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特許7017417レーダ目標探知装置及びレーダ目標探知システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】レーダ目標探知装置及びレーダ目標探知システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/87 20060101AFI20220201BHJP
   G01S 13/46 20060101ALI20220201BHJP
   G01S 7/12 20060101ALI20220201BHJP
   G01S 7/41 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
G01S13/87
G01S13/46
G01S7/12
G01S7/41
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018004861
(22)【出願日】2018-01-16
(65)【公開番号】P2019124564
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】小林 一幸
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-291816(JP,A)
【文献】特開2007-225589(JP,A)
【文献】特開2004-144725(JP,A)
【文献】特開平10-096767(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103197296(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/51
G01S 13/00-13/95
G01S 17/00-17/95
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直進性が高く目標の大きさより波長が十分に短いレーダビームが複数のレーダ送受信装置から前記目標に照射されたうえで、前記複数のレーダ送受信装置から各々のレーダ映像のデータを取得するレーダ映像取得部と、
前記複数のレーダ送受信装置の位置関係に留意して統合された前記各々のレーダ映像内で、又は、前記レーダ映像取得部が取得したままの前記各々のレーダ映像内で、各々のレーダ送受信装置の動径方向の延伸影を検出する延伸影検出部と、
前記複数のレーダ送受信装置の位置関係に留意して統合された前記各々のレーダ映像内で、前記各々のレーダ送受信装置の動径方向の延伸影についての交点位置かつ動径内側の先端位置を、前記目標位置として検出する目標位置検出部と、
を備えることを特徴とするレーダ目標探知装置。
【請求項2】
前記延伸影検出部は、前記複数のレーダ送受信装置の位置関係に留意して加算された前記各々のレーダ映像内で、前記各々のレーダ送受信装置の動径方向の延伸影を検出する
ことを特徴とする、請求項1に記載のレーダ目標探知装置。
【請求項3】
前記複数のレーダ送受信装置の位置関係に留意して統合された前記各々のレーダ映像内で、前記目標位置でのレーダ反射強度と、前記各々のレーダ送受信装置の動径方向の延伸影についての背景位置でのレーダ反射強度と、の差分に基づいて、前記目標位置における前記目標のレーダ断面積の大小を判別するレーダ断面積判別部、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のレーダ目標探知装置。
【請求項4】
前記目標位置における前記目標のレーダ断面積が小さいと判別されたときに、レーダ断面積が小さい前記目標が探知された旨のアラームを出力するアラーム出力部、
をさらに備えることを特徴とする、請求項3に記載のレーダ目標探知装置。
【請求項5】
前記複数のレーダ送受信装置の位置関係に留意して統合された前記各々のレーダ映像内で、前記各々のレーダ送受信装置の動径方向の延伸影についての前記目標位置における角度方向の幅寸法と、前記目標位置の運動態様と、のうちの少なくともいずれかに基づいて、前記目標位置における前記目標の種類を判別する目標種類判別部、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のレーダ目標探知装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のレーダ目標探知装置と、前記複数のレーダ送受信装置と、を備えることを特徴とするレーダ目標探知システム。
