(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】畝培地空隙内空気の入れ替えを行う農作物の栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 25/06 20060101AFI20220201BHJP
A01G 22/05 20180101ALI20220201BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
A01G25/06 602
A01G22/05
A01G7/00 602D
(21)【出願番号】P 2020017464
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2020-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】521127848
【氏名又は名称】青木 尚登
(73)【特許権者】
【識別番号】000197126
【氏名又は名称】青木 尚行
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】青木 尚行
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-069869(JP,A)
【文献】特開平08-172897(JP,A)
【文献】特開昭53-011729(JP,A)
【文献】特開平04-058836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 22/00-22/67
A01G 25/00-27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
畑土面を耕し培地による栽培用の畝培地を形成し、この畝培地の上面に苗を植えまたは種を播く農作物の栽培方法であって、前記培地による栽培用の前記畝培地を形成するため、畑土面を掘り周囲の外土との間の水の流通を遮断する断水ビニールシートを設けて形成または発泡スチロール製ブロックで形成した栽培槽内に、前記培地を収納して前記畝培地を形成するとともに、この畝培地下となる前記栽培槽の底に、この畝培地に水を給水および排水するための通水孔を有する暗渠用樹脂パイプまたは上部開口部を有する給排水用の中央溝からなる畝培地下給排水路部を設け、この畝培地下給排水路部の上部にこの畝培地下給排水路部内に前記畝培地の土および砂が流入することを防ぐ不織布や細かい目の網などの土流入防止用の網を敷設し、この栽培槽の端部隣接位置にこの栽培槽の底に設けた前記畝培地下給排水路部と連通し注水することでこの畝培地下給排水路部を介して前記栽培槽の前記畝培地に水を給水して前記畝培地の上面までこの給水により満水状態とするための、および排水することでこの畝培地からこの畝培地下給排水路部を介して前記栽培槽の前記畝培地から水を排水するための給排水槽用のピットを設け、このピットに注水パイプおよび排水パイプの端部を配設してこのピット内に水を注水するおよびこのピット内から水を排水するように構成し、
このピット内に水を前記注水パイプを介して注水して、このピット内に注水した水が前記栽培槽底の前記畝培地下給排水路部の前記暗渠用樹脂パイプの通水孔または前記給排水溝の前記上部開口部から前記土流入防止用の網を介してこの上部の前記畝培地へ水を給水し、
このピット内への注水によりこの水を前記栽培槽の前記畝培地の上面まで給水してこの畝培地を満水状態とし、この畝培地の空隙内の空気を押し出しこの畝培地空隙内を大気と遮断した後、
前記ピット内の水を前記排水パイプを介して排水して、前記満水状態の前記畝培地から水を前記網および前記畝培地下給排水路部を介して排水し、
このピット内の排水により前記満水状態の畝培地から水を排水してこの畝培地下給排水路部内も空とし、この畝培地下給排水路部内に形成される空間を用いて前記畝培地底にまで大気を導きこの畝培地空隙内に大気圧を作用させこの畝培地空隙内に空気を導入し、
このピット注水による畝培地満水状態とピット排水による畝培地空気導入状態とを組としてこの組を単位時間あたり所定回数行うことを特徴とする畝培地空隙内空気の入れ替えを行う農作物の栽培方法。
【請求項2】
畑土面を耕し畝を
形成し、苗を植える又は種を播く農作物の栽培方法におい
て、
畑土面を断面反蒲鉾
