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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】駅判定システム
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/02 20060101AFI20220201BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20220201BHJP
   G07B 15/00 20110101ALI20220201BHJP
【FI】
B61L25/02 G
B60L3/00 N
G07B15/00 K
G07B15/00 501
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018056566
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019166993
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】509335144
【氏名又は名称】株式会社JR西日本テクシア
(74)【代理人】
【識別番号】100113712
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】末廣 和弥
(72)【発明者】
【氏名】塩濱 和豊
(72)【発明者】
【氏名】潮田 圭志
(72)【発明者】
【氏名】天野 勝裕
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-186960(JP,A)
【文献】特開2014-162338(JP,A)
【文献】特開2003-242532(JP,A)
【文献】特開2007-264898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 25/02
B60L 3/00
G07B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道における自車両が到着した駅を判定する駅判定システムであって、
自車両の現在位置情報を取得するための複数系統の位置情報取得部と、
自車両のドアの開扉可否情報を出力する開扉情報部と、
前記現在位置情報と開扉可否情報に基づいて自車両が到着した駅を判定する駅判定演算装置と、
データが記憶される記憶部とを備え、
前記複数系統の位置情報取得部として、複数系統のGPS受信機と、車輪の回転を計測する速度発電機とを有し、
前記記憶部は、自車両が列車として運転される区間の列車系統番号マスタデータと、当該区間の路線マスタデータとが予め記憶されており、
前記列車系統番号マスタデータは、停車駅のデータを時系列順に有し、前記停車駅間の駅間距離のデータを時系列順にさらに有し、
前記路線マスタデータは、前記各停車駅の駅範囲の距離データを有し、前記各停車駅の座標のデータをさらに有し、
前記駅判定演算装置は、自車両が次に到着する停車駅である目的駅を前記列車系統番号マスタデータから取得し、その目的駅に対応する駅範囲を前記路線マスタデータから取得し、前記位置情報取得部により得られた現在位置情報が前記目的駅の駅範囲内であるとき、自車両が前記目的駅の駅範囲内にあると判定し、さらに前記開扉情報部から入力された開扉可否情報が開扉可能となった時、自車両がその目的駅に到着したと判定し、
自車両が前記目的駅の駅範囲内にあるとの前記判定において、
前記駅判定演算装置は、前記各系統のGPS受信機から取得される現在位置情報と前記目的駅の座標との間の距離を算出し、自車両が前記目的駅の駅範囲内にあるか否かを判定し、
その駅判定演算装置は、前記速度発電機が計測した車輪の回転に基づいて自車両の走行距離を算出し、その走行距離と前記駅間距離のデータに基づいて自車両が前記目的駅の駅範囲内にあるか否かを判定し、
前記各位置情報取得部を用いて行う前記判定は、互いに異なる優先度が設定されていることを特徴とする駅判定システム。
【請求項2】
前記駅判定演算装置は、現在位置情報が前記判定駅の駅範囲外となったとき、その判定駅を取消し、次に到着する停車駅である目的駅を前記列車系統番号マスタデータから取得することを特徴とする請求項1に記載の駅判定システム。
