(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】機械式駐車装置用昇降リフト装置
(51)【国際特許分類】
E04H 6/06 20060101AFI20220201BHJP
B66B 11/08 20060101ALI20220201BHJP
B66F 7/02 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
E04H6/06 F
B66B11/08 G
B66F7/02 B
B66F7/02 F
(21)【出願番号】P 2017206364
(22)【出願日】2017-10-25
【審査請求日】2020-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000227043
【氏名又は名称】日精株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100208672
【氏名又は名称】中島 愼一
(72)【発明者】
【氏名】宇田 弥
(72)【発明者】
【氏名】江波戸 慎
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-080856(JP,U)
【文献】特開2014-034435(JP,A)
【文献】特開平08-301585(JP,A)
【文献】特開平06-272415(JP,A)
【文献】米国特許第05049022(US,A)
【文献】実開平07-021922(JP,U)
【文献】特開2009-270405(JP,A)
【文献】特開2006-002416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00-6/42
B66B 11/08
B66F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用モータの回転駆動によって昇降台を上昇または下降させて、前記昇降台上に搭載した状態の駐車車両を移動する機械式駐車装置用昇降リフト装置において、
前記駆動用モータは、前記駆動用モータの回転軸に対して制動力を与えて前記昇降台を所定位置に停止させる第一ブレーキ装置および第二ブレーキ装置を備え、
前記第一ブレーキ装置は、前記駆動用モータの前記回転軸における減速機と反対の側
に対して制動力を与える配置とされ、
前記第二ブレーキ装置は、前記駆動用モータの前記回転軸における前記減速機の
側に対して制動力を与える配置とされ
、
前記第二ブレーキ装置は、前記駆動用モータと前記減速機とに挟まれて、前記駆動用モータの一端側に配置されるとともに、前記第一ブレーキ装置は、前記駆動用モータの他端側に配置され、
前記駆動用モータと前記減速機と前記第一ブレーキ装置と前記第二ブレーキ装置とが一体的に構成された、ことを特徴とする機械式駐車装置用昇降リフト装置。
【請求項2】
前記第一ブレーキ装置の制動動作後に、前記第二ブレーキ装置に制動動作を行わせるよう構成したことを特徴とする請求項1に記載の機械式駐車装置用昇降リフト装置。
【請求項3】
前記第一ブレーキ装置および前記第二ブレーキ装置に対してほぼ同時に制動動作を行わせるよう構成したことを特徴とする請求項1に記載の機械式駐車装置用昇降リフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降台を昇降駆動する機械式駐車装置用昇降リフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の機械式駐車装置用昇降リフト装置として、リフトを、昇降路の四隅に4本の柱(昇降ガイド)を立て、各昇降ガイド上に設置された複数のスプロケットを介して複数の昇降チェーンを巻き掛けて、各昇降チェーンの一端に自動車を載せる昇降部材(昇降フレームや昇降台など)を連結し、他端にカウンターウェートを吊り下げ、減速機付きの駆動モータにより昇降駆動する形式で設置する場合、一般に、昇降部材を4本の吊りチェーンで、つるべ式に吊り下げて、これら吊りチェーンを片軸の駆動モータで回転駆動する形式や、昇降部材を4本のエンドレスチェーンで吊り下げて、これらエンドレスチェーンを両軸の駆動モータで回転駆動する形式が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の機械式駐車装置用昇降リフト装置は、ブレーキ装置に予期しない故障が発生していた場合、例えば昇降台の予期しない落下事故が発生して、昇降台上に搭載されている駐車車両まで巻き込んで、故障回復のための作業が大掛かりで長時間を有するようになる事態を招いてしまう。
