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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】試験装置管理システム及び管理装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20220201BHJP
   G01N 17/00 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
G05B23/02 302N
G05B23/02 ZIT
G01N17/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017071450
(22)【出願日】2017-03-31
(65)【公開番号】P2018173815
(43)【公開日】2018-11-08
【審査請求日】2019-02-13
【審判番号】
【審判請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100118049
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 浩治
(72)【発明者】
【氏名】今井 信吾
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩和
【合議体】
【審判長】見目 省二
【審判官】松原 陽介
【審判官】大山 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-160665(JP,A)
【文献】特開2008-52577(JP,A)
【文献】特開平5-95616(JP,A)
【文献】特開2017-27329(JP,A)
【文献】特開2003-150237(JP,A)
【文献】特開2003-207188(JP,A)
【文献】特開2002-149234(JP,A)
【文献】特開2008-147489(JP,A)
【文献】特開2005-149137(JP,A)
【文献】特開平11-231931(JP,A)
【文献】特開2006-194596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00-23/02 G01N 17/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二以上の環境試験装置と、管理装置と、を備えた試験装置管理システムであって、
前記二以上の環境試験装置は、それぞれ、
所定の試験条件に従い試料の周囲環境の調整を行う環境調整器と、
前記試料の周囲環境を検出する環境センサー及び前記環境調整器の一以上の状態を検出する状態センサーのうち少なくとも一方と、
前記調整中に、前記試験条件と、前記少なくとも一方の検出値と、を含む試験情報を前記管理装置へ送信する送信部と、
を備え、
前記管理装置は、
前記二以上の環境試験装置の其々が前記調整中に送信する前記試験情報を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記試験情報を、前記試験条件と前記少なくとも一方の検出値とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記受信部が前記調整中に受信した受信試験情報に含まれている前記少なくとも一方の検出値と、前記記憶部が前記受信試験情報の受信前であって前記二以上の環境試験装置の其々が過去に前記調整を行っていたときに記憶した前記試験情報のうち、前記受信試験情報前記試験条件と異種の試験条件を含まず同種の試験条件を含む対象試験情報に含まれている、前記同種の試験条件に対応付けられた前記少なくとも一方の検出値と、に基づき、前記受信試験情報を送信した対象環境試験装置が、異常な状態になる直前の警告状態であるか否かを判定する第一判定処理を行う判定部と、
前記第一判定処理において前記対象環境試験装置が前記警告状態であると判定された場合、前記対象環境試験装置が前記警告状態であることを通知する通知部と、
を備える試験装置管理システム。
【請求項2】
前記第一判定処理において、前記判定部は、前記受信試験情報に含まれている前記環境センサーの検出値が第一値から第二値に変化するまでに要した時間と、前記対象試験情報に含まれている、前記同種の試験条件に対応付けられた前記環境センサーの検出値が前記第一値から前記第二値に変化するまでに要した時間の所定の第一代表値と、の時間差が、所定の第一基準時間以上である場合に、前記対象環境試験装置が前記警告状態であると判定する
請求項1に記載の試験装置管理システム。
【請求項3】
前記管理装置は、
前記第一判定処理において前記対象環境試験装置が前記警告状態ではないと判定された場合、前記受信試験情報及び前記対象試験情報に含まれている前記状態センサーの検出値に基づき、前記対象環境試験装置の前記環境調整器が寿命に到達するまでの余命期間を予測する予測処理を行う予測部
を更に備え、
前記通知部は、更に、前記予測処理において予測された前記余命期間を通知する
請求項1又は2に記載の試験装置管理システム。
【請求項4】
前記管理装置は、
前記第一判定処理において前記対象環境試験装置が前記警告状態ではないと判定された場合、前記受信試験情報及び前記対象試験情報に含まれている前記状態センサーの検出値に基づき、前記対象環境試験装置の前記環境調整器が寿命に到達するまでの余命期間を予測する予測処理を行う予測部
を更に備え、
前記判定部は、前記第一判定処理を行う前に、前記受信試験情報に含まれている前記状態センサーの検出値前記対象試験情報に含まれている、前記同種の試験条件に対応付けられた前記状態センサーの検出値と、に基づき、前記対象環境試験装置が正常な状態であるか否かを判定する第二判定処理を行い、
前記第二判定処理において前記対象環境試験装置が正常な状態ではないと判定された場合、前記判定部は前記第一判定処理を行い、
前記第二判定処理において前記対象環境試験装置が正常な状態であると判定された場合、前記予測部は前記予測処理を行い、前記通知部は前記予測処理において予測された前記余命期間を通知する
請求項1又は2に記載の試験装置管理システム。
【請求項5】
前記試験情報には、前記環境調整器のk(kは2以上の整数)種の状態の検出値が含まれ、
前記第二判定処理において、前記判定部は、前記対象試験情報に含まれている前記k種の状態の検出値からk種の代表値を算出し、前記受信試験情報に含まれている前記k種の状態の検出値と前記k種の代表値との間のユークリッド距離又はマハラノビス距離が、所定長以上である場合に、前記対象環境試験装置が正常な状態ではないと判定する
請求項4に記載の試験装置管理システム。
【請求項6】
前記判定部は、前記第一判定処理において前記対象環境試験装置が前記警告状態であると判定された場合、前記受信試験情報に含まれている前記状態センサーの検出値前記対象試験情報に含まれている、前記同種の試験条件に対応付けられた前記状態センサーの検出値と、に基づき、前記対象環境試験装置が異常な状態であるか否かを判定する第三判定処理を行い、
前記第三判定処理において前記対象環境試験装置が異常な状態であると判定された場合、前記通知部は、前記対象環境試験装置が異常な状態であることを通知し、
前記第三判定処理において前記対象環境試験装置が異常な状態ではないと判定された場合、前記予測部は前記予測処理を行い、前記通知部は、前記予測処理において予測された前記余命期間と前記対象環境試験装置が前記警告状態であることとを通知する
請求項3から5の何れか一項に記載の試験装置管理システム。
【請求項7】
前記第三判定処理において、前記判定部は、前記受信試験情報に含まれている前記環境調整器の何れか一の状態の検出値が、前記対象試験情報に含まれている前記一の状態の検出値の所定の第二代表値を、所定時間以上連続して又は前記所定時間中に所定回数以上超えている場合に、前記対象環境試験装置が異常な状態であると判定する
請求項6に記載の試験装置管理システム。
【請求項8】
前記二以上の環境試験装置のうち何れか一の環境試験装置に、前記管理装置が備えられている請求項1から7の何れか一項に記載の試験装置管理システム。
【請求項9】
環境調整器によって所定の試験条件に従い試料の周囲環境の調整を行う二以上の環境試験装置の状態を管理する管理装置であって、
前記二以上の環境試験装置の其々が前記調整中に送信する、前記試験条件と、前記周囲環境の検出値及び前記環境調整器の一以上の状態の検出値のうち少なくとも一方の検出値と、を含む試験情報を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記試験情報を、前記試験条件と前記少なくとも一方の検出値とを対応付けて記憶する記憶部と、
前記受信部が前記調整中に受信した受信試験情報に含まれている前記少なくとも一方の検出値と、前記記憶部が前記受信試験情報の受信前であって前記二以上の環境試験装置の其々が過去に前記調整を行っていたときに記憶した前記試験条件のうち、前記受信試験情報前記試験条件と異種の試験条件を含まず同種の試験条件を含む対象試験情報に含まれている、前記同種の試験条件に対応付けられた前記少なくとも一方の検出値と、に基づき、前記受信試験情報を送信した対象環境試験装置が、異常な状態になる直前の警告状態であるか否かを判定する第一判定処理を行う判定部と、
