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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20220201BHJP
【FI】
G02B7/02 D
G02B7/02 Z
G02B7/02 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017189367
(22)【出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2019066572
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 敏男
(72)【発明者】
【氏名】中島 知昭
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-090578(JP,A)
【文献】特開2010-197877(JP,A)
【文献】特開2016-071367(JP,A)
【文献】特開2005-107214(JP,A)
【文献】特開2016-102924(JP,A)
【文献】特開2008-233414(JP,A)
【文献】特開2009-282071(JP,A)
【文献】特開2017-053943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズと、
前記複数のレンズを内側に保持する筒状のホルダと、
を有し、
前記複数のレンズのうち、最も物体側に位置する第1レンズの側面は、前記第1レンズの物体側の面である第1面の外縁から像側に向けて延在する第1側面部と、前記第1側面部より像側、かつ前記第1側面部より径方向外側で物体側から像側に向けて延在する第2側面部と、前記第1側面部の像側端部と前記第2側面部の物体側端部とを繋げる第3側面部と、を有し、
前記ホルダは、遮光性樹脂製であって、前記第2側面部の周りを囲む第1レンズ保持用筒部と、前記第1レンズ保持用筒部の物体側端部で前記第1レンズの第3側面部に物体側から被さったカシメ部と、を有し、
前記カシメ部の径方向内側端部は、前記第1面を径方向外側に延長させた仮想の延長面より像側に位置し、
前記カシメ部の前記径方向内側端部は、前記第1側面部から径方向外側に向けて離間する位置にあり、
前記カシメ部の前記径方向内側端部と前記第1側面部との間に接着剤が充填され、
前記接着剤は、前記仮想の延長面より像側に位置することを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記第3側面部は、光軸に対して斜めに傾いた斜面になっていることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記接着剤は、遮光性を有していることを特徴とする請求項1または2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記第1レンズの像側の面である第2面と前記ホルダとの間には、環状のシール部材が配置されていることを特徴とする請求項1からまでの何れか一項に記載のレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルダに複数のレンズが保持されたレンズユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数のレンズが樹脂製のホルダ内に収容されたレンズユニットにおいて、図8に示すように、第1レンズ11、第2レンズ12等の複数のレンズのうち、最も物体側Laに位置する第1レンズ11とホルダ7との間にシール部材5が配置された構造が採用されることがある。また、ホルダ7に、シール部材5より物体側Laで第1レンズ11の周りを囲む第1レンズ保持用筒部70と、第1レンズ保持用筒部70の物体側の端部で物体側に突出するカシメ用リブ(図示せず)とを設けておき、第1レンズ11を配置した後、カシメ用リブを加熱しながら加圧することにより変形させて第1レンズ11の外周側端部に物体側Laから被さるカシメ部78を形成した構造が採用されることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
レンズユニットの防水性を評価する場合、物体側Laから第1レンズ11に高圧水流Wを噴射する評価が行わる。かかる評価において、矢印W10で示すように、第1レンズ11とカシメ部78との間から第1レンズ11の側面110と第1レンズ保持用筒部70との間に水が侵入した場合でも、侵入した水が少なければ、水はシール部材5によって堰き止められる。
【0004】