【請求項7】
前記各々のレーダ送受信装置は、時間分割方式、周波数分割方式及び符号分割方式のうちの少なくともいずれかを用いて、自レーダ送受信装置が送信したレーダ信号を受信するモノスタティックレーダ方式と、他レーダ送受信装置が送信したレーダ信号を受信するバイスタティックレーダ方式と、を混信することなく実行し、
前記レーダ目標探知装置は、各々のモノスタティックレーダ方式及びバイスタティックレーダ方式のレーダ映像のデータを用いて、前記目標位置を検出する
ことを特徴とする、請求項6に記載のレーダ目標探知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダを用いてレーダ断面積が小さい目標を探知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダを用いてレーダ断面積が小さい目標を探知する技術が、特許文献1等に開示されている。特許文献1では、レーダ送信電力を高くすることにより、レーダ受信電力を高くすることができるため、レーダ断面積が小さい目標を探知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-075615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、以下の課題がある。つまり、レーダ送信電力を高くしなければ、レーダ断面積が小さい目標を探知することができない。そして、レーダ送信電力を高くしたとしても、レーダ断面積が小さい目標を高精度に探知することができない。
【0005】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、レーダ送信電力を高くしなくても、レーダ断面積が小さい目標を高精度に探知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
直進性が高いレーダビームが目標に照射されたときに、目標のレーダ断面積の大小に関わらず、レーダ映像において目標の背後に影が発生する。そこで、上記目的を達成するために、レーダ映像の動径方向の延伸影を検出し、延伸影の動径内側の先端位置を目標位置として検出し、目標のレーダ断面積の大小に関わらず、目標を高精度に探知する。そして、更に目的を達成するために、複数のレーダ送受信装置から取得した各々のレーダ映像を、複数のレーダ送受信装置の位置関係に留意して統合し、各々のレーダ送受信装置の動径方向の延伸影についての交点位置かつ動径内側の先端位置を、目標位置として検出する。
【0007】
具体的には、本開示は、複数のレーダ送受信装置から各々のレーダ映像のデータを取得するレーダ映像取得部と、前記複数のレーダ送受信装置の位置関係に留意して統合された前記各々のレーダ映像内で、又は、前記レーダ映像取得部が取得したままの前記各々のレーダ映像内で、各々のレーダ送受信装置の動径方向の延伸影を検出する延伸影検出部と、前記複数のレーダ送受信装置の位置関係に留意して統合された前記各々のレーダ映像内で、前記各々のレーダ送受信装置の動径方向の延伸影についての交点位置かつ動径内側の先端位置を、目標位置として検出する目標位置検出部と、を備えることを特徴とするレーダ目標探知装置である。
【0008】
この構成によれば、レーダ断面積が小さい目標でのレーダ反射強度は、その目標の背景でのレーダ反射強度より低いけれども、その目標を高精度に探知することができる。そして、レーダ断面積が大きい目標でのレーダ反射強度が、その目標の背景でのレーダ反射強度と同程度のオーダーであるときでも、その目標を高精度に探知することができる。さらに、複数のレーダ送受信装置の位置関係に留意して、各々のレーダ映像を統合することにより、複数の延伸影を根拠として、更に高精度に目標を探知することができる。
【0009】
また、本開示は、前記延伸影検出部は、前記複数のレーダ送受信装置の位置関係に留意して加算された前記各々のレーダ映像内で、前記各々のレーダ送受信装置の動径方向の延伸影を検出することを特徴とするレーダ目標探知装置である。
