(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】ブロー成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20220201BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20220201BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
C08L67/02
B29C49/04
C08K5/13
(21)【出願番号】P 2017159024
(22)【出願日】2017-08-22
【審査請求日】2020-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000228073
【氏名又は名称】日本エステル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高宮 和博
(72)【発明者】
【氏名】須藤 嘉祐
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 大
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-031948(JP,A)
【文献】特開2015-172175(JP,A)
【文献】特開平10-204162(JP,A)
【文献】特開2007-138159(JP,A)
【文献】特開平11-130949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
B29C 49/00-49/46
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極限粘度(IV)が0.9~1.4であるポリエステル樹脂組成物(A)100質量部に対して、極限粘度(IV)が0.4~0.8であるポリエステル樹脂組成物(B)を5~30質量部添加して
ダイレクトブロー成形機を用いて容量100cc以下のブロー成形品を得る、ブロー成形品の製造方法であって、ポリエステル樹脂組成物(A)、ポリエステル樹脂組成物(B)ともに、エチレンテレフタレート単位を主体とし、共重合成分として1,4-シクロヘキサンジメタノールを2~20モル%含有するポリエステル樹脂を主成分とし、ヒンダードフェノール系抗酸化剤を0.05~1.0質量%含有する樹脂組成物であることを特徴とする、ブロー成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂中に特定の化合物を含有する2種類のポリエステル樹脂組成物を用い、色調、透明性に優れたブロー成形品を生産性よく得ることができるブロー成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、機械的特性、化学的安定性、透明性等に優れ、かつ、安価であり、各種のシート、フィルム、容器等として幅広く用いられており、特に昨今では、炭酸飲料、果汁飲料、液体調味料、食用油、酒、ワイン用等の中空容器(ボトル)用途の伸びが著しい。しかも、塩化ビニル樹脂製中空成形品におけるような残留モノマーや有害添加剤の心配が少なく、衛生性及び安全性が高い点から、従来の塩化ビニル樹脂などからなるボトルからの置き換えも進んでいる。
【0003】
一般に、プラスチック製のボトルなどを製造するにあたっては、成形の容易性、高生産性、成形機械や金型などの設備費が比較的安くてすむなどの点から、溶融可塑化した樹脂をダイオリフィスを通して押出して円筒状のパリソンを形成し、これを金型に挟んで内部に空気を吹き込むいわゆるダイレクトブロー成形法が採用されている。そして、このダイレクトブロー成形による場合は、成形を円滑に行うために、溶融状態で押出されたパリソンが吹き込み成形時にドローダウンするのを回避する必要があり、そのため、使用樹脂に高い溶融粘度が要求される。したがって、高い溶融粘度を有する樹脂として、塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂などがダイレクトブロー成形においては広く用いられている。
【0004】
ダイレクトブロー成形品においても塩化ビニル樹脂からポリエステル樹脂への置き換えが検討されているが、ポリエステル樹脂は、一般にダイレクトブロー成形に適する高い溶融粘度を有していない。このため、押出されたパリソンが吹き込み成形時にドローダウンし、吹き込み成形が行えないという問題があり、また、ブロー時に結晶化が起こりやすいため、成形が可能であっても白化が生じ、透明性が不十分になるという問題があった。
【0005】
透明性を向上させるために、ポリエチレンテレフタレートに他のモノマー成分を共重合したポリエステル樹脂が提案されている。これにより結晶化は抑制できるが、それだけでは溶融粘度を上昇させることができない。そこで、3官能以上の多価カルボン酸/多価アルコールによる架橋の手段により高粘度化させ、ドローダウンの問題を解決する方法が提案されてきた(例えば特許文献1参照)。しかしながら、このような架橋の手段により高粘度化させると、成形性は向上するものの、多価カルボン酸や多価アルコールの量が多い場合は、ゲル化しやすく、熱安定性に劣り、得られる成形品は色調や透明性、耐衝撃性に劣るという問題があった。
