他の低分子量成分に起因する影響を回避することができ、脱離性、プライマー組成物の乾燥性、耐レトルト適性が良好となる。
また、分子量分布が小さい、即ち分子量分布がシャープであるほど、アルカリ水溶液による溶解・剥離作用が均一に起こり、脱離性が向上するため好ましい。分子量分布は、より好ましくは5以下であり、さらに好ましくは4以下である。また、分子量分布は1.5以上が好ましく、より好ましくは1.2以上である。
【0225】
上記カルボキシ基含有ウレタン樹脂はアミン価を有していてもよい。カルボキシ基含有ウレタン樹脂がアミン価を有する場合、アミン価は0.1~20mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは1~10mgKOH/gである。
【0226】
カルボキシ基含有ウレタン樹脂は特に制限されず、例えば、ポリオール、ヒドロキシ酸及びポリイソシアネートを反応させてなる樹脂であることが好ましい。ヒドロキシ酸を使用することで、ウレタン樹脂に酸価を付与することができ、脱離性を向上させることができる。より好ましくは、ポリオール、ヒドロキシ酸及びポリイソシアネートを反応させてなる樹脂に、さらに、ポリアミンを反応させてなる樹脂である。
【0227】
クリアインキは、さらに硬化成分としてポリイソシアネートを含有してもよい。ポリイソシアネートは特に制限されず、従来公知のポリイソシアネートから選択することができ、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
また、クリアインキは、カルボキシ基含有樹脂、ポリイソシアネート以外のその他成分を含有してもよく、前述のシアン、イエロー、マゼンタの各色インキと同様に、有機溶剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を配合することができる。
【0228】
<インクジェットインキセット>
本発明のインクジェットインキセットは、上記インキセットを含むことが好ましい。本発明のインクジェットインキセットを構成するインクジェットインキについては、上述の通りである。
【0229】
<印刷物>
本発明の印刷物は、基材、およびグラビア印刷インキセットから形成された印刷層を含む。前記印刷層は、シアンインキ、イエローインキ、マゼンタインキを基材上に印刷して形成する。
グラビア印刷の方式は特に制限されず、公知の方式から適宜選択できる。グラビア印刷の方式は、表刷り印刷と裏刷り印刷に大別され、例えば、表刷り印刷において基材が白色紙や白色フィルムである場合、基材上に、イエローインキ、マゼンタインキ、シアンインキ、ブラックインキの順で印刷を行うことで、印刷物を得ることができる。
また、例えば、裏刷り印刷で基材が透明フィルムである場合、基材上に、ブラックインキ、シアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキ、白インキの順で印刷し、印刷物を作製することが好ましい。
本発明のインキセットがクリアインキを含む場合、該クリアインキは、色インキより前に基材上に印刷されることが好ましい。
印刷層の厚みは、用途、使用するインキの種類や数、及び重ね印刷の回数によって適宜選択できるが、通常、0.5~10μmの範囲である。
【0230】
[基材]
基材は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン基材;ポリカーボネート基材;ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル基材;ポリスチレン基材;AS、ABS等のポリスチレン系樹脂;ナイロン等のポリアミド基材;ポリ塩化ビニル基材;ポリ塩化ビニリデン基材;セロハン基材;紙基材;アルミニウム箔基材;これらの複合材料からなる複合基材;が挙げられる。基材は、フィルム状、シート状のいずれであってもよい。中でも、ガラス転移点が高いポリエステル基材、ポリアミド基材が好適に用いられる。
【0231】
上記基材の表面は、金属酸化物等が蒸着処理されていてもよく、ポリビニルアルコール等がコート処理されていてもよい。このような表面処理された基材は、例えば、酸化アルミニウムを表面に蒸着させた凸版印刷社製GL-AE、大日本印刷社製IB-PET-PXBが挙げられる。基材は、必要に応じて帯電防止剤、紫外線防止剤などの添加剤を処理されていてもよく、コロナ処理又は低温プラズマ処理されていてもよい。
【0232】
[脱離層]
本発明の印刷物は、脱離層を含有できる。ここで「脱離層」とは、アルカリ水溶液で中和され、溶解又は膨潤することにより、基材から剥離する性質を有する者を指す。脱離性を有する層は、前述するクリアインキから形成される層が好ましいが、それ以外の層が脱離層であってもよい。
【0233】
脱離層の厚みは、特に制限されず、通常、0.5~5μmの範囲である。
【0234】
<包装材料>
本発明の包装材料は、少なくともその一部に印刷物を含む。包装材料は、例えば、印刷物、接着剤層、およびシーラント基材を順次積層する構成が挙げられる。包装材料は、四方シール包装体、三方シール包装体、ピロー包装体、スティック袋、ガセット袋、角底袋、スタンディングパウチ、深絞り容器、真空包装体、スキンパック、チャック袋、スパウトパウチ、ひねり包装、包み包装、シュリンク包装、ラベル、液体紙パック、紙トレー等の様々な形状を有する包装体に好適に用いることができる。
【0235】
包装材料の被包装物は、例えば食料品(例えば、米穀、菓子、調味料、食用油脂、調理食品等)、飲料(例えば、アルコール飲料、清涼飲料水、ミネラルウオーター等)、生活・文化用品(例えば、医薬品、化粧品、文具等)、電子部品等が挙げられる。
【0236】
[接着剤層]
上記接着剤層の形成に使用できる接着成分は、ラミネート接着剤、ホットメルト接着剤に加え、熱可塑性樹脂が挙げられる。接着成分のうちラミネート接着剤、ホットメルト接着剤は、例えば、ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系接着剤;ポリ酢酸ビニル系接着剤;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系接着剤;が挙げられる。これらの接着成分の中でも、ポリウレタン系接着剤が好ましく用いられる。
【0237】
接着成分は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0238】
上記ポリウレタン系接着剤は、ポリオールとポリイソシアネートとを含む反応性接着剤であり、脱離性を有するものであってもよい。脱離性を有するポリウレタン接着剤は、例えば、特開2020-084130号公報に記載のラミネート接着剤が挙げられる。
このような脱離性を有するポリウレタン接着剤は、酸価が、5~45mgKOH/gであることが好ましい。また、ポリウレタン系接着剤を構成するポリオールがポリエステルポリオールを含み、ポリイソシアネートが脂肪族ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる一種を含むことが好ましい。
接着剤層の厚みは、通常1~6μmの範囲である。
【0239】
[シーラント基材]
シーラント基材は、ラミネートフィルムの最内層を構成する基材であり、熱によって相互に融着し得る(ヒートシール性を有する)樹脂材料が使用される。上記シーラント基材としては、無延伸ポリプロピレン(CPP)、蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム(VMCPP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、リニアー低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。
シーラント基材の厚みは特に限定されないが、包装材料への加工性やヒートシール性等を考慮して10~200μmの範囲が好ましく、15~150μmの範囲がより好ましい。また、シーラント基材に高低差5~20μmの凸凹を設けることで、シーラント基材に滑り性や包装材料の引き裂き性を付与することが可能である。
また、シーラント基材を積層する方法は、特に限定されない。例えば、接着剤層とシーラント基材フィルムとを熱によってラミネートする方法(熱ラミネート、ドライラミネート)や、シーラント基材樹脂を溶融させて接着剤層上に押出し、冷却固化させて積層する方法(押出ラミネーション法)等が挙げられる。
【実施例】
【0240】
以下、本発明を実施例で詳細に説明するが、本発明は、実施例に限定されない。なお、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味する。なお、本明細書で実施例2-2、A-13、B-13、C-13、D-13、E-13,F-13,G-13,H-13,I-13,J-13,K-14,LY-14,LS-13,LP13,LP-113,MY-14およびMS-13は、参考例である。
【0241】
<イソインドリン化合物の製造>
(実施例1-1)
還流冷却管、滴下漏斗、及び撹拌機を具備した4口フラスコに、水800部、1,3-ジイミノイソインドリン60部、28%アンモニア水120部の順に加え、撹拌した。そこへ2-シアノ-N-メチルアセトアミド42.58部を水160部に溶解させた溶液を、滴下漏斗を使用して30分間で滴下した。30℃にて原料の1,3-ジイミノイソインドリンが消失するまで加熱撹拌した。この反応スラリーを、ブフナー漏斗を用いてろ別し、不揮発分を得た。なお、原料の消失はUPLC(超高速高分離液体クロマトグラフィ Waters社製)にて確認した。
還流冷却管、滴下漏斗及び、撹拌機を具備した4口フラスコに、上記不揮発分60部相当、水480部、80%酢酸162部を加え、撹拌した。一方で、ガラス製フラスコに、水461部、80%酢酸194部を加え、そこへバルビツール酸36.69部、1,3-ジメチルバルビツール酸4.97部を加え、65℃にて撹拌した。この混合物の加熱溶液を上記不揮発分の撹拌液の中に投入し、さらに反応を完結させるために85℃まで昇温し撹拌を行った。加熱撹拌は、原料として使用した上記不揮発分が消失するまで行った。原料の消失はUPLCにて確認した。
その後、室温まで冷却後、水2400部にて3回洗浄を行い、不揮発分を得た。この不揮発分を80℃の熱風乾燥機にて乾燥させ、イソインドリン化合物1-1を87.50部得た。
【0242】
(実施例1-2)
実施例1-1のバルビツール酸36.69部を40.36部に、1,3-ジメチルバルビツール酸4.97部を0.50部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-2を86.40部得た。
【0243】
(実施例1-3)
実施例1-1のバルビツール酸36.69部を28.54部に、1,3-ジメチルバルビツール酸4.97部を14.91部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-3を88.30部得た。
【0244】
(実施例1-4)
還流冷却管、滴下漏斗、及び撹拌機を具備した4口フラスコに、水800部、1,3-ジイミノイソインドリン60部、28%アンモニア水120部の順に加え、撹拌した。そこへ2-シアノ-N-メチルアセトアミド42.58部を水160部に溶解させた溶液を、滴下漏斗を使用して30分間で滴下した。30℃にて原料の1,3-ジイミノイソインドリンが消失するまで加熱撹拌した。この反応スラリーを、ブフナー漏斗を用いてろ別し、不揮発分を得た。なお、原料の消失はUPLCにて確認した。
