(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】中空ガラス製品の製造方法におけるパリソン金型の潤滑
(51)【国際特許分類】
C03B 40/02 20060101AFI20220201BHJP
C03B 9/13 20060101ALI20220201BHJP
C10M 101/02 20060101ALI20220201BHJP
C10M 125/02 20060101ALI20220201BHJP
C10M 135/06 20060101ALI20220201BHJP
C10M 155/02 20060101ALI20220201BHJP
C10M 135/04 20060101ALI20220201BHJP
B05B 12/00 20180101ALI20220201BHJP
B05B 13/04 20060101ALI20220201BHJP
C10N 20/06 20060101ALN20220201BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20220201BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20220201BHJP
【FI】
C03B40/02
C03B9/13
C10M101/02
C10M125/02
C10M135/06
C10M155/02
C10M135/04
B05B12/00 A
B05B13/04
C10N20:06 Z
C10N30:00 Z
C10N40:00 Z
(21)【出願番号】P 2018500788
(86)(22)【出願日】2016-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2016070211
(87)【国際公開番号】W WO2017032883
(87)【国際公開日】2017-03-02
【審査請求日】2019-06-17
(32)【優先日】2015-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518004222
【氏名又は名称】ソカベレック ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァリ,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ジョンガート,ダーク
(72)【発明者】
【氏名】ヴェリ,マルコ
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-122548(JP,A)
【文献】実開平02-078530(JP,U)
【文献】特表2009-538818(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0175617(US,A1)
【文献】実開平01-026344(JP,U)
【文献】米国特許第02977237(US,A)
【文献】特表2011-522933(JP,A)
【文献】特開2005-154760(JP,A)
【文献】特開2009-235111(JP,A)
【文献】米国特許第02179061(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 40/00 - 40/04
C03B 9/00 - 17/06
C10M 101/00 -177/00
B05B 12/00
B05B 13/00 - 13/04
C10N 20/06
C10N 30/00
C10N 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
I.S.マシンによって中空ガラス製品を製造する方法であって、当該方法はプレスブローまたはブローブロー方式であり、少なくとも1つのパリソン金型および1つのブロー金型を働かせるものであり、
前記パリソン金型は各生産サイクルで閉じる2つの半型(101、102)を含み、少なくとも1つのガラスゴブ(103)が重力によって前記パリソン金型内に装入され、前記
ガラスゴブ(103)は、前記パリソン金型の2つの半型(101、102)が開いた後、移送アーム(104)を用いて前記パリソン金型から前記ブロー金型に移送され、前記移送アーム(104)は、前記パリソン金型と前記ブロー金型との間で
往復移動を実行することができると共に、前記パリソン金型の前記2つの半型(101、102)の間を通過し、
当該方法は前記パリソン金型の潤滑を含み、当該潤滑は前記製造方法を中断することなく実行され、かつ少なくとも1つのノズル(105a、105b)によって前記開いたパリソン金型内に潤滑剤を噴霧することを含む、方法において、
前記ノズル(105a、105b)は、I.S.マシンのパリソン金型側面に沿って
移動可能な、I.S.マシン外部の
ロボットのアーム(105)によって担持され、
前記移動
可能なロボットは、
