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特許7017219ローダミン誘導体及びそれを用いたローダミン骨格を有するネットワークポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】ローダミン誘導体及びそれを用いたローダミン骨格を有するネットワークポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/36 20060101AFI20220201BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20220201BHJP
   C08G 75/045 20160101ALI20220201BHJP
   C09B 69/10 20060101ALI20220201BHJP
   C09B 62/465 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
C08F20/36
C08F290/06
C08G75/045
C09B69/10 B CSP
C09B62/465
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017094525
(22)【出願日】2017-05-11
(65)【公開番号】P2018188591
(43)【公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145920
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】鬼村 謙二郎
(72)【発明者】
【氏名】山吹 一大
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-037535(JP,A)
【文献】特開2015-143787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00-20/70
C08F 290/00-290/14
C08G 75/00-75/32
C09B 62/00-62/84
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中、各R1はそれぞれ独立してC1~C6アルキル基を示し、各R2は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、各mはそれぞれ独立して0~10のいずれかの整数、nは1~10のいずれかの整数を示す。)で表わされるローダミン誘導体。
【請求項2】
式(II)
【化2】
(式中、各R1は、それぞれ独立して、C1~C10アルキル基を示し、各R2は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、各mはそれぞれ独立して0~10のいずれかの整数、nは1~10のいずれかの整数を示す。)で表わされる繰り返し単位(A)の少なくとも1種、及び炭素-炭素二重結合を1又は2個有する重合性化合物由来の繰り返し単位(B1)の少なくとも1種を有し、炭素-炭素二重結合を1又は2個有する重合性化合物が、式(III)
【化3】
(式中、R3は水素原子又はメチル基を示し、R4は C1~C10のアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基、(C3~C8)シクロアルキル(C1~C10)アルキル基、C6~C10のアリール基、(C6~10)アリール(C1~C10)アルキル基又はヘテロ環基を示し、xは1~20のいずれかの整数を示す)で表わされる化合物、及び式(IV)
【化4】
(式中、R5は水素原子又はメチル基を示し、yは1~20のいずれかの整数を示す)で表わされる化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
式(II)で表わされる繰り返し単位(A)1モルに対して、炭素-炭素二重結合を1又は2個有する重合性化合物由来の繰り返し単位(B1)が0.1~1,000モルであるネットワークポリマー。
【請求項3】
式(II)
【化5】
(式中、各R1は、それぞれ独立して、C1~C10アルキル基を示し、各R2は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、各mは、それぞれ独立して、0~10のいずれかの整数、nは1~10のいずれかの整数を示す。)で表わされる繰り返し単位(A)の少なくとも1種、及びSH基を2~6個有する架橋性化合物由来の繰り返し単位(B2)の少なくとも1種を有し、
SH基を2~6個有する架橋性化合物がO-、-S-又は-CO-を有していてもよい直鎖又は分岐状の炭化水素化合物、アリール化合物、又は複素環化合物であり、
式(II)で表わされる繰り返し単位(A)とSH基を2~6個有する架橋性化合物由来の繰り返し単位(B2)がチオール-エン反応により結合し、
式(II)で表わされる繰り返し単位(A)1モルに対してSH基を2~6個有する架橋性化合物由来の繰り返し単位(B2)が0.01~100モルであるネットワークポリマー。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のネットワークポリマーを含有することを特徴とする、コンクリートのひび割れを検出するための歪みセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローダミン誘導体及びそれを用いたローダミン骨格を有するネットワークポリマーに関する。ローダミン骨格を有するネットワークポリマーはメカノクロミズムの機能を有する。
【背景技術】
【0002】
クロミズムを示す物質は化学的環境変化に敏感に応答して材料の性質が変化するものであり、センサー、光学記憶容量、光学デバイスなどのエレクトロニクス分野など、様々な分野での応用が可能である。
近年、メカノクロミズムに注目が集まっている。メカノクロミズムとは「機械的な刺激」によって色調が変化する現象のことである。機械的刺激は、特定の共有結合に直接作用し、そうでなければ動力学的にアクセスできないプロセスを活性化する熱的、電気的、および光活性化の代替物である。近年、スピロピラン、ローダミンの誘導体等のクロミズムを示す化合物を組み込んだポリマーのメカノクロミズム(非特許文献1~5)についての報告もなされており、二機能性以上の多刺激に応答する性質をもつ材料の開発が必要とされている。