還流冷却管、滴下漏斗及び、撹拌機を具備した4口フラスコに、原料として先の調製で得た不揮発分60部相当、水480部、80%酢酸162部を加え、撹拌した。一方で、ガラス製フラスコに、水480部、80%酢酸162部を加え、そこへバルビツール酸30.57部を加え、65℃にて撹拌した。この混合物の加熱溶液を上記不揮発分の撹拌液の中に投入し、30℃にて3時間撹拌を行った。さらに別で用意したガラス製フラスコに、水48部、80%酢酸16部を加え、そこへ1,3-ジメチルバルビツール酸8.28部を加え、65℃にて撹拌した。この混合物の加熱溶液を先の反応撹拌液の中に投入し、さらに反応を完結させるために85℃まで昇温し撹拌を行った。加熱撹拌は、原料として使用した上記不揮発分が消失するまで行った。なお、原料の消失はUPLCにて確認した。
その後、室温まで冷却後、水2400部にて3回洗浄を行い、不揮発分を得た。この不揮発分を80℃の熱風乾燥機にて乾燥させ、イソインドリン化合物1-4を86.10部得た。
【0245】
(実施例1-5)
還流冷却管、滴下漏斗、及び撹拌機を具備した4口フラスコに、水800部、1,3-ジイミノイソインドリン60部、28%アンモニア水120部の順に加え、撹拌した。そこへ2-シアノ-N-メチルアセトアミド42.58部を水160部に溶解させた溶液を、滴下漏斗を使用して30分間で滴下した。30℃にて原料の1,3-ジイミノイソインドリンが消失するまで加熱撹拌した。この反応スラリーを、ブフナー漏斗を用いてろ別し、不揮発分を得た。なお、原料の消失はUPLCにて確認した。
還流冷却管、滴下漏斗及び、撹拌機を具備した4口フラスコに、原料として先の調製で得た不揮発分60部相当、水480部、80%酢酸162部を加え、撹拌した。一方で、ガラス製フラスコに、水326部、80%酢酸138部を加え、そこへバルビツール酸27.18部、1,3-ジメチルバルビツール酸2.07部を加え、65℃にて撹拌した。この混合物の加熱溶液を上記不揮発分の撹拌液の中に投入し、30℃にて3時間撹拌を行った。さらに別で用意したガラス製フラスコに、水134部、80%酢酸57部を加え、そこへ1,3-ジメチルバルビツール酸14.49部を加え、65℃にて撹拌した。この混合物の加熱溶液を先の反応撹拌液の中に投入し、さらに反応を完結させるために85℃まで昇温し撹拌を行った。加熱撹拌は、原料として使用した上記不揮発分が消失するまで行った。原料の消失はUPLCにて確認した。
その後、室温まで冷却後、水2400部にて3回洗浄を行い、不揮発分を得た。この不揮発分を80℃の熱風乾燥機にて乾燥させ、イソインドリン化合物1-5を88.10部得た。
【0246】
(実施例1-6)
実施例1-4の1,3-ジメチルバルビツール酸8.28部を1,3-ジエチルバルビツール酸9.77部に変更した以外は、全て実施例1-4と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-6を86.60部得た。
【0247】
(実施例1-7)
実施例1-1のバルビツール酸36.69部を38.73部に、1,3-ジメチルバルビツール酸4.97部を1,3-ジシクロヘキシルバルビツール酸4.65部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-7を89
.60部得た。
【0248】
(製造例1-1)
実施例1-1のバルビツール酸36.69部、および1,3-ジメチルバルビツール酸4.97部をバルビツール酸40.77部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-8を85.80部得た。
【0249】
(製造例1-2)
実施例1-1のバルビツール酸36.69部、および1,3-ジメチルバルビツール酸4.97部を1,3-ジメチルバルビツール酸49.69部に変更した以外は、全て実施例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物1-9を94.20部得た。
【0250】
実施例1-1~1-7及び製造例1-1~1-2で得られたイソインドリン化合物に含まれる構造を表1に示す。なお、表中、(1)は、イソインドリン化合物(1)、(2)はイソインドリン化合物(2)を示す。表中、Hは水素、Meはメチル基、Etはエチル基、CHは、シクロヘキシル基を示す。
【0251】
【0252】
得られたイソインドリン化合物の同定は、マススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数(理論値)とを比較することによって実施した。マススペクトラムの分子イオンピークの測定は、Waters社のACQUITY UPLS H-Class(使用カラム:ACQUITY UPLC BEH C18 Column 130Å、1.7μm、2.1mm×50mm)/Ms TAP XEVO TQDを用いて実施した。イソインドリン化合物(実施例1-1~1-7、製造例1-1~1-2)について、理論分子量と、それぞれ質量分析を行った測定値を表1に示す。測定値は測定の性質上、化合物のH(プロトン)が脱離するため、理論分子量の質量数-(マイナス)1の値であれば、化合物が一致することになる。
【0253】
(実施例2-1)
還流冷却管、滴下漏斗及び、撹拌機を具備した4口フラスコに、水800部、80%酢酸800部を加え、撹拌した。そこへバルビツール酸83.39部、1,3-ジメチルバルビツール酸11.29部を加え、65℃にて撹拌し、バルビツール酸および1,3-ジメチルバルビツール酸を溶解させた。一方、ガラス製フラスコに、水800部、1,3-ジイミノイソインドリン50.00部を加え、30℃にて撹拌した。この撹拌液を上記加熱溶解液の中に投入し、さらに反応を完結させるために85℃まで昇温し撹拌を行った。加熱撹拌は、原料として使用した上記不揮発分が消失するまで行った。原料の消失はUPLCにて確認した。
その後、室温まで冷却後、水2000部にて3回洗浄を行い、不揮発分を得た。この不揮発分を80℃の熱風乾燥機にて乾燥させ、イソインドリン化合物2-1を124.90部得た。
【0254】
(実施例2-2)
還流冷却管、滴下漏斗及び、撹拌機を具備した4口フラスコに、水800部、80%酢酸800部を加え、撹拌した。そこへバルビツール酸83.39部を加え、65℃にて撹拌し、バルビツール酸を溶解させた。一方で、ガラス製フラスコに、水720部、1,3-ジイミノイソインドリン45.00部を加え、30℃にて撹拌した。この撹拌溶液を上記加熱溶解液の中に投入し、撹拌を1時間行った。この反応溶液に1,3-ジメチルバルビツール酸11.29部を追加した。一方で、ガラス製フラスコに、水80部、1,3-ジイミノイソインドリン5.00部を加え、30℃にて撹拌した。この撹拌液を上記反応溶液の中に投入し、さらに反応を完結させるために85℃まで昇温し撹拌を行った。加熱撹拌は、原料として使用した上記不揮発分が消失するまで行った。原料の消失はUPLCにて確認した。
その後、室温まで冷却後、水2000部にて3回洗浄を行い、不揮発分を得た。この不揮発分を80℃の熱風乾燥機にて乾燥させ、イソインドリン化合物2-2を123.00部得た。
【0255】
(製造例2-1)
実施例2-1のバルビツール酸83.39部、1,3-ジメチルバルビツール酸11.29部をバルビツール酸92.65部に変更した以外は、全て実施例2-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物2-3を122.90部得た。
【0256】
(製造例2-2)
実施例2-1のバルビツール酸83.39部、1,3-ジメチルバルビツール酸11.29部を1,3-ジメチルバルビツール酸112.94部に変更した以外は、全て実施例2-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物2-4を141.10部得た。
【0257】
実施例2-1~2-2、及び製造例2-1~2-2で得たイソインドリン化合物の構造を表2に示す。
【0258】
得られたイソインドリン化合物の同定は、上記同様にマススペクトラムの分子イオンピ
ークと、計算によって得られる質量数(理論値)とを比較することによって実施した。
【0259】
【0260】
(実施例3-1)
還流冷却管、滴下漏斗、及び撹拌機を具備した4口フラスコに、水800部、1,3-ジイミノイソインドリン60部、28%アンモニア水120部の順に加え、撹拌した。そこへ2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-2-イル)アセトニトリル80.37部を水160部に溶解させた溶液を、滴下漏斗を使用して30分間で滴下した。30℃にて原料の1,3-ジイミノイソインドリンが消失するまで加熱撹拌した。この反応スラリーを、ブフナー漏斗を用いてろ別し、不揮発分を得た。なお、原料の消失はUPLCにて確認した。
還流冷却管、滴下漏斗及び、撹拌機を具備した4口フラスコに、原料として先の調製で得た不揮発分60部相当、水480部、80%酢酸162部を加え、撹拌した。一方で、ガラス製フラスコに、水461部、80%酢酸194部を加え、そこへバルビツール酸26.49部、1,3-ジメチルバルビツール酸3.59部を加え、65℃にて撹拌した。この混合物の加熱溶液を上記不揮発分の撹拌液の中に投入し、さらに反応を完結させるために85℃まで昇温し撹拌を行った。加熱撹拌は、原料として使用した上記不揮発分が消失するまで行った。原料の消失はUPLCにて確認した。
その後、室温まで冷却後、水2400部にて3回洗浄を行い、不揮発分を得た。この不揮発分を80℃の熱風乾燥機にて乾燥させ、イソインドリン化合物3-1を73.50部得た。
【0261】
(実施例3-2)
還流冷却管、滴下漏斗、及び撹拌機を具備した4口フラスコに、水800部、1,3-ジイミノイソインドリン60部、28%アンモニア水120部の順に加え、撹拌した。そこへ2-(4-オキソ-3,4-ジヒドロキゾリン-2-イル)アセトニトリル80.38部を水160部に溶解させた溶液を、滴下漏斗を使用して30分間で滴下した。30℃にて原料の1,3-ジイミノイソインドリンが消失するまで加熱撹拌した。この反応スラリーを、ブフナー漏斗を用いてろ別し、不揮発分を得た。なお、原料の消失はUPLCにて確認した。
還流冷却管、滴下漏斗及び、撹拌機を具備した4口フラスコに、原料として先の調製で得た不揮発分60部相当、水480部、80%酢酸162部を加え、撹拌した。一方で、ガラス製フラスコに、水480部、80%酢酸162部を加え、そこへバルビツール酸22.08部を加え、65℃にて撹拌した。この混合物の加熱溶液を上記不揮発分の撹拌液の中に投入し、30℃にて3時間撹拌を行った。さらに別で用意したガラス製フラスコに、水48部、80%酢酸16部を加え、そこへ1,3-ジメチルバルビツール酸5.98部を加え、65℃にて撹拌した。この混合物の加熱溶液を先の反応撹拌液の中に投入し、さらに反応を完結させるために85℃まで昇温し撹拌を行った。加熱撹拌は、原料として使用した上記不揮発分が消失するまで行った。原料の消失はUPLCにて確認した。
その後、室温まで冷却後、水2400部にて3回洗浄を行い、不揮発分を得た。この不揮発分を80℃の熱風乾燥機にて乾燥させ、イソインドリン化合物3-2を74.10部得た。
【0262】
(製造例3-1)
実施例3-1のバルビツール酸26.49部、1,3-ジメチルバルビツール酸3.59部をバルビツール酸29.44部に変更した以外は、全て実施例3-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物3-3を75.20部得た。