前記第一判定処理において前記対象環境試験装置が前記警告状態であると判定された場合、前記対象環境試験装置が前記警告状態であることを通知する通知部と、
を備える管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試験装置の状態を管理する試験装置管理システム及び管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1乃至3等に記載のように、作業機械や産業用機器等のメンテナンス対象機器の稼働状況をサーバに送信し、サーバにおいて、受信した稼働状況及びメンテナンス対象機器と同種の機器から得られた稼働状況に基づき異常の発生時期を予測し、異常の発生前に通知する技術が知られている。前記稼働状況には、メンテナンス対象機器の各稼働部品の温度及び振動や、各稼働部品の稼働に用いられる油や水等の温度、圧力及び流量等が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-259729号公報
【文献】特開2003-44126号公報
【文献】特許第4011338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、メンテナンス対象機器が異常な状態になる直前の状態になった場合、メンテナンス対象機器を負担の小さい稼働条件で稼働させたとしても、稼働状況が、メンテナンス対象機器が負担の大きい稼働条件で正常に稼働しているときと略同じ状況になることがある。この場合、上記特許文献1乃至3等に記載の従来技術では、メンテナンス対象機器が送信した稼働状況が、メンテナンス対象機器と同種の機器が負担の大きい稼働条件で正常に稼働しているときの稼働状況と略等しいために、異常の発生時期が近くないと誤って予測される虞があった。
【0005】
この場合、当該誤って予測された異常の発生時期の通知を受けたユーザーは、異常の発生時期が近くないと判断し、メンテナンス対象機器の稼働を継続する虞があった。その結果、メンテナンス対象機器が異常な状態となり、メンテナンス対象機器が正常に稼働するように修理されるまでの間、メンテナンス対象機器を利用できなくなる虞があった。
【0006】
また、上記とは反対に、メンテナンス対象機器が負担の大きい稼働条件で正常に稼働している場合に、稼働状況が、異常な状態にあるメンテナンス対象機器が負担の小さい稼働条件で稼働しているときと略同じ状況になることがある。この場合、上記特許文献1乃至3等に記載の従来技術では、メンテナンス対象機器が送信した稼働状況が、異常な状態にあるメンテナンス対象機器と同種の機器が負担の小さい稼働条件で稼働しているときの稼働状況と略等しいために、既に異常が発生していると誤って判定する虞があった。この場合、当該異常の発生の判定結果を受けとったユーザーは、メンテナンス対象機器が正常に稼働しているにも関わらず、メンテナンス対象機器の稼働を強制的に停止する虞があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされた発明であり、一以上の環境試験装置の其々が異常な状態になる直前の警告状態であることを適切に通知することができる試験装置管理システム及び管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による試験装置管理システムは、二以上の環境試験装置と、管理装置と、を備えた試験装置管理システムであって、前記二以上の環境試験装置は、それぞれ、所定の試験条件に従い試料の周囲環境の調整を行う環境調整器と、前記試料の周囲環境を検出する環境センサー及び前記環境調整器の一以上の状態を検出する状態センサーのうち少なくとも一方と、前記調整中に、前記試験条件と、前記少なくとも一方の検出値と、を含む試験情報を前記管理装置へ送信する送信部と、を備え、前記管理装置は、前記二以上の環境試験装置の其々が前記調整中に送信する前記試験情報を受信する受信部と、前記受信部が受信した前記試験情報を、前記試験条件と前記少なくとも一方の検出値とを対応付けて記憶する記憶部と、前記受信部が前記調整中に受信した受信試験情報に含まれている前記少なくとも一方の検出値と、前記記憶部が前記受信試験情報の受信前であって前記二以上の環境試験装置の其々が過去に前記調整を行っていたときに記憶した前記試験情報のうち、前記受信試験情報前記試験条件と異種の試験条件を含まず同種の試験条件を含む対象試験情報に含まれている、前記同種の試験条件に対応付けられた前記少なくとも一方の検出値と、に基づき、前記受信試験情報を送信した対象環境試験装置が、異常な状態になる直前の警告状態であるか否かを判定する第一判定処理を行う判定部と、前記第一判定処理において前記対象環境試験装置が前記警告状態であると判定された場合、前記対象環境試験装置が前記警告状態であることを通知する通知部と、を備える。
【0009】
また、本発明による管理装置は、環境調整器によって所定の試験条件に従い試料の周囲環境の調整を行う二以上の環境試験装置の状態を管理する管理装置であって、前記二以上の環境試験装置の其々が前記調整中に送信する、前記試験条件と、前記周囲環境の検出値及び前記環境調整器の一以上の状態の検出値のうち少なくとも一方の検出値と、を含む試験情報を受信する受信部と、前記受信部が受信した前記試験情報を、前記試験条件と前記少なくとも一方の検出値とを対応付けて記憶する記憶部と、前記受信部が前記調整中に受信した受信試験情報に含まれている前記少なくとも一方の検出値と、前記記憶部が前記受信試験情報の受信前であって前記二以上の環境試験装置の其々が過去に前記調整を行っていたときに記憶した前記試験条件のうち、前記受信試験情報前記試験条件と異種の試験条件を含まず同種の試験条件を含む対象試験情報に含まれている、前記同種の試験条件に対応付けられた前記少なくとも一方の検出値と、に基づき、前記受信試験情報を送信した対象環境試験装置が、異常な状態になる直前の警告状態であるか否かを判定する第一判定処理を行う判定部と、前記第一判定処理において前記対象環境試験装置が前記警告状態であると判定された場合、前記対象環境試験装置が前記警告状態であることを通知する通知部と、を備える。
【0010】
本構成によれば、受信試験情報が示す、対象環境試験装置において所定の試験条件に従い調整中の試料の周囲環境及び環境調整器の一以上の状態のうち少なくとも一方の検出値と、対象試験情報が示す、以上の環境試験装置の其々で対象環境試験装置と同種の試験条件に従い過去に調整を行っていたときの前記少なくとも一方の検出値とに基づき、対象環境試験装置が警告状態であるか否かが判定される。
【0011】
このため、対象環境試験装置で所定の試験条件に従い調整中の前記少なくとも一方の検出値と、以上の環境試験装置の其々で対象環境試験装置とは異種の試験条件に従い過去に調整を行っていたときの前記少なくとも一方の検出値とに基づき、対象環境試験装置が警告状態であるか否かを判定するよりも、以上の環境試験装置の其々が異常な状態になる直前の警告状態であるか否かを適切に判定できる。
【0012】
そして、本構成によれば、対象環境試験装置が警告状態であると判定された場合、対象環境試験装置が警告状態であることが通知される。これにより、以上の環境試験装置の其々が異常な状態になる直前の警告状態であることを適切に通知できる。
【0013】
また、当該通知を受けたユーザーは対象環境試験装置が異常な状態になる前に、対象環境試験装置が警告状態であることに気付くことができる。これにより、当該ユーザーは、対象環境試験装置を点検する等、対象環境試験装置が異常な状態になる虞を低減するための作業を実施できる。その結果、対象環境試験装置が異常な状態になってから対象環境試験装置の修理を行う場合よりも、対象環境試験装置で調整が行えなくなる時間を低減できる。したがって、環境試験装置のユーザーは、試験スケジュールに基づいてメンテナンス計画を立てることができる。これにより、当該ユーザーは、スケジュール通りに試験を行え、試験の機会損失を低減できる。
【0014】
また、前記第一判定処理において、前記判定部は、前記受信試験情報に含まれている前記環境センサーの検出値が第一値から第二値に変化するまでに要した時間と、前記対象試験情報に含まれている、前記同種の試験条件に対応付けられた前記環境センサーの検出値が前記第一値から前記第二値に変化するまでに要した時間の所定の第一代表値と、の時間差が、所定の第一基準時間以上である場合に、前記対象環境試験装置が前記警告状態であると判定することが好ましい。
【0015】
本構成によれば、受信試験情報が示す調整中の試料の周囲環境の検出値と、対象試験情報が示す一以上の環境試験装置で過去に行われた当該調整と同種の試験条件を用いた調整中の試料の周囲環境の検出値とが、第一値から第二値に変化するまでに要した時間の時間差に基づき、対象環境試験装置が警告状態であるか否かを適切に判定できる。
【0016】
また、前記管理装置は、前記第一判定処理において前記対象環境試験装置が前記警告状態ではないと判定された場合、前記受信試験情報及び前記対象試験情報に含まれている前記状態センサーの検出値に基づき、前記対象環境試験装置の前記環境調整器が寿命に到達するまでの余命期間を予測する予測処理を行う予測部を更に備え、前記通知部は、更に、前記予測処理において予測された前記余命期間を通知してもよい。
【0017】
本構成によれば、対象環境試験装置が警告状態ではないと判定された場合、一以上の環境試験装置の其々で行われた対象環境試験装置と同種の試験条件に従う調整中の環境調整器の一以上の状態に基づき、適切に余命期間が予測され、当該予測された余命期間が通知される。
