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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】対象追跡装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/20 20170101AFI20220201BHJP
   G06M 7/00 20060101ALI20220201BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20220201BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
G06T7/20 300Z
G06M7/00 301N
G06T7/60 180B
H04N7/18 G
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021131551
(22)【出願日】2021-08-12
【審査請求日】2021-09-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518126409
【氏名又は名称】株式会社アジラ
(74)【代理人】
【識別番号】100176256
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 隆敬
(72)【発明者】
【氏名】グエン ソン
【審査官】真木 健彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-222881(JP,A)
【文献】特開2002-063577(JP,A)
【文献】特開2009-027651(JP,A)
【文献】特開2006-172023(JP,A)
【文献】特開2006-331347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06T 1/00
G06M 7/00
H04N 7/18
G08B 13/194 - 13/196
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の時系列画像に映った複数の対象を追跡する追跡部と、
前記一連の時系列画像のうちの少なくとも複数の時系列画像における複数の対象間の対象間距離を測定する測定部と、
前記測定された第1の対象と第2の対象との間の対象間距離に基づき、前記第2の対象が前記第1の対象に接近中であるか否かを判定する判定部と、
第1の時系列画像において前記接近中と判定されていた前記第2の対象を、前記第1の時系列画像に続く第2の時系列画像において前記追跡部が追跡できなくなり、かつ、前記第1の時系列画像における前記第1の対象と前記第2の対象との間の対象間距離が第1の所定距離以内であった場合に、前記第2の時系列画像以降の時系列画像において、前記追跡が継続されている第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱うことに決定する決定部と、
を備え、
前記第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱っていた時系列画像に続く第3の時系列画像において前記追跡部が第3の対象の追跡を新たに開始し、かつ、前記第3の時系列画像における前記第1の対象と前記第3の対象との間の対象間距離が第2の所定距離以内であった場合に、前記決定部は、前記第3の時系列画像以降の時系列画像において、前記第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱うことを中止し、前記新たに追跡を開始された第3の対象を前記第2の対象として取り扱うことに決定することを特徴とする対象追跡装置。
【請求項2】
前記追跡している対象のうち、各時系列画像中の同一の空間位置に仮想的に配置された検出線を通過した対象を計数する計数部を更に備え、
前記第2の対象と一体化したものとして取り扱われている前記第1の対象が前記検出線を通過した場合に、前記計数部は、前記第2の対象を加えて計数することを特徴とする請求項1に記載の対象追跡装置。
【請求項3】
コンピュータにインストールされるプログラムであって、
一連の時系列画像に映った複数の対象を追跡するステップと、
前記一連の時系列画像のうちの少なくとも複数の時系列画像における複数の対象間の対象間距離を測定するステップと、
前記測定された第1の対象と第2の対象との間の対象間距離に基づき、前記第2の対象が前記第1の対象に接近中であるか否かを判定するステップと、
第1の時系列画像において前記接近中と判定されていた前記第2の対象を、前記第1の時系列画像に続く第2の時系列画像において前記追跡ができなくなり、かつ、前記第1の時系列画像における前記第1の対象と前記第2の対象との間の対象間距離が第1の所定距離以内であった場合に、前記第2の時系列画像以降の時系列画像において、前記追跡が継続されている第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱うことに決定するステップと、