非特許文献1~5における記載内容は、以下のとおりである。
非特許文献1には、スピロピランをリンクしたPMA(ポリメタクリレート)が記載されているが、当該ポリマーはスピロピラン骨格を有するモノメタクリレート又はジメタクリレートをそれら同士重合したものである。当該文献では、スピロピラン骨格を有するモノメタクリレート又はジメタクリレートを、それ以外の炭素-炭素二重結合を有するモノマーや多官能性SH化合物と共重合することについては、開示されていないし、示唆もされていない。
非特許文献2には、ローダミン誘導体を組み込んだポリウレタンが記載されているが、当該ポリマーは、ポリウレタンを製造する際に、ポリウレタン原料にOH基を有するローダミン誘導体を混合し、OH基とOCN基の反応を利用してポリウレタン中にローダミン誘導体を組み込んで製造されることが記載されている。当該文献に記載されたポリマーは、ローダミン誘導体構造が組み込まれているが、炭素-炭素二重結合を有するローダミン誘導体を、他の炭素―炭素二重結合を有する重合性化合物や多官能性SH化合物と共重合して得られたものとはポリマー構造が全く異なるポリマーである。
非特許文献3には、液晶化合物であるRM-257(1,4-bis-[4-(3-acryloyloxypropyloxy) benzoyloxy]-2-methylbenzene)を多官能性SH化合物と共重合して得たネットワークポリマーが記載されているが、当該文献ではRM-257に関する報告のみであり、RM-257はローダミン誘導体とはまったく異なる化合物である。
非特許文献4には、ナフトピランを組み込んだポリジメチルシロキサンが記載されているが、当該ポリマーは、ポリジメチルシロキサンにビニル基を2個有するナフトピランを結合させて製造することが記載されており、炭素-炭素二重結合を有するローダミン誘導体を、他の炭素-炭素二重結合を有する重合性化合物や多官能性SH化合物と共重合して得られたものとはポリマー構造が全く異なるポリマーである。
また、非特許文献5には、スピロピランを組み込んだPMMA(ポリメチルメタクリレート)が記載されており、当該ポリマーはビニル基を2個有するスピロピランをメチルメタクリレートと共重合して製造することが記載されている。当該文献においては、クロミズムを示す化合物はスピロピランに関する報告のみであり、ローダミン誘導体を共重合することについては記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】D. Davis et.al., “Force-induced activation of covalent bonds in mechanoresponsive polymeric materials”, Nature, 459, 68-72 (2009).
【文献】Z. Wang, et.al., “A Novel Mechanochromic and Photochromic Polymer Film : When Rhodamine Joins Polyurethane”, Adv. Mater., 27, 6469-6474 (2015).
【文献】Z. Wang et al., “A simple and robust way towards reversible mechanochromism: Using liquid crystal elastomer as a mask”, Extreme Mechanics Letters 11 (2017) 42-48
【文献】Maxwell J. Robb,et al. , “Regioisomer-Specific Mechanochromism of Naphthopyran in Polymeric Materials”, J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 12328-12331
【文献】Douglas A. Davis et al., “ Mechanoresponsive polymeric materials“, Nature, 459, 68-72 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記非特許文献等に記載の従来のメカノクロミズムを有するポリマーはいずれも実用的には十分ではなかった。
本発明は、実用的に、例えば歪センサーなどとして、使用可能な、メカノクロミズムを有する新規なネットワークポリマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ローダミン誘導体にビニル基を導入した後、炭素-炭素二重結合1又は2個有する重合性化合物と重合することにより、あるいは、SH基を2個以上有する架橋性化合物とチオール-エン反応により重合することにより、得られたネットワークポリマーが、加圧により変色し、加熱により可逆的に元の色に戻ることが確認され、メカノクロミズムを示すことを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は以下の発明に関する。
(1)式(I)
【化1】
(式中、各R1はそれぞれ独立してC1~C6アルキル基を示し、各R2は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、各mはそれぞれ独立して0~10のいずれかの整数、nは1~10のいずれかの整数を示す。)で表わされるローダミン誘導体。
(2) 式(II)
【化2】
(式中、各R1は、それぞれ独立して、C1~C10アルキル基を示し、各R2は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、各mはそれぞれ独立して0~10のいずれかの整数、nは1~10のいずれかの整数を示す。)で表わされる繰り返し単位(A)の少なくとも1種、及び炭素-炭素二重結合を1又は2個有する重合性化合物由来の繰り返し単位(B1)の少なくとも1種を有し、
式(II)で表わされる繰り返し単位(A)1モルに対して、炭素-炭素二重結合を1又は2個有する重合性モノマー由来の繰り返し単位(B1)が0.1~1,000モルであるネットワークポリマー。
(3)炭素-炭素二重結合を1又は2個有する重合性モノマーが、(メタ)アクリル化合物であることを特徴とする(2)に記載のネットワークポリマー。
(4)(メタ)アクリル化合物が 式(III)
【化3】