【0018】
このため、当該通知を受けたユーザーは対象環境試験装置が警告状態ではないうちに、対象環境試験装置の環境調整器が寿命に到達するまでに要する期間を適切に把握することができる。これにより、当該ユーザーは、対象環境試験装置を点検する等、対象環境試験装置が異常な状態になる虞を低減するための作業を、時間的に余裕を持って実施することができる。したがって、環境試験装置のユーザーは、試験スケジュールに基づいてメンテナンス計画を立てることができる。これにより、当該ユーザーは、スケジュール通りに試験を行え、試験の機会損失を低減できる。
【0019】
また、前記管理装置は、前記第一判定処理において前記対象環境試験装置が前記警告状態ではないと判定された場合、前記受信試験情報及び前記対象試験情報に含まれている前記状態センサーの検出値に基づき、前記対象環境試験装置の前記環境調整器が寿命に到達するまでの余命期間を予測する予測処理を行う予測部を更に備え、前記判定部は、前記第一判定処理を行う前に、前記受信試験情報に含まれている前記状態センサーの検出値前記対象試験情報に含まれている、前記同種の試験条件に対応付けられた前記状態センサーの検出値と、に基づき、前記対象環境試験装置が正常な状態であるか否かを判定する第二判定処理を行い、前記第二判定処理において前記対象環境試験装置が正常な状態ではないと判定された場合、前記判定部は前記第一判定処理を行い、前記第二判定処理において前記対象環境試験装置が正常な状態であると判定された場合、前記予測部は前記予測処理を行い、前記通知部は前記予測処理において予測された前記余命期間を通知してもよい。
【0020】
本構成によれば、一以上の環境試験装置の其々で行われた対象環境試験装置と同種の試験条件に従う調整中の環境調整器の一以上の状態に基づき、対象環境試験装置が正常な状態であるか否かを適切に判定できる。
【0021】
そして、本構成によれば、対象環境試験装置が正常な状態ではないと判定された場合、第一判定処理が行われるので、対象環境試験装置が警告状態であるかを適切に判定できる。一方、対象環境試験装置が正常な状態であると判定された場合、余命期間が適切に予測され、当該予測された余命期間が通知される。このため、当該通知を受けたユーザーは対象環境試験装置が正常な状態であるうちに、対象環境試験装置の環境調整器が寿命に到達するまでに要する期間を適切に把握することができる。これにより、当該ユーザーは、対象環境試験装置を点検する等、対象環境試験装置が異常な状態になる虞を低減するための作業を、時間的により余裕を持って実施することができる。したがって、環境試験装置のユーザーは、試験スケジュールに基づいてメンテナンス計画を立てることができる。これにより、当該ユーザーは、スケジュール通りに試験を行え、試験の機会損失を低減できる。
【0022】
また、前記試験情報には、前記環境調整器のk(kは2以上の整数)種の状態の検出値が含まれ、前記第二判定処理において、前記判定部は、前記対象試験情報に含まれている前記k種の状態の検出値からk種の代表値を算出し、前記受信試験情報に含まれている前記k種の状態の検出値と前記k種の代表値との間のユークリッド距離又はマハラノビス距離が、所定長以上である場合に、前記対象環境試験装置が正常な状態ではないと判定することが好ましい。
【0023】
本構成によれば、試験情報に環境調整器の複数種類の状態の検出値が含まれている場合であっても、一以上の環境試験装置の其々で行われた対象環境試験装置と同種の試験条件に従う調整中の環境調整器の複数種類の状態の検出値からユークリッド距離又はマハラノビス距離を算出し、当該算出したユークリッド距離又はマハラノビス距離に基づき、対象環境試験装置が正常な状態であるか否かを適切に判定することができる。
【0024】
前記判定部は、前記第一判定処理において前記対象環境試験装置が前記警告状態であると判定された場合、前記受信試験情報に含まれている前記状態センサーの検出値前記対象試験情報に含まれている、前記同種の試験条件に対応付けられた前記状態センサーの検出値と、に基づき、前記対象環境試験装置が異常な状態であるか否かを判定する第三判定処理を行い、前記第三判定処理において前記対象環境試験装置が異常な状態であると判定された場合、前記通知部は、前記対象環境試験装置が異常な状態であることを通知し、前記第三判定処理において前記対象環境試験装置が異常な状態ではないと判定された場合、前記予測部は前記予測処理を行い、前記通知部は、前記予測処理において予測された前記余命期間と前記対象環境試験装置が前記警告状態であることとを通知してもよい。
【0025】
本構成によれば、一以上の環境試験装置の其々で行われた対象環境試験装置と同種の試験条件に従う調整中の環境調整器の一以上の状態に基づき、対象環境試験装置が異常な状態であるか否かを適切に判定できる。
【0026】
そして、本構成によれば、対象環境試験装置が異常な状態であると判定された場合、対象環境試験装置が異常な状態であることが通知される。このため、当該通知を受けたユーザーは、対象環境試験装置における調整を迅速に終了することができる。これにより、異常な状態の対象環境試験装置において、正常ではない調整を無駄に継続することを回避できる。
【0027】
一方、対象環境試験装置が異常な状態ではないと判定された場合、余命期間が適切に予測され、当該予測された余命期間が通知される。また、対象環境試験装置が警告状態であることが通知される。このため、これらの通知を受けたユーザーは、対象環境試験装置が警告状態であるうちに、対象環境試験装置の環境調整器が寿命に到達するまでに要する期間を適切に把握することができる。これにより、当該ユーザーは、対象環境試験装置を点検する等、対象環境試験装置が異常な状態になる虞を低減するための作業を早急に実施することができる。
【0028】
また、前記第三判定処理において、前記判定部は、前記受信試験情報に含まれている前記環境調整器の何れか一の状態の検出値が、前記対象試験情報に含まれている前記一の状態の検出値の所定の第二代表値を、所定時間以上連続して又は前記所定時間中に所定回数以上超えている場合に、前記対象環境試験装置が異常な状態であると判定することが好ましい。
【0029】
本構成によれば、環境調整器の一以上の状態のうち一の状態の検出値しか試験情報に含まれていない場合であっても、一以上の環境試験装置の其々で行われた対象環境試験装置と同種の試験条件に従う調整中の環境調整器の前記一種類の状態の検出値を用いて、対象環境試験装置が異常な状態であるか否かを適切に判定することができる。
【0030】
また、前記一以上の環境試験装置のうち何れか一の環境試験装置に、前記管理装置が備えられていてもよい。
【0031】
本構成によれば、管理装置を一以上の環境試験装置とは別の装置として構成する場合よりも、試験装置管理システムを構成するために必要な装置の配置スペースを低減することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、一以上の環境試験装置の其々が異常な状態になる直前の警告状態であることを適切に通知することができる試験装置管理システム及び管理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】試験装置管理システムの全体像の一例を示す図である。
図2】環境試験装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】冷熱衝撃装置が備える環境センサー及び状態センサーの一例を示す図であり、(A)は当該冷熱衝撃装置の外観の斜視図であり、(B)は図3(A)のB-B線断面図であり、(C)は図3(A)のC-C線断面図である。
図4図3に示す冷熱衝撃装置とは異なる調整方式の冷熱衝撃装置が備える環境センサー及び状態センサーの一例を示す図であり、(A)は当該冷熱衝撃装置の外観の斜視図であり、(B)は図4(A)のB-B線断面図であり、(C)は図4(A)のC-C線断面図であり、(D)は図4(A)のD-D線断面図である。
図5】恒温恒湿器が備える環境センサー及び状態センサーの一例を示す図であり、(A)は恒温恒湿器の外観の斜視図であり、(B)は図5(A)のB-B線断面図であり、(C)は図5(A)のC-C線断面図である。
図6】管理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図7】環境試験装置における試料の試験の動作を示すフローチャートである。
図8】管理装置における環境試験装置の状態管理の動作を示すフローチャートである。
図9】記憶部が記憶した試験情報の一例を示す図である。
図10】対象環境試験装置が正常な状態であるか否かを判定する処理の一例の説明図である。
図11】対象環境試験装置が警告状態か否かを判定する処理の一例の説明図である。
図12】対象環境試験装置が異常な状態であるか否かを判定する処理の一例の説明図である。
図13】予測部が余命期間を予測する処理の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(実施形態)
(システムの全体像)
以下、本発明に係る試験装置管理システムの一実施形態について説明する。図1は、試験装置管理システム100の全体像の一例を示す図である。図1に示すように、試験装置管理システム100は、一以上の環境試験装置2と管理装置1とを備えている。一以上の環境試験装置2の其々は、LAN(Local Area Network)やインターネット(クラウド)等のネットワーク9を介して、管理装置1との間で互いに通信可能に接続されている。
