(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】線材引き込み具
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20220201BHJP
E04D 13/00 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
H02G3/22
E04D13/00 J
(21)【出願番号】P 2019104240
(22)【出願日】2019-06-04
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】391013162
【氏名又は名称】株式会社屋根技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】小林 修一
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-130010(JP,A)
【文献】特開平11-81542(JP,A)
【文献】特開2009-240115(JP,A)
【文献】特開2018-53707(JP,A)
【文献】特開2016-46885(JP,A)
【文献】特開平9-280237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
E04D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根上から建物内へ線材を引き込むための線材引き込み具であって、
本体と、該本体に対して着脱される蓋体とを備えており、
前記本体は、
平板状のベース部、
該ベース部に貫設されたベース孔部、
前記ベース部からU字形に立設されており、U字の湾曲部で前記ベース孔部を囲んでいる立壁部、及び、
該立壁部におけるU字の開端より前記ベース孔部に近い位置で前記ベース部から立設されており、両側が前記立壁部に連続していると共に、パイプ用コネクタを挿通するための挿通孔が貫設されているコネクタ支持部、を具備しており、
前記蓋体は、
前記立壁部を囲む周壁部、及び、
前記立壁部に囲まれた空間を被覆する被覆部、を具備している
ことを特徴とする線材引き込み具。
【請求項2】
前記コネクタ支持部は、前記ベース部との境界に形成された小孔部を一つ以上有しており、
該小孔部の孔サイズは、6mm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の線材引き込み具。
【請求項3】
前記本体及び前記蓋体は金属製であり、
前記蓋体がネジ用孔部を有している一方で、前記立壁部はネジ溝を有しており、
前記立壁部に囲まれた空間を前記被覆部が被覆している状態で、前記ネジ用孔部を挿通して前記ネジ溝と螺合しているネジによって、前記蓋体が前記立壁部に固定されていると共に、
前記ネジは、ネジ頭部が備える鋸歯またはネジ頭部に当接させるワッシャが備える鋸歯を前記蓋体に食い込ませることにより、前記蓋体と前記本体とを導通させている
ことを特徴とする請求項1に記載の線材引き込み具。
【請求項4】
前記本体は、弧状壁を更に備えており、
該弧状壁は、ベース孔部の周縁の一部に沿ってベース部から円弧状に立設されており、両側が前記立壁部に連続していることにより、前記立壁部の前記湾曲部と共に略円形を形成しており、
該弧状壁の上端は、前記立壁部から離れるに従って高さが低くなり中央で最も低くなるように、下方に窪む円弧状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の線材引き込み具。
【請求項5】
前記ベース部は、棟側端辺が逆V字形をなしている
ことを特徴とする請求項1に記載の線材引き込み具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根上から建物内へ線材を引き込むために用いられる線材引き込み具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は過去に、屋根上に設置された太陽電池モジュールからの出力用電線や、テレビアンテナからのアンテナ線などの線材を建物内に引き込むための線材引き込み具を提案している(特許文献1参照)。この線材引き込み具は、屋根に敷設される屋根葺き材に代替して用いられるベース部に、孔部が穿設されているものである。この孔部が、屋根貫通孔と連通する位置で、線材引き込み具を屋根上に設置することにより、孔部と屋根貫通孔とを介して線材を屋根上から建物内に引き込むことができる。