【0263】
(製造例3-2)
実施例3-1のバルビツール酸26.49部、1,3-ジメチルバルビツール酸3.59部を1,3-ジメチルバルビツール酸35.88部に変更した以外は、全て実施例3-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物3-4を79.70部得た。
【0264】
実施例3-1~3-2及び製造例3-1~3-2で得られたイソインドリン化合物の構
造を表3に示す。
【0265】
得られたイソインドリン化合物の同定は、上記同様にマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数(理論値)とを比較することによって実施した。
【0266】
【0267】
(実施例1-8)
製造例1-1で得られたイソインドリン化合物(1-8)90部、製造例1-2で得られたイソインドリン化合物(1-9)10部、塩化ナトリウム1000部、及びジエチレングリコール150部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)中に仕込み、60℃で8時間(h)混練した。次に、混練した混合物を約70℃の温水に投入し、1時間攪拌してスラリー状として、濾過及び水洗をして食塩及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥させ、粉砕することにより微細化されたイソインドリン化合物(1-10)95.5部を得た。
【0268】
(実施例1-9)
実施例1-3で得られたイソインドリン化合物(1-3)100部、塩化ナトリウム500部、及びジエチレングリコール150部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)中に仕込み、75℃で6時間(h)混練した。次に、混練した混合物を約70℃の温水に投入し、1時間攪拌してスラリー状として、濾過及び水洗をして食塩及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥させ、粉砕することにより微細化されたイソインドリン化合物(1-11)96.2部を得た。
【0269】
(実施例1-10)
製造例1-1で得られたイソインドリン化合物(1-8)95部、製造例2-2で得られたイソインドリン化合物(2-4)5部、塩化ナトリウム1000部、及びジエチレングリコール150部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)中に仕込み、60℃で8時間(h)混練した。次に、混練した混合物を約70℃の温水に投入し、1時間攪拌してスラリー状として、濾過及び水洗をして食塩及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥させ、粉砕することにより微細化されたイソインドリン化合物(1-12)96.0部を得た。
【0270】
(実施例1-11)
98%硫酸1000部に製造例1-1で得られたイソインドリン化合物(1-8)37.0部、製造例1-2で得られたイソインドリン化合物(1-9)3.0部を撹拌しながら徐々に加え、4時間撹拌し溶解させた。次いで、溶解液を10℃の水8000部に撹拌しながら30分かけて徐々に滴下し、濾過、温水洗浄を行い、80℃で乾燥させ、微細化されたイソインドリン化合物(1-13)38.5部を得た。得た。
【0271】
(実施例2-3)
製造例2-1で得られたイソインドリン化合物(2-3)95部、製造例2-2で得られたイソインドリン化合物(2-4)5部、塩化ナトリウム1000部、及びジエチレングリコール150部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)中に仕込み、60℃で8時間(h)混練した。次に、混練した混合物を約70℃の温水に投入し、1時間攪拌してスラリー状として、濾過及び水洗をして食塩及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥させ、粉砕することにより微細化されたイソインドリン化合物(2-5)96.7部を得た。
【0272】
(実施例3-3)
製造例3-1で得られたイソインドリン化合物(3-3)90部、製造例3-2で得られたイソインドリン化合物(3-4)10部、塩化ナトリウム1000部、及びジエチレングリコール150部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)中に仕込み、60℃で8時間(h)混練した。次に、混練した混合物を約70℃の温水に投入し、1時間攪拌してスラリー状として、濾過及び水洗をして食塩及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥させ、粉砕することにより微細化されたイソインドリン化合物(3-5)94.7部を得た。
【0273】
得られたイソインドリン化合物について、製造例1-1を
図1、製造例1-2を
図2、実施例1-1を
図3、実施例1-2を
図4、実施例1-4を
図5、実施例1-5を
図6、実施例1-8を
図7、実施例1-11を
図8として下記の通り測定したCu-Kα線によるX線回折スペクトルを示す。
【0274】
(イソインドリン組成物(1)及び(2)の粉末X線回折測定方法)
粉末X線回折測定は、日本工業規格JIS K0131(X線回折分析通則)に準じて、回折角(2θ)が、3°から35°の範囲で測定した。
【0275】
測定条件は下記の通りとした。
X線回折装置:リガク社製RINT2100
サンプリング幅:0.02°
スキャンスピード:2.0°/min
発散スリット:1°
発散縦制限スリット:10mm
散乱スリット:2°
受光スリット:0.3mm
管球:Cu
管電圧:40kV
管電流:40mA
【0276】
<着色組成物及びその特性評価>
得られたイソインドリン化合物を使用して、各種用途の着色組成物を調製し、物性評価を行った。
【0277】
<1>成形用組成物の評価
<耐熱性試験>
(実施例A-1~A-17、比較例A-1~A3)
耐熱性試験は、ドイツ工業規格DIN12877-1に準拠して行った。
得られたイソインドリン化合物と高密度ポリエチレン樹脂(製品名:ハイゼックス(Hizex)2208J、プライムポリマー社製)を使用し、二軸押し出し機にて溶融混錬を行い、バレル内の温度が200℃になる条件でインジェクション成形を行い、着色力がそれぞれSD1/3の濃度になるように調整して厚さ3mmの着色プレートを11枚作製した。なお、インジェクション成形は、バレル内で組成物の滞留時間が可能な限り短くなる条件で行った。使用したイソインドリン化合物を表4に示す。着色プレートは、平均的な色差を検出するために、6枚目~11枚目の6枚の着色プレートについて、全光束測定が可能な測色機(コニカミノルタ社製、CM-700d)を用いて、それぞれ測色した。得られた測色値の平均値をコントロール(基準値)とした。
【0278】
次に、バレル内の滞留時間が5分になるように成形条件を調整した後、それぞれ300℃において11枚の着色プレートを成形した。得られた着色プレート、それぞれ6枚目~11枚目の6枚をそれぞれ測色し、その測色値の平均値を算出した。上記コントロールと、300℃で成形したプレートの測定値との色差(ΔE*)を求め、下記基準に従い評価した。結果を表4に示す。色差が小さいほど耐熱性が良好である。
【0279】
(評価基準)
4.ΔE*が、3.0未満である。非常に良好
3.ΔE*が、3.0以上、6.0未満である。良好
2.ΔE*が、6.0以上10.0未満である。実用可
1.ΔE*が、10.0以上である。実用不可
【0280】
【0281】
(実施例A-18)成形体の作製
イソインドリン化合物1-4を1部、ポリプロピレン樹脂(製品名:プライムポリプロJ105、プライムポリマー社製)1000部を二軸押し出し機にて220℃で溶融混錬を行い、次いでペレタイサーでカットしてペレット状の成形用組成物を得た。次に、得られた成形用組成物を溶融混錬しつつ、成形温度220℃、金型温度40℃に設定した射出成型機を用いて射出成形を行い、厚さ1mmの成形体(プレート)を得た。成形体を目視で観察した結果、透かしにおいても粗粒などは認められず、着色度が良好な黄色のプレートが得られた。
【0282】
(実施例A-19)成形体の作製
イソインドリン化合物1-4を0.5部、予め予備乾燥を行ったポリエチレンテレフタレート樹脂(製品名:Vylopet EMC-307、東洋紡績社製)1000部を二軸押し出し機にて275℃で溶融混錬を行い、次いでペレタイサーでカットしてペレット状の成形用組成物を得た。次に、得られた成形用組成物を溶融混錬しつつ、成形温度275℃、金型温度85℃に設定した射出成型機を用いて射出成形し、厚さ3mmの成形体(プレート)を得た。成形体を目視で観察した結果、透かしにおいても粗粒などは認められず、着色度が良好な黄色のプレートが得られた。
【0283】
<2>トナーの評価
負帯電トナーを作製し、評価した。
(実施例A-20)
イソインドリン化合物1-4を2500部、及びポリエステル樹脂(製品名:M-325、三洋化成社製)2500部を加圧ニーダーを用いて120℃15分間混錬した。次いで、得られた混練物を加圧ニーダーから取り出し、更に、ロール温度95℃の3本ロールを用いて混練を行った。得られた混練物を冷却後、10mm以下に粗粉砕することによって、着色組成物を得た。
得られた着色組成物500部、ポリエステル樹脂4375部、3,5-ジ-tert-ブチルサリチル酸のカルシウム塩化合物(荷電制御剤)50部、及びエチレンホモポリマー(離型剤、分子量850、Mw/Mn=1.08、融点107℃)75部を、20L容積のヘンシェルミキサーを用いて混合(3000rpm、3分)し、さらに二軸混練押出機を用いて、吐出温度120℃にて溶融混練を行った。次いで、混練物を冷却固化した後、ハンマーミルで粗粉砕した。次いで、得られた粗粉砕物について、I式ジェットミル(IDS-2型)を用いて微粉砕化した後、分級することによってトナー母粒子を得た。
次いで、上記で得られたトナー母粒子2500部と疎水性酸化チタン(STT-30A
チタン工業社製)12.5部を10L容積のヘンシェルミキサーで混合し、負帯電トナー1を得た。
【0284】
一方、比較対象として、実施例A-20のイソインドリン化合物1-4をイソインドリン化合物1-8に変更したことを除き、全て実施例A-20と同様にして負帯電トナー2を得た。
得られた負帯電トナー1及び負帯電トナー2を、それぞれミクロトームを用いて厚さ0.9μmにスライスし、サンプルを形成した。次いで、各サンプルについて透過型電子顕微鏡を用いて顔料の分散状態を観察した。その結果、イソインドリン化合物1-8を使用した負帯電トナー2よりも、イソインドリン化合物1-4の化合物を使用した負帯電トナー1の方が、顔料が均一に分配されており、分散性が良いことが確認できた。
【0285】
<3>塗料の評価
<3-1>溶剤系塗料の調製
1.ベース塗料の調製
(実施例B-1) ベース塗料1の調製方法
先ず、以下の原料と、スチールビーズ230部とを225mlのガラス瓶に仕込み、レッドデビル社製ペイントシェーカーを用いて、60分間にわたって分散させ、混合物を得た。
・イソインドリン化合物(1-1):19部
・アクリル樹脂(DIC社製、アクリディック47-712):7.7部
・分散溶媒(トルエン:キシレン:酢酸ブチル:ENEOS社製T-SOL150 FLUIDの質量比が3:3:2:2の混合溶媒):40.7部
