(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】シャツ
(51)【国際特許分類】
A41B 1/02 20060101AFI20220201BHJP
【FI】
A41B1/02
(21)【出願番号】P 2019113735
(22)【出願日】2019-06-19
【審査請求日】2019-12-20
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503322814
【氏名又は名称】株式会社オギタヘムト
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】森 伸介
【合議体】
【審判長】久保 克彦
【審判官】柳本 幸雄
【審判官】井上 茂夫
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第3302387(DE,A1)
【文献】国際公開第88/02603(WO,A1)
【文献】米国特許第1551306(US,A)
【文献】特開2008-19545(JP,A)
【文献】特開2017-150097(JP,A)
【文献】米国特許第4896377(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 1/02
A41B 1/00
A41B 1/10
A41B 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立てを備えたシャツにおいて、左右の前身頃を1枚の布地で構成し、該布地の身幅方向の中心に、上端から胸部に至るスリットを形成し、左右の前身頃の一方にスリット長に亘る長さの下前立てを縫着するとともに、他方に布地の着丈方向の全長に亘る長さの上前立てを縫着し
、前記スリット長に亘る長さの間は、下前立てに釦を取り付けるとともに、上前立てに釦ホールを形成するようにし、それより下方は、上前立てに釦を取り付けるようにようにしてなることを特徴とするシャツ。
【請求項2】
前記左右の前身頃に、一方向の伸びが直交する方向に比較して相対的に高い生地を、伸びる方向を身幅方向に配置したことを特徴とする請求項
1に記載のシャツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャツに関し、特に、ワイシャツ、ブラウス等の前立てを備えた布地を縫製して構成するシャツに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シャツには、大別して、(1)布帛を縫製して構成したワイシャツやブラウスに代表されるビジネス、フォーマル、カジュアル等の用途に用いられる、着丈方向の全長に亘る長さの前立てを備えたシャツと、(2)ニット生地を縫製した構成したポロシャツ、ラガーシャツに代表されるカジュアル、スポーツ等の用途に用いられるニットシャツとの2種類がある。
【0003】
このうち、前者のシャツは、ニットシャツに比べて、フォーマルさを演出できる利点がある反面、伸縮性に乏しいため、メタボ体型の人が着用すると、釦で留められた間の上前立て及び下前立てが引っ張られて歪みが生じ、上前立てと下前立てとの重なり合い部分がなくなり、腹部が開いてしまうことによって隙間から下着や肌が見えるという問題があった。
【0004】
この問題点に対処するために、腹部に相当する位置における下前立ての幅を、それより上部の位置における下前立ての幅より広く形成した衣服が提案されている(特許文献1参照。)。
【0005】
ところで、この衣服は、メタボ体型の人が着用しても、腹部が開いてしまうことによって隙間から下着や肌が見えるという問題を解消できる反面、生地の重複する部分によって、腹部のシルエットが損なわれるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来のシャツの有する問題点に鑑み、フォーマルさを演出できる、着丈方向の全長に亘る長さの前立てを備えたシャツの利点を享有しながら、メタボ体型の人が着用しても腹部が開くことがなく、かつ、生地の重複する部分をなくして、腹部のシルエットを綺麗に維持できるシャツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のシャツは、前立てを備えたシャツにおいて、左右の前身頃を1枚の布地で構成し、該布地の身幅方向の中心に、上端から胸部に至るスリットを形成し、左右の前身頃の一方にスリット長に亘る長さの下前立てを縫着するとともに、他方に布地の着丈方向の全長に亘る長さの上前立てを縫着してなることを特徴とする。
【0009】
この場合において、一方向の伸びが直交する方向に比較して相対的に高い生地を、伸びる方向を身幅方向に配置することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシャツによれば、左右の前身頃を1枚の布地で構成し、該布地の身幅方向の中心に、上端から胸部に至るスリットを形成し、左右の前身頃の一方にスリット長に亘る長さの下前立てを縫着するとともに、他方に布地の着丈方向の全長に亘る長さの上前立てを縫着してなるようにすることにより、フォーマルさを演出できる、着丈方向の全長に亘る長さの前立てを備えたシャツの利点を享有しながら、メタボ体型の人が着用しても腹部が開くことがなく、また、女性のブラウスに適用した場合には下着が見えにくくなり、かつ、生地の重複する部分をなくして、腹部のシルエットを綺麗に維持することができる。
