(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】セントルのフォームの製造方法及びセントルのフォームのサイドプレート
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20220201BHJP
【FI】
E21D11/10 B
(21)【出願番号】P 2019109551
(22)【出願日】2019-06-12
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】315014567
【氏名又は名称】有限会社 伊藤
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】土田 実
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-75501(JP,A)
【文献】特開昭61-138802(JP,A)
【文献】特開2012-1917(JP,A)
【文献】実開昭63-41699(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルのコンクリート成形面を成形するためのスキンプレートのトンネル延長方向の両幅端部の裏面にサイドプレートを溶接するセントルのフォームの製造方法において、
前記サイドプレートのセントル周方向の端部に一体形成された位置決め片を前記スキンプレートのトンネル周方向の端面に当接させて、サイドプレートをスキンプレートに対して位置決めし、その後、サイドプレートをスキンプレートに対して溶接し、前記位置決め片を前記端面から退避させるセントルのフォームの製造方法。
【請求項2】
サイドプレートをスキンプレートに対して溶接した後に、前記位置決め片を切り離す請求項1に記載のセントルのフォームの製造方法。
【請求項3】
サイドプレートをスキンプレートに対して溶接した後に、前記位置決め片を折り取る請求項2に記載のセントルのフォームの製造方法。
【請求項4】
トンネルのコンクリート成形面を成形するためのスキンプレートのトンネル延長方向の両幅端部の裏面に溶接されるサイドプレートであって、
そのサイドプレートの本体には、前記スキンプレートのトンネル周方向の端面に当てて、前記本体をスキンプレートに対して位置決めするための位置決め片を一体形成したセントルのフォームのサイドプレート。
【請求項5】
前記本体と位置決め片との間には、折り取り溝を形成した請求項4に記載のセントルのフォームのサイドプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル覆工コンクリートを成形するためのセントルにおいて、そのセントルを構成するフォーム(トンネル覆工コンクリート成形用の形枠)の製造方法及びフォームのサイドプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、トンネル覆工コンクリートを成形するためのセントルのフォーム組体及びそのフォーム組体を構成するフォームが開示されている。このフォームは、コンクリート成形面を構成するスキンプレートと、そのスキンプレートの裏面側の両幅端に位置するサイドプレートとを有する。そして、フォームは、隣接するサイドプレートがトンネルの延長方向において相互に位置決め状態で重ねられる。また、フォームは、スキンプレートのトンネル周方向の端面どうしが突き合わせ接合されてトンネル周方向に連続するとともに、スキンプレートのトンネル延長方向の端面どうしが突き合わせ接合されて、トンネル延長方向に連続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成のフォームにおいては、トンネル周方向に隣接する各フォームのスキンプレートがトンネル周方向及びトンネル延長方向において同一面において連続しないと、隣接するスキンプレート間に隙間や段差が生じることになる。このように、スキンプレート間に隙間や段差が生じると、トンネル覆工コンクリートの成形面の仕上がり品質が著しく悪化する結果となる。このため、各フォームのスキンプレートとサイドプレートとの位置関係が適切になるようにフォームを製造する必要がある。そこで、従来は、治具を用いてスキンプレートとサイドプレートとを所定の位置関係に保持して、その状態でスキンプレートとサイドプレートとを溶接するようにしていた。従って、スキンプレートとサイドプレートとを所定の位置関係に保持するための治具が必要になるばかりでなく、その治具をセットしたり、治具を外したりする手間を要する。しかも、治具とスキンプレート及びサイドプレートとの間の位置関係がずれるおそれもあって、このような場合は、スキンプレートとサイドプレートとの位置関係が不正確なものとなる。その結果、前記のように、トンネル覆工コンクリートの成形面の仕上がり品質の悪化を招くものとなる。
【0005】