(i) 前記ガラスゴブ(103)が前記パリソン金型から前記ブロー金型に向かって離れた後、前記ノズル(105a、105b)を潤滑位置に運び、
(ii) 潤滑後、前記移送アーム(104)を前記パリソン金型の前記2つの半型の間に戻す前に、前記ノズル(105a、105b)を前記潤滑位置から引き出す、
ように構成さ
れていることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記移動
可能なロボットによって担持された前記ノズル
(105a、105b)は、休止位置から前記潤滑位置
への移動によって運ばれ、前記潤滑位置は前記パリソン金型の前記2つの半型(101、102)の上方に位置する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記移動
可能なロボットの前記アーム
(105)はY字形を形成するように2つの部分に分かれ、前記2つの部分の各々はノズル(105a、105b)を含み、各ノズルは前記パリソン金型の前記2つの半型(101、102)の
1つに噴霧する、請求項1又は2のいずれか記載の製造方法。
【請求項4】
前記製造方法は複数のパリソン金型を含む生産ラインを用いて実行され、前記パリソン金型の潤滑は一定の時間間隔で実行され、前記移動
可能なロボットは
それぞれのパリソン金型
に沿って前記ノズル(105a、105b)を連続的に移動させ、前記生産ラインはその端部の一方にまたは2つの連続パリソン金型の間に位置する少なくとも1つの休止位置を含み、最小期間内に実行すべき潤滑作業がないときに、前記移動
可能なロボットは前記少なくとも1つの休止位置に留置される、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法
の実施に使用するための装置であって、
当該装置は、加圧された潤滑剤タンクと、
少なくとも1つのノズルを含む移動アーム
(105)とを備えたロボットであって、前記I.S.マシンの前記パリソン金型側面に沿って移動
可能なロボット
を備えており、
前記ロボットは、
(i) 前記ガラスゴブが前記パリソン金型から前記ブロー金型に向かって離れた後、前記ノズルを潤滑位置に運び、
(ii) 潤滑剤を前記パリソン金型内に噴霧
し、移送アーム
(104)を前記パリソン金型の前記2つの半型の間に戻す前に、前記ノズルを前記潤滑位置から引き出す、
ように構成されている、ことを特徴とする装置。
【請求項6】
前記ロボットがそれに沿って移動することのできるレールを含み、前記レールは前記I.S.マシン
のパリソン金型に沿って存在している、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記レールは前記I.S.マシンより長く、
当該レールの余長部は、ガラスを成形するために必要な前記I.S.マシンの熱源から距離を置いて前記ロボットを留置させる
に十分な長さをもたらす、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記I.S.マシンによって実現される潤滑の対象となる前記パリソン金型のレプリカ(複製)
を含み、当該レプリカは、前記ロボットが前記レールの余長部に留置されるときに設置されるものである、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記レプリカは、前記製造方法で用いられる潤滑組成物の色に対し裸眼で視認できる対比をもたらす色をなしている、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記レールは前記製造方法の前記I.S.マシンの上に組み付けられ、前記レールは貫通穴を含む梁に接続され、前記貫通穴は前記I.S.マシンの制御スイッチへのアクセスを可能にする、
請求項6~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記ロボットは、I.S.マシンの本体との衝突を防止する
ために、検出用カメラを装備している、
請求項5~10のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瓶、バイアル、または壺のような中空ガラス製品の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
この製造は、各セクションが1ゴブまたは数ゴブを同時に処理するように意図され、各ゴブが専用パリソン金型に、次いで専用ブロー金型に受容されかつそこで処理されるようにした、I.S.[Individual Section(個別セクション)]マシンを実現する。
【0003】
パリソン金型は鉛直接合面を画定する2つの半型から成る。
【0004】
2つの半型は、パリソン金型の下端部のカラー金型で閉じる。パリソン金型はまた、その上昇移動によりパリソンの穿孔が生じるスタンプも含む。
【0005】