次いで、上記混合物に、アクリディック47-712を75.4部、メラミン樹脂(DIC社製アミディアL-117-60)17.2部を加えて、さらに10分、分散させ、分散液を得た。
次いで、上記分散液からスチールビーズを除去して、イソインドリン化合物(1-1)のベース塗料1を得た。
【0286】
(実施例B-2~B-17、比較例B-1~B-3) ベース塗料2~20の調製
実施例B-1に記載したベース塗料1の調製方法において、イソインドリン化合物1-1をイソインドリン1-2~1-8、1-10~1-13、2-1~2-3、2-5、及び3-1~3-3、3-5に、それぞれ変更した以外は、全て実施例B-1と同様にして、ベース塗料2~20を得た。
【0287】
【0288】
2.白塗料の調製
以下は、ソリッドベース塗料に使用する白塗料の調製例に関する。
先ず、以下の原料と、スチールビーズ900部とを900mlのガラス瓶に仕込み、レッドデビル社製ペイントシェーカーにて60分間分散させ、分散液を得た。
・酸化チタン(石原産業社製酸化チタン タイペークCR90):66.6部
・アクリル樹脂(DIC社製、アクリディック47-712):101.7部
・メラミン樹脂(DIC社製、アミディアL-117-60):21.3部
・分散溶媒(トルエン:キシレン:酢酸ブチル:ENEOS社製T-SOL150 FLUIDの質量比が3:3:2:2の混合溶媒):20.9部
次いで、上記分散液からスチールビーズを除去して白塗料を得た。
【0289】
3.ソリッドベース塗料の調製
(実施例C-1)-ソリッドベース塗料1の調製
高速撹拌機を用いて、以下の成分を撹拌し、ソリッドベース塗料1を得た。
・実施例B-1で作成したベース塗料1:10部
・白塗料:31.9部
【0290】
(実施例C-2~C-17、比較例C-1~C-3)-ソリッドベース塗料2~20の調製
実施例C-1のベース塗料1をベース塗料2~20にそれぞれ変更したことを除き、全て実施例C-1と同様にして、ソリッドベース塗料2~20を得た。
なお、各実施例及び各比較例で調製したソリッドベース塗料で使用したベース塗料のイソインドリン化合物は表6に示したとおりである。
【0291】
【0292】
4.トップコートクリア塗料の調製
高速撹拌機を用いて、以下の原料を撹拌し、トップコートクリア塗料を得た。
・アクリル樹脂(DIC社製、アクリディック44-179):120部
・メラミン樹脂(DIC社製、アミディアL117-60):30部
・希釈溶媒(トルエン、キシレン、ENEOS社製T-SOL150 FLUID、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチルの質量比が3:2:2:1:2の混合溶媒):50部
【0293】
5.ソリッドベース塗装板の作製及び耐候性の評価
(実施例D-1) ソリッドベース塗装板1の作製
ソリッドベース塗料1をスプレーガンで噴霧し、サンドペーパー#1000をかけた鋼板に塗装を行った。噴霧しやすい粘度に調整するため、ソリッドベース塗料に対して同質量を目安に希釈溶媒(トルエン、キシレン、ENEOS社製T-SOL150FLUID、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチルの質量比が3:2:2:1:2の混合溶媒)を適宜混合した。
塗装は9回に分けて行い、その後、6回に分けてトップコートクリア塗料を噴霧した。次いで、25℃で8時間乾燥させた後、140℃で30分乾燥させ、ソリッドベース塗装板1を得た。
【0294】
(実施例D-2~D-17、比較例D-1~D-3) ソリッドベース塗装板2~20の作製
実施例D-1のソリッドベース塗料1をソリッドベース塗料2~20にそれぞれ変更したことを除き、全て実施例D-1と同様にして、ソリッドベース塗装板2~20を得た。
【0295】
(耐候性評価)
得られたソリッドベース塗装板1~20を、以下に従って耐候性試験を行った。
耐候性試験は、超促進耐候性試験機(岩崎電気社製、アイスーパーキセノンテスターS
UV-W151)を使用し、照度90mW/cm2、照射(昼)の条件:12時間、温度63℃、湿度70%、照射休止(夜)の条件:12時間、温度70℃、湿度99%を1サイクルとし、48時間(昼夜12時間の2サイクル)と96時間(昼夜12時間の4サイクル)の条件下で行った。耐候性試験前後の塗装板を目視で観察を行い、下記基準に従って、耐候性を評価した。結果を表7に示す。色の変化が小さいほど耐候性に優れていると考えられ、下記評価基準で「4」、「3」及び「2」ば、実用可能なレベルである。
【0296】
(評価基準)
4.ΔE*が、5.0未満である。非常に良好
3.ΔE*が、5.0以上、7.5未満である。良好
2.ΔE*が、7.5以上10.0未満である。実用可
1.ΔE*が、10.0以上である。実用不可
【0297】
【0298】
<4>水系着色組成物の評価
1.水系着色組成物の調製
(実施例E-1)水系着色組成物E-1の調製
以下の原料と、直径1.25mmジルコニアビーズ70部とを70mlのガラス瓶に仕込み、レッドデビル社製ペイントシェーカーを用いて60分間にわたって分散させ、分散液を得た。
・イソインドリン化合物(1-1):3.15部
・ポリエステル変性アクリル酸重合体(Allnex社製、ADDITOL XW 6528):5.25部
・湿潤剤(Allnex社製、ADDITOL XW 6374):0.95部
・消泡剤(Allnex社製、ADDITOL XW 6211):0.63部
・イオン交換水:21.52部
次いで、上記分散液からジルコニアビーズを除去して、水系着色組成物E-1を得た。
【0299】
(実施例E-2~E-17、比較例E-1~E-3)水系着色組成物E-2~20の調製
実施例E-1のイソインドリン顔料1-1を表8に示す通りに変更した以外は、実施例E-1と同様にして、水系着色組成物E-2~20を得た。
【0300】
(実施例E-18)水系着色組成物E-21の調製
実施例E-1のイソインドリン化合物1-1:3.15部をイソインドリン化合物1-8:2.84部およびイソインドリン化合物1-9:0.32部に変更したことを除き、全て実施例E-1と同様にして、水系着色組成物E-21を得た。
【0301】
2.分散安定性の評価
(初期粘度と粘度安定性の評価)
得られた水系着色組成物について、E型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、25℃における初期粘度を測定した。同様にして、25℃で1週間経時後、及び、50℃で1週間経時促進後の粘度をそれぞれ測定した。得られた測定値に基づき初期粘度に対する粘度増加率を算出し、粘度安定性の一つの指標とし、以下の評価基準に沿って評価した。結果を表8に示す。初期粘度が低いほど分散性に優れている。また、粘度増加率が小さいほど分散安定性に優れている。下記評価基準で「4」、「3」及び「2」であれば、実用可能なレベルである。
【0302】
(初期粘度の評価基準)
4.初期粘度が、5.0mPa・s未満である。極めて良好
3.初期粘度が、5.0mPa・s以上、7.5mPa・s未満である。良好
2.初期粘度が、7.5mPa・s以上、10.0mPa・s未満である。実用可
1.初期粘度が、10.0mPa・s以上である。実用不可
【0303】
(粘度安定性の評価基準)
4.粘度増加率が、20%未満である。極めて良好
3.粘度増加率が、20%以上、30%未満である。良好
2.粘度増加率が、30%以上、40%未満である。実用可
1.粘度増加率が、40%以上である。実用不可
【0304】
【0305】
<5>水性塗料の評価
上段で作製した水系着色組成物を使用して水系塗料を作製して評価した。
【0306】
<5-1>水性塗料の調製
(実施例F-1)
(1)水性塗料1-1の調製
高速撹拌機を用いて、以下の原料を撹拌し、水性塗料1-1(25℃で1週間保管)を得た。
・水系着色組成物E-1(25℃1週間保管):1.4部
・アクリル樹脂(酸価65.0、OH価50、Mw=15,000、不揮発分35%):13.6部
・メラミン樹脂(Allnex社製、サイメル325):3.4部
【0307】
(2)水性塗料1-2の調製
高速撹拌機を用いて、以下の原料を撹拌し、水性塗料1-2(50℃で1週間保管)を得た。
・水系着色組成物E-1(50℃1週間保管):1.4部
・アクリル樹脂(酸価65.0、OH価50、Mw=15,000、不揮発分35%):13.6部
・メラミン樹脂(Allnex社製、サイメル325):3.4部
【0308】
(実施例F-2~F-18、比較例F-1~F-3)
実施例F-1の水系着色組成物E-1(25℃で1週間保管)を水系着色組成物E-2~21(それぞれ25℃で1週間保管)に、順次変更したことを除き、全て実施例F-1と同様にして、水性塗料2-1~21-1を得た。
また、実施例F-1の水系着色組成物E-1(50℃で1週間保管)を、水系着色組成
物E-2~21(それぞれ50℃で1週間保管)に、順次変更したことを除き、全て実施例F-1と同様にして、水性塗料2-2~21-2を得た。
【0309】
【0310】
<5-2>ペットフィルム塗装の作製
(実施例G-1) ペットフィルム塗装1の作製。
水性塗料1-1と水性塗料1-2を6ミルのアプリケーターを使用し、ルミラー100T60(PETフィルム、100μm厚)に塗装を行った。その塗装後、そのペットフィルムを室温で18時間乾燥させた。その後、60℃で5分、140℃で20分乾燥させ膜厚70μmの被膜を有するペットフィルム塗装1を得た。
【0311】
(実施例G-2~G-18、比較例G-1~G-3) ペットフィルム塗装2~21の作
製
実施例G-1の水性塗料1-1と水性塗料1-2を2-1~21-1、2-2~21-2に変更する以外は、全て実施例G-1と同様にして、ペットフィルム塗装2~21を得た。
【0312】
<5-3>ペットフィルム塗装の評価
実施例G-1~G-16、比較例G-1~G-3で得た各々のペットフィルム塗装について、以下の方法に従って色相の安定性を評価した。
【0313】
(色相の安定性の評価方法)
測色機(コニカミノルタ社製、CM-700d)を使用して、25℃1週間保存した水系着色組成物の塗料と50℃1週間保存した水系着色組成物の塗料にて塗装したペットフィルムを測色し、その色差(ΔE*)を求め、下記基準で判断した。結果を表10に示す。色差が小さいほど、分散安定性に優れる色材と考えられ、下記評価基準で「4」、「3」及び「2」であれば、実用可能なレベルである。
(評価基準)
4.ΔE*が、1.0未満である。
3.ΔE*が、1.0以上2.0未満である。
2.ΔE*が、2.0以上3.0未満である。
1.ΔE*が、3.0以上である。
【0314】
【0315】
<6>グラビアインキの評価
まず、樹脂の測定法を以下説明する。
(水酸基価)
JIS K0070に従って求めた。
(酸価)
JIS K0070に従って求めた。
(アミン価)
アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数でJIS K0070に準じて以下の方法に従って求めた。
試料を0.5~2g 精秤した( 試料不揮発分:Sg) 。精秤した試料にメタノール/
メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記式によりアミン価を求めた。
アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S [mgKOH/g]
【0316】
(重量平均分子量)