【0010】
この構成によれば、複数のレーダ送受信装置の位置関係に留意して、各々のレーダ映像を加算することにより、目標の近傍にある背景でのシグナルレベルを強調することができ、目標の近傍にある延伸影でのノイズレベルを抑圧することができる。つまり、目標の近傍にある背景でのレーダ反射強度と、目標の近傍にある延伸影でのレーダ反射強度と、のコントラストを利用して、更に高精度に目標を探知することができる。
【0011】
また、本開示は、前記複数のレーダ送受信装置の位置関係に留意して統合された前記各々のレーダ映像内で、前記目標位置でのレーダ反射強度と、前記各々のレーダ送受信装置の動径方向の延伸影についての背景位置でのレーダ反射強度と、の差分に基づいて、前記目標位置における目標のレーダ断面積の大小を判別するレーダ断面積判別部、をさらに備えることを特徴とするレーダ目標探知装置である。
【0012】
この構成によれば、レーダ断面積が小さい/大きい目標を判別することができる。そして、複数のレーダ送受信装置の位置関係に留意して、各々のレーダ映像を統合することにより、レーダ断面積が小さい/大きい目標を更に高精度に判別することができる。
【0013】
また、本開示は、前記目標位置における目標のレーダ断面積が小さいと判別されたときに、レーダ断面積が小さい目標が探知された旨のアラームを出力するアラーム出力部、をさらに備えることを特徴とするレーダ目標探知装置である。
【0014】
この構成によれば、レーダ断面積が小さい目標をユーザに報知することができる。そして、複数のレーダ送受信装置の位置関係に留意して、各々のレーダ映像を統合することにより、レーダ断面積が小さい目標を更に高精度にユーザに報知することができる。
【0015】
また、本開示は、前記複数のレーダ送受信装置の位置関係に留意して統合された前記各々のレーダ映像内で、前記各々のレーダ送受信装置の動径方向の延伸影についての前記目標位置における角度方向の幅寸法と、前記目標位置の運動態様と、のうちの少なくともいずれかに基づいて、前記目標位置における目標の種類を判別する目標種類判別部、をさらに備えることを特徴とするレーダ目標探知装置である。
【0016】
この構成によれば、レーダ断面積が小さい/大きい目標のそれぞれについて、目標の種類(船舶、航空機及び静止物等)を判別することができる。そして、複数のレーダ送受信装置の位置関係に留意して、各々のレーダ映像を統合することにより、様々な方向で同時に見た目標の寸法や速度に基づいて、更に高精度に目標の種類を判別することができる。
【0017】
また、本開示は、以上に記載のレーダ目標探知装置と、前記複数のレーダ送受信装置と、を備えることを特徴とするレーダ目標探知システムである。
【0018】
この構成によれば、レーダ断面積が小さい目標でのレーダ反射強度は、その目標の背景でのレーダ反射強度より低いけれども、その目標を高精度に探知することができる。そして、レーダ断面積が大きい目標でのレーダ反射強度が、その目標の背景でのレーダ反射強度と同程度のオーダーであるときでも、その目標を高精度に探知することができる。さらに、複数のレーダ送受信装置の位置関係に留意して、各々のレーダ映像を統合することにより、複数の延伸影を根拠として、更に高精度に目標を探知することができる。
【0019】
また、本開示は、前記各々のレーダ送受信装置は、時間分割方式、周波数分割方式及び符号分割方式のうちの少なくともいずれかを用いて、自レーダ送受信装置が送信したレーダ信号を受信するモノスタティックレーダ方式と、他レーダ送受信装置が送信したレーダ信号を受信するバイスタティックレーダ方式と、を混信することなく実行し、前記レーダ目標探知装置は、各々のモノスタティックレーダ方式及びバイスタティックレーダ方式のレーダ映像のデータを用いて、前記目標位置を検出することを特徴とするレーダ目標探知システムである。
【0020】
この構成によれば、モノスタティックレーダ方式を実行して、複数の延伸影を根拠として、更に高精度に目標を探知することができる。そして、バイスタティックレーダ方式を実行して、レーダ散乱強度も根拠として、更に高精度に目標を探知することができる。
【発明の効果】
【0021】
このように、本開示は、レーダ送信電力を高くしなくても、レーダ断面積が小さい目標を高精度に探知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示のレーダ目標探知システムの構成を示す図である。
