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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】気腹装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20220201BHJP
【FI】
A61B17/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018019318
(22)【出願日】2018-02-06
(65)【公開番号】P2019136127
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】山岡 弘治
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 侑磨
(72)【発明者】
【氏名】上杉 武文
(72)【発明者】
【氏名】平賀 都敏
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 真也
(72)【発明者】
【氏名】木村 敬太
(72)【発明者】
【氏名】山本 紗知恵
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 幸太
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-303654(JP,A)
【文献】特開2006-026313(JP,A)
【文献】特開2014-176696(JP,A)
【文献】特表2005-507724(JP,A)
【文献】特開2009-131467(JP,A)
【文献】特開2010-061570(JP,A)
【文献】特開2010-148964(JP,A)
【文献】特開2015-009113(JP,A)
【文献】特開2015-043135(JP,A)
【文献】特開2016-209461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61B 1/04
G06F 3/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の気体を送気する送気源に連通して、患者の体腔へ送気管路を介して前記気体を供給する気腹装置において、
前記気体の送気流量を測定する流量測定部と、
前記送気管路に接続され、前記気体の送気圧力を測定する送気圧測定部と、
前記送気管路に接続され、前記患者の体腔内圧を測定する体腔圧測定部と、
前記送気流量と、前記送気圧力と、前記体腔内圧とを表示する表示部と、
前記送気圧力の測定値と前記体腔内圧の測定値とを、それぞれ、予め設定された所定の閾値と定期的に比較し、異常状態を検出する判断部と、
前記判断部が、前記送気圧測定値が前記所定の閾値以下となる第1の異常状態または前記体腔圧測定値が前記所定の閾値以上となる第2の異常状態であることを検出した場合には、前記表示部において、前記送気流量の測定値を表示する送気流量表示領域と、前記送気圧力の測定値を表示する送気圧表示領域と、前記体腔内圧の測定値を表示する体腔内圧表示領域とのいずれにも重畳しない領域に、前記第1の異常状態または前記第2の異常状態であることを示すメッセージを通常表示に重畳させて表示する表示制御部と、
を有することを特徴とする気腹装置。
【請求項2】
前記体腔内圧表示領域にはレベルメータが配置されており、前記体腔内圧の測定値が前記レベルメータによって示されていることを特徴とする、請求項1に記載の気腹装置。
【請求項3】
前記体腔内圧の設定値が、前記レベルメータに表示されていることを特徴とする、請求項2に記載の気腹装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記送気流量表示領域と、前記送気圧表示領域と、前記体腔内圧表示領域との大きさや位置に応じて、前記異常状態を示すメッセージの表示領域を制御することを特徴とする、請求項1に記載の気腹装置。
【請求項5】
前記判断部は、前記送気圧力の測定値が、対応する前記閾値以下である場合、または、前記体腔内圧の測定値が、対応する前記閾値以上である場合に、異常状態であると判断することを特徴とする、請求項1に記載の気腹装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、内視鏡手術において、腹腔内及び管腔内などに気体を供給する気腹装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、患者への侵襲を小さくする目的で、開腹することなく、治療処置を行う腹腔鏡下外科手術が行われている。この腹腔鏡下外科手術においては、患者の腹部に、例えば観察用の内視鏡を体腔内に導く第1のトラカールと、処置具を処置部位に導く第2のトラカールとが穿刺される。この腹腔鏡下外科手術では、第1のトラカールの挿通孔を介して腹腔内に挿入された内視鏡を用いて、処置部位と第2のトラカールの挿通孔を介して挿入された処置具を観察しながら処置等が行われる。
