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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20220201BHJP
   B65G 49/06 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B65G49/06 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021000344
(22)【出願日】2021-01-05
(62)【分割の表示】P 2016200966の分割
【原出願日】2016-10-12
(65)【公開番号】P2021073693
(43)【公開日】2021-05-13
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000146009
【氏名又は名称】株式会社昭和真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】塩野 忠久
(72)【発明者】
【氏名】森 広宣
(72)【発明者】
【氏名】松岡 範佳
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-168724(JP,A)
【文献】特開平11-17482(JP,A)
【文献】特開2015-18831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B65G 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子容器内部に電子回路素子が収容された電子部品の製造方法において、
前記電子回路素子および前記素子容器の少なくとも一方に対する処理を実行する処理工程と、
この処理工程の前および/または後に前記電子部品を移載する移載工程と
を含み、
前記移載工程は、前記電子部品の構成要素の導電部分に、静電吸着電極をその電極の導体部分が前記導電部分に接することのない状態で近接させ、前記静電吸着電極に電圧を印加することで、その電子部品構成要素を静電吸着する静電吸着工程を含み、
前記素子容器の外側には内部に収容する前記電子回路素子に電気的に接続される外部接続電極が設けられ、
前記移載工程では、前記電子回路素子が収容された状態の前記素子容器を移載対象とし、
前記静電吸着工程では、前記静電吸着電極を前記外部接続電極の表面に近接させ、前記外部接続電極と前記静電吸着電極との間に電圧を印加することで前記素子容器を静電吸着する
ことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品の製造方法において、
前記素子容器は、前記外部接続電極として、前記素子容器内の前記電子回路素子に接続される2つの電極に加えグランドまたはフローティング電極を有し、
前記静電吸着工程では、前記少なくとも前記グランドまたはフローティング電極の表面に前記静電吸着電極を近接させて静電吸着する
ことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子部品の製造方法において、
前記静電吸着工程では、前記静電吸着電極の表面に誘電体膜が設けられた静電吸着ピンを用い、前記誘電体膜を前記外部接続電極に接触させて、前記静電吸着電極と前記外部接続電極との間のクーロン力またはジョンソンラーベック力またはグラディエント力により前記素子容器を吸着する
ことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電子部品の製造方法において、
前記静電吸着工程では、前記静電吸着電極の表面に、移載対象となる前記素子容器の外部接続電極に対応して、その外部接続電極が設けられている面の前記外部接続電極以外の部分に接触させるための凸部が設けられた静電吸着ピンを用い、前記素子容器の前記外部接続電極が設けられていない部分に前記凸部を接触させて、前記凸部の周囲の部分と前記外部接続電極との間のクーロン力により前記素子容器を吸着する
ことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載の電子部品の製造方法において、
前記移載対象の前記素子容器は実質的に長方形状であり、前記素子容器の外側の1つの面に、前記外部接続電極として、前記長方形状の1つの対角に配置され内部の電子回路素子に接続された2つの電極と、前記長方形状の他の対角に配置された2つのグランドまたはフローティング電極とを有し、
前記静電吸着工程では、前記静電吸着ピンを2本用い、各々の誘電体膜をそれぞれ前記2つのグランドまたはフローティング電極に接触させて静電吸着する
ことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の電子部品の製造方法において、
移載対象の前記素子容器は実質的に長方形状であり、前記素子容器の外側の1つの面に、前記外部接続電極として、前記長方形状の1つの対角に配置され内部の電子回路素子に接続された2つの電極と、前記長方形状の他の対角に配置された2つのグランドまたはフローティング電極とを有し、
前記静電吸着工程では、前記静電吸着ピンとして、前記凸部が十字形のものを用い、前記十字形で分割された4つの部分でそれぞれ、前記2つの電極および前記2つのグランドまたはフローティング電極を静電吸着する
ことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法において、
前記電子回路素子は、前記素子容器内に固定されて水晶振動子を構成する水晶片であり、
前記処理工程は、前記素子容器内に固定された前記水晶片に対して周波数調整を実施する周波数調整工程を含む
ことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の電子部品の移載方法において、
前記移載工程では、前記電子回路素子が収容された状態の前記素子容器を、前記処理工程の前の工程で使用されるトレーから前記処理工程で使用される処理トレーに、または前記処理工程で使用される処理トレーから次の工程で使用されるトレーに移載する
ことを特徴とする電子部品の移載方法。
【請求項9】
素子容器内部に電子回路素子が収容された電子部品を製造する装置であって、
前記電子回路素子および前記素子容器の少なくとも一方に対する処理を実行する処理部と、
前記処理部へ、および/または前記処理部から、前記電子部品を移載する移載機構と
を備え、
前記素子容器には、その外側に、内部に収容する前記電子回路素子に電気的に接続される外部接続電極が設けられており、
前記移載機構は、前記電子回路素子が収容された状態の前記素子容器を移載対象とするものであって、静電吸着電極と、この静電吸着電極を操作するマニピュレータとを備え、
前記マニピュレータは、前記外部接続電極の表面に、前記静電吸着電極をその電極の導体部分が前記外部接続電極の表面に接することのない状態で近接させ、前記静電吸着電極に電圧を印加することで、前記素子容器を静電吸着する
ことを特徴とする電子部品の製造装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電子部品の製造装置において、
前記静電吸着電極には、その表面に、移載対象となる電子部品構成要素の導電部分の表面に接触させるための誘電体膜が設けられている
ことを特徴とする電子部品の製造装置。
【請求項11】
請求項9に記載の電子部品の製造装置において、
前記静電吸着電極は、その表面に、移載対象となる電子部品構成要素の導電部分が設けられている面の前記導電部分以外の部分に対応して、前記導電部分以外の部分に接触して前記表面のそれ以外の部分と前記電子部品構成要素の前記導電部分とを接触させずに対向させて維持する凸部を有する
ことを特徴とする電子部品の製造装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電子部品の製造装置において、
移載対象となる電子部品構成要素は素子容器であり、
この素子容器は、実質的に長方形状であり、外側の1つの面に、長方形状の1つの対角に配置され内部の電子回路素子に接続された2つの電極と、前記長方形状の他の対角に配置された2つのグランドまたはフローティング電極とを有し、
前記静電吸着電極の前記凸部は、前記2つの電極および前記2つのグランドまたはフローティング電極の間の形状に対応して、十字形に設けられている
ことを特徴とする電子部品の製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法および装置に関する。本発明は、特に水晶振動子の製造工程での利用に適するが、水晶振動子以外の電子部品の製造にも同様に利用できる。以下では、電子部品として、主に水晶振動子を例に説明する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子を有する素子の製造工程には、電極が設けられた水晶片を水晶振動子容器内に固定した後に周波数を最終調整する工程(以下、「周波数調整工程」という)と、この工程の後に、真空あるいは窒素雰囲気下でリッド(蓋)を取り付けて封止する工程(以下、「封止工程」という)が含まれる。周波数調整工程の作業サイトから封止工程の作業サイトへの水晶振動子容器の移載には、一般に、真空チャックが用いられる(例えば、特許文献1参照)。