【0035】
環境試験装置2は、試料の耐熱性や耐湿性や耐振性等の試験を行うため、所定の試験条件に従い試料の周囲環境を調整可能に構成されている。具体的には、環境試験装置2には、冷熱衝撃装置2aや、冷熱衝撃装置2aとは異なる調整方式の冷熱衝撃装置2bや、恒温恒湿器2c等が含まれる。
【0036】
冷熱衝撃装置2aは、所定の試験条件に従い、試料が収容された試験槽(テストエリア)に隣接する高温槽及び低温槽内の空気環境を調整し、且つ、高温槽及び低温槽からテストエリアへ流し込む空気量を調整することで、試料の周囲環境を調整する。冷熱衝撃装置2bは、冷熱衝撃装置2aとは異なり、所定の試験条件に従い高温槽及び低温槽内の空気環境を調整し、空気環境が調整された高温槽や低温槽にテストエリアを移動させることで、試料の周囲環境を調整する。恒温恒湿器2cは、所定の試験条件に従い、試料が収容されたテストエリアの空気環境を調整し、また、テストエリアに所定の振動を付与することで、試料の周囲環境を調整する。尚、恒温恒湿器2cは、テストエリアに振動を付与しないものであってもよいし、また、空気環境として、空気の温度のみを調整する所謂恒温器であってもよい。
【0037】
管理装置1は、一以上の環境試験装置2の其々が正常な状態であるか、異常になる直前の警告状態であるか又は異常な状態であるかを管理する。
【0038】
(環境試験装置2の機能構成)
次に、環境試験装置2の機能構成について詳述する。図2は、環境試験装置2の機能構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、環境試験装置2は、制御部20、インターフェイス部23、表示部24、操作部25、記憶部26、環境調整器27、環境センサー28及び状態センサー29を備えている。
【0039】
制御部20は、環境試験装置2が備える各部の制御を行う。具体的には、制御部20は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリー、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性メモリー、現在時刻を計時するタイマー回路等を備えたマイクロコンピューターによって構成される。
【0040】
制御部20は、不揮発性メモリーに記憶された制御プログラムをCPUに実行させることにより、実行部21及び送信部22として機能する。実行部21及び送信部22の詳細については後述する。
【0041】
インターフェイス部23は、環境試験装置2がネットワーク9(図1)を介して管理装置1と通信するための通信インターフェイス回路によって構成される。インターフェイス部23は、制御部20による制御の下、制御部20から入力された情報を、ネットワーク9を介して管理装置1へ送信する。インターフェイス部23は、管理装置1が送信した情報をネットワーク9を介して受信する度に、当該受信した情報を制御部20へ出力する。
【0042】
表示部24は、例えば、液晶ディスプレイによって構成され、制御部20による制御の下、環境試験装置2の操作画面やメッセージ等の各種情報を表示する。
【0043】
操作部25は、例えば、表示部24が有する各種情報の表示面上に設けられたタッチパネル装置によって構成される。操作部25は、前記表示面に表示された各種画面内のソフトキーが操作されると、当該ソフトキー及び操作に対応付けられた指示の入力を受け付ける。また、操作部25は、タッチパネル装置に限らず、各種情報を入力するためのキーボードや各種画面内のソフトキーを操作するためのマウス等を備えて構成してもよい。
【0044】
記憶部26は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置によって構成され、制御部20による制御の下、各種情報を記憶する。また、記憶部26は、表示部24に表示される操作画面を示す画像や、制御部20による制御に用いられる各種情報等を予め記憶している。
【0045】
環境調整器27は、冷凍機や加湿器等の空気調和装置や振動機等によって構成され、制御部20による制御の下、所定の試験条件に従い試料の周囲環境を調整する。
【0046】
試料の周囲環境には、試料が収容されたテストエリア内の空気の温度、湿度及び気圧や、テストエリアに付与する振動や、テストエリアに流し込まれる高温槽及び低温槽内の空気の温度、湿度及び気圧等が含まれる。
【0047】
試験条件には、試料の周囲環境の目標値(例:温度の目標値(以降、目標温度)、湿度の目標値(以降、目標湿度)、気圧の目標値(以降、目標気圧)及び振動の目標値(以降、目標振動))と、試料の周囲環境を当該目標値となるように調整する期間(以降、調整期間)と、が含まれる。尚、試験条件には、前記目標値と前記調整期間との組み合わせが複数含まれていてもよい。この場合、環境調整器27は、試験条件に含まれている各組み合わせを順次用いて、試料の周囲環境を前記各組み合わせに含まれた目標値となるように、前記各組み合わせに含まれた調整期間調整することを順次行う。
【0048】
環境センサー28は、上述した試料の周囲環境を検出する。状態センサー29は、環境調整器27の一以上の状態を検出する。環境調整器27の状態には、環境調整器27の温度、圧力及び振動や、環境調整器27が備える圧縮機等の所定の部品に印加される電圧及び電流が含まれる。また、環境調整器27の状態には、環境調整器27に供給され、環境調整器27から排出される冷却用水の水温及び流量や排気空気の温度が含まれる。また、環境調整器27の状態には、環境調整器27に供給される加湿用水の水位が含まれる。
【0049】
また、環境調整器27の状態には、環境調整器27の設置環境が含まれる。環境調整器27の設置環境には、環境調整器27を制御する制御部20や環境調整器27が配置された室内、並びに、環境調整器27を備えた環境試験装置2の周囲の温度、湿度及び気圧等の環境調整器27の周囲環境が含まれる。また、環境調整器27の設置環境には、環境調整器27に供給される電圧や電流等の、環境調整器27の電源環境が含まれる。
【0050】
図3は、冷熱衝撃装置2aが備える環境センサー28及び状態センサー29の一例を示す図である。図3(A)は冷熱衝撃装置2aの外観の斜視図であり、図3(B)は図3(A)のB-B線断面図であり、図3(C)は図3(A)のC-C線断面図である。
【0051】
具体的には、図3(B)に示すように、冷熱衝撃装置2aが備える環境センサー28には、例えば、テストエリア、高温槽及び低温槽内の空気の温度、湿度及び気圧を検出する温度センサー、湿度センサー及び圧力センサーや、試料の状態を検出する熱電対、電圧電流計、抵抗計、及び電力計等が含まれる。図3(B)に示すように、冷熱衝撃装置2aが備える状態センサー29には、例えば、制御部20を構成するマイクロコンピューターが配置された電装室内の温度及び湿度を検出する温度センサー及び湿度センサーが含まれる。
【0052】
また、図3(C)に示すように、冷熱衝撃装置2aが備える状態センサー29には、例えば、環境調整器27を構成する冷凍機の温度、圧力及び振動を検出する温度センサー、圧力センサー及び振動センサーや、冷凍機が備える圧縮機等の所定の部品に印加される電圧及び電流を検出する電圧センサー及び電流センサーが含まれる。また、冷熱衝撃装置2aが備える状態センサー29には、冷凍機に供給され、冷凍機から排出される冷却用水の水温及び流量又は排気空気の温度を検出する水温センサー及び流量センサー又は温度センサーが含まれる。更に、冷熱衝撃装置2aが備える状態センサー29には、冷凍機が配置された機械室内及び冷凍機を備えた冷熱衝撃装置2aの周囲の温度及び湿度を検出する温度センサー及び湿度センサーや、冷凍機に供給される電圧及び電流を検出する電圧センサー及び電流センサー等が含まれる。
【0053】
図4は、図3に示す冷熱衝撃装置2aとは異なる調整方式の冷熱衝撃装置2bが備える環境センサー28及び状態センサー29の一例を示す図である。図4(A)は冷熱衝撃装置2bの外観の斜視図であり、図4(B)は図4(A)のB-B線断面図であり、図4(C)は図4(A)のC-C線断面図であり、図4(D)は図4(A)のD-D線断面図である。
【0054】
具体的には、図4(B)に示すように、冷熱衝撃装置2bが備える環境センサー28には、例えば、テストエリア、高温槽及び低温槽内の空気の温度、湿度及び気圧を検出する温度センサー、湿度センサー及び圧力センサーや、試料の状態を検出する熱電対、電圧電流計、抵抗計、及び電力計等が含まれる。
【0055】
また、図4(C)に示すように、冷熱衝撃装置2bが備える状態センサー29には、例えば、環境調整器27を構成する冷凍機の温度、圧力及び振動を検出する温度センサー、圧力センサー及び振動センサーや、冷凍機が備える圧縮機等の所定の部品に印加される電圧及び電流を検出する電圧センサー及び電流センサーが含まれる。また、冷熱衝撃装置2bが備える状態センサー29には、冷凍機に供給され、冷凍機から排出される冷却用水の水温及び流量又は排気空気の温度を検出する水温センサー及び流量センサー又は温度センサーが含まれる。更に、冷熱衝撃装置2bが備える状態センサー29には、冷凍機が配置された機械室内及び冷凍機を備えた冷熱衝撃装置2bの周囲の温度及び湿度を検出する温度センサー及び湿度センサーや、冷凍機に供給される電圧及び電流を検出する電圧センサー及び電流センサー等が含まれる。
【0056】