【請求項3】
前記駅判定演算装置は、前記複数系統の位置情報取得部のうち、使用する系統の位置情報取得部を指定可能に構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の駅判定システム。
【請求項4】
前記駅判定演算装置は、前記複数系統の位置情報取得部に対応して前記判定の結果が複数得られた場合、その判定結果が一致したとき、前記目的駅を判定された判定駅として採用することを特徴とする請求項3に記載の駅判定システム。
【請求項5】
前記複数の位置情報取得部に対応して前記判定の結果が複数得られ、それらの判定結果が一致しない場合、又は判定結果が得られなかった場合に報知する機能と、前記判定駅の入力操作を受け付ける機能とを有する係員操作部をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の駅判定システム。
【請求項6】
前記駅判定演算装置は、前記各系統のGPS受信機から取得される現在位置情報と前記目的駅の座標との間の距離として、大圏距離を算出することを特徴とする請求項1に記載の駅判定システム。
【請求項7】
前記駅判定演算装置は、自車両に搭載された所定の車載機及び、自編成に他の車両が連結されている場合は、その車両に前記判定駅を伝達することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の駅判定システム。
【請求項8】
前記所定の車載機は、車両搭載型のICカードを用いた出改札サービスを提供するためのIC改札機が含まれることを特徴とする請求項7に記載の駅判定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道における自車両が到着した駅を判定する駅判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道において、車両搭載型のICカード乗車券システムがある。車両搭載型のICカード乗車券システムは、自動での運賃計算や収受のためのICカード処理機を有する。ICカード処理機は、IC改札機等で構成される。従来から、IC改札機として、非接触型のICカードを用いた列車用自動改札機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この列車用自動改札機は、停車中の駅を検出する停車駅検出装置を有する(特許文献1の図1参照)。
【0003】
IC改札機等は、運賃計算等における駅設定を、車両が駅を発着する毎に正確に切り替える必要がある。そのために、自車両が到着した駅を正確に判定することが求められる。
【0004】
従来から、列車位置検出装置が知られている(特許文献2参照)。この列車位置検出装置は、GPS受信機と速度発電機を用いて位置を決定する。このような列車位置検出装置を用いて自車両が到着した駅を判定することが考えられる。しかしながら、GPSや速度発電機による位置判定は誤差を有するので、例えば、図4に示すように、列車がA001駅を出発した後、次に到着する停車駅がA002駅である場合、A002駅の近くに別の駅であるA003駅があると、到着した駅がA003駅であると誤って判定されるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-264899号公報
【文献】特開2013-244758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するものであり、自車両が到着した駅を正確に判定するシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の駅判定システムは、鉄道における自車両が到着した駅を判定するシステムであって、自車両の現在位置情報を取得するための位置情報取得部と、自車両のドアの開扉可否情報を出力する開扉情報部と、前記現在位置情報と開扉可否情報に基づいて自車両が到着した駅を判定する駅判定演算装置と、データが記憶される記憶部とを備え、前記記憶部は、自車両が列車として運転される区間の列車系統番号マスタデータと、当該区間の路線マスタデータとが予め記憶されており、前記列車系統番号マスタデータは、停車駅のデータを時系列順に有し、前記路線マスタデータは、前記各停車駅の駅範囲の距離データを有し、前記駅判定演算装置は、自車両が次に到着する停車駅である目的駅を前記列車系統番号マスタデータから取得し、その目的駅に対応する駅範囲を前記路線マスタデータから取得し、前記位置情報取得部により得られた現在位置情報が前記目的駅の駅範囲内であるとき、自車両が前記目的駅の駅範囲内にあると判定し、さらに前記開扉情報部から入力された開扉可否情報が開扉可能となった時、自車両がその目的駅に到着したと判定することを特徴とする。