なお、通常、「水晶振動子」とは、電極が設けられた水晶片が容器内に封入されたものをいうが、以下では、説明のため、水晶片が容器内に固定されてはいるがまだ封止されていない状態のものも水晶振動子という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-179670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周波数調整工程と封止工程とは各々別装置で実施されるものであり、さらに、周波数調整工程では水晶振動子容器内部を露出して処理を施すのに対し、封止工程では水晶振動子容器を蓋で覆った状態で搬入する必要があるため、処理トレーを共通化することが難しく、工程間における大気中での移載工程を避けることができなかった。周波数調整工程を終了した水晶振動子容器は大気中に搬出され、大気下の移載ロボットまたは作業員により封止用トレーに移載された後、封止装置に搬入されていた。周波数調整工程終了後に水晶振動子が大気に曝されてしまうため、水分吸着やパーティクルの付着、電極の酸化を防止することができず、周波数ばらつき、良品率の低下、歩留まりの低下等の課題が生じていた。
【0005】
そこで、周波数調整工程と封止工程とを、真空雰囲気下で連続して行うことが考えられている。この場合、少なくとも容器かリッドのいずれかを真空雰囲気下で移載する必要がある。しかし、このような電子部品の移載用途で従来から用いられてきた真空チャックは、吸着ノズルの開口部から内部に空気を吸い込んで対象物を吸着するものであり、真空中では利用できない。大気中であれば粘着剤を用いることも考えられるが、粘着剤はガス発生の原因となり、また、粘着材の蒸発、吸着によって、粘着剤成分がデバイスに吸着すると、デバイスの性能が悪化するおそれがあることから、真空雰囲気下での利用は困難である。
【0006】
本発明は、このような課題を解決し、特に真空雰囲気下での複数の工程の実施に適した、電子部品の製造方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によると、素子容器内部に電子回路素子が収容された電子部品の製造方法において、電子回路素子および素子容器の少なくとも一方に対する処理を実行する処理工程と、この処理工程の前および/または後に電子部品を移載する移載工程とを含み、移載工程は、電子部品の構成要素の導電部分に、静電吸着電極をその電極の導体部分が導電部分に接することのない状態で近接させ、静電吸着電極に電圧を印加することで、その電子部品構成要素を静電吸着する静電吸着工程を含み、素子容器の外側には内部に収容する電子回路素子に電気的に接続される外部接続電極が設けられ、移載工程では、電子回路素子が収容された状態の素子容器を移載対象とし、静電吸着工程では、静電吸着電極を外部接続電極の表面に近接させ、外部接続電極と静電吸着電極との間に電圧を印加することで素子容器を静電吸着することを特徴とする電子部品の製造方法が提供される。
【0008】
本発明は、真空雰囲気下での複数の工程のために電子部品を移載する必要のある電子部品の製造に特に適するが、真空雰囲気下に限定されず、複数の工程間で電子部品を移載するどのような電子部品の製造に利用できる。
【0009】
素子容器は、外部接続電極として、素子容器内の電子回路素子に接続される2つの電極に加えグランドまたはフローティング電極を有することができる。この場合、静電吸着工程では、少なくともグランドまたはフローティング電極の表面に静電吸着電極を近接させて静電吸着することができる。
【0010】
静電吸着工程では、静電吸着電極の表面に誘電体膜が設けられた静電吸着ピンを用い、誘電体膜を外部接続電極に接触させて、静電吸着電極と外部接続電極との間のクーロン力またはジョンソンラーベック力またはグラディエント力により素子容器を吸着することができる。移載対象の素子容器が実質的に長方形状であり、素子容器の外側の1つの面に、外部接続電極として、長方形状の1つの対角に配置され内部の電子回路素子に接続された2つの電極と、長方形状の他の対角に配置された2つのグランドまたはフローティング電極とを有する場合、静電吸着工程では、静電吸着ピンを2本用い、各々の誘電体膜をそれぞれ2つのグランドまたはフローティング電極に接触させて静電吸着することができる。
【0011】
また、静電吸着工程では、静電吸着電極の表面に、移載対象となる素子容器の外部接続電極に対応して、その外部接続電極が設けられている面の外部接続電極以外の部分に接触させるための凸部が設けられた静電吸着ピンを用い、素子容器の外部接続電極が設けられていない部分に凸部を接触させて、凸部の周囲の部分と外部接続電極との間のクーロン力により素子容器を吸着することもできる。移載対象の素子容器が実質的に長方形状であり、素子容器の外側の1つの面に、外部接続電極として、長方形状の1つの対角に配置され内部の電子回路素子に接続された2つの電極と、長方形状の他の対角に配置された2つのグランドまたはフローティング電極とを有する場合、静電吸着工程では、静電吸着ピンとして、凸部が十字形のものを用い、十字形で分割された4つの部分でそれぞれ、2つの電極および2つのグランドまたはフローティング電極を静電吸着することができる。