また、図4(D)に示すように、冷熱衝撃装置2bが備える状態センサー29には、例えば、制御部20を構成するマイクロコンピューターが配置された電装室内の温度及び湿度を検出する温度センサー及び湿度センサーが含まれる。
【0057】
図5は、恒温恒湿器2cが備える環境センサー28及び状態センサー29の一例を示す図である。図5(A)は恒温恒湿器2cの外観の斜視図であり、図5(B)は図5(A)のB-B線断面図であり、図5(C)は図5(A)のC-C線断面図である。
【0058】
一方、図5(B)に示すように、恒温恒湿器2cが備える環境センサー28には、例えば、テストエリア内の空気の温度、湿度及び気圧を検出する温度センサー、湿度センサー及び圧力センサーや、テストエリアの振動を検出する振動センサーや、試料の状態を検出する熱電対、電圧電流計、抵抗計、及び電力計等が含まれる。図5(B)に示すように、恒温恒湿器2cが備える状態センサー29には、環境調整器27を構成する冷凍機の温度及び振動を検出する温度センサー及び振動センサーや、冷凍機が備える圧縮機等の所定の部品に印加される電圧及び電流を検出する電圧センサー及び電流センサーが含まれる。また、恒温恒湿器2cが備える状態センサー29には、給水タンクに貯留された、環境調整器27を構成する加湿器に供給する加湿用水の水位を検出する水位計が含まれる。
【0059】
また、図5(C)に示すように、恒温恒湿器2cが備える状態センサー29には、制御部10を構成するマイクロコンピューターが配置された電装室内の温度及び湿度を検出する温度センサー及び湿度センサーが含まれる。また、恒温恒湿器2cが備える状態センサー29には、冷凍機に供給され、冷凍機から排出される冷却用水の水温及び流量又は排気空気の温度を検出する水温センサー及び流量センサー又は温度センサーが含まれる。また、恒温恒湿器2cが備える状態センサー29には、冷凍機を備えた恒温恒湿器2cの周囲の温度及び湿度を検出する温度センサー及び湿度センサーや、冷凍機に供給される電圧及び電流を検出する電圧センサー及び電流センサー等が含まれる。
【0060】
(管理装置1の機能構成)
次に、管理装置1の機能構成について詳述する。図6は、管理装置1の機能構成の一例を示すブロック図である。図6に示すように、管理装置1は、制御部10、通信部(受信部)11、表示部12、操作部13及び記憶部14を備えている。
【0061】
制御部10は、管理装置1が備える各部の制御を行う。具体的には、制御部10は、CPU、RAM等の揮発性メモリー、EEPROM等の不揮発性メモリー、現在時刻を計時するタイマー回路等を備えたマイクロコンピューターによって構成される。
【0062】
制御部10は、不揮発性メモリーに記憶された制御プログラムをCPUに実行させることにより、受付部101、判定部102、通知部103及び予測部104として機能する。受付部101、判定部102、通知部103及び予測部104の詳細については後述する。
【0063】
通信部11は、管理装置1がネットワーク9(図1)を介して環境試験装置2と通信するための通信インターフェイス回路によって構成される。通信部11は、一以上の環境試験装置2の其々が送信した情報をネットワーク9を介して受信する度に、当該受信した情報を制御部10へ出力する。また、通信部11は、制御部10による制御の下、制御部10から入力された情報を、ネットワーク9を介して環境試験装置2等の外部装置へ送信する。
【0064】
表示部12は、例えば、液晶ディスプレイによって構成され、制御部10による制御の下、管理装置1の操作画面やメッセージ等の各種情報を表示する。
【0065】
操作部13は、例えば、表示部12が有する各種情報の表示面上に設けられたタッチパネル装置によって構成される。操作部13は、前記表示面に表示された各種画面内のソフトキーが操作されると、当該ソフトキー及び操作に対応付けられた指示の入力を受け付ける。また、操作部13は、タッチパネル装置に限らず、各種情報を入力するためのキーボードや各種画面内のソフトキーを操作するためのマウス等を備えて構成してもよい。
【0066】
記憶部14は、HDDやSSD等の記憶装置によって構成され、制御部10による制御の下、各種情報を記憶する。また、記憶部14には、表示部12に表示される操作画面を示す画像や、制御部10による制御に用いられる各種情報等が予め記憶されている。
【0067】
(試験の動作フロー)
以下では、環境試験装置2における試料の試験の動作について説明する。図7は、環境試験装置2における試料の試験の動作を示すフローチャートである。尚、当該説明において、実行部21及び送信部22の詳細について説明する。
【0068】
実行部21は、試験条件の設定操作を行うための操作画面を表示部24に表示させた後、図7に示すように、ユーザーが操作部25を用いて試験条件の設定操作を行うと(S11)、試料の試験を開始する(S12)。具体的には、S12において、実行部21は、環境調整器27を制御して、S11で設定された試験条件に従い、試料の周囲環境を調整させる。
【0069】
試験が開始されると、送信部22は、インターフェイス部23を制御して、環境試験装置2の識別情報(以降、装置ID)と、S11で設定された試験条件に含まれている試料の周囲環境の目標値、環境センサー28の検出値、状態センサー29の検出値、及び調整期間等の試験情報とを、管理装置1に定期的に送信させる処理を開始する(S13)。これにより、試験情報は、試験において環境調整器27による調整が行われている間(調整中)、定期的に管理装置1に送信される。
【0070】
そして、インターフェイス部23が、管理装置1から通知された後述の警報情報又は警告情報を受信し、当該受信した情報を制御部20に出力したとする(S14;YES)。この場合、実行部21は、表示部24に、当該受信した情報を表示させる(S15)。
【0071】
S14で受信された情報が警報情報ではなく(S16;NO)、且つ、試験条件に含まれる全ての調整期間が経過していない場合(S17;NO)、実行部21は、処理をS14に戻す。その後は、S14以降の処理が行われる。一方、S14で受信された情報が警報情報であった場合(S16;YES)及び試験条件に含まれる全ての調整期間が経過した場合(S17;YES)、実行部21は、試験を終了する。
【0072】
(環境試験装置2の状態管理の動作フロー)
以下では、管理装置1における環境試験装置2の状態管理の動作について説明する。図8は、管理装置1における環境試験装置2の状態管理の動作を示すフローチャートである。尚、当該説明において、受付部101、判定部102、通知部103及び予測部104の詳細について説明する。
【0073】
図8に示すように、通信部11が、環境試験装置2が調整中に送信した各試験情報を受信し、当該受信した各試験情報を制御部10に出力すると(S21)、受付部101は、記憶部14に当該受信した試験情報を記憶させる(S22)。
【0074】
図9は、記憶部14が記憶した試験情報の一例を示す図である。例えば、図9に示すように、S22において、記憶部14は、受付部101による制御の下、S21で受信された試験情報を、当該試験情報の受信時刻と対応付けて記憶する。図9は、記憶部14が、装置ID「M1」で識別される環境試験装置2から時刻t11~t1nに受信したn個の試験情報を記憶した例を示している。また、図9は、時刻t11~t1nの後、記憶部14が、装置ID「M2」で識別される環境試験装置2から時刻t21~t2m、t2m+1~t2nに受信したn個の試験情報を記憶した後、装置ID「M3」で識別される環境試験装置2から時刻t31~t3nに受信したn個の試験情報を記憶した例を示している。
【0075】
例えば、記憶部14が記憶した、装置ID「M1」で識別される環境試験装置2から時刻「t11」に受信した試験情報には、当該試験情報を送信した環境試験装置2の装置ID「M1」が含まれている。当該試験情報には、試験条件として、目標温度「T1」、目標湿度「H1」、及び調整期間「D1」が含まれている。当該試験情報には、環境センサー28(図2)の検出値(以降、環境検出値)として、テストエリアの温度「Ta11」及び湿度「Ha11」等が含まれている。
【0076】
また、当該試験情報には、状態センサー29(図2)の検出値(以降、状態検出値)として、電装室内の温度「Tb11」及び湿度「Hb11」、環境調整器27を構成する冷凍機の温度「Tc11」及び圧力「Sc11」、冷凍機が備える不図示の圧縮機に印加される電圧「Vc11」及び電流「Ic11」、並びに、冷凍機の振動「Bc11」等が含まれている。
【0077】
また、当該試験情報には、状態検出値として、冷凍機が設置された機械室の外部の周囲の温度「Td11」及び湿度「Hd11」、冷凍機に供給される電圧「Vd11」及び電流「Id11」、冷凍機に供給され、冷凍機から排出される冷却用水の水温「Wd11」及び流量「Fd11」及び冷凍機から排出される排気空気の温度(排気温)「Gd11」等が含まれている。
【0078】
図8に参照を戻す。S22の後、判定部102は、S21で受信された試験情報(以降、受信試験情報)と対象試験情報とに含まれている状態検出値に基づき、受信試験情報を送信した環境試験装置2(以降、対象環境試験装置)が正常な状態であるか否かを判定する処理(第二判定処理)を行う(S23)。対象試験情報とは、対象環境試験装置における試料の周囲環境の調整前に記憶部14が記憶した、受信試験情報と同種の試験条件を含む試験情報を示す。受信試験情報と同種の試験条件とは、受信試験情報に含まれている試験条件を全て含む試験条件を示す。
