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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20220201BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
G06F3/041 512
G06F3/044 110
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018041528
(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公開番号】P2019159446
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500132214
【氏名又は名称】学校法人明星学苑
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 佳高
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】大塚 寛治
(72)【発明者】
【氏名】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】秋山 豊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽一
【審査官】岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/003660(WO,A1)
【文献】特開2006-268262(JP,A)
【文献】特開2004-070730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041-3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号入力ノードと、直交及び/または対向する辺を有しかつ少なくとも2辺の中間位置にそれぞれ少なくとも2つずつの電極が設けられた導電層とを備えるベース部と、
前記ベース部の信号入力ノードに計測信号を与える信号源と、
前記電極のうち前記導電層の同一辺から選択された対をなす電極からなる同辺ペア電極、前記導電層の対角辺のそれぞれから1つずつ選択された電極からなる対角ペア電極、または、対向辺のそれぞれから1つずつ選択された電極からなる対向ペア電極、の中から選択された測定電極に出力された信号の差分情報に基づいて、前記導電層に接近した物体の位置を演算する位置検出部を備え
前記ベース部は、絶縁性を有するシート状の基体と、前記基体の裏面側における中央部分を含む検知領域に一様に形成されかつ周縁部に前記信号入力ノードが設けられた導電性の信号入力層と、前記基体の表面側における前記検知領域に一様に形成された前記導電層とを備えている
ことを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記信号入力ノードは、前記導電層の電極に接続されている
ことを特徴とする請求項1記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記位置検出部は、前記同辺ペア電極、前記対角ペア電極または前記対向ペア電極のうち少なくとも2種類のペア電極を前記測定電極とする
ことを特徴とする請求項1記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記導電層の少なくとも1辺には、3個以上の電極からなる電極群が設けられ、
前記測定電極として同辺ペア電極を選択する場合に、前記電極群の両外端の電極を選択する
ことを特徴とする請求項1記載の位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接近した物体の位置を検出する位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の静電容量方式のタッチパネルの一例が開示されている。特許文献1記載のタッチパネルは、絶縁基板上に並設される複数の第1電極と、第1の電極と交差して並設される複数の第2電極と、両電極間に介在される絶縁膜とを備え、平面的に観た場合、第1の電極のパッド部と第2の電極のパッド部は重畳することなく配置されている(特許文献1の図2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-146785号公報
【文献】特開2008-134522号公報
【文献】特開2013-250642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなパターニングされた2層構造の電極パッドを使用した静電容量方式のタッチパネル(以下、2層構造タッチパネルともいう)では、比較的高いタッチ検出精度を実現できる一方で、構造が複雑であり、コストが高くなるというデメリットがある。
【0005】
これに対し、特許文献2及び特許文献3には、透明導電膜の4隅に電極を設け、同相かつ同電位の位置検出用の交流電圧を供給するパターンレスのタッチパネルが開示されている。具体的には、特許文献2では、導電膜の4隅の電極に対応して4個の波形検出回路を設け、その検出回路の出力電圧に基づいて座標位置を演算している。また、特許文献3では、矩形状の導電膜の4隅の電極に同相、同電圧のパルス信号を与え、対数信号比を用いてユーザーのタッチ位置を検出している。
【0006】
このような単一導電膜を使用するパターンレスタッチパネルは構造が単純であり、低価格で実現できるメリットがある一方で、一般的に2層構造タッチパネルと比較して解像度が低い。特に、特許文献2のような従来技術では、タッチパネル上の互いに異なる2点をタッチする、いわゆる2点タッチの検出が困難であるという問題がある。
【0007】
上記の点に鑑み、本発明は、パターンレスのタッチパネルにおいて、1点タッチに加え2点タッチのタッチ位置検出を高精度に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る位置検出装置は、信号入力ノードと、直交及び/または対向する辺を有する導電層とを備え、該導電層の少なくとも2辺の中間位置にそれぞれ少なくとも2つずつの電極が設けられたベース部と、前記ベース部の信号入力ノードに計測信号を与える信号源と、前記信号入力ノードから前記導電層を介して伝搬され、前記電極のうち前記導電層の同一辺から選択された対をなす電極からなる同辺ペア電極、前記導電層の対角辺のそれぞれから1つずつ選択された電極からなる対角ペア電極、または、対向辺のそれぞれから1つずつ選択された電極からなる対向ペア電極の中から選択された測定電極から出力された、前記計測信号の差分情報に基づいて、前記導電層に接近した物体の位置を演算する位置検出部を備えていることを特徴とする。
【0009】
