(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220201BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 401
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2018227702
(22)【出願日】2018-12-04
【審査請求日】2020-08-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000161057
【氏名又は名称】株式会社ミヤコシ
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】井沢 秀男
(72)【発明者】
【氏名】小松田 誠治
(72)【発明者】
【氏名】田村 瑛一
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-173191(JP,A)
【文献】実開平05-051626(JP,U)
【文献】米国特許第08646893(US,B2)
【文献】特開2009-226755(JP,A)
【文献】特開2003-159792(JP,A)
【文献】特開2010-082936(JP,A)
【文献】特開2011-230465(JP,A)
【文献】特開2012-131065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
B41J 29/00 - 29/70
G03G 13/20
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷体にインクを付与する印刷部と、該インクが付与された印刷体を外周面に接触させ加熱乾燥するための乾燥ドラムと、該乾燥ドラムを軸心方向とは垂直な面で区画した複数の区画部の加熱をそれぞれ制御可能である制御装置とを有するインクジェット印刷装置において、
各区画部には、それぞれ、該区画部を加熱可能なヒータ部が取り付けられており、
前記制御装置により、全ての区画部のヒータ部の加熱がそれぞれ連続制御され
、
前記ヒータ部が、前記区画部を出力能力の割合である出力比に応じて加熱可能であり、
前記区画部には、それぞれ、前記区画部の温度を検出するための温度検出部が更に取り付けられており、
前記制御装置が、初期出力比を設定するための初期出力比設定部と、前記複数の区画部の目標温度を設定するための目標温度設定部と、出力増減演算式、出力制限演算式、PID演算式及びゲインUP演算式が記憶された記憶部と、前記出力比を前記出力増減演算式及び前記出力制限演算式に基づいて順次演算する演算部とを有し、
前記出力増減演算式が、前記区画部の前記温度検出部が検出した実測温度の平均温度から、該実測温度を減じた温度差に、任意に設定される係数を乗じて付加出力比とし、該付加出力比を、前記区画部の初期出力比に加えるものであり、
前記出力制限演算式が、前記出力増減演算式に基づいて付加出力比が加えられた出力比が、100%以下である場合、該出力比を更新出力比とし、100%を超える場合、該出力比100%を更新出力比とするものであり、
前記制御装置により、任意に設定される初期出力比で各区画部のヒータ部の加熱開始が制御され、前記更新出力比で加熱開始後の各区画部のヒータ部の加熱が連続制御され、
前記実測温度と前記目標温度との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内である場合、前記演算部が、前記更新出力比を前記PID演算式及び前記ゲインUP演算式に基づいて更に演算するものであり、
前記PID演算式が、前記更新出力比を前記実測温度と前記目標温度との偏差、その積分及び微分の要素に基づいてPID出力比とするものであり、
前記ゲインUP演算式が、各区画部の更新出力比から各区画部のヒータ部のPID出力比を引いた余剰出力比を、前記実測温度が低い区画部のヒータ部のPID出力比に加えるものであり、
前記出力制限演算式が、前記ゲインUP演算式に基づいて前記余剰出力比が加えられたPID出力比が、100%以下である場合、該PID出力比を更新PID出力比とし、100%を超える場合、出力比100%を前記更新PID出力比とするものであり、
前記制御装置により、前記更新PID出力比で各区画部のヒータ部の加熱が連続制御されるインクジェット印刷装置。
【請求項2】
前記印刷部が、ラインヘッド式の印刷ヘッドを有するものであり、
前記ヒータ部が、前記乾燥ドラムの内周面に沿うように取り付けられたバンドヒータ又はラバーヒータである請求項1記載のインクジェット印刷装置。
【請求項3】
前記初期出力比が50~80%であり、
前記目標温度が100~140℃である請求項1又は2に記載のインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置に関し、更に詳しくは、乾燥ドラムの温度を目標温度にするための制御装置を備えたインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷の分野においては、被印刷体に対しインクジェット方式にて印刷を施した印刷体に対し、加熱装置により加熱乾燥が施される。
このとき、印刷体を効率良く加熱乾燥させるため、加熱装置に対しては様々な加熱制御が行われている。
【0003】
かかる加熱制御としては、例えば、フィードバック制御の一種であるPID制御が知られている。PID制御は、入力値の制御を、出力値と目標値との偏差、その積分、及び微分の3つの要素によって行うものである。