【0003】
この線材引き込み具では、ベース部から立設された立壁部が、軒側に向かって開口していると共に上方に開口しており、軒側端から孔部に引き込まれる線材の通路を囲んでいる。また、この線材引き込み具は、立壁部に対して着脱され、立壁部に囲まれた空間を上方から被覆する蓋体を備えている。このような構成の線材引き込み具では、蓋体を取り外せば、孔部に引き込まれる線材の通路の上方、及び孔部の上方が大きく開放されるため、孔部に線材を引き込む作業を容易に行うことができる。また、孔部は立壁部で囲まれていると共に、上方から蓋体で被覆された空間で開口しているため、屋根上を流下する雨水の孔部への流入を、蓋体及び立壁部によって防止することができる。
【0004】
ところで、屋根上に線材が配される場合、線材の保護のために、線材がスチール管のようなパイプに挿入された状態とされることがある。そのため、そのような状態で屋根上に配されている線材を、建物内に引き込むために適している線材引き込み具に対する要請があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、パイプに挿入された状態で屋根上に配されている線材を、建物内に引き込むために適した線材引き込み具の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る線材引き込み具は、
「屋根上から建物内へ線材を引き込むための線材引き込み具であって、
本体と、該本体に対して着脱される蓋体とを備えており、
前記本体は、
平板状のベース部、
該ベース部に貫設されたベース孔部、
前記ベース部からU字形に立設されており、U字の湾曲部で前記ベース孔部を囲んでいる立壁部、及び、
該立壁部におけるU字の開端より前記ベース孔部に近い位置で前記ベース部から立設されており、両側が前記立壁部に連続していると共に、パイプ用コネクタを挿通するための挿通孔が貫設されているコネクタ支持部、を具備しており、
前記蓋体は、
前記立壁部を囲む周壁部、及び、
前記立壁部に囲まれた空間を被覆する被覆部、を具備している」ものである。
【0008】
「線材」としては、屋根上に設置された太陽電池モジュールや風力発電装置からの出力用電線、テレビアンテナからのアンテナ線、照明装置への入力用電線を例示することができる。
【0009】
本構成の線材引き込み具を使用する際は、屋根に貫設された貫通孔にベース孔部が連通するように、本体を屋根に取り付ける。線材引き込み具はコネクタ支持部を備えており、コネクタ支持部にはパイプ用コネクタを挿通するための挿通孔が形成されている。そのため、線材を挿入しているパイプを、パイプ用コネクタによってコネクタ支持部に固定することができる。これより、パイプに挿入された状態で屋根上に配されていた線材を、立壁部によって囲まれた空間内に引き入れ、ベース孔部及び屋根の貫通孔を介して、建物内に引き込むことができる。
【0010】
ベース孔部は、立壁部によって囲まれた空間であって、蓋体で被覆されている空間で開口しているため、ベース孔部を介して建物内に雨水が浸入するおそれが低減されている。
【0011】
また、蓋体は本体に対して着脱されるものであるため、線材が挿入されているパイプをコネクタ支持部に固定されたパイプ用コネクタに接続する作業や、立壁部に囲まれた空間でパイプから引き出した線材を、ベース孔部を介して建物内に引き込む作業を、蓋体が取り外された状態で容易に行うことができる。
【0012】
そして、線材が挿入されているパイプが固定されるコネクタ支持部は、外方に向かって開放される位置に設けざるを得ない構成であるが、コネクタ支持部は立壁部のU字における開端よりベース孔部に近い位置、すなわち、立壁部で囲まれた空間の内部でベース部から立設されている。そのため、コネクタ支持部に貫設された挿通孔を介して、雨水が内方に浸入し、更にベース孔部を介して建物内に浸入するおそれが防止されている。
【0013】
本発明に係る線材引き込み具は、上記構成に加え、
「前記コネクタ支持部は、前記ベース部との境界に形成された小孔部を一つ以上有しており、