ここで、「導電層を備えるベース部」には、例えば絶縁体で形成されたベースとなる部材、例えば透過性のある絶縁基板や電子機器等の樹脂製の筐体等に導電膜が形成されているものを含む。また、ベース部が2層の導電層を備えるものを含む。すなわち、前記ベース部は、絶縁性を有するシート状の基体と、前記基体の裏面側における中央部分を含む検知領域に一様に形成されかつ周縁部に前記信号入力ノードが設けられた導電性の信号入力層と、前記基体の表面側における前記検知領域に一様に形成された前記導電層と備えている、としてもよい。
【0010】
一方で、導電層は、1層であってもよい。すなわち、導電層には、絶縁体で形成されたベースとなる部材に1層の導電層が形成されているものが含まれ、ベース部としての基板の一部又は全部が導電層で構成されているものが含まれる。さらに、ベース部が導電層1層のみで構成されている場合も含まれる。この場合の導電層には、導電性を有するもので層が形成されているもの全般が含まれ、導電膜に加えて、例えば、導電性フィルム、導電性シート及び導電性プレートも含まれる。そして、前記信号入力ノードが、前記導電層の電極に接続されているとしてもよい。
【0011】
本態様によると、同辺ペア電極、対角ペア電極、対向ペア電極の中から選択された測定電極から出力された信号の差分情報に基づいて、タッチ位置の検出を行っている。これにより、測定電極とタッチ位置との相対位置が異なる距離になるように電極を選択することができる。したがって、位置検出装置で得られる測定電極からの出力信号の信号差を大きくすることができ、十分なタッチ検出感度を得ることができる。ここで、「タッチ」とは、表示画面への直接的なタッチ(表示画面への接触)と、表示画面への間接的なタッチ(いわゆるホバリング)との両方を含む概念である。
【0012】
前記位置検出部は、前記同辺ペア電極、前記対角ペア電極または前記対向ペア電極のうち少なくとも2種類のペア電極を前記測定電極とする、としてもよい。
【0013】
これにより、測定電極とタッチ物体位置の相対位置が異なる距離による信号差で十分な感度が得られる。したがって、2点タッチがされた場合においても、差分情報として十分大きな値を得ることができ、1点タッチに加え2点タッチの検出を高精度に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る位置検出方法によれば、パターンレスのタッチパネルにおいて、タッチ位置の検出を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る位置検出装置の構成例を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係るタッチパネルの構成を示す平面図である。
図3】第1実施形態に係るタッチパネルの構成を示す断面図である。
図4】第1実施形態に係るタッチパネルの位置検出原理を説明するための図である。
図5図4または図9で点TPがタッチされた場合の信号波形例を示した図である。
図6】第2実施形態に係る位置検出装置の構成例を示すブロック図である。
図7】第2実施形態に係るタッチパネルの構成例を示す断面図である。
図8】第2実施形態に係るタッチパネルの構成例を示す平面図である。
図9】第2実施形態に係るタッチパネルの位置検出原理を説明するための図である。
図10】第2実施形態に係るタッチ位置の検出方法の一例を示すフロー図である。
図11】ノータッチ補正データの取得動作の一例を示すフロー図である。
図12】タッチ位置の検出演算の一例を示すフロー図である。
図13】ディープラーニングの重みづけデータの一例を示す図である。
図14】ディープラーニングの演算結果の一例を示す図である。
図15】第2実施形態に係るタッチパネルの構成例を示す平面図である。
図16】第2実施形態に係るタッチパネルの構成例を示す平面図である。
図17】第2実施形態に係るタッチパネルの構成例を示す平面図である。
図18】2点タッチのタッチ位置とピーク電圧との関係を示す図である。
図19】2点タッチのタッチ位置とピーク電圧との関係を示す図である。
図20】タッチパネルの他の構成例を示す平面図である。
図21】タッチパネルの他の構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用範囲あるいはその用途を制限することを意図するものではない。
【0017】
<第1実施形態>
図1は本実施形態にかかる位置検出装置1の構成例を示すブロック図である。図2はタッチパネル2の構成を示す平面図であり、図3は同断面図である。
【0018】
図1に示すように、位置検出装置1は、パターンレスタッチパネル2(以下、単にタッチパネル2という)と、位置検出部6とを備えている。位置検出部6は、タッチパネル2に計測信号としてのパルス信号を与えるための信号源3と、位置情報取得部60と、演算部5とを備える。
【0019】
タッチパネル2は、シート状(フィルム状または薄板状)の基体21を有する導電シート20を含む構成になっている。
【0020】
-導電シート-
図2図3に示すように、基体21の表面には、その中央部分を含む矩形状の検知領域Rdにおいて、基体21に近い方から順に、導電層としての検知層31、絶縁層32及び接地層33がそれぞれ一様に形成され、積層されている。同様に、基体21の裏面には、検知領域Rdにおいて、信号入力層41が一様に形成されている。検知領域Rdとは、導電シート20をパターンレスタッチパネルの部材として用いたときに、タッチ位置を検知する領域に相当する。なお、本実施形態では、説明の便宜上、基体21の表面が操作者と対向しているものとする。また、「前」とは操作者側を指し、「後」はその反対側を指すものとする。ただし、本開示の導電シート20は、基体21の表面側からのタッチ操作に限定されるのもではない。すなわち、導電シート20の裏面側からのタッチ操作にも対応可能であり、同様の構成で、同様の効果が得られる。
【0021】
基体21は、導電シート20をパターンレスタッチパネルの部材として用いたときに、他部材と検知層31との接触による短絡を防ぐ観点から、絶縁性材料を用いることが好ましい。本実施形態に係る基体21は、所定の厚さを有する基板21aと、基板21aの表面に粘着フィルム(例えば、OCA(Optical Clear Adhesive)フィルム)で貼り付けられた絶縁性フィルム21bからなる。
【0022】
基体21の材料としては、絶縁性を有する物質であればよく、特に限定されないが、例えば、アルミナやガラスクロス含浸エポキシ樹脂などの硬質板「いわゆるFR4(Flame Retardant Type 4)基板」、樹脂製のフィルム、ゴム材料(柔軟性を有する方が望ましい)からなる群から選択される1種又は2種以上の材料を用いることができる。中でも、検知層31と信号入力層41との間の容量を減らす観点から、誘電率の低いFR4基板が望ましい。樹脂製フィルムは、具体的には例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、トリアセテート、トリアセチルセルロース(TAC)等が挙げられ、特に、耐熱性及びコストの面からPETフィルムがより望ましい。
【0023】
基体21の厚さは、信号入力層41と検知層31との間における良好な信号伝搬性能を得る観点、例えば信号入力層41と検知層31との間に形成されるタッチ容量値やタッチ位置から位置検出部6に至るインピーダンス等、に基づいて決定される。基体21の厚さが十分確保されていないと、位置検出部6(図8参照)において、信号入力層41と検知層31との間の容量がタッチ容量に対して相対的に大きい場合に、十分な出力信号が得られない場合がある。具体的に、基体の厚みが0.8mm以上かつ6.8mm以下であるのが好ましい。