パリソン金型へのゴブの装入は、その開放上端により重力によって実行される。(訳注:ゴブ(gob)とは、ガラスゴブ、つまり、高粘度のガラス塊を意味する。ガラスビードともいう。)
【0006】
プレスブロー法では、この装入はスタンプの底部位置で実行される。次いで、パリソン金型の上端は底部によって閉じられ、次いでスタンプはカラー金型から頂部に向かって移動し、それと一緒にゴブを運ぶ。金型(上部)の底部を充填した後、ガラスは流路を押圧交差してカラーを形成する。
【0007】
ブローブロー法では、ゴブの装入は、比較的短いがスタンプの頂部位置で実行される。パリソン金型の上端は、ゴブの底部を押圧しカラーを形成する効果を有する手段に接続される。次いで、この上端はパリソン底部によって閉じられ、スタンプが下降し、吹込みによりパリソンの穿孔が実行される。
【0008】
パリソン底部、および2つのパリソン半型は開かれ、カラー金型によって保持されたパリソンは、水平軸線に沿って戻ることにより、ブロー金型内に移送される。
【0009】
完成品の表面における外観不良の顕著な発生源は、装入中のゴブとパリソン金型のキャビティの表面との比較的強い接触に由来する。キャビティの表面を周期的に潤滑することによって、これらの不良を除去し、キャビティ表面の品質を確保する必要がある。これらの潤滑は通常、作業者によって、事前に油に浸漬させた刷毛を用いて実行される。作業者は、I.S.マシンの通常の機能を停止させることなくこの作業を進めることができるが、安全条件が増すことによって、マシンの少なくとも1機能サイクルにわたって該当するセクションに意図されたゴブの排出が規定されることがあり得る。
【0010】
作業者によるパリソン金型の潤滑は、幾つかの種類の問題を引き起こす。
【0011】
第一に、作業者は、たとえ通常推奨される保護策を用いても、温度上昇および著しい騒音に曝される。
【0012】
そのような状態への曝露は、例えば国際規制によって時間的に限定されることがあり得る。
【0013】
加えて、作業者は自分の動きを、自動化された機械的要素の動きに調和させなければならず、そのことからすぐにストレスを受け疲労することがあり得る。他方、作業者は、本当に必要な金型だけを潤滑し続けるのではなく、事実上無作為な選択に従って金型を周期的に潤滑する。
【0014】
中空ガラス製品を形成するための金型の自動潤滑のための方法および装置は、特許文献1から公知である。しかし、この文献に記載された潤滑は、パリソン金型が閉位置にあるときに、換言すると、それを構成する2つの半型が互いに接触しているときに、パリソン金型内に噴霧用ホースを挿入する目的で、生産ラインを停止する必要がある。そのような中断は、言うまでもなく、生産時間の減少によるこの方法の歩留まりの損失を招く。加えて、パリソン金型の潤滑直後に得られた製品は一般的に不良品であり、特許文献1の10頁に示された表が証明する通り、拒絶されなければならない。
【0015】
さらに、先行技術による潤滑方法は、それらが手動で行われるかロボットによるかに関わらず、潤滑剤層の堆積によって生じる酸化のため、金型の寿命に影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【発明の概要】
【0017】
本発明の目的は、製造される製品の品質を変えず、むしろ優れた品質を維持しながら、中空ガラス製品の製造方法の歩留まりを増大させることである。
【0018】
本発明の別の目的は、中空ガラス製品の製造方法の範囲内で使用される金型の寿命を増大させることである。
【0019】
この目的のために、本発明はI.S.マシンによって中空ガラス製品を製造する方法を提供するものであり、前記方法はプレスブローまたはブローブロー方式であり、かつ少なくとも1つのパリソン金型および1つのブロー金型を働かせるものであり、
前記パリソン金型は各製造サイクルで閉じる2つの半型を含み、少なくとも1ガラスゴブが重力によってパリソン金型に装入され、前記ゴブは、パリソン金型の2つの半型が開いた後、移送アームを用いてパリソン金型からブロー金型に移送され、前記移送アームは、パリソン金型の2つの半型の間を通過してパリソン金型とブロー金型との間で2通りの移動を実行することができ、
前記方法は前記パリソン金型の潤滑を含み、この潤滑はノズルを介する噴霧を含み、前記ノズルは、I.S.マシンのパリソン金型側面に沿って移動する移動ロボットのアームによって担持され、
(i) ガラスゴブがパリソン金型からブロー金型に向かって離れた後、ノズルを潤滑位置に運び、
(ii) 潤滑剤を前記パリソン金型内に噴霧し、
(iii) 移送アームがパリソン金型の2つの半型の間を戻る前に、ノズルを潤滑位置から引き出す。
【0020】
ノズルとは、潤滑剤を輸送するため、かつパリソン金型内における潤滑剤の散布を確実にするために使用される、較正された穴を含む部分を意味する。
【0021】