【0079】
つまり、S23によれば、対象環境試験装置とは異種の試験条件に従う調整中の環境調整器の一以上の状態ではなく、一以上の環境試験装置2の其々で行われた対象環境試験装置と同種の試験条件に従う調整中の環境調整器の一以上の状態に基づき、対象環境試験装置が正常な状態であるか否かを適切に判定できる。
【0080】
図10は、対象環境試験装置が正常な状態であるか否かを判定する処理の一例の説明図である。具体的には、S23において、判定部102は、対象試験情報に含まれているk(kは2以上の整数)種の状態検出値から、k種の代表値p(=(p1、p2、・・・、pk))を算出する。
【0081】
k種の代表値pとしては、例えば、対象試験情報に含まれているk種の状態検出値其々の平均値が採用されてもよいし、上限値又は下限値が採用されてもよいし、中央値が採用されてもよい。また、k種の代表値pの其々に幅を持たせてもよい。つまり、対象試験情報に含まれているk種の状態検出値の其々に所定の統計処理を施し、当該統計処理によって決定された範囲に含まれる全ての状態検出値が、k種の代表値pの其々として採用されてもよい。これらに限らず、対象試験情報に含まれているk種の状態検出値其々の中から、ユーザーが操作部13を用いて選択操作した状態検出値が、k種の代表値pとして採用されてもよい。
【0082】
そして、判定部102は、図10の実線部に示すように、受信試験情報に含まれているk種の状態検出値q(=(q1、q2、・・・qk))と、前記k種の代表値pとの間のユークリッド距離ED(=((q1-p1)+(q2-p2)+・・・+(qk-pk))の1/2乗)が、所定長L以上である場合に、対象環境試験装置が正常な状態ではないと判定する。
【0083】
例えば、対象環境試験装置における試料の周囲環境の調整前に、記憶部14が、図9に示すように、受信時刻t11~t3nと対応付けて試験情報を記憶していたとする。また、時刻t3nの後、装置ID「M4」により識別される対象環境試験装置から受信した受信試験情報に、試験条件として、目標温度「T1」及び目標湿度「H1」が含まれていたとする。k種の状態検出値は、冷凍機の電圧及び電流の2種の状態検出値であるとする。また、k(k=2)種の代表値は、対象試験情報に含まれる冷凍機の電圧及び電流の状態検出値其々の平均値であるとする。
【0084】
この場合、S23において、判定部102は、受信試験情報に含まれている試験条件である目標温度「T1」及び目標湿度「H1」を含む、受信時刻t11~t1n、t21~t2m、t31~t3n(図9)に対応付けられた2n+m個の試験情報を対象試験情報とする。
【0085】
そして、判定部102は、当該対象試験情報に含まれている冷凍機の電圧及び電流の2種の状態検出値其々の平均値を算出し、当該算出した平均値を2種の代表値p(=(p1、p2)、p1=(Vc11+・・・+Vc1n+Vc21+・・・+Vc2m+Vc31+・・・+Vc3n)/(2n+m)、p2=(Ic11+・・・+Ic1n+Ic21+・・・+Ic2m+Ic31+・・・+Ic3n)/(2n+m))とする。
【0086】
そして、判定部102は、受信試験情報に含まれている冷凍機の電圧及び電流の2種の状態検出値q1、q2と、上記算出した2種の代表値p1、p2との間のユークリッド距離ED(=((q1-p1)+(q2-p2))の1/2乗)が、所定長L以上である場合に、対象環境試験装置が正常な状態ではないと判定する。
【0087】
本構成によれば、試験情報に環境調整器27の複数種類の状態の検出値が含まれている場合であっても、一以上の環境試験装置2の其々で行われた対象環境試験装置と同種の試験条件に従う調整中の環境調整器27の複数種類の状態の検出値から、ユークリッド距離EDを算出し、当該算出したユークリッド距離EDに基づき、対象環境試験装置が正常な状態であるか否かを適切に判定することができる。
【0088】
尚、判定部102は、S23において、上記とは別の方法で、受信試験情報と対象試験情報とに含まれている状態検出値に基づき、対象環境試験装置が正常な状態であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0089】
例えば、判定部102は、試験を開始してから所定時間経過するまでの間に順次受信されたm個の受信試験情報に含まれている、k種の状態検出値xkmの集合を表すベクトルx(ベクトル(x11、・・・、x1m)、・・・、ベクトル(xk1、・・・、xkm)))と、試験の開始から前記所定時間が経過するまでに順次受信されたm個の対象試験情報に含まれている、k種の状態検出値其々の平均値(k種の代表値)ukの集合を表すベクトルu(=u1、・・・、um)と、を用いた下式(1)によって表されるマハラノビス距離MD(x)が、所定長L以上である場合に、対象環境試験装置が正常な状態ではないと判定するようにしてもよい。
【数1】
【0090】
この場合、試験情報に環境調整器27の複数種類の状態の検出値が含まれている場合であっても、一以上の環境試験装置2の其々で行われた対象環境試験装置と同種の試験条件に従う調整中の環境調整器27の複数種類の状態の検出値から、マハラノビス距離MD(x)を算出し、当該算出したマハラノビス距離MD(x)に基づき、対象環境試験装置が正常な状態であるか否かを適切に判定することができる。
【0091】
図8に参照を戻す。判定部102は、S23において、対象環境試験装置が正常な状態ではないと判定したとする(S23;NO)。この場合、判定部102は、受信試験情報と対象試験情報とに含まれている環境検出値に基づき、対象環境試験装置が、異常な状態になる直前の警告状態であるか否かを判定する処理(第一判定処理)を行う(S24)。
【0092】
つまり、S24によって、受信試験情報が示す、対象環境試験装置において所定の試験条件に従い調整中の試料の周囲環境と、対象試験情報が示す、一以上の環境試験装置2の其々で対象環境試験装置と同種の試験条件に従い過去に調整を行っていたときの試料の周囲環境とに基づき、対象環境試験装置が警告状態であるか否かが判定される。
【0093】
このため、対象環境試験装置で所定の試験条件に従い調整中の試料の周囲環境と、一以上の環境試験装置2の其々で対象環境試験装置とは異種の試験条件に従い過去に調整を行っていたときの試料の周囲環境とに基づき、対象環境試験装置が警告状態であるか否かを判定するよりも、一以上の環境試験装置2の其々が異常な状態になる直前の警告状態であるか否かを適切に判定できる。
【0094】
図11は、対象環境試験装置が警告状態か否かを判定する処理の一例の説明図である。具体的には、S24において、判定部102は、図11の破線部及び二点鎖線部に示すように、受信試験情報に含まれている環境検出値が第一値d1から第二値d2に変化するまでに要した時間と、図11の実線部に示すように、対象試験情報に含まれている環境検出値が第一値d1から第二値d2に変化するまでに要した時間の所定の第一代表値と、の時間差DTが、所定の第一基準時間以上である場合に、対象環境試験装置が警告状態であると判定する。
【0095】
第一代表値としては、対象試験情報に含まれている、一以上の各調整中の環境検出値が、第一値d1から第二値d2に変化するまでに要した時間(以降、所要時間)の平均値が採用されてもよいし、上限値又は下限値が採用されてもよいし、中央値が採用されてもよい。また、図11の太線矢印に示すように、第一代表値に幅を持たせてもよい。また、対象試験情報に含まれている、一以上の各調整中の環境検出値が第一値d1から第二値d2に変化するまでに要した所要時間に所定の統計処理を施し、当該統計処理によって決定された範囲に含まれる全ての所要時間が、第一代表値として採用されてもよい。これらに限らず、対象試験情報に含まれている、一以上の各調整中の環境検出値が第一値d1から第二値d2に変化するまでに要した時間の中から、ユーザーが操作部13を用いて選択操作した時間が、第一代表値として採用されてもよい。
【0096】
例えば、対象環境試験装置における試料の周囲環境の調整前に、記憶部14が、図9に示すように、受信時刻t11~t3nと対応付けて試験情報を記憶していたとする。また、時刻t3nの後、時刻t51~t5nに、装置ID「M5」により識別される対象環境試験装置から受信した受信試験情報には、試験条件として、目標温度と目標湿度との組み合わせが二組「T1、H1」、「T2、H2」含まれていたとする。また、S24の判定に用いる環境検出値は、テストエリアの温度の検出値であるとする。
【0097】
この場合、S24において、判定部102は、受信試験情報に含まれている試験条件と同様、目標温度と目標湿度との二組の組み合わせ「T1、H1」、「T2、H2」を含む、受信時刻t21~t2n(図9)に対応付けられたn個の試験情報を対象試験情報とする。また、判定部102は、受信試験情報及び対象試験情報に含まれている二つの目標温度「T1、T2」を其々、S24の判定に用いる第一値d1(=T1)、第二値d2(=T2)とする。
【0098】
また、本具体例では、受信試験情報と同種の試験条件を含む対象試験情報には、受信時刻t21~t2nに相当する期間中に、装置ID「M2」の環境試験装置2において行われた、一の調整中に送信された試験情報だけが含まれている。このため、判定部102は、当該調整中の試験情報に含まれているテストエリアの温度の検出値「Ta21、・・・、Ta2m、Ta2m+1、・・・、Ta2n」が、第一値d1(=T1)から第二値d2(=T2)まで変化するのに要した時間を、前記所定の第一代表値とする。