を備え、
前記第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱っていた時系列画像に続く第3の時系列画像において第3の対象の追跡を新たに開始し、かつ、前記第3の時系列画像における前記第1の対象と前記第3の対象との間の対象間距離が第2の所定距離以内であった場合に、前記決定するステップでは、前記第3の時系列画像以降の時系列画像において、前記第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱うことを中止し、前記新たに追跡を開始された第3の対象を前記第2の対象として取り扱うことに決定することを特徴とする対象追跡プログラム。
【請求項4】
前記追跡している対象のうち、各時系列画像中の同一の空間位置に仮想的に配置された検出線を通過した対象を計数するステップを更に備え、
前記第2の対象と一体化したものとして取り扱われている前記第1の対象が前記検出線を通過した場合に、前記計数するステップでは、前記第2の対象を加えて計数することを特徴とする請求項3に記載の対象追跡プログラム。
【請求項5】
コンピュータで使用される方法であって、
一連の時系列画像に映った複数の対象を追跡するステップと、
前記一連の時系列画像のうちの少なくとも複数の時系列画像における複数の対象間の対象間距離を測定するステップと、
前記測定された第1の対象と第2の対象との間の対象間距離に基づき、前記第2の対象が前記第1の対象に接近中であるか否かを判定するステップと、
第1の時系列画像において前記接近中と判定されていた前記第2の対象を、前記第1の時系列画像に続く第2の時系列画像において前記追跡ができなくなり、かつ、前記第1の時系列画像における前記第1の対象と前記第2の対象との間の対象間距離が第1の所定距離以内であった場合に、前記第2の時系列画像以降の時系列画像において、前記追跡が継続されている第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱うことに決定するステップと、
を備え、
前記第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱っていた時系列画像に続く第3の時系列画像において第3の対象の追跡を新たに開始し、かつ、前記第3の時系列画像における前記第1の対象と前記第3の対象との間の対象間距離が第2の所定距離以内であった場合に、前記決定するステップでは、前記第3の時系列画像以降の時系列画像において、前記第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱うことを中止し、前記新たに追跡を開始された第3の対象を前記第2の対象として取り扱うことに決定することを特徴とする対象追跡方法。
【請求項6】
前記追跡している対象のうち、各時系列画像中の同一の空間位置に仮想的に配置された検出線を通過した対象を計数するステップを更に備え、
前記第2の対象と一体化したものとして取り扱われている前記第1の対象が前記検出線を通過した場合に、前記計数するステップでは、前記第2の対象を加えて計数することを特徴とする請求項5に記載の対象追跡方法。
【請求項7】
一連の時系列画像に映った複数の対象を追跡する追跡部と、
前記一連の時系列画像のうちの少なくとも複数の時系列画像において複数の対象間の対象間距離を測定する測定部と、
前記測定された第1の対象と第2の対象との間の対象間距離に基づき、前記第1の対象と前記第2の対象が接近中であるか否かを判定する判定部と、
第1の時系列画像において前記接近中と判定され、かつ、前記第1の時系列画像における前記第1の対象と前記第2の対象との間の対象間距離が第1の所定距離以下であった場合に、前記第1の時系列画像以降の時系列画像において、前記第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱うことに決定する決定部と、
を備え、
前記第1の時系列画像より後の時系列画像において前記追跡部が前記第2の対象を追跡できなかった場合にも、前記決定部は、前記追跡が継続されている第1の対象を前記第2の対象と一体化として取り扱う決定を維持し、
前記第2の対象を追跡できなかった時系列画像に続く第2の時系列画像において前記追跡部が第3の対象の追跡を新たに開始し、かつ、前記第2の時系列画像における前記第1の対象と前記第3の対象との間の対象間距離が第2の所定距離以内であった場合に、前記決定部は、前記第2の時系列画像以降の時系列画像において、前記第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱うことを中止し、前記新たに追跡を開始された第3の対象を前記第2の対象として取り扱うことに決定することを特徴とする対象追跡装置。
