(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】歩行訓練装置、その制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20220201BHJP
A61H 3/04 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
A61H1/02 R
A61H3/04
(21)【出願番号】P 2018068225
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508090376
【氏名又は名称】リーフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】藤範 洋一
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄平
(72)【発明者】
【氏名】森 政男
(72)【発明者】
【氏名】安藤 道得
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-229838(JP,A)
【文献】特開2003-164544(JP,A)
【文献】特開2001-299842(JP,A)
【文献】特開平02-092356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
A61H 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行訓練者を支持しつつ移動する支持台車と、
前記歩行訓練者の足部の位置を検出する足位置検出手段と、
該歩行訓練者の歩行動作に追従して、前記支持台車を設定量ずつ移動させる制御を行う制御手段と、
前記支持台車の移動を許可するか否かの情報が入力される入力手段と、を備え、
前記制御手段は、前記足位置検出手段により検出された歩行者訓練者の足部の位置が該足部の目標である目標範囲の外から内へ変化し、かつ、前記入力手段に前記支持台車の移動を許可する情報が入力されたと判断した場合に、前記支持台車を設定量移動させる制御を行
い、
前記支持台車には、前記入力手段、および、前記歩行訓練者が把持する把持部が設けられており、
前記入力手段は、前記把持部よりも後方に設けられている、
ことを特徴とする歩行訓練装置。
【請求項2】
歩行訓練者を支持しつつ移動する支持台車と、
前記歩行訓練者の足部の位置を検出する足位置検出手段と、
該歩行訓練者の歩行動作に追従して、前記支持台車を設定量ずつ移動させる制御を行う制御手段と、
前記支持台車の移動を許可するか否かの情報が入力される入力手段と、
前記歩行訓練者の足位置を撮影する撮影手段と、
前記入力手段に入力を行う介助者に対して、前記撮影手段により撮影された現在の足部の画像と該足部の目標である目標範囲とを表示する表示手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記足位置検出手段により検出された歩行者訓練者の足部の位置が前記目標範囲の外から内へ変化し、かつ、前記入力手段に前記支持台車の移動を許可する情報が入力されたと判断した場合に、前記支持台車を設定量移動させる制御を行う、
ことを特徴とする歩行訓練装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の歩行訓練装置であって、
前記制御手段は、前記入力手段に前記支持台車の移動を許可する情報が入力された場合でも、前記足位置検出手段により検出された足部の位置が前記目標範囲の外から内へ変化しない場合は、前記支持台車を設定量移動させる制御を実行しない、
ことを特徴とする歩行訓練装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の歩行訓練装置であって、
前記歩行訓練者の足部の足裏にかかる荷重を検出する荷重検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記足位置検出手段により検出された歩行者訓練者の足部の位置が該足部の目標である目標範囲の外から内へ変化し、前記入力手段に前記支持台車の移動を許可する情報が入力され、かつ、前記荷重検出手段により検出された足裏の荷重が所定値以上になったと判断した場合に、前記支持台車を設定量移動させる制御を行う、