【0024】
基体21の表面には、矩形状の検知領域Rdに検知層31が一様に形成され、検知領域Rdの周りを包囲する配線領域Rwに複数の出力配線53が形成されている。検知領域Rdは、導電シート20をパターンレスタッチパネルの部材として用いたときに、タッチ位置を検知する領域に相当する。換言すると、本発明の導電シート20は、パターンレスタッチパネルに実装されることにより、位置検出部6(図8参照)によってタッチ操作の有無が検出できるように構成されている。なお、検知層31は、電極Eや出力配線53と信号入力層41や接地層33との間に容量が生じるのを避ける観点から、検知領域Rdよりも若干広い検知層形成領域R1に一様に形成されていることが望ましい。この場合においても、検知領域Rdにおいて、検知層31は一様に形成されているといえる。
【0025】
検知層31の各辺上(周縁部に相当)には、各辺のコーナーから所定の間隔をあけた辺長手方向の中間位置に、等しいピッチで複数の電極E(信号出力ノードNoに相当)が形成されている。電極Eの数と後述する配線領域の出力配線53の数とが等しくなっている。図2では、検知層31の各辺にそれぞれ3個ずつ電極Eが設けられている例を示している。なお、本実施形態において、「等しい」とは、実質的に等しければよく、多少の位置ずれがあっても同様の効果が得られる。したがって、「等しい」とは、等しいこと(完全に一致すること)に加えて、概ね等しいことを含む概念である。
【0026】
なお、本実施形態において、タッチ操作とは、タッチパネルに直接タッチする操作と、ホバリング操作とを含む概念である。また、上記「タッチ操作」を行うことを「タッチする」というものとする。また、「タッチ操作」が行われた場合における指示体(例えば、操作者の指)の位置と対応する検知層31上の位置を「タッチ位置」というものとする。
【0027】
検知層31には、カーボン、銀、銅、アルミニウム、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、金属ドープ酸化亜鉛、金属ナノワイヤ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、ポリチオフェン(PEDOT)、ポリアニリン、及び水溶性スルホン化ポリアニリンからなる群から選択される1種または2種以上の導電材料が含有されている。カーボンは、導電性が発現すれば特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブを用いることができる。
【0028】
基体表面の配線領域Rwには、検知層31の周縁に沿って延びる複数の出力配線53が形成されている。出力配線53は、検知層31の信号出力ノードNoとしての電極Eから出力された電流の取得のために用いられる。換言すると、それぞれの出力配線53は、互いに離間するように設けられている電極Eを介して検知層31に接続されており、この電極Eが信号出力ノードとして作用する。また、各出力配線53は、検知層31の周縁に沿って引き回され、1箇所(図2では右下の隅角部近傍)に集約され、互いに異なる電極Eにそれぞれ接続されている。このように、出力配線53の端部(電極)を集約させることにより、位置検出部6に接続しやすくなる。
【0029】
検知層31や出力配線53の表面側には、絶縁層32を介して導電性の接地層33が積層により一様に形成されている。接地層33の図面上辺(周縁部に相当)における図面左右方向の左寄りの中間位置には、信号入力ノードNiが設けられている。信号入力ノードNiには、出力配線53よりも幅広の第2入力配線52が接続されている。第2入力配線52は、
基体21の裏面には、信号入力層41が形成されている。信号入力層41は、検知領域Rdと略同じ広さの信号入力層形成領域R3に一様に形成されている。接地層33と信号入力層41とは、導電シート20内の平面視における互いの位置が略同じになるように配置されている。
【0030】
信号入力層41の図面上辺(周縁部に相当)における図面左右方向の左寄りの中間位置に、信号入力ノードNiが設けられている。信号入力ノードNiには、出力配線53よりも幅広の第1入力配線51が接続されている。第1入力配線51と第2入力配線52とは、導電シート20内の平面視における互いの位置が略同じになるように配置されている。
【0031】
具体的に、図3に示すように、第1入力配線51及び第2入力配線52は、入力ノードNiから図面上方向に延びた後、導電シート20の周縁に沿って図面右方向及び図面下方向に向かってL字状に、図面右辺の上下方向の中間位置まで延びている。
【0032】
第1入力配線51及び第2入力配線52の先端部には、後述する位置検出部6のパルスジェネレータ71が接続される。そして、第1入力配線51及び第2入力配線52を介してパルスジェネレータ71からの計測信号が信号入力ノードNiに供給される。
【0033】
ここで、図2に示すように、第1入力配線51及び第2入力配線52と出力配線53とが、平面視において重ならないように形成している。これにより、第1入力配線51と出力配線53との間及び第2入力配線52と出力配線53との間に、配線間容量が発生するのを避けることができる。
【0034】
なお、図3に示すように、接地層の表面及び信号入力層41の裏面を絶縁カバー層で覆うようにしてもよい。一方で、例えば、導電シート20の前後に空間を設けたり、絶縁性の部品を配置したりする場合や、導電シート20の周りを筐体等で覆ったりした場合には、絶縁カバー層を設けなくてもよい。
【0035】
図1に戻り、信号源7は、パルスジェネレータ71(図1ではPGと表記する)を有する。パルスジェネレータ71は、周期的に変動する矩形状のパルス信号(電圧:Vcc)を発生する。パルスジェネレータ71の出力は、信号入力層41及び接地層33の信号入力ノードNiに与えられる。
【0036】
位置情報取得部60は、同一構成の2つのアナログスイッチ61,61(図1ではASと表記する)と、差動アンプ62と、ノイズフィルタ63と、ピークホールド部64と、アナログデジタル変換回路65(図1ではADCと表記する)とを備えている。
【0037】
アナログスイッチ61,61は、検知層31に設けられた電極Eの中から任意に選択された測定対象となるペア電極(以下、測定電極E1,E2という)からの出力信号を通過させる。
【0038】
差動アンプ62は、アナログスイッチ61,61を介して測定電極の出力信号を受け、両信号の信号量差を示す差動信号を出力する。ノイズフィルタ63は、差動アンプ62から出力された差動信号のノイズ成分を除去する。ピークホールド部64は、ノイズが除去された差動信号のピーク電圧をアナログ信号として保持する。アナログデジタル変換回路65は、前記ピーク電圧(アナログ信号)に基づいて、ピーク電圧値及びピーク電圧の符号情報をデジタル値に変換する。
【0039】