【請求項8】
前記追跡している対象のうち、各時系列画像中の同一の空間位置に仮想的に配置された検出線を通過した対象を計数する計数部を更に備え、
前記第2の対象と一体化したものとして取り扱われている前記第1の対象が前記検出線を通過した場合に、前記計数部は、前記第2の対象を加えて計数することを特徴とする請求項7に記載の対象追跡装置。
【請求項9】
コンピュータにインストールされるプログラムであって、
一連の時系列画像に映った複数の対象を追跡するステップと、
前記一連の時系列画像のうちの少なくとも複数の時系列画像において複数の対象間の対象間距離を測定するステップと、
前記測定された第1の対象と第2の対象との間の対象間距離に基づき、前記第1の対象と前記第2の対象が接近中であるか否かを判定するステップと、
第1の時系列画像において前記接近中と判定され、かつ、前記第1の時系列画像における前記第1の対象と前記第2の対象との間の対象間距離が第1の所定距離以下であった場合に、前記第1の時系列画像以降の時系列画像において、前記第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱うことに決定するステップと、
を備え、
前記第1の時系列画像より後の時系列画像において前記追跡部が前記第2の対象を追跡できなかった場合にも、前記決定するステップにおいて前記追跡が継続されている第1の対象を前記第2の対象と一体化として取り扱う決定を維持し、
前記第2の対象を追跡できなかった時系列画像に続く第2の時系列画像において第3の対象の追跡を新たに開始し、かつ、前記第2の時系列画像における前記第1の対象と前記第3の対象との間の対象間距離が第2の所定距離以内であった場合に、前記決定するステップでは、前記第2の時系列画像以降の時系列画像において、前記第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱うことを中止し、前記新たに追跡を開始された第3の対象を前記第2の対象として取り扱うことに決定することを特徴とする対象追跡プログラム。
【請求項10】
前記追跡している対象のうち、各時系列画像中の同一の空間位置に仮想的に配置された検出線を通過した対象を計数するステップを更に備え、
前記第2の対象と一体化したものとして取り扱われている前記第1の対象が前記検出線を通過した場合に、前記計数するステップでは、前記第2の対象を加えて計数することを特徴とする請求項9に記載の対象追跡プログラム。
【請求項11】
コンピュータで使用される方法であって、
一連の時系列画像に映った複数の対象を追跡するステップと、
前記一連の時系列画像のうちの少なくとも複数の時系列画像において複数の対象間の対象間距離を測定するステップと、
前記測定された第1の対象と第2の対象との間の対象間距離に基づき、前記第1の対象と前記第2の対象が接近中であるか否かを判定するステップと、
第1の時系列画像において前記接近中と判定され、かつ、前記第1の時系列画像における前記第1の対象と前記第2の対象との間の対象間距離が第1の所定距離以下であった場合に、前記第1の時系列画像以降の時系列画像において、前記第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱うことに決定するステップと、
を備え、
前記第1の時系列画像より後の時系列画像において前記追跡部が前記第2の対象を追跡できなかった場合にも、前記決定するステップにおいて前記追跡が継続されている第1の対象を前記第2の対象と一体化として取り扱う決定を維持し、
前記第2の対象を追跡できなかった時系列画像に続く第2の時系列画像において第3の対象の追跡を新たに開始し、かつ、前記第2の時系列画像における前記第1の対象と前記第3の対象との間の対象間距離が第2の所定距離以内であった場合に、前記決定するステップでは、前記第2の時系列画像以降の時系列画像において、前記第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱うことを中止し、前記新たに追跡を開始された第3の対象を前記第2の対象として取り扱うことに決定することを特徴とする対象追跡方法。
【請求項12】
前記追跡している対象のうち、各時系列画像中の同一の空間位置に仮想的に配置された検出線を通過した対象を計数するステップを更に備え、
前記第2の対象と一体化したものとして取り扱われている前記第1の対象が前記検出線を通過した場合に、前記計数するステップでは、前記第2の対象を加えて計数することを特徴とする請求項11に記載の対象追跡方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時系列画像に映った対象を追跡するための対象追跡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、行動体の複数の関節の座標及び深度の時系列画像における変位に基づき、行動体の行動を推定する行動推定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6525179号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術では、時系列画像において同一の行動体を特定(追跡)する必要があるが、複数の行動体が重なった場合には行動体の追跡に失敗してしまうことがある。