【0012】
電子回路素子は、素子容器内に固定されて水晶振動子を構成する水晶片であり、処理工程は、素子容器内に固定された水晶片に対して周波数調整を実施する周波数調整工程を含むことができる。
【0013】
移載工程では、電子回路素子が収容された状態の素子容器を、処理工程の前の工程で使用されるトレーから処理工程で使用される処理トレーに、または処理工程で使用される処理トレーから次の工程で使用されるトレーに移載することができる。
【0014】
本発明の第2の側面によると、素子容器内部に電子回路素子が収容された電子部品を製造する装置であって、電子回路素子および素子容器の少なくとも一方に対する処理を実行する処理部と、処理部へ、および/または処理部から、電子部品を移載する移載機構とを備え、素子容器には、その外側に、内部に収容する電子回路素子に電気的に接続される外部接続電極が設けられており、移載機構は、電子回路素子が収容された状態の素子容器を移載対象とするものであって、静電吸着電極と、この静電吸着電極を操作するマニピュレータとを備え、マニピュレータは、外部接続電極の表面に、静電吸着電極をその電極の導体部分が外部接続電極の表面に接することのない状態で近接させ、静電吸着電極に電圧を印加することで、素子容器を静電吸着することを特徴とする電子部品の製造装置が提供される。
【0015】
静電吸着電極には、その表面に、移載対象となる電子部品構成要素の導電部分の表面に接触させるための誘電体膜が設けられる。
【0016】
あるいは、静電吸着電極は、その表面に、移載対象となる電子部品構成要素の導電部分が設けられている面の導電部分以外の部分に対応して、導電部分以外の部分に接触して表面のそれ以外の部分と電子部品構成要素の導電部分とを接触させずに対向させて維持する凸部を有する構成とすることもできる。この場合、移載対象となる電子部品構成要素は素子容器であり、この素子容器は、実質的に長方形状であり、外側の1つの面に、長方形状の1つの対角に配置され内部の電子回路素子に接続された2つの電極と、長方形状の他の対角に配置された2つのグランドまたはフローティング電極とを有し、記静電吸着電極の凸部は、2つの電極および2つのグランドまたはフローティング電極の間の形状に対応して、十字形に設けられている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、複数の工程間で電子部品を移載して処理することができる。本発明は特に、製造工程の少なくとも一部に真空雰囲気下での工程を含む場合に特に有効である。本発明を特に水晶振動子の製造工程で利用することで、水晶片に対する周波数調整工程あるいはリッドの加熱(アニール)処理と封止工程とを真空雰囲気下で連続して行うことができる。電子部品を大気に晒すことなく真空雰囲気下で搬送することにより、電子部品を高い良品率で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態の電子部品の製造装置を示すブロック構成図である。
図2図2は、素子容器の移載に関連する部分の構成を詳しく説明するブロック構成図である。
図3図3は、図1に示す製造装置で製造工程の一部が行われる電子部品の一例を示す図であり、水晶振動子の構成を説明する図である。
図4図4は、本発明の実施形態における移載工程を説明する図である。
図5図5は、水晶振動子の製造工程を説明する図である。
図6図6は、図4に示す工程における素子容器を、図4と上下反転した方向から見た斜視図である。
図7図7は、素子容器の移載をさらに詳しく説明する図である。
図8図8は、周波数調整処理部の概略を説明する平面図である。
図9図9は、周波数調整処理部の概略を説明する側面図である。
図10図10は、第1の移載機構による素子容器の移載工程の概略を説明する図である。
図11図11は、第2の移載機構によるリッドの移載工程の概略を説明する図である。
図12図12は、封止処理部の概略説明図である。
図13図13は、図3に示す静電吸着ピンとは異なる静電吸着ピンを用いた移載工程を説明する図である。
図14図14は、図13に示す移載工程で用いられる静電吸着ピンの先端の構成の一例を示す斜視図である。
図15図15は、図13に示す移載工程で用いられる静電吸着ピンの先端の構成の別の例を示す斜視図である。
図16図16は、封止工程で用いることのできる従来のシーム溶接封止方法を説明する図である。
