(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】ガスセンサ素子、ガスセンサ及びガス検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/419 20060101AFI20220201BHJP
【FI】
G01N27/419 327H
(21)【出願番号】P 2018015572
(22)【出願日】2018-01-31
【審査請求日】2020-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大石 雄太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 哲哉
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-043011(JP,A)
【文献】特開2013-072671(JP,A)
【文献】特開2018-040717(JP,A)
【文献】特開2002-228626(JP,A)
【文献】特開2012-211863(JP,A)
【文献】特開2013-234896(JP,A)
【文献】特開平01-206252(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0000780(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/406-27/419
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の固体電解質体と前記固体電解質体の表面に設けられた一対の電極とを有する一つ以上のセルと、通電により発熱する発熱部を有する板状のヒータと、が積層された積層体を備えるガスセンサ素子であって、
前記一つ以上のセルのうち積層方向において前記ヒータに最も近いセルにおいては、前記一対の電極は、前記発熱部に重なる様に前記固体電解質体の両面に設けられ、前記発熱部に近い側の第1電極と前記発熱部に遠い側の第2電極とを備え、
前記積層体は、
前記第1電極と前記発熱部との間に設けられた断熱部と、
前記断熱部の全周囲を囲む絶縁基板と、を備え、
前記絶縁基板は、
積層方向から見たときに前記断熱部の周囲に連続して形成され、該断熱部よりも熱伝導率が高い熱伝導部と、
前記断熱部よりも熱伝導率が高く、前記第1電極と前記断熱部とに挟まれたセラミック層と、を備え、
前記断熱部は、空間である、
ガスセンサ素子。
【請求項2】
板状の固体電解質体と前記固体電解質体の表面に設けられた一対の電極とを有する一つ以上のセルと、通電により発熱する発熱部を有する板状のヒータと、が積層された積層体を備えるガスセンサ素子であって、
前記一つ以上のセルのうち積層方向において前記ヒータに最も近いセルにおいては、前記一対の電極は、前記発熱部に重なる様に前記固体電解質体の両面に設けられ、前記発熱部に近い側の第1電極と前記発熱部に遠い側の第2電極とを備え、
前記積層体は、
前記第1電極と前記発熱部との間に設けられた断熱部と、積層方向から見たときに前記断熱部の周囲に連続して形成され、該断熱部よりも熱伝導率が高い熱伝導部と、
前記断熱部よりも熱伝導率が高く、前記第1電極と前記断熱部とに挟まれたセラミック層と、を備え、
前記断熱部は、前記熱伝導部よりも気孔率の高い多孔質部材によって形成されている、
ガスセンサ素子。
【請求項3】
前記断熱部は、その前記積層方向に垂直な面の面積が、前記第1電極の前記発熱部に向く面の面積以上となるように構成されている、
請求項1
又は2に記載のガスセンサ素子。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載のガスセンサ素子と、前記ガスセンサ素子を保持するハウジングと、を備える、
ガスセンサ。
【請求項5】
請求項
4に記載のガスセンサと、前記発熱部の通電をPWM制御するセンサ制御部と、を備える、
ガス検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の固体電解質体と固体電解質体の表面に設けられた一対の電極とを有する1つ以上のセルと、発熱部を有する板状のヒータと、が積層された積層体を備えるガスセンサ素子、ガスセンサ素子を備えるガスセンサ、及びガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサ素子の一例として、特許文献1に記載のガスセンサ素子が知られている。特許文献1に記載のガスセンサ素子は、板状の固体電解質体と固体電解質体の両面に設けられた一対の電極とを有するセルと、発熱部を有する板状のヒータとの積層体を備える。そして、特許文献1に記載のガスセンサ素子は、発熱部の熱で一対の電極及び固体電解質体を昇温して、これらを活性化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のガスセンサ素子では、一対の電極のそれぞれからヒータの発熱部までの距離が異なり、発熱部に近い側の電極に伝わる熱量と、発熱部に遠い側の電極に伝わる熱量とには大きな差が生じる。