しかしながら、物体側Laから第1レンズ11に高圧水流を噴射した場合、水圧によってカシメ部78の先端側が破損し、第1レンズ11とカシメ部78との間から水が侵入しやすくなってしまうという問題点がある。また、第1レンズ11とカシメ部78との間に高圧の水が侵入すると、その水圧がカシメ部78に作用してカシメ部78が開く方向に変形するという問題点がある。
【0005】
一方、第1レンズ11の物体側の面に対して、第1レンズ11の外縁から径方向内側に離間した位置で外縁に沿うように延在する溝状の凹部を形成しておき、凹部に熱硬化性接着剤を充填した後、カシメ部78を形成する構成が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-233414号公報
【文献】特開2009-157121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の構成のように、第1レンズ11に設けた溝状の凹部に熱硬化性接着剤を適正に充填するには、凹部の開口幅がある程度広くしておく必要がある。このため、第1レンズ11のレンズ面の外側部分を拡張しなればならないという問題点がある。また、特許文献2に記載の構成の場合、凹部に熱硬化性接着剤を充填した後、カシメ部78を形成することになるため、熱硬化性接着剤が第1レンズ11の物体側のレンズ面の側に流出するおそれがある。さらに、熱硬化性接着剤の塗布工程や硬化工程を行えば、その分、生産性が低下する。
【0008】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、ホルダに収容された複数のレンズのうち、最も物体側に位置する第1レンズとホルダとの間の防水性能を向上することのできるレンズ
ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るレンズユニットは、複数のレンズと、前記複数のレンズを内側に保持する筒状のホルダと、を有し、前記複数のレンズのうち、最も物体側に位置する第1レンズの側面は、前記第1レンズの物体側の面である第1面の外縁から像側に向けて延在する第1側面部と、前記第1側面部より像側、かつ前記第1側面部より径方向外側で物体側から像側に向けて延在する第2側面部と、前記第1側面部の像側端部と前記第2側面部の物体側端部とを繋げる第3側面部と、を有し、前記ホルダは、遮光性樹脂製であって、前記第2側面部の周りを囲む第1レンズ保持用筒部と、前記第1レンズ保持用筒部の物体側端部で前記第1レンズの第3側面部に物体側から被さったカシメ部と、を有し、前記カシメ部の径方向内側端部は、前記第1面を径方向外側に延長させた仮想の延長面より像側に位置し、前記カシメ部の前記径方向内側端部は、前記第1側面部から径方向外側に向けて離間する位置にあり、前記カシメ部の前記径方向内側端部と前記第1側面部との間に接着剤が充填され、前記接着剤は、前記仮想の延長面より像側に位置することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るレンズユニットにおいて、第1レンズの側面では、第1レンズの物体側の面(第1面)の外縁から像側に向けて延在する第1側面部と、第1側面部より像側かつ径方向外側で物体側から像側に向けて延在する第2側面部との間に第3側面部が設けられており、ホルダでは、第2側面部の周りを囲む第1レンズ保持用筒部の物体側端部には、第3側面部に物体側から被さるカシメ部が設けられている。ここ、カシメ部の径方向内側端部は、第1面を径方向外側に延長させた仮想の延長面より像側に位置する。このため、物体側から第1レンズに高圧水流を噴射した際、水流は、第1レンズ面および仮想の延長面に沿って径方向外側に流れ、カシメ部の径方向内側端部に強い圧力で径方向内側から突き当たるという事態が発生しにくい。従って、第1レンズの側面とホルダの第1レンズ保持用筒部との間に水が侵入しにくい。また、カシメ部の径方向内側端部では、水圧による径方向外側への変形や破損が発生しにくい。それ故、第1レンズとホルダとの間の防水性能を向上することができる。かかる態様によれば、カシメ部の径方向内側端部は、第1面を径方向外側に延長させた仮想の延長面より像側に位置する。このため、物体側から第1レンズに高圧水流を噴射した際、水流は、第1レンズ面および仮想の延長面に沿って径方向外側に流れ、カシメ部の径方向内側端部に強い圧力で径方向内側から突き当たるという事態が発生しにくい。従って、カシメ部の径方向内側端部では、水圧による径方向外側への変形や破損が発生しにくい。かかる態様によれば、接着剤によって、第1レンズの側面とホルダの第1レンズ保持用筒部との間に水が侵入することを抑制することができる。また、接着剤が、仮想の延長面より像側に位置するため、物体側から第1レンズに高圧水流を噴射した際、水流が接着剤に強い圧力で径方向内側から突き当たるという事態が発生しにくい。従って、接着剤の脱離等が発生しにくい。
