(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】流体吐出具および包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20220201BHJP
B65D 47/34 20060101ALI20220201BHJP
B65D 77/30 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
B65D83/00 K
B65D47/34 110
B65D77/30 C
(21)【出願番号】P 2017165709
(22)【出願日】2017-08-30
【審査請求日】2020-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】710006932
【氏名又は名称】株式会社パックプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100114764
【氏名又は名称】小林 正樹
(72)【発明者】
【氏名】北古賀 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】中田 尚宏
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/126057(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3067575(JP,U)
【文献】特開2013-209098(JP,A)
【文献】特開2002-46754(JP,A)
【文献】特開2005-88926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
B65D 77/30
B65D 47/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する表裏一対の壁面部材と、前記壁面部材の下側縁部に設けられる底面部材とからなり、
前記壁面部材の上側縁部がコネクタを除く部分において互いにヒートシールされ、かつ前記壁面部材の両側縁部が互いにヒートシールされるとともに、前記壁面部材の下側縁部と前記底面部材の周縁部とがヒートシールされ、前記壁面部材と前記底面部材により囲まれた流体収容部に所定の流体が収容され、
前記流体収容部の幅80mm~205mm、前記流体収容部の高さ75mm~225mm、前記底面部材の最大高さ25mm~50mmに形成された可撓性の包装袋と、
前記包装袋の縁部において前記流体収容部に突出する態様で設けられたコネクタと、
前記コネクタに連結される吐出部材とを備え、
前記吐出部材により前記流体収容部に収容されている流体を吸引しながら吐出する過程において、
想定される流体の閉塞ラインの最下点とコネクタの最大径の両側部とを結ぶ二等辺三角形に近づくように、前記包装袋の前記壁面部材が互いに接近していくとともに、前記包装袋の前記底面部材が前記流体収容部に向けて内側に折り返されながら前記包装袋が変形していく流体吐出具であって、
前記コネクタは、
下端部が前記包装袋の底面部材の折り返しの最大高さ位置よりも上方に位置するとともに、
前記包装袋が変形していく際、前記包装袋の前記壁面部材同士が密着することにより前記コネクタの下方で生じる流体の閉塞ラインの最下点が前記包装袋の前記底面部材の折り返しの最大高さ位置の10mm上方の高さ位置よりも下方に位置するように、前記コネクタの径および長さが形成されていることを特徴とする流体吐出具。
【請求項2】
対向する表裏一対の壁面部材と、前記壁面部材の下側縁部に設けられる底面部材とからなり、
前記壁面部材の上側縁部がコネクタを除く部分において互いにヒートシールされ、かつ前記壁面部材の両側縁部が互いにヒートシールされるとともに、前記壁面部材の下側縁部と前記底面部材の周縁部とがヒートシールされ、前記壁面部材と前記底面部材により囲まれた流体収容部に所定の流体が収容される可撓性の包装袋と、
前記包装袋の縁部において前記流体収容部に突出する態様で設けられたコネクタと、
前記コネクタに連結される吐出部材とを備え、
前記吐出部材により前記流体収容部に収容されている流体を吸引しながら吐出する過程において、