また、ダイレクトブロー成形において、容量の大きい容器を成形する場合は、ドローダウンを抑える必要があり、高重合度のポリエステル樹脂が必要であるが、一方、容量の小さい容器を成形する場合は、高重合度のポリエステル樹脂を用いると、成形品の厚みが厚すぎるという問題があり、ポリエステル樹脂の極限粘度を成形品の容量に合わせる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決し、ブロー成形時にドローダウンの問題が生じることなく、熱安定性にも優れており、色調、透明性に優れたポリエステル樹脂からなるブロー成形品を生産性よく得ることができる、ブロー成形品の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、次の(1)を要旨とするものである。
(1)極限粘度(IV)が0.9~1.4であるポリエステル樹脂組成物(A)100質量部に対して、極限粘度(IV)が0.4~0.8であるポリエステル樹脂組成物(B)を5~30質量部添加してダイレクトブロー成形機を用いて容量100cc以下のブロー成形品を得る、ブロー成形品の製造方法であって、ポリエステル樹脂組成物(A)、ポリエステル樹脂組成物(B)ともに、エチレンテレフタレート単位を主体とし、共重合成分として1,4-シクロヘキサンジメタノールを2~20モル%含有するポリエステル樹脂を主成分とし、ヒンダードフェノール系抗酸化剤を0.05~1.0質量%含有する樹脂組成物であることを特徴とする、ブロー成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のブロー成形品の製造方法によると、高い極限粘度のポリエステル樹脂に、低い極限粘度のポリエステル樹脂を特定の比率で添加することで、ダイレクトブロー成形において、成形品の大きさに適した極限粘度とすることができ、ドローダウンの問題が生じることなく、厚みムラ等がない成形品を生産性よく得ることができる。
そして、本発明の製造方法により得られるブロー成形品は、色調、透明性に優れているため、種々の用途に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法においては、極限粘度(IV)が0.9~1.4であるポリエステル樹脂組成物(A)100質量部に対して、極限粘度(IV)が0.4~0.8であるポリエステル樹脂組成物(B)を5~30質量部添加してブロー成形品を得る。
【0011】
本発明におけるポリエステル樹脂は、酸成分の70モル%以上がテレフタル酸であり、中でも85モル%以上がテレフタル酸であることが好ましい。テレフタル酸の割合が70モル%未満であると、得られるポリエステル樹脂の結晶性や耐熱性が劣るものとなる。
ポリエステル樹脂中に含まれるテレフタル酸以外の酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸等が挙げられ、これらを2種類以上併用してもよく、これらの酸のエステル形成性誘導体を使用してもよい。
【0012】
一方、グリコール成分は、グリコール成分の60~98モル%がエチレングリコールであり、2~20モル%が1,4-シクロヘキサンジメタノールである。つまり、エチレングリコールを主成分とし、1,4-シクロヘキサンジメタノールを共重合成分とするものである。
1,4-シクロヘキサンジメタノールの含有量(共重合量)は、全グリコール成分の2~20モル%であり、中でも3~15モル%であることが好ましく、さらには3~12モル%であることが好ましい。1,4-シクロヘキサンジメタノールを適量共重合することにより、ポリエステル樹脂の結晶化速度をブロー成形に適したものに調整することができ、ブロー成形時の結晶化を防ぐことができる。
【0013】
1,4-シクロヘキサンジメタノールの含有量が2モル%よりも少ない場合は、樹脂組成物の結晶化速度が速いものとなるため、得られるブロー成形品は結晶化して白化する。一方、20モル%を超えると、非晶性のものとなり、高温での乾燥や固相重合が困難となる。あるいは、高温乾燥時や固相重合工程においてブロッキングが起こりやすくなるため好ましくない。
【0014】
エチレングリコールは、全グリコール成分の60~98モル%であり、中でも70~90モル%であることが好ましい。エチレングリコールの含有量が60モル%未満であると、得られるポリエステル樹脂の結晶性や耐熱性が劣るものとなる。一方、98モル%を超えると、1,4-シクロヘキサンジメタノールの割合が少なくなり、結晶化速度を調整することが困難となり、ブロー成形時の結晶化による白化を防ぐ効果に乏しいものとなる。なお、エチレングリコールと1,4-シクロヘキサンジメタノールの合計量は、全グリコール成分の70モル%以上であることが好ましく、中でも80モル%以上であることが好ましい。
【0015】
また、エチレングリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノール以外のジオール成分としては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、ジエチレングリコール、ダイマージオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物等を用いることができる。