(式中、R3は水素原子又はメチル基を示し、R4は C1~C10のアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基、(C3~C8)シクロアルキル(C1~C10)アルキル基、C6~C10のアリール基、(C6~10)アリール(C1~C10)アルキル基又はヘテロ環基を示し、xは1~20のいずれかの整数を示す)で表わされる化合物、及び式(IV)
【化4】
(式中、R5は水素原子又はメチル基を示し、yは1~20のいずれかの整数を示す)で表わされる化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(3)に記載のネットワークポリマー。
(5)式(II)
【化5】
(式中、各R1は、それぞれ独立して、C1~C10アルキル基を示し、各R2は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、各mは、それぞれ独立して、0~10のいずれかの整数、nは1~10のいずれかの整数を示す。)で表わされる繰り返し単位(A)の少なくとも1種、及びSH基を2個以上有する架橋性化合物由来の繰り返し単位(B2)の少なくとも1種を有し、
式(II)で表わされる繰り返し単位(A)とSH基を2個以上有する架橋性化合物由来の繰り返し単位(B2)がチオール-エン反応により結合し、
式(II)で表わされる繰り返し単位(A)1モルに対してSH基を2個以上有する架橋性化合物由来の繰り返し単位(B2)が0.01~100モルであるネットワークポリマー。
(6)SH基を2個以上有する架橋性化合物が、SH基を2~6個有する化合物であることを特徴とする(5)に記載のネットワークポリマー。
【発明の効果】
【0007】
本発明のローダミン骨格を有するネットワークポリマーは、ホロクロミズム(pH変化によって色調が変化する現象)機能を示すほか、以下のメカノクロミズム(機械的な刺激によって色調が変化する現象)機能を示す。
すなわち、実施例に示すように、本発明のネットワークポリマーを加圧することによりポリマーの色調が変化し、その後、加熱することにより元の色調に戻り、さらにそれを繰り返すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の詳細について説明する。
(1)ローダミン誘導体
本発明のネットワークポリマーの製造に使用されるローダミン誘導体は、式(I)
【化6】
で表わされる。
式中、各Rは、それぞれ独立して、C1~C6アルキル基を示し、各R2は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、各mは、それぞれ独立して、0~10のいずれかの整数、nは1~10のいずれかの整数を示す。
「C1~C6アルキル基」は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
【0009】
式(I)で表わされるローダミン誘導体は、例えば、以下の工程を経て製造することができる。
(第1工程)
【化7】
【0010】
(上記反応式中、R1は式(I)におけるR1と同じ定義である)
溶媒中で、塩基の存在下で、ジアルキルアミノフェノール(I-1)とフタル酸無水物を反応させて、2-(4-ジアルキルアミノー2-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸(I-2)を製造する。
溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、ニトロメタン、アセトン、酢酸エチル、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン等を単独で又は混合物として使用できる。
塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属類等を使用できる。
反応条件は、溶媒により異なるが、通常、80~140℃において、1時間~2日である。
【0011】
(第2工程)
【化8】
【0012】
(上記反応式中、R1は式(I)におけるR1と同じ定義である)
溶媒中又は溶媒を使用しないで、第1工程で得た化合物(I-2)とレゾルシノールを、酸の存在下で反応させて、化合物(1-3)を製造する。
溶媒としては、例えば、トリフルオロ酢酸、ジクロロメタン、クロロホルム等を単独で又は混合物として使用できる。
酸としては、例えば、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等を使用できる。
反応条件は、溶媒の有無、溶媒の種類により異なるが、通常、40~120℃において5時間~3日である。
【0013】
(第3工程)
【化9】
【0014】
(上記反応式中、R1及びnは、式(I)におけるR1及びnと同じ定義である)
溶媒中で、第2工程で得た化合物(I-3)とアミノアルコール(I-4)を反応させて化合物(I-5)を製造する。
溶媒としては、例えば、エタノール、プロパノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン等を単独で又は混合物として使用できる。
反応条件は、溶媒の種類により異なるが、通常、室温~140℃において、5時間~3日である。
【0015】
(第4工程)
【化10】
【0016】
(式(I-6)におけるmは、式(I)におけるmと同じ定義である)
溶媒中、塩基の存在下で、第3工程で得られた化合物(I-5)と酸クロライド化合物(I-6)を反応させてローダミン誘導体(I)を製造する。
溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタンを単独で又は混合物として使用できる。
塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン等の有機アミン類、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属等を使用できる。
反応条件は、溶媒の種類により異なるが、0~110℃において、1時間~3日である。
【0017】
前記の各反応で得られた中間体及び目的物は、有機合成化学で常用されている精製法、例えば、ろ過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶等により単離、精製することができる。
【0018】
(2)ネットワークポリマー
本発明のネットワークポリマーは、上記ローダミン誘導体(I)に由来する繰り返し単位を有する、2種のネットワークポリマー(P1)及び(P2)である。
1)ネットワークポリマー(P1)
1-1)構造
ネットワークポリマー(P1)は、下記の構造を有する。