そのため、発熱部に近い側の電極は、発熱部に遠い側の電極よりも温度が高くなり、一対の電極間に温度差が生じる。その結果、温度差に起因して一対の電極間に熱起電力が生じ、生じた熱起電力がセンサ出力に対してノイズ成分となる。このように、センサ出力に対して一対の電極間の温度差に起因したノイズ成分が加わることにより、ガスセンサの検出精度が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、一対の電極間における温度差を抑制可能なセンサ素子、センサ素子を備えるガスセンサ、及びガス検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つ局面におけるガスセンサ素子は、一つ以上のセルと板状のヒータとが積層された積層体を備える。一つ以上のセルは、板状の固体電解質体と固体電解質体の表面に設けられた一対の電極とを有する。板状のヒータは、通電により発熱する発熱部を有する。
【0007】
一つ以上のセルのうち積層方向においてヒータに最も近いセルにおいては、一対の電極は、発熱部に重なる様に固体電解質体の両面に設けられ、発熱部に近い側の第1電極と発熱部に遠い側の第2電極とを備える。積層体は、第1電極と発熱部との間に設けられた断熱部と、積層方向から見たときに断熱部の周囲に連続して形成され、断熱部よりも熱伝導率が高い熱伝導部と、を備える。
【0008】
このガスセンサ素子において、積層体が、ヒータの発熱部に近い側の第1電極と発熱部との間に断熱部を備えることにより、発熱部から一対の電極への熱の伝導経路が、直線的な経路ではなく、断熱部を迂回して回り込むような経路となる。これにより、発熱部から第1電極へ伝わる熱量と第2電極へ伝わる熱量との差が抑制されるため、一対の電極間の温度差を抑制することができる。
【0009】
また、積層体は、積層方向から見たときに断熱部の周囲に連続して形成される熱伝導部を備える。すなわち、断熱部は、積層方向から見たときに熱伝導部で囲われ、積層体の外部に露出していない。よって、断熱部の一部が外部に露出している場合と比べて、熱の伝導経路が多く形成されるため、発熱部から一対の電極及び固体電解質体へ効率的に熱を伝えることができる。ひいては、発熱部から第1電極へ伝わる熱量と第2電極へ伝わる熱量の差を抑制しつつ、一対の電極及び固体電解質体の活性化の低下を抑制することができる。
【0010】
次に、上述のセンサ素子においては、積層体は、断熱部よりも熱伝導率が高く、第1電極と断熱部とに挟まれたセラミック層を備えてもよい。
第1電極と断熱部との間に断熱部よりも熱伝導率が高いセラミック層が挟まれていることにより、第1電極と断熱部が接している場合よりも、発熱部から一対の電極及び固体電解質体へより効率的に熱を伝えることができる。
【0011】
次に、上述のセンサ素子においては、断熱部は、その積層方向に垂直な面の面積が、第1電極の発熱部に向く面の面積以上となるように構成されていてもよい。
実験により、断熱部の積層方向に垂直な面の面積(以下、断熱部断面積)が、第1電極の発熱部に向く面積(以下、第1電極面積)未満の場合は、断熱部断面積を大きくするほど一対の電極間の温度差が小さくなり、断熱部断面積が第1電極面積以上になると、一対の電極間の温度差はほぼ変わらなくなることがわかった。したがって、断熱部断面積を第1電極面積以上とすることで、一対の電極間の温度差を好適に抑制することができる。
【0012】
次に、上述のセンサ素子においては、断熱部は、空間であってもよい。
積層体が、発熱部と第1電極との間に空間を備えることにより、発熱部から第1電極への直線的な熱の伝導を抑制して、一対の電極間の温度差を抑制することができる。
【0013】
次に、上述のセンサ素子においては、断熱部は、熱伝導部よりも気孔率の高い多孔質部材によって形成されていてもよい。
このような場合でも、断熱部が空間である場合と同様に、一対の電極間の温度差を抑制することができる。
【0014】
次に、上述のセンサ素子においては、断熱部は、熱伝導部よりも熱伝導率が低い緻密部材によって形成されていてもよい。
このような場合でも、断熱部が空間である場合と同様に、一対の電極間の温度差を抑制することができる。
【0015】
本発明の他の一つの局面におけるガスセンサは、上述のガスセンサ素子と、ガスセンサ素子を保持するハウジングと、を備える。
このようなガスセンサは、上述のガスセンサ素子を備えることにより、検出精度を向上させることができる。
【0016】
本発明の他の一つの局面におけるガス検出装置は、上述のガスセンサと、発熱部の通電をPWM制御するセンサ制御部と、を備える。PWMは、Pulse Width Modulationの略である。
ガスセンサ素子の温度が一定になるように発熱部をPWM制御する場合、発熱部をPWM制御しない場合と比べて、センサ出力に対して変動するノイズが加わるため、検出精度が低下しやすい。ガス検出装置は、上述のガスセンサを備えることにより、発熱部をPWM制御する場合でも、センサ出力に対して加わるノイズを抑制して、検出精度を向上させることができる。