想定される流体の閉塞ラインの最下点とコネクタの最大径の両側部とを結ぶ二等辺三角形に近づくように、前記包装袋の前記壁面部材が互いに接近していくとともに、前記包装袋の前記底面部材が前記流体収容部に向けて内側に折り返されながら前記包装袋が変形していく流体吐出具であって、
前記コネクタは、前記包装袋の前記壁面部材同士が密着することにより前記コネクタの下方で生じる流体の閉塞ラインの最下点が前記包装袋の前記底面部材の折り返しの最大高さ位置よりも下方に位置するように、前記コネクタの径および長さが形成されていることを特徴とする流体吐出具。
【請求項3】
流体の閉塞ラインの位置は、下式で表される請求項1または請求項2に記載の流体吐出具。
O=t/2÷tan(θ/2)
O:閉塞ラインの想定位置(コネクタの下端部から流体の閉塞ラインの最下点までの距離)
t:前記流体収容部における前記コネクタの包装袋の厚み方向(壁面部材に垂直な方向)の最大径
θ:流体の閉塞ラインの最下点と前記コネクタの最大径tの両側部を結ぶ角度
【請求項4】
前記コネクタは、下端部にプラグが係合可能に設けられ、
前記プラグは、前記包装袋の底面部材の折り返しの最大高さ位置より上方に位置するとともに、
流体の閉塞ラインの位置は、下式で表される請求項3に記載の流体吐出具。
O=t/2÷tan(θ/2)
O:閉塞ラインの想定位置(コネクタの下端部から流体の閉塞ラインの最下点までの距離)
t:前記流体収容部における前記コネクタ(前記プラグを含む)の包装袋の厚み方向(壁面部材に垂直な方向)の最大径
θ:流体の閉塞ラインの最下点と前記コネクタの最大径tの両側部を結ぶ角度
【請求項5】
流体の閉塞ラインの最下点と前記コネクタの最大径tの両側部を結ぶ角度θは、18度~20度である請求項3または請求項4に記載の流体吐出具。
【請求項6】
前記コネクタは、流体の閉塞ラインの最下点と前記コネクタの最大径の両側部を結ぶ線分上に前記コネクタの一部が存在する場合、当該線分上に前記コネクタの一部が存在しないように次の最大径tが選定される請求項1から請求項5のいずれかに記載の流体吐出具。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の流体吐出具に用いられることを特徴とする包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性の包装袋に収容されている流体を吐出部材により吐出する流体吐出具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧品、シャンプー、せっけん、パーマ液などの各種流体を扱う商品において、一般に剛性を有するプラスチック製の包装容器が使用されていた。そして、地球に対する環境面の配慮から、プラスチック製の包装容器から流体をすべて吐出したあとにおいても、プラスチック製の包装容器を廃棄することなく維持しておき、詰め替え用の可撓性の包装袋に収容されている流体をプラスチック製の包装容器に詰め替えることが行われている。
【0003】
ところが、これだと、流体の詰め替え時や詰め替えた後において、流体が空気に触れることになるため、流体が劣化する虞があった。また、プラスチック製の包装容器を長期間に亘って使用し続けると、包装容器において流体が付着したり、カビが生えたり、摩耗したりして、包装容器の外観が次第に損なわれるため、使用者にとって必ずしも気持ちの良いものではなかった。
【0004】
そこで、近年、可撓性の包装袋を詰め替え用として使用するのではなく、商品の本体として使用することが行われている。具体的に説明すると、この包装袋は、対向する表裏一対の壁面部材と、壁面部材の下側縁部に設けられる底面部材とからなり、壁面部材と底面部材により囲まれた流体収容部に所定の流体が収容される可撓性のスタンディングパウチである。そして、包装袋の縁部において流体収容部に突出する態様で設けられたコネクタと、コネクタに連結される吐出部材とを備える。これによれば、流体が空気に全くまたはほとんど触れないため、流体の劣化を防止することができる。また、包装袋から流体をすべて吐出したあとは、新しい包装袋に交換すればよいため、常に新しくて綺麗な状態を維持することができる。
【0005】
しかしながら、例えば