また、このシャツは、ポロシャツのようなプルオーバータイプのシャツであるため、掛けたり外したりする釦の数が少なくなり、シャツの着脱性を向上することができ、さらに、小児用のシャツに適用した場合には、まだ釦を上手く留めることができない子供でも着やすく、動き回っても肌が露出することを防止することができる。
【0011】
また、前記左右の前身頃に、一方向の伸びが直交する方向に比較して相対的に高い生地を、伸びる方向を身幅方向に配置することにより、形状安定性及び伸縮性を両立させることができ、特に、シャツの着脱性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のシャツの一実施例を示す説明図である。
【
図2】同シャツの前身頃を構成する布地の説明図である。
【
図3】同シャツの下前立て及び上前立ての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のシャツの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0014】
図1~
図3に、本発明のシャツの一実施例を示す。
このシャツは、前立てを備えたシャツ1において、左右の前身頃を1枚の布地2で構成し、この布地2の身幅方向の中心に、上端から胸部に至るスリット21を形成し、左右の前身頃の一方(本実施例においては、下前身頃に相当する右前身頃2a。)にスリット長Lに亘る長さの下前立て3を縫着するとともに、他方(本実施例においては、上前身頃に相当する左前身頃2b。)に布地2の着丈方向の全長に亘る長さの上前立て4を縫着してなるようにしている。
【0015】
下前立て3は、内側に芯地32を貼り付けた布地31を折り畳んでなり、この折り畳んだ布地31の間に右前身頃2aの端縁部を挟み込んで、着丈方向に縫製することで縫着するようにする。
【0016】
上前立て4は、内側に芯地42を貼り付けた布地41を折り畳んでなり、スリット長Lに亘る長さの間は、この折り畳んだ布地41の間に左前身頃2bの端縁部を挟み込んで、それより下方は、右前身頃2aと左前身頃2bの境界部(布地2の身幅方向の中心)の表面に折り畳んだ布地41を配置して、着丈方向に縫製することで縫着するようにする。
【0017】
左右の前身頃を構成する布地2は、汎用の布帛を用いることもできるが、好ましくは、一方向の伸びが直交する方向に比較して相対的に高い生地(ニット生地や特殊な織物)を用い、伸びる方向を身幅方向に配置するようにする。
【0018】
そして、スリット長Lに亘る長さの間は、下前立て3に釦5を取り付けるとともに、上前立て4に釦ホール6を形成するようにし、それより下方は、上前立て4に釦5を取り付ける(さらに、必要に応じて、ダミーの釦ホール7を形成することもできる。)ようにする。
【0019】
このシャツ1によれば、左右の前身頃を1枚の布地2で構成し、この布地2の身幅方向の中心に、上端から胸部に至るスリット21を形成し、左右の前身頃の一方にスリット長Lに亘る長さの下前立て3を縫着するとともに、他方に布地2の着丈方向の全長に亘る長さの上前立て4を縫着してなるようにすることにより、フォーマルさを演出できる、着丈方向の全長に亘る長さの前立てを備えたシャツの利点を享有しながら(上前立て4による作用効果。)、メタボ体型の人が着用しても腹部が開くことがなく、また、女性のブラウスに適用した場合には下着が見えにくくなり、かつ、生地の重複する部分をなくして、腹部のシルエットを綺麗に維持することができる(左右の前身頃を1枚の布地2で構成したことによる作用効果。)。
また、このシャツ1は、ポロシャツのようなプルオーバータイプのシャツであるため、掛けたり外したりする釦の数が少なくなり、シャツの着脱性を向上することができ、さらに、小児用のシャツに適用した場合には、まだ釦を上手く留めることができない子供でも着やすく、動き回っても肌が露出することを防止することができる。
【0020】
また、前記左右の前身頃に、一方向の伸びが直交する方向に比較して相対的に高い生地を、伸びる方向を身幅方向に配置することにより、形状安定性及び伸縮性を両立させることができ、特に、シャツの着脱性を向上することができる。
【0021】
以上、本発明のシャツについて、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のシャツは、フォーマルさを演出できる、着丈方向の全長に亘る長さの上前立てを備えたシャツの利点を享有しながら、メタボ体型の人が着用しても腹部が開くことがなく、かつ、生地の重複する部分をなくして、腹部のシルエットを綺麗に維持できるという特性を有していることから、ワイシャツ、ブラウス等の着丈方向の全長に亘る長さの上前立てを備えた布地を縫製して構成する男性用、女性用、小児用のシャツの用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 シャツ
2 布地(左右の前身頃)
21 スリット
2a 右前身頃(下前身頃)
2b 左前身頃(上前身頃)
3 下前立て
4 上前立て
5 釦
6 釦ホール
7 釦ホール(ダミー)
L スリット長