【0008】
この駅判定システムにおいて、前記駅判定演算装置は、現在位置情報が前記判定駅の駅範囲外となったとき、その判定駅を取消し、次に到着する停車駅である目的駅を前記列車系統番号マスタデータから取得することが好ましい。
【0009】
この駅判定システムにおいて、前記位置情報取得部を複数系統有し、前記駅判定演算装置は、前記複数系統の位置情報取得部のうち、使用する系統の位置情報取得部を指定可能に構成されることが好ましい。
【0010】
この駅判定システムにおいて、前記駅判定演算装置は、前記複数系統の位置情報取得部に対応して前記判定の結果が複数得られた場合、その判定結果が一致したとき、前記目的駅を判定された判定駅として採用することが好ましい。
【0011】
この駅判定システムにおいて、前記複数の位置情報取得部に対応して前記判定の結果が複数得られ、それらの判定結果が一致しない場合に報知する機能と、前記判定駅の入力操作を受け付ける機能とを有する係員操作部をさらに備えることが好ましい。
【0012】
この駅判定システムにおいて、前記複数系統の位置情報取得部として、複数系統のGPS受信機と、車輪の回転を計測する速度発電機とを有し、前記路線マスタデータは、前記各停車駅の座標のデータをさらに有し、前記駅判定演算装置は、前記各系統のGPS受信機から取得される現在位置情報と前記目的駅の座標との間の距離を算出し、自車両が前記目的駅の駅範囲内にあるか否かを判定し、前記列車系統番号マスタデータは、前記停車駅間の駅間距離のデータを時系列順にさらに有し、前記駅判定演算装置は、前記速度発電機が計測した車輪の回転に基づいて自車両の走行距離を算出し、その走行距離と前記駅間距離のデータに基づいて自車両が前記目的駅の駅範囲内にあるか否かを判定することが好ましい。
【0013】
この駅判定システムにおいて、前記駅判定演算装置は、前記各系統のGPS受信機から取得される現在位置情報と前記目的駅の座標との間の距離として、大圏距離を算出することが好ましい。
【0014】
この駅判定システムにおいて、前記駅判定演算装置は、自車両に搭載された所定の車載機及び、自編成に他の車両が連結されている場合は、その車両に前記判定駅を伝達することが好ましい。
【0015】
この駅判定システムにおいて、前記所定の車載機は、車両搭載型のICカードを用いた出改札サービスを提供するためのIC改札機が含まれることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の駅判定システムによれば、駅判定演算装置は、自車両が次に到着する停車駅である目的駅を列車系統番号マスタデータから取得するので、次の停車駅が一つに限定され、その停車駅の近くに別の駅があっても、自車両が到着した駅を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る駅判定システムのブロック構成図。
図2】同システムにおけるGPSを使用した駅判定演算フロー図。
図3】同システムにおける速度発電機を使用した駅判定演算フロー図。
図4】駅配置の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る駅判定システムを図1乃至図3を参照して説明する。図1に示すように、駅判定システム1は、鉄道における自車両2が到着した駅を判定するシステムである。この駅判定システム1は、位置情報取得部3と、開扉情報部4と、駅判定演算装置5と、記憶部6とを備える。
【0019】
位置情報取得部3は、自車両2の現在位置情報を取得するための機器である。開扉情報部4は、自車両2のドアの開扉可否情報を出力する。駅判定演算装置5は、位置情報取得部3が取得した現在位置情報と、開扉情報部4が出力した開扉可否情報に基づいて、自車両2が到着した駅を判定する装置である。記憶部6は、データが記憶される。