【0017】
なお、ここでの「垂直」とは、厳密な意味での垂直に限るものではなく、目的とする効果を奏するのであれば厳密に垂直でなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ガスセンサとセンサコントロールユニットとを備えたガス検出装置の構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態のガスセンサ素子を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態のガスセンサ素子を
図2におけるIII-III線に沿って切断した断面図である。
【
図4】第1実施形態のガスセンサ素子を
図2におけるIV-IV線に沿って切断した断面図である。
【
図5】ヒータの発熱抵抗体パターンを示す図である。
【
図6】従来のガスセンサ素子を積層方向及び軸線方向に垂直な面で切断した断面を示す図である。
【
図7】従来のガスセンサ素子のヒータをPWM制御した場合に発生する出力の変動量を示す図である。
【
図8】断熱部の幅を第1電極の幅よりも小さくした場合における、第1セルと断熱部とを示す模式図である。
【
図9】断熱部の幅を第1電極の幅と等しくした場合における、第1セルと断熱部とを示す模式図である。
【
図10】断熱部の幅を第1電極の幅よりも大きくした場合における、第1セルと断熱部とを示す模式図である。
【
図11】断熱部の断面積を第1電極の電極面積よりも小さくした場合における、発熱部と断熱部と第1電極とを示す模式図である。
【
図12】断熱部の断面積を第1電極の電極面積と等しくした場合における、発熱部と断熱部と第1電極とを示す模式図である。
【
図13】断熱部の断面積を第1電極の電極面積よりも大きくした場合における、発熱部と断熱部と第1電極とを示す模式図である。
【
図14】断熱部を空間又は多孔質部材とした場合における、第1電極の大きさと断熱部の大きさとノイズ低減率との関係を説明する図である。
【
図15】第1実施形態の他の例のガスセンサ素子の
図3に対応する断面図である。
【
図16】第2実施形態のガスセンサ素子の外観を示す斜視図である。
【
図17】第2実施形態のガスセンサ素子を
図15におけるXVII-XVII線に沿って切断した断面図である。
【
図18】第2実施形態のガスセンサ素子を
図15におけるXVIII-XVIII線に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。
(第1実施形態)
<1.ガス検出装置>
まず、第1実施形態のガス検出装置900の構成について、
図1を参照して説明する。ガス検出装置900は、ガスセンサ1とセンサコントロールユニット800(以下、SCU800)とを備える。ガスセンサ1は、車両に搭載されて用いられるガスセンサを想定しており、例えば、排ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサである。
図1では、ガスセンサ1を軸線方向に沿って切断した断面図によってガスセンサ1を示している。
【0020】
ガスセンサ1は、主体金具5と、セラミックスリーブ9と、絶縁コンタクト部材13と、5個(
図1には2個のみ図示)の接続端子15と、外筒57と、グロメット61と、プロテクタ55と、ガスセンサ素子7と、を備えている。
【0021】
主体金具5は、ガスセンサ1をエンジンの排気管に固定するためのネジ部3を外表面に有する。また、主体金具5は、軸線方向に貫通する貫通孔37を有するとともに、貫通孔37の径方向内側に突出する棚部39を有する筒状に構成されている。この主体金具5は、後述するガスセンサ素子7のガス導入部94を貫通孔37の先端よりも先端側に配置し、ガスセンサ素子7の電極パッド25,27,29,31,33を貫通孔37の後端よりも後端側に配置する状態で、貫通孔37に挿通されたガスセンサ素子7を保持するよう構成されている。なお、軸線方向は、ガスセンサ1の長手方向であり、
図1の上下方向である。また、先端側は
図1における下側であり、後端側は
図1における上側である。
【0022】
また、主体金具5の貫通孔37の内部には、ガスセンサ素子7の径方向周囲を取り囲む状態で、環状形状のセラミックホルダ41、滑石リング43、滑石リング45、及びセラミックスリーブ9が、この順に先端側から後端側にかけて積層されている。
【0023】
セラミックスリーブ9は、筒状に形成されており、ガスセンサ素子7の径方向周囲を取り囲むように配置される。このセラミックスリーブ9と主体金具5の後端部47との間には、加締パッキン49が配置される。一方、セラミックホルダ41と主体金具5の棚部39との間には、滑石リング43やセラミックホルダ41を保持するための金属ホルダ51が配置されている。主体金具5の後端部47は、加締パッキン49を介してセラミックスリーブ9を先端側に押し付けるように、加締められている。
【0024】
プロテクタ55は、円筒状の部材の二重構造となっている。各円筒状の部材は、複数の孔部を有する金属製(例えば、ステンレス)の部材である。プロテクタ55は、ガスセンサ素子7の主体金具5からの突出部分を覆うように、主体金具5の先端部53の外周に溶接等によって固定されている。