式(II)
【化11】
(式中、各R1は、それぞれ独立して、C1~C10アルキル基を示し、各R2は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、各mはそれぞれ独立して0~10のいずれかの整数、nは1~10のいずれかの整数を示す。)で表わされる繰り返し単位(A)の少なくとも1種、及び炭素-炭素二重結合を1又は2個有する重合性化合物由来の繰り返し単位の(B1)の少なくとも1種を有する。
ここで、R1のC1~C10アルキル基としては、式(I)におけるR1のC1~C10アルキル基と同様のものを挙げることができる。
【0019】
ネットワークポリマー(P1)は、式(I)で表わされるローダミン誘導体と炭素-炭素二重結合を1又は2個有する重合性モノマーとが、それらの化合物の有する炭素-炭素二重結合同士の付加重合により結合した共重合体であり、繰り返し単位(A)同士の結合、繰り返し単位(B)同士の結合、及び、繰り返し単位(A)と(B)の結合が組合わされた、架橋構造を有する共重合体である。
【0020】
式(II)で表わされる繰り返し単位(P1)と炭素-炭素二重結合を1又は2個有する重合性モノマー由来の繰り返し単位(B1)との比は、特に制限はないが、繰り返し単位(A)1モルに対して、繰り返し単位(B1)を0.1~1,000モル、好ましくは1~500モルである。
本発明のネットワークポリマー(P1)の分子量は、メカノクロミズム等のポリマー材料として使用し得る限り、適宜選択し得るが、ネットワークポリマー(P1)は不溶、不融であるため、分子量の測定は困難である。
【0021】
1-2)炭素-炭素二重結合を1又は2個有する重合性化合物
炭素-炭素二重結合を1又は2個有する重合性化合物は、式(I)で表わされるローダミン誘導体以外の重合性の炭素-炭素二重結合を有する化合物であれば、特に制限はないが、(メタ)アクリル化合物、ビニルエステル化合物、スチレン化合物、アリル化合物、マレイミド化合物等の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。特に、(メタ)アクリル化合物の1種又は2種以上の混合物が好ましい。
混合物で使用する場合、目的に応じて、適宜配合割合を選択することができる。たとえば、(メタ)アクリル化合物として、炭素-炭素二重結合を1個有する(メタ)アクリル化合物と炭素-炭素二重結合を2個有する(メタ)アクリル化合物を混合して用いる場合は、それらの配合割合は、特に制限はないが、通常、モル比で1:10~10:1の範囲である。
【0022】
(メタ)アクリル化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
(炭素-炭素二重結合を1個有する(メタ)アクリル化合物)
炭素-炭素二重結合を1個有する(メタ)アクリル化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヒドロキシ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェニルポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等。
【0023】
好ましくは、式(III)
【化12】
(式中、R3は水素原子又はメチル基を示し、R4はC1~C10のアルキル基、C3~C8のシクロアルキル基、(C3~C8)シクロアルキル(C1~C10)アルキル基、C6~C10のアリール基、(C6~10)アリール(C1~C10)アルキル基又はヘテロ環基を示し、xは1~20のいずれかの整数を示す)で表わされる(ポリ)エチレングリコール基を有する(メタ)アクリレート化合物である。
【0024】
ここで、「C1~C10のアルキル基」としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
「炭素数3~8のシクロアルキル基」としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
「(C3~C8)シクロアルキル(C1~C10)アルキル基」としては、シクロプロピルメチル基、シクロプロピルプロピル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基等が挙げられる。
「C6~C10のアリール基」は、単環又は多環のアリール基を意味し、多環アリール基の場合は、完全不飽和に加え、部分飽和の基も包含する。例えばフェニル基、ナフチル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基、テトラリニル基等が挙げられる。
「(C6~C10)アリール(C1~C10)アルキル基」としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフタレン-1-イルメチル基、ナフタレン-2-イルエチル基、1-ナフタレン-2-イル-n-プロピル基、インデン-1-イルメチル基等が挙げられる。
「ヘテロ環基」は、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子を1~4個有する5~7員の芳香族複素環、飽和複素環、不飽和複素環又はこれらの複素環とベンゼン環が縮合した縮合複素環を意味し、例えば、フラン-2-イル基、チオフェン-2-イル基、ピロ-ル-1-イル基、ピリジン-2-イル基、ピラジン-2-イル基、ピリミジン-2-イル基、1,3-ベンゾジオキソール-4-イル基、2,3-ジヒドロベンゾフラン-4-イル基、ベンゾフラン-2-イル基、インドール-1-イル基、イミダゾール-4-イル基、ピラゾール-1-イル基、チアゾール-2-イル基、オキサゾール-2-イル基、ピロリジン-3-イル基、ベンゾイミダゾール-1-イル基、ベンゾオキサゾール-4-イル基、インドリン-4-イル基、インドリン-5-イル基、モルホリン-4-イル基、ピペラジン-2-イル基、ピペリジン-2-イル基、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-5-イル基等が挙げられる。
【0025】
(炭素-炭素二重結合を2個有する(メタ)アクリル化合物)
炭素-炭素二重結合を2個有する(メタ)アクリル化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