測定電極の組み合わせとしては、同辺ペア電極、対辺ペア電極及び対角ペア電極が含まれる。同辺ペア電極とは、導電層のいずれか1辺に設けられた電極の中から選択されたペア電極であり、例えば、図13の「同辺取得」の欄に記載された電極の組み合わせが含まれる。対辺ペア電極とは、対向する辺から各1つずつ選択されたペア電極であり、例えば、図13の「対辺取得」の欄に記載された電極の組み合わせが含まれる。対角ペア電極とは、直交する辺から各1つずつ選択されたペア電極であり、例えば、図13の「対角取得」の欄に記載された電極の組み合わせが含まれる。
【0040】
演算部5は、位置検出装置1の各ブロックの動作を制御する。
【0041】
例えば、演算部5は、タイミング制御された入力信号バルスの送信及びペア電極の中から測定電極を選択し、選択した測定電極を示す電極選択信号SC1を信号源3及び位置情報取得部60のアナログスイッチ61,61に送信する。さらに、演算部5は、アナログデジタル変換回路65から出力された差動信号(デジタル値)に含まれる差分情報に基づいて、タッチパネル2に接近又は接触した物体(例えば、ユーザーの指)の位置を演算により求める。ここで、差分情報とは、差動信号に基づいて得られる情報全般を指すものとする。例えば、差分情報には、差動信号が正の電圧信号か負の電圧信号かを示す符号情報、差動信号の大きさを示す電圧差情報、差動信号が所定の電圧に到達するまでの時間情報等が含まれる。
【0042】
-タッチパネルの位置検出原理-
以下において、第1実施形態に係るパターンレスタッチパネルのタッチ操作に係るタッチ位置の検出原理について、具体的に説明する。図4は、導電シート20を用いたパターンレスタッチパネルにおいて、導電シート20に、位置検知部6のパルスジェネレータ71及び差動アンプ62を接続した状態を示す模式図である。図4において、Zは、信号入力層41と検知層31との間のインピーダンス及び検知層31と接地層33との間のインピーダンスを示している。このインピーダンスZは、所定の値(例えば、50Ω程度)にマッチングされている。なお、図4では、アナログスイッチ61,61の図示を省略している。
【0043】
図4において、パルスジェネレータ71は、入力抵抗Riaを介して信号入力層41の信号入力ノードNiに接続されている。また、信号入力層41の信号入力ノードNiと接地層33の信号入力ノードNiとの間に入力抵抗Ribが接続され、接地層33の信号入力ノードNiは接地されている。
【0044】
そして、パルスジェネレータPGから信号入力ノードNiに計測信号が与えられると、計測信号が基体21を介して検知層31に伝搬され、検知層31の電極Eから出力信号として出力される。差動アンプ62には、アナログスイッチ61,61を介して、演算部5からの制御信号に基づいて選択された測定電極E1,E2からの出力信号が与えられる。
【0045】
その後、後段に接続された演算部5により、タッチ位置の演算が行われる。
【0046】
具体的に、タッチ位置TPがタッチされた状態において、信号入力ノードNiにパルス信号が供給されると、タッチ位置がチャージアップされ、測定電極E1,E2には、それぞれ下式(1)に応じた電圧が出力される。
【0047】
V=Vdd(1-exp(-t/RC)) ‥(1)
【0048】
C=C+C ‥(2)
【0049】
ここで、式(2)は式(1)のCの値を示している。式(2)において、Cはタッチした指と検知層31との間の容量であり、Cはタッチ位置TPにおける導電シート20の内部の容量である。なお、Cは、Ct/Csの値が、1~100程度になるように設定されるのが望ましい。
【0050】
また、式(1)のRには、測定電極E1,E2のそれぞれとタッチ位置との間の抵抗値であるR1,R2と、それぞれの測定電極E1,E2から位置検知装置6までの配線抵抗RL及び信号入力層41と検知層31との間のインピーダンスZの抵抗成分RZが含まれる。ただし、配線抵抗RL及び抵抗成分RZはほとんど影響がない程度に小さくできるため、以下の計算では、配線抵抗RL及び抵抗成分RZは「0(ゼロ)」であるものとする。
【0051】
そうすると、測定電極E1,E2のうちの一方の電極E1とタッチ位置TPとの間の抵抗をRとすると、電極E1には、それぞれ下式(3)で示す電圧が出力される。
【0052】
V1=Vdd(1-exp(-t/RC)) ‥(3)
【0053】
同様に、測定電極E1,E2のうちの他方の電極E2とタッチ位置TPとの間の抵抗をRとすると、電極E2には、それぞれ下式(4)で示す電圧が出力される。
【0054】
V2=Vdd(1-exp(-t/RC)) ‥(4)
【0055】
したがって、差動アンプ62からは、下式(5)に示す差動信号(式(3),(4)の差分の信号)が出力される。
【0056】
Vdf=V1-V2
=Vdd(-exp(-t/RC)+exp(-t/RC))‥(5)
【0057】
図5はユーザーによりタッチ位置TPがタッチされた場合における測定電極E1,E2の出力信号及び差動アンプ62から出力される差動信号の一例を示した図である。図5において、縦軸は電圧値であり、横軸は時間である。また、図5(a)は後述する式(1),(2)で求められるV1,V2の信号波形を示しており、図5(b)は式(3)で求められるVdfの信号波形を示している。
【0058】
そして、位置検出部6の演算部5では、タッチ位置に応じて式(5)で示される差動信号の符号や大きさ等(以下、差動信号情報という)が異なるため、その差動信号情報に基づいてタッチ位置を演算することができる。
【0059】
なお、タッチ操作の種別(タッチパネル上に直接指示体が触れる操作とホバリング操作)によって、位置検出部6で検出される電圧の振幅が異なるが、タッチ操作の種別によらず基本的な検出原理は同じである。同様に、タッチ位置が1点(いわゆる1点タッチ)の場合、タッチ位置が2点(いわゆる2点タッチ)の場合、及び、タッチ位置が3点以上(いわゆるマルチタッチ)の場合についても位置検出部6で検出される電圧の振幅が異なるが、基本的な検出原理は同じである。
【0060】
以上のように、本実施形態によると、測定電極の組み合わせとして、同辺ペア電極、対辺ペア電極及び対角ペア電極が含まれるようにしているので、測定電極とタッチ位置との相対位置が異なる距離になるように電極を選択することができる。これにより、位置検出装置で得られる測定電極からの出力信号の信号差を大きくすることができ、十分なタッチ検出感度を得ることができる。
【0061】
なお、上記実施形態の説明では、測定電極として、同辺ペア電極、対角ペア電極または対向ペア電極のいずれか1種類が選択された場合を例示して説明したが、これらのペア電極のうち少なくとも2種類のペア電極を測定電極とするのがより好ましい。そうすることで、測定電極とタッチ位置の相対位置が異なる距離になるようにすることができる。これにより、位置検出装置で得られる測定電極からの出力信号の信号差を大きくすることができ、十分なタッチ検出感度を得ることができる。
【0062】
さらに、本願発明者らは、絶縁性を有する基体21にタッチ位置を検知するための検知領域Rdを設定し、検知領域Rdの裏面側に計測信号を与えるための信号入力層41を一様に形成し、検知領域Rdの表面側に基体21を介して伝搬された計測信号を出力するための信号出力ノードNoが形成された検知層31を一様に形成した導電シート20をパターンレスタッチパネルに用いることで、高精度なタッチ位置の検知が可能であることを見いだした。具体的には、信号入力層41と検知層31とを分離しているので、信号入力ノードNiと信号出力ノードNoとの間で信号の干渉が起こらないようにすることができる。