図17図17は、静電吸着を利用したシーム溶接封止方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る電子部品の製造装置のブロック構成図である。ここでは、水晶振動子の製造工程を例に説明する。この装置は、真空装置1内に、電子回路素子、この電子回路素子を収容する素子容器、および電子回路素子が収容された状態で素子容器を封止する蓋(リッド)の少なくともひとつに対する処理工程を実行する封止前処理部として、周波数調整処理部2および加熱処理部3を備え、電子回路素子が収容された状態の素子容器に蓋(リッド)を装着して真空封止型の電子部品とする封止工程を実行する封止処理部6を備え、さらに、電子回路、素子容器および蓋を封止処理部6に移載する移載工程を実行する移載機構4,5を備える。周波数調整処理部2、加熱処理部3、移載機構4,5および封止処理部6は、互いに搬送機構7により連結され、真空装置1外の制御部8により制御される。
【0020】
周波数調整処理部2は、素子容器に収容された電子回路素子としての水晶片に、周波数調整処理を行う。加熱処理部3は、金属製のリッドを加熱(アニール)して脱ガスを行う。ここでは水晶振動子の製造を例にしているが、他の素子を製造する場合には、その素子に対応する封止前処理部を設けることができる。移載機構5は、加熱処理部3で処理されたリッドを移載機構4に移載する。移載機構4は、周波数調整処理部2で処理された素子容器を移載機構5から搬送されたリッドの上に移載し、搬送機構7を介して、封止処理部6に移送する。
【0021】
図2は、素子容器の移載に関連する部分の構成を詳しく説明するブロック構成図である。素子容器の移載を行う移載機構4は、マニピュレータ40と、このマニピュレータ40により操作される静電吸着ピン41,42とを備える。マニピュレータ40は、静電吸着工程を実行し、静電吸着ピン41,42の静電吸着電極を、吸着対象(この場合には素子容器)の導電部分に接することのない状態で近接させ、静電吸着電極に電圧を印加することで、その吸着対象を静電吸着する。
【0022】
図3は、移載機構4による移載対象となる水晶振動子の構成を説明する図である。この水晶振動子10は、電子回路素子としての水晶片11が、素子容器12内に収容されている。素子容器12の外側には、外部接続電極として、電極パッド13,14,15および16が設けられる。電極パッド13,14は、素子容器12内の水晶片11に接続され、電極パッド15,16は、グランドまたはフローティングの電極である。素子容器12は実質的に長方形状であり、電極パッド13,14,15および16は、素子容器12の外側の1つの面に設けられる。電極パッド13,14は長方形状の1つの対角に配置され、電極パッド15,16は長方形状の他の対角に配置されている。
【0023】
図4は、図2に示す移載機構4による図3に示す水晶振動子10の移載工程を説明する図である。静電吸着ピン41,42はそれぞれ、棒状の静電吸着電極43,44を有する。静電吸着電極43,44の先端部の表面にはそれぞれ、移載対象の水晶振動子10の外部接続電極、特に電極パッド15,16の表面に接触させるため、誘電体膜45,46が設けられている。誘電体膜は適宜選択すればよいが、実施例ではアルミナまたはテフロン(登録商標)を用いるものとする。静電吸着電極43,44には、それぞれ直流電源47,48が接続される。この例では、電極パッド15,16がグランドとなっているものとしている。また、静電吸着電極43,44には互いに別極性の電圧、すなわち、静電吸着電極43には負電圧、静電吸着電極44には正電圧が、それぞれ印加されるものとする。
【0024】
図4において、水晶振動子10および静電吸着ピン41,42は真空雰囲気下に置かれており、水晶振動子10を周波数調整処理部3で使用される処理トレーから、封止処理部6で使用される封止トレーに移載するように制御される。すなわち、マニピュレータ40により静電吸着ピン41,42を操作して、誘電体膜45,46をそれぞれ電極パッド15,16の表面に接触させる。これにより、静電吸着電極43,44がそれぞれ電極パッド15,16の表面に近接した状態となる。この状態で、静電吸着電極43と電極パッド15の間に電源47から電圧を印加し、同時に、静電吸着電極44と電極パッド16の間に電源48から電圧を印加する。これにより、静電吸着電極43と電極パッド15の間、および静電吸着電極44と電極パッド16の間に、それぞれクーロン力が生じる。このクーロン力により、水晶振動子10(厳密には水晶片11が収容された状態の素子容器12、以下同様)を吸着することができる。誘電体膜の材料は適宜選択すればよく、例えば静電吸着電極の表面に体積抵抗率1010~1012Ω・cmの誘電体膜を設けて、ジョンソンラーベック力により水晶振動子10を吸着してもよい。または、グラディエント力により水晶振動子10を吸着してもよい。水晶振動子10が吸着された状態で静電吸着ピン41,42を移動し、作業サイトを移動して、水晶振動子10を別の作業サイトに移載することができる。