図10(a)に示す可撓性の包装袋1の場合、包装袋1に収容されている流体を吐出部材により吐出していく過程において、包装袋の内部に空気が入らないことから、
図10(b)~(d)に示すように、表裏の壁面部材11、11が互いに接近していくとともに、底面部材12が流体吐出部13に向けて内側に幅方向に沿って折り返されながら変形していき、
図10(e)に示すように、最終的には吐出部材2の下方で壁面11、11同士の一部が互いに密着することにより流体の通り道を閉塞する閉塞ラインLが生じて、包装袋1の内部(特に底部)に流体が残留するという問題があった。
【0006】
そこで、従来、可撓性の包装袋を保持する箱状容器を設けて、包装袋の壁面同士が互いに密着することを阻害しながら変形するように工夫したものが提案されている(特許文献1、2参照)。ただ、これだと、箱状容器を使用し続けなければならず、結局、箱状容器が汚れて外見が損なわてしまうものであった。
【0007】
また、一方で、食品の分野では、可撓性の包装袋が多用されており、包装袋における流体の通り道を閉塞するという問題を解決するために、口栓やスパウトの先端部のみならず、胴体部にも複数の吸引口を形成するなどして各種工夫が試みられている(特許文献3~6参照)。ただ、これらの構造は、いずれも人の手で包装袋を圧縮しながら、人の口で流体を吸引する構造であるため、吐出部材により包装袋の内部に空気を入れることなく流体を吐出する構造に適用することは困難であった。
【0008】
もとより、包装袋の内部において、コネクタの下端部が底面部材の近くに位置するようにコネクタを長く形成することも考えられるが、これだとコネクタが長くなった分だけ流体の容量が減ったり、コネクタの材料費が嵩むといった問題が生じる。しかも、仮に包装袋の底部付近の流体の残留量を減少させることができたとしても、使用態様によっては包装袋の上部付近に新たに流体が残留する虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-209098号公報
【文献】特開平5-77844号公報
【文献】実公昭63-76653号公報
【文献】特開2008-143534号公報
【文献】特開2008-308193号公報
【文献】特許第4921944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の技術的背景に鑑みてなされたものであり、包装袋に収容されている流体を簡単かつ確実に吐出することができ、流体の残留量を減少させることが可能な流体吐出具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人は、様々な大きさの包装袋およびコネクタについて、流体の残留量に関する実験を種々繰り返して行った結果、包装袋に生じる流体の閉塞ラインの位置が流体の残留量に影響することを発見し、流体の閉塞ラインの位置が包装袋のどの部分に生じれば流体の残留量が問題ない範囲まで減少するかを発明するとともに、閉塞ラインの位置がコネクタの径によって規定されることを発明するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、上記目的を達成するために、対向する表裏一対の壁面部材と、前記壁面部材の下側縁部に設けられる底面部材とからなり、前記壁面部材と前記底面部材により囲まれた流体収容部に所定の流体が収容される可撓性の包装袋と、前記包装袋の縁部において前記流体収容部に突出する態様で設けられたコネクタと、前記コネクタに連結される吐出部材とを備える。前記吐出部材により前記流体収容部に収容されている流体を吸引しながら吐出する過程において、前記包装袋の壁面部材が互いに接近していくとともに、底面部材が前記流体収容部に向けて内側に折り返されながら前記包装袋が変形していく流体吐出具である。前記コネクタは、下端部が前記包装袋の底面部材の折り返しの最大高さ位置よりも上方に位置するとともに、前記包装袋が変形していく際、前記包装袋の壁面部材同士が密着することにより前記コネクタの下方で生じる流体の閉塞ラインの最下点が前記包装袋の底面部材の折り返しの最大高さ位置の10mm上方の高さ位置よりも下方に位置するように、前記コネクタの径および長さが形成されている。
【0013】