本発明の目的は、スキンプレートとサイドプレートとの間における正確な位置関係を簡単に得ることができるセントルのフォームの製造方法及びセントルのサイドプレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明のセントルのフォームの製造方法においては、トンネルのコンクリート成形面を成形するためのスキンプレートのトンネル延長方向の両幅端部の裏面にサイドプレートを溶接するセントルのフォームの製造方法において、前記サイドプレートのセントル周方向の端部に一体形成された位置決め片を前記スキンプレートのトンネル周方向の端面に当接させて、サイドプレートをスキンプレートに対して位置決めし、その後、サイドプレートをスキンプレートに対して溶接し、前記位置決め片を前記端面から退避させることを特徴とする。ここで、位置決め片の端面から退避は、位置決め面のサイドプレートからの分離及び折り曲げを含むものとする。
【0007】
以上のセントルのフォームの製造方法においては、サイドプレートをスキンプレートの成形面と反対側の面におけるスキンプレートの裏面上に載置すれば、位置決め片をスキンプレートの端面に当接させることができて、スキンプレートとサイドプレートとを位置決めできる。そして、この状態で、サイドプレートとスキンプレートとを溶接できる。溶接後、位置決め片を退避させれば、フォームを用いてフォーム組体を構築できる。以上のように、スキンプレートとサイドプレートとの位置決めを別体の治具を用いることなく容易に行うことができる。
【0008】
本発明のサイドプレートにおいては、トンネルのコンクリート成形面を成形するためのスキンプレートのトンネル延長方向の両幅端部の裏面に溶接されるサイドプレートであって、そのサイドプレートの本体には、前記スキンプレートのトンネル周方向の端面に当てて、前記本体をスキンプレートに対して位置決めするための位置決め片を一体形成したことを特徴とする。
【0009】
従って、位置決め片によってスキンプレートとサイドプレートとを位置決めして、それらのプレートを溶接できる。このため、スキンプレートとサイドプレートとの位置決めを別体の治具を用いることなく容易に行うことができる。また、位置決め片がサイドプレートと一体であるため、サイドプレートの打抜時に位置決め片を同時に形成できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スキンプレートとサイドプレートとの間における正確な位置関係を簡単に得ることができて、隣接するフォームのスキンプレート間の段差や隙間を防止できる効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】トンネルを幅方向に沿って切断してセントルを示す断面図。
【
図2】トンネルを長さ方向に沿って切断してセントルを示す断面図。
【
図3】セントルのフォーム組み付け状態を示す一部斜視図。
【
図4】セントルのフォーム組み付け状態を示す一部側面図。
【
図5】インバートフォームとサイドフォームとの連結部を示す断面図。
【
図7】インバートフォームの組み付け方法を示す分解断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
以下、本発明を具体化した実施形態について説明する。
図1及び
図2に示すように、トンネル101内の地面102にはセントル11を構成する支持装置12が設置される。この支持装置12には、セントル11を構成するほぼ円筒状外周面のコンクリート成形面を有したフォーム組体13が支持される。このフォーム組体13は、その頂部においてトンネル延長方向に並設された複数枚の頂部天フォーム141と、その各頂部天フォーム141の両側下部に位置する下部天フォーム142と、各下部天フォーム142の下部に位置する側フォーム15と、各側フォーム15の下部に位置するインバートフォーム16とを備えている。
【0013】
図3~
図5に示すように、各フォーム141,142,15,16は、それぞれ全体としてトンネル周方向に長い長方形をなすとともに、ほぼ円弧状に湾曲されて、前記コンクリート成形面を形成するスキンプレート21を備えている。そのスキンプレート21のコンクリート成形面の反対側である裏面側には、フォーム141,142,15,16全体を補強するための補強枠22を備えている。前記のように、各フォーム141,142,15,16は、それぞれスキンプレート21と補強枠22とを有しているが、スキンプレート21及び補強枠22の形状や大きさなどはフォームの種類ごとに異なる。本実施形態においては、主として、インバートフォーム16を例にとってフォームの構成などを説明する。
【0014】
図3~
図5に示すように、インバートフォーム16において、補強枠22は、スキンプレート21の両幅端に位置する一対のサイドプレート23と、両サイドプレート23間に位置する補強材24~27を有している。トンネル周方向に隣接する側フォーム15と連結される端部には断面L形をなす補強材24が固定されており、その補強材24の両端部には軸孔31を有する一対の軸受板32が溶接されている。
【0015】