形の畝を形成するための長さおよび幅で堀り、内
側に断水ビニールをあてがい外土との間に水の行き来が無い様にした栽培槽を形成
し、
この栽培槽片端より1
メートル内
にこの栽培槽と隣接し同じ高さの給排水槽用のピット
を設け、このピット内
の底に先端が位置し
て前記栽培槽と連通状態となるように通水孔を有する暗渠用樹脂パイプを
前記ピット内より
前記栽培槽他端終わりまでの長さで、かつ
この栽培槽底面幅と同じ幅となる本数分の状態で
この栽培槽底に設置
し、この暗渠用樹脂パイプ上に水は通すけれども土
および砂が
前記通水孔を介してこの暗渠用樹脂パイプ内に入らない為の目の細かい網を敷設
し、この網の上に土や砂やロックファイバー
などの栽培する
農作物に適した培地を畑土面まで投入
して、この栽培槽内に前記培地で畝を形成した畝培地を設け、
この畝培地の上面を平らにならした
この畝培地
上面に
前記苗を植え又は
前記種を播いた後、
前記栽培槽片端に
隣接していて底に前記暗渠用樹脂パイプの先端が露出状態に設けられている前記ピットに、
前記栽培槽内の前記畝培地に給水および排水する為のポンプに接続し先端をこのピット内に設置
した注水パイプにより注水を行
って、前記暗渠用樹脂パイプを介して前記栽培槽内の前記畝培地上面まで給水を行い、前記畝培地
を満水状態とする事で
この畝培地空隙内の空気を押し出し、
この畝培地空隙内を大気と遮断した後、
前記ピット内に先端を設置した前記排水パイプによりこのピット内からの排水を行
って、このピット内底に露出している前記暗渠用樹脂パイプの先端が水面より干しあがり露出するまで
、前記畝培地から水を前記網および前記暗渠用樹脂パイプを介して排水してこの暗渠用樹脂パイプ内を空とし、
この暗渠用樹脂パイプ内空間を用いて前記畝培地底にまで大気を導きこの畝培地空隙内に大気圧を作用させこの畝培地空隙内に空気を導入するこの
ピット注水と排水
とを組とし、
この組を栽培する作物に応じて単位時間あたり所定回数前記栽培槽内
の前記畝培地に対して行う
ことを特徴とする
畝培地空隙内空気の入れ替えを行う農作物の栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トマト等、畑土を耕し畝を立て苗を植え又は種を播いて作物を栽培する培地による畝培地を周囲の土より断水状態とし、かつ畝培地空隙内の空気を任意に入れ替えかつ畝培地総てに均等に水分供給して作物を栽培する栽培方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トマト等の農作物は畑土に元肥と称される肥料を施した後、栽培する作物に適した深さで耕し畑底盤面上に培地(元肥の混ざった耕された土)の層を作った後、畑底盤面上にその培地で畝をたて、この畝培地上面に苗を植え又は種を播いた後、程なくして活着したら畝培地上面に潅水チュウブを敷設し、これにより畝培地に水分を、時々液肥等補給して本体を育てながら実を収穫する従来の土耕栽培においては、畝培地空隙内の空気の入れ替え、畝培地総てへの均等な水分供給は想定されておらず、時間の経過に伴う畝培地内微生物の活動による畝培地空隙内の空気のよどみを無くする事や畝培地上面からの水くれでは潅水した水が、潅水の回数と伴に畝培地内に出来てくる「水道」を伝って畝培地底の畑底盤面に抜け出てしまい、収穫終りまで畝培地総てへの均等な水分供給を行う手立ては行われていないのが現状・従来例の栽培方法であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このよう現状・従来例の畝培地空隙内の空気のよどみによる畝培地内の進根障害や、潅水した水が畝培地内の「水道」を伝って畝培地底の畑底盤面に流出してしまう不都合を解決するため、栽培槽内の畝培地に注水により給水する事によってその水で畝培地空隙内の空気が押し出されて空気が水と入れ替わり、逆に排水する事により畝培地空隙内を満たしていた水が引くと同時に大気圧の作用で畝培地空隙内の水が空気と入れ替わる事により畝培地内環境が改善され良好な新陳代謝が行われ良好な生育が可能となる極めて実用性に優れた画期的な栽培方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