【0003】
このような腹腔鏡下外科手術においては、内視鏡の視野を確保する目的及び処置具を操作するための領域を確保する目的で、気腹装置が用いられている。気腹装置は、体腔内に気腹用気体として例えば二酸化炭素ガスなどを注入して腔内を一定の圧力に拡張し、内視鏡の視野や処置具の操作領域を確保する。
【0004】
気腹装置のフロントパネルには、操作情報を入力するための設定機能や、該設定値や各種計測値などを表示する表示機能が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-245772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
気腹に係わる各種計測値の中でも、特に、ユーザの安全性に係わる数値(ガスの供給圧、送気流量、体腔内圧)は、常にユーザに見えるようにフロントパネルに表示させる必要がある。また、安全に係わる異常状態が検出された場合には、該異常状態をユーザに迅速に通知する必要がある。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された気腹装置では、異常状態の通知をどのように行うかといった記述はなく、安全性に関する数値と異常状態を同時にユーザが認識できるかどうか不明であった。
【0008】
そこで、本発明は、異常状態が検出された場合において、安全性に関する数値は表示させたまま、異常状態もあわせてフロントパネルに表示し通知することができる気腹装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の気腹装置は、所定の気体を送気する送気源に連通して、患者の体腔へ送気管路を介して前記気体を供給する気腹装置であって、前記気体の送気流量を測定する流量測定部と、前記送気管路に接続され、前記気体の送気圧力を測定する送気圧測定部と、前記送気管路に接続され、前記患者の体腔内圧を測定する体腔圧測定部と、前記送気流量と、前記送気圧力と、前記体腔内圧とを表示する表示部と、前記送気圧力の測定値と前記体腔内圧の測定値とを、それぞれ、予め設定された所定の閾値と定期的に比較し、異常状態を検出する判断部と、前記判断部が、前記送気圧測定値が前記所定の閾値以下となる第1の異常状態または前記体腔圧測定値が前記所定の閾値以上となる第2の異常状態であることを検出した場合には、前記表示部において、前記送気流量の測定値を表示する送気流量表示領域と、前記送気圧力の測定値を表示する送気圧表示領域と、前記体腔内圧の測定値を表示する体腔内圧表示領域とのいずれにも重畳しない領域に、前記第1の異常状態または前記第2の異常状態であることを示すメッセージを通常表示に重畳させて表示する表示制御部とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の気腹装置によれば、異常状態が検出された場合において、安全性に関する数値は表示させたまま、異常状態もあわせてフロントパネルに表示し通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係わる気腹装置1の全体構成の一例を説明する図。
図2】装置起動画面の一例を説明する図。
図3】腔モード選択画面の一例を説明する図。
図4】通常動作時における表示画面の一例を説明する図。
図5】異常発生時における表示画面の一例を説明する図。
図6】異常発生時における表示画面の別の一例を説明する図。
図7】通常動作時における表示画面の別の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係わる気腹装置1の全体構成の一例を説明する図である。図1に示すように、本実施形態の気腹装置1内には、減圧器2と、電空比例弁3と、流量調整弁4と、流量センサ5と、供給圧センサ8と、管腔圧センサ9a、9bと、制御部6と、表示部7とが主に設けられている。
【0014】
気腹装置1には、高圧ガス用チューブ10を介して、ガス供給源11(例えば、炭酸ガスボンベ)が接続されている。また、気腹装置1には、患者12の腹腔13に挿入されたトラカール14を介して体腔内に炭酸ガスなどの気腹用ガスを送気するための、送気管路としての送気チューブ15が接続されている。
