IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社SCREENホールディングスの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220201BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 651B
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2017166501
(22)【出願日】2017-08-31
(65)【公開番号】P2019046892
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日野出 大輝
(72)【発明者】
【氏名】藤井 定
(72)【発明者】
【氏名】柴山 宣之
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-197571(JP,A)
【文献】特開2009-224692(JP,A)
【文献】特開2016-072343(JP,A)
【文献】特開2015-177014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガードおよび第2ガードを有する複数のガードに平面視で取り囲まれた位置に基板を配置し、前記基板を水平に保持する基板保持工程と、
前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに前記基板を回転させる基板回転工程と、
前記基板の上面を疎水化する液体である疎水化剤を回転状態の前記基板の上面に供給する疎水化剤供給工程と、
水よりも表面張力の低い低表面張力液体で前記基板上の前記疎水化剤を置換するために、回転状態の前記基板の上面に前記低表面張力液体を供給する低表面張力液体供給工程と、
前記低表面張力液体供給工程の開始前に、前記基板から飛散する液体を前記第1ガードが受ける第1状態に、前記複数のガードの少なくとも一つを上下動させることによって、前記複数のガードの状態を切り換える第1ガード切換工程と、
前記低表面張力液体供給工程の実行中に、前記第1状態から、前記基板から飛散する液体を前記第2ガードが受ける第2状態へ、前記複数のガードを上下動させることによって、前記複数のガードの状態を切り換える第2ガード切換工程と
前記疎水化剤供給工程の前に、前記複数のガードが前記第2状態である状態で、前記低表面張力液体と同じ成分からなる有機溶剤の前記基板の上面への供給を開始する有機溶剤供給工程とを含み、
前記有機溶剤供給工程において前記基板の上面への前記有機溶剤の供給が行われている間に前記第1ガード切換工程が実行される、基板処理方法。
【請求項2】
前記第2ガード切換工程が、前記第1ガードが前記低表面張力液体を受ける時間が、前記第2ガードが前記低表面張力液体を受ける時間よりも長くなるように、前記第1状態から前記第2状態に前記複数のガードの状態を切り換える工程を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第2ガード切換工程が、前記基板上の前記疎水化剤が前記低表面張力液体で置換された後に、前記第1状態から前記第2状態に前記複数のガードの状態を切り換える工程を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記基板を回転させて前記基板上の前記低表面張力液体を排除することによって前記基板を乾燥させる基板乾燥工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1ガード切換工程後に、前記基板の上面と、前記基板の上面に対向する対向面を有する対向部材の前記対向面との間の雰囲気を排気する排気工程をさらに含み、
前記第1ガード切換工程が、前記第1ガードおよび前記第2ガードのうちの少なくとも一方の上端を前記対向面と等しい高さまたは前記対向面よりも上方に位置させる密閉工程を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第1ガード切換工程が、前記基板から飛散する液体が、前記第1ガードに備えられた第1筒状部の上端から前記対向部材に向かって斜め上に延びる第1延設部と前記第2ガードに備えられた第2筒状部の上端から前記対向部材に向かって斜め上に延び前記第1延設部に下方から対向する第2延設部との間を通って、前記第1筒状部に受けられる前記第1状態に、前記複数のガードの状態を切り換える工程を含み、
前記第2ガード切換工程が、前記基板から飛散する液体が、前記第2延設部の下方を通って前記第2筒状部に受けられるように、前記第1状態よりも前記第1延設部と前記第2延設部との間隔が狭められた前記第2状態に、前記複数のガードの状態を切り換える工程を含む、請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記低表面張力液体供給工程が、吐出口から前記基板の上面に向けて前記低表面張力液体を吐出する工程を含み、
前記第2ガード切換工程が、前記吐出口から前記低表面張力液体が吐出されている間に前記複数のガードの状態を前記第2状態に切り換える工程を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記有機溶剤供給工程の前に、前記基板の上面を処理する薬液を前記基板の上面に供給する薬液供給工程と、
前記薬液供給工程の後でかつ前記有機溶剤供給工程の前に、前記有機溶剤と混和可能であり、前記薬液を洗い流すリンス液を前記基板の上面に供給するリンス液供給工程とをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記有機溶剤供給工程と並行して、前記基板を加熱する加熱流体を前記基板の下面に供給する加熱流体供給工程をさらに含む、請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
水平に基板を保持する基板保持ユニットと、
前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに前記基板を回転させる基板回転ユニットと、
前記基板の上面を疎水化する液体である疎水化剤を前記基板の上面に供給する疎水化剤供給ユニットと、
水よりも表面張力の低い低表面張力液体を前記基板の上面に供給する低表面張力液体供給ユニットと、
前記低表面張力液体と同じ成分からなる有機溶剤を前記基板の上面に供給する有機溶剤供給ユニットと、
平面視で前記基板を取り囲み、前記基板から飛散する液体を受ける第1ガードおよび第2ガードを有する複数のガードと、
前記複数のガードの少なくとも一つを上下動させることによって、前記基板から飛散する液体を前記第1ガードが受ける第1状態と、前記基板から飛散する液体を前記第2ガードが受ける第2状態とで、前記複数のガードの状態を切り換えるガード切換ユニットと、
前記基板回転ユニット、前記疎水化剤供給ユニット、前記低表面張力液体供給ユニット、前記有機溶剤供給ユニットおよび前記ガード切換ユニットを制御する制御ユニットとを含み、
前記制御ユニットが、前記複数のガードに平面視で取り囲まれた位置で前記基板保持ユニットに保持された前記基板を、前記基板回転ユニットによって前記回転軸線まわりに回転させる基板回転工程と、前記疎水化剤供給ユニットから回転状態の前記基板の上面に前記疎水化剤を供給する疎水化剤供給工程と、前記基板上の前記疎水化剤を前記低表面張力液体で置換するために、前記低表面張力液体供給ユニットから回転状態の前記基板の上面に前記低表面張力液体を供給する低表面張力液体供給工程と、前記低表面張力液体供給工程の開始前に、前記ガード切換ユニットによって前記複数のガードの状態を前記第1状態に切り換える第1ガード切換工程と、前記低表面張力液体供給工程の実行中に、前記ガード切換ユニットによって、前記第1状態から前記第2状態へ前記複数のガードの状態を切り換える第2ガード切換工程と、前記疎水化剤供給工程の前に、前記複数のガードが前記第2状態である状態で、前記有機溶剤供給ユニットから前記有機溶剤の前記基板の上面への供給を開始する有機溶剤供給工程とを実行するようにプログラムされており、
前記制御ユニットは、前記有機溶剤供給工程において前記基板の上面への前記有機溶剤の供給が行われている間に前記第1ガード切換工程が実行されるようにプログラムされている、基板処理装置。
【請求項11】
前記制御ユニットが、前記第2ガード切換工程において、前記第1ガードが前記低表面張力液体を受ける時間が、前記第2ガードが前記低表面張力液体を受ける時間よりも長くなるように、前記ガード切換ユニットによって前記第1状態から前記第2状態に前記複数のガードの状態を切り換えるようにプログラムされている、請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記制御ユニットが、前記第2ガード切換工程において、前記基板上の前記疎水化剤が前記低表面張力液体で置換された後に、前記ガード切換ユニットによって前記第1状態から前記第2状態に前記複数のガードの状態を切り換えるようにプログラムされている、請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記制御ユニットが、前記基板回転ユニットによって前記基板を回転させて前記基板上の前記低表面張力液体を排除することによって、前記基板を乾燥させる基板乾燥工程を実行するようにプログラムされている、請求項10~12のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記基板の上面に対向する対向面を有する対向部材と、
前記基板の上面と前記対向面との間の雰囲気を排気する排気ユニットとをさらに含み、
前記制御ユニットが、前記排気ユニットによって前記基板の上面と前記対向面との間の雰囲気を排気する排気工程を実行し、かつ、前記第1ガード切換工程において、前記ガード切換ユニットによって、前記第1ガードおよび前記第2ガードのうちの少なくとも一方の上端を前記対向面と等しい高さまたは前記対向面よりも上方に位置させる密閉工程を実行するようにプログラムされている、請求項10~13のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記第1ガードが、前記基板を取り囲む第1筒状部と、前記第1筒状部の上端から前記対向部材に向けて斜め上に延びる第1延設部とを含み、
前記第2ガードが、前記第1筒状部よりも内側で前記基板を取り囲む第2筒状部と、前記第2筒状部の上端から前記対向部材に向かって斜め上に延び、前記第1延設部に下方から対向する第2延設部とを含み、
前記制御ユニットが、前記第1ガード切換工程において、前記基板から飛散する液体が前記第1延設部と前記第2延設部との間を通って前記第1筒状部に受けられる前記第1状態に前記複数のガードの状態を切り換える工程を実行し、かつ、前記第2ガード切換工程において、前記基板から飛散する液体が前記第2延設部の下方を通って前記第2筒状部が受けるように、前記第1状態よりも前記第1延設部と前記第2延設部との間隔が狭められた前記第2状態に前記複数のガードの状態を切り換える工程を実行するようにプログラムされている、請求項14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記低表面張力液体供給ユニットが、前記低表面張力液体を吐出する吐出口を有し、
前記制御ユニットが、前記第2ガード切換工程において、前記吐出口から前記低表面張力液体が吐出されている間に、前記ガード切換ユニットが前記複数のガードの状態を前記第2状態に切り換える工程を実行するようにプログラムされている、請求項10~15のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記基板の上面を処理する薬液を前記基板の上面に供給する薬液供給ユニットと、
前記有機溶剤と混和可能であり、前記薬液を洗い流すリンス液を前記基板の上面に供給するリンス液供給ユニットとをさらに含み、
記制御ユニットが、前記有機溶剤供給工程の前に、前記基板の上面に前記薬液供給ユニットから前記薬液を供給する薬液供給工程と、前記薬液供給工程の後でかつ前記有機溶剤供給工程の前に、前記リンス液供給ユニットから前記基板の上面に前記リンス液を供給するリンス液供給工程とを実行するようにプログラムされている、請求項10~16のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記基板を加熱する加熱流体を前記基板の下面に供給する加熱流体供給ユニットをさらに含み、
前記制御ユニットが、前記有機溶剤供給工程と並行して、前記加熱流体を前記基板の下面に供給する加熱流体供給工程を実行するようにプログラムされている、請求項17に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象になる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、有機EL(Electroluminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などの基板が含まれる。
【背景技術】
【0002】
枚葉式の基板処理装置による基板処理では、基板が1枚ずつ処理される。詳しくは、スピンチャックによって基板がほぼ水平に保持される。そして、基板の上面が薬液によって処理された後、リンス液によって基板の上面がリンスされる。その後、基板の上面を乾燥するために基板を高速回転させるスピンドライ工程が行われる。