ことを特徴とする歩行訓練装置。
【請求項5】
歩行訓練者を支持しつつ移動する支持台車と、
前記歩行訓練者の足部の位置を検出する足位置検出手段と、
該歩行訓練者の歩行動作に追従して、前記支持台車を設定量ずつ移動させる制御を行う制御手段と、
前記支持台車の移動を許可するか否かの情報が入力される入力手段と、を備える歩行訓練装置の制御方法であって、
前記制御手段は、前記足位置検出手段により検出された歩行者訓練者の足部の位置が該足部の目標である目標範囲の外から内へ変化し、かつ、前記入力手段に前記支持台車の移動を許可する情報が入力されたと判断した場合に、前記支持台車を設定量移動させる制御を行
い、
前記支持台車には、前記入力手段、および、前記歩行訓練者が把持する把持部が設けられており、
前記入力手段は、前記把持部よりも後方に設けられている、
ことを特徴とする歩行訓練装置の制御方法。
【請求項6】
歩行訓練者を支持しつつ移動する支持台車と、
前記歩行訓練者の足部の位置を検出する足位置検出手段と、
該歩行訓練者の歩行動作に追従して、前記支持台車を設定量ずつ移動させる制御を行う制御手段と、
前記支持台車の移動を許可するか否かの情報が入力される入力手段と、
前記歩行訓練者の足位置を撮影する撮影手段と、
前記入力手段に入力を行う介助者に対して、前記撮影手段により撮影された現在の足部の画像と該足部の目標である目標範囲とを表示する表示手段と、
を備える歩行訓練装置の制御方法であって、
前記制御手段は、前記足位置検出手段により検出された歩行者訓練者の足部の位置が前記目標範囲の外から内へ変化し、かつ、前記入力手段に前記支持台車の移動を許可する情報が入力されたと判断した場合に、前記支持台車を設定量移動させる制御を行う、
ことを特徴とする歩行訓練装置の制御方法。
【請求項7】
歩行訓練者を支持しつつ移動する支持台車と、
前記歩行訓練者の足部の位置を検出する足位置検出手段と、
該歩行訓練者の歩行動作に追従して、前記支持台車を設定量ずつ移動させる制御を行う制御手段と、
前記支持台車の移動を許可するか否かの情報が入力される入力手段と、を備える歩行訓練装置のプログラムであって、
前記足位置検出手段により検出された歩行者訓練者の足部の位置が該足部の目標である目標範囲の外から内へ変化し、かつ、前記入力手段に前記支持台車の移動を許可する情報が入力されたと判断した場合に、前記支持台車を設定量移動させる制御を行う処理を、 コンピュータに実行させ
、
前記支持台車には、前記入力手段、および、前記歩行訓練者が把持する把持部が設けられており、
前記入力手段は、前記把持部よりも後方に設けられている、
ことを特徴とする歩行訓練装置のプログラム。
【請求項8】
歩行訓練者を支持しつつ移動する支持台車と、
前記歩行訓練者の足部の位置を検出する足位置検出手段と、
該歩行訓練者の歩行動作に追従して、前記支持台車を設定量ずつ移動させる制御を行う制御手段と、
前記支持台車の移動を許可するか否かの情報が入力される入力手段と、
前記歩行訓練者の足位置を撮影する撮影手段と、
前記入力手段に入力を行う介助者に対して、前記撮影手段により撮影された現在の足部の画像と該足部の目標である目標範囲とを表示する表示手段と、
を備える歩行訓練装置のプログラムであって、
前記足位置検出手段により検出された歩行者訓練者の足部の位置が前記目標範囲の外から内へ変化し、かつ、前記入力手段に前記支持台車の移動を許可する情報が入力されたと判断した場合に、前記支持台車を設定量移動させる制御を行う処理を、 コンピュータに実行させる、
ことを特徴とする歩行訓練装置のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行訓練を行う歩行訓練装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