【0005】
本発明の目的は、ブレーキ装置に予期しない故障が発生していた場合でも、安全性の向上と共に、駐車車両を巻き込んで故障回復のための作業が大掛かりで長時間を有するようになる事態を回避することができる機械式駐車装置用昇降リフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る機械式駐車装置用昇降リフト装置は、駆動用モータの回転駆動によって昇降台を上昇または下降させて、前記昇降台上に搭載した状態の駐車車両を移動する機械式駐車装置用昇降リフト装置において、前記駆動用モータの回転軸に対して制動力を与えて前記昇降台を所定位置に停止させることができる第一ブレーキ装置および第二ブレーキ装置を設けたことを特徴とする。
【0007】
第1態様に係る機械式駐車装置用昇降リフト装置によれば、第一ブレーキ装置に予期しない故障が発生していた場合、他方の第二ブレーキ装置によって昇降台を所定の位置に停止保持させることができるので、安全性の向上と共に、駐車車両を巻き込んで故障回復のための作業が大掛かりで長時間を有するようになる事態を回避することができる。
【0008】
第2態様に係る機械式駐車装置用昇降リフト装置は、第1態様に係る機械式駐車装置用昇降リフト装置において、前記第一ブレーキ装置の制動動作後に、前記第二ブレーキ装置に制動動作を行わせるよう構成したことを特徴とする。
【0009】
第2態様に係る機械式駐車装置用昇降リフト装置によれば、第一ブレーキ装置が正常であれば、第二ブレーキ装置に責任を負わせることなく、第一ブレーキ装置が作動したときに昇降台を所定の位置に停止させることができる。しかも、第一ブレーキ装置に予期しない故障が発生していた場合は、昇降台が所定の停止位置を通過したことをセンサなどの検出装置によって検出し、この検出に基づいて作動する第二ブレーキ装置によって昇降台を所定の位置に停止保持させることができる。
【0010】
また本発明は、上述の構成に加えて、前記第一ブレーキ装置および前記第二ブレーキ装置に対してほぼ同時に制動動作を行わせるよう構成したことを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、第一ブレーキ装置および第二ブレーキ装置が共に正常であれば、第一ブレーキ装置および第二ブレーキ装置が作動したときに昇降台を所定の位置に停止させることができる。しかも、いずれか一方のブレーキ装置に予期しない故障が発生していた場合でも、他方の健全なブレーキ装置によって昇降台1を所定の位置に停止保持させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による多階式駐車装置によれば、第一ブレーキ装置に予期しない故障が発生していた場合、他方の第二ブレーキ装置によって昇降台を所定の位置に停止保持させることができるので、安全性の向上と共に、駐車車両を巻き込んで故障回復のための作業が大掛かりで長時間を有するようになる事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施例による機械式駐車装置用昇降リフト装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した第一ブレーキ装置および第二ブレーキ装置の動作タイミングを示すフローチャートである。
【
図3】本発明の他の実施例による機械式駐車装置用昇降リフト装置の第一ブレーキ装置および第二ブレーキ装置の動作タイミングを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施例による機械式駐車装置用昇降リフト装置の概略構成を示す斜視図である。
【0016】
機械式駐車装置は、駐車車両の入出庫階と、その上方または下方に形成された駐車階との間で、駐車車両の移動を行う昇降リフト装置を有して構成されている。この昇降リフト装置は、概略構成を示す