図9に示すように、基板の表面に微細なパターンが形成されている場合、スピンドライ工程では、パターン内部に入り込んだリンス液を除去できないおそれがある。それによって、乾燥不良が生じるおそれがある。パターン内部に入り込んだリンス液の液面(空気と液体との界面)は、パターン内に形成される。そのため、液面とパターンとの接触位置に、液体の表面張力が働く。この表面張力が大きい場合には、パターンの倒壊が起こりやすい。典型的なリンス液である水は、表面張力が大きいために、スピンドライ工程におけるパターンの倒壊が無視できない。
【0003】
そこで、水よりも表面張力が低い低表面張力液体であるイソプロピルアルコール(Isopropyl Alcohol: IPA)を用いる手法が提案されている(たとえば、下記特許文献1を参照)。具体的には、基板の上面にIPAを供給することによって、パターンの内部に入り込んだ水をIPAに置換し、その後にIPAを除去することで基板の上面を乾燥させる。しかし、パターン内部に入り込んだ水をIPAに置換した場合であっても、表面張力が作用する時間が長い場合やパターンの強度が低い場合はパターンの倒壊が起こり得る。
【0004】
そこで、特許文献2には、基板の上面をシリル化剤で疎水化することによって、パターンが受ける表面張力を低減し、パターンの倒壊を防止する基板処理が開示されている。具体的には、基板の上面にシリル化剤が供給され、基板の上面に供給されたシリル化剤は、基板の回転によって基板の上面を中央から周縁に広がるように流れる。これにより、基板の上面の全体が疎水化される。その後、基板の上面に残るシリル化剤がIPAによって洗い流され、その後、基板が乾燥される。基板の上面から排除されたシリル化剤およびIPAは、カップ部によって受けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-21597号公報
【文献】特開2012-222329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の基板処理では、基板から飛散するシリル化剤をカップ部が受けることによって、カップ部にシリル化剤が付着する。そして、基板上のシリル化剤をIPAで洗い流す際には、基板から飛散するIPAをカップ部が受ける。そのため、カップ部に付着していたシリル化剤と、基板から飛散したIPAとが混ざった液体がカップ部から跳ね返って基板の上面に付着するおそれがある。これにより、基板の上面にパーティクルが発生し、基板の上面を良好に乾燥できないおそれがある。特に、IPAの供給が終了した後に基板の上面にシリル化剤が付着した場合には、当該シリル化剤は洗い流されないので、パーティクルの原因となりやすい。
【0007】
また、カップ部から跳ね返った液体が基板に付着しない場合であっても、カップ部の近傍の雰囲気には、疎水化剤のミストや蒸気が存在する。疎水化剤のミストや蒸気が基板の上面まで到達した場合も、パーティクルが発生するおそれがある。
そこで、この発明の目的は、基板の上面を良好に乾燥させることができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、第1ガードおよび第2ガードを有する複数のガードに平面視で取り囲まれた位置に基板を配置し、前記基板を水平に保持する基板保持工程と、前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに前記基板を回転させる基板回転工程と、前記基板の上面を疎水化する液体である疎水化剤を回転状態の前記基板の上面に供給する疎水化剤供給工程と、水よりも表面張力の低い低表面張力液体で前記基板上の前記疎水化剤を置換するために、回転状態の前記基板の上面に前記低表面張力液体を供給する低表面張力液体供給工程と、前記低表面張力液体供給工程の開始前に、前記基板から飛散する液体を前記第1ガードが受ける第1状態に、前記複数のガードの少なくとも一つを上下動させることによって、前記複数のガードの状態を切り換える第1ガード切換工程と、前記低表面張力液体供給工程の実行中に、前記第1状態から、前記基板から飛散する液体を前記第2ガードが受ける第2状態へ、前記複数のガードを上下動させることによって、前記複数のガードの状態を切り換える第2ガード切換工程とを含む、基板処理方法を提供する。
【0009】
この方法によれば、低表面張力液体供給工程の前に、基板の上面が疎水化剤で疎水化される。そのため、低表面張力液体が基板の上面に及ぼす表面張力が低減される。
また、低表面張力液体供給工程の実行中に、複数のガードの状態が、第1状態から第2状態へ切り換えられる。つまり、基板上の疎水化剤の少なくとも一部が基板から飛散した後に、基板から飛散する液体を受けるガードが第1ガードから第2ガードに切り換えられる。そのため、第2ガードへの疎水化剤の付着が抑制または防止される。したがって、疎水化剤が第2ガードから跳ね返って基板の上面に付着することが抑制される。
【0010】
さらに、複数のガードの状態の切り換えは、低表面張力液体供給工程の終了後ではなく低表面張力液体供給工程の実行中に行われる。したがって、万が一、疎水化剤が第1ガードから跳ね返って基板に付着した場合であっても、基板上の疎水化剤は、低表面張力液体によって洗い流される。これにより、パーティクルの発生が抑制される。
また、第1状態から第2状態に切り替わるまでは、第1ガードが低表面張力液体によって洗われる。これによって、第1ガードに残留する疎水化剤や、第1ガードの近傍の雰囲気に存在する疎水化剤のミストや蒸気が減少する。したがって、基板への疎水化剤の付着が抑制または防止される。
【0011】
以上のように、低表面張力液体が基板の上面に及ぼす表面張力が低減され、かつ、パーティクルの発生が抑制される。その結果、基板を良好に乾燥させることができる。
なお、「置換」とは、基板上の液体の全体が、新たに供給される液体によって、置き換えられることをいう。
この発明の一実施形態では、前記第2ガード切換工程が、前記第1ガードが前記低表面張力液体を受ける時間が、前記第2ガードが前記低表面張力液体を受ける時間よりも長くなるように、前記第1状態から前記第2状態に前記複数のガードの状態を切り換える工程を含む。
【0012】
そのため、第1状態から第2状態への切り換え時に基板上に存在する疎水化剤の量を低減することができる。したがって、第2ガードへの疎水化剤の付着が効果的に抑制または防止される。さらに、低表面張力液体による第1ガードの洗浄時間が長くなるため、第1ガードに残留する疎水化剤や、第1ガードの近傍の雰囲気に存在する疎水化剤のミストや蒸気が減少する。
【0013】
この発明の一実施形態では、前記第2ガード切換工程が、前記基板上の前記疎水化剤が前記低表面張力液体で置換された後に、前記第1状態から前記第2状態に前記複数のガードの状態を切り換える工程を含む。そのため、第2ガードへの疎水化剤の付着が一層効果的に抑制または防止される。
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記基板を回転させて前記基板上の前記低表面張力液体を排除することによって前記基板を乾燥させる基板乾燥工程をさらに含む。そのため、基板上の低表面張力液体を速やかに除去することができる。したがって、低表面張力液体が基板の上面に表面張力を及ぼす時間を低減することができる。
【0014】
この発明の一実施形態では、前記第1ガード切換工程が、前記第1ガードおよび前記第2ガードのうちの少なくとも一方の上端を、前記基板の上面に対向する対向面を有する対向部材の前記対向面と等しい高さまたは前記対向面よりも上方に位置させる密閉工程を含む。そして、前記基板処理方法が、前記第1ガード切換工程後に、前記基板の上面と前記対向面との間の雰囲気を排気する排気工程をさらに含む。
【0015】
この方法によれば、第1ガードおよび第2ガードのうちの少なくとも一方の上端が、対向部材の対向面と等しい高さまたは対向面よりも上方に位置されることによって、基板の上面と対向面との間の空間の密閉度が向上される。この状態で、基板の上面と対向面との間の雰囲気を排気することによって、基板の上面と対向面との間を漂う疎水化剤のミストを効率良く排除することができる。これにより、基板への低表面張力液体の供給中に疎水化剤が基板の上面に付着することが抑制される。
【0016】
この発明の一実施形態では、前記第1ガード切換工程が、前記基板から飛散する液体が、前記第1ガードに備えられた第1筒状部の上端から前記対向部材に向かって斜め上に延びる第1延設部と、前記第2ガードに備えられた第2筒状部の上端から前記対向部材に向かって斜め上に延び、前記第1延設部に下方から対向する第2延設部との間を通って前記第1筒状部に受けられる前記第1状態に前記複数のガードの状態を切り換える工程を含む。そして、前記第2ガード切換工程が、前記基板から飛散する液体が、前記第2延設部の下方を通って第2筒状部に受けられるように、前記第1状態よりも前記第1延設部と前記第2延設部との間隔が狭められた前記第2状態に前記複数のガードの状態を切り換える工程を含む。
【0017】
この方法によれば、第1状態において、基板から飛散する液体は、第1延設部および第2延設部の間を通って第1筒状部によって受けられる。そのため、第1延設部および第2延設部の間には、疎水化剤のミストが漂っているおそれがある。したがって、複数のガードの状態が第2状態に切り換えられる前では、疎水化剤のミストを取り込んだ液体が、複数のガードから跳ね返って基板の上面に付着するおそれがある。
【0018】
一方、複数のガードの状態が第2状態に切り換えられた後は、基板から飛散する液体は、第2延設部の下方を通って第2筒状部によって受けられる。つまり、基板から飛散する液体は、疎水化剤のミストが漂っているおそれのある第1延設部および第2延設部の間と別の経路を通る。したがって、複数のガードから跳ね返ってくる液体が疎水化剤のミストを取り込むことが抑制される。
【0019】
さらに、複数のガードの状態が第2状態に切り換えられた後であっても、疎水化剤のミストは、第1延設部および第2延設部の間から流出し、対向部材の対向面と基板の上面との間の空間にまで到達し、最終的に基板の上面に付着するおそれがある。そこで、複数のガードの状態を第1状態から第2状態に切り換える際に、第1延設部および第2延設部の間を狭めることで、疎水化剤のミストが第1延設部および第2延設部の間から流出することを抑制できる。
【0020】
この発明の一実施形態では、前記第2ガード切換工程が、吐出口から前記低表面張力液体が吐出されている間に前記複数のガードの状態を前記第2状態に切り換える工程を含む。
この方法によれば、第2ガード切換工程では、低表面張力液体の吐出中に複数のガードが上下動することによって複数のガードの状態が第2状態に切り換えられる。これにより、第1ガードおよび第2ガードにおいて基板から飛散する低表面張力液体を受ける部分が変化する。したがって、複数のガードの状態を第2状態に切り換える際に、第1ガードを洗浄することができる。
【0021】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記疎水化剤供給工程の前に、前記基板の上面を処理する薬液を前記基板の上面に供給する薬液供給工程と、前記薬液供給工程の後でかつ前記疎水化剤供給工程の前に、前記薬液を洗い流すリンス液を前記基板の上面に供給するリンス液供給工程と、前記リンス液供給工程の後でかつ前記疎水化剤供給工程の前に、前記リンス液および前記疎水化剤と混和する有機溶剤を前記基板の上面に供給する有機溶剤供給工程とをさらに含む。
【0022】
この方法によれば、有機溶剤がリンス液と疎水化剤との両方と混和する。したがって、リンス液と疎水化剤とが混和しない場合であっても、基板の上面に有機溶剤を供給して基板上のリンス液を有機溶剤で置換し、その後、基板の上面に疎水化剤を供給して基板上の有機溶剤を疎水化剤で置換することによって、基板の上面を疎水化剤で覆うことができる。したがって、リンス液および疎水化剤の選択の自由度が向上される。
【0023】
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記有機溶剤供給工程と並行して、前記基板を加熱する加熱流体を前記基板の下面に供給する加熱流体供給工程をさらに含む。
この方法によれば、疎水化剤供給工程の前に、温水によって予め基板が加熱される。そのため、疎水化剤の活性を高めることができる。これにより、基板の上面をむらなく疎水化することができる。したがって、基板の上面に形成されたパターンの倒壊を抑制することができる。
【0024】
この発明の他の実施形態では、水平に基板を保持する基板保持ユニットと、前記基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに前記基板を回転させる基板回転ユニットと、前記基板の上面を疎水化する液体である疎水化剤を前記基板の上面に供給する疎水化剤供給ユニットと、水よりも表面張力の低い低表面張力液体を前記基板の上面に供給する低表面張力液体供給ユニットと、平面視で前記基板を取り囲み、前記基板から飛散する液体を受ける第1ガードおよび第2ガードを有する複数のガードと、前記複数のガードの少なくとも一つを上下動させることによって、前記基板から飛散する液体を前記第1ガードが受ける第1状態と、前記基板から飛散する液体を前記第2ガードが受ける第2状態とで、前記複数のガードの状態を切り換えるガード切換ユニットと、前記基板回転ユニット、前記疎水化剤供給ユニット、前記低表面張力液体供給ユニットおよび前記ガード切換ユニットを制御する制御ユニットとを含む基板処理装置を提供する。
【0025】