図2】本開示のレーダ送受信装置の構成を示す図である。
図3】本開示のレーダ目標探知処理方法の手順を示す図である。
図4】本開示の延伸影検出部及び目標位置検出部の処理を示す図である。
図5】本開示の延伸影検出部及び目標位置検出部の処理を示す図である。
図6】本開示の延伸影検出部及びレーダ断面積判別部の処理を示す図である。
図7】本開示の目標種類判別部の処理を示す図である。
図8】本開示のレーダ送受信処理方法の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0024】
本開示のレーダ目標探知システムの構成を図1に示す。レーダ目標探知システムSは、レーダ送受信装置R1、R2、R3及びデータ通信経路D1、D2、D3から構成される。レーダ送受信装置R1、R2、R3のレーダ覆域は、一部重複している。レーダ送受信装置R1、R2、R3は、図2に示すレーダ送受信装置Rと同様である。
【0025】
本開示のレーダ送受信装置の構成を図2に示す。本開示のレーダ目標探知処理方法の手順を図3に示す。レーダ送受信装置Rは、レーダ送信部1、レーダ受信部2、データ通信部3、レーダ目標探知装置4及びレーダ映像表示部5から構成される。レーダ目標探知装置4は、レーダ映像取得部41、延伸影検出部42、目標位置検出部43、レーダ断面積判別部44、アラーム出力部45及び目標種類判別部46から構成される。
【0026】
本開示では、以下の原理を用いる。つまり、直進性が高いレーダビームが目標Tに照射されたときに、目標Tのレーダ断面積の大小に関わらず、レーダ映像において目標Tの背後に影が発生する。ここで、直進性が高いレーダビームとして、目標Tの大きさより波長が十分に短いビーム、例えば、電波、赤外線及び可視光等が挙げられる。
【0027】
レーダ送信部1は、直進性が高いレーダビームを空間に向けて照射する。レーダ受信部2は、目標Tにおいて反射されたレーダビームを受信する。データ通信部3は、他レーダ送受信装置Rから各々のレーダ映像のデータを取得する。レーダ映像取得部41は、自レーダ送受信装置Rのレーダ映像のデータを取得し、他レーダ送受信装置Rから各々のレーダ映像のデータを取得する(ステップS1)。レーダ映像表示部5は、レーダ映像取得部41が取得した各々のレーダ映像のデータを映像化して表示する。
【0028】
延伸影検出部42は、レーダ映像取得部41が取得したままの各々のレーダ映像内で、各々のレーダ送受信装置Rの動径方向の延伸影を検出する(ステップS2)。又は、延伸影検出部42は、複数のレーダ送受信装置Rの位置関係に留意して統合された各々のレーダ映像内で、各々のレーダ送受信装置Rの動径方向の延伸影を検出する(ステップS2)。目標位置検出部43は、複数のレーダ送受信装置Rの位置関係に留意して統合された各々のレーダ映像内で、各々のレーダ送受信装置Rの動径方向の延伸影についての交点位置かつ動径内側の先端位置を、目標Tの位置として検出する(ステップS3)。レーダ映像表示部5は、目標位置検出部43が検出した目標Tの位置を表示する。
【0029】
本開示の延伸影検出部42及び目標位置検出部43の処理を図4及び図5に示す。図4では、各々のレーダ送受信装置R1、R2、R3のレーダ映像I1、I2、I3を示す。図5では、レーダ送受信装置R1において統合されたレーダ映像Iを示す。
【0030】
図4では、各々のレーダ映像I1、I2、I3の中心において、各々のレーダ送受信装置R1、R2、R3の設置位置が表示されている。白色から黒色へのグラデーションを用いて、各々のレーダ映像I1、I2、I3の中心から遠方へと徐々に低くなる、各々の背景B1、B2、B3でのレーダ反射強度が表示されている。ここで、各々の背景B1、B2、B3でのレーダ反射強度として、例えば、海面クラッタによるレーダ反射強度、雨雪クラッタによるレーダ反射強度及び雲での反射によるレーダ反射強度等が挙げられる。
【0031】
そして、延伸影検出部42は、各々の背景B1、B2、B3でのレーダ反射強度より低いレーダ反射強度を有する、各々のレーダ映像I1、I2、I3の動径方向の延伸影S1、S2、S3を検出する。目標位置検出部43は、各々の延伸影S1、S2、S3の動径内側の先端位置を、それぞれ、各々の目標T1、T2、T3の位置として検出する。さらに、目標位置検出部43は、各々のレーダ映像I1、I2、I3を統合することにより、各々の目標T1、T2、T3を同一の目標Tとして検出する。