重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(東ソー社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー社製ガードカラムHXL-H
東ソー社製TSKgelG5000HXL
東ソー社製TSKgelG4000HXL
東ソー社製TSKgelG3000HXL
東ソー社製TSKgelG2000HXL
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0317】
(ガラス転移温度)
ガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量測定測定)により求めた。なお、測定機はリガク社製DSC8231を使用し、測定温度範囲-70~25 0℃、昇温速度1
0℃/分、DSC曲線におけるガラス転移に基づく吸熱開始温度と終了温度との中点をガラス転移温度とした。
【0318】
(合成例1)ポリウレタン樹脂[PU1]
数平均分子量700のポリプロピレングリコール(以下「PPG700」)200部、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」)127部、及び酢酸エチル81.8部を窒素気流下にて80℃で4時間反応させ、末端イソシアネートウレタンプレポリマーの樹脂溶液を得た。次いでイソホロンジアミン(以下「IPDA」)49.5部、2-エタノールアミン3部、酢酸エチル/イソプロパノール(以下「IPA」)=50/50(質量比)の混合溶剤803.9部を混合したものに、得られた末端イソシアネートウレタンプレポリマーの樹脂溶液を40℃で徐々に添加し、次に80℃で1時間反応させ、不揮発分30%、アミン価3.5mgKOH/g、水酸基価7.3mgKOH/g、重量平均分子量40,000のポリウレタン樹脂溶液[PU1]を得た。ガラス転移温度は-32℃であった。
【0319】
(実施例H-1)[グラビア印刷インキ1の作製]
バインダー樹脂として、ポリウレタン樹脂溶液[PU1](不揮発分30%)を30部、炭化水素系ワックスとしてポリエチレンワックス(ハネウェル社製A-C400A)を不揮発分換算で0.8部、塩素化ポリプロピレン樹脂(日本製紙社製 製品名:370M 塩素含有率30% 不揮発分50%)を不揮発分換算で0.5部、イソインドリン化合物(1-1)を10部、メチルエチルケトン(以下「MEK」)/酢酸n-プロピル(以下「NPAC」)/IPA=40/40/20(質量比)の溶液58.7部を混合し、アイガーミルで15分間分散し、グラビア印刷インキ1を得た。
【0320】
(実施例H-2~17、比較例H-1~3)[グラビア印刷インキ2~20の作製]
実施例H-1に記載したグラビア印刷インキ1の調製方法において、イソインドリン化合物(1-1)を表11に示す通りに変更した以外は、実施例H-1と同様にして、グラビア印刷インキ2~20を得た。
【0321】
(実施例I-1)<グラビア印刷インキの印刷>
上記で得られたグラビア印刷インキ1を、MEK/NPAC/IPA=40/40/20(質量比)からなる混合溶剤により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈しヘリオ175線グラデーション版(版式コンプレスト グラデーション100%~3%)を備えたグラビア印刷機により、以下の基材(OPPの場合はコロナ放電処理面)に、印刷を印刷速度80m/分で行い、印刷物I1-1(OPP)、I1-2(CPP)を得た。
<基材>
・OPP:片面コロナ放電処理の2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(フタムラ化学社製 FOR 厚さ25μm)
・CPP:コロナ処理無の未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(三井化学東セロ社製 CP-S厚さ30μm)
【0322】
(実施例I-2~17、比較例I-1~3)
表11に記載されたグラビアインキ2~20について、表12に記載の印刷構成にて印刷を行い、印刷物I2-1~I20-1(OPP)、I2-2~I20-2(CPP)を得た。
【0323】
<評価>
グラビアインキ1~20、及び印刷物I1-1~I20-1(OPP)、印刷物I1-2~I20-2(CPP)を用いて、以下の評価を行った。
【0324】
<インキの経時安定性>
グラビア印刷インキ1~20についてそれぞれを密閉容器に入れ、40℃で10日間保存を行った。その後、粘度を測定して保存前との粘度変化を評価した。なお粘度の測定は25℃でザーンカップNo.4の流出秒数にて行った。なお、いずれのインキも保存前のB型粘度計における粘度は40~500cps(25℃)の範囲内であった。
(評価基準)
5.粘度変化が2秒未満(良好)
4.粘度変化が2秒以上5秒未満(実用可)
3.粘度変化が5秒以上10秒未満(やや不良)
2.粘度変化が10秒以上15秒未満(不良)
1.粘度変化が15秒以上(極めて不良)
なお、5、4は実用上問題がない範囲である。
【0325】
<透明性評価>
透明性に関しては、黒帯のある展色紙に対して展色したうえで、それぞれ色相の近い比較例と比較した際の黒帯上の透過具合を見て判断した。
(評価基準)
5.極めて透明
4.透明
3.同等
2.不透明
1.極めて不透明
【0326】
【0327】
<耐擦傷性>
印刷物I1-1~I20-1(OPP)、印刷物I1-2~I20-2(CPP)を用いて、印刷層表面を爪で3ヶ所を擦り、印刷層の傷つき度合を評価した。
(評価基準)
5.印刷層の傷つきなし(良好)
4.印刷層の傷はつかないが僅かに爪の跡が残る。(実用可)
3.印刷層の傷がつき、印刷層表面が僅かに抉れる。(やや不良)
2.印刷層の傷がつき、基材が僅かに見える。(不良)
1.印刷層の傷がつき、基材がはっきり見える。(極めて不良)
なお、5、4は実用上問題がない範囲である。
【0328】
<接着性>
印刷物I1-1~I20-1(OPP)、印刷物I1-2~I20-2(CPP)について、それぞれ印刷3時間後に、印刷面に幅12mmの粘着テープ(ニチバン社製 セロハンテープ)を貼り付け、これを急速に剥がしたときの印刷面の外観の状態を目視判定した。尚、判定基準は以下の通りとした。
(評価基準)
5.印刷面のインキ被膜が全く剥離しないもの(良好)
4.インキ被膜の剥離面積が1%以上5%未満であるもの(実用可)
3.インキ被膜の剥離面積が5%以上20%未満のもの(やや不良)
2.インキ被膜の剥離面積が20%以上50%未満のもの(不良)
1.インキ被膜が50%以上剥がれるもの(極めて不良)
なお、5、4は実用上問題がない範囲である。
【0329】
【0330】
<7>水性インクジェットインキの評価
<7-1>インクジェット用水性着色組成物(以下「IJ用水性着色組成物」)の調製
(実施例J-1) IJ用水性着色組成物1の調製
・イソインドリン化合物(1-1):19.0部
・スチレン-アクリル酸共重合体(BASFジャパン社製、ジョンクリル61J):16.4部
・界面活性剤(花王社製、エマルゲン420):5.0部
・イオン交換水:59.6部
と、直径1.25mmジルコニアビーズ200部とを200mlのガラス瓶に仕込み、レッドデビル社製ペイントシェーカーにて6時間にわたって分散させた。得られた液をイオン交換水で希釈し、分散用ジルコニアビーズを濾過分離し、着色剤含有量が15%となるようにイオン交換水で希釈することにより、イソインドリン化合物(1-1)のIJ用水性着色組成物1を得た。
【0331】
(実施例J-2~J-17、比較例J-1~J-3)IJ用水性着色組成物2~20の調製
実施例J-1に記載した水性IJ分散液1の調製方法において、イソインドリン化合物1-1を表13に記載した通りにそれぞれ変更した以外は、実施例J-1と同様にして、IJ用水性着色組成物2~20を得た。
【0332】
(実施例J-18)IJ用水性着色組成物21の調製
実施例J-1に記載した水性IJ分散液1の調製方法において、イソインドリン化合物1-1:19部をイソインドリン1-8:17.1部およびイソインドリン1-9:1.9部に変更した以外は、実施例J-1と同様にして、IJ用水性着色組成物21を得た。
【0333】
(合成例2)カルボキシル基および水酸基を有するスチレン-アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体[PA1]
滴下漏斗、温度計、窒素ガス導入管、撹拌機および還流冷却管を備えた3リットルの4口フラスコにメチルエチルケトン1,000部を仕込んで78℃まで昇温した後、スチレン100部、n-ブチルメタクリレート538部、n-ブチルアクリレート104部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート150部、メタクリル酸108部、及びターシャリブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート80部からなる混合液を、4時間かけて滴下し、同温度にて8時間反応させた。反応終了後、更にメチルエチルケトンを加え、不揮発分が50%になるように調整し、酸価70mgKOH/g、数平均分子量6,000のスチレン-アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体[PA1]溶液を得た。なお前記酸価は、グラビア印刷インキ中の樹脂と同様の方法で測定した値であり、前記数平均分子量は、上述したグラビア印刷インキ中の樹脂の重量平均分子量の場合と同様の装置及び方法にて測定した、ポリスチレン換算値である。
【0334】
(実施例J-19)IJ用水性着色組成物22の調製
スチレン-アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体[PA1]溶液(不揮発分50%)12.8部を、ジメチルエタノールアミン0.71部を用いて中和した後、メチルエーテル化メラミン樹脂(三和ケミカル工業社製、ニカラック MX-041)2.29部(樹脂として1.6部)と混合した。この混合溶液中に、あらかじめ作製しておいたイソインドリン化合物(1-2)の水性スラリー(不揮発分16%)50部を撹拌しながら加えた。次いで、直径1.5mmガラスビーズ130部とともに250mlガラス瓶に仕込み、レッドデビル社製ペイントシェーカーを用いて4時間にわたって分散させ、分散液を得たのちに、混合物と等量のイオン交換水を加えた。その後、1規定塩酸水溶液を撹拌しながら加え、共重合体[PA1]をイソインドリン化合物(1-2)の表面に析出及び固着させた。なお固着させた後の、混合溶液のpHは3~5であった。
その後、混合溶液を吸引濾過し、洗液のpHが6を越えるようになるまでイオン交換水で水洗をして共重合体[PA1]が固着したイソインドリン化合物(1-2)を得た。
次いで、共重合体[PA1]が固着したイソインドリン化合物(1-2)が流動するようになるまで水を加えたのち、撹拌機で撹拌しながら、ジメチルエタノールアミンを0.8部添加した後、そのまま1時間撹拌を継続し、共重合体[PA1]が固着したイソインドリン化合物(1-2)の再分散体を得た。
この再分散体に水を加えて、不揮発分を19%に調整したのち、酸架橋触媒(楠本化成社製、Nacure 2500X)を当該再分散体中に含まれる共重合体[PA1]の量に対して0.5%加え、95℃にて1時間架橋反応を行うことで、顔料組成物含有架橋樹脂粒子を含む水系着色組成物(IJ用水性着色組成物22)を得た。
【0335】
(合成例3)カルボキシル基およびエポキシ基を有するスチレン-アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体[PA2]
