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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】歩行者保護エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/36 20110101AFI20220201BHJP
【FI】
B60R21/36
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017209973
(22)【出願日】2017-10-31
(65)【公開番号】P2019081457
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】辻本 慶
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-097833(JP,A)
【文献】特開2006-096289(JP,A)
【文献】国際公開第2010/050009(WO,A1)
【文献】特開2010-083439(JP,A)
【文献】特開2016-011097(JP,A)
【文献】特開2013-022982(JP,A)
【文献】特開2010-000825(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0133971(US,A1)
【文献】特開2009-286339(JP,A)
【文献】特開2003-252141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00 - 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方に配置されたフードとウインドシールドとの間から車外に放出され前記車両の左右に配置された一対のフロントピラーを覆うエアバッグを備えた歩行者保護エアバッグ装置において、
前記エアバッグの膨張展開時に前記エアバッグの中央部を囲うように配置される筒形状のガイドチューブを備え、
該ガイドチューブは、所定の張力によって破断する破断予定部を有し、
前記エアバッグの中央部の膨張展開を前記ガイドチューブによって一時的に拘束するように構成し、
前記ガイドチューブは、待機状態における左右一対のワイパーが重なる部分の横幅よりも大きな幅を有している、
ことを特徴とする歩行者保護エアバッグ装置。
【請求項2】
前記ガイドチューブは、待機状態におけるワイパーの横幅よりも大きな幅を有している、ことを特徴とする請求項1に記載の歩行者保護エアバッグ装置。
【請求項3】
前記ガイドチューブは、待機状態におけるワイパーの高さを超えない範囲で前記エアバッグの中央部を拘束するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の歩行者保護エアバッグ装置。
【請求項4】
前記破断予定部は、前記ガイドチューブの頂部よりも後方側に配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の歩行者保護エアバッグ装置。
【請求項5】
前記エアバッグは、前記エアバッグの膨張展開時に前記フード及び前記ウインドシールドの表面に展張されるプロテクタクロスと、前記エアバッグの折り畳み形状を保持するパッキングクロスと、を備え、前記エアバッグに近い側から、前記プロテクタクロス、前記パッキングクロス、前記ガイドチューブの順に配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の歩行者保護エアバッグ装置。
【請求項6】
前記ガイドチューブは、左右の開口部の大きさが異なっている又は上下の幅の大きさが異なっている、ことを特徴とする請求項1に記載の歩行者保護エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者保護エアバッグ装置に関し、特に、膨張展開時におけるエアバッグの挙動の安定性を図ることができる歩行者保護エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行者保護エアバッグ装置は、自動車等の車両が歩行者や自転車等と衝突した場合に、歩行者や自転車等の乗員(以下、「歩行者等」という。)が車両のピラー(ボディと屋根を繋ぐ柱)等の車体構造物に衝突する際の衝撃を吸収するためのエアバッグ装置である。