【0025】
外筒57は、円筒状に形成されており、主体金具5の後端側の外周に固定されている。絶縁コンタクト部材13は、筒状に形成されており、内部に軸線方向に貫通する挿通孔11を備える。絶縁コンタクト部材13は、挿通孔11の内壁面がガスセンサ素子7の後端部の周囲を取り囲むように、外筒57の内部に配置される。絶縁コンタクト部材13の外周には、突出部63が形成されており、突出部63は、保持部材65を介して外筒57に固定されている。
【0026】
5個の接続端子15は、それぞれ、ガスセンサ素子7と絶縁コンタクト部材13との間に配置される。5個の接続端子15は、ガスセンサ素子7の電極パッド25,27,29,31,33にそれぞれ電気的に接続されるとともに、SCU800からガスセンサ1の内部に配設されるリード線35にも電気的に接続されている。
【0027】
グロメット61は、外筒57の後端側の開口部に配置されている。グロメット61は、5本のリード線35が挿通される挿通孔59を備える。5本のリード線35は、第1端が接続端子15を介して電極パッド25,27,29,31,33とそれぞれ電気的に接続されるとともに、第2端がSCU800に接続される。
図1では、5本のリード線35のうちの3本を示している。
【0028】
ガスセンサ素子7は、軸線方向に延びる板状の素子である。
図2に示すように、ガスセンサ素子7は、軸線方向に延びる板状の素子部71と、同じく軸線方向に延びる板状のヒータ73と、素子部71及びヒータ73の先端側を覆う保護層17と、を備える。素子部71およびヒータ73の先端側は、測定対象となるガスに向けられる素子本体部70である。また、ガスセンサ素子7は、後端側の外表面のうち表裏の位置関係となる第1主面21および第2主面23に、電極パッド25,27,29,31,33が形成されている。ガスセンサ素子7の構成の詳細は後述する。
【0029】
センサコントロールユニット800(以下、SCU800)は、CPU、ROM、RAM等を備えたマイクロコンピュータを主体として構成された制御装置である。SCU800は、ガスセンサ1の濃度検出処理やヒータ73の通電制御を含む各種処理を実行する。
【0030】
<2.ガスセンサ素子>
次に、ガスセンサ素子7の構成について、
図2~
図5を参照して説明する。ガスセンサ素子7は、板状の素子部71と板状のヒータ73とが積層された積層体72と、保護層17と、を備える、長尺の略直方体形状の板材である。ガスセンサ素子7の後端側(
図2の上方)には、C面取り部131が形成されている。C面取り部131は、ガスセンサ素子7の後端面の周囲四方の稜線に対して、C面取りを施すことによって形成されている。ガスセンサ素子の後端面は、ガスセンサ素子の長手方向と垂直な面である。
【0031】
ここで、各図において、ガスセンサ素子7の長手方向をY軸方向、長手方向に垂直な積層方向をZ軸方向、長手方向及び積層方向に垂直な幅方向をX軸方向とする。ガスセンサ素子7において、素子部71は、積層方向の一方の側に配置されており、ヒータ73は、素子部71の反対側に配置されている。
【0032】
素子部71は、酸素濃度検出セル81及び酸素ポンプセル89の二つのセルと、これら二つのセルの間に積層され、中空のガス測定室を形成するための絶縁スペーサ93と、を備えている。
【0033】
酸素濃度検出セル81は、酸素ポンプセル89よりもヒータ73に近い側に形成されており、第1固体電解質体75と、一対の電極である第1電極79及び第2電極77と、を備える。酸素ポンプセル89は、第2固体電解質体83と、一対の電極である第3電極87及び第4電極85と、を備える。第1及び第2固体電解質体75,83は、イットリアを安定化剤として固溶させたジルコニアから、長手方向に延びる板形状に形成されている。
【0034】
第1電極79、第2電極77、第3電極87、及び第4電極85は、Ptを主体として形成された多孔質電極である。第1電極79及び第2電極77は、第1固体電解質体75の先端部分の両面に設けられており、第1電極79はヒータ73に近い側の面に設けられており、第2電極77はヒータ73に遠い側の面に設けられている。また、第3電極87と第4電極85は、第2固体電解質体83の両面に設けられており、第3電極87はヒータ73に近い側の面に設けられており、第4電極85はヒータ73に遠い側の面に設けられている。
【0035】
また、ガス測定室91を形成する絶縁スペーサ93は、アルミナを主体に形成されており、中空のガス測定室91の内側には、酸素濃度検出セル81の第2電極77と、酸素ポンプセル89の第3電極87が露出するように配置されている。
【0036】
絶縁スペーサ93の側面、つまり素子部71の側面には、排ガスの取り込み口となる2つのガス導入部94が形成されている。ガス導入部94は、ガス測定室91に連通している。2つのガス導入部94からガス測定室91までの各経路には、拡散律速部95が形成されている。拡散律速部95は、例えば、アルミナ等からなる多孔質体で構成されており、測定対象ガスがガス測定室91へ流入する際の律速を行う。拡散律速部95は、その一部がガス導入部94から露出する状態で備えられている。つまり、このガスセンサ素子7においては、ガス導入部94は、素子本体部70の最外面において異なる2方向に向けて形成されており、拡散律速部95は、異なる2方向に向けて露出している。