【0011】
本発明において、前記第3側面部は、光軸に対して斜めに傾いた斜面になっている態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1レンズ保持用筒部の端部を塑性変形させてカシメ部を構成する際、第1レンズの側面の形状に沿う形状にカシメ部を形成しやすい。
【0016】
本発明において、前記接着剤は、遮光性を有している態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1レンズの側面に遮光性の接着剤が被さっているため、第1レンズの側面から第1レンズに迷光の原因となる光が入射しにくい。
【0017】
本発明において、前記第1レンズの像側の面である第2面と前記ホルダとの間には、環状のシール部材が配置されている態様を採用することができる。かかる態様によれば、第1レンズの側面とホルダの第1レンズ保持用筒部との間に多少の水が侵入した場合でも、かかる水をシール部材によって堰き止めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るレンズユニットにおいて、第1レンズの側面では、第1レンズの物体側の面(第1面)の外縁から像側に向けて延在する第1側面部と、第1側面部より像側かつ径方向外側で物体側から像側に向けて延在する第2側面部との間に第3側面部が設けられており、ホルダでは、第2側面部の周りを囲む第1レンズ保持用筒部の物体側端部には、第3側面部に物体側から被さるカシメ部が設けられている。ここ、カシメ部の径方向内側端部は、第1面を径方向外側に延長させた仮想の延長面より像側に位置する。このため、物体側から第1レンズに高圧水流を噴射した際、水流は、第1レンズ面および仮想の延長面に沿って径方向外側に流れ、カシメ部の径方向内側端部に強い圧力で径方向内側から突き当たるという事態が発生しにくい。従って、第1レンズの側面とホルダの第1レンズ保持用筒部との間に水が侵入しにくい。また、カシメ部の径方向内側端部では、水圧による径方向外側への変形や破損が発生しにくい。それ故、第1レンズとホルダとの間の防水性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の参考形態1に係るレンズユニットの一部を切り欠いて物体側から見た斜視図。
図2図1に示すレンズユニットの第1レンズの周辺を拡大して示す断面図。
図3図1に示すレンズユニットの第1レンズに対するカシメ部の周辺を拡大して示す断面図。
図4】本発明の参考形態2に係るレンズユニットの第1レンズに対するカシメ部の周辺を拡大して示す断面図。
図5】本発明の参考形態3に係るレンズユニットの第1レンズに対するカシメ部の周辺を拡大して示す断面図。
図6】本発明の実施形態1に係るレンズユニットの第1レンズに対するカシメ部の周辺を拡大して示す断面図。
図7】本発明の参考形態4に係るレンズユニットの第1レンズに対するカシメ部の周辺を拡大して示す断面図。
図8】本発明の参考例に係るレンズユニットの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材の数や縮尺を異な
らしめてある。また、以下の説明では、光軸Lが延在している方向において、物体側にLaを付し、像側にLbを付して説明する。また、以下の説明では、図8を参照して説明した形態との対応が分かりやすいように、対応する部分には、図8と同一の符号を付してある。
【0021】
参考形態1
(レンズユニットの構成)
図1は、本発明の参考形態1に係るレンズユニット1の一部を切り欠いて物体側から見た斜視図である。図1に示すように、本形態のレンズユニット1は、光軸L方向に複数のレンズが配置された広角レンズ10と、広角レンズ10を内側に保持する筒状のホルダ7とを有しており、撮像装置等の光学装置に用いられる。本形態において、ホルダ7は遮光
性樹脂製である。
【0022】
広角レンズ10は、例えば、5群6枚のレンズ構成を備えている。より具体的には、広角レンズ10は、物体側La(被写体側/前側)から像側Lbに向けて、負のパワーを持つ第1レンズ11と、負のパワーを持つ第2レンズ12と、正または負のパワーを持つ第3レンズ13と、正のパワーを有する第4レンズ14と、正のパワーを有する接合レンズ17(第5レンズ15および第6レンズ16)とを有している。第1レンズ11はガラスレンズまたはプラスチックレンズであり、本形態において、第1レンズ11はガラスレンズである。