【0003】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、自動車の前方に配置されたエンジンルームを覆うフード(ボンネット)とウインドシールドとの間から車外に放出され、一対のフロントピラーを覆うエアバッグを備えた歩行者保護エアバッグ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-011097号公報
【文献】特開2016-097833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した歩行者保護エアバッグ装置では、一対のフロントピラーを覆う必要があることから、エアバッグは横(左右方向)に長い形状を有しており、エアバッグにガスを供給するインフレータはエアバッグの中央部に配置されている。したがって、エアバッグの膨張展開時には、中央部が先に膨張展開し、両端部が遅れて膨張展開するという特性を有している。そのため、エアバッグの中央部の膨張展開が完了するタイミングとエアバッグの両端部の膨張展開が完了するタイミングとの間における時間差が大きく、膨張展開時におけるエアバッグの挙動が安定しないという問題がある。
【0006】
本発明は上述した問題点に鑑み創案されたものであり、膨張展開時におけるエアバッグの挙動の安定性を図ることができる、歩行者保護エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、車両の前方に配置されたフードとウインドシールドとの間から車外に放出され前記車両の左右に配置された一対のフロントピラーを覆うエアバッグを備えた歩行者保護エアバッグ装置において、前記エアバッグの膨張展開時に前記エアバッグの中央部を囲うように配置される筒形状のガイドチューブを備え、該ガイドチューブは、所定の張力によって破断する破断予定部を有し、前記エアバッグの中央部の膨張展開を前記ガイドチューブによって一時的に拘束するように構成し、前記ガイドチューブは、待機状態における左右一対のワイパーが重なる部分の横幅よりも大きな幅を有している、ことを特徴とする歩行者保護エアバッグ装置が提供される。
【0008】
前記ガイドチューブは、待機状態におけるワイパーの横幅よりも大きな幅を有していてもよい。
【0009】
また、前記ガイドチューブは、待機状態におけるワイパーの高さを超えない範囲で前記エアバッグの中央部を拘束するように構成されていてもよい。
【0010】
また、前記破断予定部は、前記ガイドチューブの頂部よりも後方側に配置されていてもよい。
【0011】
また、前記エアバッグは、前記エアバッグの膨張展開時に前記フード及び前記ウインドシールドの表面に展張されるプロテクタクロスと、前記エアバッグの折り畳み形状を保持するパッキングクロスと、を備え、前記エアバッグに近い側から、前記プロテクタクロス、前記パッキングクロス、前記ガイドチューブの順に配置されていてもよい。
【0012】
また、前記ガイドチューブは、左右の開口部の大きさが異なっていてもよいし、上下の幅の大きさが異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上述した本発明に係る歩行者保護エアバッグ装置によれば、エアバッグの膨張展開時にエアバッグの中央部の膨張展開を一時的に拘束するガイドチューブを配置したことにより、ガイドチューブが破断するまでの間、エアバッグの中央部の膨張展開を抑制し、エアバッグの両端部の膨張展開を促進することができる。したがって、エアバッグの中央部の膨張展開が完了するタイミングとエアバッグの両端部の膨張展開が完了するタイミングとの間における時間差を小さくすることができ、膨張展開時におけるエアバッグの挙動を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る歩行者保護エアバッグ装置のエアバッグ格納状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、である。
図2】本発明の一実施形態に係る歩行者保護エアバッグ装置の膨張展開途中状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、である。
図3】本発明の一実施形態に係る歩行者保護エアバッグ装置の膨張展開完了状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、である。