【0020】
図2に示すように、記憶部6は、自車両2が列車として運転される区間の列車系統番号マスタデータ61と、当該区間の路線マスタデータ62とが予め記憶されている。列車系統番号マスタデータ61は、停車駅のデータ(A001、A002等)を時系列順に有する。路線マスタデータ62は、それらの各停車駅の駅範囲の距離データ(GL1、GL2等)を有する。
【0021】
駅判定システム1の各構成をさらに詳述する(図1参照)。車両2は、駅間を列車として運転される。駅判定システム1は、位置情報取得部3を複数系統有し、複数系統の位置情報取得部3として、本実施形態では、2系統のGPS受信機3a、3bと、車輪の回転を計測する速度発電機3cとを有する。GPS受信機3a、3bは、車両2に搭載され、少なくともアンテナを個別に有し、それぞれ自車両2の現在位置情報として緯度及び経度を取得する。速度発電機3cは、車輪の回転として、車軸の回転速度又は回転回数を計測する。速度発電機3cを使用する場合、現在位置情報は、自車両2の走行距離で表される。
【0022】
開扉情報部4は、本実施形態では、車両2の扉連動ランプ接点である。扉連動ランプ接点とは、車側灯の電気回路の接点である。車側灯は、ドアが開扉可能な時、運転台に向かって左右どちら側のドアが開扉可能かを表すランプである。扉連動ランプ接点は、必ずしもドアの実際の開閉状態を表す接点ではない。ドア接点は、各ドアの物理的な接点であり、ドアの実際の開閉状態を表す(図2参照)。ローカル線では、駅で旅客がボタン操作によってドアの開閉を行うことが多いため、このような構成になっている。
【0023】
駅判定演算装置5は、自車両2がどの駅に到着しているかを判定する駅判定演算を行う装置であり、CPU、メモリ、インターフェース等を有し、メモリに保存されたプログラムを実行することによって機能する。本実施形態では、駅判定演算装置5は、編成内の自車両2と他の車両21との間で情報を中継する機能も有し、中継装置とも呼ばれる。
【0024】
本実施形態では、車両2は、車両21と連結されて編成を構成している。車両2は、駅判定演算装置5を有し、主系車両と呼ばれる。車両21は、従系車両と呼ばれ、中継装置51を有する。従系車両が複数あってもよい。中継装置51は、編成内の車両2と車両21との間で情報を中継する機能を有する。
【0025】
記憶部6は、不揮発性の記憶素子又はハードディスク等の記憶装置である。記憶部6を駅判定演算装置5と一体に構成してもよい。
【0026】
駅判定システム1は、上記以外に、車両情報ユニット7を有する。車両情報ユニット7は、車両2内の各種情報を受け取り、駅判定演算装置5に出力する装置である。本実施形態では、車両情報ユニット7は、車両2内の情報として、GPS受信機3a、3bからの情報、速度発電機3cからの情報、開扉情報部4からの情報を受け取って、駅判定演算装置5に出力する。なお、車両情報ユニット7を駅判定演算装置5と一体に構成してもよい。
【0027】
路線マスタデータ62は、各停車駅の座標のデータ(X1-1,Y1-1、X1-2,Y1-2等)をさらに有する。列車系統番号マスタデータ61は、停車駅間の駅間距離のデータ(SL1、SL2等)を時系列順にさらに有する。
【0028】
本実施形態では、列車系統番号マスタデータ61は、列車系統番号毎に、停止駅、通過駅、判定条件が記述されたデータである。列車系統番号とは、列車として運転される自車両2の運行系統毎に付与された、自編成の運行(停止駅順、時刻等)を明確化するための番号である。判定条件は、駅判定に使用する機器(GPS受信機3a、3bと、速度発電機3c)を指定したものである。なお、その指定の詳細は後述する。路線マスタデータ62は、自車両2が運行される路線の全駅に関する情報(駅名称、緯度及び経度、駅判定範囲)が記述されたデータである。
【0029】
上記のように構成された駅判定システム1の動作を、GPSを用いる場合について説明する(図2参照)。駅判定演算装置5は、自車両2が次に到着する停車駅である目的駅A001を列車系統番号マスタデータ61から取得する(判定駅1-2)。目的駅は、判定駅を求める演算で使用される。
【0030】
次に、駅判定演算装置5は、その目的駅A001に対応する駅範囲GL1を路線マスタデータ62から取得する(判定駅1-2)。