これによれば、包装袋の流体収容部においてコネクタの下方に流体の閉塞ラインが生じない、あるいは極めて生じにくい状態となるため、コネクタの下方で流体の通り道を確保し、包装袋に収容されている流体を簡単かつ確実に吐出することができる。
【0014】
また、コネクタは、前記包装袋の壁面部材同士が密着することにより前記コネクタの下方で生じる流体の閉塞ラインの最下点が前記包装袋の底面部材の折り返しの最大高さ位置よりも下方に位置するように、前記コネクタの径および長さが形成されているのが好ましい。
【0015】
また、流体の閉塞ラインの位置は、下式で表されてもよい。
【0016】
O=t/2÷tan(θ/2)
O:閉塞ラインの想定位置(コネクタの下端部から流体の閉塞ラインの最下点までの距離)
t:前記流体収容部における前記コネクタの包装袋の厚み方向(壁面部材に垂直な方向)の最大径
θ:流体の閉塞ラインの最下点と前記コネクタの最大径の両側部を結ぶ角度
【0017】
また、前記コネクタは、下端部にプラグが係合可能に設けられ、前記プラグは、前記包装袋の底面部材の折り返しの最大高さ位置より上方に位置するとともに、流体の閉塞ラインの位置は、下式で表されてもよい。
【0018】
O=t/2÷tan(θ/2)
O:閉塞ラインの想定位置(前記コネクタの下端部から流体の閉塞ラインの最下点までの距離)
t:前記流体収容部における前記コネクタ(前記プラグを含む)の包装袋の厚み方向(壁面部材に垂直な方向)の最大径
θ:流体の閉塞ラインの最下点と前記コネクタの最大径の両側部を結ぶ角度
【0019】
また、流体の閉塞ラインの最下点と前記コネクタの最大径tの両側部c、cを結ぶ角度θは、18度~20度であるのが好ましい。
【0020】
また、前記コネクタは、流体の閉塞ラインの最下点と前記コネクタの最大径の両側部c、cを結ぶ線分上に前記コネクタの一部が存在する場合、当該線分上に前記コネクタの一部が存在しないように次の最大径tが選定されるのが好ましい。
【0021】
また、本発明に係る包装袋は、上述の流体吐出具に用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、包装袋の流体収容部においてコネクタの下方に流体の閉塞ラインが生じない、あるいは極めて生じにくい状態となるため、コネクタの下方で流体の通り道を確保し、包装袋に収容されている流体を簡単かつ確実に吐出することができ、ひいては流体の残留量を減少させることが可能となる。
【0023】
よって、化粧品、シャンプー、せっけん、パーマ液などの各種流体を扱う商品において、可撓性の包装袋を使用することが可能となることから、流体が空気に全くまたはほとんど触れないため、流体の劣化を防止することができる。また、包装袋から流体をすべて吐出したあとは、新しい包装袋に交換すればよいため、常に新しくて綺麗な状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1の実施形態に係る流体吐出具の斜視図である。
【
図5】
図1の包装袋の正面断面図と流体の吐出過程を示す側面断面図である。
【
図6】第2の実施形態に係る流体吐出具の包装袋の正面断面図と流体の吐出過程を示す側面断面図である。
【
図7】第2の実施形態に係る流体吐出具の包装袋の変形例を示す側面断面図である。
【
図8】流体吐出具の検証実験の結果を示すグラフである。
【
図9】
図8の検証結果に基づく確率分布を示すグラフである。
【
図10】従来の流体吐出具の包装袋の正面断面図と流体の吐出過程を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1の実施形態>
次に、本発明に係る流体吐出具の第1の実施形態について
図1~
図5を参照しつつ説明する。なお、
図1~
図5において、図面の上側、両側、下側が流体吐出具の上側、両側、下側となる。
【0026】
本流体吐出具は、
図1に示すように、流体が収容される可撓性の包装袋1と、包装袋1の上側縁部11aに設けられた合成樹脂製の雌型コネクタ2と、該雌型コネクタ2に連結される合成樹脂製の吐出部材3とを備える。なお、流体は、化粧品、シャンプー、せっけん、パーマ液などの粘性の低いものから高いものまで各種流体が適用され得る。
【0027】
前記包装袋1は、
図2~