図4】ガイドチューブの変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、(C)は第三変形例、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図1(A)~図4(C)を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の一実施形態に係る歩行者保護エアバッグ装置のエアバッグ格納状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、である。図2は、本発明の一実施形態に係る歩行者保護エアバッグ装置の膨張展開途中状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、である。図3は、本発明の一実施形態に係る歩行者保護エアバッグ装置の膨張展開完了状態を示す図であり、(A)は平面図、(B)は断面図、である。なお、図1(B)、図2(B)及び図3(B)に示した断面図は、車両の前後方向に延びる中心線における断面図である。
【0016】
本発明の一実施形態に係る歩行者保護エアバッグ装置1は、図1(A)~図3(B)に示したように、車両の前方に配置されたフード2とウインドシールド3との間から車外に放出され車両の左右に配置された一対のフロントピラー4を覆うエアバッグ5と、エアバッグ5の膨張展開時にエアバッグ5の中央部51を囲うように配置される筒形状のガイドチューブ6と、を備え、ガイドチューブ6は、所定の張力によって破断する破断予定部61を有し、エアバッグ5の中央部51の膨張展開をガイドチューブ6によって一時的に拘束するようにしたものである。
【0017】
図1(A)及び図1(B)に示したように、歩行者保護エアバッグ装置1を備えた車両は、前方にエンジンルーム等を覆うフード2(ボンネット)が配置されており、その後方に隙間を空けてウインドシールド3が配置されている。また、ウインドシールド3の下端にはカウル7が配置されていてもよい。なお、図示しないが、ウインドシールド3の下端は、車両構造体に接続されて支持されている。
【0018】
また、フード2は、車両が歩行者等に衝突した際に、フード2のウインドシールド3側を持ち上げるポップアップ式のフード2であってもよいし、かかる持ち上げ機能を有しないフード2であってもよい。
【0019】
また、図1(A)及び図1(B)に示したように、ウインドシールド3の下部にはウインドシールド3の表面に付着した水滴や汚れを拭き取るためのワイパー8が配置されている。ワイパー8は、例えば、車両の進行方向に向かって左側に配置される第一ワイパー81と、車両の進行方向に向かって右側に配置される第二ワイパー82と、を有し、左右一対に配置されている。
【0020】
第一ワイパー81及び第二ワイパー82は、例えば、ウインドシールド3の表面に沿って摺動されるブレード81a,82aと、車体に回動可能に固定されたアーム81b,82bと、を備えている。アーム81b,82bの先端にはブレード81a,82aが揺動可能に接続されている。第一ワイパー81及び第二ワイパー82は、使用していない待機状態では、図1(A)に示したように、アーム81b,82bはウインドシールド3の下部に寝た状態に配置されており、ブレード81a,82aはウインドシールド3の下部に略水平に横並びに配置されている。
【0021】
待機状態におけるワイパー8の横幅Waは、第二ワイパー82のアーム82bの固定部から第一ワイパー81のブレード81aの先端(車両進行方向に向かって左側の端部)までの距離によって規定される。また、待機状態におけるワイパー8が重なる部分の横幅Wcは、第一ワイパー81のアーム81bの固定部から第二ワイパー82のブレード82aの先端(車両進行方向に向かって左側の端部)までの距離によって規定される。
【0022】
本実施形態では、第一ワイパー81及び第二ワイパー82が、車両進行方向に向かって左側に寝た状態から時計回り(車両に乗車した乗員からの視点による)に回動される場合を想定しているが、第一ワイパー81及び第二ワイパー82は左右反転した状態に配置されていてもよい。
【0023】
また、本実施形態では、左右一対のワイパー8を有する場合について説明しているが、ワイパー8は単体のワイパーであってもよい。ワイパー8が単体の場合、待機状態におけるワイパーの横幅は、アームの固定部からブレードの先端(車両進行方向に向かって左側又は右側の端部)までの距離によって規定される。
【0024】