【0063】
なお、本実施形態の説明では、検知領域Rdが矩形状であり、検知層31及び信号入力層41が矩形状であるものとしたが、これに限定されない。例えば、図20に示すように、検知領域Rd(検知層31及び信号入力層41)が楕円形状であってもよい、また、検知領域Rd(検知層31及び信号入力層41)の一部が曲線となっていたり、湾曲していてもよい。なお、検知領域Rdの一部が曲線となっていたり、湾曲したりしていても、タッチ位置の検出原理は上記実施形態と同様であるので、ここではその詳細説明を省略する。
【0064】
<第2実施形態>
図6は本実施形態にかかる位置検出装置1の構成例を示すブロック図である。図6において、図1と共通するブロックには、同じ符号を付している。そして、以下の説明では、第1実施形態と異なる点を中心に説明するものとし、第1実施形態と共通の構成については説明を省略する場合がある。
【0065】
具体的に、第2実施形態では、タッチパネル2、演算部5及び信号源7の構成が第1実施形態と異なっている。なお、以下の説明では、説明の便宜上、電極Eのうち、検知層31の左端で上下方向に延びる辺に沿って設けられた電極を第1電極と称する。また、第1電極から反時計回りの順番で各辺に設けられた電極をそれぞれ第2、第3及び第4電極と称する。さらに、第1電極/第3電極について、説明の理解を容易にするために、図面上から下に向かって順にE11/E31,E12/E32,E13/E33の符号を付して説明する場合がある。同様に、第2電極/第4電極について、図面右から左に向かって順にE21/E41,E22/E42,E23/E43の符号を付して説明する場合がある。
【0066】
図6において、信号源7は、パルスジェネレータ71(図6ではPGと表記する)と、アナログスイッチ72(図6ではASと表記する)とを有する。パルスジェネレータ71は、周期的に変動する矩形状のパルス信号(電圧:Vcc)を発生する。アナログスイッチ72は、演算部5から受けた電極選択信号SC1に基づいて、パルスジェネレータ71から受けたパルス信号を測定電極(測定対象となるペア電極)に出力する。
【0067】
図7は本実施形態に係るタッチパネル2の構成を示す断面図であり、図8は同平面図である。本実施形態において、タッチパネル2は、電磁透過性(光とタッチ電界を含む)を有するリジット基板又はフレキシブルシート等からなり、平面視において矩形状の基体21を備えている。本開示において、矩形とは、正方形及び長方形を含む概念である。基体21の表面には、略全面にわたって電磁透過性の検知層31が形成されており、その上に透明の絶縁保護層23が形成されている。検知層31は、例えばITO(Indium Tin Oxide)膜であり、その抵抗値は、1kΩ/□から10MΩ/□である。また、絶縁保護層23は、例えばポリエステルシートであり、その厚さは、例えば1μmから100μmである。
【0068】
演算部5は、位置検出装置1の各ブロックの動作を制御する。例えば、演算部5は、タイミング制御された入力信号バルスの送信及びペア電極の中から測定電極を選択し、選択した測定電極を示す電極選択信号SC1を信号源3及び位置情報取得部60のアナログスイッチ61,61に送信する。さらに、演算部5は、アナログデジタル変換回路65から出力された差動信号(デジタル値)に含まれる差分情報に基づいて、絶縁保護層23に接近又は接触した物体(例えば、ユーザーの指)の位置を演算により求める。ここで、差分情報とは、差動信号に基づいて得られる情報全般を指すものとする。例えば、差分情報には、差動信号が正の電圧信号か負の電圧信号かを示す符号情報、差動信号の大きさを示す電圧差情報、差動信号が所定の電圧に到達するまでの時間情報等が含まれる。さらに、演算部5は、各種制御を行うためのプログラムが格納されたROM51及び後述する補正テーブルTB1や、ディープラーニングに必要なデータベース(ディープラーニングの学習データ、ディープラーニングの学習を行った後の重み付けデータ及びパーセプトロン手法に必要なデータ)が格納された格納部52を備えている。なお、測定電極の定義は、第1実施形態と同じであり、検知層31に設けられた電極Eの中から任意に選択された測定対象となるペア電極、すなわち、同辺ペア電極、対角ペア電極、または、対向ペア電極の中から任意に選択されたペア電極である。
【0069】
-タッチ位置の検出原理-
図9は位置検出装置1において、タッチパネル2の第3及び第4電極E33,E43と周辺ブロックとの接続関係を詳細に示した図である。以下の位置検出原理の説明では、パルスジェネレータ31からのパルス信号が測定電極としての第3及び第4電極E33,E43に与えられ、差動アンプ62からは第3及び第4電極E33,E43の差動信号が出力されるものとする。すなわち、電極選択信号SC1が第3及び第4電極E33,E43を示している場合を例に説明する。なお、以下の説明に際して、理解を容易にするために、(1)検知層31は、一様なシート抵抗を有するものとして説明する。(2)図9ではアナログスイッチ32及びアナログスイッチ61の図示を省略する。ただし、詳細は後述するが、検知層31のシート抵抗が部分的に異なる場合においても、本発明は適用が可能である。
【0070】
図9に示すように、パルスジェネレータ31と第3及び第4電極E33,E43の入力端子IN33,IN43とは、それぞれ基準抵抗R0を介して入力信号配線NIにより接続されている。第3及び第4電極E33,E43の出力端子OUT33,OUT43は、差動アンプ62の入力端子にそれぞれ出力信号配線NTにより接続されている。そして、差動アンプ62の両入力端子間には、同一インピーダンスを有する2つの負荷Z1,Z1が直列接続されており、両負荷Z1,Z1の間の中間ノードがグランドに接続されている。
【0071】
なお、図9では、激しいノイズ電磁環境に対応することを目的として、入力信号配線NIが、配線NIに沿って併走する第1グランド配線NG1とのペア配線となっている例を示している。このとき、第1グランド配線NG1の一端は、パルスジェネレータ31のグランドと接続されている。同様に、出力信号配線NTが、グランド配線(以下、第2グランド配線NG2と称する)とのペア配線となっている例を示している。第2グランド配線NG2の一端は、中間ノードと同様にグランドに接続されている。また、第1及び第2グランド配線NG1,NG2の他端(タッチパネル側の端部)は解放端となっている。ただし、通常のノイズ電磁環境下においては、第1グランド配線NG1及び第2グランド配線NG2はなくてもかまわない。
【0072】
図5では、カッコ書きで示しているが、第1実施形態と同様に、図5(a)がタッチ位置TPがタッチされた場合における第3及び第4電極E33,E43の出力信号を示しており、図5(b)がそのとき差動アンプ62から出力される差動信号の一例を示している。
【0073】