【0023】
第2レンズ12および第3レンズ13はプラスチックレンズである。第4レンズ14はガラスレンズである。接合レンズ17は、負のパワーを有するプラスチックレンズである第5レンズ15と、正のパワーを有するプラスチックレンズである第6レンズ16との接合レンズである。レンズユニット1は、第2レンズ12と第3レンズ13との間に円環状の遮光シート2を有し、第3レンズ13と第4レンズ14との間に円環状の絞り3を有している。また、レンズユニット1は、接合レンズ17より像側Lbに赤外線カットフィルタ4を有している。
【0024】
(ホルダ7等の構成)
第1レンズ11は、第2レンズ12、第3レンズ13、第4レンズ14、および接合レンズ17より外径が大きい。第2レンズ12、第3レンズ13および接合レンズ17は外径が略等しく、接合レンズ17において、第5レンズ15は、第6レンズ16より外形が大きい。第4レンズ14は、第2レンズ12等より外径が小さい。
【0025】
かかる形状に対応して、ホルダ7は、最も物体側Laで第1レンズ11の周りを囲む第1レンズ保持用筒部70と、第1レンズ保持用筒部70から像側Lbに向けて延在する第1筒部71と、第1筒部71から像側Lbに向けて延在する第2筒部72と、第2筒部72の像側Lbの端部で径方向内側に張り出した張出部73とを有している。第1筒部71と第2筒部72とは内径が等しく、第1レンズ保持用筒部70は、第1筒部71および第2筒部72より内径が大きい。従って、第1レンズ保持用筒部70の内周面と第1筒部71の内周面との間には、物体側Laに向いた環状の段部74が形成されている。段部74には環状の溝740が形成されており、溝740の内側に環状のシール部材5が配置されている。第2筒部72の内周面には、光軸L方向の途中位置で径方向内側に張り出して物体側Laに向いた環状の段部721が形成されている。
【0026】
かかる構成のホルダ7に対して、第5レンズ15のフランジ部155は、段部721に物体側Laから当接している。第4レンズ14は、レンズバレル6に保持されており、レンズバレル6は、第5レンズ15のフランジ部155に物体側Laから当接している。第3レンズ13のフランジ部135は、レンズバレル6に絞り3を介して物体側Laから当
接している。第2レンズ12のフランジ部125は、第3レンズ13のフランジ部135に遮光シート2を介して物体側Laから当接している。
【0027】
第2レンズ12のフランジ部125には、第1筒部71の内周面の物体側Laの端部を径方向内側に塑性変形させたカシメ部715が物体側Laから被さって第2レンズ12の物体側Laへの移動が規制されている。その結果、第2レンズ12、遮光シート2、第3レンズ13、絞り3、第4レンズ14、および接合レンズ17が第1筒部71および第2筒部72の内部に保持されている。
【0028】
(第1レンズ1の固定構造)
図2は、図1に示すレンズユニット1の第1レンズ11の周辺を拡大して示す断面図である。図3は、図1に示すレンズユニット1の第1レンズ11に対するカシメ部75の周辺を拡大して示す断面図である。
【0029】
図1および図2に示すように、ホルダ7は、第1レンズ保持用筒部70の内側に第1レンズ11を固定するカシメ部75を有している。カシメ部75は、第1レンズ保持用筒部70の物体側Laの端部に形成されていたリブ(図示せず)を加熱して、第1レンズ11の外周部分に物体側Laから被さるように径方向内側に塑性変形させた部分である。この状態で、第1レンズ11の像側Lbの面である第2面112は、段部74に当接し、光軸L方向で位置決めされている。また、第1レンズ11の第2面112は、環状のシール部材5に物体側Laから当接し、第1レンズ11の第2面112とホルダ7との間がシール部材5によってシールされる。本形態では、第1レンズ11の第2面112には、レンズ面の外周側に遮光層(図示せず)が形成されている。
【0030】
カシメ部75を利用した固定構造を採用するにあたって、図3に示すように、第1レンズ11の側面110には、第1レンズ11の物体側Laの面である第1面111の外縁から像側Lbに向けて延在する第1側面部116と、第1側面部116より像側Lb、かつ第1側面部116より径方向外側で物体側Laから像側Lbに向けて延在する第2側面部117と、第1側面部116の像側端部116bと第2側面部117の物体側端部117aとを繋げる第3側面部118とが設けられている。本形態において、第1側面部116および第2側面部117は、光軸Lに略平行に延在しており、第2側面部117の周りを第1レンズ保持用筒部70が囲んでいる。第3側面部118は、光軸Lに対して30°から70°の角度を成すように傾いた傾斜面からなる。第1側面部116、第2側面部117、および第3側面部118は、全周にわたって環状に形成されている。