2,2-ビス(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(3-(メタ)アクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)-2(4-(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2(4-(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)-2-(4-(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート、1,2-ビス(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)エチル等。
【0026】
好ましくは、式(IV)
【化13】
(式中、R5は水素原子又はメチル基を示し、yは1~20のいずれかの整数を示す)で表わされる(ポリ)エチレングルコール基を有するジ(メタ)アクリレート化合物である。
【0027】
その他の炭素-炭素二重結合を1又は2個有する重合性モノマーとしては、以下の化合物が挙げられる。
スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン化合物;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル化合物;
アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリアリル(イソ)シアヌレート、イソ(テレ)フタル酸ジアリル、イソシアヌル酸ジアリル、マレイン酸ジアリルトリス(2-アクリロイルオキシエチレン)イソシアヌレート等のアリル化合物;
マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物等
【0028】
1-3)製法
ネットワークポリマー(P1)は、上記式(I)で表わされるローダミン誘導体の少なくとも1種と炭素-炭素二重結合を1又は2個有する重合性化合物の少なくとも1種とを反応器内あるいはプレート上で付加重合することにより製造される。
式(I)で表わされるローダミン誘導体と炭素-炭素二重結合を1又は2個有する重合性化合物との配合比は、特に制限はないが、ローダミン誘導体1モルに対して、炭素-炭素二重結合を1又は2個有する重合性化合物を1~1,000モル、好ましくは10~500モル使用する。
原料化合物の添加方法としては、ローダミン誘導体と炭素-炭素二重結合を1又は2個有する重合性化合物とを同時に混合して重合すればよい。
重合は、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等の重合方法が可能であるが、通常はラジカル重合である。
本発明に用いる重合用溶媒としては、特に制限されるものではなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン等のハロゲン置換炭化水素類;ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;メタノール、エタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール誘導体類;等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
ラジカル重合は、光照射することにより反応器内あるいはプレート上で光重合を行うことができる。これら光照射による重合は不活性雰囲気下で行っても良いし、通常の大気下で実施してもかまわない。ラジカル重合の場合、必要に応じて光重合開始剤を使用する。
光は、例えば、紫外線、可視光、X線、電子線等を用いることが出来るが、紫外線を用いることが好ましい。
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン類;
ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、過酸化ベンゾイル等の過酸化物類;
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等の-ヒドロキシアルキルフェノン類;
2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1等のα-アミノアルキルフェノン類;
イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン化合物類;
2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のリン酸エステル類;
1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のアシルオキシム類等が挙げられる。これらは1種単独で、或いは、2種以上を混合して使用することができる。
重合時間は特に限定されないが、通常、30分~6時間程度であり、重合温度は、特に限定されないが、通常、室温~60℃程度である。
【0030】
2)ネットワーク(P2)
2-1)構造
ネットワークポリマー(P2)は、
式(II)
【化14】
(式中、各R1は、それぞれ独立して、C1~C10アルキル基を示し、各R2は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、各mは、それぞれ独立して、0~10のいずれかの整数、nは1~10のいずれかの整数を示す。)で表わされる繰り返し単位(A)、及びSH基を2個以上有する架橋性化合物由来の繰り返し単位(B2)を有する。
ここで、RのC1~C10アルキル基としては、式(I)におけるRのC1~C10アルキル基と同様のものを挙げることができる。
【0031】
ネットワークポリマー(P2)は、式(I)で表わされるローダミン誘導体とSH基を2個以上有する架橋性化合物とが、式(I)で表わされるローダミン誘導体の有する炭素-炭素二重結合とSH基を2個以上有する架橋性化合物のSH基とのチオール-エン反応により結合し、SH基を2個以上有する架橋性化合物繰り返し単位(B2)の数だけ多分岐点を有する共重合体である。
【0032】
式(II)で表わされる繰り返し単位(A)とSH基を2個以上有する架橋性化合物由来の繰り返し単位(B2)との比は、特に制限はないが、繰り返し単位(A)1モルに対して、繰り返し単位(B2)を0.01~100モル、好ましくは0.1~10モルである。
本発明のネットワークポリマー(P2)の分子量は、メカノクロミズム等のポリマー材料として使用し得る限り、適宜選択し得るが、ネットワークポリマー(P1)は不溶、不融でるため、分子量の測定は困難である。