【0037】
素子部71の第1主面21側にはアルミナを主体とする絶縁基板97が積層されており、この絶縁基板97には、拡散律速部95と同様に、多孔質体で構成された通気部99が形成されている。この通気部99は、酸素ポンプセル89の駆動により移動する酸素を通過させるために使用される。
【0038】
ガス測定室91は、素子部71のうち先端側の素子本体部70に位置するように形成されており、酸素濃度検出セル81及び酸素ポンプセル89は、ガス測定室91に面しており、酸素を検出するためのガス検出部として備えられる。
【0039】
保護層17は、多孔質状のアルミナで構成されており、素子本体部70の最外面を覆うように形成されている。具体的には、保護層17は、拡散律速部95よりも拡散抵抗が小さい多孔質材料で構成されている。このような構成のガスセンサ素子7においては、排ガスは、保護層17を介してガス導入部94に到達し、ガス導入部94から拡散律速部95を介してガス測定室91に導入される。
【0040】
ヒータ73は、アルミナを主体とする緻密層である絶縁基板101、103の間に、Ptを主体とする発熱抵抗体パターン105が挟み込まれて形成されており、酸素濃度検出セル81及び酸素ポンプセル89を活性化温度まで加熱する。絶縁基板101,103が、発熱抵抗体パターン105の上下を挟むように発熱抵抗体パターン105を包みこんでいるため、発熱抵抗体パターン105からの熱が速やかに酸素濃度検出セル81及び酸素ポンプセル89へ伝わる。
【0041】
また、ヒータ73は、SCU800によって通電制御が行われる。本実施形態では、ヒータ73は、素子部71の温度が一定となるように、PWM制御される。すなわち、SCU80は、所定の周期におけるオン期間とオフ期間の割合が所定のデューティ比となるように、ヒータ73の通電を制御する。
【0042】
発熱抵抗体パターン105は、
図5に示すように、先端側に設けられた複数の直線部105aと、複数の直線部105aの後端から後端側へ延びたヒータリード部と、を備える。本実施形態では、発熱抵抗体パターン105は、4本の直線部105aを備える。発熱抵抗体パターン105のうち、発熱するのは複数の直線部105aである。複数の直線部105aは、積層方向において、複数の直線部105a、酸素濃度検出セル81、ガス測定室91、及び酸素ポンプセル89がこの順番で重なるように、素子本体部70に設けられている。
【0043】
また、積層体72は、発熱抵抗体パターン105の複数の直線部105aと酸素濃度検出セル81の第1電極79との間に設けられた断熱部18を備える。断熱部18は、ヒータ73の素子部71側の絶縁基板101において、第1電極79と重なる部分に設けられた凹部に形成されている。つまり、断熱部18は複数の直線部105aに直に接してはおらず、断熱部18と複数の直線部105aとの間に絶縁基板101が挟まれている。また、断熱部18は、ガスセンサ素子7の幅方向において、複数の直線部105aのうちの少なくとも2本を跨ぐように設けられている。
【0044】
断熱部18は、凹部に形成される空間でもよいし、凹部に埋め込まれた多孔質部材でもよいし、凹部に埋め込まれた緻密部材でもよい。断熱部18を多孔質部材とした場合、多孔質部材としては、断熱部18の周囲の絶縁基板103よりも気孔率の高い多孔質部材、例えば、気孔径0.7μm、気孔率約45%の多孔質部材を採用できる。また、断熱部18を緻密部材とした場合、緻密部材としては、断熱部18の周囲の絶縁基板101よりも熱伝導率が低い緻密部材を採用できる。
【0045】
断熱部18は、積層体72の内部に埋め込まれており、積層体72から露出していない。すなわち、積層方向から見たときに、絶縁基板101は、断熱部18の周囲に連続して形成されている。絶縁基板101は、断熱部18よりも熱伝導率が高い部材である。具体的には、絶縁基板101は、断熱部18である空間又は多孔質部材又は緻密部材を形成する物質よりも熱伝導率が高い物質で形成された部材でもよいし、断熱部18である多孔質部材又は緻密部材と気孔率及び/又は気孔径が異なることによって、断熱部18よりも熱伝導率が高い部材でもよい。
【0046】
よって、直線部105aから酸素濃度検出セル81への熱の伝導経路が、直線部105aから酸素濃度検出セル81へ向かう直線的な経路ではなく、断熱部18を迂回して回り込むような経路となる。そのため、直線部105aから第1電極79へ伝わる熱量と第2電極77へ伝わる熱量と差が抑制される。さらに、断熱部18が積層体72の外部に露出していないため、断熱部18の一部が外部に露出している場合と比べて、熱の伝導経路が多く形成される。また、断熱部18が複数の直線部105aのうちの少なくとも2本を跨ぐように設けられていることにより、複数の熱源から酸素濃度検出セル81へ熱が伝わるため、直線部105aから第1電極79へ伝わる熱量と第2電極77へ伝わる熱量との差を抑制し、熱起電力の発生を抑制しつつ、より効果的に酸素濃度検出セル81を加熱することができる。