センサにより検出した歩行訓練者の足位置に基づいて、歩行訓練者が1歩の歩行動作を行う毎にその歩行動作に追従して移動する歩行訓練装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記歩行訓練装置においては、例えば、センサの誤検出が生じた場合に、歩行訓練者の1歩の歩行動作が完了していないにもかかわらず、歩行訓練装置が移動してしまう虞がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、歩行訓練者の歩行動作に正確に追従する歩行訓練装置、その制御方法及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
歩行訓練者を支持しつつ移動する支持台車と、
前記歩行訓練者の足部の位置を検出する足位置検出手段と、
該歩行訓練者の歩行動作に追従して、前記支持台車を設定量ずつ移動させる制御を行う制御手段と、
前記支持台車の移動を許可するか否かの情報が入力される入力手段と、を備え、
前記制御手段は、前記足位置検出手段により検出された歩行者訓練者の足部の位置が該足部の目標である目標範囲の外から内へ変化し、かつ、前記入力手段に前記支持台車の移動を許可する情報が入力されたと判断した場合に、前記支持台車を設定量移動させる制御を行う、
ことを特徴とする歩行訓練装置
である。
この一態様において、前記制御手段は、前記入力手段に前記支持台車の移動を許可する情報が入力された場合でも、前記足位置検出手段により検出された足部の位置が前記目標範囲の外から内へ変化しない場合は、前記支持台車を設定量移動させる制御を実行しなくてもよい。
この一態様において、前記支持台車には、前記入力手段、および、前記歩行訓練者が把持する把持部が設けられており、前記入力手段は、前記把持部よりも後方に設けられていてもよい。
この一態様において、前記歩行訓練者の足部の足裏にかかる荷重を検出する荷重検出手段を更に備え、前記制御手段は、前記足位置検出手段により検出された歩行者訓練者の足部の位置が該足部の目標である目標範囲の外から内へ変化し、前記入力手段に前記支持台車の移動を許可する情報が入力され、かつ、前記荷重検出手段により検出された足裏の荷重が所定値以上になったと判断した場合に、前記支持台車を設定量移動させる制御を行ってもよい。
この一態様において、前記歩行訓練者の足位置を撮影する撮影手段と、前記入力手段に入力を行う介助者に対して、前記撮影手段により撮影された現在の足部の画像と前記目標範囲とを表示する表示手段と、を備えていてもよい。
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
歩行訓練者を支持しつつ移動する支持台車と、
前記歩行訓練者の足部の位置を検出する足位置検出手段と、
該歩行訓練者の歩行動作に追従して、前記支持台車を設定量ずつ移動させる制御を行う制御手段と、
前記支持台車の移動を許可するか否かの情報が入力される入力手段と、を備える歩行訓練装置の制御方法であって、
前記制御手段は、前記足位置検出手段により検出された歩行者訓練者の足部の位置が該足部の目標である目標範囲の外から内へ変化し、かつ、前記入力手段に前記支持台車の移動を許可する情報が入力されたと判断した場合に、前記支持台車を設定量移動させる制御を行う、
ことを特徴とする歩行訓練装置の制御方法
であってもよい。
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
歩行訓練者を支持しつつ移動する支持台車と、
前記歩行訓練者の足部の位置を検出する足位置検出手段と、
該歩行訓練者の歩行動作に追従して、前記支持台車を設定量ずつ移動させる制御を行う制御手段と、
前記支持台車の移動を許可するか否かの情報が入力される入力手段と、を備える歩行訓練装置のプログラムであって、
前記足位置検出手段により検出された歩行者訓練者の足部の位置が該足部の目標である目標範囲の外から内へ変化し、かつ、前記入力手段に前記支持台車の移動を許可する情報が入力されたと判断した場合に、前記支持台車を設定量移動させる制御を行う処理を、 コンピュータに実行させることを特徴とする歩行訓練装置のプログラム
であってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、歩行訓練者の歩行動作に正確に追従する歩行訓練装置、その制御方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態1に係る歩行訓練装置の概略的構成を示す側面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る歩行訓練装置の概略的構成を示す上面図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る歩行訓練装置のシステム構成を示すブロック図である。