該小孔部の孔サイズは、6mm以下である」ものとすることができる。
【0014】
小孔部の「孔サイズ」は、小孔部が円形孔の場合はその直径であり、小孔部が非円形孔である場合は、周縁間の距離が最も長い部分の距離である。
【0015】
本構成では、コネクタ支持部においてベース部との境界に小孔部が形成されている。そこで、コネクタ支持部が軒側となりベース孔部が棟側となるように本体を屋根に取り付ければ、何らかの理由で、立壁部で囲まれた空間内に雨水が浸入したとしても、屋根の流れ方向(棟から軒に向かう方向)にベース部上を流下する雨水が、小孔部を介して排出されるため、ベース孔部を介して建物内へ雨水が浸入することを防止することができる。
【0016】
また、小孔部の孔サイズは6mm以下であるため、雨水は十分に通過できるが、昆虫などの小動物は通過できない。そのため、排水用の小孔部を介して外部から小動物が立壁部で囲まれた空間に入り込み、ひいてはベース孔部を介して建物内に小動物が入り込むおそれが低減されている。
【0017】
本発明に係る線材引き込み具は、上記構成に加え、
「前記本体及び前記蓋体は金属製であり、
前記蓋体がネジ用孔部を有している一方で、前記立壁部はネジ溝を有しており、
前記立壁部に囲まれた空間を前記被覆部が被覆している状態で、前記ネジ用孔部を挿通して前記ネジ溝と螺合しているネジによって、前記蓋体が前記立壁部に固定されていると共に、
前記ネジは、ネジ頭部が備える鋸歯またはネジ頭部に当接させるワッシャが備える鋸歯を前記蓋体に食い込ませることにより、前記蓋体と前記本体とを導通させている」ものとすることができる。
【0018】
一般的に、屋根上に設置される部材にネジを留め付けるとき、ネジと部材との間に防水用パッキンを介在させる。防水用パッキンは、通常は電気絶縁性の材料で形成されている。これに対し、本構成では、本体及び蓋体が共に金属製である場合において、蓋体を本体に固定するネジとして、鋸歯付きの頭部を有するネジを使用するか、或いは、ネジと蓋体との間に介在させるワッシャとして鋸歯付きのものを使用することにより、ネジを介して蓋体と本体とを導通させる。つまり、蓋体を本体に固定するためのネジに、蓋体と本体とを導通させる役割を兼ねさせている。
【0019】
ネジ頭部の鋸歯またはネジ頭部を当接させるワッシャの鋸歯を蓋体に食い込ませているため、仮に蓋体の表面に不働態皮膜が形成されていても、ネジと蓋体とを確実に導通させることができる。一方、本体にはネジ溝が形成されており、ここにネジがねじ込まれるため、ネジと本体とが導通する。
【0020】
なお、蓋体を本体に固定するためのネジが複数ある場合、これらのネジの全てを介して蓋体と本体とを導通させる必要はなく、これらのネジの一部によって蓋体と本体とを導通させても良い。
【0021】
本発明に係る線材引き込み具は、上記構成に加え、
「前記本体は、弧状壁を更に備えており、
該弧状壁は、ベース孔部の周縁の一部に沿ってベース部から円弧状に立設されており、両側が前記立壁部に連続していることにより、前記立壁部の前記湾曲部と共に略円形を形成しており、
該弧状壁の上端は、前記立壁部から離れるに従って高さが低くなり中央で最も低くなるように、下方に窪む円弧状に形成されている」ものとすることができる。
【0022】
本構成では、立壁部に囲まれた空間内に引き入れられた線材は、弧状壁を越えてからベース孔部に引き入れられる。従って、雨水が線材を伝わって立壁部に囲まれた空間内まで入って来たとしても、弧状壁を越えるために上昇する線材を伝わって上昇することはできず、ベース孔部に雨水が浸入するおそれを低減することができる。そして、弧状壁は、円形のベース孔部に沿う形状であるため、弧状壁を越えるように上昇させた線材ベース孔部に引き込む作業が行い易い。また、弧状壁は、上下方向において円弧状に窪んでいる形状であるため、立壁部に囲まれた空間内で線材をフレキシブル管に挿入させた場合も、フレキシブル管を弧状壁に沿わせ易い。従って、フレキシブル管に挿入された状態の線材をベース孔部に引き込む際に、弧状壁との間に空隙が形成されにくい。
【0023】
本発明に係る線材引き込み具は、上記構成に加え、
「前記ベース部は、棟側端辺が逆V字形をなしている」ものとすることができる。
【0024】