図1のように、鉛直方向に延びて配置された図示しないガイドレールなどに沿って昇降可能な昇降台1を有している。
【0017】
この昇降台1は、様々な構成のリフト用駆動装置により上述したガイドレールに沿って昇降駆動される。ここでリフト用駆動装置は、図示を省略した一対のガイドレールの下部間に可回転的に支持されて簡略化して示した回転駆動軸2と、回転駆動軸2の両側部にそれぞれ結合された駆動側スプロケット3A,3Bと、回転駆動軸2の中間に配置された駆動用モータ4、減速機5、第一ブレーキ装置6および第二ブレーキ装置7と、図示を省略した一対のガイドレールの上方部で可回転的に支持された従動側スプロケット8A,8Bと、上下方向で対向する駆動側スプロケット3Aと従動側スプロケット8Aに掛けられたチェーン9A,9Bと、上下方向で対向する駆動側スプロケット3Bと従動側スプロケット8Bに掛けられたチェーン10A,10Bと、カウンターウェート11などを有している。
【0018】
駆動側スプロケット3Aに掛けられたチェーン9Aは、その一端がカウンターウェート11に連結され、その他端が昇降台1に連結されている。また従動側スプロケット8Aに掛けられたチェーン9Bは、その一端がカウンターウェート11に連結され、その他端が昇降台1に連結されている。同様に、駆動側スプロケット3Bに掛けられたチェーン10Aは、その一端がカウンターウェート11に連結され、その他端が昇降台1に連結されている。また従動側スプロケット8Bに掛けられたチェーン10Bは、その一端がカウンターウェート11に連結され、その他端が昇降台1に連結されている。
【0019】
また駆動用モータ4は、図示を省略した回転軸を有しており、二つの第一ブレーキ装置6および第二ブレーキ装置7は、駆動用モータ4における同じ回転軸に対してそれぞれ制動力を与えるように構成されている。
【0020】
図示しない制御装置を介して駆動用モータ4が回転駆動されると、減速機5を介して回転駆動軸2が回転され、回転駆動軸2に結合された駆動側スプロケット3A,3Bが回転される。例えば、駆動側スプロケット3A,3Bが時計方向に回転されると、各チェーン9A~10Bを介してカウンターウェート11が下方に駆動されると共に、各チェーン9A~10Bを介して昇降台1が上方へと駆動される。これに対して、駆動側スプロケット3A,3Bが反時計方向に回転されると、各チェーン9A~10Bを介して昇降台1が下方に駆動されると共に、チェーン9A~10Bを介してカウンターウェート11が上方へと駆動される。
【0021】
昇降台1が所定の高さ位置に達したとき、図示しない制御装置は第一ブレーキ装置6および第二ブレーキ装置7に動作信号を与えて、駆動用モータ4の回転軸に対して制動力を与える。第一ブレーキ装置6および第二ブレーキ装置7としては、制動力を作用させるタイミングについて種々考えられるが、本実施例では、図示しない制御装置によって第一ブレーキ装置6を作動させて停止保持した後、第二ブレーキ装置7を作動させて停止保持するようにしている。
【0022】
図2は、第一ブレーキ装置6および第二ブレーキ装置7の動作タイミングを示すフローチャートである。
【0023】
先ず、図示しない制御装置はステップS1で、駆動用モータ4を回転駆動させて昇降台1を所定の方向に移動させる。昇降台1が所定の位置に達したとき、制御装置はステップS2で、駆動用モータ4を停止させると共に、ステップS3で第一ブレーキ装置6を作動させて停止保持させる。その後、制御装置はステップS4で、第二ブレーキ装置7を作動させて停止保持させる。
【0024】
このような構成によれば、第一ブレーキ装置6が正常であれば、第二ブレーキ装置7に責任を負わせることなく、ステップS3で第一ブレーキ装置6が作動したときに昇降台1を所定の位置に停止させることができる。しかし、第一ブレーキ装置6に予期しない故障が発生していた場合は、昇降台1が所定の停止位置を通過したことをセンサなどの検出装置によって検出し、この検出に基づいて作動する第二ブレーキ装置7によって昇降台1を所定の位置に停止保持させることができる。
【0025】