【0025】
水晶振動子10の製造工程をさらに詳しく説明し、その工程における素子容器12の移載について説明する。
【0026】
図5は、水晶振動子の製造工程を説明する図である。ここでは、表面実装型水晶振動子を例に説明する。まず、図5(A)に示すように、所望の周波数が得られるサイズに加工された水晶片11を用意する。この水晶片11の両面に、図5(B)に示すように、蒸着により金属膜を形成して、それぞれ励振電極17,18とする。図5(B)において、裏面の励振電極18は破線で示す。続いて、図5(C)に示すように、励振電極17,18が形成された水晶片11を、素子容器12内に固定する。素子容器12の表面(図では裏面になっている)には、図3に示すように、電極パッド13,14,15,16が設けられている。水晶片11に設けられた励振電極17,18は、それぞれ電極パッド13,14に電気的に接続される。この状態、すなわち図5(D)に示す状態で、周波数調整工程が実施される。周波数調整工程後、図5(E)に示すように、素子容器12をリッド12aで封止する。なお、図5においては、説明のため、水晶片11、素子容器12およびリッド12aの上下関係を逆にしている。
【0027】
図6は、図5に示す製造工程における素子容器、特に素子容器12を、図5と上下反転した方向から見た斜視図である。この素子容器12を、図5(D)に示す周波数調整工程の後、図4に示す静電吸着ピン41,42で吸着し、リッド12aが置かれている作業サイトに搬送する。そして、図5(D)に示す封止工程を実行する。
【0028】
吸着力の点からは、吸着される電極(電極パッド15,16)はグランドに接続されていることが望ましいが、フローティング電極を吸着の対象としてもよい。さらには、素子容器内に収容される電子回路素子(この場合は水晶片11)に影響がないものであれば、その電子回路素子に接続される電極(電極パッド13,14)を利用することもできる。
【0029】
以上の説明では、図6に示すような4つの電極パッドを有する水晶振動子を例に説明したが、吸着対象は少なくとも1つ以上の電極パッドを有していればよく、図6に示す例に限定されない。また、静電吸着ピンの数も適宜設定すればよく、1つの静電吸着ピンが複数の電極パッドに同時に接触して吸着する構成としてもよい。例えば音叉型水晶振動子は2つの電極パッドを有しており、2本の静電吸着ピンを2つの電極パッド夫々に接触させてもよいし、1本の静電吸着ピンを2つの電極パッドに接触させて1本の静電吸着ピンで吸着搬送してもよい。図6では吸着の対象となる電極パッド15,16が2つある場合を説明したが、吸着の対象となる電極は1つでもよい。また、より多くの電極が設けられている電子部品についても、同様にして移載することができる。吸着対象となりうる複数の電極がある場合に、その1つあるいは一部だけを吸着の対象とすることもでき、全てを吸着の対象とすることもできる。また、電極が容器の広い範囲に設けられている場合にも、同様に移載することができる。表面実装型水晶振動子以外の形態の水晶振動子や、水晶振動子以外の電子部品でも、例えば容器の外側に導電部が設けられているものであれば、同様に移載することができる。
【0030】
図7は、移載機構4による水晶振動子の移載をさらに詳しく説明する図である。周波数調整処理部2から封止処理部6への移載は、実際には、周波数調整処理部2で使用された周波数調整トレー21を移載機構4による作業サイトである移載室に搬送し、そこで、水晶振動子を封止処理部6で使用する封止トレー61に移載する。周波数調整トレー21および封止トレー61の搬送は、搬送機構7により行われる。搬送機構7は、図7では周波数調整処理部2と移載室との間、および移載室と封止処理部6との間の搬送しか示していないが、周波数調整処理部2への周波数調整トレー21の搬入、周波数調整処理部2内での周波数調整トレー21の移動、封止処理部6内での封止トレー61の移動、および封止処理部6からの封止トレー61の搬出も行う。ここでは各サイトのトレーあるいはその他の容器の搬送手段を総括して搬送機構7として説明するが、各サイトで独立の搬送手段を設けてもよい。
【0031】