【0005】
そこで、本発明は、時系列画像に映った対象を高精度に追跡することが可能な対象追跡装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一連の時系列画像に映った複数の対象を追跡する追跡部と、前記一連の時系列画像のうちの少なくとも複数の時系列画像における複数の対象間の対象間距離を測定する測定部と、前記測定された第1の対象と第2の対象との間の対象間距離に基づき、前記第2の対象が前記第1の対象に接近中であるか否かを判定する判定部と、第1の時系列画像において前記接近中と判定されていた前記第2の対象を、前記第1の時系列画像に続く第2の時系列画像において前記追跡部が追跡できなくなり、かつ、前記第1の時系列画像における前記第1の対象と前記第2の対象との間の対象間距離が第1の所定距離以内であった場合に、前記第2の時系列画像以降の時系列画像において、前記追跡が継続されている第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱うことに決定する決定部と、を備えたことを特徴とする対象追跡装置を提供している。
【0007】
また、前記第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱っていた時系列画像に続く第3の時系列画像において前記追跡部が第3の対象の追跡を新たに開始し、かつ、前記第3の時系列画像における前記第1の対象と前記第3の対象との間の対象間距離が第2の所定距離以内であった場合に、前記決定部は、前記第3の時系列画像以降の時系列画像において、前記第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱うことを中止し、前記新たに追跡を開始された第3の対象を前記第2の対象として取り扱うことに決定することが好ましい。
【0008】
また、前記追跡している対象のうち、各時系列画像中の同一の空間位置に仮想的に配置された検出線を通過した対象を計数する計数部を更に備え、前記第2の対象と一体化したものとして取り扱われている前記第1の対象が前記検出線を通過した場合に、前記計数部は、前記第2の対象を加えて計数することが好ましい。
【0009】
また、本発明の別の観点によれば、コンピュータにインストールされるプログラムであって、一連の時系列画像に映った複数の対象を追跡するステップと、前記一連の時系列画像のうちの少なくとも複数の時系列画像における複数の対象間の対象間距離を測定するステップと、前記測定された第1の対象と第2の対象との間の対象間距離に基づき、前記第2の対象が前記第1の対象に接近中であるか否かを判定するステップと、第1の時系列画像において前記接近中と判定されていた前記第2の対象を、前記第1の時系列画像に続く第2の時系列画像において前記追跡ができなくなり、かつ、前記第1の時系列画像における前記第1の対象と前記第2の対象との間の対象間距離が第1の所定距離以内であった場合に、前記第2の時系列画像以降の時系列画像において、前記追跡が継続されている第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱うことに決定するステップと、を備えたことを特徴とする対象追跡プログラムを提供している。
【0010】
また、本発明の別の観点によれば、一連の時系列画像に映った複数の対象を追跡するステップと、前記一連の時系列画像のうちの少なくとも複数の時系列画像における複数の対象間の対象間距離を測定するステップと、前記測定された第1の対象と第2の対象との間の対象間距離に基づき、前記第2の対象が前記第1の対象に接近中であるか否かを判定するステップと、第1の時系列画像において前記接近中と判定されていた前記第2の対象を、前記第1の時系列画像に続く第2の時系列画像において前記追跡ができなくなり、かつ、前記第1の時系列画像における前記第1の対象と前記第2の対象との間の対象間距離が第1の所定距離以内であった場合に、前記第2の時系列画像以降の時系列画像において、前記追跡が継続されている第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱うことに決定するステップと、を備えたことを特徴とする対象追跡方法を提供している。
【0011】