本構成では、屋根上を流下する雨水が逆V字形の棟側端辺によって、両側に案内される。これにより、屋根上を流下する雨水が、ベース部に乗り上げるおそれが低減されている。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、パイプに挿入された状態で屋根上に配されている線材を、建物内に引き込むために適した線材引き込み具を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態の線材引き込み具の分解斜視図である。
【
図3】
図3は
図1の線材引き込み具の本体の斜視図を、蓋体を底面側ら見た斜視図と共に示した図である。
【
図4】
図4は
図1の線材引き込み具の使用状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は
図1の線材引き込み具の使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態である線材引き込み具1について、
図1乃至
図5に基づいて説明する。線材引き込み具1は、本体10と、本体10に対して着脱される蓋体50とを備えている。本体10及び蓋体50は、アルミニウムやステンレス鋼などの金属製、耐候性を有する樹脂製、またはセラミックス製とすることができるが、本実施形態では共に金属製である。
【0028】
本体10は、ベース部11と、ベース孔部15と、立壁部17と、コネクタ支持部20と、弧状壁30とを、主に備えている。ベース部11は平板状であり、平行な一対の側辺11a,11aと、これらに直交する端辺11bと、端辺11bに対向する端辺11cを有している。端辺11cは、中央が頂部11eとなった逆V字形をなしている。
【0029】
ベース孔部15は、ベース部11を貫通する円形孔であり、ベース部11の中央より頂部11e寄りに位置している。立壁部17はベース部11から立設されており、平面視(ベース部11を真上から見た視野)における形状がU字形である。立壁部17は、U字における湾曲部17cをベース孔部15に沿わせており、U字の開端は端辺11bまで達している。立壁部17の開端は肉厚に形成されており、ここにネジ溝17sが設けられている。また、立壁部17の湾曲部17cも頂部11eに向かって突出するように肉厚に形成されており、ここにもネジ溝17sが設けられている。
【0030】
コネクタ支持部20は、立壁部17におけるU字の開端よりベース孔部15に近い位置でベース部11から立設されている。コネクタ支持部20の両側は、立壁部17に連続している。コネクタ支持部20には、パイプ用コネクタ60を挿通するための円形の挿通孔25が貫設されている。コネクタ支持部20の上端は、挿通孔25の周縁との間に一定の距離を保つように円弧状に湾曲している。コネクタ支持部20の上端の一部には、上方に開口するC字形の小さなノッチ26が形成されている。
【0031】
また、コネクタ支持部20は、ベース部11との境界に小孔部27を有している。本実施形態では、コネクタ支持部20の両側において、ベース部11との境界であると共に立壁部17との境界でもある位置に、二つの小孔部27が形成されている。それぞれの小孔部27の大きさは、周縁間の距離が最大となる部分で6mm以下となるように設定されている。この孔サイズは、建物の内外を通気させる通気口に配されるメッシュの開口サイズの上限として、米国で規定されている数値に相当する。
【0032】
弧状壁30は、ベース孔部15の周縁の一部に沿ってベース部11から円弧状に立設されている。ベース孔部15の周縁のうち弧状壁30が沿っている部分は、立壁部17の湾曲部17cが沿っている周縁と対向する部分であり、弧状壁30の両側は立壁部17に連続している。これにより、本体10の平面視では、弧状壁30は立壁部17の湾曲部17cと共に略円形を形成している。また、弧状壁30の高さは、立壁部17から離れるに従って低くなり、中央で最も低くなっていることにより、端辺11b側から見たときに、弧状壁30の上端は下方に窪むように円弧状に湾曲している。つまり、弧状壁30は、平面視で円弧状であると共に、端辺11b側から見て円弧状である。
【0033】