【0031】
カシメ部75は、全周にわたって、第1レンズ保持用筒部70の物体側Laの端部から第3側面部118に被さるように径方向内側に斜めに傾くように形成されており、第3側面部118に物体側Laから被さっている。ここで、カシメ部75の径方向内側端部750は、周方向のいずれの個所でも、第1レンズ11の物体側Laの面(第1面111)を径方向外側に延長させた仮想の延長面Sより像側Lbに位置する。
【0032】
本形態において、カシメ部75の径方向内側端部750は、周方向のいずれの個所でも、第1側面部116に径方向外側から被さっている。この場合でも、カシメ部75の径方向内側端部750は、第1側面部116のうち、物体側端部116aから像側Lbに離間する部分に被さっているため、第1レンズ11の物体側Laの面(第1面111)を径方向外側に延長させた仮想の延長面Sより像側Lbに位置する。
【0033】
また、カシメ部75の径方向内側端部750は、第1側面部116に沿うように物体側Laに突出して第1側面部116に径方向外側から被さった突出部751を有しており、突出部751は周方向に延在している。ここで、突出部751は、第1側面部116の物
体側端部116aから像側Lbに離間する位置に被さっている。このため、突出部751は、第1レンズ11の物体側Laの面(第1面111)を径方向外側に延長させた仮想の延長面Sより像側Lbに位置する。突出部751は、全周にわたって環状に形成されている。
【0034】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のレンズユニット1において、第1レンズ11の側面110では、第1レンズ11の物体側Laの面(第1面111)の外縁から像側Lbに向けて延在する第1側面部116と、第1側面部116より像側Lbかつ径方向外側で物体側Laから像側Lbに向けて延在する第2側面部117との間に第3側面部118が設けられている。一方、ホルダ7では、第2側面部117の周りを囲む第1レンズ保持用筒部70の物体側Laの端部に、第3側面部118に被さるカシメ部75が設けられており、カシメ部75の径方向内側端部750は、第1面111を径方向外側に延長させた仮想の延長面Sより像側Lbに位置する。このため、物体側Laから第1レンズ11に高圧水流Wを噴射した際、水流は、矢印W1で示すように、第1面111および仮想の延長面Sに沿って径方向外側に流れるので、カシメ部75の径方向内側端部750に径方向内側から強い圧力で突き当たるという事態が発生しにくい。従って、第1レンズ11の側面110とホルダ7の第1レンズ保持用筒部70との間に水が侵入しにくい。また、カシメ部75の径方向内側端部750では、水圧による径方向外側への変形や破損が発生しにくい。それ故、第1レンズ11とホルダ7との間の防水性能を向上することができる。
【0035】
また、カシメ部75の径方向内側端部750は、第1側面部116に径方向外側から被さっているため、径方向内側端部750と第1側面部116との間に隙間がない。従って、物体側Laから第1レンズ11に高圧水流Wを噴射した際、水流がカシメ部75の径方向内側端部750に径方向内側から強い圧力で突き当たりにくい。また、第1レンズ11の第1側面部116にカシメ部75が被さっているため、第1レンズ11の側面110から第1レンズ11に迷光の原因となる光が入射しにくい。
【0036】
特に、本形態では、カシメ部75の径方向内側端部750は、第1側面部116に沿うように物体側Laに突出して第1レンズ11の第1側面部116に径方向外側から被さる突出部751を有している。このため、第1レンズ11の側面110から第1レンズ11に迷光の原因となる光が入射しにくい。この場合でも、突出部751は、第1レンズ11の物体側Laの面(第1面111)を径方向外側に延長させた仮想の延長面Sより像側Lbに位置するため、物体側Laから第1レンズ11に高圧水流Wを噴射した際、水流がカシメ部75の突出部751に径方向内側から強い圧力で突き当たるという事態が発生しにくい。従って、カシメ部75の径方向内側端部750では、水圧による変形や破損が発生しにくいので、第1レンズ11とホルダ7との間の防水性能を向上することができる。
【0037】
また、第3側面部118は、光軸Lに対して斜めに傾いた斜面になっているため、第1レンズ保持用筒部70の物体側Laの端部を塑性変形させてカシメ部75を構成する際、第1レンズ11の側面110の形状に沿う形状にカシメ部75を形成しやすい。
【0038】
参考形態2