【0099】
尚、本具体例とは異なり、受信試験情報と同種の試験条件を含む対象試験情報に、複数の環境試験装置2において行われた、複数の調整中に其々送信された試験情報が含まれていたとする。この場合、判定部102は、上述のように、各調整中に送信された試験情報に含まれているテストエリアの温度の検出値が第一値から第二値まで変化するのに要する所要時間の平均値等を、第一代表値とすればよい。
【0100】
そして、判定部102は、図11と同様、横軸を試験情報の受信時刻とし、縦軸を試験情報に含まれるテストエリアの温度の検出値とするグラフを生成する等して、受信試験情報に含まれるテストエリアの温度の検出値が、第一値d1(=T1)から第二値d2(=T2)に変化するまでに要する時間を算出する。そして、判定部102は、当該算出した時間と第一代表値と、の時間差DTが、所定の第一基準時間以上である場合、対象環境試験装置が警告状態であると判定する。
【0101】
本構成によれば、受信試験情報が示す調整中の試料の周囲環境の検出値と、対象試験情報が示す一以上の環境試験装置2で過去に行われた当該調整と同種の試験条件を用いた調整中の試料の周囲環境の検出値とが、第一値d1から第二値d2に変化するまでに要した時間の時間差に基づき、対象環境試験装置が警告状態であるか否かを適切に判定できる。
【0102】
尚、判定部102は、S24において、上記とは別の方法で、受信試験情報と対象試験情報とに含まれている環境検出値に基づき、対象環境試験装置が、異常な状態になる直前の警告状態であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0103】
図8に参照を戻す。判定部102は、S24において、対象環境試験装置が警告状態であると判定したとする(S24;YES)。この場合、判定部102は、受信試験情報と対象試験情報とに含まれている状態検出値に基づき、対象環境試験装置が異常な状態であるか否かを判定する処理(第三判定処理)を行う(S25)。
【0104】
つまり、S25によって、一以上の環境試験装置2の其々で行われた対象環境試験装置と同種の試験条件に従う調整中の環境調整器27の一以上の状態に基づき、対象環境試験装置が異常な状態であるか否かを適切に判定できる。
【0105】
図12は、対象環境試験装置が異常な状態であるか否かを判定する処理の一例の説明図である。具体的には、S25において、判定部102は、図12の実線部に示すように、受信試験情報に含まれている何れか一の状態検出値が、対象試験情報に含まれている前記一の状態検出値の所定の第二代表値d0を、所定時間ET以上連続して超えている場合に、対象環境試験装置が異常な状態であると判定する。
【0106】
第二代表値d0としては、対象試験情報に含まれている前記一の状態検出値の平均値が採用されてもよいし、上限値又は下限値が採用されてもよいし、中央値が採用されてもよい。これらに限らず、対象試験情報に含まれている前記一の状態検出値の中から、ユーザーが操作部13を用いて選択操作した状態検出値が、第二代表値d0として採用されてもよい。
【0107】
尚、一の状態検出値が第二代表値d0を所定時間ET以上連続して超えているとは、図12の実線部に示すように、一の状態検出値が第二代表値d0を所定時間ET以上連続して上回っていることを示す。ただし、これに限らず、例えば一の状態検出値及び第二代表値d0が共にマイナスの値を示す場合等、一の状態検出値及び第二代表値d0が示す値によっては、一の状態検出値が第二代表値d0を所定時間ET以上連続して下回っている場合に、判定部102が、一の状態検出値が第二代表値d0を所定時間ET以上連続して超えていると判定するようにしてもよい。
【0108】
例えば、対象環境試験装置における試料の周囲環境の調整前に、記憶部14が、図9に示すように、受信時刻t11~t3nと対応付けて試験情報を記憶していたとする。また、時刻t3nの後、時刻t61~t6nに、装置ID「M6」により識別される対象環境試験装置から受信した受信試験情報には、試験条件として、目標温度と目標湿度との組み合わせが二組「T1、H1」、「T2、H2」含まれていたとする。
【0109】
この場合、S25において、判定部102は、受信試験情報に含まれている試験条件と同様、目標温度と目標湿度との二組の組み合わせ「T1、H1」、「T2、H2」を含む、受信時刻t21~t2n(図9)に対応付けられたn個の試験情報を対象試験情報とする。また、判定部102は、当該対象試験情報に含まれている冷凍機の電圧の検出値「Vc21、・・・、Vc2n」を前記一の状態検出値とし、対象試験情報に含まれている冷凍機の電圧の検出値の平均値を、第二代表値d0(=(Vc21+・・・+Vc2n)/n)として算出する。
【0110】
そして、判定部102は、受信試験情報に含まれている冷凍機の電圧の検出値が、第二代表値d0を所定時間ET以上連続して超えていた場合、対象環境試験装置が異常な状態であると判定する。同様に、判定部102は、受信試験情報に含まれている状態検出値のうち、冷凍機の振動の検出値が、対象試験情報に含まれている冷凍機の振動の検出値「Bc21、・・・、Bc2n」の平均値である第二代表値d0(=(Bc21+・・・+Bc2n)/n)を、所定時間ET以上連続して超えていた場合にも、対象環境試験装置が異常な状態であると判定する。
【0111】
本構成によれば、環境調整器27の一以上の状態のうち一の状態の検出値しか試験情報に含まれていない場合であっても、一以上の環境試験装置2の其々で行われた対象環境試験装置と同種の試験条件に従う調整中の環境調整器27の前記一種類の状態の検出値を用いて、対象環境試験装置が異常な状態であるか否かを適切に判定することができる。
【0112】
尚、判定部102は、S25において、上記とは別の方法で、受信試験情報と対象試験情報とに含まれている状態検出値に基づき、対象環境試験装置が異常な状態であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0113】
例えば、判定部102は、S25において、図12の一点鎖線部に示すように、受信試験情報に含まれている何れか一の状態検出値が、対象試験情報に含まれている前記一の状態検出値の所定の第二代表値d0を、所定時間ET中に所定回数以上超えている場合に、対象環境試験装置が異常な状態であると判定してもよい。尚、図12は、前記何れか一の状態検出値が第二代表値d0を三回超えている例を示している。
【0114】
図8に参照を戻す。判定部102は、S25において、対象環境試験装置が異常な状態であると判定したとする(S25;YES)。この場合、通知部103(図6)は、対象環境試験装置が異常な状態であることを示す警報を対象環境試験装置に通知する(S26)。具体的には、S26において、通知部103(図6)は、通信部11を制御して、対象環境試験装置が異常な状態であることを示す警報情報を、ネットワーク9を介して対象環境試験装置に送信させる。尚、S26において、通知部103(図6)は、警報情報をネットワーク9を介して対象環境試験装置の監視用のパソコン等に送信してもよい。
【0115】
このため、当該通知を受けた対象環境試験装置のユーザーは、当該対象環境試験装置における調整を迅速に終了することができる。これにより、異常な状態の対象環境試験装置において、正常ではない調整を無駄に継続することを回避できる。
【0116】
一方、S23において対象環境試験装置が正常な状態であると判定された場合(S23;YES)、及び、S24において対象環境試験装置が警告状態ではないと判定された場合(S24;NO)、予測部104は、受信試験情報及び対象試験情報に含まれている状態検出値に基づき、対象環境試験装置の環境調整器27が寿命に到達するまでの余命期間を予測する処理(予測処理)を行う(S29)。
【0117】
図13は、予測部104が余命期間LEを予測する処理の一例の説明図である。具体的には、図13に示すように、S29において、予測部104は、受信試験情報に含まれている所定の何れか一の状態検出値を、順次、横軸を受信試験情報の各受信時刻とし、縦軸を当該一の状態検出値とする二次元座標にプロットする。そして、予測部104は、所定の公知の回帰分析処理を行うことで、当該一の状態検出値と時刻との関係を表す関数(破線部に示す曲線)を算出する。そして、予測部104は、当該算出した関数を用いて、当該一の状態検出値が異常値deになる時刻teを算出する。予測部104は、当該算出した時刻teを、対象環境試験装置の環境調整器27が寿命に到達する時刻として予測する。
【0118】
尚、異常値deは、例えば、対象試験情報に含まれている前記一の状態検出値の上限値(又は下限値)を所定倍にした値を示す。ただし、前記異常値deは、これに限らず、対象試験情報に含まれている前記一の状態検出値の上限値(又は下限値)に、ユーザーが操作部13を用いて入力操作した値を加算(又は減算)した値等であってもよい。
【0119】
そして、予測部104は、対象環境試験装置における調整の最後に試験情報を受信した時刻tcから、前記予測した対象環境試験装置の環境調整器27が寿命に到達する時刻teまでの期間を、余命期間LEとして予測する。
【0120】
図8に参照を戻す。S29の後、通知部103(図6)は、S29で予測された余命期間LEを対象環境試験装置に通知する(S30)。具体的には、S30において、通知部103は、通信部11を制御して、余命期間LEを示す情報を、ネットワーク9を介して対象環境試験装置等に送信させる。