【0016】
そして、本発明の製造方法において使用するポリエステル樹脂組成物(A)、(B)は、ヒンダードフェノール系抗酸化剤を0.05~1.0質量%含有するものであり、中でも0.1~0.8質量%含有することが好ましい。
ヒンダードフェノール系抗酸化剤は、ポリエステル樹脂の重合反応工程中に添加することが好ましい。重合反応工程中に添加することで、該化合物の一部がポリエステル樹脂中に共重合される。これにより、ポリエステル樹脂中に分子鎖の絡み合いが生じ、架橋に似た状態が生じるものと想定され、ポリエステル樹脂の溶融粘度を高くすることができる。
【0017】
また、ヒンダードフェノール系抗酸化剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、3,9-ビス{2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1’-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が用いられるが、架橋に似た状態を生じやすく、コスト的にも有利であることから、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンが好ましい。
【0018】
また、ポリエステル樹脂組成物(A)、(B)中に、ヒンダードフェノール系抗酸化剤を含有することによって、樹脂組成物の熱安定性が向上し、得られる成形体は、色調や透明性に優れたものとなる。
【0019】
ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量が0.05質量%未満では、上記したような分子鎖の絡みが生じた樹脂組成物とならないため、樹脂組成物の溶融粘度を高くすることが困難となり、ブロー成形時のパリソンのドローダウンを防ぐことができない。さらには、樹脂組成物の熱安定性が向上せず、得られる成形体は耐熱性、色調や透明性に劣ったものとなる。
【0020】
一方、含有量が1.0質量%を超えると、成形時に押出しダイ出口での樹脂組成物の膨張が大きくなりすぎ、得られる成形品は表面が荒れて光沢感が損なわれたものとなる。また、樹脂組成物の溶融粘度が高くなりすぎ、成形時に成形温度を上げる必要があり、得られる成形品の色調が悪くなる。さらに、熱安定性を向上させる効果は飽和し、コスト的に不利となる。
【0021】
ポリエステル樹脂組成物(A)の極限粘度は、0.9~1.4が必要であり、中でも1.0~1.2が好ましい。なお、極限粘度(IV)は、フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定するものである。
【0022】
極限粘度が0.9未満の場合は、樹脂組成物の粘度が低いため、ブロー成形時にパリソンのドローダウンが大きくなり、成形が困難になる。一方、極限粘度が1.4を超える場合は、成形温度を上げる必要があり、得られる成形品の色調や透明性が悪くなる。
また、ブロー成形時に押出しダイ出口での樹脂の膨張が大きくなる傾向があるため好ましくない。
また、本発明の製造方法においては、ポリエステル樹脂組成物(A)に対して、極限粘度(IV)が0.4~0.8であるポリエステル樹脂組成物(B)を5~30質量部添加することが必要である。ポリエステル樹脂組成物(A)のみを用いた場合、例えば、容量100mlといった小型容器を成形する際、極限粘度が高すぎるため、ドローダウンがしにくく、厚みムラが大きくなるなど、容量に適した厚さの容器の作成が困難となる。
【0023】
一方、ポリエステル樹脂組成物(B)の極限粘度は、0.4~0.8であることが必要であり、中でも0.5~0.7が好ましい。
極限粘度が0.4未満だとドローダウンが大きくなり、成形が困難になり、0.8を超えると、ポリエステル樹脂組成物(A)との粘度差が小さくなり、本発明の効果を奏することが困難となる。つまり、ドローダウンが起こりにくく、容器の大きさに適した厚さが均一な容器が成形できない。
【0024】
また、ポリエステル樹脂組成物(A)とポリエステル樹脂組成物(B)の極限粘度の差(A-B)は、0.8以下とすることが好ましい。
極限粘度の差が0.8を超えると、ドローダウンが大きくなり、成形が困難になる。
【0025】
ポリエステル樹脂組成物(B)の添加量は、ポリエステル樹脂組成物(A)100質量部に対して、5~30質量部であることが必要である。5質量部未満だとドローダウンが起こりにくく、容器の大きさに適した厚さが均一な容器の成形が困難になり、一方、30質量部を超えると、ドローダウンが大きくなり成形が難しくなる。
【0026】
次に、本発明のポリエステル樹脂組成物(A)、(B)中には、ゲルマニウム化合物が、ポリエステル樹脂の酸成分1モルに対し5×10-5モル~3.0×10-4モル含有されていることが好ましく、中でも6×10-5モル~2.0×10-4モル含有されていることが好ましい。