ここで、図9において、タッチ位置TPは、第4電極E43よりも第3電極E33の方に近いものとする。すなわち、第3電極E33とタッチ位置TPとの間の検知層31の抵抗(以下、第3抵抗R33と称し、抵抗値はR33と記載する)と、第4電極とタッチ位置TPとの間の検知層31の抵抗(以下、第4抵抗R43と称し、抵抗値はR43と記載する)との間には、R33<R43の関係が成立するものとする。
【0074】
タッチ位置TPがタッチされた状態において、第3電極E33にパルス信号が入力されると、タッチした指と検知層31との間の容量Cと第3抵抗R33との時定数に応じた電圧でタッチ位置TPがチャージアップされる。このチャージアップ状態が第3電極E33に反射され、差動アンプ62の一方の入力端子に下記式(6)で示される反射信号が入力される。
【0075】
33=Vdd(1-exp(-t/R33)) ‥(6)
【0076】
ここで、容量Cは、絶縁保護層の材質、厚さ等に応じて一義的に決まる値である。なお、図4に示すように、容量Cとグランドとの間には、タッチするユーザー毎に異なる特定の値の負荷Z2が生じる。発明の理解を容易にするため、本式ではその影響を省略している。以下の式でも同様とする。なお、本開示では、このユーザー毎に異なる負荷Z2について、後述する補正マーカーを用いて補正することができるように構成されている。
【0077】
同様に、タッチ位置TPがタッチされた状態において、第4電極E43にパルス信号が入力されると、容量Cと第4抵抗R43との時定数に応じて、差動アンプ62の他方の入力端子に下記式(7)で示される反射信号が入力される。
【0078】
43=Vdd(1-exp(-t/R43)) ‥(7)
【0079】
したがって、差動アンプ62からは、上記式下記式(8)に示す差動信号(式(6),(7)の差分の信号)が出力される。
【0080】
df=V33-V43
=Vdd(-exp(-t/R33)+exp(-t/R43))‥(8)
【0081】
ピークホールド部64は、差動信号が正の場合、式(8)の最大電圧値をピーク電圧としてホールドし、差動信号が負の場合、式(8)の最小電圧値をピーク電圧としてホールドする。
【0082】
演算部5では、ピーク電圧値及びピーク電圧の符号情報等に基づいてタッチ位置を演算により求めることができる。
【0083】
-測定電極の選択-
次に、ペア電極の中から測定電極として選択する電極の組み合わせについて、具体的に説明する。
【0084】
図13(a)は、測定電極の組み合わせと、各検出領域Q1,Q2,…,Q80の標準ピーク電圧との対応付けをしたディープラーニングの学習データ(重みづけデータ)の一例を示している。以下の説明では、単に重みづけデータと呼ぶ場合がある。この図13(a)に例示している重みづけデータは、任意の複数個人特長、ホバリングタッチや強く指タッチした情報を含む。このようなピーク強度に大きな差があっても式(8)の原理は同じであることから取得データは電極組み合わせ間の相対値は同じ傾向で異なることから、タッチ環境にかかわらず学習で重みづけの値や畳み込み演算値が自動補正される特徴を有している。
【0085】
以下、図15図19を参照しつつ具体的に説明する。
【0086】
まず、2点タッチにおいても、1点タッチと同様に、測定電極からタッチ位置までの差分情報に基づいてタッチ位置を検出することができる。具体的に、2点タッチのベースとなる差分情報は、以下の式(4)で求めることができる。
【0087】
差分情報=(a-b)+(c-d) ‥(9)
【0088】
ここで、a(第1距離)は「ペア電極を構成する電極の一方」と「2点タッチのタッチ位置うちの一方」との距離であり、b(第2距離)は「同電極の他方」と「同タッチ位置の一方」との距離である。また、c(第3距離)は「ペア電極を構成する電極の一方」と「2点タッチのタッチ位置うちの他方」との距離であり、d(第4距離)は「同電極の他方」と「同タッチ位置の他方」との距離である。
【0089】
図15及び図16は、タッチパネルの構成例を示す平面図に対して、2点タッチが行われた場合における、上記の第1~第4距離a~dの一例を記入したものである。図15は測定電極として同辺ペア電極を選択した場合について例示しており、図16は測定電極として対角ペア電極を選択した場合について例示している。図17は、導電層の中心辺りの検出領域を2点タッチし、それを斜め方向に動かした様子を示している。
【0090】
図18は、図13の三角印に示す2点タッチ及びタッチ位置のシフト動作をした場合におけるピークホールド部64の出力電圧の変化を示している。同様に、図19は、図17の丸印に示す2点タッチ及びタッチ位置のシフト動作をした場合におけるピークホールド部64の出力電圧の変化を示している。それぞれの図において、実施例1,2は同辺取得の例を示しており、比較例では対角取得の例を示している。同辺取得では、タッチ位置の変化に伴って、差分情報に線形的かつ大きな変化が得られている。一方で、対角取得では、タッチ位置が変化しても、差分情報に有意な変化がみられていない。
【0091】
-タッチ位置の検出動作-
以下の説明では、ディープラーニング学習を用いた手法によりタッチ位置を検出する動作について具体的に説明する。図10は、全体のフローを示しており、図11図12はそれぞれ図6のステップS2,S6の詳細フローを示している。また、図13は、ディープラーニング学習後のランダムタッチ取得データに基づいて生成された重みづけデータの一例を示しており、図14は、ディープラーニングの演算結果の一例を示している。具体的に、例えば、1点の位置に対して、5人の異なる個人に対して各200点×5=1000点のデータ学習を行った後のランダムタッチの検出結果に基づいて生成されたデータである。ディープラーニング手法は多層パーセプトロンである。
【0092】
ディープラーニング手法では、ピークホールドの個人差やホバリングの距離の差なのは自動的に補正され、1点タッチの場所検出が可能であるが、前述したように電極組み合わせ間の相対比が変わらないことで位置検出できる。
【0093】
2点タッチの場合は図11,12のように相対比が異なることから、これを学習して、検出を可能としている。1点タッチは現実的には式(8)したがってある特定の1対の電極組み合わせで、検出でき、検出精度を上げるために複数組み合わせを行っている。しかもそれらはすべて同じ検出位置を示している。2点タッチ、3点タッチではこの検出位置の異なる場所が現れる。この違いを学習しておけば、容易に区分が可能となる。これは式(8)に従う原理であり、表1の場合は多くの電極組み合わせのパーセプトロンとなっていて、1点と多点の区分的原理が多層パーセプトロンの重みづけの中で連結合成されて判定される。
【0094】
図13(a)に示すように、ディープラーニングの学習データには、測定電極の組み合わせと、各検出領域Q1,Q2,…,Q80の標準出力情報としての標準ピーク電圧とが対応付けされた状態でリスト化されている。なお、本開示では、測定電極の組み合わせを互いに異ならせて100通りの組み合わせに対してパルス信号印加及び測定を行うものとする。具体的に、図13及び図14の表では、列毎に異なる測定電極の組み合わせを記載しており、説明の便宜上、それぞれの測定電極の組み合わせに対して、電極番号P00~P99を付している。そして、電極番号P00~P05までは、対辺ペア電極を測定電極として選択している。同様に、電極番号P06~P09までは、同辺ペア電極を測定電極として選択し、電極番号P06~P99までは、対角ペア電極を測定電極として選択している。