パリソン金型のゴブがブロー金型に向かって離れた後、パリソン金型が開位置にあるときにパリソン金型の潤滑を実行するように構成された移動ロボットの使用は、そのような潤滑方法が中空ガラス製品の製造方法を妨げず、かつしたがって生産ラインを中断させる必要がないので、特に有利であることが実証された。加えて、移送アームがパリソン金型の高さに戻る前に、したがってこれらのゴブが落下する前に(それは通常、この方法のサイクルに従うことができる)、ノズルが引き出されるので、本発明に係る製造方法は、潤滑のプロセス中に、パリソン金型に意図されたゴブを排出する必要がない。
【0022】
製造方法は中断されないので、本発明に係る潤滑方法はしたがって、製造方法を中断させることを含み、潤滑頻度の増大が製造方法の歩留まりの低下を伴うことになる先行技術の潤滑方法より、高い頻度で実行することができる。さらに、本発明に係る製造方法の範囲内でより頻繁に潤滑を実行する可能性は、パリソン金型の潤滑作業中に吐出される潤滑剤の量を低減させることを可能にすることを観察することができた。潤滑作業の頻度の増大は、各潤滑作業で吐出される潤滑剤の用量の低減とあいまって、先行技術の方法で典型的に観察されたパリソン金型の酸化を防止するのに、驚くべきことに特に有利であることが実証された。
【0023】
ノズルの潤滑位置とは、パリソン金型の潤滑を実行する観点から、ノズルによって吐出される潤滑剤がパリソン金型の内面に到達するノズルの位置を意味する。したがって潤滑位置は、ノズルによって吐出される噴流の射程距離および形状によって決まる。
【0024】
本発明に係る方法の有利な実施形態によれば、移動ロボットによって担持されるノズルは、前方移動によって、2つのパリソン半型の上にある潤滑位置に運ばれる。そのような潤滑位置は、2つの半型によって画定される空間内にノズルを挿入する必要がなく、したがって、噴霧用ホースをパリソン金型内に挿入する先行技術の方法と比べて、時間を節約することができるので、有利であることが実際、証明された。
【0025】
有利な実施形態によれば、ロボットのアームはY字形を形成するように2つの部分に分かれ、2つの部分の各々にノズルが含まれ、パリソン金型の2つの半型の噴霧を確実にする。
【0026】
そのような実施形態では、潤滑ステップ中に、第1ノズルは2つの半型の一方に向けられ、その後、ロボットのアームを移動させることによって、第2ノズルがもう一方の半型に向けられる。ロボットのアームの部分の1つによって各々担持される2つのノズルの存在は、2つの半型を連続的に潤滑するためのロボットのアームの動きの複雑さおよび振幅を制限することを可能にする。
【0027】
有利な実施形態によれば、製造方法は複数のパリソン金型を含む生産ラインを用いて実行され、パリソン金型の潤滑は一定の時間間隔で、または作業者の要求に応じて実行され、移動ロボットはノズルを連続的に異なるパリソン金型の高さに移動させ、生産ラインは、その端部の一方に存在し、あるいは2つの連続するパリソン金型の間に存在する少なくとも1つの休止位置を含み、移動ロボットは最小期間内に実行すべき潤滑作業がないときに前記少なくとも1つの休止位置に留置される。
【0028】
パリソン金型と正対しないそのような休止位置は実際、パリソン金型内でガラスを成形するために必要な熱源にロボットが曝露されすぎるのを回避するために、有利であることが実証された。
【0029】
本発明の別の目的は、本発明に係る製造方法によって実現される潤滑用の潤滑組成物を提供することである。
【0030】
この目的のために、本発明に係る潤滑組成物は、
‐ 50%~70%の重量濃度を有するナフテン系鉱油と、
‐ 0.5μm~25μmの粒径を有する黒鉛粒子を含む分散剤であって、分散剤における前記黒鉛濃度が15重量%超であり、5%~25%の重量濃度を有する前記分散剤と、
‐ 少なくとも1つの硫化物脂肪酸エステルであって、4~22個の炭素原子を含み、かつ飽和または不飽和であり、10%~16%の重量濃度を有する前記硫化物脂肪酸エステルと、
を含む。
【0031】
実際、そのような潤滑組成物は、頻繁な潤滑作業であるが1回の潤滑作業当たりの量が先行技術で通常使用される量より低い場合に、特に有効であることを際立たせることができた。本発明の製造方法におけるそのような潤滑組成物の使用は、潤滑剤の消費量を低減する一方、潤滑作業後に拒絶する必要のある製品の数を減らすことを可能にする。加えて、そのような潤滑組成物は潤滑される金型に対する酸化作用を低減させ、それにより金型の寿命が延びることを観察することができた。
【0032】
有利な実施形態では、本発明に係る組成物はポリジメチルシロキサン(PDMS)を含み、前記ポリジメチルシロキサンは1%~10%の重量濃度を有する。実際、そのような添加剤の添加は、潤滑作業直後にこの製造方法から生産される製品の品質を高め、かつ本発明に係る組成物の金型に対する酸化作用を再び低減させることを観察することができた。
【0033】
有利な実施形態では、本発明に係る組成物は8~18個の炭素原子を含む硫化アルケンを含み、前記硫化アルケンは5%~12%の重量濃度を有する。
【0034】