【0032】
図5では、統合されたレーダ映像Iの中心において、レーダ送受信装置R1の設置位置が表示されている。各々のレーダ送受信装置R1、R2、R3の位置関係に留意して、各々のレーダ送受信装置R2、R3の設置位置が表示されている。なお、図5の背景Bでのレーダ反射強度は、図4の背景B1、B2、B3でのレーダ反射強度が統合されたものであり、統合されたレーダ映像Iの中心から遠方へと徐々に低くなるわけではない。
【0033】
そして、延伸影検出部42は、統合後の背景Bでのレーダ反射強度より低いレーダ反射強度を有する、各々のレーダ送受信装置R1、R2、R3の動径方向の延伸影S1、S2、S3を検出する。目標位置検出部43は、各々の延伸影S1、S2、S3の交点位置かつ動径内側の先端位置を、一つの目標Tの位置として検出する。
【0034】
このように、レーダ断面積が小さい目標Tでのレーダ反射強度は、その目標Tの背景Bでのレーダ反射強度より低いけれども、その目標Tを高精度に探知することができる。そして、レーダ断面積が大きい目標Tでのレーダ反射強度が、その目標Tの背景Bでのレーダ反射強度と同程度のオーダーであるときでも、その目標Tを高精度に探知することができる。しかも、レーダ送信電力を高くしなくても、レーダ断面積が小さい/大きい目標Tを高精度に探知することができる。さらに、複数のレーダ送受信装置R1、R2、R3の位置関係に留意して、各々のレーダ映像I1、I2、I3を統合することにより、複数の延伸影S1、S2、S3を根拠として、更に高精度に目標Tを探知することができる。
【0035】
レーダ断面積判別部44は、複数のレーダ送受信装置Rの位置関係に留意して統合された各々のレーダ映像内で、目標Tの位置でのレーダ反射強度と、各々のレーダ送受信装置Rの動径方向の延伸影についての背景位置でのレーダ反射強度と、の差分に基づいて、目標Tの位置における目標Tのレーダ断面積の大小を判別する(ステップS4)。レーダ映像表示部5は、レーダ断面積判別部44が判別した目標Tのレーダ断面積の大小を表示する。本開示の延伸影検出部42及びレーダ断面積判別部44の処理を図6に示す。
【0036】
図6の上段には、レーダ断面積が小さい図5の目標Tについて、背景B内の位置X、Y、Zから目標Tの位置を経て延伸影S1内の位置X’、Y’、Z’への線分上でのレーダ反射強度を示す。ここで、位置X、Y、Zは、それぞれ、レーダ送受信装置R1、R2、R3から見て、目標Tの手前の位置である。そして、位置X’、Y’、Z’は、それぞれ、レーダ送受信装置R1、R2、R3から見て、目標Tの背後の位置である。
【0037】
レーダ断面積判別部44は、目標Tの位置でのレーダ反射強度(=I)と延伸影S1の背景Bでのレーダ反射強度(~I)との差分が小さいことに基づいて、目標Tのレーダ断面積が小さいことを判別する。又は、レーダ断面積判別部44は、背景B内の位置X、Y、Zから延伸影S1内の位置X’、Y’、Z’への線分上において、レーダ反射強度が目標Tの近傍でピークを形成せずに背景レベルのIから影レベルのIへと下降することに基づいて、目標Tのレーダ断面積が小さいことを判別する。なお、I’及びI’は後述する。
【0038】
図6の下段には、レーダ断面積が大きい図5の目標Tについて、背景B内の位置X、Y、Zから目標Tの位置を経て延伸影S1内の位置X’、Y’、Z’への線分上でのレーダ反射強度を示す。ここで、位置X、Y、Zは、それぞれ、レーダ送受信装置R1、R2、R3から見て、目標Tの手前の位置である。そして、位置X’、Y’、Z’は、それぞれ、レーダ送受信装置R1、R2、R3から見て、目標Tの背後の位置である。
【0039】
レーダ断面積判別部44は、目標Tの位置でのレーダ反射強度(=I)と延伸影S1の背景Bでのレーダ反射強度(~I)との差分が大きいことに基づいて、目標Tのレーダ断面積が大きいことを判別する。又は、レーダ断面積判別部44は、背景B内の位置X、Y、Zから延伸影S1内の位置X’、Y’、Z’への線分上において、レーダ反射強度が目標Tの近傍でピークを形成しつつ背景レベルのIから影レベルのIへと下降することに基づいて、目標Tのレーダ断面積が大きいことを判別する。なお、I’、I’及びI’は後述する。
【0040】