歩行者保護エアバッグ装置1は、エアバッグ5と、エアバッグ5に膨張ガスを供給するインフレータ11と、エアバッグ5及びインフレータ11が固定されるリテーナ12と、膨張展開前のエアバッグ5を覆うエアバッグカバー13と、を備えている。なお、図示しないが、リテーナ12は、車両構造体に接続されて支持されている。
【0025】
インフレータ11は、例えば、略円筒形状を有し、車両の横幅方向に沿って配置されている。リテーナ12は、上端が開放された略箱形状を有している。リテーナ12の内側には、インフレータ11が図示しない締結具により固定されている。また、リテーナ12の内側には、エアバッグ5がボルト・ナット等の締結具14により固定されている。
【0026】
エアバッグカバー13は、下端が開放した略箱形状を有している。具体的には、エアバッグカバー13は、エアバッグ5の上方に配置された平板部13aと、平板部13aの裏面に配置された上下左右に配置された四枚の側板部13bと、を備えている。なお、図1において、説明の便宜上、エアバッグカバー13を点線で図示している。
【0027】
四枚の側板部13bは、平板部13aから略鉛直方向下方に延びるように配置されており、折り畳まれたエアバッグ5を収容する空間を形成するとともに、エアバッグ5の膨張展開経路を形成している。すなわち、エアバッグカバー13は、エアバッグ5の膨張展開の初期段階に、エアバッグ5を略鉛直方向に膨張展開させるように構成されている。なお、側板部13bの下端にはリテーナ12が固定又は係止される。
【0028】
平板部13aは、フード2側が高く、ウインドシールド3側が低くなるように、傾斜した状態に配置されている。平板部13aのフード2側の端部裏面にはエアバッグ5の膨張展開時に開裂するテアライン13cが形成されている。すなわち、エアバッグカバー13は、エアバッグ5の膨張展開時にウインドシールド3側に向かって開裂するように構成されている。また、平板部13aのウインドシールド3側の端部は、カウル7に係合する屈曲部13dを備えていてもよい。
【0029】
上述したエアバッグカバー13の構成は、単なる一例であり、図示した構成に限定されるものではない。例えば、平板部13aの中央部に左右方向に延びるテアラインを形成して、平板部13aを前方及び後方に向かって観音開きさせるようにしてもよい。また、エアバッグ5の膨張展開経路をウインドシールド3の傾斜角度と略一致する方向に形成するようにしてもよい。
【0030】
エアバッグ5は、例えば、図3(A)に示したように、フード2及びウインドシールド3の中央部に膨張展開される中央部51と、中央部51の両端部から後方に向かって突出するように膨張展開される一対の突出部52と、を備えている。突出部52は車両のフロントピラー4を覆うように形成されている。
【0031】
また、エアバッグ5は、両端部を内側に折り畳んだ後、エアバッグカバー13内に収まるように、蛇腹折やロール折により折り畳まれる。なお、エアバッグ5の膨張展開形状及び折り畳み形状は、図示した形状に限定されるものではない。
【0032】
また、エアバッグ5は、膨張展開時にフード2及びウインドシールド3の表面に展張されるプロテクタクロス53と、エアバッグ5の折り畳み形状を保持するパッキングクロス54と、を備えていてもよい。プロテクタクロス53は、必要に応じて省略することができる。なお、図1(B)、図2(B)及び図3(B)において、説明の便宜上、パッキングクロス54を一点鎖線で図示してある。
【0033】
例えば、図1(B)に示したように、折り畳まれたエアバッグ5の上にプロテクタクロス53が配置されており、プロテクタクロス53の上にパッキングクロス54が配置されており、パッキングクロス54の上にガイドチューブ6が配置されている。すなわち、エアバッグ5に近い側から、プロテクタクロス53、パッキングクロス54、ガイドチューブ6の順に配置されている。なお、プロテクタクロス53、パッキングクロス54及びガイドチューブ6は、エアバッグ5と一緒に締結具14によりリテーナ12に固定されている。
【0034】
ガイドチューブ6は、図2(B)に示したように、リテーナ12に固定された状態で左右方向に開口部を形成する筒形状を有している。ガイドチューブ6は、例えば、エアバッグ5を構成する基布と同じ基布により構成される。また、ガイドチューブ6は、左右方向に延びるミシン目状に形成された破断予定部61を有している。なお、破断予定部61は、所定の張力で破断することができればよく、ミシン目に限定されるものではない。
【0035】
破断予定部61は、例えば、ガイドチューブ6の前後方向幅の中心線Ltよりも後方側に形成される。ガイドチューブ6の頂部はこの中心線Lt上に位置することから、破断予定部61はガイドチューブ6の頂部よりも後方側に配置される。