図5に示すように、インバートフォーム16は、側フォーム15の下部においてフォーム組体13の最下部に位置するため、側フォーム15に連結される端部は上部側の一方の端部のみである。これに対し、他のフォーム141,142,15は、トンネル周方向の両端部において隣接するフォーム141,142,15,16と連結される。従って、軸受板32を有する補強材24はインバートフォーム16はその連結側の一端部に設けられるが、他のフォーム141,142,15において、前記の軸受板32を有する補強材24はトンネル周方向の両端部に設けられる。そして、隣接するフォーム141,142,15,16の端部が前記軸孔31を通る連結軸33によりトンネル周方向において連結されている。この連結により、トンネル周方向に隣接するフォーム141,142,15,16のスキンプレート21の端面35が突き合わせ状態で当接されて、トンネル101の周方向に連続する円弧の成形面が形成されている。
【0016】
図6に示すように、前記サイドプレート23には、それぞれ複数のピン孔41とボルト孔42とが透設されている。そして、
図5及び
図6に示すように、トンネル延長方向において隣接する他のフォーム141,142,15,16のサイドプレート23のピン孔41間に位置決めピン43が挿入される。このため、トンネル延長方向に隣接するサイドプレート23がトンネル周方向において位置決めされる。また、隣接するボルト孔42間にボルト44を通してナット45が締め付けられることにより、トンネル延長方向において隣接するフォーム141,142,15,16が相互に固定される。
【0017】
このため、
図4及び
図5に示すように、各フォーム141,142,15,16のスキンプレート21がトンネル周方向に隣接する他のフォーム141,142,15,16のスキンプレート21と端面35どうしを突き合わせている。従って、トンネル周方向に連続するフォームはほぼ円弧面を形成している。また、
図4に示すように、トンネル延長方向に隣接する他のフォーム141,142,15,16のスキンプレート21の端面36どうしが突き合わされて、トンネル延長方向に連続する141,142,15,16のスキンプレート21がほぼ円弧面を形成している。
【0018】
図7~
図9に示すように、インバートフォーム16において、スキンプレート21と溶接される前のサイドプレート23の本体29において、側フォーム15と連結される側の端面37には位置決め片51が一体形成されている。この位置決め片51は前記本体29との間に、透孔52及び折り取り溝53を介して配置されている。位置決め片51の端縁には位置決め面54が形成されている。この位置決め面54と本体29の前記端面37との間には間隔αが設定されている。なお、側フォーム15においても、スキンプレート21と溶接される前のサイドプレート23の本体29の一方の端面37には、透孔52及び折り取り溝53を介して位置決め片51が一体形成されている。そして、この場合も、端面37に対して前記間隔αと同様な間隔を隔てた位置決め面54が位置決め片51に形成されている。ただし、本実施形態において、頂部天フォーム141及び下部天フォーム142は、位置決め片51が設けられない。この頂部天フォーム141及び下部天フォーム142においては、後述の説明とは異なり、スキンプレート21とサイドプレート23との位置決めが位置決め片51を使用しない別の手段(図示しない)で行われるものである。
【0019】
次に、インバートフォーム16の製造方法について説明する。
スキンプレート21とサイドプレート23との溶接に際しては、
図7から明らかなように、スキンプレート21を治具60の下受け面61の上面に対して、円弧状に膨らんだ成形面を下側にして設置する。次いで、スキンプレート21の円弧状に凹んだ上面(裏面)における両幅端にサイドプレート23を立てて、前記治具60のサイド受け面62に添わせる。このとき、
図9に示すように、位置決め片51の位置決め面54をスキンプレート21のトンネル周方向の端面35に当接させる。従って、この端面35が基準になって、サイドプレート23の端面35からのスキンプレート21の端面35の突出量,言い換えれば、端面35から間隔αを隔てて、スキンプレート21に対してサイドプレート23が位置決めされる。この状態で、スキンプレート21の上面とサイドプレート23の内側面との間が溶接される。
【0020】
このようにして、スキンプレート21とサイドプレート23とが所定の位置関係において溶接された後、位置決め片51が折り取られて、取り除かれる。
その後、図示しない治具を用いて、軸受板32を有する補強材24がスキンプレート21のトンネル周方向の端面35を基準にして、スキンプレート21の裏面に位置決めされて、両者が溶接される。また、他の補強材25,26,27もスキンプレート21の裏面に溶接される。
【0021】
同様にして、側フォーム15においては、スキンプレート21の裏面に対して、サイドプレート23が溶接されるとともに、補強枠22が溶接される。側フォーム15において、軸受板32を有する補強材24は、スキンプレート21のトンネル周方向の両端部に溶接される。
【0022】
このようにして、各フォーム15,16が製造される。