有利な実施形態では、本発明に係る組成物は、12~22個の炭素原子を含む、飽和または不飽和の脂肪酸メチルエステルであり、前記硫化物脂肪エステルは1%~10%の重量濃度を有する。
【0035】
実際、2つの添加剤のうちの1つ、あるいは好適な実施形態では上述した最後の2つの添加剤のうちの1つを添加することにより、潤滑剤の消費量、潤滑作業直後の製品の不合格率、および金型の酸化に関して最適な性能が得られることが観察された。特に、上記の全ての成分を含む組成物を使用することにより、零に等しい製品の不合格率を得るこが可能になり、この方法の最大歩留まりが確実になることを観察することができた。
【0036】
したがって、本発明はまた、上で詳述した本発明に係る潤滑組成物の1つを使用して潤滑が実行される本発明に係る製造方法にも基づく。
【0037】
本発明に係る製造方法は、本発明に係る組成物を用いて実現されたとき、実際、先行技術の製造方法によって実現される潤滑作業に内在する歩留まりの損失を完全に除去することができる。加えて、すでに上述した通り、本発明に係る潤滑組成物を使用することにより、この製造方法によって実現される金型の寿命が最適化される。
【0038】
本発明の別の目的は、本発明に係る製造方法の潤滑作業を実現する装置を提供することである。
【0039】
この目的のために、本発明に係る製造方法の潤滑作業を実現する装置は、
‐ 加圧された潤滑剤タンクとノズルを含む移動アームとを備えたロボットであって、I.S.マシンのパリソン金型側面に沿って移動するロボット
を含み、
前記ロボットは、
(i) ガラスゴブがパリソン金型からブロー金型に向かって離れた後、ノズルを潤滑位置に運び、
(ii) 潤滑剤を前記パリソン金型内に噴霧し、
(iii) 移送アームがパリソン金型の2つの半型の間に戻す前に、ノズルを潤滑位置から引き出す、
ように構成される。
【0040】
有利な実施形態によれば、本発明に係る装置は、前記ロボットがそれに沿って移動することのできるレールを含み、前記レールはI.S.マシンの異なるパリソン金型に沿って存在する。
【0041】
有利な実施形態によれば、レールはI.S.マシンより長く、当該レールの余長部は、充分に幅広い休止位置(即ちホームポジション)を提供するものであり、この休止位置(即ちホームポジション)とは、ガラスを成形するために必要なI.S.マシンの熱源から距離を置いてロボットを留置させる所である。
【0042】
そのような休止位置は実際、ロボットの連続加熱を回避し、したがってロボットが潤滑作業を実行しないときにロボットを適切な状態で留置させることを可能にする。
【0043】
有利な実施形態によれば、I.S.マシンによって実現される潤滑されるパリソン金型のレプリカが、前記休止位置に設置される。そのようなレプリカは実際、本発明に係る装置のロボットを較正するのに非常に有用であることが証明された。金型の内面全体に潤滑剤を適切に分布させるには、ノズルおよびロボットを較正することが実際必要である。前記休止位置に設置されるレプリカは、生産ラインを中断することなくロボットおよびノズルの最終調整を実行することのできる作業者に、貴重な支援を提供する。
【0044】
有利な実施形態によれば、前記レプリカは、この製造方法で実現される潤滑組成物の色に対し裸眼で視認できる対比をもたらす色をなしている。そのような視覚的対比は、金型の内面全体における潤滑剤の分布を作業者が容易に観察できるようにし、それはロボットおよびノズルの較正を容易にする。
【0045】
特に有利な実施形態によれば、レプリカはI.S.マシンで実現されるパリソン金型より鮮明な色である。I.S.マシンによって実現される潤滑および金型は一般的に暗色であり、最適な対比を提供する観点から、レプリカをより鮮明な色にすることが有用である。
【0046】
有利な実施形態によれば、ロボットのアームは、ノズルが取り付けられる取外し可能な部分を含む。実際、ロボットのアームは事実上、時には複雑でありかつI.S.マシンの様々な本体から予測することが難しい運動に曝されることを観察することができた。したがって、ノズルを支持するロボットのアームの部分を、それとI.S.マシンとの間の強すぎる衝撃のため破損が発生した場合に、容易に交換できるようにすることが確かに有用であることが証明された。したがってこの取外し可能な部分は、負担の大きいロボットの修理を実行する必要なく、作業者が取り外して交換することができる。
【0047】
有利な実施形態によれば、ロボットのアームの取外し可能な部分は、Y字形を形成するように2つの部分に分かれ、これらの部分の各々にノズルが含まれる。この特定の構成は、2つの半型を連続的に潤滑するためのロボットのアームの動きの複雑さおよび振幅を低減させるので、2つの半型の連続的潤滑の観点から効果的であることが実際証明された。
【0048】
有利な実施形態によれば、前記レールはこの製造方法のI.S.マシンの上に組み付けられ、前記レールは貫通穴を含む梁に接続され、前記貫通穴はI.S.マシンの制御スイッチへのアクセスを可能にする。