そして、前記制御ユニットは、前記複数のガードに平面視で取り囲まれた位置で前記基板保持ユニットに保持された前記基板を、前記基板回転ユニットによって前記回転軸線まわりに回転させる基板回転工程と、前記疎水化剤供給ユニットから回転状態の前記基板の上面に前記疎水化剤を供給する疎水化剤供給工程と、前記基板上の前記疎水化剤を前記低表面張力液体で置換するために、前記低表面張力液体供給ユニットから回転状態の前記基板に前記低表面張力液体を供給する低表面張力液体供給工程と、前記低表面張力液体供給工程の開始前に、前記ガード切換ユニットによって前記複数のガードの状態を前記第1状態に切り換える第1ガード切換工程と、前記低表面張力液体供給工程の実行中に、前記ガード切換ユニットによって、前記第1状態から前記第2状態へ前記複数のガードの状態を切り換える第2ガード切換工程とを実行するようにプログラムされている。
【0026】
この構成によれば、低表面張力液体供給工程の前に、基板の上面が疎水化剤で疎水化される。そのため、低表面張力液体が基板の上面に及ぼす表面張力が低減される。
また、低表面張力液体供給工程の実行中に、複数のガードの状態が、第1状態から第2状態へ切り換えられる。つまり、基板上の疎水化剤の少なくとも一部が基板から飛散した後に、基板から飛散する液体を受けるガードが第1ガードから第2ガードに切り換えられる。そのため、第2ガードへの疎水化剤の付着が抑制または防止される。したがって、疎水化剤が第2ガードから跳ね返って基板の上面に付着することが抑制される。
【0027】
さらに、複数のガードの状態の切り換えは、低表面張力液体供給工程の終了後ではなく低表面張力液体供給工程の実行中に行われる。したがって、万が一、疎水化剤が第1ガードから跳ね返って基板に付着した場合であっても、基板上の疎水化剤は、低表面張力液体によって洗い流される。これにより、パーティクルの発生が抑制される。
また、第1状態から第2状態に切り替わるまでは、第1ガードが低表面張力液体によって洗われる。これによって、第1ガードに残留する疎水化剤や、第1ガードの近傍の雰囲気に存在する疎水化剤のミストや蒸気が減少する。したがって、基板への疎水化剤の付着が抑制または防止される。
【0028】
以上のように、低表面張力液体が基板の上面に及ぼす表面張力が低減され、かつ、パーティクルの発生が抑制されるので、基板を良好に乾燥させることができる。
この発明の他の実施形態では、前記制御ユニットが、前記第2ガード切換工程において、前記第1ガードが前記低表面張力液体を受ける時間が、前記第2ガードが前記低表面張力液体を受ける時間よりも長くなるように、前記ガード切換ユニットによって前記第1状態から前記第2状態に前記複数のガードの状態を切り換えるようにプログラムされている。
【0029】
そのため、第1状態から第2状態への切り換え時に基板上に存在する疎水化剤の量を低減することができる。したがって、第2ガードへの疎水化剤の付着が効果的に抑制または防止される。さらに、低表面張力液体による第1ガードの洗浄時間が長くなるため、第1ガードに残留する疎水化剤や、第1ガードの近傍の雰囲気に存在する疎水化剤のミストや蒸気が減少する。
【0030】
この発明の他の実施形態では、前記制御ユニットが、前記第2ガード切換工程において、前記基板上の前記疎水化剤が前記低表面張力液体で置換された後に、前記ガード切換ユニットによって前記第1状態から前記第2状態に前記複数のガードの状態を切り換えるようにプログラムされている。そのため、第2ガードへの疎水化剤の付着が一層効果的に抑制または防止される。
【0031】
この発明の他の実施形態では、前記制御ユニットが、前記基板回転ユニットによって前記基板を回転させて前記基板上の前記低表面張力液体を排除することによって、前記基板を乾燥させる基板乾燥工程を実行するようにプログラムされている。そのため、基板上の低表面張力液体を速やかに除去することがきる。したがって、低表面張力液体が基板の上面に表面張力を及ぼす時間を低減することができる。
【0032】
この発明の他の実施形態では、前記基板処理装置が、前記基板の上面に対向する対向面を有する対向部材と、前記基板の上面と前記対向面との間の雰囲気を排気する排気ユニットとをさらに含む。
そして、前記制御ユニットが、前記排気ユニットによって前記基板の上面と前記対向面との間の雰囲気を排気する排気工程とを実行し、かつ、前記第1ガード切換工程において、前記ガード切換ユニットによって、前記第1ガードおよび前記第2ガードのうちの少なくとも一方の上端を前記対向面と等しい高さまたは前記対向面よりも上方に位置させる密閉工程を実行するようにプログラムされている。
【0033】
この構成によれば、第1ガードおよび第2ガードのうちの少なくとも一方の上端が、対向部材の対向面と等しい高さまたは対向面よりも上方に位置されることによって、基板の上面と対向面との間の空間の密閉度が向上される。この状態で、基板の上面と対向面との間の雰囲気を排気することによって、基板の上面と対向面との間を漂う疎水化剤のミストを効率良く排除することができる。これにより、基板への低表面張力液体の供給中に疎水化剤が基板の上面に付着することが抑制される。
【0034】
この発明の他の実施形態では、前記第1ガードが、前記基板を取り囲む第1筒状部と、前記第1筒状部の上端から前記対向部材に向けて斜め上に延びる第1延設部とを含む。そして、前記第2ガードが、前記第1筒状部よりも内側で前記基板を取り囲む第2筒状部と、前記第2筒状部の上端から前記対向部材に向かって斜め上に延び、前記第1延設部に下方から対向する第2延設部とを含む。
【0035】
そして、前記制御ユニットが、前記第1ガード切換工程において、前記基板から飛散する液体が前記第1延設部と前記第2延設部との間を通って前記第1筒状部に受けられる前記第1状態に前記複数のガードの状態を切り換える工程を実行し、かつ、前記第2ガード切換工程において、前記基板から飛散する液体が前記第2延設部の下方を通って前記第2筒状部に受けられるように、前記第1状態よりも前記第1延設部と前記第2延設部との間隔が狭められた前記第2状態に前記複数のガードの状態を切り換える工程を実行するようにプログラムされている。
【0036】
この構成によれば、第1状態において、基板から飛散する液体は、第1延設部および第2延設部の間を通って第1筒状部によって受けられる。そのため、第1延設部および第2延設部の間には、疎水化剤のミストが漂っているおそれがある。したがって、複数のガードの状態が第2状態に切り換えられる前では、疎水化剤のミストを取り込んだ液体が、複数のガードから跳ね返って基板の上面に付着するおそれがある。
【0037】
一方、複数のガードの状態が第2状態に切り換えられた後は、基板から飛散する液体は、第2延設部の下方を通って第2筒状部によって受けられる。つまり、基板から飛散する液体は、疎水化剤のミストが漂っているおそれのある第1延設部および第2延設部の間と別の経路を通る。したがって、複数のガードから跳ね返ってくる液体が疎水化剤のミストを取り込むことが抑制される。
【0038】
さらに、複数のガードの状態が第2状態に切り換えられた後であっても、疎水化剤のミストは、第1延設部および第2延設部の間から流出し、対向部材の対向面と基板の上面との間の空間にまで到達し、最終的に基板の上面に付着するおそれがある。そこで、複数のガードの状態を第1状態から第2状態に切り換える際に、第1延設部および第2延設部の間を狭めることで、疎水化剤のミストが第1延設部および第2延設部の間から流出することを抑制できる。
【0039】
この発明の他の実施形態では、前記低表面張力液体供給ユニットが、前記低表面張力液体を吐出する吐出口を有する。そして、前記制御ユニットが、前記第2ガード切換工程において、前記吐出口から前記低表面張力液体が吐出されている間に、前記ガード切換ユニットが前記複数のガードの状態を前記第2状態に切り換える工程を実行するようにプログラムされている。
【0040】
この構成によれば、第2ガード切換工程では、低表面張力液体の吐出中に複数のガードが上下動することによって複数のガードの状態が第2状態に切り換えられる。これにより、第1ガードおよび第2ガードにおいて基板から飛散する低表面張力液体を受ける部分が変化する。したがって、複数のガードの状態を第2状態に切り換える際に、第1ガードを洗浄することができる。
【0041】
この発明の他の実施形態では、前記基板処理装置が、前記基板の上面を処理する薬液を前記基板の上面に供給する薬液供給ユニットと、前記薬液を洗い流すリンス液を前記基板の上面に供給するリンス液供給ユニットと、前記リンス液および前記疎水化剤と混和する有機溶剤を前記基板の上面に供給する有機溶剤供給ユニットとをさらに含む。
前記制御ユニットが、前記疎水化剤供給工程の前に、前記基板の上面に前記薬液供給ユニットから前記薬液を供給する薬液供給工程と、前記薬液供給工程の後でかつ前記疎水化剤供給工程の前に、前記リンス液供給ユニットから前記基板の上面に前記リンス液を供給するリンス液供給工程と、前記リンス液供給工程の後でかつ前記疎水化剤供給工程の前に、前記有機溶剤供給ユニットから前記基板の上面に前記有機溶剤を供給する有機溶剤供給工程とを実行するようにプログラムされている。
【0042】
この構成によれば、有機溶剤がリンス液と疎水化剤との両方と混和する。したがって、リンス液と疎水化剤とが混和しない場合であっても、基板の上面に有機溶剤を供給して基板上のリンス液を有機溶剤で置換し、その後、基板の上面に疎水化剤を供給して基板上の有機溶剤を疎水化剤で置換することによって、基板の上面を疎水化剤で覆うことができる。したがって、リンス液および疎水化剤の選択の自由度が向上される。
【0043】
この発明の他の実施形態では、前記基板処理装置が、前記基板を加熱する加熱流体を前記基板の下面に供給する加熱流体供給ユニットをさらに含む。そして、前記制御ユニットが、前記有機溶剤供給工程と並行して、前記加熱流体を前記基板の下面に供給する加熱流体供給工程を実行するようにプログラムされている。
この構成によれば、疎水化剤供給工程の前に、温水によって予め基板が加熱される。そのため、疎水化剤の活性を高めることができる。これにより、基板の上面をむらなく疎水化することができる。したがって、基板の上面に形成されたパターンの倒壊を抑制することができる。
【0044】
ここで、疎水化剤の重合反応および疎水化剤と基板の上面との反応について説明する。図8Aに示すように、未反応の疎水化剤は、例えば、Si(OR)Yで表される。この疎水化剤と水分子(HO)とが反応することで、単量体(Si(OH)Y)が生成される。そして、単量体同士が反応して二量体(図8Bの中央の化学式を参照)が形成される。さらに、重合反応が進むことによって、最終的にポリマー(図8Bの右側を参照)が形成される。基板上の液膜に接する雰囲気の湿度が低いほど、疎水化剤は重合しにくく、基板の液膜に接する雰囲気の湿度が高いほど、疎水化剤の重合が起こりやすい。
【0045】
基板上の液膜に接する雰囲気の湿度が低い場合、疎水化剤は、重合する前に、基板の上面に露出したヒドロキシル基と反応する。これにより、基板の上面が疎水化されるが、基板の上面が疎水化された後にも未反応の疎水化剤が基板上に残る。そのため、パーティクルの発生の原因となるという課題がある。
基板の液膜に接する雰囲気の湿度が高い場合、基板の上面に露出したヒドロキシル基と反応する前に重合し、ポリマーが形成される。そのため、パーティクルの発生の原因となる。そのため、図8Cに示すように疎水化剤が適度に(例えば二量体に)重合するように、基板の液膜に接する雰囲気の湿度を適度に調整する必要がある。
【0046】
一方、基板上の低表面張力液体に接する雰囲気の湿度が高いと、基板上の低表面張力液体の液膜に含まれる水の量が増大し、表面張力が増大するという課題がある。
そこで、上述した実施形態と下記の構成とを組み合わせることで、これらの課題を解決することができる。具体的には、前記基板処理装置が、前記基板の上面の近傍の雰囲気の湿度を調整する湿度調整ユニットをさらに含み、前記制御ユニットが、前記疎水化剤供給工程における前記基板上の液膜に接する雰囲気の湿度が第1湿度になり、かつ、前記低表面張力液体供給工程における前記基板上の液膜に接する雰囲気の湿度が前記第1湿度よりも低湿度である第2湿度になるように、前記湿度調整ユニットによって、前記基板上の液膜に接する雰囲気の湿度を調整する湿度調整工程とを実行するようにプログラムされた構成であってもよい。
【0047】
この構成によれば、疎水化剤供給工程における基板上の液膜に接する雰囲気の湿度が低表面張力液体供給工程における基板上の液膜に接する雰囲気の湿度よりも高くされる。
そのため、疎水化剤供給工程では、疎水化剤の重合が進み過ぎない程度に基板上の液膜に接する雰囲気の湿度を高くすることができる。したがって、疎水化剤のポリマー化を抑制して適度に疎水化剤を重合させることができる。その結果、基板の上面を充分に疎水化しつつ、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0048】
また、低表面張力液体供給工程では、基板上の液膜に接する雰囲気の湿度を充分に低減することができる。これにより、基板上の低表面張力液体の液膜に含まれる水の量を低減することができる。そのため、基板上の低表面張力液体が基板の上面に及ぼす表面張力を低減することができる。
また、前記制御ユニットが、前記疎水化剤供給工程の前に、前記有機溶剤供給ユニットから前記有機溶剤を前記基板の上面に供給する有機溶剤供給工程を実行し、前記制御ユニットが、前記湿度調整工程において、前記有機溶剤供給工程における前記基板の上面の周囲の雰囲気の湿度が前記第1湿度よりも低湿度である第3湿度になるように前記基板上の液膜に接する雰囲気の湿度を調整する工程を実行するようにプログラムされていてもよい。