【0015】
減圧器2は、ガス供給源11から供給される高圧のガスを、人体に危険のない程度の圧力にまで減圧する。例えば、ガス供給源11から6MPa程度の高圧で供給されるガスを、50~80mmHg程度にまで減圧する。
【0016】
電空比例弁3は、電気駆動弁の一種で、弁部に作用する減圧ばねの力を変化させることにより弁部の開度を電気的に多段階調整することで、送気圧を所定の圧力値に調整できるように構成されている。制御部6から入力される制御信号に基づいて、減圧器2で減圧された炭酸ガスの圧力を、0~80mmHg程度の範囲内の送気圧に変化させる。
【0017】
流量調整弁4は電気駆動弁の一種で、弁部の開度を電気的に多段階調整できるように構成されている。制御部6から入力される制御信号に基づいて、送気管路内を流れる気体の流量を調整することができる。
【0018】
送気圧測定部としての供給圧センサ8は、送気管路内の圧力を測定する。圧力の測定は、ガス供給時行われる。ガス供給源11から供給されているガスの圧力を計測し、測定結果を制御部6へ出力する。
【0019】
体腔圧測定部としての管腔圧センサ9a、9bは、送気チューブ15を介して腹腔13の圧力を測定する。圧力の測定は、送気停止中に行われる。管腔圧センサ9a、9bでの測定結果は、制御部6へ出力される。なお、本実施形態の気腹装置1は、高圧測定用の管腔圧センサ9aと低圧測定用の管腔圧センサ9bの2種類の管腔圧センサが設けてあるが、いずれか一種類のみでもよい。
【0020】
流量測定部としての流量センサ5は、体腔内に供給される炭酸ガスの流量を測定し、測定結果を制御部6へ出力する。
【0021】
送気チューブ15は、気腹装置1から送出されたガスをトラカール14へと導くチューブである。一般的に、柔軟性を有する材質で形成されており、約3m程度の長さを有する。
【0022】
判断部、及び、表示制御部としての制御部6は、気腹装置1内の各構成部位の制御を行う。制御部6は、メモリ61と、アナログ/デジタル変換器(以下、A/Dと示す)62と、CPU63と、デジタル/アナログ変換器(以下、D/Aと示す)64とから主に構成されている。
【0023】
メモリ61は、供給圧、管腔圧、流量などの各種設定値や、異常状態を検知するための閾値(供給圧下限値、管腔圧上限値)を格納している。また、表示部7に表示させる画面のパターンや、警告メッセージの表示パターンなど、画面に関する各種情報も格納している。
【0024】
A/D62は、供給圧センサ8、管腔圧センサ9a、9b、流量センサ5、の各センサで測定されたデータ(アナログ値)を読み込み、デジタル値に変換して、CPU63へ出力する。
【0025】
CPU63は、メモリ61に格納されている各種設定値を読み込み、A/D62から入力された測定データと照らし合わせる。照合の結果に基づき、供給圧と流量とが最適値になるように、電空比例弁3や流量調整弁4の開度を設定する。設定値は、D/A64に出力される。また、メモリ61に格納されている異常検知用の閾値を読み込み、A/D62から入力された測定データと照らし合わせる。測定データが閾値を超えた場合に、表示部7に異常状態を通知するメッセージを表示させる。
【0026】
更に、メモリ61から表示部7に表示させる画面パターンを読み込み、同パターンに従って、A/D62から入力された測定データを表示画面上の適切な位置に配置する。異常状態を通知するメッセージを表示部7に表示させる場合、メモリ61から読み込んだ画面パターンに従って、該メッセージを表示画面上の適切な位置に配置する。
【0027】
D/A64は、CPU63からの入力された設定値に従って、電空比例弁3と流量調整弁4の開度を制御する。
【0028】
表示部7は、気腹装置1のフロントパネルに設けられており、CPU63からの指示に従って適切な画面を表示する。通常、フロントパネルはタッチパネル方式でユーザからの入力が可能になされている。ユーザから入力された内容は、表示部7からCPU63に出力される。CPU63は入力された内容に応じて表示部7に表示させる画面を変更したり、メモリ61に格納されている各種設定値を変更したりする。
【0029】
次に、本実施形態の気腹装置1において、表示部7に表示される画面について説明する。図2から図5は、表示部7に表示される画面の一連の遷移を示している。具体的には、図2は、装置起動画面の一例を示している。図3は、腔モード選択画面の一例を示している。また、図4は、通常動作時における表示画面の一例であり、図5は、異常発生時における表示画面の一例を示している。