従って、第一ブレーキ装置6に予期しない故障が発生していた場合でも、昇降台1が衝撃を伴って衝突する事態の発生を防止することができる。このような望まない衝突は、昇降台1だけでなく、昇降台1上に搭載されている駐車車両にもダメージを与えてしまい、復旧作業を一層大掛かりなものにしてしまう。しかし、このような事態が発生することを防止することができる。第一ブレーキ装置6の故障修理に際して、昇降台1を昇降移動させる必要がある場合、制御装置から第一ブレーキ装置6を切り離し、第二ブレーキ装置7を第一ブレーキ装置6として使用することもできる。
【0026】
図3は、本発明の他の実施例による第一ブレーキ装置6および第二ブレーキ装置7の動作タイミングを示すフローチャートである。
【0027】
図示しない制御装置はステップS1で、駆動用モータ4を回転駆動させて昇降台1を所定の方向に移動させるのは先の実施例と同様である。昇降台1が所定の位置に達したとき、制御装置はステップS2で、駆動用モータ4を停止させると共に、ステップS5で第一ブレーキ装置6および第二ブレーキ装置7をほぼ同時に作動させて停止保持させる。
【0028】
このような構成によれば、第一ブレーキ装置6または第二ブレーキ装置7のいずれか一方に予期しない故障が発生していた場合、他方の第二ブレーキ装置7または第一ブレーキ装置6によって停止保持させることができる。
【0029】
本実施例においても、一方のブレーキ装置に故障が発生していても、他方のブレーキ装置によって停止保持させることができるため、昇降台1に搭載された状態の駐車車両が機械式駐車装置の他の構造物に衝突させてしまって、故障回復のための作業が大掛かりで長時間を有するようになるのを回避することができる。
【0030】
尚、本発明に実施に際しては、昇降台1を上方または下方に移動させるためのリフト用駆動装置は図示の構成のものに限らず、駆動用モータ4の回転駆動によって昇降台1を上昇または下降させて駐車車両を移動する構成で、駆動用モータ4の回転軸に対して制動力を与えて昇降台1を所定位置に停止させることができる第一ブレーキ装置6および第二ブレーキ装置7を有した構成に適用することができる。
【0032】
以上説明したように本発明は、駆動用モータ4の回転駆動によって昇降台1を上昇または下降させて、昇降台1上に搭載した状態の駐車車両を移動する機械式駐車装置用昇降リフト装置において、駆動用モータ4の回転軸2に対して制動力を与えて昇降台1を所定位置に停止させることができる第一ブレーキ装置6および第二ブレーキ装置7を設けたことを特徴とする。
【0033】
このような構成によれば、第一ブレーキ装置6に予期しない故障が発生していた場合、他方の第二ブレーキ装置7によって昇降台1を所定の位置に停止保持させることができるので、安全性の向上と共に、駐車車両を巻き込んで故障回復のための作業が大掛かりで長時間を有するようになる事態を回避することができる。
【0034】
また本発明は、上述の構成に加えて、第一ブレーキ装置6の制動動作後に、第二ブレーキ装置7に制動動作を行わせるよう構成したことを特徴とする。
【0035】
このような構成によれば、第一ブレーキ装置6が正常であれば、第二ブレーキ装置7に責任を負わせることなく、第一ブレーキ装置6が作動したときに昇降台1を所定の位置に停止させることができる。しかし、第一ブレーキ装置6に予期しない故障が発生していた場合は、昇降台1が所定の停止位置を通過したことをセンサなどの検出装置によって検出し、この検出に基づいて作動する第二ブレーキ装置7によって昇降台1を所定の位置に停止保持させることができる。
【0036】
また本発明は、上述の構成に加えて、第一ブレーキ装置6および第二ブレーキ装置7に対してほぼ同時に制動動作を行わせるよう構成したことを特徴とする。
【0037】
このような構成によれば、第一ブレーキ装置6および第二ブレーキ装置7が共に正常であれば、第一ブレーキ装置6および第二ブレーキ装置7が作動したときに昇降台1を所定の位置に停止させることができる。しかも、いずれか一方のブレーキ装置に予期しない故障が発生していた場合でも、他方の健全なブレーキ装置によって昇降台1を所定の位置に停止保持させることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 昇降台
3A,3B 駆動側スプロケット
4 駆動用モータ
6 第一ブレーキ装置
7 第二ブレーキ装置