図4に示すように、対向する表裏一対の壁面部材11、11と、壁面部材11、11の底部の下側縁部11cに設けられる底面部材12とからなる、いわゆるスタンディングパウチと呼ばれるものである。この包装袋1は、壁面部材11、11の上側縁部11aが雌型コネクタ2を除く部分において互いにヒートシールされ、かつ壁面部材11、11の両側縁部11bが互いにヒートシールされるとともに、壁面部材11、11の下側縁部11cと底面部材12の周縁部とがヒートシールされ、壁面部材11、11と底面部材12で囲まれる空間をもって流体収容部13が形成される。
【0028】
これら壁面部材11、11と底面部材12は、可撓性の合成樹脂製のシート材から構成され、少なくとも片面にシーラント層が形成されている。壁面部材11、11と底面部材12の構成や厚みは特に限定されるものではなく、収容される流体の性状に合わせて、酸素バリア性や水蒸気バリア性等を具備した設計が適宜可能である。
【0029】
而して、流体収容部13に流体が収容される前では、表裏の壁面部材11、11が雌型コネクタ2が存在する部分を除いて互いに接した状態となされるとともに、底面部材12が流体収容部13に向けて内側に幅方向に沿って折り返された状態となされ、いわゆる襠部分が構成されている。
【0030】
また、包装袋1の流体収容部13に流体が空気を入れることなく充填されると、
図2に示すように、表裏の壁面部材11、11が互いに厚み方向に離間しながら膨らんでいくとともに、底面部材12が下方に膨らんでいき、両側縁部11bから中央部に向けて次第に下方に緩やかに湾曲しながら傾斜する態様に形成される。
【0031】
なお、
図5(a)に示すように、包装袋1の流体収容部13に流体が完全に充填された場合、壁面部材11の上側縁部11aから底面部材12の最下点dまでの距離(流体収容部13の最大高さ)はHとなされている。また、底面部材12の折り返しの最大高さ位置aから底面部材12の最下点dまでの高さ(底面部材12の折り返しの最大高さ)がDとなされている。
【0032】
前記雌型コネクタ2は、
図2~
図4に示すように、上部が包装袋1の壁面部材11、11の上側縁部11aの中央部に挟まれる態様でヒートシールされ、包装袋1の流体収容部13において底面部材12に向かって下方に突出する態様で設けられており、
図5(a)に示すように、下端部が壁面部材11の上側縁部11aから高さCで突出するとともに、包装袋1の底面部材12の折り返しの最大高さ位置aよりも上方に位置している。
【0033】
また、前記雌型コネクタ2は、内部において軸方向に延びる両端部開口の導通路21aを有しており、基端部開口21bから吐出部材3の後述の雄型コネクタ32が挿入され、導通路21aを通じて雄型コネクタ32が完全に挿入されたあと、下端部開口21cから吐出部材3の雄型コネクタ32が突出するものとなされている。
【0034】
なお、雌型コネクタ2の最適な径や長さ(下端部の位置)については後に詳述することとする。
【0035】
前記吐出部材3は、
図1に示すように、本体となるポンプ部31と、ポンプ部31の下部に設けられた雄型コネクタ32とからなる。
【0036】
前記ポンプ部31は、上側ポンプ部31aと下側ポンプ部31bを備える公知のポンプ機構であって、上側ポンプ部31aを下側ポンプ部31bに対して上下にピストン動作を行うことによって、ポンプ部31の内部が真空となる原理を利用して流体を吸引する。
【0037】
前記雄型コネクタ32は、上端部が下側ポンプ部31bの下部に固定され、ポンプ部31の軸方向に延びるように形成されている。この雄型コネクタ32は、その下端部が下端部開口21cから突出して、包装袋1の流体収容部13における所定の位置に配置される長さを有する。
【0038】
また、前記雄型コネクタ32は、雌型コネクタ2の導通路21aの内面形状に応じて円筒状に形成されており、雌型コネクタ2と連結した際、雌型コネクタ2の導通路21aの少なくとも一部に密着し、包装袋1の流体収容部13の気密性を維持するようになっている。
【0039】
また、前記雄型コネクタ32は、先端部において複数の吸引口32aが形成されるとともに、内部において軸方向に延びる図示略の流通路が形成されている。
【0040】
次に、本流体吐出具における雌型コネクタ2の最適な長さや径の設計について具体的に説明する。
【0041】