また、具体例としては、インクが適切に乾燥して高い印刷画質が得られるヒータ温度が得られるように、ヒータに通電すべき電流値を制御するヒータ温度制御を行い、その温度制御に、PID制御などのフィードバック制御を採用している記録装置(例えば、特許文献1参照)や、目標温度と実測温度との偏差(残留偏差)を時間軸方向に積分して印加する熱量を制御するPI制御、あるいは更に実測温度の変化を時間で微分した変化速度を加味するPID制御などを用いる記録媒体搬送装置(例えば、特許文献2参照)や、印刷を実施するまでの期間において、ある一定の制御周期で制御目標温度と現在温度との差分(比例分)から0%~100%で設定されるヒータの点灯デューティ比を決定し、点灯デューティ比を用いて加熱ローラの温度が目標温度となるよう制御部にて制御する処理液塗布装置(例えば、特許文献3参照)や、制御部が、温度センサが検出する検出温度に基づいて第1のヒータと第2のヒータを制御し、検出温度と乾燥温度の差に応じて第2のヒータのパワーを調整するインクジェットプリント装置(例えば、特許文献4参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-226755号公報
【文献】特開2012-131065号公報
【文献】特開2015-112543号公報
【文献】特開2015-205476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~4に記載の加熱制御においては、効率良く加熱装置を昇温させることができるものの、加熱装置自体に温度ムラが生じることを抑制することはできない。
また、インクジェット印刷装置においては、印刷体の幅方向に対して、インクを付与する量が必ずしも一定ではないため、印刷体のインク付与量が多い部分を加熱乾燥する加熱装置の部分は、他の部分と比べて、温度が十分に上がらなくなるという問題がある。その結果、印刷体の乾燥不良を引き起こす原因となる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、加熱装置である乾燥ドラム自体の温度ムラを極力抑制することできるインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、敢えて、乾燥ドラムを複数の区画部に分け、各区画部の加熱をそれぞれ制御することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、(1)被印刷体にインクを付与する印刷部と、インクが付与された印刷体を外周面に接触させ加熱乾燥するための乾燥ドラムと、乾燥ドラムを軸心方向とは垂直な面で区画した複数の区画部の加熱をそれぞれ制御可能である制御装置とを有するインクジェット印刷装置において、各区画部には、それぞれ、区画部を加熱可能なヒータ部が取り付けられており、制御装置により、全ての区画部のヒータ部の加熱がそれぞれ連続制御され、ヒータ部が、区画部を出力能力の割合である出力比に応じて加熱可能であり、区画部には、それぞれ、区画部の温度を検出するための温度検出部が更に取り付けられており、 制御装置が、初期出力比を設定するための初期出力比設定部と、複数の区画部の目標温度を設定するための目標温度設定部と、出力増減演算式、出力制限演算式、PID演算式及びゲインUP演算式が記憶された記憶部と、出力比を出力増減演算式及び出力制限演算式に基づいて順次演算する演算部とを有し、出力増減演算式が、区画部の温度検出部が検出した実測温度の平均温度から、実測温度を減じた温度差に、任意に設定される係数を乗じて付加出力比とし、付加出力比を、区画部の初期出力比に加えるものであり、出力制限演算式が、出力増減演算式に基づいて付加出力比が加えられた出力比が、100%以下である場合、出力比を更新出力比とし、100%を超える場合、出力比100%を更新出力比とするものであり、制御装置により、任意に設定される初期出力比で各区画部のヒータ部の加熱開始が制御され、更新出力比で加熱開始後の各区画部のヒータ部の加熱が連続制御され、実測温度と目標温度との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内である場合、演算部が、更新出力比をPID演算式及びゲインUP演算式に基づいて更に演算するものであり、PID演算式が、更新出力比を実測温度と目標温度との偏差、その積分及び微分の要素に基づいてPID出力比とするものであり、ゲインUP演算式が、各区画部の更新出力比から各区画部のヒータ部のPID出力比を引いた余剰出力比を、実測温度が低い区画部のヒータ部のPID出力比に加えるものであり、出力制限演算式が、ゲインUP演算式に基づいて余剰出力比が加えられたPID出力比が、100%以下である場合、PID出力比を更新PID出力比とし、100%を超える場合、出力比100%を更新PID出力比とするものであり、制御装置により、更新PID出力比で各区画部のヒータ部の加熱が連続制御されるインクジェット印刷装置に存する。
【0009】
本発明は、(2)印刷部が、ラインヘッド式の印刷ヘッドを有するものであり、ヒータ部が、乾燥ドラムの内周面に沿うように取り付けられたバンドヒータ又はラバーヒータである上記(1)記載のインクジェット印刷装置に存する。
【0010】
本発明は、(3)初期出力比が50~80%であり、目標温度が100~140℃である上記(1)又は(2)に記載のインクジェット印刷装置に存する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のインクジェット印刷装置においては、乾燥ドラムを複数の区画部に分け、制御装置が、全ての区画部のヒータ部の加熱をそれぞれ連続制御することにより、区画部間における温度ムラを抑制することできる。その結果、乾燥ドラム全体を効率良く且つ均一に昇温させることが可能となる。