【0121】
つまり、S23において対象環境試験装置が正常な状態であると判定された場合(S23;YES)、及び、S24において対象環境試験装置が警告状態ではないと判定された場合(S24;NO)、S29において、一以上の環境試験装置2の其々で行われた対象環境試験装置と同種の試験条件に従う調整中の環境調整器27の一以上の状態に基づき、適切に余命期間が予測される(S29)。そして、S30において、当該予測された余命期間が通知される(S30)。
【0122】
このため、当該通知を受けた対象環境試験装置のユーザーは、警告状態ではないうちに、環境調整器27が寿命に到達するまでに要する期間を適切に把握することができる。これにより、当該ユーザーは、当該対象環境試験装置を点検する等、当該対象環境試験装置が異常な状態になる虞を低減するための作業を、時間的に余裕を持って実施することができる。
【0123】
また、S25において、対象環境試験装置が異常な状態ではないと判定された場合(S25;NO)、予測部104は、S29と同様の余命期間LEを予測する処理を行う(S27)。S27の後、通知部103(図6)は、S27で予測された余命期間LEと対象環境試験装置が警告状態であることを示す警告を、対象環境試験装置に通知する(S28)。具体的には、S28において、通知部103は、通信部11を制御して、余命期間LEを示す情報及び対象環境試験装置が警告状態であることを示す警告情報を、ネットワーク9を介して対象環境試験装置に送信させる。
【0124】
このため、これらの通知を受けた対象環境試験装置のユーザーは、当該対象環境試験装置が警告状態であるうちに、当該対象環境試験装置の環境調整器27が寿命に到達するまでに要する期間を適切に把握することができる。これにより、当該ユーザーは、当該対象環境試験装置を点検する等、当該対象環境試験装置が異常な状態になる虞を低減するための作業を早急に実施することができる。
【0125】
(変形実施形態)
尚、上記実施形態は、本発明に係る実施形態の例示に過ぎず、本発明を上記実施形態に限定する趣旨ではない。例えば、以下に示す変形実施形態であってもよい。
【0126】
(1)上記実施形態では、図1に示したように、一以上の環境試験装置2の其々が、ネットワーク9を介して、管理装置1との間で互いに通信可能に接続されていたが、これに代えて、一以上の環境試験装置2のうち何れか一の環境試験装置2に、管理装置1を備えるように構成してもよい。
【0127】
本構成によれば、管理装置1を一以上の環境試験装置2とは別の装置として構成する場合よりも、試験装置管理システム100を構成するために必要な装置の配置スペースを低減することができる。
【0128】
(2)上記実施形態及び上記(1)の変形実施形態において、一以上の環境試験装置2其々のユーザーやメンテナンス作業員が使用するメールアドレス等の宛先に関する情報を、記憶部14に予め記憶させておいてもよい。通知部103が、S28及びS30(図8)において、記憶部14が予め記憶している前記宛先に関する情報が示すメールアドレス等に、各種情報を通知するようにしてもよい。具体的には、通知部103が、S28(図8)において、記憶部14が予め記憶している前記宛先に関する情報が示すメールアドレス等に、余命期間と警告情報を送信するようにしてもよい。また、通知部103が、S30(図8)において、記憶部14が予め記憶している前記宛先に関する情報が示すメールアドレス等に、余命期間を送信するようにしてもよい。
【0129】
(3)上記実施形態及び上記(1)及び(2)の変形実施形態におけるS23(図8)において、S24(図8図11)における判定処理と同様に、受信試験情報と対象試験情報とに含まれている環境検出値に基づき、対象環境試験装置が正常な状態であるか否かを判定するようにしてもよい。または、S25(図8図12)における判定処理と同様に、受信試験情報と対象試験情報とに含まれている状態検出値に基づき、対象環境試験装置が正常な状態であるか否かを判定するようにしてもよい。または、S23(図8図10)における判定処理、S24(図8図11)における判定処理と同様の上記の判定処理及びS25(図8図12)における判定処理と同様の上記の判定処理のうちの一以上の判定処理を行い、当該一以上の判定処理において全て正常な状態であると判定された場合に、対象環境試験装置が正常な状態であると判定するようにしてもよい。
【0130】
これと同様にして、上記実施形態及び上記(1)及び(2)の変形実施形態におけるS24(図8)において、S23(図8)における判定処理と同様に、受信試験情報と対象試験情報とに含まれている状態検出値に基づき、対象環境試験装置が警告状態であるか否かを判定するようにしてもよい。例えば、判定部102は、図10の破線部に示すように、受信試験情報に含まれているk種の状態検出値qと、前記k種の代表値pとの間のユークリッド距離EDが、所定長L1以上である場合に、対象環境試験装置が警告状態であると判定するようにしてもよい。
【0131】
または、S25(図8図12)における判定処理と同様に、受信試験情報と対象試験情報とに含まれている状態検出値に基づき、対象環境試験装置が警告状態であるか否かを判定するようにしてもよい。または、S23(図8図10)における判定処理と同様の上記の判定処理、S24(図8図11)における判定処理及びS25(図8図12)における判定処理と同様の上記の判定処理のうちの一以上の判定処理を行い、当該一以上の判定処理において全て警告状態であると判定された場合に、対象環境試験装置が警告状態であると判定するようにしてもよい。
【0132】
更に、上記実施形態及び上記(1)及び(2)の変形実施形態におけるS25(図8)において、S23(図8図10)における判定処理と同様に、受信試験情報と対象試験情報とに含まれている状態検出値に基づき、対象環境試験装置が異常な状態であるか否かを判定するようにしてもよい。例えば、判定部102は、図10の一点鎖線部に示すように、受信試験情報に含まれているk種の状態検出値qと、前記k種の代表値pとの間のユークリッド距離EDが、所定長L2以上である場合に、対象環境試験装置が異常な状態であると判定するようにしてもよい。
【0133】
または、S24(図8図11)における判定処理と同様に、受信試験情報と対象試験情報とに含まれている環境検出値に基づき、対象環境試験装置が異常な状態であるか否かを判定するようにしてもよい。または、S23(図8図10)における判定処理と同様の上記の判定処理、S24(図8図11)における判定処理と同様の上記の判定処理及びS25(図8図12)における判定処理のうちの一以上の判定処理を行い、当該一以上の判定処理において全て異常な状態であると判定された場合に、対象環境試験装置が異常な状態であると判定するようにしてもよい。
【0134】
尚、環境試験装置2は、環境センサー28及び状態センサー29のうち、何れか一方を備えない構成であってもよい。この場合、S23、S24及びS25では、上述の判定処理のうち、試験情報に含まれている環境検出値又は状態検出値を用いた判定処理を行うようにすればよい。
【0135】
(4)上記実施形態及び上記(1)乃至(3)の変形実施形態において、S25(図8)を省略し、S24(図8)において対象環境試験装置が警告状態であると判定された場合(S24;YES)、S27(図8)以降の処理を実行するようにしてもよい。
【0136】
本構成によれば、S24(図8)において対象環境試験装置が警告状態であると判定された場合(S24;YES)、対象環境試験装置が警告状態であることが通知される。これにより、一以上の環境試験装置の其々が異常な状態になる直前の警告状態であることを適切に通知できる。
【0137】
また、当該通知を受けた対象環境試験装置のユーザーは、当該対象環境試験装置が異常な状態になる前に、当該対象環境試験装置が警告状態であることに気付くことができる。これにより、当該ユーザーは、対象環境試験装置を点検する等、対象環境試験装置が異常な状態になる虞を低減するための作業を実施できる。その結果、対象環境試験装置が異常な状態になってから対象環境試験装置の修理を行う場合よりも、対象環境試験装置で調整が行えなくなる時間を低減できる。
【0138】
(5)上記実施形態並びに上記(1)乃至(4)の変形実施形態において、S23(図8)を省略してもよい。
【0139】
(6)上記実施形態並びに上記(1)乃至(5)の変形実施形態において、制御部10(図6)が、予測部104(図6)として機能しないようにし、S27、S29及びS30(図8)を省略してもよい。これに合わせて、S28(図8)では、通知部103(図6)が、対象環境試験装置が警告状態であることを示す警告のみ通知するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0140】
1 管理装置
11 通信部(受信部)
102 判定部
103 通知部
104 予測部
100 試験装置管理システム
2 環境試験装置
2a 冷熱衝撃装置(環境試験装置)
2b 恒温恒湿器(環境試験装置)
22 送信部
27 環境調整器
28 環境センサー
29 状態センサー
DT 時間差
ED ユークリッド距離
ET 所定時間
L 所定長
LE 余命期間
d0 第二代表値
d1 第一値
d2 第二値
p k種の代表値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13