【0049】
有利な実施形態によれば、本発明に係るロボットは、I.S.マシンの本体との衝突を防止する観点から、検出カメラを装備する。この実施形態では、ロボットは、I.S.マシンの本体と遭遇した場合、ロボットおよびI.S.マシンの損傷リスクを大幅に低減させる観点から、ロボットの軌道を適応させるように構成される。
【0050】
ロボットは、潤滑が完全に自動化されかつ一定の時間間隔で実行されるように構成することができるが、ロボットは半自動モードに構成することもでき、その場合、例えばどの金型を潤滑する必要があるかを判断して、ロボットをこの方向に向けることのできる人間の作業者によって制御が部分的に確保されることに留意することが重要である。
【0051】
加えて、有利な実施形態では、本発明に係る装置のロボットは、パリソン金型のカラー金型の潤滑を実行するように構成することができる。しかし、この場合、潤滑は、生産ラインを停止させた後、パリソン金型が閉位置にある状態で実行される。
【0052】
これらの態様のみならず、本発明の他の態様も、図面を参照した本発明の特定の実施形態の詳細な説明で明確になるであろう。
【0053】
図は正確な縮尺率ではない。一般的に、図において同様の要素には同様の符号が記されている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明に係る製造方法の実施形態によって実現される潤滑の略図である。
【
図2】ロボットのアームの実施形態の立体図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
したがって、
図1は、本発明に係るプレスブローまたはブローブロー製造方法によって実現される潤滑を示す。パリソン金型は、各生産サイクルで閉じる二重セクションを持つ2つの半型101、102を含み、2つのガラスゴブ103は重力によってパリソン金型内に装入される。パリソン金型の2つの半型101、102が開いた後、ゴブ103は移送アーム104を用いてパリソン金型からブロー金型に移送される。移送アーム104は、あらかじめ形成されたゴブ103をパリソン金型からブロー金型に移送するために、パリソン金型の2つの半型101、102の間を通ることにより、パリソン金型とブロー金型との間で2通りの移動を実行することができる。前記パリソン金型の潤滑は、ノズル105a、105bによる噴霧を含み、前記ノズル105a、105bは、I.S.マシンのパリソン金型側面に沿って移動する移動ロボットのY字形アーム105によって担持される。移動ロボットは、
(i) ガラスゴブがパリソン金型からブロー金型に向かって離れた後、前記ノズル105a、105bを潤滑位置内に運び、
(ii) 潤滑剤を前記パリソン金型内に噴霧し、
(iii) 移送アームがパリソン金型の2つの半型の間に戻す前に、前記ノズル105a、105bを潤滑位置から引き出す、
ように構成される。
【0056】
図2は、本発明に係る製造方法で実現されるロボットのアームを表す。Y字形を形成するように2つの部分11および12に分かれた部分1は、I.S.マシンの本体または周囲の他のツールとの破壊的衝突が発生した場合に容易に交換することのできる、ロボットのアームの取外し可能な部分を構成する。この部分1はアダプタフランジ2を使用してロボットに取り付けられる。2つの部分11および12は、パリソン金型の各半型101、102をそれぞれ潤滑するノズル105aおよび105bを受容するように意図されている。ロボットがアームをそれぞれ第1半型101の潤滑位置および次いで第2半型102の潤滑位置に(またはその逆の順番で)適切に向けた後、各半型の潤滑は順次、換言すると、最初に第1半型101を、次いで第2半型102を(またはその逆の順番で)潤滑することによって実行される。2つのノズル105aおよび105bの存在は、アームを第1および第2半型の潤滑位置に向けるためにロボットによって実現されるアームの動きの複雑さおよび振幅を有利に低減させる。
【0057】
本発明が図示しかつ上述した実施例に限定されないことは、当業者には明白であろう。本発明は、新しい特徴の各々を含むだけでなく、それらの組合せをも含む。参照符号の存在をもって、排他的であるとみなすことはできない。語「含む」の使用をもって、明記したもの以外の要素の存在を排除することは決してできない。要素を導入するための不定冠詞「a」の使用は、複数のこれらの要素の存在を排除するものではない。本発明を特定の実施形態に関連して記載したが、それは純粋に例示的な価値を有するものであって、排他的であるとみなしてはならない。
【符号の説明】
【0058】
1 (ロボットの)アーム部分
2 アダプタフランジ
11 (ロボットのアーム部分1の)部分
12 (ロボットのアーム部分1の)部分
101 (金型の)半型(第1半型)
102 (金型の)半型(第2半型)
103 ガラスゴブ
104 移送アーム
105 移動アーム(Y字形アーム)
105a ノズル
105b ノズル