本体10は、上記構成に加え、固定用孔部19と、アース用クランプ70の支持台40とを有している。固定用孔部19は、本体10を屋根に留め付けるためのビス110を通すためのものである。本実施形態では、ベース部11において立壁部17の両外側と内側に、計三つの固定用孔部19が形成されている。それぞれの固定用孔部19の周縁は、固定用孔部19への雨水の流入を防ぐために、ベース部11より高く形成されている。
【0034】
支持台40は、屋根上に配される線材が電線である場合に、アースのためのワイヤ(図示を省略)を保持させるアース用クランプ70を支持させる台座である。支持台40は、ベース部11においてベース孔部15の近傍に設けられている。本実施形態では、弧状壁30と立壁部17との境界に、支持台40が設けられている。
【0035】
一方、蓋体50は、周壁部51と被覆部52a,52bとを有している。周壁部51は、本体10の立壁部17を外側から囲むU字形である。被覆部52a,52bは、周壁部51におけるU字の開端を除いて周壁部51に囲まれている空間を被覆する部分であり、平坦な被覆部52aと、湾曲した被覆部52bとからなる。平坦な被覆部52aは、周壁部51に沿う平坦な部分であって、本体10の立壁部17の上端に載置される部分である。湾曲した被覆部52bは、平坦な被覆部52aより内側で、外方に向かって膨らむように湾曲している部分である。被覆部52aには、立壁部17の上端に被覆部52aを載置したときにネジ溝17sと一致する位置に、ネジ用孔部52hが貫設されている。
【0036】
蓋体50は、周壁部51におけるU字の開端側に蓋体開口55を有しており、蓋体開口55の周縁近傍における被覆部52bの形状は、コネクタ支持部20の上端に沿うように形成されている。
【0037】
また、蓋体50は、その裏面から突出した突出壁57を更に有している。突出壁57は、立壁部17に囲まれた空間(以下、「立壁内空間S」と称する)を蓋体50で被覆したときに、弧状壁30とコネクタ支持部20との間のほぼ中間で突出する位置に形成されている。
【0038】
次に、本実施形態の線材引き込み具1の使用方法について、主に
図4を用いて説明する。屋根Rには、線材引き込み具1の設置に先立ち、貫通孔Hが形成される。貫通孔Hには、ガイド筒90が挿入される。ガイド筒90は、貫通孔Hより僅かに小径の筒部91と、貫通孔Hより大径のフランジ部92を有しており、フランジ部92を屋根Rに上方から当接させつつ、筒部91が貫通孔Hに挿入される。
【0039】
そして、貫通孔H(及び筒部91)と、ベース孔部15とが連通するようにベース部11を屋根Rに当接させた状態で、本体10を屋根R上に載置する。このとき、本体10の向きは、ベース部11において頂部11eが棟側に、端辺11bが軒側となる向きとする。従って、本実施形態の端辺11cが、本発明の「棟側端辺」に相当する。また、ベース部11と屋根Rとの間、ガイド筒90と屋根Rとの間に、ブチルゴムなどの防水材120のシートを介在させる。そして、ベース部11の固定用孔部19に通したビス110を屋根Rにねじ込み、本体10を屋根Rに固定する。
【0040】
コネクタ支持部20の挿通孔25に、パイプ用コネクタ60を挿通し、コネクタ支持部20にパイプ用コネクタ60を固定する。ここでは、パイプ用コネクタ60において雄ネジ61を有する端部を挿通孔25に通した後で、雄ネジ61をナット62と螺合させることにより、パイプ用コネクタ60をコネクタ支持部20に固定する場合を例示している。また、アース用クランプ70を、支持台40に取り付ける(
図3参照)。なお、本体10を屋根に固定する前に、パイプ用コネクタ60及びアース用クランプ70を本体10に取り付けておいても良い。
【0041】
その後、太陽電池モジュールやテレビアンテナ等から延びた線材Wが挿入されているパイプPを、パイプ用コネクタ60のうちコネクタ支持部20から外方に延び出す部分(以下、「外方接続部66」と称する)に接続する。例えば、外方接続部66が雄ネジまたは雌ネジを有する場合は、それぞれ螺合する雌ネジまたは雄ネジを端部に備えるパイプを接続することができる。或いは、外方接続部66に径方向に進退する留めピンが付いているパイプ用コネクタ60を使用し、外方接続部66より小径のパイプを挿入して留めピンで固定することにより、雄ネジや雌ネジのないパイプをコネクタ支持部20に固定することができる。
【0042】