添付概念図を参照して本発明の要旨を説明する。トマト等を栽培する畑土に元肥を施し耕し畝をたて畝上面に苗を植え又は種を播いて育てる栽培方法において、畑土面の断面を反蒲鉾型の畝とする長さ、幅で堀上げ、内側に断水用ビニール9を設置した後、この栽培槽底に暗渠用樹脂パイプ2(添付資料1参照)を必要本数接続して畝長さとほぼ同じにしかつ栽培槽底面幅とほぼ同じに成る本数の暗渠用樹脂パイプ2を設置する。この暗渠用樹脂パイプ2内に砂や土が入って詰まらない様にする為に、すなわち水は通すけれど砂や土が暗渠用樹脂パイプ2内に入る事を止める為に、不織布等の目の細かい網3を暗渠用樹脂パイプ2上面に敷設した後、栽培槽の片端より1メートルほどの位置に栽培槽を区切る為の仕切り板4を設置し、暗渠パイプの端12を露出させて置く為と栽培槽内への注水パイプ6・排水パイプ7の先端を置くためのピット8を構成する。次にピット8反対側の栽培槽内の暗渠用樹脂パイプ2の上の網3の上に培地5を畑土面と同面まで投入、平らにしてこれを畝培地の上面11とした後、苗10を植える又は種を播いた後、ほどなくして活着し生育が始まったら、ピット8内の注水パイプ6で栽培槽内の畝培地上面11近くまで給水した後、今度はピット8内の排水パイプ7によりピット8内の暗渠用樹脂パイプ端12が水面より干しあがり露出するまで排水を行い暗渠樹脂用パイプ2内を空とし、この空すなわち空間を用いて畝培地底に大気を導き畝培地空隙内に大気圧を作用させ作物を栽培する事を特徴とする作物の栽培方法に係るものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は上述のように構成する事により、栽培槽内の畝培地総てを均等に浸す事が出来、従来例の如く畝培地上面からくれた水が畝培地内の「水道」を伝って畝培地底の畑底盤面に流出してしまう結果生じる畝培地内の水分のバラつきによる根張りのバラつきを防止出来、畝培地全域に根を張り巡らす事が可能と成り、また畝培地空隙内の空気を入れ替え、時間の経過に伴う畝培地内微生物の活動による畝培地空隙内の空気のよどみを無くする事が可能となり、したがって畝培地空隙内の空気を任意に入れ替えかつ畝培地総てに均等に水分供給して作物を栽培できることとなり良好な生育が可能となる極めて実用性に優れた画期的な栽培方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本実施例(実施例1)の側
断面概念図(a)と正断面概念図(b)である。
【
図2】
実施例2の小規模栽培が対象の
正断面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
好適と考える本発明の実施形態を概念図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
図1の概念図に示す様に畑土面に反蒲鉾型の縦長の栽培槽を堀上げ内面に断水ビニール9を当てがい栽培槽内畝培地5と外土1の間に水の行き来きが発生しない様にした後、栽培槽内底に暗渠用樹脂パイプ2を栽培槽長さとほぼ同じく、かつ栽培槽の底幅とほぼ同じになる本数設置した後、水は通
すけれど砂や土が暗渠
用樹脂パイプ2内に入らない為の不織布等、目の細かい網3を暗渠
用樹脂パイプ2上に敷設した後
、栽培槽片端より1メ
ートル程のところに仕切り板4を立て、暗渠用樹脂パイプ
2の先端12を露出させて置く為と栽培槽内に
注水する為の
注水パイプ6,
排水するための排水パイプ7の先端を置くためのピット8を構成する。
次にピットコ反対側栽培槽上面まで培地5を投入、平らにならしこれを畝
培地の上面11とし苗10を植える又は種を播き
、作物の育成を開始する。従来例であれば畝上面に渡す潅水チュウブを用いて成育に合わせ適時、水くれを行うけれど
、この畝上面よりの従来例
の水くれであると潅水の回数の経過と伴に畝培地内に
「水道
」が出来て
しまい、せっかく
くれた水の相当量は
この水道を通り畝培地底の畑底盤面に流出して
しまい、畝培地内の作物の根には、わずかしか届かず吸収されないまま無駄に
終始していたけれど
、本発明においては畝上面に潅水チューブを渡す事はせず、変わり
にピット
8に設けた
注水パイプ6より
注水することで、暗渠用樹脂パイプ2内を経由して畝
培地上面近くまで水位をあげた後、今度は同じく暗渠
用樹脂パイプ2内を経由してピット
8内に設けた排水パイプ7より栽培槽内の水を排水してピット
8内に露出させている暗渠
用樹脂パイプ
2の先端12が
露出するまで干し上げ
、暗渠
用樹脂パイプ
2内を空としこの暗渠
用樹脂パイプ2内空間を通して畝培地底に大気を導き