また、インクジェット印刷装置においては、印刷体の幅方向に対して、制御装置が、インク付与量が多い印刷体の部分を加熱乾燥するドラムの区画部を、他の区画部よりも、加熱の度合いを向上させることにより、当該区画部の温度が他の区画部の温度より低下することを抑制することができる。その結果、印刷体の乾燥不良が生じることを抑制することができる。
また、例えば、印刷体の幅が小さい場合は、印刷体が接触しない区画部に取り付けられたバンドヒータ又はラバーヒータの電源をOFFにすることも可能である。これにより、エネルギーの消費を節約することができる。なお、この場合であっても、制御装置が、電源がONになっている区画部のヒータ部の加熱を連続制御することにより、電源がOFFになっている区画部による影響に関わらず、電源がONになっている区画部同士間の温度ムラを抑制することができる。
【0014】
具体的には、ヒータ部が、区画部を、出力比に応じて加熱可能であるものとし、制御装置が、任意に設定される初期出力比で、各区画部のヒータ部の加熱開始を制御し、出力増減演算式及び出力制限演算式を用いて演算した更新出力比で、加熱開始後の各区画部のヒータ部の加熱を連続制御することにより、目標温度に達するまでの過程において、実測温度が平均温度よりも低い区画部のヒータ部における出力比を増加させることができる。これにより、実測温度が平均温度よりも低い区画部の実測温度を向上させることができる。
また、このとき、実測温度が平均温度よりも高い区画部のヒータ部における出力比を同時に低減させることで温度ムラを中和し、エネルギー効率にも優れるものとなる。
また、出力増減演算式に基づいて出力比を演算した場合に、出力比が形式的に100%を超えたとしても、出力制限演算式により、出力比100%以下に制限されるので、更新出力比は100%を超えない。このため、エラー等の発生を抑制できるという利点がある。
【0015】
本発明のインクジェット印刷装置においては、実測温度と目標温度との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内である場合、更新出力比を、PID演算式を用いて演算したPID出力比で、各区画部のヒータ部の加熱を連続制御することにより、目標温度に近付いても、効率良く制御を行うことができる。すなわち、実測温度と目標温度との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内においては、複数の区画部が既に十分に加熱された状態となっているので、出力増減演算式だけでなく、いわゆる比例制御であるPID演算式を踏まえたPID出力比とすることにより、実測温度と目標温度との温度差が小さい区画部のヒータ部における出力比を低減させ、一方で、実測温度と目標温度との温度差が大きい区画部のヒータ部における出力比を増加させることができる。これにより、エネルギー効率をより向上させることができる。
ちなみに、PID演算式とは、公知のPID制御に基づく式である。なお、PID制御は、P:比例制御、I:積分制御、D:微分制御の3つの要素によって行われる公知の制御である。
【0016】
これに加え、インクジェット印刷装置においては、実測温度と目標温度との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内である場合、PID出力比を、ゲインUP演算式を用いて演算した更新PID出力比で、各区画部のヒータ部の加熱を連続制御することにより、使用していない余剰出力比を、実測温度が低い区画部のヒータ部のPID出力比に加えて使用することができる。これにより、区画部間における温度ムラをより抑制することできる。また、目標温度に到達するまでの時間を短縮できるため、エネルギー効率をより一層向上させることができる。
また、上述したことと同様に、ゲインUP演算式に基づいて更新PID出力比を演算した場合に、更新PID出力比が形式的に100%を超えたとしても、出力制限演算式により、出力比100%以下に制限されるので、更新PID出力比は100%を超えない。このため、エラー等の発生を抑制できるという利点がある。
【0017】
本発明のインクジェット印刷装置においては、印刷部がラインヘッド式の印刷ヘッドを有するものである場合、シリアルヘッド式の印刷ヘッドを有する場合と比較して、印刷体が高速で搬送されるので、印刷体の乾燥不良が生じ易いところ、上述したように、インクの付与量が偏っても、そこに対応する区画部を積極的に昇温させることができるので、乾燥不良の発生を抑制することができる。
したがって、インクジェット印刷装置は、印刷部がラインヘッド式の印刷ヘッドを有するものである場合、高速でインクジェット印刷ができ、且つ、乾燥不良も抑制できるため、極めて好適である。
また、ヒータ部が、乾燥ドラムの内周面に取り付けられたバンドヒータ又はラバーヒータである場合、乾燥ドラムの区画部それぞれに対する加熱がし易いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明に係るインクジェット印刷装置の一実施形態を示す概略側面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るインクジェット印刷装置の乾燥ドラムを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るインクジェット印刷装置の乾燥ドラムの水平断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るインクジェット印刷装置の制御装置を説明するためのブロック図である。
【
図5(a)】