【0047】
また、積層体72は、断熱部18と第1電極79とに挟まれたセラミック製の絶縁基板102を備える。詳しくは、絶縁基板102は、絶縁基板101と第1固体電解質体75との間に設けられており、第1電極79は絶縁基板102に埋め込まれている。よって、第1電極79は断熱部18に直に接してはおらず、第1電極79と断熱部18との間に絶縁基板102が挟まれている。絶縁基板102は、断熱部18よりも熱伝導率が高い部材である。このように、第1電極79と断熱部18との間に、断熱部18よりも熱伝導率が高い絶縁基板102が挟まれていることにより、直線部105aから断熱部18を迂回して伝達された熱は、絶縁基板102の部分で軸線方向へ広がり、酸素濃度検出セル81へ効率的に伝えられる。
【0048】
ここで、
図6に示す従来のガスセンサ素子は、ヒータH11と第1セルC11と第2セルC12とを備え、断熱部を備えていない。第1セルC11は、ヒータH11に近い側の電極Vs+とヒータH11に遠い側の電極Vs-とを備える。従来のガスセンサ素子は、断熱部を備えていないため、断熱部を備えている場合と比べて、電極Vs+と電極Vs-とに伝わる熱量の差が大きくなり、電極Vs+と電極Vs-の温度差が大きくなる。その結果、電極Vs+と電極Vs-との間に、ゼーベック効果によって熱起電力が生じる。
【0049】
図7に示すように、電極Vs+と電極Vs-との温度差によって生じる熱起電力は、起電力Vsの変動量ΔVsに寄与するノイズ成分となる。起電力Vsに対する他のノイズ成分は、ヒータ73の通電のオンオフの切り替えに伴う電磁誘導とホワイトノイズがある。これらのノイズ成分の中でも、熱起電力に伴う出力変動は大きく常時発生するため、電極Vs+と電極Vs-との温度差が大きいと、ガスセンサのセンサ出力が不安定になる可能性がある。これに対して、本実施形態のガスセンサ素子7は断熱部18を備えているため、熱起電力による出力変動が抑制され、ガスセンサ1のセンサ出力は安定しやすい。
【0050】
<3.断熱部の大きさ>
次に、断熱部18の大きさとノイズの低減効果について説明する。ここでは、断熱部18の積層方向の厚みと軸線方向の長さ、すなわち、断熱部18のz方向の厚みとy方向の長さを一定にし、断熱部18の幅すなわちx方向の長さを3通りに変化させて、ノイズの低減効果を比較した。
【0051】
具体的には、(i)
図8及び
図11に示すように、断熱部18の幅を第1電極79の幅よりも小さくする。(ii)
図9及び
図12に示すように、断熱部18の幅を第1電極79の幅と等しくする。(iii)
図10及び
図13に示すように、断熱部18の幅を第1電極79の幅よりも大きくする。(i)の場合は、断熱部18の積層方向に垂直な面の面積(以下、断熱部断面積)が、第1電極79の発熱抵抗体パターン105の直線部105aに向く面の面積(以下、第1電極面積)、つまり、断熱部18に対向する面の面積よりも小さくなる。(ii)の場合、断熱部断面積と第1電極面積は等しくなる。(iii)の場合、断熱部断面積は第1電極面積よりも大きくなる。
【0052】
図14に、断熱部18なし、断熱部18を空間とした(i)~(iii)の場合、断熱部18を多孔質材とした(i)~(iii)の場合における、ノイズの有無、ノイズの低減率を示す。ノイズの有無は、×、△、○、◎の順で後になるほどノイズが少ないことを示す。ノイズの低減率は、断熱部18なしとした場合と比較して、どの程度ノイズが低減したかを示す数値である。
【0053】
図14に示すように、断熱部18がない場合と比べて、断熱部18を空間及び多孔質材のどちらにした場合も、ノイズ低減効果が得られているが、断熱部18を空間にした場合に、特にノイズ低減効果が高いことがわかる。断熱部18を多孔質材とする場合は、気孔径を大きくする及び/又は気孔率を大きくすることで、ノイズ低減効果を、断熱部18を空間とした場合のノイズ低減効果に近づけることができる。
【0054】
また、断熱部18がない場合と比べて、断熱部18の大きさを(i)~(iii)のどれにした場合でも、ノイズ低減効果が得られることがわかる。そして、断熱部18の大きさを(i)とした場合と比べて、(ii)及び(iii)とした場合の方が、ノイズ低減効果が高くなっていることがわかる。よって、ノイズ低減効果を向上させるためには、断熱部断面積を第1電極面積以上とすることが望ましい。
【0055】
ただし、断熱部18の大きさを(ii)とした場合と(iii)とした場合とでは、ノイズ低減効果は略等しく、有意な差は見られない。また、断熱部18を空間又は多孔質材とする場合、断熱部18を大きくするほど、ガスセンサ素子7の強度が低下する。したがって、ノイズ低減効果及びガスセンサ素子7の強度の観点から、断熱部断面積は第1電極面積と等しくすることが最も望ましい。
【0056】
<4.効果>