また、本発明の別の観点によれば、一連の時系列画像に映った複数の対象を追跡する追跡部と、前記一連の時系列画像のうちの少なくとも複数の時系列画像において複数の対象間の対象間距離を測定する測定部と、前記測定された第1の対象と第2の対象との間の対象間距離に基づき、前記第1の対象と前記第2の対象が接近中であるか否かを判定する判定部と、第1の時系列画像において前記接近中と判定され、かつ、前記第1の時系列画像における前記第1の対象と前記第2の対象との間の対象間距離が第1の所定距離以下であった場合に、前記第1の時系列画像以降の時系列画像において、前記第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱うことに決定する決定部と、を備え、前記第1の時系列画像より後の時系列画像において前記追跡部が前記第2の対象を追跡できなかった場合にも、前記決定部は、前記追跡が継続されている第1の対象を前記第2の対象と一体化として取り扱う決定を維持することを特徴とする対象追跡装置を提供している。
【0012】
また、本発明の別の観点によれば、コンピュータにインストールされるプログラムであって、一連の時系列画像に映った複数の対象を追跡するステップと、前記一連の時系列画像のうちの少なくとも複数の時系列画像において複数の対象間の対象間距離を測定するステップと、前記測定された第1の対象と第2の対象との間の対象間距離に基づき、前記第1の対象と前記第2の対象が接近中であるか否かを判定するステップと、第1の時系列画像において前記接近中と判定され、かつ、前記第1の時系列画像における前記第1の対象と前記第2の対象との間の対象間距離が第1の所定距離以下であった場合に、前記第1の時系列画像以降の時系列画像において、前記第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱うことに決定するステップと、を備え、前記第1の時系列画像より後の時系列画像において前記追跡部が前記第2の対象を追跡できなかった場合にも、前記決定するステップにおいて前記追跡が継続されている第1の対象を前記第2の対象と一体化として取り扱う決定を維持することを特徴とする対象追跡プログラムを提供している。
【0013】
また、本発明の別の観点によれば、一連の時系列画像に映った複数の対象を追跡するステップと、前記一連の時系列画像のうちの少なくとも複数の時系列画像において複数の対象間の対象間距離を測定するステップと、前記測定された第1の対象と第2の対象との間の対象間距離に基づき、前記第1の対象と前記第2の対象が接近中であるか否かを判定するステップと、第1の時系列画像において前記接近中と判定され、かつ、前記第1の時系列画像における前記第1の対象と前記第2の対象との間の対象間距離が第1の所定距離以下であった場合に、前記第1の時系列画像以降の時系列画像において、前記第1の対象を前記第2の対象と一体化したものとして取り扱うことに決定するステップと、を備え、前記第1の時系列画像より後の時系列画像において前記追跡部が前記第2の対象を追跡できなかった場合にも、前記決定するステップにおいて前記追跡が継続されている第1の対象を前記第2の対象と一体化として取り扱う決定を維持することを特徴とする対象追跡方法を提供している。
【発明の効果】
【0014】
本発明の対象追跡装置によれば、時系列画像に映った対象を高精度に追跡することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態による追跡の説明図
図2】本発明の実施の形態による対象追跡装置のブロック図
図3】本発明の実施の形態による対象間距離の説明図
図4】本発明の実施の形態による対象追跡装置のフローチャート
図5】本発明の変形例による対象間距離の説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態による対象追跡装置1について、図1図4を参照して説明する。
【0017】
対象追跡装置1は、図1に示すように、一連の時系列画像Xに映った複数の対象(図1では、第1の対象A及び第2の対象B)を追跡するためのものである。本実施の形態では、対象として、人間を例に説明を行う。
【0018】
対象追跡装置1は、図2に示すように、取得部2と、追跡部3と、測定部4と、判定部5と、決定部6と、計数部7と、を備えている。
【0019】
取得部2は、一連の時系列画像Xを取得する。本実施の形態では、固定された撮影手段により撮影された所定の空間の映像を構成する一連のフレームを、一連の時系列画像Xとして取得するものとする。
【0020】
追跡部3は、一連の時系列画像Xに映った複数の対象(本実施の形態では、第1の対象A及び第2の対象B)を追跡する。
【0021】
追跡の方法としては様々なものが考えられるが、本実施の形態では、一の時系列画像Xにおいて検出された複数の関節の集合体に基づき対象を特定し、当該検出された関節の集合体に対応する集合体を次の時系列画像Xにおいて検出した際に、同一の対象と特定して追跡を行う。
【0022】