【0095】
図10のS1では、演算部5の処理を受けて、タッチパネル2に補正マーカーMK1,MK2(例えば、図15の検出領域Q62,Q19)が表示される。補正マーカーは、ユーザーによるタッチ操作に基づいて重みづけデータTBに登録された標準差分情報を補正するために用いる。標準差分情報は、上記リスト化された各検出領域Q1,Q2,…,Q80の標準ピーク電圧のリスト情報を含む。なお、補正マーカーの表示位置及び表示数は特に限定されない。
【0096】
S2において、演算部5は、ユーザーによるタッチパネル2へのタッチ操作が行われる前に、ノータッチ状態における各標準ピーク電圧(以下、ノータッチデータともいう)を補正するためのノータッチ補正データを取得する。
【0097】
図11はノータッチ補正データの取得動作の一例を示すフロー図である。図11に示すように、まず、演算部5は、あらかじめ定められた電極選択ルールに従って、測定電極を選択する(S21)。測定電極の選択ルール(例えば、測定電極の組み合わせや選択順)は、例えば、演算部5の格納部52に格納されたデータベースにあらかじめ登録されている。そして、演算部5は、例えば、図13の表の電極番号P00,P01,…,P99の順に測定電極を選択する。具体的に、図13の例では、演算部5は、最初の測定電極として第1電極E11及び第3電極E31を選択する。
【0098】
次に、演算部5は、測定電極を示す電極選択信号SC1をパルスジェネレータ31及びアナログスイッチ32に与え、ペア電極E11,E31に所定のパルス信号を供給する(S22)。このとき、演算部5は、アナログスイッチ41,41にも同じ電極選択信号SC1を与える。これにより、パルス信号が与えられたペア電極E11,E31からの出力信号が差動アンプ62に入力され、ピークホールド部64からピーク電圧が出力される。これにより、演算部5は、ピークホールド部64からノータッチ状態におけるピーク電圧を取得し、補正テーブルTB1に登録する(S23)。その後、演算部5は、上記パルス信号が与えられたペア電極E11,E31をディスチャージする(S24)。ペア電極E11,E31のディスチャージは、例えば、ペア電極E11,E31をグランドに短絡させることにより実施する。
【0099】
S25では、ピーク電圧の取得回数(ペア電極の組み合わせ)が規定された数(例えば1000回)に到達したか否かを判定し、到達していなければ(S25でNO)、S21に戻り、ペア電極E11,E31の組み合わせを、次のペア電極番号P02に係るペア電極E12,E32に変えてノータッチ状態におけるピーク電圧を取得する。以後、規定のピーク電圧の取得回数に到達するまで、S21~S25のフローを繰り返す。このようにして、ノータッチ補正データの取得が完了すると、フローは図10のS4に戻る。
【0100】
図10のS4(マーカー補正処理)において、補正マーカーMK1,MK2のうちのいずれか一方がタッチされると(S41でYES)、演算部5はマーカー補正データを取得する(S42)。S42では、ステップS2(図11)のノータッチ補正データの取得に係る処理と同様の処理を行い、マーカータッチ補正データを取得して、補正テーブルTB1に登録する。図13(b)には、マーカーMK1及びMK2のマーカータッチ補正データを取得した例を示している。マーカータッチ補正データを取得した後、演算部5は、マーカータッチ補正データを用いて標準差分情報の補正を行う(S43)。後述する図12に示すように、重みづけデータTB2がタッチ数に応じて分かれている場合、すべての重みづけデータTBに対して同様の処理を行う。
【0101】
なお、前述の図4で例示したとおり、タッチ位置の容量Cとグランドとの間にタッチするユーザー毎に異なる特定の値の負荷Z2が生じる。マーカータッチ補正データを用いることで、この負荷Z2に起因する演算誤差を補正することができるようになる。
【0102】
S43の補正が完了すると、タッチパネル2から補正マーカーMK1,MK2が消去される。そして、タッチパネル2に対してユーザーによるタッチ操作を受けると(S5でYES)、演算部5は補正された学習済みの重みづけデータTB2を用いてタッチ位置の検出演算を行う(S6)。
【0103】
次に、図8を用いて、演算部5によるタッチ位置の検出演算について詳細に説明する。タッチ位置の検出演算では、ノータッチ補正データの取得の場合と同様に、電極選択ルールに従って、ペア電極を選択する(S60)。次に、演算部5は、パルスジェネレータ31及びアナログスイッチ32に電極選択信号SC1を与え、測定電極に所定のパルス信号を与えるとともに(S61)、測定電極からの出力電圧に基づくピーク電圧をピークホールド部64から取得する(S62)。
【0104】
ステップS63では、ピーク電圧が取得されると、演算部5はタッチ数の分離を行う。具体的に、ピーク電圧は、タッチ数が多いほど大きくなる。したがって、例えば、所定の閾値を設け、ピーク電圧とその閾値との関係に基づいてタッチ数を判断することができる。
【0105】
ステップS64では、ステップS63で分離したタッチ数に応じた学習済みの重みづけデータTB2を用いて、ユーザーによるタッチ操作の位置を推定する推定演算を行う(S64)。ここでは、ステップS63において、2点タッチと判断されたものとする。
具体的に、推定演算では、
(1)まず、演算部5は、取得されたピーク電圧と、学習済みの重みづけデータTB2の各検出領域Q1,Q2,…,Q80における標準ピーク電圧とを比較する。
(2)そして、図14に示すように、上記(1)記載の両電圧の誤差が所定の範囲内の場合に“1”を、両電圧の誤差が所定の範囲を超える場合に“0”を演算結果テーブルTB3に登録する。例えば、取得されたピーク電圧と標準ピーク電圧との誤差が±10%以内の場合に“1”を出力する。
【0106】
推定演算が終了すると、パルス信号が与えられたペア電極がディスチャージされる(S65)。なお、本実施形態における候補位置とは、前述の両電圧の誤差が所定の範囲内の位置、すなわち、演算結果テーブルTB3に“1”が登録された位置である。
【0107】
そして、演算部5は、規定された取得回数(例えば、100)に到達するまで、上記S61~S65の処理を繰り返し、電極選択ルールで規定されたすべての組み合わせに係るペア電極(例えば、P00,P01,…,P99)の推定演算(上記(1)及び(2)の演算)を実施する。
【0108】
演算部5は、推定演算をあらかじめ規定された回数実施した後(S66でYES)、推定演算の結果に基づいて、ユーザーによるタッチ操作の位置を判断する特定演算を行う(S67)。具体的には、検出領域毎に推定演算結果を加算し、加算結果の大きさ、突出度、近似度等に基づいてタッチ操作の位置を判断する。例えば、図14の例では、検出領域Q36の加算結果が80と一番多く、次に検出領域Q45の加算結果が75で多くなっている。そこで、演算部5は、この抽出回数に基づいて、検出領域Q36,Q45の2点がユーザーのタッチ位置であると判断する。
【0109】