まず、ポンプ部31において上側ポンプ部31aを下側ポンプ部31bに対してピストン動作を行うと、包装袋1の流体収容部13に収容されている流体が雄型コネクタ32の吸引口32aから吸引され、雄型コネクタ32の流通路を通過したあと、ポンプ部31の吐出口31cから外部に吐出される。
【0042】
このように吐出部材3により包装袋1の流体収容部13から流体を吐出していくと、包装袋1の流体収容部13の内部に空気が入らないことから、従来であれば、
図10(b)~(d)に示すように、表裏の壁面部材11、11が互いに接近していくとともに、底面部材12が流体収容部13に向けて内側に幅方向に沿って折り返されながら変形していき、
図10(e)に示すように、最終的には吐出部材3の下方で壁面部材11、11同士の一部が互いに密着することにより流体の通り道を閉塞する閉塞ラインLが生じて、包装袋1の流体収容部13の内部(特に底部)に流体が残留するという問題があった。
【0043】
しかしながら、本実施形態に係る流体吐出具であれば、流体の閉塞ラインLの最下点bが包装袋1の底面部材12の最大高さ位置aから上方10mmよりも下方に位置するため、
図5(b)~(d)に示すように、
図5(e)に示す最終状態となるまで、少なくとも閉塞ラインLの最下点bにおいて壁面部材11同士が密着せずに閉塞しない、あるいは極めて閉塞しにくくなるため、雌型コネクタ2の下方で流体の通り道を確保し、可撓性の包装袋1に収容されている流体を簡単かつ確実に吐出することができる。
【0044】
そして、この閉塞ラインLの位置については、雌型コネクタ2の最大径と長さ(下端部の位置)によって想定され、具体的には下式で表される。
【0045】
O=t/2÷tan(θ/2)
O:閉塞ラインLの想定位置(雌型コネクタ2の下端部から流体の閉塞ラインLの最下点bまでの距離)
t:流体収容部13における雌型コネクタ2の包装袋1の厚み方向(壁面部材11に垂直な方向)の最大径
θ:流体の閉塞ラインLの最下点bと雌型コネクタ2の最大径tの両側部c、cを結ぶ角度
【0046】
また、閉塞ラインLの最下点bと雌型コネクタ2の最大径tの両側部c、cを結ぶ角度は、18度~20度の範囲内となる。
【0047】
このことから、上式で表される流体の閉塞ラインLが、底面部材12の折り返しの最大高さ位置aから10mm上方の高さ位置より下方に位置するように雌型コネクタ2の径および長さを設計すればよい。
【0048】
このように、流体の閉塞ラインLが、底面部材12の折り返しの最大高さ位置aの10mm上方の位置より下方に位置すると、事実上、少なくとも最下点bにおいて流体の閉塞ラインLが生じない、あるいは生じにくくなることについては、以下の理由が考えられる。
【0049】
すなわち、吐出部材3により包装袋1の流体収容部13から流体を吐出していくと、想定される流体の閉塞ラインLの最下点bと雌型コネクタ2の最大径tの両側部c、cと結ぶ二等辺三角形Tに近づくように、壁面部材11同士が接近していくとともに、底面部材12が内側に幅方向に沿って折り返されていく。このため、包装袋1が上記二等辺三角形Tに近似された状態においては、従来の流体吐出具であれば、
図10(e)に示すように、包装袋1の流体収容部13の底部付近に流体が多く残留することになるが、本実施形態に係る流体吐出具であれば、
図5(d)に示すように、包装袋1の流体収容部13の底部付近にはほとんど流体が残留しない。
【0050】
また、壁面部材11、11同士が接近しても、底面部材12が内側に折り返される結果、底面部材12により壁面部材11、11の密着が阻害される。例えば、想定される流体の閉塞ラインLの最下点bが底面部材12の最大高さ位置aより下方に位置すると、少なくとも閉塞ラインLの最下点bでは表裏の壁面部材11、11が互いに密着しようとしても内側に折り返された底面部材12に完全に阻害される。また想定される流体の閉塞ラインLが底面部材12の最大高さ位置aより上方に位置しても、底面部材12の折り返しの最大高さ位置aから10mm上方の高さ位置よりも下方であれば、少なくとも閉塞ラインLの最下点bでは底面部材12の折り返しの作用で壁面部材11、11の密着が阻害される。
【0051】
このように壁面部材11、11の密着による流体の閉塞ラインLが少なくとも最下点bにおいて生じることが阻害されながら、包装袋1内に収容された流体が次第に吐出されていき、最終的には、