図5(a)は、本実施形態に係るインクジェット印刷装置の制御装置において、実測温度と目標温度との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内でない場合に、演算部が演算するフローを説明するためのブロック図である。
【
図5(b)】
図5(b)は、実測温度と目標温度との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内である場合に、演算部が演算するフローを説明するためのブロック図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係るインクジェット印刷装置におけるヒータ部の制御フローを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0020】
図1は、本発明に係るインクジェット印刷装置の一実施形態を示す概略側面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るインクジェット印刷装置100は、被印刷体1にインクを付与する印刷部5と、該インクが付与された印刷体1aを加熱乾燥するための乾燥ドラム3と、該乾燥ドラム3を軸心方向とは垂直な面で区画した複数の区画部の加熱をそれぞれ制御可能である制御装置4と、被印刷体1又は印刷体1aを案内するための複数の案内ロール2とを有する。
【0021】
インクジェット印刷装置100においては、1つの制御装置4により、全ての区画部のヒータ部の加熱がそれぞれ連続制御されるようになっている。
ここで、連続制御とは、制御動作が時間的に連続して行われる制御を意味する。具体的には、各区画部31a1、31a2、31a3の温度を常時監視し、それぞれの出力を無段階制御することを意味する。
これにより、インクジェット印刷装置100においては、乾燥ドラム3自体に温度ムラが生じることを抑制することができる。すなわち、乾燥ドラム3全体を均一に効率良く目標温度に昇温させることが可能となる。
また、目標温度に昇温させた後は、外周面に接する印刷体1aにより、部分的に温度が上がらなくなるという事態が生じることを防止することができる。その結果、印刷体1aの乾燥不良が生じることを抑制することができる。
【0022】
インクジェット印刷装置100においては、図示しない給紙部から導入された長尺状の被印刷体1が、案内ロール2により案内され、印刷部5でインクが付与され印刷体1aとなる。
次に、印刷体1aは、更に案内ロール2に案内され、乾燥ドラム3の外周面に巻き付くように接触して当該乾燥ドラム3により加熱乾燥される。
そして、加熱乾燥された印刷体1aは、案内ロール2により更に案内され、図示しない回収部で回収されるようになっている。
【0023】
ここで、被印刷体1としては、例えば、紙、布帛、不織布、フィルム、金属箔等を採用することができる。なお、これらは、インクを受容するための樹脂からなるインク受容層が、インクを付与される側の表面に設けられていてもよい。
また、印刷部5は、ラインヘッド式の印刷ヘッドを有する。すなわち、インクジェット印刷装置100は、固定された印刷ヘッドが、走行する被印刷体1に印刷を行う方式となっている。このため、被印刷体を高速で搬送しながら、インクジェット印刷を施すことが可能であり、且つ、上述したように、印刷体の乾燥不良の発生を抑制することができる。
【0024】
図2は、本実施形態に係るインクジェット印刷装置の乾燥ドラムを示す斜視図である。
図2に示すように、乾燥ドラム3は、円筒状の本体部31と、該本体部31の両端に取り付けられた円盤状のリム部32と、該リム部32に取り付けられた軸芯33とを備える。
また、乾燥ドラム3においては、本体部31、リム部32及び軸芯33が一体となっている。すなわち、本体部31を回転させることにより、リム部32及び軸芯33も回転するようになっている。
【0025】
乾燥ドラム3において、本体部31は、円筒状であり、少なくとも、その外周面が加熱されるようになっている。
したがって、印刷体1aは、本体部31の外周面に接することにより加熱乾燥される。
本体部31の材質としては、アルミニウム等の金属が用いられる。
本体部31は、その外周面にサンドブラスト、ショットブラスト、ビーズブラスト等を使った凹凸加工が施されていてもよい。この場合、印刷体1aと乾燥ドラム3(本体部31)の外周面とが接する際に、これらの間に仮に空気が入り込んだとしても、その空気を凹凸面による隙間から逃がすことができるため、印刷体1aのドラムへの密着性を向上させることができる。その結果、印刷体1aの乾燥効率が低下することを抑制できる。
【0026】
乾燥ドラム3において、本体部31は、軸心方向とは垂直な面で区画した3つの区画部31aからなっている。すなわち、インクジェット印刷装置100においては、上述したように、乾燥ドラム3を軸心方向とは垂直な面で区画した3つの区画部31aに分けて、それぞれの区画部31aを加熱制御している。なお、3つの区画部31aは、乾燥ドラム3の内部で分かれており、乾燥ドラム3の外観からは認識できない。
【0027】
図3は、本実施形態に係るインクジェット印刷装置の乾燥ドラムの水平断面図である。
図3に示すように、乾燥ドラム3において、各区画部31aには、それぞれ、当該区画部31aを、出力比に応じて加熱可能なヒータ部13と、当該ヒータ部13の電源端子13aと、当該区画部31aの温度を検出するための温度検出部13bと、異常加熱時にヒータ部13への電源供給を遮断するためのサーモスタット13cとが取り付けられている。
ここで、本実施形態に係るインクジェット印刷装置100においては、ヒータ部13としてバンドヒータ又はラバーヒータが採用され、温度検出部13bとして熱電対が採用されている。
【0028】