【0049】
基板上の有機溶剤に水が含有されると、疎水化剤供給工程において基板上の有機溶剤を疎水化剤で置換する際に、疎水化剤が有機溶剤中の水と反応する。したがって、疎水化剤の重合反応が進み、基板の上面を充分に疎水化できないおそれがある。そこで、有機溶剤供給工程において基板上の液膜に接する雰囲気の湿度が第1湿度よりも低湿度にされる構成であれば、疎水化剤のポリマー化を抑制することができる。その結果、基板の上面を一層充分に疎水化しつつ、パーティクルの発生を一層抑制することができる。
【0050】
また、前記基板処理装置が、前記対向面と前記基板の上面との間の空間に気体を供給する気体供給ユニットとをさらに含み、前記制御ユニットが、前記空間に向けて前記気体供給ユニットから気体を供給する気体供給工程を実行するようにプログラムされており、前記制御ユニットが、前記湿度調整工程において、前記気体供給工程の実行中に、前記疎水化剤供給工程における前記空間の湿度が前記第1湿度になり、かつ、前記低表面張力液体供給工程における前記空間の湿度が前記第2湿度になるように、前記空間内の湿度を調整する工程を実行するようにプログラムされていてもよい。
【0051】
この構成によれば、対向部材の対向面と基板の上面との間の空間への気体の供給によって、対向部材の対向面と基板の上面との間の空間の湿度が調整される。対向部材の対向面と基板の上面との間の空間の湿度を調整することによって、前記基板上の液膜に接する雰囲気の湿度を容易に調整することができる。
また、前記基板処理装置が、前記対向部材を昇降させる対向部材昇降ユニットをさらに含み、前記制御ユニットが、前記湿度調整工程において、前記対向部材昇降ユニットに前記対向部材を昇降させることによって、前記疎水化剤供給工程における前記対向面と前記基板の上面との間の距離である第1距離から、前記第1距離よりも小さい第2距離に、前記対向面と前記基板の上面との間の距離を変更することによって、前記基板上の液膜に接する雰囲気の湿度を前記第1湿度から前記第2湿度に変更する工程を実行するようにプログラムされていてもよい。
【0052】
疎水化剤供給工程において基板の上面に供給された疎水化剤は、基板の上面から跳ね返って対向面に付着することがある。対向面に付着した疎水化剤が、疎水化剤供給工程後の低表面張力液体供給工程において基板の上面に落下すると、パーティクルの原因となる。
そこで、疎水化剤供給工程における対向面と基板の上面との間の距離(第1距離)が、低表面張力液体供給工程における対向面と基板の上面との間の距離(第2距離)よりも大きくなるように、空間内の湿度が調整される方法であれば、疎水化剤供給工程では、低表面張力液体供給工程よりも対向部材を基板の上面から離間させた状態、基板の上面に疎水化剤が供給される。そのため、対向面への疎水化剤の付着を抑制できるのでパーティクルの発生を抑制することができる。
【0053】
また、前記制御ユニットが、前記基板上の液膜に接する雰囲気の湿度を前記第1湿度から前記第2湿度に変更する工程において、前記低表面張力液体供給工程の実行中に前記対向部材昇降ユニットに前記対向部材を昇降させることによって、前記対向面と前記基板の上面との間の距離を前記第1距離から前記第2距離に変更する工程を実行するようにプログラムされていてもよい。
【0054】
そのため、少なくとも基板の上面の疎水化剤が低表面張力液体によって置換され始めてから、対向面と基板の上面との間の距離が第2距離に変更される。したがって、対向面への疎水化剤の付着を一層抑制できる。
また、前記気体供給ユニットが、前記空間に供給する前記気体の流量を調整可能であり、前記制御ユニットが、前記湿度調整工程において、前記気体供給ユニットからの前記気体の供給流量を調整することによって、前記空間内の湿度を調整する工程を実行するようにプログラムされていてもよい。そのため、対向面と基板の上面との間の距離の変更と気体の供給流量の調整とによって、対向面と基板の上面との間の空間の湿度を精度良く調整することができる。したがって、基板上の液膜に接する雰囲気の湿度を精度良く調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための平面図である。
図2図2は、前記基板処理装置に備えられた処理ユニットの構成例を説明するための図解的な断面図である。
図3図3は、前記処理ユニットに備えられたスピンチャックおよびその周辺の部材の平面図である。
図4図4は、前記基板処理装置の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。
図5図5は、前記基板処理装置による基板処理の一例を説明するための流れ図である。
図6A図6Aは、前記基板処理の一例を説明するための図解的な断面図である。
図6B図6Bは、前記基板処理の一例を説明するための図解的な断面図である。
図6C図6Cは、前記基板処理の一例を説明するための図解的な断面図である。
図6D図6Dは、前記基板処理の一例を説明するための図解的な断面図である。
図6E図6Eは、前記基板処理の一例を説明するための図解的な断面図である。
図6F図6Fは、前記基板処理の一例を説明するための図解的な断面図である。
図6G図6Gは、前記基板処理の一例を説明するための図解的な断面図である。
図6H図6Hは、前記基板処理の一例を説明するための図解的な断面図である。
図6I図6Iは、前記基板処理の一例を説明するための図解的な断面図である。
図6J図6Jは、前記基板処理の一例を説明するための図解的な断面図である。
図6K図6Kは、前記基板処理の一例を説明するための図解的な断面図である。
図7図7は、前記基板処理の一例を説明するためのタイムチャートである。
図8A図8Aは、疎水化剤と水との反応を説明するための図である。
図8B図8Bは、疎水化剤の重合反応を説明するための図である。
図8C図8Cは、疎水化剤と基板の表面との反応を説明するための図である。
図9図9は、表面張力によるパターン倒壊の原理を説明するための図解的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下では、この発明の実施の形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置1の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。
基板処理装置1は、シリコンウエハ等の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状の基板である。基板処理装置1は、処理液で基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリヤCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御する制御ユニット3とを含む。処理液には、後述する薬液、リンス液、有機溶剤、疎水化剤等が含まれる。搬送ロボットIRは、キャリヤCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。複数の処理ユニット2は、例えば、同様の構成を有している。
【0057】
図2は、処理ユニット2の構成例を説明するための模式図である。処理ユニット2は、内部空間を有する箱型のチャンバ4と、チャンバ4内で基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャック5と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に対向する対向部材6と、基板Wから外方に飛散する処理液を受け止める筒状の処理カップ7と、チャンバ4内の雰囲気を排気する排気ユニット8とを含む。
【0058】
チャンバ4は、基板Wが通過する搬入搬出口24bが設けられた箱型の隔壁24と、搬入搬出口24bを開閉するシャッタ25とを含む。フィルタによってろ過された空気であるクリーンエアは、隔壁24の上部に設けられた送風口24aからチャンバ4内に常時供給される。
排気ユニット8は、処理カップ7の底部に接続された排気ダクト9と、排気ダクト9を開閉する排気バルブ10とを含む。排気バルブ10の開度を調整することによって、排気ダクト9を流れる気体の流量(排気流量)を調整することができる。排気ダクト9は、たとえば、チャンバ4内を吸引する排気装置95に接続されている。排気装置95は、基板処理装置1の一部であってもよいし、基板処理装置1とは別に設けられていてもよい。排気装置95が基板処理装置1の一部である場合、排気装置95は、たとえば、真空ポンプ等である。チャンバ4内の気体は、排気ダクト9を通じてチャンバ4から排出される。これにより、クリーンエアのダウンフローがチャンバ4内に常時形成される。
【0059】
スピンチャック5は、一枚の基板Wを水平な姿勢で保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させる。スピンチャック5は、基板Wを水平に保持する基板保持ユニットに含まれる。基板保持ユニットは、基板ホルダともいう。スピンチャック5は、チャックピン20と、スピンベース21と、回転軸22と、スピンモータ23とを含む。
【0060】
スピンベース21は、水平方向に沿う円板形状を有している。スピンベース21の上面には、複数のチャックピン20が周方向に間隔を空けて配置されている。スピンチャック5は、複数のチャックピン20を基板Wの外周面に接触させる挟持式のチャックに限らず、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)をスピンベース21の上面に吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0061】
回転軸22は、回転軸線A1に沿って鉛直方向に延びている。回転軸22の上端部は、スピンベース21の下面中央に結合されている。平面視におけるスピンベース21の中央領域には、スピンベース21を上下に貫通する貫通孔21aが形成されている。貫通孔21aは、回転軸22の内部空間22aと連通している。
スピンモータ23は、回転軸22に回転力を与える。スピンモータ23によって回転軸22が回転されることにより、スピンベース21が回転される。これにより、基板Wが回転軸線A1のまわりに回転される。以下では、回転軸線A1を中心とした径方向の内方を単に「径方向内方」といい、回転軸線A1を中心とした径方向の外方を単に「径方向外方」という。スピンモータ23は、基板Wを回転軸線A1のまわりに回転させる基板回転ユニットに含まれる。
【0062】
対向部材6は、基板Wとほぼ同じ径またはそれ以上の径を有する円板状に形成され、スピンチャック5の上方でほぼ水平に配置されている。対向部材6は、遮断部材とも呼ばれる。対向部材6は、基板Wの上面に対向する対向面6aを有する。対向部材6において対向面6aとは反対側の面には、中空軸26が固定されている。対向部材6において平面視で回転軸線A1と重なる位置を含む部分には、対向部材6を上下に貫通し、中空軸26の内部空間と連通する連通孔が形成されている。
【0063】
処理ユニット2は、対向部材6の昇降を駆動する対向部材昇降ユニット27をさらに含む。対向部材昇降ユニット27は、下位置(後述する図6Kに示す位置)から上位置(後述する図6Aに示す位置)までの任意の位置(高さ)に対向部材6を位置させることができる。下位置とは、対向部材6の可動範囲において、対向部材6の対向面6aが基板Wに最も近接する位置である。上位置とは、対向部材6の可動範囲において対向部材6の対向面6aが基板Wから最も離間する位置である。対向部材昇降ユニット27は、たとえば、ボールねじ機構(図示せず)と、それに駆動力を与える電動モータ(図示せず)とを含む。
【0064】
処理カップ7は、スピンチャック5に保持された基板Wから外方に飛散する液体を受け止める複数のガード11と、複数のガード11によって下方に案内された液体を受け止める複数のカップ12と、複数のガード11と複数のカップ12とを取り囲む円筒状の外壁部材13とを含む。図2は、3つのガード11(外側ガード11A、中央ガード11Bおよび内側ガード11C)と、2つのカップ12(第1カップ12Aおよび第2カップ12B)とが設けられている例を示している。
【0065】
外側ガード11A、中央ガード11B、および内側ガード11Cのそれぞれについて言及する場合、以下では、単に、ガード11ということもある。同様に、第1カップ12A、および第2カップ12Bのそれぞれについて言及する場合、単に、カップ12ということもある。
各ガード11は、平面視で基板Wを取り囲み、基板Wから飛散する液体を受ける。各ガード11は、スピンチャック5を取り囲む円筒状の筒状部14と、筒状部14の上端から回転軸線A1(対向部材6)に向かって斜め上に延びる円環状の延設部15とを含む。内側ガード11Cの筒状部14、中央ガード11Bの筒状部14および外側ガード11Aの筒状部14は、径方向内方からこの順番で、同心円状に配置されている。内側ガード11Cの延設部15、中央ガード11Bの延設部15および外側ガード11Aの延設部15は、下からこの順番で、上下方向に重なっている。内側ガード11Cの延設部15の上端は、内側ガード11Cの上端11aに相当する。中央ガード11Bの延設部15の上端は、中央ガード11Bの上端11aに相当する。外側ガード11Aの延設部15の上端は、外側ガード11Aの上端11aに相当する。各ガード11の上端11aは、平面視でスピンベース21および対向部材6を取り囲んでいる。
【0066】