【0033】
2-2)SH基を2個以上有する架橋性化合物
SH基を2個以上有する架橋性化合物は、O-、-S-、-CO-等の基を有していてもよい直鎖又は分岐状の炭化水素化合物、アリール化合物、又は複素環化合物に、SH基を2個以上有する化合物であればよく、好ましくはSH基を2~10個、さらに好ましくは2~6個有する化合物の1種又は2種以上の混合物である。
SH基を2個以上有する架橋性化合物としては、-具体的には、以下の化合物が挙げられる。
(SH基を2個有する化合物)
1,3-プロパンジチオール、1,4-ブタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、2,5-ヘキサンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,9-ノナンジチオール、3,6-ジオクサ-1,8-オクタンジチオール、3,7-ジチア-1,9-ノナンジチオール、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジメルカプトベンゼン、1,2-ジ(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ジ(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ジ(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ジメルカプト-5-メチル-ベンゼン、4,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、1,4-ビス(2-メルカプトエチル)ベンゼン等。
【0034】
(SH基を3個有する化合物)
チオシアヌル酸、トリメルカプトベンゼン、2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)等。
(SH基を4個以上有する化合物)
ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、チオール基を有する多官能性ポリマー等。
【0035】
2-3)製法
チオールエン反応は、重合開始剤の存在下、加熱又は光照射をしながら行われる。
重合開始剤としては、ラジカル重合によりネットワークポリマー(P1)を製造する際に使用される重合開始剤と同様のものを使用することができる。
チオールエン反応は、溶媒を使用しないで行うことができるが、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、ネットワークポリマー(P1)を製造する際に使用される重合用溶媒と同様のものを使用することができる。
光は、例えば、紫外線、可視光、X線、電子線等を用いることが出来るが、紫外線を用いることが好ましい。
反応時間は特に限定されないが、通常、5分~6時間程度であり、反応温度は、特に限定されないが、通常、0~60℃程度である。
【0036】
3)ネットワークポリマーの使用形態
本発明のネットワークポリマーは、ゲル、フィルム、顆粒等の形態で使用することができる。また、本発明のネットワークポリマーの機能を損なわない限り、ゲル、フィルム、顆粒等の添加剤として知られている有機化合物、無機化合物、ポリマー等と併用することができる。
【実施例
【0037】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明の技術的範囲はこれ等の実施例に限定されない。
[実施例1] ローダミン誘導体の合成
本発明の式(I)で表わされるローダミン誘導体であるRh-UC及びRh-MACの2種を以下の工程により合成した。
1)2- (4-Diethylamino-2-hydroxybenzoyl) benzoic acid (CDHB) の合成
【化15】
ナスフラスコに3-Diethylaminophenol (4.16 g, 30.0 mmol) と Phthalic anhydride (4.67 g, 34.5 mmol) のトルエン溶液を3時間還流し、60 ℃で35 wt% NaOH水溶液を加え、6時間還流した。混合溶液をH2O (300 mL) に注ぎ希釈し、0 ℃で濃HClを加え酸性化し、室温で2時間撹拌した。その後、吸引濾過を行い、目的物を得た。
(収量 : 3.53 g (11.3 mmol), 収率: 37.5 %, 淡紫色固体, m.p. 205 - 207 ℃)
1H NMR (δ in ppm from TMS in DMSO-d6) : 13.08 (s, 1H, -COOH), 12.57 (s, 1H, -OH), 7.97 (d, J = 7.2 Hz, 1H, Ar-H), 7.66 - 7.60 (m, 2H, Ar-H), 7.39 (d, J = 7.2 Hz, 1H, Ar-H), 6.80 - 6.78 (m, 1H, Ar-H), 6.17 (d, J= 9.2 Hz, 1H, Ar-H), 6.08 (s, 1H, Ar-H), 3.37 (q, J = 6.4 Hz, 4H, -N-CH 2 - ), 1.09 (t, J = 6.2 Hz, 6H, -CH2-CH 3 ).
【0038】
2)2- (4-Diethylamino-2-hydroxybenyl) benzoic (DER) の合成
【化16】
CDHB (1.57 g, 5.00 mmol) とResorcinol (0.550 g, 5.00 mmol) のトリフルオロ酢酸(10 mL) 溶液を90 ℃で12時間還流した。これを蒸留し、クロロホルムで抽出、飽和NaCl水溶液で洗浄、無水MgSO4で乾燥後濃縮することで赤橙色の固体を得た。濃縮液は、シリカゲルクロマトグラフィー (ジクロロメタン : n-ヘキサン : メタノール = 5 : 5 : 1) により精製を行い、目的物を得た。
(収量 : 1.26 g (3.25 mmol), 収率 : 65.1 %, 赤橙色固体)
1H NMR (δ in ppm from TMS in DMSO-d6) : 8.13 (d, J = 7.6 Hz, 1H, Ar-H), 7.91 - 7.72 (m, 2H, Ar-H), 7.39 (d, 1H, Ar-H), 7.05 - 6.72 (m, 6H, Ar-H), 3.55 (d, J = 6.8 Hz, 4H, -N-CH 2 -), 1.29 - 1.10 (m, 6H, -CH2-CH 3 ).
