(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】ハンドル
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20220201BHJP
【FI】
B62D1/06
(21)【出願番号】P 2018093989
(22)【出願日】2018-05-15
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】松崎 尚生
(72)【発明者】
【氏名】水戸部 貴志
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-048025(JP,A)
【文献】特開2010-241276(JP,A)
【文献】特開2010-241203(JP,A)
【文献】特開2013-237310(JP,A)
【文献】特開2004-096985(JP,A)
【文献】特開2004-340029(JP,A)
【文献】特開2018-006080(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0050981(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011112134(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/04 - 1/11
B60R 16/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハーネスが配線される把持部を有するハンドルであって、
前記把持部は、一部が前記ハーネスの配線位置に対応して設けられる溝部、及びこの溝部内に設けられる保持部を有する把持部本体と、前記把持部本体を覆って巻き付けられるとともに縁部が前記溝部に収容される被覆部材とを備え、前記溝部内に前記ハーネスが配線されるとともにこのハーネスが前記保持部で保持される
ことを特徴とするハンドル。
【請求項2】
前記溝部は、前記把持部本体の複数箇所に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載のハンドル。
【請求項3】
前記保持部は、前記溝部内の複数箇所から突出されている
ことを特徴とする請求項1または2記載のハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーネスが配線される把持部を有するハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のハンドルすなわちステアリングホイールに対して機能を追加付与することが要求されてきている。例えば、ステアリングホイールの把持部に、表示器やスイッチなどの電気部品が配置される場合がある。このような場合、ステアリングホイールの把持部の内側に位置するボス部側と把持部の電気部品とを電気的に接続するのにハーネスが用いられ、このハーネスが把持部に配線される。このハーネスを把持部に配線するために、把持部本体にハーネスを収容する専用のハーネス配線溝部が形成され、そのハーネス配線溝部にハーネスを覆うハーネスカバーを組み付けることで、ハーネス配線溝部内にハーネスを保持するとともにハーネス配線溝部の表面開口側を閉塞して把持部の周面形状を確保している。そして、ハーネスカバーが組み付けられた把持部本体の周囲を被覆部材で覆っている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-241203号公報(第5-8頁、
図1-5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステアリングホイールの把持部にハーネスを配線する場合、ハーネスカバーを用いるため、部品点数、及び組立工数が増加し、しかも、別体のハーネスカバーが組み付けられた把持部本体を被覆部材で覆っているため、ハーネスカバーの箇所での把持部の外観や把持感触が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、部品点数、及び組立工数を削減できるとともに、把持部の外観や把持感触を向上できるハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のハンドルは、ハーネスが配線される把持部を有するハンドルであって、前記把持部は、一部が前記ハーネスの配線位置に対応して設けられる溝部、及びこの溝部内に設けられる保持部を有する把持部本体と、前記把持部本体を覆って巻き付けられるとともに縁部が前記溝部に収容される被覆部材とを備え、前記溝部内に前記ハーネスが配線されるとともにこのハーネスが前記保持部で保持されるものである。
【0007】
請求項2記載のハンドルは、請求項1記載のハンドルにおいて、前記溝部は、前記把持部本体の複数箇所に設けられているものである。
【0008】