なお、特定演算におけるタッチ位置の判断方法は、特に限定されるものではない。例えば、検出領域毎の推定演算結果の加算値の大きさのみに基づいて判断してもよいし、加算結果の大きさが所定の大きさ以上でかつ所定の突出度を有する検出領域がある場合に、その検出領域をタッチ操作の位置と判断するようにしてもよい。また、複数の推定演算結果や複数のピーク電圧値に基づく別の評価軸を設定し、その別の評価軸の結果に基づいて、又は別の評価軸の結果を加味してタッチ位置を判断するようにしてもよい。
【0110】
以上のように、本願発明者らは、同辺ペア電極の中から測定電極を選択し、その測定電極に対して計測信号の印加及び出力信号の取得を行うことにより、2点タッチにおいても有意な差分情報を得ることができることを見いだした。これにより、パターンレス方式のタッチパネルにおいて、2点タッチの検出を高精度に行うことができる。
【0111】
また、測定電極として、同辺ペア電極からの差分情報の取得と、対角ペア電極や対向ペア電極からの差分情報の取得とを組み合わせることにより、1点タッチ、2点タッチ及びマルチタッチにおいて、タッチ位置によらずに有意な差分情報を得ることができるようになり、タッチ位置の検出をより高精度に行うことができる。
【0112】
また、同辺ペア電極からなる測定電極として、3個以上の電極(例えば、図3の第1電極E11,E12,E13)からなる電極群E1の両外側の電極を用いることにより、ピーク電圧の差分を大きくすることができる。すなわち、有意性の高い差分情報を取得することができ、これにより、タッチ位置の検出をより高精度に行うことができる。第2電極E21,E22,E23からなる電極群E2、第3電極E31,E32,E33からなる電極群E3、第4電極E41,E42,E43からなるE4についても同様である。
【0113】
なお、図3では、各辺に3個の電極が設けられ、電極群E1~E4が各辺に1つずつある例を示しているが、これに限られない。例えば、電極が4個以上であってもよいし、電極群が2つ以上設けられていてもよい。具体的に、例えば、少なくともいずれか1つの辺に電極を6個設けた場合に、電極群を2つに分け、それぞれの電極群の両外側の電極を測定電極としてもよい。さらに、電極群を構成する電極が重複していてもよい。
【0114】
さらに、2層構造タッチパネルでは、その特性上、シート抵抗値が1kΩ/□から5kΩ/□の範囲にすることが必要であるが、本発明では、導電層のシート抵抗値が2桁以上高くてもよい点に特徴がある。すなわち、大型ディスプレイ、壁面等を使用した大型スクリーン、ホワイトボード等の大型板面等の大型のタッチパネルに適している。さらに、有機導電シート、金属薄膜シート等のシート抵抗値が高いシートを導電層に適用することが可能になるため、曲面での使用にも適している。
【0115】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが種々の改変が可能である。
【0116】
例えば、上記第1、第2実施形態において、各辺の電極の数は、それぞれ3個であるものとしたが、電極の数はこれに限定されない。各辺に設ける電極の数は、それぞれ少なくとも2個(少なくとも1つのペア電極)が含まれていればよく、また各辺で電極数が異なっていてもかまわない。
【0117】
また、上記第1、第2実施形態において、電極は導電層の辺に沿って設けられるものとしたが、一部の電極が導電層の辺から内側に離間した位置に設けられていてもかまわない。例えば、検知層31の面積に対してタッチパネル2の開口面積(有効タッチ面積)が狭い場合に、各電極がタッチパネル2の有効タッチ領域を区画する枠に沿って設けられていてもよい。一方で、同じ面積の導電層内において、タッチ検出可能な領域を広く確保するためには、検知層31の辺に沿って電極が設けられているのが好ましい。
【0118】
また、上記第第2実施形態において、導電層は矩形状であるものとしたが、これに限定されない。導電層は、直交及び/または対向する辺を有していればよく、上記第2実施形態と同様の効果が得られる。具体的に、導電層の一部が曲線となっていてもよく導電層の一部が湾曲していてもよい。
【0119】
また、上記第2実施形態では、ペア電極に対するパルス信号印加及び測定を各ペア電極の組み合わせに対して1回行う例を示しているが、5~50msの期間毎に前記ペア電極を構成する電極の組み合わせを変えるものとし、この5~50msの期間中に複数回のパルス信号印加及び測定を実施するようにしてもよい。この場合、例えば、複数回の測定結果を平均してその値を各演算に用いるようにすればよい。
【0120】
また、上記実施形態では、導電層はタッチパネル表面に設けられているものとしたが、例えば、携帯電話の裏側のように、タッチパネルの画面から所定の間隔を空けた位置に導電層が設けられている、すなわち、ホバリング検出されるような状態においても、本発明は適用可能であり、同様の効果が得られる。この場合は差動信号ピークホールドの絶対値が小さいため、例えば、差動アンプ62の倍率を上げて出力を高めるようにしてもよい。具体的に、まず、タッチの有無の検出は、演算部5がピークホールド部64からの出力(ADC65でのAD変換後)を検出することにより行われる。ここで、演算部5は、例えば、S/N比のレベル以上のノータッチデータが得られれば、タッチ操作の検出ができる。そして、演算部5は、ピークホールド部64からの出力レベルも把握しているので、タッチ操作があることを検出するのと同時に、ホバリング検出であることを認識することができる。そして、演算部が、設定された差動アンプ62の倍率と、ホバリング動作に応じた重みづけデータTB2とに基づいてタッチ位置の検出演算を行うようにすればよい。
【0121】
また、上記実施形態において、検知層31の各辺に設けられた電極は、対称な位置であるものとしたが、各辺の電極が非対称な位置に設けられていてもよい。具体的に、図16に示すように、導電層の第1コーナーC1(図16左上)から各第1電極E11,E12,E13までの距離と、導電層の第4コーナーC4(図16右上)から各第3電極E31,E32,E33までの距離とが、それぞれ互いに異なるように各電極が配置されていてもよい。同様に、検知層31の第1コーナーC1から各第4電極E41,E42,E43までの距離と、検知層31の第2コーナーC2(図16左下)から各第2電極E21,E22,E23までの距離とが、それぞれ互いに異なるように各電極が配置されていてもよい。すなわち、図16において、D21≠D41であり、D11≠D31であってもよい。このような非対称電極構成とすることにより、パルスジェネレータ31から測定電極に印加されるパルス信号、及び測定電極から差動アンプ62に出力される出力信号のノイズをより効果的に低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、単純な構造でありかつ解像度の高い位置検出装置を実現することが可能であり、様々な分野において用いられるタッチパネルに対して極めて有用である。
【符号の説明】
【0123】
1 位置検出装置
2 タッチパネル(ベース部)
22 導電層
6 位置検出部
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