図8および図9は周波数調整処理部2の概略説明図であり、図8は平面図、図9は側面図である。図3に示す水晶振動子10は、周波数調整トレー21の凹部に収容され、搬送機構7により周波数調整処理部2に搬入される。周波数調整トレー21の底面には開口が設けられ、素子容器12の開口が底面に対面する向きで収容されるため、周波数調整トレー21の底面の開口から励振電極17が露出する。周波数調整処理部2の内部には、イオンビームを照射するイオンガン22とイオンビームを遮蔽するシャッター23とが設けられ、励振電極17にイオンビームを照射することで、水晶振動子10の周波数を調整する。水晶振動子10は周波数調整トレー21上にマトリクス配列され、搬送機構7は、周波数調整トレー21上の任意の列がイオンガン22のイオンビーム照射エリアに位置するようトレーを搬送する。図示しない周波数測定手段により水晶振動子10の周波数を測定し、所望の周波数となる時点でシャッター23を閉じて、周波数調整を終了する。周波数調整トレー21上の全ての水晶振動子10の処理が完了すると、周波数調整トレー21は周波数調整処理部2から搬出され、搬送機構7により移載機構4に搬入される。
【0032】
図10は、移載機構4の動作の概略を説明する図である。移載機構4は、上述したように、周波数調整トレー21から封止トレー61に水晶振動子10を移載する装置である。予めリッド12aが収容された封止トレー61のリッド12a上に、素子容器12を移載する。
【0033】
次に、リッド12aの移載について説明する。図11は、移載機構5の動作の概略を説明する図である。
【0034】
加熱処理部3でアニールされたリッド12aは、加熱処理部3で使用された加熱容器ごと、搬送機構7により、移載機構5による作業サイトである移載室に搬送される。移載機構5は、図4に示された静電吸着ピン41,42と同様の静電吸着ピン51を用いて、リッド12aを封止トレー61に移載する。リッド12aは金属製であり、誘電体膜を介して静電吸着電極とリッド12aとの間に電圧を印加することでリッド12aを吸着する。リッド12aは導電部を有していればよく、絶縁部材に導電膜が形成された構成であってもよい。例えばセラミックや水晶、ガラス等からなるリッドに金メッキを施し、ろう材としてのAuSnを形成した部分を静電吸着に利用してもよい。このとき、リッド12aは封止トレー61上に複数並べて配置されるが、周波数調整工程で不良があった水晶振動子10に対応するリッド12aについては、封止トレー61から取り除くように制御される。リッド12aが収容された封止トレー61は、搬送機構7により、上述した移載機構4の作業サイトに搬送される。
【0035】
図12は、封止処理部6の概略説明図である。搬送機構7は、リッド12aおよび素子容器12を搭載する封止トレー61を、封止処理部6に搬入する。封止処理部6には封止トレー61を挟むように加熱ブロック62,63が設けられ、封止トレー61を加熱ブロック62,63間で加熱することで、リッド12aと素子容器12とが接合する。
【0036】
図13は、静電吸着ピンの別の構成例を説明する図である。この静電吸着ピン401は、静電吸着電極402を有し、この静電吸着電極402の表面に凸部403を有する。この凸部403は、移載対象となる電子部品(例えば水晶振動子10)の外部接続電極が設けられている面の外部接続電極以外の部分に対応して設けられ、外部接続電極以外の部分に接触して静電吸着電極401の表面の凸部403以外の部分と移載対象となる電子部品の外部接続電極とを接触させずに対向させて、例えば距離dに維持する。
【0037】
静電吸着ピン401の凸部403を、素子容器12の電極パッド13,14,15,16以外の部分に接触させることで、凸部の周囲の部分と電極パッド13,14,15,16との距離をdに維持し、それらの間のクーロン力により、水晶振動子10を吸着することができる。
【0038】
図14は、図13に示す静電吸着ピン401の先端の構成の一例を示す斜視図である。この例では、円筒形の静電吸着電極402aの先端に、十字形凸部403aが設けられている。例えば図6の水晶振動子10の素子容器12に対して、十字形凸部403aを、電極パッド13,14,15,16に接しないように接触させる。これにより、静電吸着電極402aの先端の十字形凸部403aで分割された4つの部分でそれぞれ、電極パッド13,14,15,16を静電吸着することができる。
【0039】
図15は、図13に示す静電吸着ピン401の先端の構成の別の例を示す斜視図である。この例では、四角柱状の静電吸着電極402bの先端に、十字形凸部403bが設けられている。静電吸着電極402bの先端の四角形状は、移載対象となる電子部品の形状に対応している。例えば図5の水晶振動子10に対して、静電吸着電極402bの先端の四角形状と素子容器12の四角形状とを対応させて、十字形凸部403bを素子容器12に接触させる。これにより、静電吸着電極402bを電極パッド13,14,15,16に接触させることなく、静電吸着電極402bの先端の十字形凸部63bで分割された4つの部分でそれぞれ、電極パッド13,14,15,16を静電吸着することができる。このような構成とすることにより、被移載物との接触部が金属にできるため長寿命にでき、吸着電極が被移載物と接触しないため、表面汚染を防止し、磨耗等による吸着力低下を防ぐことができる。
【0040】