測定部4は、一連の時系列画像Xのうちの少なくとも複数の時系列画像Xにおける複数の対象間の対象間距離Yを測定する。本実施の形態では、各時系列画像Xにおける対象間の対象間距離Yを測定するものとするが、所定枚数ごとに測定しても良いし、任意の時系列画像Xのみで対象間距離Yを測定しても良い。対象間距離Yとしては、絶対的な距離であっても相対的な距離であっても良い。
【0023】
なお、本実施の形態では、図1に示す側方から撮影された時系列画像Xから、図3(a)に示す水平面上の対象間距離Yを算出する。
【0024】
この算出方法としては様々なものが考えられるが、本実施の形態では、各時系列画像Xに映る第1の対象A及び第2の対象Bのサイズから第1の対象A及び第2の対象Bの水平面上の座標をそれぞれ推定し、当該座標間の距離を対象間距離Yとして算出する。
【0025】
判定部5は、測定されたた第1の対象Aと第2の対象Bとの間の対象間距離Yに基づき、第2の対象Bが第1の対象Aに接近中であるか否かを判定する。
【0026】
これは、一の時系列画像Xにおける対象間距離Yが直前の時系列画像Xにおける対象間距離Yよりも短くなっていた場合に“接近中”と判定しても良いし、所定枚数前の時系列画像Xにおける対象間距離Yよりも短くなっていた場合に“接近中”と判定しても良い。
【0027】
決定部6は、図3(b)(c)に示すように、第1の時系列画像X1において“接近中”と判定されていた第2の対象Bを、第1の時系列画像X1に続く第2の時系列画像X2において追跡部3が追跡できなくなり、かつ、第1の時系列画像X1における第1の対象Aと第2の対象Bとの間の対象間距離Yが第1の所定距離以内であった場合に、第2の時系列画像X2以降の時系列画像Xにおいて、追跡が継続されている第1の対象Aを第2の対象Bと一体化したものとして取り扱うことに決定する。
【0028】
これは、「それまで第1の対象Aに“接近中”であった第2の対象Bを追跡できなくなった」ことは、「第2の対象Bが第1の対象Aと重なっているはずである」という考えに起因したものである。
【0029】
これにより、対象の重なりを検出するための高機能及び高負荷の構成を備えることなく容易かつ低負荷で対象の重なりを検出することが可能となり、以て、対象の高精度な追跡を実現することが可能となる。
【0030】
なお、一体として取り扱うタイミングは、追跡部3の能力に依存する。例えば、追跡部3の能力が高ければ、第1の対象Aと第2の対象Bの大部分が重なって初めて一体化したものとして取り扱うことになり、追跡部3の能力が低ければ、第1の対象Aと第2の対象Bの一部が重なっただけでも一体化したものとして取り扱うことになり得る。
【0031】
また、本実施の形態では、第1の時系列画像X1における第1の対象Aと第2の対象Bとの間の対象間距離Yが第1の所定距離以内であることを条件として、第2の時系列画像X2以降の時系列画像Xにおいて、第1の対象Aを第2の対象Bと一体化したものとして取り扱うので、これにより、第2の対象Bが第1の対象Aから遠く離れているにも関わらず何らかの原因で第2の対象Bを追跡できなかった場合にまで、第2の対象Bを第1の対象Aと一体化したものとして取り扱ってしまうことが防止される。
【0032】
なお、第1の所定距離としては、「対象間距離Yがどれくらいになると追跡部3が第2の対象Bを追跡できなくなるか」を実験等により求めた上で、適当な距離を設定すれば良い。
【0033】
更に、決定部6は、図3(d)に示すように、第1の対象Aを第2の対象Bと一体化したものとして取り扱っていた時系列画像Xに続く第3の時系列画像X3において追跡部3が第3の対象Cの追跡を新たに開始し、かつ、第3の時系列画像X3における第1の対象Aと第3の対象C間の対象間距離Yが第2の所定距離以内であった場合に、第3の時系列画像X3以降の時系列画像Xにおいて、第1の対象Aを第2の対象Bと一体化したものとして取り扱うことを中止し、新たに追跡を開始された第3の対象Cを第2の対象Bとして取り扱うことに決定する。
【0034】
これは、「第1の対象Aから近い位置で第3の対象Cの追跡を新たに開始した」ことは、「第1の対象Aと重なっていた第2の対象Bが第1の対象Aから離れたはずである」という考えに起因したものである。
【0035】
これにより、対象の分離を検出するための高機能及び高負荷の構成を備えることなく容易かつ低負荷で対象の分離を検出することが可能となり、以て、対象の高精度な追跡を実現することが可能となる。
【0036】
なお、第3の対象Cを第2の対象Bとして取り扱うタイミングも、追跡部3の能力に依存する。例えば、追跡部3の能力が高ければ、第1の対象Aと第2の対象Bがある程度分離しただけでも第3の対象Cを第2の対象Bとして取り扱うことになり、追跡部3の能力が低ければ、第1の対象Aと第2の対象Bが完全に分離して初めて第3の対象Cを第2の対象Bとして取り扱うことになり得る。
【0037】
また、本実施の形態では、第3の時系列画像X3における第1の対象Aと第3の対象C間の対象間距離Yが第2の所定距離以内であることを条件として、第3の対象Cを第2の対象Bとして取り扱うので、これにより、第1の対象Aとは遠く離れた位置で第3の対象Cの追跡が開始された場合にまで、第3の対象Cを第2の対象Bとして取り扱ってしまうことが防止される。