複数のカップ12は、外側から第1カップ12A、および第2カップ12Bの順番で、同心円状に配置されている。第1カップ12Aは、スピンチャック5を取り囲んでいる。第2カップ12Bは、第1カップ12Aよりも内側でスピンチャック5を取り囲んでいる。第2カップ12Bは、外壁部材13の上端よりも下方に配置されている。第2カップ12Bは、チャンバ4の隔壁24に対して固定されている。第1カップ12Aは、中央ガード11Bと一体であり、中央ガード11Bと共に上下方向に移動する。中央ガード11Bは、第1カップ12Aに対して移動可能であってもよい。
【0067】
ガード11は、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面よりもガード11の上端11aが上方に位置する上位置と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面よりもガード11の上端11aが下方に位置する下位置との間で、上下方向に移動可能である。
処理ユニット2は、複数のガード11の昇降を駆動するガード昇降ユニット17をさらに含む。図3は、スピンチャック5およびその周辺の部材の平面図である。図3を参照して、ガード昇降ユニット17は、一対の外側ガード昇降ユニット17A、一対の中央ガード昇降ユニット17Bおよび一対の内側ガード昇降ユニット17Cを含む。詳しくは、外側ガード昇降ユニット17A、中央ガード昇降ユニット17Bおよび内側ガード昇降ユニット17Cを一組とする組が、平面視で基板Wの回転軸線A1を中心として点対称となるように一対配置されている。そのため、複数のガード11をそれぞれ安定して昇降させることができる。
【0068】
各外側ガード昇降ユニット17Aは、動力を発生する電動モータ(図示せず)と、電動モータ(図示せず)の回転を上下方向への外側ガード11Aの移動に変換するボールネジ機構とを含む。各中央ガード昇降ユニット17Bは、動力を発生する電動モータ(図示せず)と、電動モータ(図示せず)の回転を上下方向への中央ガード11Bの移動に変換するボールネジ機構とを含む。各内側ガード昇降ユニット17Cは、動力を発生する電動モータ(図示せず)と、電動モータ(図示せず)の回転を上下方向への内側ガード11Cの移動に変換するボールネジ機構とを含む。
【0069】
ガード昇降ユニット17は、複数のガード11の少なくとも一つを上下動させることによって、複数のガード11の状態を切り替えるガード切換ユニットの一例である。ガード昇降ユニット17は、各ガード11を上位置から下位置までの任意の位置に位置させる。これにより、複数のガード11の状態(配置)が切り換えられる。ガード昇降ユニット17は、たとえば3つの状態(第1状態、第2状態、および第3状態)のいずれかに複数のガード11を設定する。
【0070】
「第1状態」(後述する図6Fに示す状態)は、基板Wから飛散する液体を外側ガード11Aが受けるときの複数のガード11の状態である。複数のガード11が第1状態のとき、外側ガード11Aが上位置に配置され、内側ガード11Cおよび中央ガード11Bが下位置に配置される。
「第2状態」(後述する図6Eに示す状態)は、基板Wから飛散する液体を内側ガード11Cが受けるときの複数のガードの状態である。複数のガード11が第2状態のとき、外側ガード11A、中央ガード11Bおよび内側ガード11Cが上位置に配置される。
【0071】
「第3状態」(後述する図6Aに示す状態)は、基板Wから飛散する液体を中央ガード11Bが受けるときの複数のガードの状態である。複数のガード11が第3状態のとき、外側ガード11Aおよび中央ガード11Bが上位置に配置され、内側ガード11Cが下位置に配置される。
図2および図3を参照して、処理ユニット2は、基板Wの上面に向けて薬液を下方に吐出する第1薬液ノズル31および第2薬液ノズル32と、基板Wの上面に向けてリンス液を下方に吐出する第1リンス液ノズル33とを含む。
【0072】
第1薬液ノズル31は、薬液を案内する第1薬液配管41に接続されている。第2薬液ノズル32は、薬液を案内する第2薬液配管42が接続されている。第1リンス液ノズル33は、リンス液を案内する第1リンス液配管43に接続されている。リンス液は、薬液を洗い流すための液体である。第1薬液配管41に介装された第1薬液バルブ51が開かれると、薬液が、第1薬液ノズル31の吐出口から下方に連続的に吐出される。第1薬液ノズル31は、基板Wの上面に薬液を供給する薬液供給ユニットの一例である。第2薬液配管42に介装された第2薬液バルブ52が開かれると、薬液が、第2薬液ノズル32の吐出口から下方に連続的に吐出される。第2薬液ノズル32も、薬液供給ユニットの一例である。第1リンス液配管43に介装された第1リンス液バルブ53が開かれると、リンス液が、第1リンス液ノズル33の吐出口から下方に連続的に吐出される。第1リンス液ノズル33は、基板Wの上面にリンス液を供給するリンス液供給ユニットの一例である。
【0073】
第1薬液ノズル31から吐出される薬液は、たとえば、DHF(希フッ酸)である。DHFは、フッ酸(フッ化水素酸)を水で希釈した溶液である。第2薬液ノズル32から吐出される薬液は、たとえば、SC1(アンモニア過酸化水素水混合液)である。
第1薬液ノズル31から吐出される薬液および第2薬液ノズル32から吐出される薬液は、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、BHF(バッファードフッ酸)、DHF、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえば、クエン酸、蓚酸等)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、腐食防止剤のうちの少なくとも1つを含む液であってもよい。これらを混合した薬液の例としては、SC1の他に、SPM(硫酸過酸化水素水混合液)、SC2(塩酸過酸化水素水混合液)などが挙げられる。
【0074】
第1リンス液ノズル33から吐出されるリンス液は、たとえば、炭酸水である。リンス液は、純水(脱イオン水:Deionized Water)、電解イオン水、水素水、オゾン水、アンモニア水および希釈濃度(たとえば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。リンス液は、水または水溶液である。
第1薬液ノズル31、第2薬液ノズル32および第1リンス液ノズル33は、チャンバ4内で移動可能なスキャンノズルである。処理ユニット2は、第1薬液ノズル31、第2薬液ノズル32および第1リンス液ノズル33を保持するノズルアーム16と、ノズルアーム16を移動させることによって、少なくとも水平方向に、第1薬液ノズル31、第2薬液ノズル32および第1リンス液ノズル33を移動させるノズル移動ユニット18とを含む。
【0075】
ノズル移動ユニット18は、第1薬液ノズル31、第2薬液ノズル32および第1リンス液ノズル33を処理位置(後述する図6Aに示す位置)と退避位置(図3に示す位置)との間で水平に移動させる。第1薬液ノズル31が処理位置に位置するとき、第1薬液ノズル31から吐出された薬液は、基板Wの上面に着液する。第2薬液ノズル32が処理位置に位置するとき、第2薬液ノズル32から吐出された薬液は、基板Wの上面に着液する。第1リンス液ノズル33が処理位置に位置するとき、第1リンス液ノズル33から吐出されたリンス液は、基板Wの上面に着液する。第1薬液ノズル31、第2薬液ノズル32および第1リンス液ノズル33は、退避位置に位置するとき、平面視でスピンチャック5のまわりに位置する。
【0076】
ノズル移動ユニット18は、たとえば、スピンチャック5および処理カップ7のまわりで鉛直に延びるノズル回動軸線A2まわりに第1薬液ノズル31、第2薬液ノズル32および第1リンス液ノズル33を水平に移動させる旋回ユニットである。
処理ユニット2は、基板Wの下面中央部に向けて処理液を上方に吐出する下面ノズル34を含む。下面ノズル34は、スピンベース21の上面中央部で開口する貫通孔21aに挿入されている。下面ノズル34の吐出口34aは、スピンベース21の上面から露出されている。下面ノズル34の吐出口は、基板Wの下面中央部に下方から対向する。下面ノズル34は、加熱流体バルブ54が介装された加熱流体配管44に接続されている。
【0077】
加熱流体バルブ54が開かれると、温水等の加熱流体が、加熱流体配管44から下面ノズル34に供給され、下面ノズル34の吐出口34aから上方に連続的に吐出される。下面ノズル34は、加熱流体を基板Wの下面に供給する加熱流体供給ユニットの一例である。温水は、室温よりも高温の水であり、例えば80℃~85℃の水である。下面ノズル34は、チャンバ4の隔壁24に対して固定されている。スピンチャック5が基板Wを回転させても、下面ノズル34は回転しない。
【0078】
下面ノズル34から吐出される加熱流体は、温水に限られない。下面ノズル34から吐出される加熱流体は、基板Wを加熱することができる流体であればよい。下面ノズル34から吐出される加熱流体は、例えば、高温の窒素ガスであってもよい。下面ノズル34から吐出される加熱流体は、水蒸気であってもよい。加熱流体が水蒸気であれば、温水よりも高温の流体で基板Wを加熱することができる。
【0079】
処理ユニット2は、対向部材6の対向面6aの中央部で開口する中央開口6bを介して処理液を下方に吐出する中心ノズル60を含む。中心ノズル60は、対向部材6の中央部を上下方向に貫通する貫通穴内に配置されている。中心ノズル60の吐出口60aは、中央開口6bから露出しており、スピンチャック5に保持された基板Wの上面の中央に対向している。中心ノズル60は、対向部材6と共に鉛直方向に昇降する。
【0080】
中心ノズル60は、処理液を下方に吐出する複数のインナーチューブ(第1チューブ35、第2チューブ36および第3チューブ37)と、複数のインナーチューブを取り囲む筒状のケーシング61とを含む。第1チューブ35、第2チューブ36、第3チューブ37およびケーシング61は、回転軸線A1に沿って上下方向に延びている。対向部材6の内周面は、径方向(回転軸線A1に直交する方向)に間隔を空けてケーシング61の外周面を取り囲んでいる。中心ノズル60の吐出口60aは、第1チューブ35、第2チューブ36および第3チューブ37の吐出口でもある。
【0081】
第1チューブ35は、基板Wの上面に向けてリンス液を下方に吐出する。第1チューブ35は、第2リンス液バルブ55が介装された第2リンス液配管45に接続されている。第2リンス液バルブ55が開かれると、リンス液が、第2リンス液配管45から第1チューブ35に供給され、第1チューブ35の吐出口(中心ノズル60の吐出口60a)から下方に連続的に吐出される。第1チューブ35は、基板Wの上面にリンス液を供給するリンス液供給ユニットの一例である。第1チューブ35から吐出されるリンス液は、たとえば、炭酸水である。第1チューブ35から吐出されるリンス液は、炭酸水には限られない。第1チューブ35から吐出されるリンス液は、たとえば、DIW等の前述したリンス液であってもよい。
【0082】
第2チューブ36は、基板Wの上面に向けて疎水化剤を下方に吐出する。疎水化剤は、基板Wの上面を疎水化するための液体である。疎水化剤によって疎水化された基板Wの上面のパターン(図9参照)に作用する表面張力は、疎水化されていない基板Wの上面のパターンに作用する表面張力よりも低い。第2チューブ36は、疎水化剤バルブ56が介装された疎水化剤配管46に接続されている。疎水化剤バルブ56が開かれると、リンス液が、疎水化剤配管46から第2チューブ36に供給され、第2チューブ36の吐出口(中心ノズル60の吐出口60a)から下方に連続的に吐出される。第2チューブ36は、基板Wの上面に疎水化剤を供給する疎水化剤供給ユニットの一例である。
【0083】
第2チューブ36から吐出される疎水化剤は、例えば、シリコン自体およびシリコンを含む化合物を疎水化させるシリコン系疎水化剤、または金属自体および金属を含む化合物を疎水化させるメタル系疎水化剤である。メタル系疎水化剤は、例えば、疎水基を有するアミン、および有機シリコン化合物の少なくとも一つを含む。シリコン系疎水化剤は、例えば、シランカップリング剤である。シランカップリング剤は、例えば、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)、TMS(テトラメチルシラン)、フッ素化アルキルクロロシラン、アルキルジシラザン、および非クロロ系疎水化剤の少なくとも一つを含む。非クロロ系疎水化剤は、例えば、ジメチルシリルジメチルアミン、ジメチルシリルジエチルアミン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、N,N-ジメチルアミノトリメチルシラン、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミンおよびオルガノシラン化合物の少なくとも一つを含む。
【0084】
第3チューブ37は、疎水化剤およびリンス液の両方と混和可能で、かつ、水よりも低い表面張力を有する有機溶剤を基板Wの上面に向けて下方に吐出する。水よりも低い表面張力を有する液体のことを低表面張力液体という。第3チューブ37から吐出される有機溶剤は、たとえば、IPA(イソプロピルアルコール)である。第3チューブ37は、有機溶剤バルブ57が介装された有機溶剤配管47に接続されている。有機溶剤バルブ57が開かれると、IPAが、有機溶剤配管47から第3チューブ37に供給され、第3チューブ37の吐出口(中心ノズル60の吐出口60a)から下方に連続的に吐出される。第3チューブ37は、基板Wの上面に有機溶剤(低表面張力液体)を供給する有機溶剤供給ユニット(低表面張力液体供給ユニット)の一例である。