【0031】
駅範囲は、駅判定範囲とも呼ばれ、各駅に設定された円状の範囲(半径)であり、後述するように、その範囲内に自列車2があれば、同駅と判定される。駅範囲は、駅毎に設定可能である。
【0032】
次に、駅判定演算装置5は、各系統のGPS受信機3a、3bから取得される現在位置情報(X2,Y2)と目的駅A001の座標(X1-1,Y1-1)との間の距離d1を算出する(2点間距離)。目的駅A001の座標(X1-1,Y1-1)は、目的駅A001の緯度X1-1及び経度Y1-1であり、目的駅位置とも呼ばれる。そして、駅判定演算装置5は、現在位置情報(X2,Y2)が目的駅A001の駅範囲GL1内にあるか否かを判定する。現在位置情報(X2,Y2)は、自車両2の緯度X2及び経度Y2であり、車両走行位置とも呼ばれる。
【0033】
駅判定演算装置5は、位置情報取得部3(3a、3b)により得られた現在位置情報(X2,Y2)が目的駅A001の駅範囲GL1内であるとき(d1≦GL1)、自車両2が目的駅A001の駅範囲GL1内にあると判定する。これにより、駅の判定が未確定状態から切替状態に遷移する(判定駅1-1)。
【0034】
駅判定演算の結果から自車両2の到着が確定した駅を判定駅という。未確定状態とは、判定駅が未確定な状態である。確定状態とは、判定駅が確定した状態である。切替状態は、未確定状態から確定状態に切り替わる中間的な状態である。
【0035】
次に、駅判定演算装置5は、さらに開扉情報部4(扉連動ランプ接点)から入力された開扉可否情報が開扉可能となった時、自車両2がその目的駅A001に到着したと判定する。これにより、駅判定が切替状態から確定状態に遷移する(判定駅1-1)。
【0036】
次に、駅判定演算装置5は、現在位置情報(X2,Y2)が判定駅A001の駅範囲GL1外となったとき(GL1≦d1)、その判定駅A001を取消す。これにより、駅判定が確定状態から未確定状態に遷移する(判定駅1-1)。
【0037】
目的駅A001の場合と同様に、駅判定演算装置5は、自車両2が次に到着する停車駅である目的駅A002を列車系統番号マスタデータ61から取得する(判定駅1-2)。
【0038】
次に、駅判定演算装置5は、その目的駅に対応する駅範囲GL2を路線マスタデータ62から取得する(判定駅1-2)。
【0039】
次に、駅判定演算装置5は、各系統のGPS受信機3a、3bから取得される現在位置情報(X2,Y2)と目的駅A002の座標(X1-2,Y1-2)との間の距離d1を算出する(2点間距離)。そして、駅判定演算装置5は、自車両2が目的駅A002の駅範囲GL2内にあるか否かを判定する。
【0040】
駅判定演算装置5は、位置情報取得部3(3a、3b)により得られた現在位置情報(X2,Y2)が目的駅A002の駅範囲GL2内であるとき(d1≦GL2)、自車両2が目的駅A002の駅範囲GL2内にあると判定する。これにより、駅判定が未確定状態から切替状態に遷移する(判定駅1-1)。以下、目的駅A001の場合と同様であるので説明を省略する。
【0041】
上述した動作において、駅判定演算装置5は、各系統のGPS受信機3a、3bから取得される現在位置情報(X2,Y2)と目的駅の座標(X1,Y1)との間の距離d1として、大圏距離を算出する。
【0042】
大圏距離とは、地球上の大円距離であり、地球を球体と近似した地球上の2点間の距離である。本実施形態では、地球の形状が赤道半径Erを半径とする球体と仮定し、現在位置情報(X2,Y2)と目的駅の座標(X1,Y1)との間の距離d1を次式により算出する。
【0043】
d1=Er・cos-1(sinY1・sinY2+cosY1・cosY2・cosΔx)
【0044】
Δx=X2-X1
【0045】
駅判定演算装置5は、GPS受信機3a、3bから取得される現在位置情報(X2,Y2)が変化したときに、距離d1を算出する。
【0046】
駅判定システム1の動作を、速度発電機3cを使用する場合について説明する。図3に示すように、駅判定演算装置5は、自車両2が次に到着する停車駅である目的駅A001を列車系統番号マスタデータ61から取得する(判定駅2-2)。
【0047】
次に、駅判定演算装置5は、その目的駅に対応する駅範囲GL1を路線マスタデータ62から取得する(判定駅2-2)。
【0048】