パイプPがコネクタ支持部20に固定されたら、パイプPから引き出した線材Wをベース孔部15に導き、ベース孔部15及びガイド筒90を介して屋根の貫通孔Hに線材Wを挿入する。これにより、線材Wが屋根Rの上から建物内に引き込まれる。また、アース用のワイヤを、コネクタ支持部20のノッチ26に挿入して立壁内空間Sに引き入れ、アース用クランプ70に保持させた後、線材Wと同様にベース孔部15を介して建物内に引き込む。建物内に引き込まれたアース用のワイヤは、建物内に設置されたアース用端子に留め付けられる。
【0043】
本実施形態の支持台40は、本体10と一体に成形された金属製であり、金属製のアース用クランプ70が金属製のボルト71によって支持台40に取り付けられている。これにより、金属製の本体10は、アース用クランプ70を介してアース用のワイヤと導通する。
【0044】
線材及びアース用のワイヤの引き込み作業が終了したら、平坦な被覆部52aを立壁部17の上端面に載置し、ネジ用孔部52hに挿通したネジ81を立壁部17のネジ溝17sにねじ込む。これにより、蓋体50が本体10に固定される。
【0045】
ここでは、蓋体50を本体10に固定するためのネジ81として、金属製のネジを使用し、ネジ頭部81hと蓋体50との間に鋸歯付きのワッシャ82を介在させている。ワッシャ82の鋸歯が蓋体50に食い込むことにより、蓋体50とネジ81とが導通し、ネジ81をネジ溝17sにねじ込むことによりネジ81と本体10とが導通するため、ネジ81を介して蓋体50と本体10とを導通させることができる。
【0046】
なお、蓋体50で立壁内空間Sを被覆する際には、シール材を配することによって蓋体50と本体10との間に生じる空隙を埋めることができる。例えば、立壁部17の上端に、発泡樹脂などのシール材130aを予めU字状に接着しておくことができる(
図3参照)。同様に、コネクタ支持部20の上端にも、その形状に沿うシール材130bを接着しておくことができる。更に、ベース孔部15と線材との間にシール材を配することにより、線材を伝わった雨水がベース孔部15を介して建物内に浸入することを防止することができる。例えば、ベース孔部15に引き込まれた線材の周囲に生じる空隙を、ペースト状のシール材で埋めることができる。
【0047】
以上のように、本実施形態の線材引き込み具1によれば、線材Wが挿入されているパイプPを、パイプ用コネクタ60によってコネクタ支持部20に固定し、パイプPに挿入された状態で屋根R上に配されていた線材Wを立壁内空間Sに引き入れ、ベース孔部15を介して建物内に引き込むことができる。そして、ベース孔部15は、蓋体50で被覆されている立壁内空間Sで開口しているため、ベース孔部15を介して建物内に雨水が浸入するおそれが低減されている。また、ベース部11は、端辺11cにおける頂部11eを棟側に向けて配されているため、屋根上を流下する雨水が逆V字形の端辺11cによって両側に案内され、雨水がベース部11に乗り上げるおそれが低減されている。
【0048】
また、蓋体50は本体10に対して着脱されるものであるため、線材Wが挿入されているパイプPを、パイプ用コネクタ60を介してコネクタ支持部20に固定する作業や、パイプPから立壁内空間Sに引き出した線材Wをベース孔部15を介して建物内に引き込む作業を、蓋体50を取り外した状態で容易に行うことができる。
【0049】
線材Wが挿通されているパイプPが固定されるコネクタ支持部20は、外方に向かって開放される位置に設けざるを得ない構成である。また、コネクタ支持部20が開放している方向は、軒に向かう方向ではあるが、風などの影響により雨水が軒側から棟側に向かうこともあり得る。これに対し、線材引き込み具1では、コネクタ支持部20は端辺11bよりベース孔部15に近い位置、すなわち、立壁内空間Sの内部において、ベース部11から立設されている。そのため、コネクタ支持部20に貫設された挿通孔25を介して、雨水が内方に浸入するおそれが防止されている。
【0050】
加えて、蓋部開口55は、コネクタ支持部20の上端に沿う形状であるため、蓋体50で立壁内空間Sを被覆したときに、蓋体50と本体10との間に空隙が形成されにくく、空隙を介して雨水が立壁内空間Sに浸入するおそれが防止されている。
【0051】