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)断熱部18を備えることにより、直線部105aから酸素濃度検出セル81への熱の伝導経路が、直線的な経路ではなく、断熱部18を迂回して回り込むような経路となる。これにより、直線部105aから第1電極79へ伝わる熱量と第2電極77へ伝わる熱量との差が抑制され、第1電極79と第2電極77の電極間の温度差を抑制することができる。さらに、断熱部18は、積層体72の外部に露出していないため、断熱部18の一部が外部に露出している場合と比べて、熱の伝導経路が多く形成される。よって、直線部105aから酸素濃度検出セル81へ効率的に熱を伝えることができる。ひいては、直線部105aから第1電極79へ伝わる熱量と第2電極77へ伝わる熱量の差を抑制しつつ、酸素濃度検出セル81の活性化の低下を抑制することができる。
【0057】
(2)第1電極79と断熱部18との間に断熱部18よりも熱伝導率が高い絶縁基板102が挟まれていることにより、第1電極79と断熱部18が接している場合よりも、直線部105aから酸素濃度検出セル81へより効率的に熱を伝えることができる。
【0058】
(3)断熱部18の断熱断面積を第1電極79の第1電極面積以上とすることで、第1電極79と第2電極77との電極間の温度差を好適に抑制することができる。
(4)ガスセンサ1は、ガスセンサ素子7を備えることにより、検出精度を向上させることができる。
【0059】
(5)ガス検出装置900は、ガスセンサ素子7を備えることにより、ヒータ73の通電をPWM制御する場合でも、センサ出力に対して加わるノイズを抑制して、検出精度を向上させることができる。
【0060】
<5.第1実施形態の変形例>
上述した第1実施形態では、積層体72は、断熱部18と第1電極79とに挟まれた絶縁基板102を備えていた。酸素濃度検出セル81への熱伝導の効率の観点からすると、積層体72は、絶縁基板102を備えている方が望ましいが、
図15に示すように、絶縁基板102を備えていなくてもよい。すなわち、第1電極79が断熱部18に直に接していてもよい。第1電極79が断熱部18に直に接していても、断熱部18を設けたことにより熱起電力を抑制して、出力変動を抑制することができる。
【0061】
<6.文言の対応関係>
ここで、文言の対応関係について説明する。
第1及び第2固体電解質体75,83が板状の固体電解質体に相当し、第1及び第2電極79,77と第3及び第4電極87,85が一対の電極に相当する。また、ヒータ73、複数の直線部105a、積層体72が、それぞれ板状のヒータ、発熱部、積層体に相当する。また、酸素濃度検出セル81及び酸素ポンプセル89が一つ以上のセルに相当し、酸素濃度検出セル81がヒータに最も近いセルに相当する。また、第1電極79、第2電極77、断熱部18、絶縁基板101、絶縁基板102が、それぞれ第1電極、第2電極、断熱部、熱伝導部、セラミック層に相当する。また、ガスセンサ素子7、ガスセンサ1、SCU800、ガス検出装置900が、それぞれガスセンサ素子、ガスセンサ、制御部、ガス検出装置に相当する。また、主体金具5と外筒57とプロテクタ55がハウジングに相当する。
【0062】
(第2実施形態)
<1.第1実施形態との相違点>
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0063】
前述した第1実施形態では、ガスセンサ素子7は2つのセルを備えていた。これに対し、第2実施形態では、ガスセンサ素子204が1つのセルしか備えていない点で、第1実施形態と相違する。
【0064】
ガスセンサ素子204は、
図16~
図18に示すように、遮蔽層312、拡散律速部315、酸素ポンプセル500、絶縁基板307、ヒータ400が積層された積層体350と、積層体350の先端側を覆う保護層330と、を備えている。積層体350の先端側は、測定対象となるガスに向けられる素子本体部501である。
【0065】
ヒータ400は、ヒータ73と同様に、軸線方向に延びる板状に形成されており、絶縁基板301と絶縁基板303で発熱抵抗体パターン105を挟んで構成されている。
酸素ポンプセル500は、酸素ポンプセル89と同様に、軸線方向に延びる板状に形成されており、固体電解質体309と、固体電解質体309の両面に形成された第5電極308と第6電極310と、を備える。第5電極308及び第6電極310は、ヒータ400の直線部105aに重なる様に、固体電解質体309の両面に設けられている。第5電極308は、固体電解質体309の長手方向に沿って延びる不図示のリード部を備えており、このリード部は、電極端子部321と電気的に接続されている。ガスセンサ素子204では、第5電極308と第6電極310との間に微小電流を流して、第5電極308を基準濃度に応じた基準電位にして用いる。
【0066】
また、素子本体部501は、排ガスを導入するためのガス導入部322を備える。素子本体部501は、その内部に、ガス導入部322を介して排ガスが導入されるガス測定室316を備えている。ガス測定室316は、第6電極310を覆うように、固体電解質体309の表面に設けられている。
【0067】