【
図4】現在の足位置と、目標足位置及び目標範囲と重畳した画像の一例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態1に係る歩行訓練装置の制御方法のフローを示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態2に係る歩行訓練装置のシステム構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態1
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る歩行訓練装置の概略的構成を示す側面図である。
図2は、本発明の実施形態1に係る歩行訓練装置の概略的構成を示す上面図である。
図3は、本発明の実施形態1に係る歩行訓練装置のシステム構成を示すブロック図である。
【0010】
本実施形態1に係る歩行訓練装置1は、例えば、リハビリ訓練などを行う歩行訓練者を支持する杖として機能する杖型歩行リハビリロボットである。本実施形態1に係る歩行訓練装置1は、歩行訓練者を支持する支持台車2と、歩行訓練者の足部の位置(以下、足位置と称す)を検出する足位置センサ3と、種々の情報が入力される入力部4と、支持台車2を制御する制御部5と、を備えている。
【0011】
支持台車2は、台車本体21と、台車本体21に設けられた前後一対の従動輪22と、台車本体21に設けられた左右一対の駆動輪23と、駆動輪23を駆動する左右一対の駆動部24と、台車本体21の中央付近に立設された支持柱25と、を有している。
【0012】
従動輪22は、例えば、左右に回動するキャスター式の車輪であり、支持台車2を任意の方向に旋回させることができる。駆動部24は、例えば、モータなどのアクチュエータである。駆動部24は、減速機などを介して、駆動輪23を回転駆動する。駆動部24は、制御部5から送信される制御信号に応じて駆動輪23を駆動する。
【0013】
支持柱25には、左右方向に延在し歩行訓練者が把持する棒状の把持部26が設けられている。なお、支持台車2は、歩行訓練者の健脚側に配置されている。歩行訓練者は、この把持部26を把持し、自らの体重を把持部26にかけることができる。これにより、歩行訓練者は、身体バランスを容易に保ちながら歩行訓練を行うことができる。
【0014】
支持柱25には、支持台車2の前方を撮影する前方カメラ27が設けられている。支持柱25の把持部26には、歩行訓練者の足元を撮影する足元カメラ28が設けられている。足元カメラ28は、撮影手段の一具体例である。
【0015】
支持柱25の先端には、前方カメラ27により撮影された支持台車2の前方の画像、および、足元カメラ28により撮影された歩行訓練者の足元の画像、を表示するモニタ29が設けられている。モニタ29は、表示手段の一具体例である。歩行訓練者や歩行訓練者を介助する介助者などは、このモニタ29の画像を参照して、支持台車2の前方や歩行訓練者の足位置を確認できる。なお、上述した支持台車2の構成は一例であり、これに限定されない。支持台車2は、歩行訓練者を支持しつつ移動する構成であれば任意の構成であってもよい。
【0016】
足位置センサ3は、足位置検出手段の一具体例である。足位置センサ3は、例えば、歩行訓練者の健脚側の足位置を検出する。足位置センサ3は、例えば、レーザーレンジファインダなどのレーザセンサであるが、これに限定されない。足位置センサ3は、超音波センサやカメラ(CMOSセンサなど)であってもよい。足位置センサ3は、例えば、台車本体21の左右側方に一対設けられている。足位置センサ3は、検出した歩行訓練者の足位置を制御部5に出力する。
【0017】