図5(e)に示すように、流体がほとんど残留していない段階で壁面部材11、11や底面部材12がようやく密着すると考えられる。
【0052】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る流体吐出具の第2の実施形態について
図6を参照しつつ説明する。なお、以下では上記の実施形態と異なる構成についてのみ説明することとし、同一の構成については説明を省略して同一の符号を付すこととする。
【0053】
本実施形態では、雌型コネクタ2は、本体部21の下端部に所定距離を隔ててプラグ22が設けられている。このプラグ22は、雌型コネクタ2の下端部に図示略のアーム等を介して着脱自在に係合するものである。
【0054】
本流体吐出具の使用前において、プラグ22は、雌型コネクタ2の下端部に嵌るように係合し、雌型コネクタ2の下端部開口21cを閉蓋している。また、本流体吐出具の使用開始時において、プラグ22は、雄型コネクタ32の下端部に嵌るように係合し、雄型コネクタ32の挿入に伴って前記雌型コネクタ2の下端部から外れて、雌型コネクタ2の下方の所定箇所に位置するとともに、雌型コネクタ2の下端部開口21cを開放する。さらに、本流体吐出具の使用後において、
図1~
図3に示すように、プラグ22は、雄型コネクタ32の引き抜きに伴って雌型コネクタ2の下端部に嵌るように係合して、下端部開口21cを再び閉蓋する。
【0055】
而して、本実施形態においても、実施形態1と同様、流体の閉塞ラインLの最下点bが包装袋1の底面部材12の最大高さ位置aから上方10mmよりも下方に位置するため、
図6(b)~(d)に示すように、
図6(e)に示す最終状態になるまで、雌型コネクタ2の下方に流体の閉塞ラインLが生じない、あるいは極めて生じにくい状態となるため、吐出部材3の雄型コネクタ32の下方で流体の通り道を確保し、可撓性の包装袋1に収容されている流体を簡単かつ確実に吐出することができる。
【0056】
そして、この閉塞ラインLの位置については、雌型コネクタ2の最大径と長さ(下端部の位置)によって想定される。具体的には、この流体の閉塞ラインLの位置は、下式で表される。
【0057】
O=t/2÷tan(θ/2)
O:閉塞ラインLの想定位置(雌型コネクタ2の下端部から流体の閉塞ラインLの最下点bまでの距離)
t:流体収容部13における雌型コネクタ2(前記プラグ22を含む)の包装袋1の厚み方向(壁面部材11に垂直な方向)の最大径
θ:流体の閉塞ラインLの最下点bと雌型コネクタ2の最大径tの両側部c、cを結ぶ角度
【0058】
このように、閉塞ラインLの位置を算出する際、上式の雌型コネクタ2の最大径tについては、雌型コネクタ2の本体部21のみならず、雌型コネクタ2のプラグ22も含む最大径tが選定される。つまり、雌型コネクタ2の本体部21の最大径tよりも雌型コネクタ2のプラグ22の最大径tが大きい場合、当該プラグ22の最大径tが選定されることになる。
【0059】
また、雌型コネクタ2は、閉塞ラインLの最下点bと雌型コネクタ2の最大径tの両側部c、cを結ぶ線分上に雌型コネクタ2の一部が存在する場合、当該線分上に雌型コネクタ2の一部が存在しないように次の最大径t’が選定される。例えば、
図7に示すように、雌型コネクタ2の本体部21の最大径tを選定したと仮定すると、閉塞ラインLの最下点bと雌型コネクタ2の最大径の両側部c、cを結ぶ線分上に雌型コネクタ2のプラグが存在する場合、当該線分上に当該プラグ22が存在しないようにプラグ22の最大径t’が選定される。なお、このときの閉塞ラインの最下点はb’、閉塞ラインの想定位置はO’、閉塞ラインの最下点b’と最大径t’の両側部c’、c’を結ぶ二等辺三角形はT’となる。
【0060】
<検証実験>
次に本発明に係る流体吐出具について検証実験を行ったので、以下に説明することとする。
【0061】