【0085】
第3チューブ37から吐出される有機溶剤は、リンス液の両方と混和可能であり、かつ、水よりも低い表面張力を有していれば、IPA以外の有機溶剤であってもよい。より具体的には、第3チューブ37から吐出される有機溶剤は、IPA、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、メタノール、エタノール、アセトンおよびTrans-1,2ジクロロエチレンのうちの少なくとも1つを含む液を有機溶剤であってもよい。
【0086】
処理ユニット2は、気体供給源からの気体を対向部材6の中央開口6bに導く気体配管49と、気体配管49に介装された気体バルブ59とを含む。気体バルブ59が開かれると、気体配管49から供給された気体が、中心ノズル60のケーシング61の外周面と対向部材6の内周面とによって形成された筒状の気体流路62を下方に流れ、中央開口6bから下方に吐出される。中央開口6bから吐出された気体は、対向面6aと基板Wの上面との間の空間90に供給される。中央開口6bは、空間90内に気体を供給する気体供給ユニットに含まれる。気体バルブ59の開度を調整することによって、中央開口6bから吐出される気体の流量(供給流量)を調整することができる。中央開口6bに供給される気体は、たとえば、窒素ガスである。中央開口6bに供給される気体は、チャンバ4の内部空間に供給されるクリーンエアよりも低い湿度を有する。なお、クリーンエアの湿度は、たとえば、47%~50%である。中央開口6bに供給される気体の湿度は、たとえば、約0%である。
【0087】
中央開口6bに供給される気体は、不活性ガスであることが好ましい。不活性ガスは、基板Wの上面およびパターンに対して不活性なガスのことであり、例えばアルゴン等の希ガス類であってもよい。中央開口6bからから吐出される気体は、空気であってもよい。
処理ユニット2は、基板Wの上面に向けて処理液(例えば疎水化剤)を吐出する内部ノズル38を含む。内部ノズル38は、外側ガード11Aの上端11aよりも下方に配置された水平部38hと、外側ガード11Aの上方に配置された鉛直部38vとを含む。外側ガード11Aおよび中央ガード11Bがいずれの位置に位置しているときでも、水平部38hは、外側ガード11Aと中央ガード11Bとの間に配置される。図3に示すように、水平部38hは、平面視円弧状である。水平部38hは、平面視直線状であってもよいし、平面視折れ線状であってもよい。
【0088】
図2に示すように、内部ノズル38は、外側ガード11Aの延設部15を上下方向に貫通する貫通穴に挿入されている。鉛直部38vは、外側ガード11Aの貫通穴の上方に配置されている。鉛直部38vは、外側ガード11Aの上方に配置されたハウジング70を上下方向に貫通している。ハウジング70は、外側ガード11Aに支持されている。鉛直部38vは、回転可能にハウジング70に支持されている。内部ノズル38は、鉛直部38vの中心線に相当するノズル回動軸線A3まわりに外側ガード11Aに対して回動可能である。ノズル回動軸線A3は、外側ガード11Aを通る鉛直な軸線である。
【0089】
水平部38hの先端部(ノズル回動軸線A3とは反対側の端部)には、処理液を下方に吐出する吐出口38pが設けられている。内部ノズル38は、第2疎水化剤バルブ58が介装された第2疎水化剤配管48に接続されている。第2疎水化剤バルブ58が開かれると、第2疎水化剤配管48から内部ノズル38に疎水化剤が供給され、内部ノズル38の吐出口38pから下方に連続的に吐出される。
【0090】
処理ユニット2は、処理位置と退避位置との間で内部ノズル38をノズル回動軸線A3まわりに回動させるスキャンユニット71を含む。内部ノズル38が処理位置に位置するとき、内部ノズル38から吐出された処理液は、基板Wの上面に着液する。内部ノズル38は、退避位置に位置するとき、平面視でスピンチャック5のまわりに位置する。
スキャンユニット71は、内部ノズル38を回動させる動力を発生する電動モータ72を含む。電動モータ72は、内部ノズル38の鉛直部38vと同軸の同軸モータであってもよいし、2つのプーリと無端状のベルトとを介して内部ノズル38の鉛直部38vに連結されていてもよい。
【0091】
内部ノズル38が退避位置(図3で破線で示す位置)に配置されると、内部ノズル38の水平部38hの全体が外側ガード11Aに重なる。内部ノズル38が処理位置(図3で二点鎖線で示す位置)に配置されると、水平部38hの先端部が外側ガード11Aの上端11aよりも内側に配置され、内部ノズル38が基板Wに重なる。処理位置は、内部ノズル38から吐出された処理液が基板Wの上面中央部に着液する中央処理位置(図3で二点鎖線で示す位置)と、内部ノズル38から吐出された処理液が基板Wの上面外周部に着液する外周処理位置とを含む。
【0092】
外側ガード11Aの延設部15は、外側ガード11Aの筒状部14の上端から回転軸線A1に向かって斜め上に延びる環状の傾斜部15aと、傾斜部15aから上方に突出する突出部15bとを含む。傾斜部15aと突出部15bとは周方向(回転軸線A1まわりの方向)に並んでいる。突出部15bは、傾斜部15aから上方に延びる一対の側壁15sと、一対の側壁15sの上端の間に配置された上壁15uと、一対の側壁15sの外端の間に配置された外壁15oとを含む。突出部15bは、外側ガード11Aの傾斜部15aの下面から上方に凹んだ収容空間を形成している。
【0093】
内部ノズル38が退避位置に配置されると、内部ノズル38の水平部38hの全体が、平面視で突出部15bに重なり、収容空間に収容される。図2に示すように、このとき、吐出口38pが設けられた水平部38hの先端部は、外側ガード11Aの上端11aよりも外側に配置される。内部ノズル38を退避位置に配置すれば、外側ガード11Aの上端11aと中央ガード11Bの上端11aとを上下方向に互いに近づけることができる。これにより、外側ガード11Aと中央ガード11Bとの間に進入する液体の量を減らすことができる。
【0094】
前述のように、内部ノズル38は、ハウジング70に支持されている。同様に、スキャンユニット71は、ハウジング70に支持されている。スキャンユニット71の電動モータ72は、上下方向に伸縮可能なベローズ73の中に配置されている。ハウジング70は、第1ブラケット74Aを介して外側ガード11Aに支持されており、第2ブラケット74Bを介してガード昇降ユニット17に支持されている。ガード昇降ユニット17が外側ガード11Aを昇降させると、ハウジング70も昇降する。これにより、内部ノズル38およびスキャンユニット71が、外側ガード11Aと共に昇降する。
【0095】
図4は、基板処理装置1の主要部の電気的構成を説明するためのブロック図である。制御ユニット3は、マイクロコンピュータを備えており、所定のプログラムに従って、基板処理装置1に備えられた制御対象を制御する。より具体的には、制御ユニット3は、プロセッサ(CPU)3Aと、プログラムが格納されたメモリ3Bとを含み、プロセッサ3Aがプログラムを実行することによって、基板処理のための様々な制御を実行するように構成されている。
【0096】
特に、制御ユニット3は、搬送ロボットIR,CR、スピンモータ23、対向部材昇降ユニット27、ガード昇降ユニット17(外側ガード昇降ユニット17A、中央ガード昇降ユニット17Bおよび内側ガード昇降ユニット17C)、ノズル移動ユニット18およびバルブ類10,51~59等の動作を制御する。バルブ51~58が制御されることによって、対応するノズル(チューブ)からの流体の吐出の有無や吐出流量が制御される。バルブ59が制御されることで、中央開口6bからの気体の吐出の有無や吐出流量が制御される。バルブ10が制御されることで、排気ダクト9からの排気の有無や排気流量が制御される。
【0097】
図5は、基板処理装置1による基板処理の一例を説明するための流れ図であり、主として、制御ユニット3がプログラムを実行することによって実現される処理が示されている。図6A図6Kは、基板処理の一例を説明するための図解的な断面図である。図7は、基板処理の一例を説明するためのタイムチャートである。
基板処理装置1による基板処理では、例えば、図5に示すように、基板搬入(S1)、第1薬液処理(S2)、第1リンス処理(S3)、第2薬液処理(S4)、第2リンス処理(S5)、有機溶剤処理(S6)、疎水化剤処理(S7)、低表面張力液体処理(S8)、乾燥処理(S9)および基板搬出(S10)がこの順番で実行される。
【0098】
まず、図1を参照して、基板処理装置1による基板処理では、基板Wが、搬送ロボットIR,CRによってキャリヤCから処理ユニット2に搬入され、スピンチャック5に渡される(ステップS1:基板搬入)。基板処理装置1による基板処理では、排気バルブ10(図2参照)が常時開かれており、排気バルブ10の開度は一定である。
そして、図6Aを参照して、基板Wは、搬送ロボットCRによって搬出されるまでの間、複数のガード11に囲まれた位置でスピンチャック5によって水平に保持される(基板保持工程)。そして、スピンモータ23(図2参照)がスピンベース21の回転を開始させる。これにより、基板Wの回転が開始される(基板回転工程)。そして、対向部材昇降ユニット27が対向部材6を上位置に位置させる。
【0099】
そして、第1薬液処理(S2)が開始される。第1薬液処理(S2)では、基板W上に薬液としてDHF(希フッ酸)を供給する。
具体的には、ガード昇降ユニット17が、複数のガード11の状態を第3状態に切り換える。そして、ノズル移動ユニット18が、第1薬液ノズル31、第2薬液ノズル32および第1リンス液ノズル33を処理位置に移動させる。そして、第1薬液バルブ51が開かれる。これにより、第1薬液ノズル31から回転状態の基板Wの上面の中央領域にDHF(薬液)が供給される(薬液供給工程)。DHFは遠心力によって基板Wの上面の全体に行き渡る。これにより、基板W上にDHFの液膜100が形成される。DHFは、遠心力によって基板Wから径方向外方に飛散する。基板Wから飛散した液体は、中央ガード11Bの延設部15と内側ガード11Cの延設部15との間を通って、中央ガード11Bの筒状部14によって受けられる。
【0100】
次に、第1リンス処理(S3)が実行される。第1リンス液処理(S3)では、基板W上のDHFがDIWによって洗い流される。
具体的には、第1薬液バルブ51が閉じられる。これにより、第1薬液ノズル31からのDHFの吐出が停止される。そして、図6Bに示すように、第1リンス液バルブ53が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて第1リンス液ノズル33からDIW(リンス液)が供給される(リンス液供給工程)。DIWは遠心力によって基板Wの上面の全体に行き渡る。これにより、基板W上の液膜100内のDHFがDIWによって置換される。DHFおよびDIWの混合液やDIWは、遠心力によって基板Wから径方向外方に飛散する。基板Wから飛散した液体は、中央ガード11Bの延設部15と内側ガード11Cの延設部15との間を通って、中央ガード11Bの筒状部14によって受けられる。
【0101】
次に、第2薬液処理(S4)が実行される。第2薬液処理(S4)では、SC1が基板Wの上面に供給される。
具体的には、第1リンス液バルブ53が閉じられる。これにより、第1リンス液ノズル33からのDIWの吐出が停止される。そして、図6Cに示すように、ガード昇降ユニット17が、複数のガード11の状態を第3状態から第2状態に切り換える。具体的には、複数のガード11は、基板Wから飛散する液体を内側ガード11Cが受ける状態にされる。
【0102】
そして、第2薬液バルブ52が開かれる。これにより、第2薬液ノズル32から回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けてSC1が吐出(供給)される(薬液供給工程)。薬液は遠心力によって基板Wの上面の全体に行き渡る。これにより、基板W上の液膜100内のDIWがSC1によって置換される。そして、基板Wの上面がSC1によって処理される。SC1およびDIWの混合液やSC1は、遠心力によって基板Wから径方向外方に飛散する。基板Wから飛散した液体は、内側ガード11Cの延設部15の下方を通って、内側ガード11Cの筒状部14によって受けられる。
【0103】
次に、第2リンス処理(S5)が実行される。第2リンス処理(S5)では、基板W上のSC1が炭酸水によって洗い流される。
具体的には、図6Dおよび図7を参照して、第2薬液バルブ52が閉じられる。これにより、第2薬液ノズル32からのSC1の吐出が停止される。そして、ノズル移動ユニット18が、第1薬液ノズル31、第2薬液ノズル32および第1リンス液ノズル33を退
避位置に配置させる。
【0104】
そして、対向部材昇降ユニット27が、対向部材6を上位置と下位置との間の近接位置に配置する。この基板処理において、近接距離には、第1近接位置(後述する図6Gに示す位置)と、第1近接位置よりも基板Wの上面から離間した第2近接位置(図6Dに示す位置)とが含まれる。第1近接位置に位置する対向部材6の下面と基板Wの上面との間の距離を第1距離という。第1距離は、たとえば、15mmである。第2近接位置に位置する対向部材6の下面と基板Wの上面との間の距離を第2距離という。第2距離は、たとえば、5mmである。第2リンス処理では、対向部材6は、第2近接位置に配置される。
【0105】