【0038】
なお、第2の所定距離としては、「対象間距離Yがどれくらいになると追跡部3が第1の対象Aと重なっていた第2の対象Bを個別に追跡し始めるか」を実験等により求めた上で、適当な距離を設定すれば良い。
【0039】
計数部7は、追跡している対象のうち、各時系列画像X中の同一の空間位置に仮想的に配置された検出線Z(図1及び図3参照)を通過した対象を計数する。
【0040】
更に、本実施の形態では、第2の対象Bと一体化したものとして取り扱われている第1の対象Aが検出線Zを通過した場合に、計数部7は、第2の対象Bを加えて計数する。
【0041】
これにより、第1の対象Aに重なっている第2の対象Bを計数し損なうことが防止される。
【0042】
続いて、図4のフローチャートを用いて、対象追跡装置1の動作について説明する。以下では、対象A及び対象Bの追跡が既に行われている状態から説明を行う。
【0043】
まず、一の時系列画像Xを取得し(S1)、取得した時系列画像Xにおいて追跡部3が第2の対象Bを追跡できたか否かを判断する(S2)。
【0044】
第2の対象Bを追跡できた場合には(S2:YES)、S1に戻り、次に続く時系列画像Xを取得する。
【0045】
一方、第2の対象Bを追跡できなかった場合には(S2:NO)、前の時系列画像X(第1の時系列画像X1)において“接近中”と判定され、かつ、第1の時系列画像X1における対象間距離Yが第1の所定距離以内であったか否かを判断する(S3)。
【0046】
“接近中”又は“第1の所定距離以内”でなかった場合には(S3:NO)、S1に戻り、次に続く時系列画像Xを取得する。
【0047】
一方、“接近中”かつ“第1の所定距離以内”であった場合には(S3:YES)、第1の対象Aを第2の対象Bと一体化したものとして取り扱うことに決定する(S4)。
【0048】
その後、次に続く時系列画像Xを取得し(S5)、追跡部3が第3の対象Cの追跡を新たに開始したか否かを判断する(S6)。
【0049】
第3の対象Cの追跡を新たに開始していない場合には(S6:NO)、S5に戻り、次に続く時系列画像Xを取得する。
【0050】
一方、第3の対象Cの追跡を新たに開始した場合には(S6:YES)、当該時系列画像Xにおける第1の対象Aと第3の対象C間の対象間距離Yが第2の所定距離以内であるか否かを判断する(S7)。
【0051】
対象間距離Yが第2の所定距離以内でない場合には(S7:NO)、S5に戻り、次に続く時系列画像Xを取得する。
【0052】
一方、対象間距離Yが第2の所定距離以内である場合には(S7:YES)、第3の対象Cを第2の対象Bとして取り扱うことに決定した上で(S8)、S1に戻り、次に続く時系列画像Xを取得する。
【0053】
なお、いずれかのタイミング(時系列画像X)で第1の対象Aが検出線Zを通過した際には第1の対象Aを第2の対象Bと一体化したものとして取り扱っているか否かに基づき対象の計数を行う。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態では、それまで第1の対象Aに“接近中”であった第2の対象Bを追跡できなくなった場合に、以降の時系列画像Xにおいて、第1の対象Aを第2の対象Bと一体化したものとして取り扱う。
【0055】
このような構成によれば、対象の重なりを検出するための高機能及び高負荷の構成を備えることなく、容易かつ低負荷で対象の重なりを検出することが可能となり、以て、対象の高精度な追跡を実現することが可能となる。また、第1の対象Aと第2の対象B間の対象間距離Yが第1の所定距離以内であることを条件として、第1の対象Aを第2の対象Bと一体化したものとして取り扱うので、これにより、第2の対象Bが第1の対象Aから遠く離れているにも関わらず何らかの原因で第2の対象Bを追跡できなかった場合にまで、第2の対象Bを第1の対象Aと一体として取り扱ってしまうことが防止される。
【0056】
また、本実施の形態では、第1の対象Aを第2の対象Bと一体化したものとして取り扱っていた状況で第3の対象Cの追跡が新たに開始された場合、第3の対象Cを第2の対象Bとして取り扱う。
【0057】
このような構成によれば、対象の分離を検出するための高機能及び高負荷の構成を備えることなく容易かつ低負荷で対象の分離を検出することが可能となり、以て、対象の高精度な追跡を実現することが可能となる。また、第1の対象Aと第3の対象C間の対象間距離Yが第2の所定距離以内であることを条件として、第3の対象Cを第2の対象Bとして取り扱うので、これにより、第1の対象Aとは遠く離れた位置で第3の対象Cの追跡が開始された場合にまで、第3の対象Cを第2の対象Bとして取り扱ってしまうことが防止される。
【0058】
また、本実施の形態では、第2の対象Bと一体化したものとして取り扱われている第1の対象Aが検出線Zを通過した場合に、第2の対象Bを加えて計数する。