滴下漏斗、温度計、窒素ガス導入管、撹拌機および還流冷却管を備えた3リットルの4口フラスコに、メチルエチルケトン1,000部を仕込んで78℃まで昇温した後、スチレン100部、n-ブチルメタクリレート476部、n-ブチルアクリレート116部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート150部、グリシジルメタクリレート50部、メタクリル酸108部、及びターシャリブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート80部からなる混合液を、4時間かけて滴下し、同温度にて8時間反応させた。反応終了後、更にメチルエチルケトンを加えて、不揮発分が50%になるように調整し、酸価70mgKOH/g、数平均分子量10,500のスチレン-アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体[PA2]溶液を得た。
【0336】
(実施例J-20)IJ用水性着色組成物23の調製
得られたスチレン-アクリル酸エステル-メタクリル酸エステル共重合体[PA2]溶液(不揮発分50%)を16部、イソインドリン化合物(1-2)を8部、及び、メチルエチルケトン40部を、直径1.5mmガラスビーズ130部とともに250mlガラス瓶に仕込み、レッドデビル社製ペイントシェーカーを用いて4時間にわたって分散させ、分散液を得た。次いで、この分散液に、親水性エポキシ樹脂(DIC社製、CR-5L)0.8部及びメチルエチルケトン24部を加えて撹拌した後、ガラスビーズを濾過分離した。こうして得られた分散液87.2部を、ジメチルエタノールアミン1.2部及び水100部の混合液中に、撹拌しながら投入したのち、混合物と等量のイオン交換水を加えた。その後、1規定燐酸水溶液を撹拌しながら加え、共重合体[PA2]をイソインドリン化合物(1-2)の表面に析出及び固着させた。なお固着させた後の、混合溶液のpHは5であった。
その後、混合溶液を吸引濾過し、洗液のpHが6を越えるようになるまでイオン交換水で水洗をして共重合体[PA2]が固着したイソインドリン化合物(1-2)を得た。
次いで、共重合体[PA2]が固着したイソインドリン化合物(1-2)が流動するようになるまで水を加えたのち、撹拌機で撹拌しながら、ジメチルエタノールアミンを0.8部添加した後、そのまま1時間撹拌を継続し、共重合体[PA2]が固着したイソインドリン化合物(1-2)の再分散体を得た。
この再分散体に水を加えて、不揮発分を19%に調整したのち、再分散体を95℃に加熱して1時間架橋反応を行うことで、顔料組成物含有架橋樹脂粒子を含む水系着色組成物(IJ用水性着色組成物23)を得た。
【0337】
(合成例4)スチレン-アクリル酸エステル共重合体[PA3]
アクリル酸62部、スチレン129部、α-メチルスチレン9部を混合し、モノマー混合液を調製した。反応容器内に、メチルエチルケトン20部、2-メルカプトエタノール(重合連鎖移動剤)0.3部、及び、前記モノマー混合液の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。また別途、滴下漏斗に、前記モノマー混合液の残りの90%、前記重合連鎖移動剤0.27部、メチルエチルケトン60部、及び、アゾ系ラジカル重合開始剤(和光純薬工業社製、V-65、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル))2.2部の混合液を仕込んだ。
窒素雰囲気下、前記反応容器内の混合物を撹拌しながら65℃まで昇温したのち、滴下漏斗中の混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、65℃で1時間反応させた後、更に、前記重合開始剤0.3部をメチルエチルケトン5部に溶解した溶液を加え、65℃で1時間反応を継続した。前記重合開始剤溶液の添加及び反応の継続を更に2回行った後、70℃に昇温し更に1時間反応させた後、メチルエチルケトン200部を加えることで、酸価240mgKOH/g、数平均分子量5,700、重量平均分子量12,500のスチレン-アクリル酸エステル共重合体[PA3]溶液(不揮発分濃度40.9%)を得た。
このスチレン-アクリル酸エステル共重合体[PA3]溶液を減圧乾燥し、溶媒を完全に除去することで樹脂32部を得たのち、イオン交換水204部と混合し、更に、トリエタノールアミン11.1部を加え、共重合体[PA3]中のカルボキシ基の約55モル%を中和した。この混合溶液を90℃まで加熱したのち1時間撹拌することで、共重合体[PA3]が水中に分散した、共重合体[PA3]の水分散液を得た。
【0338】
(実施例J-21)IJ用水性着色組成物24の調製
共重合体[PA3]の水分散液を室温まで冷却した後、イソインドリン化合物(1-2)を100部加え、撹拌機を用いて、20℃下で3時間撹拌した。この混合溶液にイオン交換水124部を加えたのち、マイクロフルイダイザーを用い、150MPaの圧力で15パス分散処理した。次いで、高速冷却遠心機(日立工機社製、himac CR22G)を用い、得られた分散液を、設定温度20℃、3,660rpmで20分間遠心分離した後、液層部分のみ回収し、更に、孔径5μmのメンブランフィルターで濾過を行い、イソインドリン化合物(1-2)の水分散液(不揮発分濃度25%)を得た。
このイソインドリン化合物(1-2)の水分散液100部に、イオン交換水32部を加え、更に、架橋剤としてトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、デナコールEX-321)を1.8部加え、撹拌しながら70℃で5時間加熱した。その後室温まで冷却し、孔径5μmのメンブランフィルターで濾過を行い、更にイオン交換水を添加して不揮発分が19%となるように調整することで、顔料組成物含有架橋樹脂粒子を含む水系着色組成物(IJ用水性着色組成物24)を得た。
【0339】
【0340】
<7-1>水性インクジェットインキ(以下「水性IJインキ」)の調製
表14及び表15に記載の各成分を撹拌混合した後、3μmのメンブランフィルターでろ過する事により、評価試験用の実施例K-1~K-23、および比較例K-1~K-5の水性IJインキを得た。表14及び表15において、成分の量を示す数値は何れも『部』数であり、『-』を記載したものは、その成分を含まない事を意味する。また、『水』はイオン交換水を使用した。その他表中の略号は以下の意味を示す。
・PG:プロピレングリコール
・TEA:トリエタノールアミン
・AMP:2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール
・NH3 28%aq:28%アンモニア水溶液
【0341】
<長期保存時の色変化>
各実施例及び比較例にて作成した水性IJインキを、マヨネーズ瓶に充填し、50℃オーブンにて4週間保管した。各インキの保管前後のインキを使用し、松尾産業社製K コントロールコーターを使用し、OKトップコートに対し、ウェット膜厚6μmで塗工後、塗工物を70℃オーブンで1分間乾燥させ、塗工物を作製した。
【0342】
保管前後における色差(ΔE値)の算出:
得られた塗工物を使用し、X-Rite社製X-rite eXactを使用し、長期保管前後でのインキ塗膜のL*、a*、b*値を測定した。その数値から、保管前後による色差(ΔE値)を算出し、評価を実施した。下記評価基準で「4」、「3」及び「2」であれば、実用可能な品位である。
(評価基準)
4:色差(ΔE値)が2未満
3:色差(ΔE値)が2以上3未満
2:色差(ΔE値)が3以上5未満
1:色差(ΔE値)が5以上
【0343】
【0344】
【0345】
以上の結果から、イソインドリン化合物(1)及びイソインドリン化合物(2)を含む顔料組成物の効果が分かる。例えば、表4の結果から、優れた耐熱性を有する成形体を形成できる成形用組成物が得られる。また、トナーの結果から、顔料の分散性に優れたトナーが得られる。また、塗料の結果から、優れた耐候性を有する塗料が得られた。特に、変色を抑制できる。また、グラビア印刷インキの結果から、粘度変化、透明性に優れ、印刷物においても耐擦傷性、接着性に優れる印刷インキが得られることが分かる。また、水系着色組成物の結果から、初期粘度、及び保存安定性の向上できることがわかる。さらに、水性インクジェットインキの結果から、色材に対するpH耐性の改善を確認し、長期保存安定性時における、インキ塗膜の色変化を抑制できるインクジェットインキが得られることが分かる。特に、顔料組成物含有架橋樹脂粒子として使用することで、pH耐性の更なる向上が可能となることが確認できる。
【0346】
<インキセット及びその特性評価>
得られたイソインドリン化合物を使用してインキセットを調製し、その特性評価を行った。
【0347】
(合成例5)ポリウレタン樹脂溶液[PU2]
アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールから得られる数平均分子量2,000のポリエステルジオール54.719部、イソホロンジイソシアネート3.989部、酢酸n-プロピル10.0部を窒素気流下に85℃で3時間反応させ、酢酸n-プロピル10.0部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液78.718部を得た。次いでイソホロンジアミン1.031部、ジ-n-ブチルアミン0.261部、酢酸n-プロピル30.4部及びイソプロピルアルコール19.6部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液78.718部を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、不揮発分30%、重量平均分子量60,000、アミン価3.0mgKOH/gのポリウレタン樹脂溶液[PU2]を得た。
【0348】
(合成例6)ポリウレタン樹脂溶液[PU3]
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、PPA(数平均分子量2,000のポリ(プロピレングリコール)アジペートジオール)を161.9部、2,2-ジメチロールブタン酸(DMBA)27.7部、イソホロンジイソシアネート(IPDI)96.4部、メチルエチルケトン(MEK)200部を仕込み、90℃で5時間反応させて末端イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの樹脂溶液を得た。得られた末端イソシアネート基ウレタンプレポリマー樹脂溶液に対し、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(AEA)13.6部、エタノールアミン(MEA)0.5部、イソプロピルアルコール(IPA)350部を混合したものを室温で60分かけて滴下し、更に70℃で3時間反応させた。更にMEK150部を用いて不揮発分を調整し、不揮発分30%、重量平均分子量35,000、Mw/Mn=3.0、酸価35.0mgKOH/g、水酸基価25.7mgKOH/gのポリウレタン樹脂溶液[PU3]を得た。
【0349】
(合成例7)アルミニウムフタロシアニン