ここで、少なくとも一つのガード11の上端11aを対向部材6の対向面6aと等しい高さまたは対向部材6の対向面6aよりも上方の高さに位置させれば、基板Wの上面と対向部材6の対向面6aとの間の空間90の密閉度を高めることができる。複数のガード11が上位置に位置し、かつ、対向部材6が第1近接位置に位置する状態で、複数のガード11の上端11aは、対向面6aよりも上方に位置する。そのため、空間90の密閉度が高められている(密閉工程)。
【0106】
空間90の密閉度が高められた状態で、気体バルブ59が開かれる。これにより、対向部材6の中央開口6bから吐出される窒素ガスが空間90内に供給され始める(気体供給工程、不活性ガス供給工程)。また、排気バルブ10(図2参照)の開かれた状態で維持される。そのため、空間90内の雰囲気(基板Wの上面の近傍の雰囲気)が排気される(排気工程)。そのため、空間90内の空気が置換され始め、空間90内の雰囲気の湿度の調整が開始される。具体的には、空間90内の湿度が、対向部材6の中央開口6bから吐出される窒素ガスの湿度に近づくように変化し始める。第2リンス処理において対向部材6の中央開口6bから吐出される窒素ガスの流量(吐出流量)は、比較的大流量である。第2リンス処理における窒素ガスの吐出流量は、たとえば、50L/minである。
【0107】
そして、第2リンス液バルブ55が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて中心ノズル60の第1チューブ35の吐出口60aから炭酸水(リンス液)が吐出(供給)される(リンス液供給工程)。第1チューブ35から吐出される炭酸水の流量(吐出流量)は、たとえば、2000mL/minである。炭酸水は遠心力によって基板Wの上面の全体に行き渡る。これにより、基板W上の液膜100内のSC1が炭酸水によって置換される。
【0108】
SC1および炭酸水の混合液や炭酸水は、遠心力によって基板Wから径方向外方に飛散する。複数のガード11の状態は、第2薬液処理(S4)と同じ第2状態で維持される。そのため、基板Wから飛散した液体は、内側ガード11Cの延設部15よりも下方を通って、中央ガード11Bの筒状部14によって受けられる。第2リンス液処理では、スピンモータ23が、基板Wを2000rpmで回転させる。
【0109】
基板Wの上面への炭酸水の供給が開始されて所定時間(たとえば15秒)が経過した後、有機溶剤処理(S6)が実行される。有機溶剤処理では、基板Wの上面の炭酸水(リンス液)がIPA(有機溶剤)で置換される。
具体的には、図6Eおよび図7を参照して、第2リンス液バルブ55が閉じられる。これにより、第1チューブ35からの炭酸水の吐出が停止される。そして、有機溶剤バルブ57が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて中心ノズル60の第3チューブ37の吐出口60aからIPA(有機溶剤)が吐出(供給)される(有機溶剤供給工程)。第3チューブ37から吐出されるIPAの流量(吐出流量)は、たとえば、300mL/minである。IPAは、遠心力によって基板Wの上面の全体に行き渡る。IPAは、炭酸水と混和するため、基板W上の液膜100内の炭酸水がIPAによって置換される。炭酸水およびIPAの混合液やIPAは、遠心力によって基板Wから径方向外方に飛散する。
【0110】
複数のガード11の状態は、第2リンス液処理(S5)と同じ第2状態で維持される。そのため、基板Wから飛散する液体は、内側ガード11Cの筒状部14によって受けられる。対向部材6の位置は、第2リンス液処理(S5)と同じく第1近接位置に維持される。
そして、加熱流体バルブ54が開かれる。これにより、下面ノズル34から、温水(加熱流体)が基板Wの下面の中央領域に向けて吐出される。これによって、加熱流体供給工程が開始され、基板Wの加熱が開始される(基板加熱工程)。このように、下面ノズル34は、基板Wを加熱する基板加熱ユニットとして機能する。加熱流体供給工程は、有機溶剤供給工程と並行して実行される。基板Wの回転速度は、第2リンス液処理(S5)と同じ状態(2000rpm)で維持される。対向部材6の中央開口6bから吐出される窒素ガスの吐出流量も大流量に維持される。
【0111】
第3チューブ37からのIPAの吐出が開始されてから所定時間(たとえば9秒)が経過すると、図6Fに示すように、ガード昇降ユニット17が、複数のガード11の状態を第2状態から第1状態に切り換える(第1ガード切換工程)。第1ガード切換工程の実行中、少なくとも、外側ガード11Aの上端11aは、対向面6aよりも上方に位置している。つまり、第1ガード切換工程の実行中も密閉工程が実行されている。また、基板Wの回転速度も2000rpmから300rpmに変更される。
【0112】
複数のガード11の位置が変更されてから所定時間(たとえば6秒)経過した後、疎水化剤処理(S7)が開始される。疎水化剤処理(S7)では、疎水化剤によって基板Wの上面が疎水化される。
具体的には、図6Gおよび図7を参照して、有機溶剤バルブ57が閉じられる。これにより、第3チューブ37からの有機溶剤の吐出が停止される。そして、疎水化剤バルブ56が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて中心ノズル60の第2チューブ36の吐出口60aから疎水化剤が吐出(供給)される(疎水化剤供給工程)。第2チューブ36から吐出される疎水化剤の流量(吐出流量)は、たとえば、150mL/minである。疎水化剤は、遠心力によって基板Wの上面の全体に行き渡る。IPAは疎水化剤と混和可能であるため、基板W上の液膜100内のIPAが疎水化剤によって置換される。IPAおよび疎水化剤の混合液や疎水化剤は、遠心力によって基板Wから径方向外方に飛散する。
【0113】
複数のガード11の状態は、第1状態に維持されている。そのため、基板Wから飛散する液体は、外側ガード11A(第1ガード)の延設部15(第1延設部)と内側ガード11C(第2ガード)の延設部15(第2延設部)との間を通って、外側ガード11Aの筒状部14(第1筒状部)によって受けられる。厳密には、基板Wから飛散する液体は、外側ガード11Aの延設部15と中央ガード11Bの延設部15との間を通る。基板Wの回転速度が300rpmから500rpmに変更される。そして、気体バルブ58の開度が調整され、窒素ガスの吐出流量が比較的小流量(たとえば、10L/min)にされる。
【0114】
そして、対向部材昇降ユニット27は、対向部材6を第2近接位置よりも上方の位置である第1近接位置に移動させる。外側ガード11Aが上位置に位置し、かつ、対向部材6が第1近接位置に位置する状態で、外側ガード11Aの上端11aは、対向面6aよりも上方に位置する。そのため、空間90の密閉度が高められた状態が維持されている。また、排気ユニット8による空間90内の雰囲気の排気は、第1ガード切換工程後にも継続されている。
【0115】
第2近接位置から第1近接位置への対向部材6の移動は、疎水化剤の供給の開始と同時に行われる。第2近接位置から第1近接位置へ対向部材6が移動されるタイミングは、疎水化剤の供給の開始よりも僅かに早くてもよいし、疎水化剤の供給の開始よりも僅かに遅くてもよい。
疎水化剤の吐出が開始されてから所定時間(たとえば15秒)経過した後、低表面張力液体処理(S8)が開始される。低表面張力液体処理では、基板Wの上面の疎水化剤がIPAで置換される。
【0116】
具体的には、図6Hおよび図7を参照して、疎水化剤バルブ56が閉じられる。これにより、第2チューブ36からの疎水化剤の吐出が停止される。そして、有機溶剤バルブ57が開かれる。これにより、回転状態の基板Wの上面の中央領域に向けて中心ノズル60の第3チューブ37の吐出口60aからIPA(低表面張力液体)が吐出(供給)される(低表面張力液体供給工程)。低表面張力液体供給工程におけるIPAの吐出流量は、たとえば、有機溶剤供給工程と同じであり、たとえば、300mL/minである。IPAは、遠心力によって基板Wの上面の全体に行き渡る。これにより、基板W上の液膜100内の疎水化剤がIPAによって置換される。
【0117】
IPAおよび疎水化剤の混合液は、遠心力によって基板Wから径方向外方に飛散する。複数のガード11の状態は、第1状態に維持されている。言い換えると、第1ガード切換工程は、低表面張力液体供給工程の開始前に実行されている。そのため、基板Wから飛散する液体は、外側ガード11Aの筒状部14によって受けられる。
基板Wの回転速度が500rpmから300rpmに変更される。低表面張力液体処理(S8)では、基板Wの回転速度は300rpmで維持される。
【0118】
図6Iに示すように、IPAの吐出が開始されてから所定時間(たとえば10秒)経過した後、対向部材昇降ユニット27が、対向部材6を第1近接位置から第2近接位置に移動させる。言い換えると、低表面張力液体供給工程の実行中に対向面6aと基板Wの上面との距離が第1距離L1から第2距離L2に変更される。外側ガード11Aが上位置に位置し、かつ、対向部材6が第2近接位置に位置する状態で、外側ガード11Aの上端11aは、対向面6aよりも上方に位置する。そのため、空間90の密閉度が高められた状態が維持されている。そして、気体バルブ58の開度が調整され、窒素ガスの吐出流量が比較的大流量(たとえば、50L/min)に変更される。
【0119】
対向部材6が第1近接位置に移動されてから所定時間(たとえば40秒)経過した後、図6Jに示すように、ガード昇降ユニット17は、複数のガード11の状態を第1状態から第2状態に切り換える(第2ガード切換工程)。第2ガード切換工程は、第3チューブ37からIPAが吐出されている間(低表面張力液体供給工程の実行中)に実行される。低表面張力液体供給工程中において基板Wから飛散する液体を外側ガード11Aが受ける時間T1が、低表面張力液体供給工程中に基板Wから飛散する液体を内側ガード11Cが受ける時間T2よりも長くなるように、複数のガード11の状態が第1状態から第2状態に切り換えられることが好ましい(図7参照)。基板W上の疎水化剤がIPAで完全に置換された後に複数のガード11の状態が第1状態から第2状態に切り換えられることが一層好ましい。
【0120】
第2ガード切換工程によって、複数のガード11の状態が第2状態に切り換えられている。そのため、基板Wから飛散する液体は、内側ガード11C(第2ガード)の延設部15(第2延設部)の下方を通って、内側ガード11Cの筒状部14(第2筒状部)によって受けられる。
複数のガード11の状態が第2状態に切り換えられてから所定時間(たとえば10秒)経過した後、乾燥処理(S9)が開始される。乾燥処理では、遠心力によって基板W上の低表面張力液体の液膜100を基板W上から排除することによって、基板Wが乾燥される(基板乾燥工程)。
【0121】
詳しくは、図6Kおよび図7を参照して、有機溶剤バルブ57および気体バルブ58が閉じられる。これにより、基板Wの上面へのIPAの供給が停止され、かつ、基板Wの上面と対向部材6の対向面6aとの間の空間90への窒素ガスの供給が停止される。そして、対向部材昇降ユニット27が対向部材6を下位置に移動させる。そして、スピンモータ23が基板Wを例えば、2000rpmで回転させる。これによって、基板W上の液成分が振り切られ、基板Wが乾燥される。
【0122】
その後、スピンモータ23がスピンチャック5の回転を停止させる。そして、対向部材昇降ユニット27が対向部材6を上位置に移動させる。そしてガード昇降ユニット17が、複数のガード11を下位置に配置する。その後、図1も参照して、搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、スピンチャック5から処理済みの基板Wをすくい取って、処理ユニット2外へと搬出する(S10)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリヤCに収納される。
【0123】
次に、対向部材6の対向面6aと基板Wの上面との間の空間90内の湿度の変化について説明する。
ここで、対向部材6の対向面6aと基板Wの上面との間の距離が小さいほど、窒素ガス等の気体によって置換すべき雰囲気の体積が小さくなる。そのため、対向面6aと基板Wの上面との間の雰囲気における、単位時間当たりに窒素ガスによって対向面6aと基板Wの上面との間から押し出される気体の割合が大きくなる。そのため、対向部材6の対向面6aと基板Wの上面との間の距離が小さいほど、対向部材6の対向面6aと基板Wの上面との間の空間90内の湿度が、対向部材6の中央開口6bから吐出される気体の湿度に近づく。つまり、対向部材6の対向面6aと基板Wの上面との間の空間90内の湿度が低くなる。
【0124】
また、対向部材6の中央開口6bから吐出される気体の流量が大きいほど、対向部材6の対向面6aと基板Wの上面との間の空間90内の湿度が、対向部材6の中央開口6bから吐出される気体の湿度に近づく。つまり、対向部材6の対向面6aと基板Wの上面との間の空間90内の湿度が低くなる。
図7を参照して、疎水化剤処理(S7)において、対向部材昇降ユニット27は、第2近接位置よりも基板Wの上面から離間した第1近接位置に対向部材6を配置する。また、気体バルブ59は、その開度が調整され、窒素ガスの吐出流量が比較的小流量にされている。そのため、対向部材6の対向面6aと基板Wの上面との間の空間90内の湿度が、比較的高湿度(第1湿度)に調整される(湿度調整工程)。空間90内全体の湿度が第1湿度にされている必要はなく、少なくとも基板W上の液膜100に接する雰囲気の湿度が第1湿度になっていればよい。
【0125】