【0030】
図2に示す装置起動画面21は、気腹装置1に電源を投入して起動すると、表示部7に最初に表示される画面である。例えば、気腹装置1の製造メーカーのロゴや、メーカー名、気腹装置1の商品名などが、画面の略中央に表示される。
【0031】
装置起動画面21が表示され装置の各部位が初期化されると、続表示画面には、図3に示すような、腔モード選択画面31が表示される。気腹装置1は、術部に気腹用気体(例えば二酸化炭素ガス)などを注入して腔内を一定の圧力に拡張し、内視鏡の視野や処置具の操作領域を確保する。従って、手術対象部位の容積に応じて、送気容量を適切に制御する必要がある。例えば、成人の腹腔を気腹する場合は、腔内に十リットル以上の気体を送気する必要があるが、小児の腹腔気腹する場合は、数リットルの気体を送気すればよい。更に、直腸を気腹する場合は、数十~数百ミリリットルの気体を送気しればよい。
【0032】
従って、気腹する部位の容積に応じ、送気流量やターゲットの腔圧が適切な値に制御された動作モード(腔モード)を予め何種類が設定しておき、装置の使用に際してユーザに選択させることで、気腹対象部位を安全かつ迅速に拡張することができる。
【0033】
例えば、気腹装置1に、(a)成人の腹腔を気腹する場合など、比較的大きな容量を有する部位を拡張する際の動作モード(=標準モード)、(b)小児の腹腔を気腹する場合など、標準モードの半分以下程度の比較的小さな容量を有する部位を拡張する際の動作モード(=小モード)、(c)直腸など、標準モードの数十分の一程度の小さな容量を有する部位を拡張する際の動作モード(=極小モード)、の3つの動作モードが予め設定されている場合、図3に示す腔モード選択画面31では、標準モード選択ボタン32、小モード選択ボタン33、極小モード選択ボタン34、の3つの動作モード選択ボタンが配置される。
【0034】
ユーザは、気腹する部位の容量に応じて、上記三つの選択ボタン32、33、34から適切なボタンをひとつ押下する。すると、押下された選択ボタンに登録されている動作モードに対応した供給圧、管腔圧、流量などの各種設定値が、メモリ61からCPU62に読み込まれ、D/A64を介して電空比例弁3や流量調整弁4の開度が制御される。
【0035】
なお、腔モードは、上述した3つの動作モードに限定されない。4つ以上のモードを設定してもよいし、2つのモード(例えば、標準と極小)としてもよい。
【0036】
腔モードが選択されて気腹装置1内の各部位の設定が終了すると、気腹装置1は気腹可能なスタンバイ状態になる。気腹装置1あるいはフロントパネル上に配置された、図示しない送気開始ボタン等を操作することで、体腔内への送気が開始される。送気中は、図4に示すような通常動作表示画面41が、表示部7に表示される。
【0037】
図4に示すように、通常動作表示画面41には、供給圧表示領域42と、管腔圧表示領域43と、流量表示領域44の各表示領域が設けられている。
【0038】
画面左上部に設けられている供給圧表示領域42には、供給圧センサ8で計測された圧力値(供給圧)が、例えば、レベルメータの形式で表示される。表示形式は、レベルメータに限定されず、例えば、測定値をそのまま数字で表示させるようにしてもよい。
【0039】
管腔圧表示領域43には、管腔圧表示部431と、管腔圧設定部432とが配置されている。管腔圧表示部431は、管腔圧センサ9a、9bで計測された圧力値(管腔圧)の平均値が数字で表示されると共に、アナログメータ形式でも表示される。アナログメータは、0mmHgから始まり管腔圧上限値をフルスケールとし、管腔圧設定値の位置に針を表示する。また、アナログメータの針が表示されている目盛り位置に管腔圧設定値を数値表示する。そして、管腔圧センサ9a、9bで計測された圧力値(管腔圧)の平均値に該当する位置まで、メータの色を変えて表示している(図4,図5における、網掛け表記部分)。更に、アナログメータの上部に、管腔圧センサ9a、9bで計測された圧力値(管腔圧)の平均値の数字表示を行う。なお、通常、管腔圧上限値には、管腔圧設定値に5を足した数値が自動的に設定されるが、他のロジックを用いて設定してもよいし、手動で設定してもよい。
【0040】
図4、管腔圧上限値が20mmHg、管腔圧設定値が15mmHg、管腔圧センサ9a、9bで計測された圧力値(管腔圧)の平均値が13mmHgの場合の表示例を示している。図4示すように、数字表示とアナログメータ形式での表示を併用することで、管腔圧上限値、管腔圧設定値、現在の管腔圧値の大小関係が直感的に視認されるため、ユーザの操作性が向上する。
【0041】