【0036】
かかる構成により、破断予定部61が破断した後にエアバッグ5の中央部51をウインドシールド3の表面に沿って膨張展開させることができる。なお、図示しないが、破断予定部61は、ガイドチューブ6の中心線Ltよりも前方側に形成してもよいし、ガイドチューブ6の中心線Ltと同じ位置に形成してもよい。
【0037】
また、図2(A)に示したように、ガイドチューブ6の左右方向の幅Wtは、待機状態におけるワイパー8が重なる部分の横幅Wcよりも大きくなるように形成されている。なお、図示しないが、ガイドチューブ6の左右方向の幅Wtは、待機状態におけるワイパー8の横幅Waよりも大きくなるように形成されていてもよい。
【0038】
ガイドチューブ6は、エアバッグ5の格納状態において、図1(B)に示したように、パッキングクロス54の上に配置されており、折り畳まれたエアバッグ5の上部に余剰分が折り畳まれてエアバッグカバー13内に格納される。そして、エアバッグ5の膨張展開時には、ガイドチューブ6は、図2(B)に示したように、エアバッグカバー13の内面に沿って上方に持ち上げられる。エアバッグ5の膨張展開に伴ってガイドチューブ6は筒形状に展張され、エアバッグ5の膨張展開が進むに連れてガイドチューブ6に生じる張力が増加する。
【0039】
ガイドチューブ6は、破断予定部61が破断するまでエアバッグ5の中央部51の膨張展開を拘束する。このとき、ガイドチューブ6はリテーナ12の底部から高さHtを有しており、その高さHtは、待機状態におけるワイパー8の高さHwを超えない範囲に設定されている。ここで、ワイパー8の高さHwは、本実施形態において、リテーナ12の底部から第二ワイパー82のブレード82aの上端までの距離によって規定される。
【0040】
また、リテーナ12の底部から第一ワイパー81のアーム81bの下端までの距離を高さHw′と規定し、高さHwと高さHw′の差分をΔHwと規定すれば、ガイドチューブ6の高さHtはΔHwの範囲内に設定される。
【0041】
例えば、ガイドチューブ6の高さHtが高さHw′よりも低い場合には、エアバッグ5がエアバッグカバー13から放出される前に中央部51の膨張展開が拘束されてしまい、エアバッグカバー13の開裂タイミングが安定しないおそれがある。また、ガイドチューブ6の高さHtが高さHwよりも高い場合にはエアバッグ5の中央部51の膨張展開を拘束するまでの時間が長く、膨張展開時におけるエアバッグ5の挙動が安定しないおそれがある。
【0042】
それに対して、ガイドチューブ6の高さHtをΔHwの範囲内に設定することにより、エアバッグ5が膨張展開を開始し、エアバッグカバー13を開裂した後に速やかに中央部51の膨張展開を拘束することができる。したがって、エアバッグ5がエアバッグカバー13から外部に放出された後、インフレータ11から供給されたガスを速やかにエアバッグ5の左右に形成された突出部52を膨張展開させるように誘導することができる。
【0043】
また、ガイドチューブ6を配置することによって、従来、エアバッグ5の中央部51を先に膨張展開させていたガスを突出部52の膨張展開に振り分けることができることから、エアバッグ5の中央部51が膨張展開時にウインドシールド3に与える荷重を低減することもできる。
【0044】
ここで、膨張展開時におけるエアバッグ5の挙動について説明する。図1(A)及び図1(B)に示したエアバッグ格納状態において、車両が歩行者等と衝突した際には、車両に搭載されたECU(電子制御ユニット)からインフレータ11に信号が送信され、インフレータ11からエアバッグ5内にガスが供給される。
【0045】
エアバッグ5にガスが供給されエアバッグ5が膨張展開を開始すると、図2(A)及び図2(B)に示したように、パッキングクロス54が開裂し、エアバッグ5はエアバッグカバー13の形状に沿って上方に向かって膨張展開する。エアバッグカバー13の平板部13aに衝突したエアバッグ5は、平板部13aを開裂させ、ウインドシールド3側に向かって回転させる。平板部13aを開裂させたエアバッグ5は、車外に放出される。
【0046】
このとき、エアバッグ5の中央部51は、ガイドチューブ6によって外周が囲まれていることから、図2(A)及び図2(B)に示したように、ガイドチューブ6が破断するまでの間、中央部51の膨張展開が拘束される。したがって、インフレータ11からエアバッグ5に供給されたガスは、中央部51からエアバッグ5の両端部(突出部52)に向かって誘導される。