下記(1)~(4)の4種類の流体吐出具を準備するとともに、様々な幅(流体収容部13の幅80mm~205mm)、高さ(流体収容部13の高さ75mm~225mm)、厚み(底面部材の最大高さ25mm~50mm)の包装袋1を準備した。この包装袋1は、最外層としてポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)、中間層としてアルミ箔(厚み7μm)、ポリアミドフィルム(厚み15μm)、最内層として直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(厚み100μm)を積層して作製したフィルムからなる。而して、下記(1)~(4)の雌型コネクタ2を上述の各種包装袋1に装着した複数の流体吐出具について、流体収容部13に流体を満杯に充填したあと、吐出部材3により流体を吐出していき、流体がほとんど吐出されなくなったとき(3回のプッシュ動作当たりの吐出量が1cc以下になったとき)の流体の残量率(流体収容部13の最大容量に対する流体の残留量の割合)を検証したところ、
図8に示す結果となった。
【0062】
(1)コネクタA:t=7mm、C=19.5mmの雌型コネクタ2
(2)コネクタB:t=11.4mm、C=28mmの雌型コネクタ2
(3)コネクタC:t=11.4mm、C=65mmの雌型コネクタ2
(4)コネクタD:t=11.4mm、C=35mm~75mmの範囲で調整した雌型コネクタ2
【0063】
そして、
図8に示す各プロットに基づいて、
図9に示すように、
流体の閉塞ラインLの最下点bと底面部材12の折り返しの最大高さ位置aとの距離xごとに、横軸を流体の残量率とした確率分布を作成したところ、x≦10であれば、概ね流体の残量率が問題とならない10%以下になり、x≦0(底面部材の折り返しの最大高さ以下)だと、かなり高い確率で流体の残量率が10%以下になることが判明した。このことから上述のように閉塞ラインLが底面部材12の折り返しの最大高さ位置aから10mm上方の高さ位置より下方に位置するのがよいことが確認できる。
【0064】
なお、本実施形態では、雌型コネクタ2は、下端部が包装袋1の底面部材12の折り返しの最大高さ位置aよりも上方に位置するものとしたが、雌型コネクタ2の材料のコストや包装袋1の流体収容部13の流体の収容可能な容積を考慮すると、包装袋1の流体収容部13の全高さの半分の高さ以上の位置に位置するのが好ましい。なお、包装袋1の流体収容部13の全高さとは、壁面部材11の上側縁部11a(特に雌型コネクタ2がヒートシールされている部分)から底面部材12の最下点dまでの高さを指す。
【0065】
また、想定される流体の閉塞ラインLの最下点bが包装袋1の底面部材12の折り返しの最大高さの10mm情報の高さ位置aよりも下方に位置するものとしたが、流体の閉塞ラインLをより生じにくくするために底面部材12の折り返しの最大高さ位置aより下方に位置するのが好ましい。また、想定される流体の閉塞ラインLの最下点bは、包装袋1の底面部材12の最下点dよりも上方に位置すれば、流体の閉塞ラインLを生じさせにくい状態にすることが十分可能である。
【0066】
また、包装袋1は、その大きさは特に限定されるものではないが、上述の流体の閉塞ラインLが生じにくい状態を効果的に実現するため、流体収容部13の幅が40mm~320mm、さらに好ましくは40mm~250mm、高さが70mm~350mmであって、底面部材12の折り返しの高さ(a~dの距離)が5mm~80mm、さらに好ましくは5mm~60mmがよい。
【0067】
また、コネクタとして雄型コネクタ32が挿入される雌型コネクタ2を採用したが、吐出部材3と連結するものであれば、その他のコネクタであってもよい。
【0068】
また、壁面部材11、11や底面部材12の縁部がヒートシールにより接着されるものとしたが、その他の方法により接合されてもよい。また、壁面部材11、11や底面部材12は一つの部材を折り返すことにより構成されてもよい。要は、包装袋1は、壁面部材11、11の両側部が何ら他の部材を介することなく繋がった状態となり、かつ壁面部材11、11の下端部において流体充填前に底面部材12が内側に折り返されるようにして繋がった状態となっている、いわゆるスタンディングパウチであればよい。
【0069】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1・・・包装袋
11・・・壁面部材
12・・・底面部材
13・・・流体収容部
2・・・雌型コネクタ
21・・・本体部
22・・・プラグ
3・・・吐出部材
31・・・ポンプ部
32・・・雄型コネクタ