このように、レーダ断面積が小さい/大きい目標Tを判別することができる。そして、複数のレーダ送受信装置R1、R2、R3の位置関係に留意して、各々のレーダ映像I1、I2、I3を統合することにより、更に高精度に目標Tを探知することができ、レーダ断面積が小さい/大きい目標Tを更に高精度に判別することができる。
【0041】
ここで、延伸影検出部42は、複数のレーダ送受信装置Rの位置関係に留意して「重畳」された各々のレーダ映像内で、各々のレーダ送受信装置Rの動径方向の延伸影を検出してもよい。又は、延伸影検出部42は、複数のレーダ送受信装置Rの位置関係に留意して「加算」された各々のレーダ映像内で、各々のレーダ送受信装置Rの動径方向の延伸影を検出してもよい。なお、「重畳」とは、「加算」と異なり、単に重ね合わせることである。
【0042】
図6のように、複数のレーダ送受信装置Rの位置関係に留意して、各々のレーダ映像を「加算」することにより、目標Tの近傍にある背景でのシグナルレベルを強調することができ、目標Tの近傍にある延伸影でのノイズレベルを抑圧することができる。つまり、目標Tの近傍にある背景でのレーダ反射強度と、目標Tの近傍にある延伸影でのレーダ反射強度と、のコントラストを利用して、更に高精度に目標Tを探知することができる。
【0043】
図6の上段及び下段の「レーダ映像の加算前」では、延伸影検出部42は、目標Tの近傍にある背景Bでのレーダ反射強度(~I’)と、目標Tの近傍にある延伸影S1、S2、S3でのレーダ反射強度(=I’)と、の小さい差分に基づいて、延伸影S1、S2、S3をかろうじて検出している。図6の下段の「レーダ映像の加算前」では、目標Tの位置でのレーダ反射強度(=I’)は、目標Tの近傍にある背景Bでのレーダ反射強度(~I’)と比べて、小さい差分しか有さない。
【0044】
図6の上段及び下段の「レーダ映像の加算後」では、延伸影検出部42は、目標Tの近傍にある背景Bでのレーダ反射強度(~I)と、目標Tの近傍にある延伸影S1、S2、S3でのレーダ反射強度(=I)と、の大きい差分に基づいて、延伸影S1、S2、S3を更に高精度に検出している。図6の下段の「レーダ映像の加算後」では、目標Tの位置でのレーダ反射強度(=I)は、目標Tの近傍にある背景Bでのレーダ反射強度(~I)と比べて、大きい差分を有している。
【0045】
アラーム出力部45は、目標Tの位置における目標Tのレーダ断面積が小さいと判別されたときに(ステップS5において「小」)、レーダ断面積が小さい目標Tが探知された旨のアラームを出力する(ステップS6)。一方で、アラーム出力部45は、目標Tの位置における目標Tのレーダ断面積が大きいと判別されたときに(ステップS5において「大」)、特にはアラームを出力しない。レーダ映像表示部5は、アラーム出力部45が出力したレーダ断面積が小さい目標Tが探知された旨のアラームを表示する。
【0046】
このように、レーダ断面積が小さい目標Tをユーザに報知することができる。そして、複数のレーダ送受信装置R1、R2、R3の位置関係に留意して、各々のレーダ映像I1、I2、I3を統合することにより、更に高精度に目標Tを探知することができ、レーダ断面積が小さい目標Tを更に高精度にユーザに報知することができる。
【0047】
目標種類判別部46は、複数のレーダ送受信装置Rの位置関係に留意して統合された各々のレーダ映像内で、各々のレーダ送受信装置Rの動径方向の延伸影についての目標Tの位置における角度方向の幅寸法と、目標Tの位置の運動態様と、のうちの少なくともいずれかに基づいて、目標Tの位置における目標Tの種類を判別する(ステップS7)。レーダ映像表示部5は、目標種類判別部46が判別した目標の種類を表示する。
【0048】
ここで、レーダ断面積判定部44及びアラーム出力部45による処理であるステップS4~S6と、目標種類判別部46による処理であるステップS7と、はいずれを先に行なっても後に行なっても構わない。本開示の目標種類判別部46の処理を図7に示す。
【0049】
目標Tの位置の運動態様に基づく目標Tの種類の判別として、例えば、以下の方法が挙げられる:(1)目標Tの移動速度に基づく目標Tの種類の判別、(2)目標Tの移動加速度に基づく目標Tの種類の判別、(3)目標Tの移動方位に基づく目標Tの種類の判別、(4)目標Tの挙動に基づく目標Tの種類の判別、(5)目標Tの過去から現在までの移動軌跡に基づく目標Tの種類の判別、(6)目標Tの過去から現在までの移動軌跡と、データベース等に蓄積された目標の過去の移動軌跡と、の比較結果に基づく目標Tの種類の判別。