請求項3記載のハンドルは、請求項1または2記載のハンドルにおいて、前記保持部は、前記溝部内の複数箇所から突出されているものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載のハンドルによれば、被覆部材の縁部を収容する把持部本体の溝部の一部をハーネスの配線位置に対応して設けることで、その溝部内にハーネスを配線することが可能となるとともに、その溝部内に保持部を突設しておくことで、ハーネスを溝部内に保持することが可能となるため、ハーネスカバーをなくし、部品点数、及び組立工数を削減できるとともに、被覆部材の外観や把持感触を向上できる。
【0010】
請求項2記載のハンドルによれば、請求項1記載のハンドルの効果に加えて、把持部本体の複数箇所に溝部が設けられているが、この溝部の一部を共用することでハーネスを配置できる。
【0011】
請求項3記載のハンドルによれば、請求項1または2記載のハンドルの効果に加えて、溝部内の複数箇所から突出する保持部でハーネスを確実に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施の形態を示すハンドルの断面図(
図3のI-I視断面図)である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態を示すハンドルの一部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1の実施の形態を、
図1ないし
図3を参照して説明する。
【0014】
図1ないし
図3において、10は例えば車両としての自動車の(ステアリング)ハンドルであるステアリングホイールである。このステアリングホイール10は、ハンドル本体であるステアリングホイール本体11、及びこのステアリングホイール本体11の中央の乗員側に装着されるパッド体12などを備えている。なお、ステアリングホイール10は、通常傾斜した状態で車両に備えられるステアリングシャフトに装着されるものであるが、以下、ステアリングホイール10を運転者(乗員)側から見て、矢印U方向を上側、矢印D方向を下側、車両の前側すなわち前側上方のフロントガラス側を前側あるいは背面側、車両の後側すなわち後側下方を後側、手前側あるいは正面側として説明する。
【0015】
そして、ステアリングホイール本体11は、把持部としてのリム部(グリップ部)15と、このリム部15の内側に位置するボス部16と、これらリム部15とボス部16とを連結するスポーク部17とを備えている。本実施の形態では、複数のスポーク部17を備えるものであって、左右2本のスポーク部17を備えている。また、このステアリングホイール本体11は、ハンドル基部であるステアリングホイール基部18を備えている。また、このステアリングホイール本体11は、リム部15においてステアリングホイール基部18の周囲に配置される中間層部材19を備えている。さらに、このステアリングホイール本体11は、リム部15の表皮である被覆部材20を備えている。さらに、このステアリングホイール本体11は、電気部品配置部21を備えている。さらに、このステアリングホイール本体11は、リム部15の電気部品配置部21に配置される電気部品22、及びリム部15に配線されてボス部16側に設けられる電源供給部と電気部品22とを電気的に接続するためのワイヤハーネスであるハーネス23を備えている。また、このステアリングホイール本体11は、ボス部16の下面側を覆う図示しないボスカバーを備えている。
【0016】
リム部15は、運転者(乗員)により把持操作される部分である。このリム部15は、少なくとも一部が円弧に沿って形成されている。本実施の形態において、このリム部15は、円環状に形成されている。なお、以下、ステアリングホイール本体11の各部の上下左右などの配置は、ステアリングホイール10の中立(ニュートラル)位置を基準とする。
【0017】
また、ステアリングホイール基部18は、芯金25と、この芯金25の一部を覆う樹脂層26とを備えている。
【0018】
芯金25は、例えば金属製であり、ボス部16の車体側となる背面側に、ステアリングシャフトと歯合するセレーション構造を備えた略円筒状のボス27を備えているとともに、このボス27に一体的に固着されて芯体を構成するボスプレート28を備えている。そして、ボスプレート28から、スポーク部17に対応するスポーク芯金部29が連続して一体的に形成されている。さらに、このスポーク部17のスポーク芯金部29に、リム部15に対応する把持部芯金としてのリム芯金部30が溶接などして固着されている。
【0019】
スポーク芯金部29は、放射状に設けられている。このスポーク芯金部29は、必ずしもすべてのスポーク部17に対応していなくてもよく、一部のスポーク部17は、スポーク芯金部29を備えずにフィニッシャやカバー体などにより構成されていてもよい。本実施の形態において、スポーク芯金部29は、ボスプレート28の左右から突出してそれぞれリム芯金部30と連結されている。
【0020】
リム芯金部30は、リム部15の一部を構成するものである。このリム芯金部30は、リム部15の形状に対応する形状に形成されている。すなわち、このリム芯金部30は、リム部15の形状に応じて、例えば少なくとも一部が円弧に沿って形成された環状をなしている。本実施の形態において、このリム芯金部30は、円環状に形成されている。