また、ベース孔部15の周縁では、ベース孔部15より軒側でベース部11から弧状壁30が立設している。そのため、コネクタ支持部20に固定されたパイプPから立壁内空間Sに引き出された線材Wは、弧状壁30を越えるために上昇してからベース孔部15に引き込まれる。従って、雨水が線材Wを伝わって立壁内空間Sに浸入したとしても、上昇する線材Wを伝わって上方に移動することはできないため、雨水が弧状壁30を越えてベース孔部15に浸入することを防止することができる。特に、本実施形態はでは、蓋体50において被覆部52bの裏面から下方に突出している突出壁57によって、線材Wが押し下げられた後で、弧状壁30に沿って線材Wが上昇する。そのため、突出壁57がない場合に比べて、線材Wが上昇する角度を大きくすることが可能であり、ベース孔部15への雨水の浸入をより効果的に防止することができる。
【0052】
加えて、弧状壁30は、円形のベース孔部15に沿う形状であるため、弧状壁30を越えるように上昇させた線材Wをベース孔部15に引き込む作業が行い易い。また、弧状壁30は、上下方向において円弧状に窪んでいる形状である。そのため、屋根上ではパイプPに挿入されていた線材Wを、立壁内空間S側ではフレキシブル管(図示しない)に挿入させた場合も、フレキシブル管を弧状壁30に沿わせ易い。従って、フレキシブル管に挿入された状態の線材を、ベース孔部15を介して建物内に引き込む際に、弧状壁30とフレキシブ管との間に空隙が形成されにくいと共に、フレキシブ管に弧状壁30を越えさせる作業を行い易い。この場合、フレキシブル管は、パイプ用コネクタ60に立壁内空間S側から接続する。
【0053】
更に、コネクタ支持部20には、ベース部11との境界に小孔部27が形成されている。そのため、何らかの理由で立壁内空間Sの内部に雨水が浸入したとしても、屋根の流れ方向にベース部11上を流下する雨水が、小孔部27を通って排出される。
【0054】
この小孔部27の孔サイズは、雨水は十分に通過させるが、昆虫などの小動物は通過できない大きさである。そのため、線材引き込み具1を介して建物内に小動物が入り込むおそれを低減しつつ、小孔部27による排水の作用を発揮させることができる。
【0055】
更に、本実施形態では、共に金属製である本体10と蓋体50とが、ネジ81と鋸歯付きのワッシャ82を介して導通しており、本体10にはアース用クランプ70によってアース用のワイヤが連結されている。従って、本体10と蓋体50との間に防水のために配されたシール材が非導電性であっても、線材引き込み具1の全体がアースされた状態とすることができ、線材Wが電線である場合の使用に適している。
【0056】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0057】
例えば、上記では、コネクタ支持部20が平面視で直線状である場合を例示したが、
図6及び
図7に示すように、変形例の本体10bとして、両側が立壁部17に向かってそれぞれ端辺11bに近付くように傾斜しているコネクタ支持部20bを備える構成とすることができる。小孔部27は、本体10と同様に、ベース部11との境界であると共に立壁部17との境界である位置に形成されているため、コネクタ支持部20bにおいて両側で傾斜している部分21に開口している。そのため、小孔部27から排出される雨水が両外側に向かって流下し易く、小孔部27の近傍で雨水が滞留するおそれを低減できる利点がある。なお、
図6及び
図7では、線材引き込み具1と同様の構成について同一の符号を付している。
【0058】
また、上記では、パイプ用コネクタ60がナット62によってコネクタ支持部20に固定される場合を例示したが、これに限定されず、挿通孔25の内周面にネジ溝を設け、このネジ溝にパイプ用コネクタ60の雄ネジ61を螺合させることによって、パイプ用コネクタ60がコネクタ支持部20に固定される構成とすることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 線材引き込み具
10,10b 本体
11 ベース部
11c 端辺(棟側端辺)
15 ベース孔部
17 立壁部
17s ネジ溝
20,20b コネクタ支持部
25 挿通孔
27 小孔部
50 蓋体
51 周壁部
52a,52b 被覆部
52h ネジ用孔部
60 パイプ用コネクタ
81 ネジ
81h ネジ頭部
82 ワッシャ
P パイプ
R 屋根
W 線材