拡散律速部315は、アルミナから構成された多孔質材であり、ガス測定室316を覆うように、固体電解質体309の表面に設けられている。さらに、拡散律速部315の表面のうち固体電解質体309とは反対側の面には遮蔽層312が積層されている。また、拡散律速部315は、遮蔽層312及び固体電解質体309には接しない4つの側面が外部に露出している。拡散律速部315におけるこの露出部分が、ガスセンサ素子204の素子本体部501のうち排ガスを導入するためのガス導入部322となる。
【0068】
絶縁基板307は、ヒータ400と酸素ポンプセル500との間に設けられている。絶縁基板307は、絶縁性を有するセラミック焼結体であればとくに限定されるものではなく、例えば、アルミナやムライト等の酸化物系セラミックを採用することができる。
【0069】
また、絶縁基板307は、ヒータ400に近い側の第5電極308と対向する部分がくり抜かれており、くり抜かれた部分に断熱部325が形成されている。つまり、断熱部325は、発熱抵抗体パターン105の直線部105aと第5電極308との間に設けられており、直に第5電極308と接している。
【0070】
絶縁基板307は、断熱部325よりも熱伝導率が高い部材であり、積層方向から見たときに、断熱部325の周囲に連続して形成されている。すなわち、断熱部325は、積層体350に埋め込まれており、積層体350から露出していない。
【0071】
また、断熱部325は、断熱部18と同様に、空間でもよいし、周囲の絶縁基板307よりも気孔率の高い多孔質部材でもよいし、絶縁基板307よりも熱伝導率の低い緻密部材でもよい。また、断熱部325は、断熱部18と同様に、ガスセンサ素子204の幅方向において、複数の直線部105aのうちの少なくとも2本を跨ぐように設けられている。
【0072】
また、断熱部325の大きさは、断熱部18と同様に、断熱部断面積を、第5電極308の直線部105aに向く面積(以下、第5電極面積)以上にすることが望ましい。特に、断熱部18の断熱部段絵面積と第5電極面積を等しくすることが最も望ましい。
【0073】
また、断熱部325は、第5電極308に直に接しているが、断熱部18と第1電極79との間に絶縁基板102が設けられていたように、熱の伝導効率を上げるために、断熱部325と第5電極308との間に、断熱部325よりも熱伝導率が高く、絶縁基板307の熱伝導率以上の熱伝導率の絶縁基板が設けられていてもよい。
【0074】
保護層330は、多孔質材のアルミナで、素子本体部501の最外面を覆うように形成されている。具体的には、保護層330は、拡散律速部315よりも拡散抵抗が小さい多孔質材料で構成されている。このような構成のガスセンサ素子204においては、排ガスは、保護層330を介してガス導入部322に到達し、ガス導入部322から拡散律速部315を介してガス測定室316に導入される。
【0075】
以上説明した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1)~(5)と同様の効果を奏する。ただし、第1実施形態の酸素濃度検出セル81は、第2実施形態の酸素ポンプセル500に対応する。
【0076】
<2.文言の対応関係>
ここで、文言の対応関係について説明する。
固体電解質体309が板状の固体電解質体に相当し、第5及び第6電極308,310が一対の電極に相当する。また、ヒータ400、積層体350が、それぞれ板状のヒータ、積層体に相当する。また、酸素ポンプセル500が一つ以上のセル及びヒータに最も近いセルに相当する。また、ガスセンサ素子204がガスセンサ素子に相当する。また、第5電極308、第6電極310、断熱部325、絶縁基板307が、それぞれ第1電極、第2電極、断熱部、熱伝導部に相当する。
【0077】
(他の実施形態)
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0078】
(a)上記実施形態では、SCU800は、ヒータ73,400の通電をPWM制御していたが、PWM制御に限定されるものではなく、例えば、オンし続けてもよい。SCU800がヒータ73,400をPWM制御しない場合、熱起電力が発生すると、センサ出力はオフセットされる。
【0079】
(b)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0080】
1…ガスセンサ、5…主体金具、7,204…ガスセンサ素子、17,330…保護層、18,325…断熱部、55…プロテクタ、57…外筒、70,501…素子本体部、71…素子部、72,350…積層体、73,400…ヒータ、75…第1固体電解質体、77…第2電極、79…第1電極、81…酸素濃度検出セル、83…第2固体電解質体、85…第4電極、87…第3電極、89,500…酸素ポンプセル、91,316…ガス測定室、94,322…ガス導入部、95,315…拡散律速部、97,101,102,103,301,303,307…絶縁基板、105…発熱抵抗体パターン、105a…直線部、308…第5電極、309…固体電解質体、310…第6電極、800…センサコントロールユニット、900…ガス検出装置。