【0039】
3)Rh-OHの合成
【化17】
DER (0.387 g, 1.00 mmol) と2-aminoethanol (1.91 g, 31.3 mmol) のEtOH (10 mL) 溶液を48時間還流した。濃縮後、クロロホルムを加え、飽和NaCl水溶液で洗浄、無水Na2SO4で乾燥後濃縮することで橙色の固体を得た。濃縮液は、シリカゲルクロマトグラフィー (ジクロロメタン : n-ヘキサン : メタノール = 5 : 5 : 1) により精製を行い、目的物を得た。
(収量 : 0.139g (0.323 mmol), 収率 : 32.4 %, 白色固体)
1H NMR (δ in ppm from TMS in DMSO- d6) : 9.87 (d, J = 3.3 Hz, 1H, Ar-OH), 7.78 (d, J = 3.4 Hz, 1H, Ar-H), 7.50 (d, J = 3.7 Hz, 2H, Ar-H), 7.01 (d, J = 4.1 Hz, 1H, Ar-H), 6.60 (s, 1H, Ar-H), 6.38 (d, J = 27.7, 5H, Ar-OH), 4.54 (d, J = 3.3 Hz, 1H, -CH2-CH 2 -OH), 3.32 (d, J = 3.5 Hz, 4H, -N-CH 2 -CH2-), 3.10 - 2.88 (m, 4H, -N-CH 2 -), 1.08 (d, J = 6.5 Hz, 6H, -CH2-CH 3 ).
【0040】
4)Rh-UCの合成
【化18】
Rh-OH (0.181 g, 0.420 mmol) のdry THF (5 mL) 溶液にトリエチルアミン (0.206 mL, 1.47 mmol)、10-Undecenoyl Chloride (0.255 g, 1.26 mmol) の順で加え室温で4時間撹拌した。その後、飽和NaHCO3水溶液を加え、酢酸エチルで抽出、飽和NaCl水溶液で洗浄、無水MgSO4で乾燥後濃縮することで橙赤色の固体を得た。その後、カラムクロマトグラフィー (酢酸エチル : クロロホルム = 1 : 3) で精製し目的物を得た。
(収量 : 0.163 g (0.213 mmol), 収率 : 50.8 %, 無色粘性液体)
1H NMR (δ in ppm from TMS in CDCl3) : 7.95 - 7.89 (m, 1H, Ar-H), 7.49 - 7.43 (m, 2H, Ar-H), 7.06 - 7.01 (m, 1H, Ar-H), 6.98 (d, 1H, Ar-H), 6.70 - 6.65 (m, 2H, Ar-H), 6.49 - 6.27 (m, 3H, Ar-H), 5.86 - 5.75 (m, 1H, -CH=CH2), 5.03 - 4.89 (m, 2H, -CH=CH 2 ), 3.81 (t, 2H, -O-CH 2 -CH2-), 3.44 - 3.38 (m, H, -CH2-CH 2 -N-), 3.38 - 3.29 (m, 4H, -N-CH 2 -), 2.54 (t, 4H, O=C-CH 2 -), 2.36 - 1.14 (m, 34H, alkyl).
【0041】
5)Rh-MACの合成
【化19】
Rh-OH (0.199 g, 0.462 mmol) のdry THF溶液にトリエチルアミン (0.226 mL, 1.62 mmol)、Methacryloyl Chloride (0.145 g, 1.39 mmol) の順で加え室温で4時間撹拌した。その後、飽和NaHCO3水溶液を加え、酢酸エチルで抽出、飽和NaCl水溶液で洗浄、MgSO4で乾燥後濃縮することで橙赤色の固体を得た。得られた固体の1H NMRを測定し、カラムクロマトグラフィー (酢酸エチル : クロロホルム = 1 : 29) で精製し目的物を得た。
(収量 : 0.113 g (0.199 mmol), 収率 : 43.3 %, 無色粘性液体)
1H NMR (δ in ppm from TMS in CDCl3) : 7.95 - 7.91 (m, 1H, Ar-H) , 7.50 - 7.42 (m, 2H, Ar-H), 7.09 - 7.0 (m, 1H, Ar-H), 6.99 - 6.95 (m, 1H, Ar-H), 6.72 - 6.67 (m, 2H, Ar-H), 6.51 - 6.32 (m, 3H, Ar-H), 6.32 - 6.26 (m, 1H, -CH=CH 2 ) 5.98 (d, 1H, -CH=CH 2 ), 5.78 (t, 1H, -CH=CH 2 ), 5.49 (t, 1H, -CH=CH 2 ), 3.87 - 3.78 (m, 2H, -O-CH 2 -CH2-), 3.56 - 3.433 (m, 2H, -CH2-CH 2 -N-), 3.38 - 3.29 (m, 4H, -N-CH 2 -), 1.88 - 1.11 (m, 12H, alkyl).