、畝培地内の空隙に大気圧を作用させ畝培地空隙内に新鮮な空気を導入する事によって畝培地中の微生物の活動で発生するガスによる畝培地空隙内の空気のよどみを一掃する事と畝培地総てを均等な水分含有率とする事が出来、良好な新陳代謝が行われ、良好な生育が可能となる。
【実施例1】
【0008】
本発明の具体的な実施例について
図1概念図に基づいて説明する。
培地5を投入し畝
(畝培地)とする栽培槽は
、栽培する作物の種類により、深さ
・幅
・長さはそれぞれ異なるけれど、トマトの苗植え栽培を例とすれば、深さ20センチ、幅30センチ長さ20メ
ートルとし栽培槽内面に断水ビニ
ール9を当てがい外土1との水分の出入りが無いようにした後、栽培槽底に暗渠用樹脂パイプ2を栽培槽とほぼ同じ長さかつ栽培槽底幅とほぼ同じに成る本数設置する。
次に栽培槽片端1メ
ートル内に暗渠用樹脂パイプ
2の先端12を露出状態にして置く為と栽培槽内に
注水する為の
注水パイプ6,
排水するための排水パイプ7の先端を配置する為のピット8を確保する為、栽培槽片端より1メートル位の位置に仕切り板4を設ける。次に
この仕切り板
4による、ピット
8反対側の暗渠用樹脂パイプ
2上に
、水は通すけれど、暗渠
用樹脂パイプ
2内に砂や土が入らない為の不織布等目の細かい網3を敷設した後この網
3の上に培地5を栽培槽上面まで投入し、平らにならしこれを畝
培地の上面11とし
、これに苗10を植える。
次に程なく根付き成育が始まったら
、注水パイプ6より畝培地上面
11近くまで給水した後、次に排水パイプ7によりピット8内底に露出させた暗渠用
樹脂パイプ2が干しあがるまで排水し、暗渠用
樹脂パイプ
2内を空としこのパイプ内空間を用いて畝培地底に大気を導いて大気圧を作用させる。このピット
8内への注水による給水、ピット
8内排水による排水を組とし成育段階に応じ
て単位時間当たりの
この組の実施回数を調整する。これにより畝培地空隙内の空気を昼夜を問わず任意回数入れ替える事と畝培地総てを作物の生育スタンスに適した均等な水分とする事が可能となり良好な新陳代謝が行われ良好な成育が可能となる。
【0009】
図1に示す概念図は、畑土面を反蒲鉾型に掘り上げた栽培槽に培地を入れ本発明の栽培
方法を行う実施例
1であるが、近年行われ始めたイチゴやトマトの
ような(添付資料2
参照)高架ベンチ栽培形態において、この栽培棚
(畝培地)列を1ユニットとし棚上部栽培構造を本発明栽培槽構造としユニット内の1栽培棚脚部建てパイプの間に棚上部栽培槽とほぼ同じ長さ、幅、高さのボールタップを用いた水位を一定に保持出来る貯水槽を設け、この貯水槽に1ユニット
列の栽培槽棚の給排水パイプがつながる様に配管調整を行い、これらのパイプにタイマーに連動するポンプ、切り替え弁を組み合わせる事で1個の貯水槽で例えばユニット
列の栽培槽棚の給水、排水干し上げの水管理を行う方法もある。また本栽培法を特許4384534号に用いることで特許4348534の欠点である所の、容体を畝培地に突き刺す事による容体体積分、容体周囲の畝培地が押され硬くなり水分の伝達が悪くなり発根しにくくなる欠点を回避する為の方法と成りえる。
また本栽培法を特許4564577号に用いることで特許4564577の欠点である所の培地として腐食性有機物を少なめに土や砂に混合した培地を長年用いると囲い枠内の土や砂の割合が増す事により株周囲の培地が硬くなり水の伝達が悪くなる欠点を回避する為の方法と成りえる。
【実施例2】
【0010】
また
図2に示す小規模栽培が対象の実施例
2は、畑土面の堀上げ作業省略、高架ベンチ栽培の棚設置の省略、暗渠パイプ設置の省略を行い本発明を行う実施例で
あって、図2に示す
正断面概念図のように硬質発砲スチロ
ールで出来たブロック
13を水漏れが無いよう必要とする畝長さ分つなげる事で可能である。中央溝
15の両肩の淵に樹脂で出来た縦長の目の細かい編板
(網)を乗せる事で培地を止め、この溝を暗渠
用樹脂パイプの代用とし
、大気の導入、干し上げ排水、給水用とする。
図2の斜線の部分に培地を投入、上部両端の溝に必要とする畝高さにする為の板
14をはめ込む事で作物に応じた畝高さとする事が出来る。
【符号の説明】
【0011】
1 外土
2 暗渠用樹脂パイプ
3 網
4 仕切り板
5 培地
6 注水パイプ
7 排水パイプ
8 ピット
9 断水用のビニール
10 苗
11 畝培地の上面
12 暗渠用樹脂パイプの先端
13 硬質発泡スチロール製ブロック
14 板
15 中央溝