駅判定演算装置5は、速度発電機3cが計測した車輪の回転に基づいて自車両2の走行距離を算出する。
【0049】
その算出方法について説明する。速度発電機3cの波形整形基板から出力されて駅判定演算装置5に入力される累積のパルス値(前回取得分)をImb、その波形整形基板から出力される累積のパルス値(今回取得分)をImaとする。これらのパルス値は、変数である。
【0050】
波形整形基板から出力される累積のパルス値の最大値をImmとする。車輪1回転当たりに波形整形基板から出力されるパルス値をFとする。減速比をSrとする。車輪径をWrとする。これらの定数は、保守設定ファイルとして駅判定演算装置5に記憶されている。
【0051】
速度発電機3cによって取得される取得距離をdxとする。取得距離dxは、駅判定演算装置5への入力パルス値の前回取得分Imbから今回取得分Imaの差である。取得距離dxは、次式により算出される。
【0052】
Ima≧Imb: dx=Wr・π・(Ima-Imb)/(F・Sr)
【0053】
Ima<Imb: dx=Wr・π・(Imm-Imb+Ima)/(F・Sr)
【0054】
走行距離diは、取得距離dxの積算である。
【0055】
di=Σdx
【0056】
駅判定演算装置5は、走行距離diと駅間距離SLのデータに基づいて自車両2が目的駅A001の駅範囲GL1内にあるか否かを次のように判定する。
【0057】
駅間距離差d2は、駅間距離SL1と走行距離diの差である。
【0058】
d2=SL1-di
【0059】
駅判定演算装置5は、d2≦GL1のとき、自車両2が目的駅A001の駅範囲GL1内にあると判定する。これにより、駅判定が未確定状態から切替状態に遷移する(判定駅2-1)。
【0060】
次に、駅判定演算装置5は、さらに開扉情報部4(扉連動ランプ接点)から入力された開扉可否情報が開扉可能となった時、自車両2がその目的駅A001に到着したと判定する。これにより、駅判定が切替状態から確定状態に遷移する(判定駅2-1)。
【0061】
駅判定が切替状態から確定状態に遷移する時、駅判定演算装置5は、走行距離diをクリアする。
【0062】
di=0
【0063】
次に、駅判定演算装置5は、現在位置情報が判定駅A001の駅範囲GL1外となったとき(GL1≦di)、その判定駅A001を取消す。これにより、駅判定が確定状態から未確定状態に遷移する(判定駅2-1)。
【0064】
目的駅A001の場合と同様に、駅判定演算装置5は、自車両2が次に到着する停車駅である目的駅A002を列車系統番号マスタデータ61から取得する(判定駅2-2)。
【0065】
次に、駅判定演算装置5は、その目的駅に対応する駅範囲GL2を路線マスタデータ62から取得する(判定駅2-2)。以下、目的駅A001の場合と同様であるので説明を省略する。
【0066】
駅判定システム1は、複数系統の位置情報取得部3を備える(図1参照)。しかし、位置情報取得部3は、機器故障や、駅の構造・位置条件によってGPS情報を受信できないなど、取得できる位置情報が限定される場合がある。このため、駅判定演算装置5は、複数系統の位置情報取得部3のうち、使用する系統の位置情報取得部3を指定可能に構成される。駅判定演算装置5は、使用する系統の位置情報取得部3を駅ごとに指定してもよい。例えば、駅判定演算装置5は、A駅ではGPS受信機3a、3b及び速度発電機3cを使用し、B駅では速度発電機3cを使用し、C駅ではGPS受信機3a、3bを使用する。このような指定は、列車系統番号マスタデータ61内のデータとして予め記憶される。
【0067】
駅判定演算装置5は、複数系統の位置情報取得部3a、3b、3cに対応して判定の結果が複数得られた場合、その判定結果が一致した場合は、目的駅を判定された判定駅として採用する。判定駅は、運賃計算等で使用される駅である。
【0068】
駅判定システム1は、係員操作部8をさらに備える。係員操作部8は、複数の位置情報取得部3a、3b、3cに対応して判定の結果が複数得られ、それらの判定結果が一致しない場合、又は判定結果が得られなかった場合に報知する機能と、判定駅の入力操作を受け付ける機能とを有する。
【0069】