【0059】
このような構成によれば、第1の対象Aに重なっている第2の対象Bを計数し損なうことが防止される。
【0060】
尚、本発明の対象追跡装置は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0061】
例えば、上記実施の形態では、「それまで第1の対象Aに“接近中”であった第2の対象Bを追跡できなくなった場合に、以降の時系列画像Xにおいて、第1の対象Aを第2の対象Bと一体化したものとして取り扱った」が、第2の対象Bを追跡できなくなる前から第1の対象Aを第2の対象Bと一体化したものとして取り扱っても良い。
【0062】
この場合には、図5に示すように、決定部6は、「第1の時系列画像X1において“接近中”と判定され、かつ、第1の時系列画像X1における第1の対象Aと第2の対象Bとの間の対象間距離Yが第1の所定距離以下であった場合に、第1の時系列画像X1以降の時系列画像Xにおいて、第1の対象Aを第2の対象Bと一体化したものとして取り扱うことに決定し、更に、第2の時系列画像X2より後の時系列画像Xにおいて追跡部3が第2の対象Bを追跡できなかった場合にも、追跡が継続されている第1の対象Aを第2の対象Bと一体化として取り扱う決定を維持する」構成が考えられる。すなわち、本変形例では、図4におけるS2のステップを行わないこととなる。
【0063】
このような構成によれば、第2の対象Bが第1の対象Aと重なることを予測して、早めに第1の対象Aを第2の対象Bと一体化として取り扱うことができるので、安定した追跡を行うことが可能となる。また、図4のS2のステップを行わないのでコンピュータの負荷も低減させることが可能となる。
【0064】
なお、この場合にも、「第2の対象Bを追跡できなかった時系列画像Xに続く第2の時系列画像X2において追跡部3が第3の対象Cの追跡を新たに開始し、かつ、第2の時系列画像X2における第1の対象Aと第3の対象Cとの間の対象間距離Yが第2の所定距離以内であった場合に、決定部6は、第2の時系列画像X2以降の時系列画像Xにおいて、第1の対象Aを第2の対象Bと一体化したものとして取り扱うことを中止し、新たに追跡を開始された第3の対象Cを第2の対象Bとして取り扱うことに決定する」こと、及び、「第2の対象Bと一体化したものとして取り扱われている第1の対象Aが検出線Zを通過した場合に、計数部7は、第2の対象Bを加えて計数する」ことが可能である。
【0065】
また、上記実施の形態では、第1の対象A及び第2の対象Bの追跡を例に説明を行ったが、更に多くの対象の追跡を行っても良い。その場合には、対象の組み合わせごとに、一体として取り扱うか否かの決定等が行われることとなる。
【0066】
また、上記実施の形態では、一連の時系列画像Xは、固定された撮影手段により所定の空間を撮影したものであったが、移動手段に搭載された撮影手段等により任意の空間を撮影したものであっても良い。
【0067】
また、上記実施の形態では、測定部4は、理解容易のために、水平面上の対象間距離Yを算出したが、時系列画像X上の対象間の距離を単純に測定したものを対象間距離Yとして用いても良い。
【0068】
また、上記実施の形態では、対象として人間を例に説明したが、動物やロボットについて使用することも可能である。
【0069】
また、本発明は、対象追跡装置が行う処理に相当するプログラム又は方法や、当該プログラムを記憶した記録媒体にも応用可能である。記録媒体の場合、コンピュータ等に当該プログラムがインストールされることとなる。ここで、当該プログラムを記憶した記録媒体は、非一過性の記録媒体であっても良い。非一過性の記録媒体としては、CD-ROM等が考えられるが、それに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0070】
1 対象追跡装置
2 取得部
3 追跡部
4 測定部
5 判定部
6 決定部
7 計数部
X 時系列画像
Y 対象間距離
Z 検出線
【要約】
【課題】 時系列画像に映った対象を追跡するための対象追跡装置を提供する。
【解決手段】 対象追跡装置1は、一連の時系列画像Xに映った複数の対象を追跡する追跡部3と、一連の時系列画像Xにおける複数の対象間の対象間距離を測定する測定部4と、測定された第1の対象Aと第2の対象Bとの間の対象間距離Yに基づき、第2の対象Bが第1の対象Aに接近中であるか否かを判定する判定部5と、第1の時系列画像X1において接近中と判定されていた第2の対象Bを第2の時系列画像X2において追跡部3が追跡できなくなり、かつ、第1の時系列画像X1における第1の対象Aと第2の対象Bとの間の対象間距離Yが第1の所定距離以内であった場合に、第2の時系列画像X2以降の時系列画像において、追跡が継続されている第1の対象Aを第2の対象Bと一体化したものとして取り扱うことに決定する決定部7と、を備えている。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5