【0042】
[実施例2]ネットワークポリマー(P1)の合成
1)Rh-UCネットワークポリマーの合成
実施例1で得たRh-UC、M-90G(メトキシポリエチレングリコール(n=9)メタクリレート、新中村工業株式会社製)、A-600(ポリエチレングリコール(n=14)ジメタクリレート、新中村工業株式会社製)、及びベンゾフェノンを、表1に示す量で混合した後、当該溶解液をパスツールで数滴ほどガラスプレートに滴下し、30分間UV照射することでネットワークポリマーを得た。
【0043】
【表1】
【0044】
2)Rh-MACネットワークポリマーの合成
実施例1で得たRh-MAC、M-90G(メトキシポリエチレングリコール(n=9)メタクリレート、新中村工業株式会社製)、A-600(ポリエチレングリコール(n=14)ジメタクリレート、新中村工業株式会社製)、及びベンゾフェノンを、表2に示す量で混合した後、当該溶解液をパスツールで数滴ほどガラスプレートに滴下し、30分間UV照射することでネットワークポリマーを得た。
【0045】
【表2】
【0046】
(クロミズム特性の測定)
実施例2で得られたネットワークポリマー(Rh-UCネットワークポリマー及びRh-MACネットワークポリマー)について、常法に従ってフォトクロミズムを測定した。その結果、ローダミン誘導体の含量に関係なくフォトクロミズムを示さなかった。
また、Rh-UCネットワークポリマーを、トリフルオロ酢酸、塩酸、酢酸等の酸性蒸気雰囲気下においてハロクロミズム(pHによる光物性の変化)を測定した。その結果、強酸であるトリフルオロ酢酸の雰囲気下ではポリマーの色、蛍光が早く変化し、より弱酸の雰囲気下になるほどポリマーの色、蛍光の変化に時間がかかった。このことから、本発明のネットワークポリマー(P1)はハロクロミズムを示すことが分かった。
【0047】
[実施例3]ネットワークポリマー(P2)の合成
実施例1で得たRh-UC、PTMP(ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネ-ト))及びベンゾフェノンを、表3に示す量で、ジクロロメタンに溶解した後、当該溶解液をパスツールで数滴ほどガラスプレートに滴下し、UV照射することで黄色透明のネットワークポリマーを得た。
【0048】
【表3】
【0049】
重合時間を変化させたが、ネットワークポリマーに変化は見られず、どちらも柔軟性のあるネットワークポリマーが得られた。
【0050】
(メカノクロミズム特性の測定)
得られたネットワークポリマーをすり潰すと、黄色透明のネットワークポリマーは赤色粉末に変化し、橙色の蛍光を示した (B)。また、すり潰した状態の赤色固体を100℃で加熱すると赤色固体が無色の固体に変化し、蛍光も変化した (C)。さらに、20分、1時間、2時間と100℃で加熱したが色の変化が見られなかった。
加熱後のネットワークポリマーを再度すり潰すと(B) の状態に戻ることを確認し、再度加熱すると (C) の状態に完全に戻ることを確認した。これらの結果から、(B) → (C) → (B) → ・・・のサイクルを繰り返し、以下の式に示す可逆的反応に基づくメカノクロミズムを示すことが分かった。
【化20】
【産業上の利用可能性】
【0051】
道路・港湾・上下水道・公園・公営住宅・病院・学校など、産業や生活の基盤となる公共施設等は、高度経済成長期に集中的に整備されたが、現在ではその老朽化が急速に進行している。それに伴い、コンクリートのひび割れ検査が増加している。コンクリートのひび割れ検査は、目視検査や打音検査、超音波探傷検査、磁気探傷検査等の方法で実施されているため膨大なコストや作業者に熟練が要求される。そこで簡便で明確に黙認できる検知技術が強く望まれている。
本発明の新規ネットワークポリマーを施設等の応力が掛かる所に張り付けることにより、コンクリート等のひび割れを点検する際に、コンクリートにひび割れが発生した際に内部応力によってローダミン骨格が異性化し、色変化することでひび割れを簡易に検出・診断するための「歪みセンサー」して有用である。