ゲルマニウム化合物はポリエステル樹脂を得る際に重合触媒として使用されるものであり、ゲルマニウム化合物の含有量が5×10-5モル未満であると、目標の重合度のポリエステル樹脂が得られない、あるいは、重合反応において重合時間が長くなり、その結果、得られるポリエステル樹脂の色調が悪くなる。一方、3.0×10-4モルを超えても、重合触媒としての効果は飽和し、コスト的に不利となる。
【0027】
ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド等が挙げられ、重合触媒活性、得られるポリエステル樹脂の物性及びコストの点から、二酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0028】
次に、本発明の製造方法において使用するポリエステル樹脂組成物(A)及び(B)の製造方法について説明する。本発明におけるポリエステル樹脂組成物(A)は、エステル化反応、溶融重合反応及び固相重合反応工程を経て得られるものであることが好ましい。エステル化反応と溶融重合反応のみでは、目標の極限粘度のポリエステル樹脂を得ることが困難となる。得られたとしても、溶融重合反応の反応時間が長くなり、得られるポリエステル樹脂は色調が悪いものとなる。ポリエステル樹脂組成物(B)は、極限粘度が低いため、エステル化反応と溶融重合反応のみで可能であり、固相重合反応工程は行わなくてもよい。固相重合反応を行ってもよいが、目標とする極限粘度が低いため、固相重合反応の時間が非常に短くなり、反応の制御が困難となる場合がある。
【0029】
そして、本発明のブロー成形品の製造方法においては、ポリエステル樹脂組成物(A)及び(B)を上記のような方法でそれぞれ得たのち、両樹脂組成物をブレンドした混合樹脂組成物を得た後、ブロー成形を行うことが好ましい。
【0030】
ポリエステル樹脂組成物(A)に対してポリエステル樹脂組成物(B)を添加する方法は、ポリエステル樹脂組成物(A)とポリエステル樹脂組成物(B)とを、ペレット状、粒状又は、粉末状等の固体状態で混合するドライブレンドが好ましい。あるいは単軸又は二軸の押出機で温度250~300℃の範囲で練り込む方法で行う。
【0031】
本発明におけるブロー成形とは、ダイレクトブロー成形、延伸ブロー成形のいずれでもよい。そして、このようにして得られた混合樹脂組成物を用いてブロー成形する方法としては、汎用のダイレクトブロー成形機や延伸ブロー成形機を用いて製造することが可能であり、成形機のシリンダー各部及びノズルの温度は、230~280℃の範囲とすることが好ましい。
【実施例】
【0032】
次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、実施例中の各種の特性値等の測定、評価方法は次の通りである。
(a)極限粘度
前記と同様の方法で測定した。
(b)共重合成分の共重合量、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量
得られた樹脂組成物を、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比が1/20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製LA-400型NMR装置にて1H-NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピークの積分強度から、共重合量と含有量を求めた。
【0033】
(c)成形性
得られたポリエステル樹脂組成物を用い、得られた成形品(サンプル数100本)の胴部の厚さを測定し、最厚部と最薄部の厚さの差が0.30mmまでのものを合格とし、合格のサンプル数を示した。合格のサンプル数が95本以上であるものを○、90~94本が△、90本未満であるものを×とした。
【0034】
(d)色調
得られた成形品から切り出してサンプル片(20個)を作成し、日本電色工業社製の色差計ND-Σ80型を用いて、サンプル片の色調を測定した。色調の判定はハンターのLab表色計で行い、b値を測定し、n数20の平均値とした。なお、b値が2.0以下を色調良好であると判定した。
(e)ヘーズ
得られた成形品から切り出してサンプル片(20個)を作成し、濁度を日本電色工業社製の濁度計 MODEL 1001DPで測定し(空気:ヘーズ0%)、n数20の平均値とした。この値が小さいほど透明性が良好であり、5%以下であれば透明性に優れていると判定した。
【0035】
〔ポリエステル樹脂組成物(A)〕
(A1)
エステル化反応器に、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)のスラリー(TPA/EGモル比=1/1.6)を供給し、温度250℃、圧力50hPaの条件で反応させ、エステル化反応率95%の反応生成物(数平均重合度:5)を得た。
TPAとEGの反応生成物55.5質量部を重合反応器に仕込み、続いて、1,4―シクロヘキサンジメタノール3.2質量部、重合触媒として二酸化ゲルマニウム0.008質量部、リン酸0.009質量部、酢酸コバルト0.004質量部、ヒンダードフェノール系抗酸化剤(ADEKA社製:アデカスタブAO-60)0.12質量部を、それぞれ加え、反応器を減圧にして60分後に最終圧力0.9hPa、温度280℃で4時間、溶融重合反応を行い、共重合ポリエステルのプレポリマーを得た。