反応容器に、n-アミルアルコール1250部、フタロジニトリル225部、及び塩化アルミニウム無水物78部を加えて混合攪拌した。これに、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)266部を加え、昇温し、136℃で5時間還流した。攪拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール5000部、水10000部からなる混合溶媒中へ攪拌しながら注入し、青色のスラリーを得た。このスラリーを濾過し、メタノール2000部、水4000部からなる混合溶媒で洗浄し、乾燥して、135部の下記化学式(32)で示されるクロロアルミニウムフタロシアニンを得た。
【0350】
【0351】
次いで、反応容器中に、濃硫酸1500部を加え、次いで上記クロロアルミニウムフタロシアニン100部を氷浴下にて加え、25℃で4時間撹拌を行った。続けて、この硫酸溶液を3℃の冷水9000部に注入し、生成した析出物をろ過、水洗、1%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、水洗の順で処理を行い、乾燥して、98部の下記化学式(30)で示されるアルミニウムフタロシアニンを得た。
【0352】
【化16】
(合成例8)チタニルフタロシアニン 反応容器に、1-ヘキサノール1280部、キノリン320部、1,3-ジイミノイソインドリン320部、及びオルトチタン酸テトラブチル206.3部を加えて混合攪拌した。155℃まで昇温し、8時間還流した。なお、系内から発生したnーブタノールは系内に戻らないように回収した。攪拌したまま60℃まで冷却した反応溶液に、メタノール1000部を加え、スラリーを濾過し、メタノール1000部、N-メチルピロリドン500部、メタノール1000部の順で洗浄し、乾燥して、250部の下記化学式(31)で示されるチタニルフタロシアニンクルードを得た。
【0353】
【0354】
次いで、反応容器中に、濃硫酸1500部を加え、次いで上記チタニルフタロシアニンクルード100部を氷浴下にて加え、25℃で4時間撹拌を行った。続けて、この硫酸溶液を3℃の冷水9000部に注入し、生成した析出物をろ過、水洗、1%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、水洗の順で処理を行い、ケーキを得た。次いで、反応容器中にジエチレングリコール1000部及び得られたケーキを加えて撹拌しスラリーとし、120℃で3時間撹拌を行った。60℃まで冷却したスラリーを濾過し、水5000部で洗浄して乾燥し、87部のチタニルフタロシアニンを得た。
【0355】
[グラビア印刷インキの製造]
(実施例LY-1)
イソインドリン化合物(1-1)7.0部、ポリウレタン樹脂溶液[PU2]34.5部、N-プロピルアセテート20部、イソプロピルアルコール5部を撹拌混合し、サンドミルで練肉した後、ポリウレタン樹脂溶液[PU2]20部、N-プロピルアセテート11部、イソプロピルアルコール3部を添加し、イエローインキ[LY-1]を得た。
【0356】
(実施例LY-2~LY15、製造例LY-1~LY-2、LC-1~LC-5、LM-1~LM-10)
イソインドリン化合物(1-1)7.0部を、表16に示した化合物及び表16記載の量に変更した以外は実施例LY-1と同様にして、表16記載のインキを得た。
【0357】
【0358】
インキの製造に使用した顔料を表17に示す。
【0359】
【0360】
<インキの経時粘度安定性評価>
イエローインキ[LY-1]~[LY-17]、シアンインキ[LC-1]~[LC-5]、マゼンタインキ[LM-1]~[LM-10]についてそれぞれを密閉容器に入れ、40℃で14日間保存を行った。その後、粘度を測定して、保存前との粘度変化を比較して評価した。なお粘度の測定は25℃でザーンカップNo.4の流出秒数にて行った。なお、いずれのインキも保存前のB型粘度計における粘度は40~500cps(25℃)の範囲内であった。結果を表18に示す。
(評価基準)
○:粘度変化が2秒未満(良好)
△:粘度変化が2秒以上5秒未満(実用可)
×:粘度変化が5秒以上(不良)
【0361】
<インキセットの評価>(実施例LS-1~LS-64、比較例LS-1~LS-15) 得られた各インキを表18に記載のとおり組み合わせて、インキセット1~79とした。
得られたインキセットについて、以下の方法でトラッピング性、ガマットを評価した。結果を表18に示す。
【0362】
[トラッピング性](シアンインキ/イエローインキ)
シアンインキ及びイエローインキを、各々、混合溶剤1(メチルエチルケトン:N-プロピルアセテート:イソプロパノール=40:40:20)により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。
厚み12μmのコロナ放電処理ポリエステルフィルム(東洋紡社製 E-5100)のコロナ放電処理面に、シアン、イエローの順で重ね印刷し、印刷物を得た(トラッピング性初期評価)。
印刷条件は、温度25℃、湿度60%、印刷速度100m/分、印刷距離4000mとした。シアンインキはヘリオ175線グラデーション版(版式コンプレスト、75%ベタ柄と100%~3%のグラデーション柄)を用い、イエローインキはヘリオ175線グラデーション版(版式エロンゲート、75%ベタ柄と100%~3%のグラデーション柄)を用いた。
また、シアンインキ及びイエローインキを、各々、密閉容器に入れ、40℃で14日間保存を行った後、上記と同様に希釈、印刷し、印刷物を得た(トラッピング性経時評価)。
【0363】
(イエローインキ/マゼンタインキ)
イエローインキ及びマゼンタインキを、各々、上記混合溶剤1により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。
厚み12μmのコロナ放電処理ポリエステルフィルム(東洋紡社製 E-5100)のコロナ放電処理面に、イエロー、マゼンタの順で重ね印刷し、印刷物を得た(トラッピング性初期評価)。
印刷条件は、温度25℃、湿度60%、印刷速度100m/分、印刷距離4000mとした。イエローインキはヘリオ175線グラデーション版(版式エロンゲート、75%ベタ柄と100%~3%のグラデーション柄)を用い、マゼンタインキはヘリオ175線グラデーション版(版式エロンゲート、75%ベタ柄と100%~3%のグラデーション柄)を用いた。
また、イエローインキ及びマゼンタインキを、各々、密閉容器に入れ、40℃で14日間保存を行った後、上記と同様に希釈、印刷し、印刷物を得た(トラッピング性経時評価)。
【0364】
得られた印刷物のグラデーション重ね印刷部分について、キーエンス社製マイクロスコープ(VHX-5000)を用いてトラッピング性を観察し、以下の基準で評価した。
○:印刷ムラが版深70%未満で発生する(良好)
△:印刷ムラが版深70%以上、80%未満で発生する(使用可能)
×:印刷ムラが版深80%以上で発生する、又は、重ねのインキがすべて網点となり、濡れ広がっていない(使用不可)
【0365】
[ガマット評価](初期評価)
シアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキを、上記混合溶剤1により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。希釈した各インキを用いて、シアン、マゼンタ、イエローの刷り順で印刷し、単色ベタ部(シアン、マゼンタ、イエロー)、単色ベタ刷り重ね部(シアン×マゼンタ、シアン×イエロー、イエロー×マゼンタ)を有する印刷物を得た。印刷条件を以下に示す。
【0366】
(印刷条件)
印刷機:富士機械5色機
シアン版:ヘリオ175L/inch、スタイラス角度120°、エロンゲート
マゼンタ版:ヘリオ175L/inch、スタイラス角度120°、コンプレスト
イエロー版:ヘリオ175L/inch、スタイラス角度120°、コンプレスト
印刷速度:150m/分
基材:コロナ処理二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東洋紡績社製パイレンP-2161、20μm)
乾燥温度:50℃
【0367】
得られた印刷物について、グレタグマクベスD196を用いて印刷物の単色ベタ部(イエロー、マゼンタ、シアン)の濃度値を測定した。また、測定機としてgretagmacbeth製SpectroEyeを使用し、D50光源、2度観測視野、ホワイトバック(標準白色板使用)、フィルター類未使用の条件で、単色ベタ部及び重ね刷り部を測色した。
a*を横軸、b*縦軸とした2次元空間に、単色ベタ部(イエロー、マゼンタ、シアン)、及び、単色ベタ刷り重ね部(シアン×マゼンタ、シアン×イエロー、イエロー×マゼンタ)計6色のa*対b*の値を、プロットした六角形を作成し面積を求めた。基準となる比較例の面積を100%とした場合の面積比を求め、その面積比から以下の基準で評価した。具体的には、実施例LS-1~LS-12、LS-16~LS-20、LS-25~LS-30、及び比較例LS-3~LS-7、LS-12は、比較例LS-1を基準とした。また、実施例LS-13~LS-15は、比較例LS-2を基準とした。また、実施例LS-35~LS-40は、比較例LS-13を基準とした。なお、-は未評価であることを表す。
(評価基準)
○:面積比が90%以上である(良好)
△:面積比が85%以上、90%未満である(使用可能)
×:面積比が85%未満である(使用不可)
【0368】
(経時評価)
シアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキを、各々、密閉容器に入れ、40℃で14日間保存を行った後、初期評価と同様に希釈、印刷し、印刷物を得た。
【0369】
得られた印刷物について、上記の初期評価と同様に測色した。
a*を横軸、b*縦軸とした2次元空間に、単色ベタ部(イエロー、マゼンタ、シアン)、及び、単色ベタ刷り重ね部(シアン×マゼンタ、シアン×イエロー、イエロー×マゼンタ)計6色のa*対b*の値を、プロットした六角形を作成した。各実施例・比較例の経時評価における面積を、初期評価の面積で除した面積比を求め、その面積比から以下の基準で評価した。-は未評価であることを表す。
(評価基準)
○:面積比が98%以上である(良好)
△:面積比が95%以上、98%未満である(実用可)
×:面積比が95%未満である(不良)
【0370】
【0371】
表18によれば、本発明のグラビア印刷インキセットは、従来のインキセットと比較して、ガマットの面積比は同等以上であり、良好な色再現性を有していた。また、イエローインキの経時粘度安定性が向上し、インキセットとしての保存安定性が良好であった。さらに、各色のトラッピング性および色再現性(ガマット)においても、経時評価が良好であり、インキセットとしての保存安定性が良好であった。
【0372】
一方、比較例LS-1~LS-15は、イエローインキの経時粘度安定性が悪く、各色のトラッピング性および色再現性(ガマット)においても、経時評価が不良であったため、インキセットとしての保存安定性が悪く、本願の課題を解決できない。
【0373】
<クリアインキの製造>
(クリアインキ[1]の作製)
ポリウレタン樹脂溶液[PU3](不揮発分30%)87部、酢酸エチル(EA)5部、IPA5部、シリカ(水澤化学社製「P-73」、平均粒子径3.8μmの親水性シリカ粒子)3部を、ディスパーを用いて撹拌混合して、クリアインキ[1]を得た。
【0374】
<脱離性を有する接着剤の製造>
(ラミネート接着剤溶液[1]の作製)