【0050】
図7の上段には、目標Tの種類が船舶であるときについて、レーダ映像Iの時間変化を示す。最初に、目標Tの位置における角度方向の幅寸法が、それぞれ~10m、~100m、~100mのオーダーである、延伸影S1、S2、S3が検出されている。その後、この目標Tは、レーダ送受信装置R1に向かう方向から、レーダ送受信装置R1をかすめる方向へと、低速で方向転換したことが、様々な方向で見た速度から確認されている。
【0051】
目標種類判別部46は、目標Tの位置における延伸影S1の角度方向の幅寸法(~10mのオーダー)と、目標Tの位置における延伸影S2、S3の角度方向の幅寸法(~100mのオーダー)と、に基づいて、この目標Tの種類が船舶であることを判別する。或いは、目標種類判別部46は、この目標Tの移動速度/移動加速度がそれぞれ低速/低加速度であることに基づいて、この目標Tの種類が船舶であることを判別する。或いは、目標種類判別部46は、この目標Tの移動方位が水平面に留まっていることに基づいて、この目標Tの種類が船舶であることを判別する。或いは、目標種類判別部46は、上述の(4)~(6)に従って、この目標Tの種類が船舶であることを判別する。むろん、目標種類判別部46は、これらの判別の方法を併用してもよい。
【0052】
図7の中段には、目標Tの種類が航空機であるときについて、レーダ映像Iの時間変化を示す。最初に、目標Tの位置における角度方向の幅寸法が、それぞれ~10m、~10m、~10mのオーダーである、延伸影S1、S2、S3が検出されている。その後、この目標Tは、レーダ送受信装置R1に向かう方向から、レーダ送受信装置R1をかすめる方向へと、高速で方向転換したことが、様々な方向で見た速度から確認されている。
【0053】
目標種類判別部46は、目標Tの位置における延伸影S1、S2、S3の角度方向の幅寸法(すべて~10mのオーダー)に基づいて、この目標Tの種類が航空機であることを判別する。或いは、目標種類判別部46は、この目標Tの移動速度/移動加速度がそれぞれ高速/高加速度であることに基づいて、この目標Tの種類が航空機であることを判別する。或いは、目標種類判別部46は、この目標Tの移動方位が水平面から高高度へと向いていることに基づいて、この目標Tの種類が航空機であることを判別する。或いは、目標種類判別部46は、上述の(4)~(6)に従って、この目標Tの種類が航空機であることを判別する。むろん、目標種類判別部46は、これらの判別の方法を併用してもよい。
【0054】
図7の下段には、目標Tの種類が静止物であるときについて、レーダ映像Iの時間変化を示す。最初に、目標Tの位置における角度方向の幅寸法が、それぞれ~10m、~10m、~10mのオーダーである、延伸影S1、S2、S3が検出されている。その後、この目標Tは、最初からその後まで静止していたことが確認されている。
【0055】
目標種類判別部46は、この目標Tの移動速度/移動加速度が0であることに基づいて、この目標Tの種類が静止物であることを判別する。或いは、目標種類判別部46は、この目標Tの移動方位がいずれの方位にも向いていないことに基づいて、この目標Tの種類が静止物であることを判別する。或いは、目標種類判別部46は、上述の(4)~(6)に従って、この目標Tの種類が静止物であることを判別する。むろん、目標種類判別部46は、これらの判別の方法を併用してもよい。
【0056】
ただし、目標種類判別部46は、目標Tの位置における延伸影S1、S2、S3の角度方向の幅寸法(すべて~10mのオーダー)のみに基づいて、この目標Tの種類がどのような静止物であるか(船舶、ホバリングする飛行物及び障害物等)を判別することは困難である。しかし、目標種類判別部46は、この目標Tの位置がどのような位置であるか(海上、空中及び陸上等)に基づいて、この目標Tの種類がどのような静止物であるか(船舶、ホバリングする飛行物及び障害物等)を判別することは可能である。
【0057】
このように、レーダ断面積が小さい/大きい目標Tのそれぞれについて、目標Tの種類(船舶、航空機及び静止物等)を判別することができる。そして、複数のレーダ送受信装置R1、R2、R3の位置関係に留意して、各々のレーダ映像I1、I2、I3を統合することにより、更に高精度に目標Tを探知することができ、様々な方向で同時に見た目標Tの寸法や速度に基づいて、更に高精度に目標Tの種類を判別することができる。