ここで、「出力比」とは、出力能力の割合を意味する。なお、出力比の単位は%である。すなわち、ヒータ部13に電力を付与した場合、当該ヒータ部13における最大の出力比が100%となり、最小の出力比が0%となる。
なお、インクジェット印刷装置100においては、交流電源を位相制御してヒータ部13に電力を供給している。このとき、交流電流の周期ごとのON時間の割合をサイリスタにより変化させ、出力比の調整を実現している。
【0029】
ヒータ部13は、本体部31内部において、本体部31の内周面に沿うように取り付けられる。
また、ヒータ部13は、本体部31の3つの区画部31aに対応するように、乾燥ドラム3の幅方向に対して3基が並設されている。すなわち、各区画部31aに1基のヒータ部13(例えば、バンドヒータ又はラバーヒータ)が取り付けられている。このため、各区画部31aは、それぞれ独立に、対応する区画部31aに取り付けられたヒータ部13により加熱され、乾燥ドラム3の内周面から乾燥ドラム3の外周面への熱伝導により加熱されることになる。
また、例えば、印刷体1aの幅が小さい場合は、印刷体1aが接触しない区画部13aに取り付けられたヒータ部13の電源をOFFにすることも可能である。これにより、エネルギーの消費を節約することができる。
【0030】
熱電対(温度検出部13b)は、ヒータ部13から当該ヒータ部13の内側に突出するように配置され、ヒータ部13に設けられた穴部を介して、本体部31の内周面に、熱電対の検出部が当接されている。これにより、熱電対は、対応する区画部の本体部31のその時の実際の温度(以下「実測温度」という。)を検出することが可能となっている。
【0031】
図1に戻り、インクジェット印刷装置100において、制御装置4は、全ての区画部31aのヒータ部13及び熱電対(温度検出部13b)と有線又は無線のネットワークを介して、接続されている。
制御装置4においては、各区画部31aの温度検出部13bから実測温度の温度信号を受信すると共に、ヒータ部13に出力比の出力比信号を送信することが可能となっている。
したがって、インクジェット印刷装置100においては、各区画部31aのヒータ部13を、制御装置4により同時に加熱制御することが可能となっている。
【0032】
図4は、本実施形態に係るインクジェット印刷装置の制御装置を説明するためのブロック図である。
図4に示すように、制御装置4は、入力部40、初期出力比設定部41、目標温度設定部42、記憶部43、演算部44、表示部45、及び入出力インターフェース部46を有し、いわゆるコンピュータとしての構成を備えている。
【0033】
制御装置4において、入出力インターフェース部46としては、イーサネット(登録商標)、ポート等が適宜用いられる。
入出力インターフェース部46は、温度検出部13bからの実測温度の温度信号を受け、当該温度信号を記憶部43に送信する。なお、実測温度は、記憶部43に記憶される。
また、後述するように、入出力インターフェース部46は、演算部44で演算された出力比(更新出力比等を含む)の出力比信号を受け、当該出力比信号をヒータ部13に送信する。
【0034】
初期出力比設定部41は、入力部40による操作により、入出力インターフェース部46を介して、初期出力比、すなわち、加熱開始時の出力比(初期出力比)を設定するために用いられる。
かかる初期出力比は、0%より大きく100%以下の範囲で、任意に定めることができる。初期出力比は、加熱効率の観点から、50~80%であることが好ましい。
なお、設定された初期出力比は、記憶部43に記憶される。
【0035】
目標温度設定部42は、入力部40による操作により、入出力インターフェース部46を介して、複数の区画部31aの目標温度を設定するために用いられる。
かかる目標温度は、複数の区画部31aに対して共通するものであり、印刷体1aを十分に加熱乾燥でき、且つ、印刷体1aや周辺機器にダメージを与えない範囲で、任意に定めることができる。目標温度は、被印刷体1に水分を含むインクを付与する場合、乾燥効率の観点から、100~140℃であることが好ましく、100~120℃であることがより好ましい。
なお、設定された目標温度は、記憶部43に記憶される。
【0036】
記憶部43としては、RAM、ROM等のメモリが適宜用いられる。
また、記憶部43には、出力比を演算するための演算プログラムが格納されている。具体的には、演算プログラムとして、出力比を制御するための、出力増減演算式、出力制限演算式、PID演算式、及び、ゲインUP演算式が記憶されている。
【0037】
ここで、出力増減演算式は、各区画部31aの温度検出部13bが検出した実測温度の平均温度から、特定の区画部31aの実測温度を減じた温度差に、任意に設定される係数を乗じて付加出力比とし、当該付加出力比を、特定の区画部31aの初期出力比に加えるものである。
例えば、各区画部31aを第1区画部31a1、第2区画部31a2、第3区画部31a3とし、第1区画部31a1の温度検出部13bが検出した実測温度をT1とし、第2区画部31a2の温度検出部13bが検出した実測温度をT2とし、第3区画部31a3の温度検出部13bが検出した実測温度をT3とし、任意に設定される係数をkとし、第1区画部31a1の初期出力比をP%とし、第1区画部31a1における演算された出力比をPz%とした場合、第1区画部31a1に対する出力増減演算式は、
Pz=P+k((T1+T2+T3)/3-T1)
となる。
【0038】
これにより、出力増減演算式においては、平均温度((T1+T2+T3)/3)より、実測温度T1が低い場合、その温度差に係数を乗じた付加出力比は、正の値となるため、求められる出力比Pzは、初期出力比Pよりも大きくなる。