入力部4は、入力手段の一具体例である。入力部4には、例えば、介助者などによって、支持台車2の移動を許可するか否かの情報(以下、移動許可情報と称す)が入力される。入力部4は、ジョイスティック、ボタン、機械式スイッチ、タッチスクリーンなどで構成されている。入力部4はマイクを有していてもよい。入力部4には、マイクを介して音声による移動許可情報が入力されてもよい。入力部4と制御部5とは、Bluetooth(登録商標)、Wifi(登録商標)などの無線あるいは有線で接続されている。入力部4は、入力された情報を制御部5に出力する。
【0018】
入力部4は、歩行訓練者が把持する把持部26よりも後方に設けられている。これにより、介助者などは、歩行訓練者の後ろに立った状態を維持しつつ、簡単に入力部4を操作できる。入力部4は、例えば、支持柱25から後方に延在する支持バー30の先端に設けられている。
【0019】
制御部5は、制御手段の一具体例である。制御部5は、例えば、演算処理、制御処理等と行うCPU(Central Processing Unit)51、CPU51によって実行される演算プログラム、制御プログラム等や各種のデータを記憶するメモリ52、外部と信号の入出力を行うインターフェイス部(I/F)53、などからなるマイクロコンピュータを中心にして、ハードウェア構成されている。CPU51、メモリ52及びインターフェイス部53は、データバスなどを介して相互に接続されている。
【0020】
制御部5は、足位置センサ3から出力される歩行訓練者の足位置に基づいて、駆動部24を制御する。制御部5は、駆動部24を制御して、歩行訓練者の歩行動作に追従して支持台車2を設定量ずつ移動させる制御を行う。制御部5は、例えば、歩行訓練者の健脚が1歩歩く毎に、支持台車2を設定量ずつ移動させる制御を行う。
【0021】
これにより、歩行訓練者に連れ添うように支持台車2を移動させつつ、杖として歩行訓練者を適切に支持することができる。上記設定量は、例えば、歩行訓練者の歩幅などに基づいてメモリ52などに予め設定されているが、入力部4やモニタ29などを介して任意に設定変更可能である。
【0022】
例えば、制御部5は、足位置センサ3により検出された現在の足位置を前方へ第1所定距離移動させた位置を目標足位置として算出する。そして、制御部5は、算出した目標足位置から第2所定距離以内の範囲を目標範囲として算出する。
【0023】
なお、第1及び第2所定距離は、歩行訓練者の歩幅などに基づいて、メモリ52などに予め設定されているが、入力部4やモニタ29などを介して任意に設定変更可能である。 例えば、第2所定距離を調整して目標範囲を狭く設定してもよい。これにより、歩行訓練者の1歩をより正確に検出できる。
【0024】
例えば、
図4に示す如く、モニタ29は、足元カメラ28により撮影された現在の足位置と、制御部5により算出された目標足位置及び目標範囲と、を重畳した画像を表示する。歩行訓練者は、モニタ29に表示された画像を参照して、現在の足位置が目標範囲内に入るように1歩の歩行動作を行う。制御部5は、足位置センサ3により検出された歩行訓練者の足位置が目標範囲(点線枠)の外から内へ変化したと判断した場合に、支持台車2を設定量移動させる制御を行う。これにより、歩行訓練者が1歩歩く毎に、支持台車2を設定量ずつ移動させることができる。なお、目標足位置や目標範囲は、プロジェクタなどにより路面に直接的に表示されてもよい。これにより、歩行訓練者は、モニタ29を用いずに目標足位置や目標範囲を直接的に認識し、歩行動作を行うことができる。
【0025】
上述の足位置が目標範囲の外とは、足部全部が目標範囲の外側にある状態だけでなく、足部の大部分(例えば、90%以上)が目標範囲の外側にある状態も含めてもよい。また、上述の足位置が目標範囲の内とは、例えば、足部全部が目標範囲の内側にある状態だけでなく、足部の大部分(例えば、90%以上)が目標範囲の内側にある状態も含めてもよい。
【0026】
ところで、例えば、足位置センサがレーザセンサである場合、歩行訓練者の靴やズボンの色が黒色や濃色であると誤検出が生じ易い。さらに、足位置センサは足部の高さを検知し難い。このため、歩行訓練者の足部が接地していないにもかかわらず、接地しているとして足位置を誤検出することもある。このように足位置センサの誤検出が生じた場合に、歩行訓練者が1歩の歩行動作を完了していないにもかかわらず、支持台車が移動してしまう虞がある。
【0027】