低表面張力液体処理(S8)において、対向部材昇降ユニット27は、第2近接位置に対向部材6を配置する。つまり、対向面6aと基板Wの上面との間の距離を、第1距離L1から第2距離L2に変更する。また、気体バルブ59は、その開度が調整され、窒素ガスの吐出流量が比較的大流量にされている。これにより、空間90内の湿度が第1湿度よりも低湿度である第2湿度に調整される(湿度調整工程)。空間90内全体の湿度が第2湿度にされている必要はなく、少なくとも基板W上の液膜100に接する雰囲気の湿度が第2湿度になっていればよい。
【0126】
有機溶剤処理(S6)において、対向部材昇降ユニット27は、第2近接位置に対向部材6を配置する。また、気体バルブ59は、その開度が調整され、窒素ガスの吐出流量が比較的大流量にされている。したがって、空間90内の湿度が第1湿度よりも低湿度である第3湿度に調整される(湿度調整工程)。なお、この基板処理では、第2リンス液処理(S5)における窒素ガスの供給の開始直後に既に空間90内の湿度が第3湿度に調整されている。しかし、空間90内の湿度は、有機溶剤処理(S6)の開始時に第3湿度になるように調整されてもよい。空間90内全体の湿度が第3湿度にされている必要はなく、少なくとも基板W上の液膜100に接する雰囲気の湿度が第3湿度になっていればよい。
【0127】
この実施形態では、有機溶剤処理(S6)対向部材6の位置が低表面張力液体処理(S8)における対向部材6の位置と同じく第2近接位置であるため、第3湿度は第2湿度とほぼ同じ湿度である。以上のように、対向部材昇降ユニット27および気体バルブ59は、湿度調整ユニットとして機能する。また、湿度調整工程は、気体供給工程の実行中に行われる。
【0128】
以上のように、本実施形態によれば、複数のガード11に取り囲まれた位置でスピンチャック5(基板保持ユニット)に保持された基板Wが、スピンモータ23(基板回転ユニット)によって回転軸線A1まわりに回転される(基板回転工程)。回転状態の基板Wの上面に、第2チューブ36(疎水化剤供給ユニット)とから疎水化剤が供給される(疎水化剤供給工程)。基板W上の疎水化剤をIPA(低表面張力液体)で置換するために、回転状態の基板の上面に第3チューブ37(低表面張力液体供給ユニット)からIPAが供給される(低表面張力液体供給工程)。ガード昇降ユニット17(ガード切換ユニット)は、低表面張力液体供給工程の開始前に、複数のガード11の状態を第1状態に切り換え(第1ガード切換工程)、低表面張力液体供給工程の実行中に、第1状態から第2状態へ、複数のガード11の状態を切り換える(第2ガード切換工程)。
【0129】
この構成によれば、低表面張力液体供給工程の前に、基板Wの上面が疎水化剤で疎水化される。そのため、IPAが基板Wの上面に及ぼす表面張力が低減される。
また、低表面張力液体供給工程の実行中に、複数のガード11の状態が、第1状態から第2状態へ切り換えられる。つまり、基板W上の疎水化剤の少なくとも一部が基板Wから飛散した後に、基板Wから飛散する液体を受けるガード11が外側ガード11A(第1ガード)から内側ガード11C(第2ガード)に切り換えられる。したがって、内側ガード11Cへの疎水化剤の付着が抑制または防止される。したがって、疎水化剤が内側ガード11Cから跳ね返って基板Wの上面に付着することが抑制される。
【0130】
さらに、複数のガード11の状態の切り換えは、低表面張力液体供給工程の終了後ではなく低表面張力液体供給工程の実行中に行われる。したがって、万が一、疎水化剤が外側ガード11Aから跳ね返って基板Wに付着した場合であっても、基板W上の疎水化剤は、IPAによって洗い流される。これにより、パーティクルの発生が抑制される。
また、第1状態から第2状態に切り替わるまでは、外側ガード11AがIPAによって洗われる。これによって、外側ガード11Aに残留する疎水化剤や、外側ガード11Aの近傍の雰囲気に存在する疎水化剤のミストや蒸気が減少する。したがって、基板Wへの疎水化剤の付着が抑制または防止される。
【0131】
以上のように、IPAが基板Wの上面に及ぼす表面張力が低減され、かつ、パーティクルの発生が抑制される。その結果、基板Wを良好に乾燥させることができる。
また、この実施形態では、低表面張力液体供給工程において外側ガード11AがIPAを受ける時間T1が、低表面張力液体供給工程において内側ガード11CがIPAを受ける時間T2よりも長くなるように、第2ガード切換工程において、ガード昇降ユニット17によって第1状態から第2状態に複数のガード11の状態が切り換えられる。
【0132】
そのため、第1状態から第2状態への切り換え時に基板W上に存在する疎水化剤の量を、低減することができる。そのため、内側ガード11Cへの疎水化剤の付着が効果的に抑制または防止される。さらに、IPAによる外側ガード11Aの洗浄時間が長くなるため、外側ガード11Aに残留する疎水化剤や、外側ガード11Aの近傍の雰囲気に存在する疎水化剤のミストや蒸気が減少する。
【0133】
また、第2ガード切換工程において、基板W上の疎水化剤がIPAで置換された後に、第1状態から第2状態に複数のガード11の状態が切り換えられる構成であれば、内側ガード11Cへの疎水化剤の付着が一層効果的に抑制または防止される。
また、この実施形態では、スピンモータ23によって基板Wを回転させて基板W上のIPAを排除することによって、基板Wが乾燥される(基板乾燥工程)。そのため、基板W上のIPAを速やかに除去することがきる。したがって、IPAが基板Wの上面に表面張力を及ぼす時間を低減することができる。
【0134】
また、この実施形態では、第1ガード切換工程において、ガード昇降ユニット17によって、外側ガード11Aおよび内側ガード11Cのうちの少なくとも一方の上端11aが対向面6aと等しい高さまたは対向面6aよりも上方に位置されることによって密閉工程が実行される。そのため、基板の上面と対向面との間の空間の密閉度が向上される。そして、排気ユニット8によって基板Wの上面と対向面6aとの間の雰囲気が排気される。基板の上面と対向面との間の空間の密閉度が向上された状態で、基板Wの上面と対向面6aとの間の雰囲気を排気することによって、基板Wの上面と対向面6aとの間を漂う疎水化剤のミストを効率良く排除することができる。これにより、基板WへのIPAの供給中に疎水化剤が基板Wの上面に付着することが抑制される。
【0135】
また、この実施形態では、第1状態では、基板Wから飛散する液体は、外側ガード11Aの延設部15(第1延設部)と内側ガード11Cの延設部15(第2延設部)との間を通って外側ガード11Aの筒状部14(第1筒状部)に受けられる。そして、第2ガード切換工程では、外側ガード11Aの延設部15と内側ガード11Cの延設部15との間隔が狭められる。第2状態では、基板Wから飛散する液体は、内側ガード11Cの延設部15の下方を通って内側ガード11Cの筒状部14(第2筒状部)に受けられる。
【0136】
この構成によれば、基板Wから飛散する疎水化剤は、外側ガード11Aの延設部15および内側ガード11Cの延設部15の間を通って外側ガード11Aの筒状部14によって受けられる。そのため、外側ガード11Aの延設部15および内側ガード11Cの延設部15の間には、疎水化剤のミストが漂っているおそれがある。したがって、複数のガード11の状態が第2状態に切り換えられる前では、疎水化剤のミストを取り込んだ液体が、複数のガード11から跳ね返って基板Wの上面に付着するおそれがある。
【0137】
一方、複数のガード11の状態が第2状態に切り換えられた後は、基板Wから飛散する液体は、内側ガード11Cの延設部15の下方を通って内側ガード11Cの筒状部14によって受けられる。つまり、基板Wから飛散する液体は、疎水化剤のミストが漂っているおそれのある外側ガード11Aの延設部15および内側ガード11Cの延設部15の間とは別の経路を通る。したがって、複数のガード11から跳ね返ってくる液体が疎水化剤のミストを取り込むことを抑制できる。
【0138】
さらに、複数のガード11の状態が第2状態に切り換えられた後であっても、疎水化剤のミストは、外側ガード11Aの延設部15および内側ガード11Cの延設部15の間から流出し、対向部材6の対向面6aと基板Wの上面との間の空間90にまで到達し、最終的に基板Wの上面に付着するおそれがある。そこで、複数のガード11の状態を第1状態から第2状態に切り換える際に、外側ガード11Aの延設部15および内側ガード11Cの延設部15の間を狭めることで、疎水化剤のミストが空間90から流出することを抑制できる。
【0139】
また、この実施形態では、第2チューブ36の吐出口36aからIPAが吐出されている間に複数のガード11の状が第2状態に切り換えられる。そのため、IPAの吐出中に複数のガード11が上下動することによって、複数のガード11の状態が第2状態に切り換えられる。これにより、外側ガード11Aおよび内側ガード11Cにおいて基板Wから飛散するIPAを受ける部分が変化する。したがって、複数のガード11状態を第2状態に切り換える際に、外側ガード11Aを洗浄することができる。
【0140】
また、この実施形態では、疎水化剤供給工程の前に、薬液供給工程が実行され、薬液供給工程の後でかつ疎水化剤供給工程の前に、リンス液供給工程が実行される。そして、リンス液供給工程の後でかつ疎水化剤供給工程の前に有機溶剤供給工程が実行される。
この構成によれば、IPA等の有機溶剤は炭酸水等のリンス液と疎水化剤との両方と混和する。したがって、リンス液と疎水化剤とが混和しない場合であっても、基板Wの上面に有機溶剤を供給し基板W上のリンス液を有機溶剤で置換し、その後、基板Wの上面に疎水化剤を供給し基板W上の有機溶剤を疎水化剤で置換することによって、基板Wの上面を疎水化剤で覆うことができる。したがって、リンス液および疎水化剤の選択の自由度が向上される。
【0141】
また、この実施形態では、有機溶剤供給工程と並行して、温水(加熱流体)を基板Wの下面に供給する加熱流体供給工程が実行される。したがって、疎水化剤供給工程の前に、温水によって予め基板Wが加熱される。そのため、疎水化剤の活性を高めることができる。これにより、基板Wの上面をむらなく疎水化することができる。したがって、パターンの倒壊を抑制することができる。
【0142】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
例えば、上述の実施形態では、外側ガード11Aが、第1状態で基板Wから飛散する液体を受けるガード11(第1ガード)であり、内側ガード11Cが、第2状態で基板Wから飛散する液体を受けるガード11(第2ガード)であった。しかし、外側ガード11A、中央ガード11Bおよび内側ガード11Cのいずれかが、第1ガードとして機能し、外側ガード11A、中央ガード11Bおよび内側ガード11Cのうち第1ガードとして機能するガードとは別のガードが第2ガードとして機能すればよい。
【0143】
また、上述の実施形態では、ガード11が合計で3つ設けられていたが、上述の実施形態とは異なり、ガード11が合計で2つ設けられている形態であってもよいし、ガードが合計で4つ以上設けられている形態であってもよい。
また、上述の実施形態の基板処理では、ガード11の上端11aが対向面6aよりも上方の高さ位置に位置することによって空間90の密閉度が高められた。しかし、上述の実施形態の基板処理とは異なり、ガード11の上端11aが対向面6aと等しい高さに位置することによって空間90の密閉度が高められていてもよい。
【0144】
また、上述の実施形態では、空間90内の湿度は、対向部材6の対向面6aと基板Wの上面との間の距離の変更と、対向部材6の中央開口6bからの窒素ガスの吐出流量の変更とによって調整された。しかし、上述の実施形態とは異なり、対向部材6の対向面6aと基板Wの上面との間の距離の変更のみによって、空間90内の湿度が調整されてもよい。この場合、第2リンス液処理(S5)から低表面張力液体処理(S8)の間、窒素ガスは、対向部材6の中央開口6bから一定の流量で吐出される。また、排気バルブ10の開度は、一定に保たれる。空間90内の湿度は、対向部材6の対向面6aと基板Wの上面との間の距離の変更と、排気バルブ10の開度の変更とによって調整されてもよい。
【0145】
また、疎水化剤処理(S7)では、内部ノズル38から疎水化剤が吐出されることによって、基板Wの上面に疎水化剤が供給されてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0146】
1 :基板処理装置
3 :制御ユニット
5 :スピンチャック(基板保持ユニット)
6 :対向部材
6a :対向面
11 :複数のガード
11A :外側ガード(第1ガード,第2ガード)
11B :中央ガード(第1ガード,第2ガード)
11C :内側ガード(第1ガード,第2ガード)
14 :筒状部(第1筒状部,第2筒状部)
15 :延設部(第1延設部,第2延設部)
17 :ガード昇降ユニット(ガード切換ユニット)
23 :スピンモータ(基板回転ユニット)
31 :第1薬液ノズル(薬液供給ユニット)
32 :第2薬液ノズル(薬液供給ユニット)
33 :第1リンス液ノズル(リンス液供給ユニット)
34 :下面ノズル(加熱流体供給ユニット)
35 :第1チューブ(リンス液供給ユニット)
36 :第2チューブ(疎水化剤供給ユニット)
37 :第3チューブ(有機溶剤供給ユニット,低表面張力液体供給ユニット)
38 :内部ノズル(疎水化剤供給ユニット)
60a :吐出口
T1 :時間(第1ガードが低表面張力液体を受ける時間)
T2 :時間(第2ガードが低表面張力液体を受ける時間)
W :基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図6K
図7
図8A
図8B
図8C
図9