一方、平均温度((T1+T2+T3)/3)より、実測温度T1が高い場合、その温度差に係数を乗じた付加出力比は、負の値となるため、求められる出力比Pzは、初期出力比Pよりも小さくなる。
また、平均温度((T1+T2+T3)/3)と、実測温度T1とが同じである場合、付加出力比は、ゼロとなるため、演算された出力比Pzは、初期出力比Pと同じになる。
なお、ここでは、第1区画部31a1における出力増減演算式の具体例を示したが、第2区画部31a2、第3区画部31a3についてもそれぞれ同様にして演算が行われる。
【0039】
また、出力増減演算式において、係数kは、正の整数であり、各区画部の温度のばらつきの大きさに基づいて定められる。
【0040】
このように、インクジェット印刷装置100においては、制御装置4により、実測温度が平均温度よりも低い区画部31aのヒータ部13における出力比を増加させることができ、実測温度が平均温度よりも高い区画部31aのヒータ部13における出力比を低減させることができるので、エネルギー効率が優れるものとなる。
【0041】
出力制限演算式は、出力増減演算式に基づいて付加出力比が加えられた出力比Pzが、100%以下である場合、該出力比を更新出力比とし、100%を超える場合、該出力比100%を更新出力比とするものである。すなわち、制御装置4においては、出力増減演算式により、初期出力比Pに付加出力比を加えた結果、形式的に出力比Pzが100%を超える場合があるところ、出力制限演算式により更新出力比が100%を超えることを防止している。これにより、インクジェット印刷装置100においては、エラー等の発生を抑制できるという利点がある。
【0042】
PID演算式は、公知のPID制御に基づく演算式である。
なお、PID制御とは、実測温度と目標温度との偏差に対して比例して出力比を制御する比例動作(比例ゲイン)と、偏差の積分値に比例して制御する積分動作(積分ゲイン)と、偏差の微分値に比例して制御する微分動作(微分ゲイン)の3つの動作を組み合わせた制御である。なお、比例動作、積分動作、微分動作の演算式は、公知であるので説明を省略する。
制御装置4においては、出力制限演算式により演算された更新出力比が、更にPID演算式で演算され、PID出力比となる。
【0043】
このように、インクジェット印刷装置100においては、制御装置4により、出力増減演算式だけでなく、PID演算式を踏まえて演算することにより、実測温度と目標温度との温度差が小さい区画部31aのヒータ部13における出力値の出力比を低減させ、一方で、実測温度と目標温度との温度差が大きい区画部31aのヒータ部13における出力値の出力比を増加させることができる。このため、特に、複数の区画部31aが十分に加熱された状態となっている場合に、エネルギー効率により優れるものとなる。
【0044】
ゲインUP演算式は、各区画部31aの更新出力比から、PID出力比を引いた余剰出力比を、実測温度が低い区画部31aのPID出力比に加えるものである。
例えば、各区画部31aの更新出力比をPk1,Pk2,Pk3とし、PID出力比をPP1,PP2,PP3とした場合、余剰出力比PYは、
PY=(Pk1-PP1)+(Pk2-PP2)+(Pk3-PP3)
となる。そして、複数の区画部31aのうち、実測温度が低い区画部31aのヒータ部13のPID出力比をPP1とし、演算された出力比をPG%とした場合、ゲインUP演算式は、
PG=PP1+PY
となる。
【0045】
このように、インクジェット印刷装置100においては、制御装置4により、各区画部31aの中で実測温度が低い区画部31aのヒータ部13における出力比を増加させることができるので、区画部31a間における温度ムラを抑制することできる。
また、目標温度に到達するまでの時間を短縮できるため、エネルギー効率にもより一層優れるものとなる。
【0046】
制御装置4においては、上述した出力制限演算式により、再度演算される。
出力制限演算式は、ゲインUP演算式に基づいて、余剰出力比が加えられたPID出力比が、100%以下である場合、該PID出力比を更新PID出力比とし、100%を超える場合、該出力比100%を更新PID出力比とするものである。すなわち、制御装置4においては、ゲインUP演算式により、その時のPID出力比に余剰出力比を加えた結果、形式的に出力比が100%を超える場合があるところ、出力制限演算式により更新PID出力比が100%を超えることが防止している。
これにより、インクジェット印刷装置100においては、エラー等の発生を抑制できるという利点がある。
【0047】
演算部44としては、CPU(Central Processing Unit)等が用いられる。
演算部44は、記憶部43に記憶された、初期出力比、目標温度、実測温度、出力増減演算式、出力制限演算式、PID演算式、ゲインUP演算式等に基づいて、所定のフローで演算を行う。
【0048】
図5(a)は、本実施形態に係るインクジェット印刷装置の制御装置において、実測温度と目標温度との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内でない場合に、演算部が演算するフローを説明するためのブロック図であり、
図5(b)は、実測温度と目標温度との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内である場合に、演算部が演算するフローを説明するためのブロック図である。
ここで、「任意に定めた所定の温度範囲内」は、印刷体の材質、印刷部における印刷の方式、インクの種類、インクの吐出量等の条件によって適宜設定される。
例えば、印刷体が連続紙であり、水性インクをラインヘッド式の印刷ヘッドで印刷する場合、実測温度と目標温度との温度差は、±20℃以内とすることが好ましく、エネルギー効率の観点から、実測温度と目標温度との温度差は、±10℃以内とすることがより好ましい。