これに対し、本実施形態1に係る歩行訓練装置1において、制御部5は、足位置センサ3により検出された足位置が目標範囲の外から内へ変化し、かつ、入力部4に支持台車2の移動許可情報が入力されたと判断した場合に、支持台車2を設定量移動させる制御を行う。
【0028】
これにより、足位置センサ3の誤検出などにより、足位置が目標範囲の外から内へ変化したと誤判断された場合でも、介助者が歩行訓練者の足部着地を確認し、入力部4に支持台車2の移動許可情報を入力しない場合は、支持台車2を設定量移動させない。したがって、歩行訓練者が1歩の歩行動作を完了していないにもかかわらず、支持台車2が先行して移動してしまうことを防止できる。すなわち、歩行訓練者の歩行動作に正確に支持台車2を追従させることができる。
【0029】
例えば、
図4に示す如く、モニタ29は、足元カメラ28により撮影された現在の足位置と、制御部5により算出された目標範囲とを重畳した画像を表示する。介助者は、モニタ29の画像を参照して、実際の歩行訓練者の足位置が目標範囲の外から内へ変化したかを容易に判断できる。そして、介助者は、実際の歩行訓練者の足位置が目標範囲の外から内へ変化したと判断した場合に、入力部4に支持台車2の移動許可情報を入力する。入力部4は、移動許可情報が入力されると、その移動許可情報を制御部5に送信する。
【0030】
制御部5は、足位置センサ3により検出された足位置が目標範囲の外から内へ変化したと判断し、かつ、入力部4から移動許可情報を受けた場合のみ、支持台車2を設定量移動させる制御を行う。このように、足位置センサ3による判断だけでなく、介助者が実際の歩行訓練者の足位置を確認することで、上述のような足位置センサ3の誤検出などによって、歩行訓練者が1歩の歩行動作を完了していないにもかかわらず、支持台車2が先行して移動してしまうことを防止できる。
【0031】
歩行訓練装置1は、上記足元カメラ28やモニタ29を有しない構成であってもよい。この場合、介助者は、実際の歩行訓練者の足位置が目標範囲の外から内へ変化したかを、直接目視で判断し、入力部4に支持台車2の移動許可情報を入力してもよい。
【0032】
制御部5は、足位置センサ3により検出された足位置が目標範囲の外から内へ変化した後、足部がその目標範囲内で所定時間以上経過したと判断し、かつ、入力部4から移動許可情報を受けた場合のみ、支持台車2を設定量移動させる制御を行ってもよい。これにより、足位置が目標範囲の外から内へ変化したことをより正確に判断できるため、歩行訓練者が1歩の歩行動作を完了していないにもかかわらず、支持台車2のみが移動してしまうことをより確実に防止できる。
【0033】
制御部5は、入力部4から移動許可情報を受けた場合でも、足位置センサ3により検出された足位置が目標範囲の外から内へ変化していないと判断した場合、支持台車2を設定量移動させる制御を実行しない。これにより、介助者などが誤って、入力部4に移動許可情報を入力した場合でも、足位置センサ3により検出された足位置が目標範囲の外から内へ変化していない場合、支持台車2は移動しない。したがって、介助者などの誤入力によって歩行訓練者が1歩の歩行動作を完了していないにもかかわらず、支持台車2のみが移動してしまうことを防止できる。
【0034】
図5は、本実施形態1に係る歩行訓練装置の制御方法のフローを示すフローチャートである。
図5に示す制御処理は、例えば、所定時間毎に繰返し実行される。
【0035】
足位置センサ3は、歩行訓練者の足位置を検出し、制御部5に出力する(ステップS101)。
【0036】
制御部5は、足位置センサ3により検出された現在の足位置に基づいて目標足位置を算出し、算出した目標足位置に基づいて目標範囲を算出する(ステップS102)。
【0037】
制御部5は、足位置センサ3により検出された足位置が目標範囲の外から内へ変化したか否かを判断する(ステップS103)。
【0038】
制御部5は、足位置センサ3により検出された足位置が目標範囲の外から内へ変化したと判断したとき(ステップS103のYES)、入力部4から移動許可情報を受信したか否かを判断する(ステップS104)。一方、制御部5は、足位置センサ3により検出された足位置が目標範囲の外から内へ変化していないと判断したとき(ステップS103のNO)、本処理を終了する。
【0039】