図4は、本発明の参考形態2に係るレンズユニット1の第1レンズ11に対するカシメ部75の周辺を拡大して示す断面図である。なお、本参考形態および後述する参考形態のいずれにおいても、基本的な構成が同一であるため、共通する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0039】
参考形態1では、カシメ部75の径方向内側端部750に形成した突出部751がカシメ部75の他の部分に比べて極めて肉薄であったが、図4に示すように、突出部751が比較的肉厚で突出部751の外周面が傾斜面になっている態様を採用してもよい。この場合でも、突出部751は、第1レンズ11の物体側Laの面(第1面111)を径方向外側に延長させた仮想の延長面Sより像側Lbに位置するため、カシメ部75の径方向内側端部750では、水圧による変形や破損が発生しにくい等、参考形態1と同様な効果を奏する。
【0040】
参考形態3
図5は、本発明の参考形態3に係るレンズユニット1の第1レンズ11に対するカシメ部75の周辺を拡大して示す断面図である。参考形態1、2では、カシメ部75の径方向内側端部750が第1側面部116に径方向外側から被さっていたが、図5に示すように、カシメ部75の径方向内側端部750が第1側面部116から径方向外側に向けて離間する位置にあってもよい。かかる態様でも、カシメ部75の径方向内側端部750は、第1面111を径方向外側に延長させた仮想の延長面Sより像側Lbに位置する。このため、物体側Laから第1レンズ11に高圧水流Wを噴射した際、水流がカシメ部75の径方向内側端部750に径方向内側から強い圧力で突き当たるという事態が発生しにくい等、参考形態1と同様な効果を奏する。
【0041】
実施形態1
図6は、本発明の実施形態1に係るレンズユニット1の第1レンズ11に対するカシメ部75の周辺を拡大して示す断面図である。本形態では、図6に示すように、カシメ部75の径方向内側端部750が第1側面部116から径方向外側に向けて離間する位置にある。ここで、カシメ部75の径方向内側端部750と第1側面部116との間に接着剤9が充填されており、カシメ部75の径方向内側端部750と第1側面部116との隙間が接着剤9によって埋められている。従って、接着剤9は、第1側面部116に径方向外側に被さっている。
【0042】
本形態において、接着剤9は遮光性を有している。このため、第1レンズ11の側面110から第1レンズ11に迷光の原因となる光が入射しにくい。また、接着剤9は、第1面111を径方向外側に延長させた仮想の延長面Sより像側Lbに位置する。このため、物体側Laから第1レンズ11に高圧水流Wを噴射した際、水流が接着剤9に径方向内側から強い圧力で突き当たるという事態が発生しにくいので、接着剤9の脱離等が発生しにくい。
【0043】
参考形態4
図7は、本発明の参考形態4に係るレンズユニット1の第1レンズ11に対するカシメ部75の周辺を拡大して示す断面図である。参考形態1等において、第3側面部118が光軸Lに対して斜めに傾いた傾斜面であったが、本形態では、図7に示すように、第3側面部118は、光軸Lに直交する面である。かかる態様でも、カシメ部75の径方向内側端部750(突出部751)は、第1レンズ11の物体側Laの面(第1面111)を径方向外側に延長させた仮想の延長面Sより像側Lbに位置する。このため、物体側Laから第1レンズ11に高圧水流Wを噴射した際、水流がカシメ部75の突出部751に径方向内側から強い圧力で突き当たるという事態が発生しにくいので、カシメ部75の径方向内側端部750では、水圧による変形や破損が発生しにくい。
【0044】
[他の実施形態]
上記実施形態において、カシメ部75が第1レンズ11のレンズ面を全周にわたって囲むように環状に形成されていたが、カシメ部75が、周方向の複数個所で円弧状に形成されている場合に本発明を適用してもよい。
【0045】
上記実施形態では、5群6枚のレンズ構成を有するレンズユニット1に本発明を適用し
たが、3群3枚、4群4枚、5群6枚、あるいは6群7枚のレンズ構成等を有するレンズユニット1に本発明を適用してもよく、レンズ構成に限定されない。
【符号の説明】
【0046】
1…レンズユニット、5…シール部材、7…ホルダ、9…接着剤、10…広角レンズ、11…第1レンズ、12…第2レンズ、70…第1レンズ保持用筒部、71…第1筒部、72…第2筒部、74…段部、75…カシメ部、110…側面、111…第1面、112…第2面、116…第1側面部、117…第2側面部、118…第3側面部、750……径方向内側端部、751…突出部、L…光軸、La…物体側、Lb…像側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8