【0047】
さらに、エアバッグ5にガスが供給されると、図3(A)及び図3(B)に示したように、ガイドチューブ6が破断し、エアバッグ5はフード2上及びウインドシールド3上に膨張展開される。このとき、プロテクタクロス53は、エアバッグカバー13とフード2との間に形成された隙間や開裂した平板部13aの角部を覆うように展張される。プロテクタクロス53を配置することにより、エアバッグ5の潜り込みや損傷を抑制することができる。なお、プロテクタクロス53は、図3(A)に示したように、エアバッグカバー13の横幅の略全域に渡って配置される。
【0048】
上述した本実施形態に係る歩行者保護エアバッグ装置1によれば、ガイドチューブ6を配置したことにより、ガイドチューブ6が破断するまでの間、エアバッグの中央部の膨張展開を一時的に抑制し、エアバッグ5の両端部(突出部52)の膨張展開を促進することができる。したがって、エアバッグ5の中央部51の膨張展開が完了するタイミングとエアバッグ5の両端部(突出部52)の膨張展開が完了するタイミングとの間における時間差を小さくすることができ、膨張展開時におけるエアバッグ5の挙動を安定させることができる。
【0049】
次に、ガイドチューブ6の変形例について、図4(A)~図4(C)を参照しつつ説明する。ここで、図4は、ガイドチューブの変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、(C)は第三変形例、を示している。なお、各図において、説明の便宜上、エアバッグ5及び締結具14の図を省略してある。また、各図は、エアバッグ拘束時におけるガイドチューブ6の正面図を図示したものである。
【0050】
図4(A)に示した第一変形例は、ガイドチューブ6を構成する両端の開口部62,63の大きさが異なるように構成したものである。図示したように、インフレータ11のガス噴出口11aから遠い側に開口部62が配置され、ガス噴出口11aに近い側に開口部63が配置されているとすれば、開口部62>開口部63の関係を有している。なお、図4(A)では、開口部62,63の存在を明確にするために、ガイドチューブ6のみ斜視図にしてある。
【0051】
エアバッグ5には、インフレータ11のガス噴出口11aからガスが供給されることから、ガス噴出口11aに近い開口部63に先にガスが供給される。したがって、インフレータ11のガス噴出口11aが車両の前後方向の中心線からずれている場合には、ガスは左右均等に供給されない。そこで、ガイドチューブ6のガス噴出口11aに近い側の開口部63を反対側の開口部62よりも絞ることにより、エアバッグ5に供給されるガスのアンバランスを是正することができる。
【0052】
図4(B)に示した第二変形例は、ガイドチューブ6の上部の幅Wt2を下部の幅Wt1よりも大きくしたものである。かかる構成によれば、ガイドチューブ6が、エアバッグ5の上部を拘束する領域を広くし、エアバッグ5の下部を拘束する領域を狭くすることができ、エアバッグ5に供給されるガスの流れを図の矢印で示したように斜め下方に促すことができる。
【0053】
図4(C)に示した第三変形例は、ガイドチューブ6の下部の幅Wt1を上部の幅Wt2よりも大きくしたものである。かかる構成によれば、ガイドチューブ6が、エアバッグ5の下部を拘束する領域を広くし、エアバッグ5の上部を拘束する領域を狭くすることができ、エアバッグ5に供給されるガスの流れを図の矢印で示したように斜め上方に促すことができる。
【0054】
このように、ガイドチューブ6は、左右の開口部62,63の大きさが異なっていてもよいし、上下の幅Wt1,Wt2の大きさが異なっていてもよい。また、図示しないが、上下の幅Wt1,Wt2の大きさが異ならしめた状態で、左右の開口部62,63の大きさを異ならしめるようにしてもよい。
【0055】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
1 歩行者保護エアバッグ装置
2 フード
3 ウインドシールド
4 フロントピラー
5 エアバッグ
6 ガイドチューブ
7 カウル
8 ワイパー
11 インフレータ
11a ガス噴出口
12 リテーナ
13 エアバッグカバー
13a 平板部
13b 側板部
13c テアライン
13d 屈曲部
14 締結具
51 中央部
52 突出部
53 プロテクタクロス
54 パッキングクロス
61 破断予定部
62,63 開口部
81 第一ワイパー
82 第二ワイパー
81a,82a ブレード
81b,82b アーム

図1
図2
図3
図4