このプレポリマーの極限粘度は、0.66であった。このプレポリマーを結晶化装置に連続的に供給し150℃で結晶化をさせた後、乾燥機に供給し160℃で8時間乾燥後、予備加熱機に送り190℃まで加熱した後、固相重合機へ供給し、窒素ガス下にて190℃で50時間固相重合し、表1に示す組成、極限粘度のポリエステル樹脂組成物A1を得た。
【0036】
(A2~A7)
ポリエステル樹脂組成物における1,4―シクロヘキサンジメタノールの共重合量、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量を表1に示すように変更し、また、極限粘度が表1の値となるように固相重合時間を変更した以外は、A1と同様にして、ポリエステル樹脂組成物A2~A7を得た。
【0037】
〔ポリエステル樹脂組成物(B)〕
(B1)
エステル化反応器に、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)のスラリー(TPA/EGモル比=1/1.6)を供給し、温度250℃、圧力50hPaの条件で反応させ、エステル化反応率95%の反応生成物(数平均重合度:5)を得た。
TPAとEGの反応生成物55.5質量部を重合反応器に仕込み、続いて、1,4―シクロヘキサンジメタノール3.2質量部、重合触媒として二酸化ゲルマニウム0.008質量部、リン酸0.009質量部、酢酸コバルト0.004質量部、ヒンダードフェノール系抗酸化剤(ADEKA社製:アデカスタブAO-60)0.12質量部を、それぞれ加え、反応器を減圧にして60分後に最終圧力0.9hPa、温度280℃で4時間、溶融重合反応を行い、ポリエステル樹脂組成物B1を得た。
【0038】
(B2~B6)
ポリエステル樹脂組成物における1,4―シクロヘキサンジメタノールの共重合量、ヒンダードフェノール系抗酸化剤の含有量を表1に示すように変更し、また、極限粘度が表1の値となるように溶融重合時間を変更した以外は、B1と同様にして、ポリエステル樹脂組成物B2~B6を得た。
【0039】
得られたポリエステル樹脂組成物A1~A8、ポリエステル樹脂組成物B1~B6の組成、極限粘度の値を表1に示す。
【0040】
【0041】
実施例1
ポリエステル樹脂組成物A1とB1をそれぞれチップ化して乾燥させた後、ドライブレンドを行い、ダイレクトブロー成形機(タハラ社製)を用いて2種類の成形を行った。
(成形1)
押出温度260℃で樹脂を押出して、円筒形パリソンを形成し、パリソンが軟化状態にあるうちに金型で挟み、底部形成を行い、これをブローしてボトルを成形した。このとき、パリソン径3cmで長さが25cmとなったところで底部形成を行い、ブロー成形して500ccの中空容器(ダイレクトブロー成形品)を得た。
(成形2)
成形1と同様にしてブロー成形を行い、パリソン径3cmで長さが5cmとなったところで底部形成を行い、50ccの中空容器を得た。
【0042】
実施例2~7、比較例3~5
ポリエステル樹脂組成物(A)とポリエステル樹脂組成物(B)の種類と添加量を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして成形1と成形2を行い、2種類の中空容器を得た。
【0043】
比較例1
ポリエステル樹脂組成物A1のみを用いた以外は、実施例1と同様にして成形1と成形2を行い、2種類の中空容器を得た。
【0044】
比較例2
ポリエステル樹脂組成物B1のみを用いた以外は、実施例1と同様にして成形1と成形2を行った。しかしながら、成形1では中空容器を得ることができず、成形2により中空容器を得た。
【0045】
実施例1~8及び比較例1~5で得られた中空容器の特性値及び成形性の評価結果を表2に示す。
【0046】
【0047】
表2から明らかなように、実施例1~8では、特定の2種類のポリエステル樹脂組成物を適量用いてブロー成形を行ったため、成形1、2ともに生産性よく行うことができ、得られた容器は、色調、透明性ともに優れたものであった。
【0048】
一方、比較例1では、ポリエステル樹脂組成物(A)のみを用いたため、成形2における成形性が悪くなり、得られた容器は厚み斑のあるものとなり、透明性にも劣るものであった。
比較例2では、ポリエステル樹脂組成物(B)のみを用いたため、ドローダウンが大きく、成形1を行うことができなかった。また、成形2の成形性も悪く、得られた容器は厚み斑の生じたものであった。
比較例3では、ポリエステル樹脂組成物(A)に対するポリエステル樹脂組成物(B)の添加量が少ないため、成形2における成形性が悪くなり、得られた容器は厚み斑のあるものとなり、透明性にも劣るものであった。
比較例4では、ポリエステル樹脂組成物(A)に対するポリエステル樹脂組成物(B)の添加量が多いため、ドローダウンが大きくなり、成形1、2ともに困難となった。このため、得られた容器はいずれも、厚み斑のあるものとなり、透明性にも劣るものであった。
比較例5では、ポリエステル樹脂組成物(A)の極限粘度が1.4を超えていたため、押出温度を280℃に変更して成形1、2を行った。このため、ブロー成形時に押出しダイ出口での樹脂の膨張が大きくなり、成形性が悪かった。また、得られた容器は、厚み斑が生じたものとなり、色調、透明性ともに悪かった。