ここでは、電極パッドが4つの電子部品を吸着するものとして、十字形の凸部を示したが、移載対象の電子部品の電極パッドの形状や個数によって、凸部の形状を任意に設計することができる。例えば、音叉形の水晶振動子のように素子が細長く、その両端に電極が設けられている場合には、中央に一つの凸部を設け、その両側で電極を静電吸着することができる。図13ないし図15では凸部403を設け、静電吸着電極と電極パッド間を距離dの空間としているが、例えば静電吸着電極402に誘電膜を形成し、距離dの空間内の一部を誘電体材料で満たしてもよい。
【0041】
図16は、図12に示したものとは別の封止処理部6の構成例を示す。この構成例では、封止トレー601上に、電子回路素子としての水晶片11が収容された状態の素子容器12を下に、リッド12aを上に配置し、ローラー電極602により真空シーム溶接封止を行う。
【0042】
ただし、従来の真空シーム溶接封止では、素子の小型低背、狭小ピッチ化に限界がある。例えば水晶振動子は、パッケージ厚さが0.3mm以下となり、封止トレー601のワークポケット深さを0.1mm以下しかとれない。一方、シーム溶接では、数Aないし数十Aの大電流を流すため、ローラー電極602を小型化することができない。そのため、ローラー電極602が封止トレー601に接触してしまったり、搬送不良が生じたりする。また、ローラー電極602の大きさでピッチが制限されてしまい、素子が小型化されても、ピッチを狭くしてトレー搭載数を増やすことができなくなっている。
【0043】
図17は、このような従来の真空シーム溶接封止技術を改善した例を示す。この例では、移載機構4,5は、電子回路素子としての水晶片11が収容された状態の素子容器12とリッド12aとをそれぞれ移載対象とし、静電吸着電極として、素子容器12用の第1の静電吸着電極411と、リッド12a用の第2の静電吸着電極412とを用いる。封止処理部6は、第1の静電吸着電極411により吸着されている状態の素子容器12と、第2の静電吸着電極412により吸着されている状態のリッド12aとを、互いに対向させ、第1の静電吸着電極411を台座として、ローラー電極602によりシーム溶接封止する。このとき、素子容器12とリッド12aとは、1組ずつ、または列毎に処理される。
【0044】
この構成によれば、ローラー電極602が大きくても、封止トレーに誤って接触することがなく、ローラー電極602によるトレーのピッチやワークポケット深さの制限が解消される。
【0045】
本発明により、周波数調整工程から封止工程への水晶振動子移載を真空雰囲気下で実施することが可能となるため、封止工程前の水晶振動子に水分や塵埃等のパーティクルが付着することを防止し、封止後の周波数ばらつきを低減させることができる。また、周波数調整工程後の電極を大気に曝すことなく封止することができるため、電極の酸化を防止することも可能となる。また、アニール処理後の蓋を大気に曝すことなく封止装置に搬入することができるため、更なる周波数のばらつき低減に貢献する。封止工程では十分なガス抜きを実施することが重要であるが、水分吸着のない水晶振動子容器及び蓋を封止することができるため、ガス抜きのための予備加熱アニール時間を短縮することも可能となる。封止後の周波数シフトを抑止し、良品率を向上させることができるため、歩留まりを改善することができる。
【0046】
以上の説明では、水晶振動子の製造を例に、回路素子が収容された素子容器に真空雰囲気下で蓋を装着して真空封止型の電子部品とする封止工程を含む電子部品の製造方法および装置を説明した。本発明は、水晶振動子の製造に限定されるものではなく、また、真空雰囲気下での処理に限定されるものでもない。本発明は、電子回路素子およびその電子回路要素を収容する素子容器の少なくとも一方に対する処理を実行する処理工程と、この処理工程の前および/または後に電子部品を移載する移載工程とを含むどのような電子部品の製造にも利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 真空装置
2 周波数調整処理部
21 周波数調整トレー
22 イオンガン
23 シャッター
3 加熱処理部
4,5 移載機構
40 マニピュレータ
41,42,51,401,411,412 静電吸着ピン
43,44402,402a,402b 静電吸着電極
45,46 誘電体膜
47,48 直流電源
403,403a,403b 凸部
6 封止処理部
61 封止トレー
62,63 加熱ブロック
602 ローラー電極
7 搬送機構
8 制御部
10 水晶振動子
11 水晶片
12 素子容器
12a リッド(蓋)
13,14,15,16 電極パッド(外部接続電極)
17,18 励振電極

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17