管腔圧設定部432は、管腔圧モードを設定するコンボボックス433と、管腔圧設定値表示部434と、管腔圧設定ボタン435とが配置されている。管腔圧モードは、気腹対象の腔の容量や術式などに応じて予め設定されたモードであり、例えば、標準、低圧、高圧、の3つのモードが用意されている。各モードに対応した管腔圧設定値がメモリ61に登録されており、コンボボックスを操作して管腔圧モードを変更すると、変更後の管腔圧モードに対応づけて登録されている管腔圧設定値がメモリ61から読みだされ、管腔圧設定値表示部434に表示される。
【0042】
管腔圧設定ボタン435は、管腔圧設定値を数値指定するのに用いられるボタンであり、管腔圧設定ボタン435の「+」を押下すると管腔圧設定値が増加し、「-」を押下すると、管腔圧設定値が減少する。管腔圧設定値表示部434には、コンボボックス433、または、管腔圧設定ボタン435を用いて設定された、圧力の数値が表示される。
【0043】
流量表示領域44には、流量モードを設定するコンボボックス441と、流量表示部442と、流量設定ボタン443とが配置されている。流量モードは、気腹対象の腔の容量や術式などに応じて予め設定されたモードであり、例えば、高、中、低、の3つのモードが用意されている。各モードに対応した流量設定値がメモリ61に登録されており、コンボボックスを操作して流量モードを変更すると、変更後の流量モードに対応づけて登録されている流量設定値がメモリ61から読みだされ、流量表示部442に表示される。
【0044】
流量表示部442は、流量センサ5で計測された気体流量の値が数字で表示されると共に、レベルメータ形式でも表示される。レベルメータは、0L/minから始まり流量設定値をフルスケールとし、流量センサ5で計測された流量値に該当する位置まで、メータの色を変えて表示している。数字表示とレベルメータ形式での表示を併用することで、流量設定値と現在の流量値との大小関係が直感的に視認されるため、ユーザの操作性が向上する。
【0045】
流量設定ボタン443は、流量設定値を数値指定するのに用いられるボタンである。流量設定ボタン443の「+」を押下すると流量設定値が増加し、「-」を押下すると、流量設定値が減少する。すなわち、流量表示部442のレベルメータのスケールは、コンボボックス441、または、流量設定ボタン443を用いて設定された、流量設定値に応じて変更される。
【0046】
また、通常動作表示画面41には、送気の開始/停止を制御する送気ボタン46、装置の各部位の設定を行う設定画面を呼び出すための設定ボタン47も設けられている。更に、気腹装置1の機能に応じた表示部や設定ボタンなどが適宜配置されている。例えば、排煙機能を有する気腹装置1であれば、排煙動作の実行/停止を指示する排煙ボタン45が配置される。
【0047】
通常動作表示画面41における、供給圧表示領域42、管腔圧表示領域43、流量表示領域44などの各表示領域や、送気ボタン46などの各種ボタンなどのパーツのレイアウト情報(各パーツを配置する位置情報)は、メモリ61に予め設定されている。通常動作表示画面41を表示部7に表示する場合、CPU63は、メモリ61に設定されたレイアウト情報を用いて、通常動作表示画面41に必要なパーツを配置し、表示部7に表示する。
【0048】
送気中、CPU63は、メモリ61に格納されている異常検知用の閾値を読み込み、A/D62から入力された測定データと照らし合わせる。測定データが閾値を超えた場合に、表示部7に異常状態を通知するメッセージを表示させる。すなわち、図5に示すような異常状態表示画面51を、表示部7に表示させる。具体的には、(a)供給圧測定値が供給圧下限値以下である場合、(b)管腔圧測定値が管腔圧上限値以上である場合、のいずれかの場合に該当すると、CPU63は、各異常状態に応じた警告メッセージを表示させる。
【0049】
図5に示すように、異常状態表示画面51は、通常動作表示画面41の所定位置に、警告表示部52が重畳されて構成されている。警告表示部52には、発生した異常状態を示すメッセージ(例えば、「加圧異常」など)が表示される。一般的に、異常状態が発生した場合、ユーザに異常状態を迅速に伝達するため、メッセージを表示して視覚から異常を認識させるとともに、アラーム音を発して聴覚からも異常を認識させる。このように、メッセージの表示と共にアラーム音を発する場合、アラーム音を消音ためのボタン521も警告表示部52に配置される。