そして、フォーム組体13の組み立てに際しては、フォーム141,142,15,16がトンネル周方向に並設配置されて、スキンプレート21の端面35どうしが突き合わされる。また、フォーム141,142,15,16がトンネル延長方向に並設配置されて、スキンプレート21の端面36どうしが突き合わされるとともに、隣接するフォーム141,142,15,16のサイドプレート23が重ねられる。そして、この状態で、各フォーム141,142,15,16が連結軸33によって連結される。
【0023】
また、重ねられたサイドプレート23の対向するピン孔41に位置決めピン43が挿入されてサイドプレート23が相互に位置決めされる。そして、重ねられたサイドプレート23の対向するボルト孔42にボルト44が通されて、ナット45が締め付けられる。このようにすれば、スキンプレート21に対してサイドプレート23が位置決めされているため、トンネル周方向及び延長方向に隣接するスキンプレート21は連続するほぼ円筒面を構成するように配置される。従って、このようにして組み立てられたフォーム組体13を用いて、トンネルの覆工コンクリート103が成形される。
【0024】
従って、本実施形態においては、以下の効果を発揮する。
(1)スキンプレート21とサイドプレート23とが位置決めされるため、隣接するフォーム15,16のサイドプレート23を位置決め状態で連結させれば、トンネル周方向及び延長方向においてフォーム15,16のスキンプレート21を連続させることができる。そして、この状態では、隣接するフォーム15,16のスキンプレート21間に段差や隙間が生じないため、覆工コンクリート103の仕上げ品質を向上できる。なお、頂部天フォーム141及び下部天フォーム142は、インバートフォーム16や側フォーム15とは異なる別の手段を用いて、スキンプレートが隣接する他のスキンプレートと連続するように配置される。
【0025】
(2)スキンプレート21とサイドプレート23との位置決めがサイドプレート23に一体形成された位置決め片51によって行われるため、両プレート21,23間の位置決めのための治具が不要になる。
【0026】
(3)スキンプレート21とサイドプレート23とを位置決めするための位置決め片51がサイドプレート23に一体形成されているために、サイドプレート23をスキンプレート21上に載せるだけで、両者を正確に位置決めできる。これに対し、サイドプレート23及びスキンプレート21と別体の従来の治具においては、サイドプレート23及びスキンプレート21の両者と治具とを位置合わせする必要があって、位置ずれしやすい。このため、治具の設置に手間がかかる。それだけでなく、スキンプレート21が湾曲しているため、サイドプレート23がスキンプレート21に対する所定の位置からずれると、サイドプレート23の高さや傾きが所定位置から変位して、隣接する他のサイドプレート23と連結できない事態が生じる。本実施形態においては、このようなおそれを解消できる。
【0027】
(4)サイドプレート23の位置決め片51や、折り取り溝53,透孔52は、サイドプレート23をレーザー加工などで打ち抜き加工する際に、一連の工程として加工可能であるため、位置決め片51や、折り取り溝53,透孔52の加工にはほとんど手間がかからない。
【0028】
(5)位置決め片51が隣接する他のフォーム15,16との突き合わせ部を避けて配置されている。このため、位置決め片51を折り取ったあとの部分に、バリが残ったとしても、フォーム15,16の連結配置の支障にはならない。しかも、位置決め片51の折り取り後には、折り取り痕が残留するため、その折り取り痕の形状や位置に従って、フォーム15,16の製造業者などを特定できて、フォーム15,16の損傷修理の際などにおいて、迅速な修理や交換が可能になる。
【0029】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。そして、本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0030】
・サイドプレート23の本体と位置決め片51との間の透孔52及び折り取り溝53の少なくとも一方を省略すること。
・折り取り溝53をサイドプレート23の両側面に形成すること。
【0031】
・
図9に2点鎖線で示すように、スキンプレート21の裏面より上側の位置に溝53を形成すること。この構成においては、スキンプレート21に対してサイドプレート23を溶接した後に、溝53の下部側を折り取る。この場合、
図9に2点鎖線の外形70で示すように、位置決め片51が他の部材と干渉しない大きさであることが必要になる。
【0032】
・サイドプレート23の本体29と位置決め片51との間の透孔52及び折り取り溝53を省略して、スキンプレート21に対してサイドプレート23を溶接した後は、レーザーカッターなどのカッターによって位置決め片51を除去すること。
【0033】
・頂部天フォーム141及び下部天フォーム142の少なくとも一方において、側フォーム15やインバートフォーム16のような位置決め片を設けること。
【符号の説明】
【0034】
11…セントル、12…支持装置、13…フォーム組体、15…側フォーム、16…インバートフォーム、21…スキンプレート、23…サイドプレート、29…本体、51…位置決め片、53…折り取り溝。