制御部5は、入力部4から移動許可情報を受信したと判断したとき(ステップS104のYES)、駆動部24を制御して、支持台車2を設定量移動させる(ステップS105)。一方、制御部5は、入力部4から移動許可情報を受信していないと判断したとき(ステップS104のNO)、支持台車2を設定量移動させることなく本処理を終了する。
【0040】
以上、本実施形態1に係る歩行訓練装置1において、足位置センサ3により検出された足位置が目標範囲の外から内へ変化し、かつ、入力部4に支持台車2の移動許可情報が入力されたと判断した場合に、支持台車2を設定量移動させる制御を行う。これにより、歩行訓練者が1歩の歩行動作を完了していないにもかかわらず、支持台車2のみが移動してしまうことを防止できる。すなわち、歩行訓練者の歩行動作に正確に支持台車2を追従させることができる。
【0041】
実施形態2
図6は、本発明の実施形態2に係る歩行訓練装置のシステム構成を示すブロック図である。本実施形態2に係る歩行訓練装置40は、歩行訓練者の健脚側の足部の足裏の荷重を検出する荷重センサ41を更に備えている。荷重センサ41は荷重検出手段の一具体例である。例えば、歩行訓練者の健脚側の足部の靴裏には、少なくとも1つの荷重センサ41が設けられている。荷重センサ41は、検出した足裏の荷重値を、制御部5に出力する。
【0042】
複数の荷重センサ41が歩行訓練者の足部の足裏(母趾、母趾球、小趾球、前足中央、土踏まず、踵外側、踵など)に設けられていてもよい。この場合、各荷重センサ41により検出された各荷重値の平均値、中央値、総和値などが、代表の荷重値として、制御部5に出力されてもよい。
【0043】
制御部5は、足位置センサ3により検出された足位置が目標範囲の外から内へ変化し、入力部4に支持台車2の移動許可情報が入力され、かつ、荷重センサ41からの荷重値が 所定値以上であると判断した場合に、支持台車2を設定量移動させる制御を行う。例えば、歩行訓練者の健脚側の足部が正常に着地したときの荷重値が実験的に計測される。その計測値に基づいて値が、所定値としてメモリなどに予め設定されていてもよい。
【0044】
本実施形態2によれば、介助者などが誤って、入力部4に移動許可情報を入力した場合や、足位置センサ3の誤検出が生じた場合でも、荷重センサ41からの荷重値が所定値以上となり、正常に接地していない場合、支持台車2は移動しない。したがって、介助者などの誤入力および足位置センサ3の誤検出によって歩行訓練者が1歩の歩行動作を完了していないにもかかわらず支持台車2のみが移動してしまう、ことを防止できる。すなわち、歩行訓練者の歩行動作により正確に支持台車2を追従させることができる。
【0045】
本実施形態2において、上記実施形態1と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0047】
例えば、上記実施形態において、モニタ29及び入力部4は支持台車2上に設けられているがこれに限定されない。モニタ29及び入力部4は、支持台車2と離れた位置に存在してもよい。この場合、訓練管理者などの第三者は、モニタ29を介して歩行訓練者の歩行訓練を遠隔的に監視できる。モニタ29には、足元カメラ28及び前方カメラ27の画像が無線などにより送信される。第三者は、モニタ29に映る実際の歩行訓練者の足位置が目標範囲の外から内へ変化したと判断した場合に、入力部4に対し移動許可情報を入力する。入力部4は、移動許可情報が入力されると、その移動許可情報を無線などにより制御部5に送信する。
【0048】
本発明は、例えば、
図5に示す処理を、CPU51にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0049】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。
【0050】
また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【符号の説明】
【0051】
1 歩行訓練装置、2 支持台車、3 足位置センサ、4 入力部、5 制御部、21 台車本体、22 従動輪、23 駆動輪、24 駆動部、25 支持柱、26 把持部、27 前方カメラ、28 足元カメラ、29 モニタ、41 荷重センサ