係員操作部8は、本実施形態では、駅判定演算装置5に設けられた操作画面(タッチパネル)である。駅判定演算装置5は、駅判定演算によって判定駅が得られた場合も、係員操作部8にその判定駅を表示する。なお、係員操作部8は、モニタ及び押しボタン等であってもよい。また、係員操作部8を駅判定演算装置5に外付けしてもよい。
【0070】
これにより、複数系統の位置情報取得部3a、3b、3cのうち、判定駅の指定に使用する機器に優先度を設定し、判定結果が一致しない場合、又は判定結果が得られなかった場合は、係員操作部8によって係員に報知して確認を促し、手動の入力操作をすることが可能である。
【0071】
例えば、駅判定演算装置5が3系統の位置情報取得部3a、3b、3cを使用する場合、表1に示すように、GPS1(3a)>GPS2(3b)>速度発電機(3c)という優先度を設定する。
【0072】
【表1】
【0073】
例えば、駅判定演算装置5がGPSのみの2系統の位置情報取得部3a、3bを使用する場合、表2に示すように、GPS1(3a)>GPS2(3b)という優先度を設定する。
【0074】
【表2】
【0075】
例えば、駅判定演算装置5が速度発電機3cを含む2系統の位置情報取得部3を使用する場合、表3に示すように、GPS(3a又は3b)>速度発電機(3c)という優先度を設定する。
【0076】
【表3】
【0077】
表1~3において、駅判定演算装置5は、「自動」では、GPS1(3a)に基づいて得られた判定駅を採用する。
【0078】
表1~3において、駅判定演算装置5は、「手動-1」では、GPS1(3a)に基づいて得られた判定駅を係員操作部8に報知させる。係員は、係員操作部8で確認の入力操作を行う。
【0079】
表1~3において、駅判定演算装置5は、「手動-2」では、GPS2(3b)に基づいて得られた判定駅を係員操作部8に報知させる。係員は、係員操作部8で確認の入力操作を行う。
【0080】
表1~3において、駅判定演算装置5は、「手動-3」では、速度発電機(3c)に基づいて得られた判定駅を係員操作部8に報知させる。係員は、係員操作部8で確認の入力操作を行う。
【0081】
表1~3において、駅判定演算装置5は、「手動-4」では、判定結果が得られなかったことを係員操作部8に報知させる。係員は、係員操作部8で判定駅の入力操作を行う。
【0082】
駅判定演算装置5は、自車両2に搭載された所定の車載機9及び、自編成に他の車両21が連結されている場合は、その車両21に判定駅を伝達する。なお、車載機9は、駅判定システム1には含まれない。
【0083】
車載機9は、IC車載機とも呼ばれ、車両搭載型のICカードを用いた出改札サービスの提供が可能となる機器群である。
【0084】
所定の車載機9は、車両搭載型のICカードを用いた出改札サービスを提供するためのIC改札機が含まれる。
【0085】
これにより、自車両2が到着した駅を正確に判定した結果がIC改札機で利用されるので、IC改札機における運賃誤収受が防止される。
【0086】
車載機9には、IC改札機以外に、例えば、係員処理機がある。係員処理機は、乗務員がICカードを処理する機器である。
【0087】
以上、本実施形態に係る駅判定システム1によれば、駅判定演算装置5は、自車両2が次に到着する停車駅である目的駅を列車系統番号マスタデータ61から取得するので、次の停車駅が一つに限定され、その停車駅の近くに別の駅があっても、自車両2が到着した駅を正確に判定することができる。
【0088】
駅判定システム1は、位置情報取得部3を複数系統有するので、自車両2の現在位置情報をより的確に取得できる。
【0089】
駅判定演算装置5は、各系統のGPS受信機3a、3bから取得される現在位置情報と目的駅の座標との間の距離として、大圏距離を算出するので、直線距離を算出するよりも距離の算出精度が高い。
【0090】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、大圏距離の算出において、赤道半径の代わりに、Erとして平均地球半径を用いてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 駅判定システム
2 車両
3 位置情報取得部
3a、3b GPS受信機
3c 速度発電機
4 開扉情報部(扉連動ランプ接点)
5 駅判定演算装置
6 記憶部
61 列車系統番号マスタデータ
62 路線マスタデータ
8 係員操作部
9 車載機
図1
図2
図3
図4