因みに、実測温度S1と目標温度S3との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内であるか否かについては、区画部31aの実測温度S1が目標温度S3に到達しているか否かは問わない。すなわち、区画部31aの実測温度S1が目標温度S3に到達した後であっても、実測温度S1と目標温度S3との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内である場合には、これに含まれることになる。
【0049】
制御装置4においては、まず、初期出力比でヒータ部13を加熱する。
そして、その後は、演算部44により演算された更新出力比で、ヒータ部13の加熱を制御する。
【0050】
図5(a)に示すように、制御装置4においては、加熱開始後であり、且つ、実測温度S1と目標温度S3との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内でない場合、演算部44が、実測温度S1を用いて、出力増減演算式S11及び出力制限演算式S12の順で演算を行い、次の更新出力比S2を取得する。
そして、次の更新出力比S2の出力比信号が入出力インターフェース部46を介して、ヒータ部13に送られ、ヒータ部13が当該次の更新出力比S2で加熱される。
【0051】
このように、制御装置4においては、実測温度S1と目標温度S3との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内でない場合、更新出力比S2の更新が、繰り返し行われる。すなわち、制御装置4により、演算ユニットの演算サイクルのタイミングで、各区画部31aのヒータ部13の更新出力比S2の更新が繰り返し行われることになる。
これにより、各区画部31aの温度が同じになるように昇温させることができる。また、実測温度S1と目標温度S3との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内でない場合において、エネルギー効率が極めて優れるものとなる。
【0052】
一方、
図5(b)に示すように、制御装置4においては、加熱開始後であり、且つ、実測温度S1と目標温度S3との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内である場合、演算部44が、実測温度S1を用いて、出力増減演算式S11及び出力制限演算式S12の順で演算を行い、更に、目標温度S3を用いて、PID演算式S21の演算を行ってPID出力比を取得し、更に、ゲインUP演算式S22及び出力制限演算式S12の順で演算を行い、更新PID出力比S4を取得する。
そして、更新PID出力比S4の出力比信号が入出力インターフェース部46を介して、ヒータ部13に送られ、ヒータ部13が当該更新PID出力比S4で加熱される。
【0053】
このように、制御装置4においては、実測温度S1と目標温度S3との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内である場合、更新PID出力比S4の更新が、繰り返し行われる。すなわち、制御装置4により、演算ユニットの演算サイクルのタイミングで、各区画部31aのヒータ部13の更新PID出力比S4の更新が繰り返し行われることになる。
これにより、各区画部31aの温度が同じになるように昇温させることができる。また、実測温度S1と目標温度S3との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内である場合において、エネルギー効率が極めて優れるものとなる。
【0054】
表示部45としては、モニタ等が適宜用いられる。
制御装置4においては、各区画部31aの実測温度S1やその時点での各区画部31aの出力比が表示部45に表示される。これにより、その時点の区画部31aの状態を確認することが可能となっている。
入力部40としては、キーボードやマウス等が適宜用いられる。
制御装置4においては、上述した初期出力比や目標温度の設定のための入力が当該入力部40で行われる。
また、表示部45及び入力部40を兼ねるものとして、タッチ式モニタ(タッチパネル)を採用することも可能である。
なお、利便性の観点から、タッチ式モニタを採用することが好ましい。
【0055】
次に、各区画部31aの制御フローについて具体的に説明する。
図6は、本実施形態に係るインクジェット印刷装置におけるヒータ部の制御フローを説明するための説明図である。なお、
図6においては、実測温度S1と目標温度S3との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内でない場合のフローを実線、実測温度S1と目標温度S3との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内である場合のフローを破線で示している。
図6に示すように、インクジェット印刷装置100においては、まず、制御装置4が、ヒータ部13に初期出力比での加熱開始指令を送信する。
そうすると、ヒータ部13は、初期出力比で加熱を開始する。
【0056】
次に、実測温度S1と目標温度S3との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内でない場合において、制御装置4は、各区画部31aのヒータ部13の実測温度S1と、その平均温度との間に温度差があるか否かを選択する。なお、かかる温度差は、例えば、1℃以上ある場合に、温度差有りと判断される。