【0058】
ここで、各々のレーダ送受信装置Rは、時間分割方式、周波数分割方式及び符号分割方式のうちの少なくともいずれかを用いて、自レーダ送受信装置Rが送信したレーダ信号を受信するモノスタティックレーダ方式と、他レーダ送受信装置Rが送信したレーダ信号を受信するバイスタティックレーダ方式と、を混信することなく実行してもよい。
【0059】
そして、レーダ目標探知装置4は、自他レーダ送受信装置Rのモノスタティックレーダ方式及びバイスタティックレーダ方式のレーダ映像のデータを用いて、目標Tの位置を検出してもよい。本開示のレーダ送受信処理方法の手順を図8に示す。
【0060】
図8の上段では、時間分割方式を用いる。期間P1では、レーダ送受信装置R1は、モノスタティックレーダ方式を実行し、レーダ送受信装置R2、R3は、バイスタティックレーダ方式を実行する。期間P2では、レーダ送受信装置R2は、モノスタティックレーダ方式を実行し、レーダ送受信装置R1、R3は、バイスタティックレーダ方式を実行する。期間P3では、レーダ送受信装置R3は、モノスタティックレーダ方式を実行し、レーダ送受信装置R1、R2は、バイスタティックレーダ方式を実行する。以降の期間では、期間P1、P2、P3でのレーダ送受信処理をこの順序で繰り返す。
【0061】
図8の中段では、周波数分割方式を用いる。すべての期間において、レーダ送受信装置R1は、周波数F1でモノスタティックレーダ方式を実行し、周波数F2、F3でバイスタティックレーダ方式を実行する。そして、レーダ送受信装置R2は、周波数F2でモノスタティックレーダ方式を実行し、周波数F1、F3でバイスタティックレーダ方式を実行する。そして、レーダ送受信装置R3は、周波数F3でモノスタティックレーダ方式を実行し、周波数F1、F2でバイスタティックレーダ方式を実行する。
【0062】
図8の下段では、符号分割方式を用いる。すべての期間において、レーダ送受信装置R1は、符号C1でモノスタティックレーダ方式を実行し、符号C2、C3でバイスタティックレーダ方式を実行する。そして、レーダ送受信装置R2は、符号C2でモノスタティックレーダ方式を実行し、符号C1、C3でバイスタティックレーダ方式を実行する。そして、レーダ送受信装置R3は、符号C3でモノスタティックレーダ方式を実行し、符号C1、C2でバイスタティックレーダ方式を実行する。
【0063】
このように、モノスタティックレーダ方式を実行して、複数の延伸影を根拠として、更に高精度に目標Tを探知することができる。そして、バイスタティックレーダ方式を実行して、レーダ散乱強度も根拠として、更に高精度に目標Tを探知することができる。
【0064】
図5及び図7では、すべてのレーダ送受信装置R1、R2、R3において、各々のレーダ映像I1、I2、I3を統合している。変形例として、レーダ送受信装置R1、R2、R3とは別の装置において、各々のレーダ映像I1、I2、I3を統合してもよい。
【0065】
図5及び図7では、統合後のレーダ映像Iにおいて、延伸影S1、S2、S3を表示している。変形例として、統合後のレーダ映像Iにおいて、延伸影S1、S2、S3を除去してもよい。多数の目標Tが検出されるときに、変形例のレーダ映像Iが視認しやすい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本開示のレーダ目標探知装置及びレーダ目標探知システムは、レーダ送信電力を高くしなくても、レーダ断面積が小さい目標を高精度に探知することができる。
【符号の説明】
【0067】
S:レーダ目標探知システム
R、R1、R2、R3:レーダ送受信装置
D1、D2、D3:データ通信経路
T、T1、T2、T3:目標
1:レーダ送信部
2:レーダ受信部
3:データ通信部
4:レーダ目標探知装置
5:レーダ映像表示部
41:レーダ映像取得部
42:延伸影検出部
43:目標位置検出部
44:レーダ断面積判別部
45:アラーム出力部
46:目標種類判別部
I、I1、I2、I3:レーダ映像
B、B1、B2、B3:背景
S1、S2、S3:延伸影
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8