警告表示部52は、供給圧表示領域42と、管腔圧表示領域43と、流量表示領域44の各表示領域に重畳しない領域に配置される。具体的には、通常動作表示画面41のレイアウト情報に基づき、通常動作表示画面41における、供給圧表示領域42と、管腔圧表示領域43と、流量表示領域44の各表示領域以外の領域を抽出する。抽出された領域において、警告表示部52を配置可能な領域を予め設定しておき、同配置領域に関するレイアウト情報をメモリ61に格納しておく。CPU63は、異常状態が発生すると、メモリ61に格納されているレイアウト情報を読み出し、同情報に基づき警告表示部52を通常動作表示画面41に重畳して表示させ、異常状態表示画面51を生成する。
【0050】
このように、供給圧表示領域42と、管腔圧表示領域43と、流量表示領域44の各表示領域以外の領域に警告表示部52を配置することで、ユーザの安全性に係わる数値(ガスの供給圧、送気流量、体腔内圧)は、常にユーザに見えるように表示することができる。従って、安全性に関する数値と異常状態とを同時にユーザが認識することができる。
【0051】
なお、警告表示部52を配置する位置は、図5に示すように、画面上部など特定の一箇所に限定されず、供給圧表示領域42と、管腔圧表示領域43と、流量表示領域44の各表示領域以外の領域であれば任意の位置でよい。例えば、図6に示すように、画面下部中央に配置してもよい。
【0052】
図6は、異常状態表示画面51´において警告表示部52を別の位置に配置した一例を示している。図5に示す異常状態表示画面51も、図6に示す異常状態表示画面51´も、ベースとなる通常動作表示画面41のレイアウトは同一である。通常動作表示画面41のレイアウトごとに、図5に示すような画面上部中央表示パターンや、図6に示すような画面下部中央表示パターンなど、警告表示部52の表示位置候補を複数パターン準備しておき、ユーザが図示しない設定画面などを用いて警告メッセージの表示位置を選択可能にしてもよい。
【0053】
なお、図6に示すように、送気ボタン46など、ユーザの安全性に係わる数値の表示領域外のパーツ(特に、ボタンなどの操作を入力するパーツ)に警告表示部52が重畳して表示されるレイアウトの場合、例えば、設定時間が経過すると警告表示部52を半透明にし、重畳されているパーツの入力操作を可能とするような構成にしてもよい。
【0054】
このように、本実施形態によれば、異常状態が発生した場合に、通常動作表示画面41の、供給圧表示領域42と、管腔圧表示領域43と、流量表示領域44の各表示領域以外の領域に警告表示部52を重畳して配置する。すなわち、異常状態が発生した場合にも、ユーザの安全性に係わる数値(ガスの供給圧、送気流量、体腔内圧)は、常にユーザに見えるように表示することができる。従って、異常状態が検出された場合において、安全性に関する数値は表示させたまま、異常状態もあわせてフロントパネルに表示し通知することができる。
【0055】
なお、上述の実施形態においては、通常動作表示画面41のレイアウトは、図5に示すレイアウトに限定されるものでなく、ユーザの安全性に係わる数値である、ガスの供給圧、送気流量、体腔内圧が画面内に表示されるレイアウトであれば、他のレイアウトでもよい。更に、供給圧表示領域42と、管腔圧表示領域43と、流量表示領域44の構成も、ユーザの安全性に係わる数値以外の項目は必須構成要素でなく、例えば、図7に示すように、管腔圧表示領域43´には管腔圧表示部431のみを配置し、管腔圧の設定は他の画面を呼び出して行うようにしてもよい。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として例示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1…気腹装置、2…減圧器、3…電空比例弁、4…流量調整弁、5…流量センサ、6…制御部、7…表示部、8…供給圧センサ、9a、9b…管腔圧センサ、10…高圧ガス用チューブ、11…ガス供給源、12…患者、13…腹腔、14…トラカール、15…送気チューブ、21…装置起動画面、31…腔モード選択画面、32…標準モード選択ボタン、33…小モード選択ボタン、34…極小モード選択ボタン、41…通常動作表示画面、42…供給圧表示領域、43…管腔圧表示領域、44…流量表示領域、45…排煙ボタン、46…送気ボタン、47…設定ボタン、51…異常状態表示画面、52…警告表示部、61…メモリ、62…A/D、63…CPU、64…D/A、431…管腔圧表示部、432…管腔圧設定部、433、441…コンボボックス、434…管腔圧設定値表示部、435…管腔圧設定ボタン、442…流量表示部、443…流量設定ボタン、521…ボタン、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7