そして、温度差有りと判断された場合(YES)、出力増減演算式S11に基づく出力増減制御により、出力比の調整が行われ、出力比の調整が行われた更新出力比S2でヒータ部13の加熱が行われることになる。
一方、温度差無しと判断された場合(NO)、出力比の調整は行われず、同じ出力比を更新出力比S2として、ヒータ部13の加熱が行われることになる。
なお、出力比の更新は、上述したように、連続制御で繰り返し行われる。
【0057】
次に、実測温度S1と目標温度S3との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内である場合において、制御装置4は、各区画部31aのヒータ部13の実測温度S1と、その平均温度との間に温度差があるか否かを選択する。
そして、温度差有りと判断された場合(YES)、出力増減制御により、出力比の調整が行われ、出力比の調整が行われた更新出力比S2に対して、次のPID演算式S21に基づくPID制御により、比例制御が開始される。
一方、温度差無しと判断された場合(NO)、出力比の調整は行われず、同じ出力比(更新出力比S2)に対して、次のPID制御により、比例制御が開始される。
【0058】
次に、制御装置4は、各区画部31aのヒータ部13の実測温度S1のうち、実測温度S1が最も低い区画部31aを選択する。
そして、特定の区画部31aが、実測温度S1が最も低いと判断された場合(YES)、区画部31aのヒータ部13に余剰出力比の有無が選択され、余剰出力比有りと判断された場合(YES)、ゲインUP演算式S22に基づくゲインUP制御により、余剰出力比による補充が行われ、補充された更新PID出力比S4でヒータ部13の加熱が行われることになる。
一方、特定の区画部31aが、実測温度S1が最も低いと判断されなかった場合(NO)、又は、余剰出力比有りと判断されなかった場合(NO)、余剰出力比の補充は行われず、PID制御を経た出力比(PID出力比)を更新PID出力比S4として、ヒータ部13の加熱が行われることになる。
なお、出力比の更新は、上述したように、連続制御で繰り返し行われる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0060】
本実施形態に係るインクジェット印刷装置100においては、印刷部がラインヘッド式の印刷ヘッドを用いているが、シリアルヘッド式の印刷ヘッドを用いることも可能である。
【0061】
本実施形態に係るインクジェット印刷装置100においては、乾燥ドラム3は、円筒状の本体部31と、該本体部31の両端に取り付けられた円盤状のリム部32と、該リム部32に取り付けられた軸芯33とを備えているが、乾燥ドラム3の構造はこれに限定されない。
また、乾燥ドラム3において、本体部31は、軸心方向とは垂直な面で区画した3つの区画部31aからなっているが、区画部の数は、これに限定されない。
【0062】
本実施形態に係るインクジェット印刷装置100においては、ヒータ部13としてバンドヒータ又はラバーヒータが採用され、温度検出部13bとして熱電対が採用されているがこれに限定されない。
例えば、温度検出部13bとしては、熱電対の代わりに、非接触の放射温度センサ等を採用することも可能である。
【0063】
本実施形態に係るインクジェット印刷装置100においては、実測温度S1と目標温度S3との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内でない場合、
図5(a)に示すように、演算部44が、出力増減演算式S11及び出力制限演算式S12の順で演算を行い、実測温度S1と目標温度S3との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内である場合、
図5(b)に示すように、演算部44が、出力増減演算式S11、出力制限演算式S12、PID演算式S21、ゲインUP演算式S22及び出力制限演算式S12の順で演算を行っているが、後者の、実測温度S1と目標温度S3との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内である場合の演算は必ずしも必須ではない。すなわち、実測温度S1と目標温度S3との温度差が任意に定めた所定の温度範囲内であるか否かに関わらず、
図5(a)に示す、演算部44が、出力増減演算式S11及び出力制限演算式S12の順で演算を行うフローのみで、ヒータ部の加熱を連続制御するものであってもよい。
【0064】
本実施形態に係るインクジェット印刷装置100においては、上述した複数の演算式で演算を行っているが、これを阻害しないものであれば、他の演算式が含まれていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のインクジェット印刷装置100は、被印刷体に対しインクジェット方式にて印刷を施すためのインクジェット印刷装置として利用できる。
本発明のインクジェット印刷装置100によれば、乾燥ドラム自体の温度ムラを極力抑制することができる。
【符号の説明】
【0066】
1・・・被印刷体
100・・・インクジェット印刷装置
13・・・ヒータ部
13a・・・電源端子
13b・・・温度検出部
13c・・・サーモスタット
1a・・・印刷体
2・・・案内ロール
3・・・乾燥ドラム
31・・・本体部
31a・・・区画部
31a1・・・第1区画部(区画部)
31a2・・・第2区画部(区画部)
31a3・・・第3区画部(区画部)
32・・・リム部
33・・・軸芯
4・・・制御装置
40・・・入力部
41・・・初期出力比設定部
42・・・目標温度設定部
43・・・記憶部
44・・・演算部
45・・・表示部
46・・・入出力インターフェース部
5・・・印刷部