四つ口セパラブルフラスコに、テレフタル酸82部、イソフタル酸682部、アジピン酸236部、エチレングリコール236部、ネオペンチルグリコール525部、1,6-ヘキサンジオール405部を仕込み、220~260℃でエステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し1mmHg以下、240~260℃で5時間脱グリコール反応を行った。その後、イソホロンジイソシアネート2部を徐々に添加し、150℃で約2時間反応を行い、ポリエステルポリウレタンポリオールを得た。このポリエステルポリウレタンポリオール100部に、無水トリメリット酸2.83部を添加し、180℃で約2時間反応させた。次いで酢酸エチルで不揮発分50%に希釈して、数平均分子量6,000、酸価16.5mgKOH/gである部分酸変性ポリエステルポリオール溶液を得た。
得られたポリオール溶液100部と、HDIビウレットの不揮発分95%酢酸エチル溶液7.94部とを混合し、酢酸エチルを加えて不揮発分30%のラミネート接着剤溶液[1]を得た。
【0375】
<包装材料の製造>
(実施例LP-1)包装材料1
シアンインキ[LC-1]、マゼンタインキ[LM-1]、イエローインキ[LY-1]を、上記混合溶剤1により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。
希釈した各インキを用いて、版深20μmのグラビア版を備えたグラビア校正5色機と、ブラックインキ(リオアルファ R92墨(東洋インキ社製))、シアンインキ[LC-1]、マゼンタインキ[LM-1]、イエローインキ[LY-1]、ホワイトインキ(リオアルファ R631白(東洋インキ社製))を含むインキセット101とを用いて、厚み20μmのコロナ処理延伸ポリプロピレンフィルム(OPP基材)に対し、ブラックインキ、シアンインキ[LC-1]、マゼンタインキ[LM-1]、イエローインキ[LY-1]、ホワイトインキの順で重ね印刷し、各ユニットにおいてはそれぞれ50℃にて乾燥し、「OPP基材/ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー又はホワイトの印刷層」の構成である印刷物を得た。
次いで、得られた印刷物の印刷層上に、ウレタン系ラミネート接着剤(東洋モートン社製TM320/CAT13B、不揮発分30%酢酸エチル溶液)を、乾燥後塗布量が2.0g/m2となるように塗工し乾燥した後、接着剤層上に、厚み50μmの未延伸ポリエチレン(PE)フィルムを貼り合わせ、「OPP基材/5色重ね印刷層/接着剤層/PE基材」の構成である包装材料1を得た。
【0376】
(実施例LP-2~LP-64)包装材料2~64
実施例LP-1で使用したインキセット101を、表19に示すインキセットに変更した以外は実施例LP-1と同様にして、脱離層を有する包装材料2~64を得た。
【0377】
【0378】
(実施例LP-101)包装材料101 上述のクリアインキ[1]を、EA/IPA混合溶剤(質量比70/30)により、粘度が15秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。
シアンインキ[LC-1]、マゼンタインキ[LM-1]、イエローインキ[LY-1]を、上記混合溶剤1により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。
希釈した各インキを用いて、版深20μmのグラビア版を備えたグラビア校正5色機と、クリアインキ[1]、シアンインキ[LC-1]、マゼンタインキ[LM-1]、及びイエローインキ[LY-1]を含むインキセット201とを用いて、厚み20μmのコロナ処理延伸ポリプロピレンフィルムに対し、クリアインキ[1]、シアンインキ[LC-1]、マゼンタインキ[LM-1]、及びイエローインキ[LY-1]の順で重ね印刷し、各ユニットにおいてはそれぞれ50℃にて乾燥し、「OPP基材/脱離層(クリアインキ)/シアン、マゼンタ又はイエローの印刷層」の構成であり、脱離性を有する層を含む印刷物を得た。
次いで、得られた印刷物の印刷層上に、ドライラミネート機を用いてラミネート接着剤溶液[1]を塗工し、ライン速度40m/分にて、厚み25μmのアルミニウム蒸着無延伸ポリプロピレン(VMCPP)フィルムと貼り合わせ、「OPP基材/脱離性を有する印刷層/3色重ね印刷層/脱離性を有する接着剤層/VMCPP基材」の構成であり、脱離層を有する包装材料101を得た。
【0379】
(実施例LP-102~LP-164)
包装材料102~164 実施例LP-101で使用したインキセット201を、表20に示すインキセットに変更した以外は実施例LP-101と同様にして、脱離層を有する包装材料102~164を得た。
【0380】
【0381】
本発明のグラビア印刷インキセットを使用することで、包装材料を作製できた。
【0382】
<水性インクジェットインキの製造>(実施例MY-1)
(インクジェット用水性着色組成物(以下「IJ用水性着色組成物」)[MY-1]の調製)
下記の材料と、直径1.25mmジルコニアビーズ200部とを200mlのガラス瓶に仕込み、レッドデビル社製ペイントシェーカーにて6時間分散した。
・イソインドリン化合物(1-1):19.0部
・スチレン-アクリル酸共重合体(BASFジャパン社製、ジョンクリル61J):16.4部
・界面活性剤(花王社製、エマルゲン420):5.0部
・イオン交換水:59.6部
次いで、上記分散液からジルコニアビーズを除去して、IJ用水性着色組成物[MY-1]を得た。
【0383】
(水性インクジェットインキ(以下「水性IJインキ」)[MY-1]の調製)
水性IJ分散体1を33部、ブチルジグリコールを5部、1,2-プロパンジオールを15部、Joncryl HPD96(BASF社製、水溶性樹脂)を8.8部、ケミパールW400S(三井化学社製、リオレフィン水性ディスパージョン)を1.25部、サーフィノールDF110D(日信化学工業社製、消泡剤)を0.5部、BYK-348(ビックケミージャパン社製、シリコン系界面活性剤)を1部、トリエタノールアミンを0.1部、プロキセルGXL(Lonza社製、防腐剤)を0.15部、イオン交換水35.2部をハイスピードミキサー混合し、0.5μmメンブランフィルターでろ過し、水性IJインキ[MY-1]を得た。
【0384】
(実施例MY-2~MY-15、製造例MY-1~MY-2、MC-1~MC-3、MM-1~MM-6)
(IJ用水性着色組成物[MY-2]~[MY-17]、[MC-1]~[MC-3]、[MM-1]~[MM-6]、および水性IJインキ[MY-2]~[MY-17]、[MC-1]~[MC-3]、[MM-1]~[MM-6]の調製)
製造例MY-1のイソインドリン化合物(1-1)19.0部を、表21に示した化合物及び表21記載の量に変更した以外は実施例MY-1同様にして、表21記載に示すIJ用水性着色組成物[MY-2]~[MY-17]、[MC-1]~[MC-3]、[MM-1]~[MM-6]、および水性IJインキ[MY-2]~[MY-17]、[MC-1]~[MC-3]、[MM-1]~[MM-6]を得た。
【0385】
【0386】
インキの製造に使用した顔料を表22に示す。
【0387】
【0388】
<インキの経時粘度安定性評価>
水性IJインキ[MY-1]~[MY-17]、[MC-1]~[MC-3]、[MM-1]~[MM-6]についてE型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、25℃における初期粘度を測定した。同様にして、25℃で4週間経時後、及び、50℃で4週間経時促進後の粘度を測定した。それぞれの測定値を用いて、初期粘度に対する粘度増加率を算出し、粘度安定性の一つの指標とし、以下の基準に従って評価した。結果を表23に示す。粘度増加率が小さいほど粘度安定性に優れていると考えられ、下記評価基準で「4」、「3」及び「2」であれば、実用可能なレベルである。
【0389】
(粘度安定性の評価基準)
4:粘度増加率が、15%未満である。
3:粘度増加率が、15%以上25%未満である。
2:粘度増加率が、25%以上40%未満である。
1:粘度増加率が、40%以上である。
【0390】
<インキセットの評価>
[実施例MS-1~MS-32、比較例MS-1~MS-9]
得られた各水性IJインキを表23に記載のとおり組み合わせて、インキセット301~341とした。
得られたインキセットについて、以下の方法でガマットを評価した。結果を表23に示す。
【0391】
[ガマット評価]
(初期評価)
幅方向の解像度600dpi、最大吐出周波数30kHzのインクジェットヘッド(京セラ社製「KJ4Bシリーズ」)を用いたラインパス型のインクジェットプリンターにて、各インキセットの、イエローインキ、マゼンタインキ、シアンインキをそれぞれのヘッドに充填して、コート紙(王子製紙社製OKトップコートN、坪量104.7g/m2)に、600×600dpiの解像度で、カラーチャート画像(X-rite製profilemaker用チャート画像「TC3.5 CMYK i1_i0」)を印刷し、評価用印刷物を作成した。
【0392】
得られた評価用印刷物のカラーチャート部を、分光光度計(X-rite製i1 i0 Pro)および測色ツール(X-rite製MesurementToolおよびprofilemaker)を用いて測色し、L*a*b*色空間における色再現領域をプロットした。測定条件は、光源D50、2度視野、測定光学45/0°で行った。得られた各プロットから面積を求めた。基準となる比較例の面積を100%とした場合の面積比を求め、その面積比から以下の基準で評価した。具体的には、実施例MS-1~MS-12、MS-16~MS-26、及び比較例MS-3~MS-8は、比較例MS-1を基準とした。また、実施例MS-13~MS-15は、比較例MS-2を基準とした。また、実施例MS-27~MS-32は、比較例MS-9を基準とした。
(評価基準)
○:面積比が90%以上である(良好)
△:面積比が85%以上、90%未満である(使用可能)
×:面積比が85%未満である(使用不可)
【0393】
(経時評価)
各水性IJインキを、各々、密閉容器に入れ、50℃で4週間保存を行った後、初期評価と同様に印刷し、評価用印刷物を作成した。得られた印刷物について、初期評価と同様に測色し、得られた各プロットから面積を求めた。各実施例・比較例の経時評価における面積を、初期評価の面積で除した面積比を求め、その面積比から以下の基準で評価した。
(評価基準)
○:面積比が98%以上である(良好)
△:面積比が95%以上、98%未満である(実用可)
×:面積比が95%未満である(不良)
【0394】
【0395】
表23によれば、本発明の水性IJインキセットは、従来のインキセットと比較して、ガマットの面積比は同等以上であり、良好な色再現性を有していた。また、イエローインキの経時粘度安定性が向上し、インキセットとしての保存安定性が良好であった。さらに、色再現性(ガマット)においても、経時評価が良好であり、インキセットとしての保存安定性が良好であった。
【0396】
一方、比較例MS-1~MS-9は、イエローインキの経時粘度安定性が悪く、色再現性(ガマット)においても、経時評価が不良であったため、インキセットとしての保存安定性が悪く、本願の課題を解決できない。
【要約】 (修正有)
【課題】分散性、耐候性および耐熱性に優れ、保存安定性が良好であり、塩基性雰囲気下での経時退色を抑制する、イソインドリン化合物を含む顔料組成物を提供する。
【解決手段】式(1)で表されるイソインドリン化合物、および式(2)で表されるイソインドリン化合物とを含む顔料組成物。
[式中、R
1~R
4は、Hを表し、R
5、R
6は、それぞれ独立してアルキル基を表し、AおよびA’は、特定の置換基を表す。]
【選択図】
図3