【0021】
樹脂層26は、少なくともリム芯金部30を覆って形成されている。この樹脂層26は、本実施の形態において、例えばリム芯金部30全体、及びスポーク芯金部29の一部を覆って形成されている。より詳細に、この樹脂層26は、リム部15の位置でリム芯金部30を覆う把持部樹脂層部としてのリム樹脂層部33と、スポーク部17の位置で、スポーク芯金部29のリム芯金部30と連続する端部から所定距離の領域を覆うスポーク樹脂層部34とを一体的に備えている。また、この樹脂層26は、例えば断面略円形状に形成されている。そして、この樹脂層26は、例えば軟質の発泡ポリウレタン樹脂を微細発泡させたものが使用される。また、この樹脂層26には、被覆部材20の縁部を収容して固定する被覆部材収容用(被覆部材落とし込み用)の溝部35が形成されている。そして、この樹脂層26は、図示しない成形型(金型)を用いて成形されている。この成形型は、概略として、一の半型と、他の半型とを備え、これら一の半型と他の半型との間に形成されるキャビティに合成樹脂原料が充填されるようになっている。
【0022】
リム樹脂層部33は、リム芯金部30とともに、リム部15を構成する把持部本体としてのリム部本体37をなすものである。すなわち、樹脂層26は、芯金25とともに、リム部本体37を構成している。このリム部本体37は、少なくとも一部が円弧に沿って形成されている。このリム部本体37は、本実施の形態において、円環状に形成されている。
【0023】
スポーク樹脂層部34は、リム樹脂層部33と連続し、このリム樹脂層部33からスポーク芯金部29側に突出している。
【0024】
溝部35は、樹脂層26(リム部本体37)の表面に形成されている。この溝部35は、所定幅、及び所定深さの溝状に形成されている。また、この溝部35は、樹脂層26(リム部本体37)の複数箇所に形成されている。すなわち、この溝部35は、樹脂層26(リム部本体37)の乗員側である正面側に形成される正面側溝部38、電気部品配置部21の両側に形成される電気部品配置部側溝部39、及び樹脂層26(リム部本体37)の内周に沿って周方向に形成されている図示しない内周側溝部などを備えている。正面側溝部38は、リブ部15の周方向に沿って形成され、上端側がスポーク部17側に連通され、下端側が電気部品配置部21側に連通されている。電気部品配置部側溝部39は、電気部品配置部21の両側でリム部15の放射方向に沿って形成され、正面側溝部38の下端側が連通されている。内周側溝部は、リム部15の上側域などに形成されている。そして、この溝部35の一部は、リブ部15の電気部品22とボス部16側に設けられる電源供給部とを接続するためのハーネス23の配線位置に対応して形成されており、ハーネス23が配線される。すなわち、スポーク部17と電気部品配置部21との間の正面側溝部38、及び電気部品配置部側溝部39などがハーネス23の配線位置に対応して形成され、これらにハーネス23が配線される。
【0025】
この溝部35内には、この溝部35内に配線されるハーネス23を保持する保持部40が一体に突出されている。本実施の形態では、この溝部35内の複数箇所から保持部40が突設されている。すなわち、溝部35の両側の内壁面で、溝部35の底面から所定距離だけ離れた位置に、一対の保持部40が互いに対向して突設されている。これら一対の保持部40により、溝部35内の底面側にハーネス23が配線される配線溝部41が形成され、溝部35内の表面側に被覆部材20の縁部20a,20aが収容される収容溝部42が形成されている。そして、これら一対の保持部40は、配線溝部41に配線されたハーネス23を蓋状に覆って保持する。また、これら保持部40は、例えば断面略三角形状に形成されているが、例えば断面略半円状などの他の形状でもよい。さらに、これら保持部40は、溝部35内の溝方向に沿って連続して設けられていてもよいし、溝部35内の溝方向に所定の間隔毎にダボ状に設けられていてもよい。なお、保持部40は、少なくとも、ハーネス23の配線位置に対応した溝部35の一部領域に設けられていればよい。
【0026】
なお、この溝部35は、例えば樹脂層26を成形型により成形する際に同時に形成されてもよいし、樹脂層26の成形後に加工されて形成されてもよい。
【0027】
また、中間層部材19は、エレメントなどとも呼ばれ、樹脂層26(リム部本体37)の表面に接着剤により貼り付けられて固定されている。この中間層部材19は、シート状に形成されたシート部材(マット部)44と、このシート部材44に保持された線材45とを備えている。この中間層部材19の両側縁は樹脂層26の溝部35の両側位置に配置され、溝部35が開放されている。本実施の形態において、この中間層部材19は、通電により線材45が圧力センサまたは静電容量センサの検出子となって、リム部15の把持圧力、あるいは静電容量変化を検出することにより、運転者によるリム部15の把持(把持の有無)を検出するセンサユニットである。
【0028】
また、被覆部材20は、運転者(乗員)により直接把持されるリム部15の部分であり、ステアリングホイール10の加飾部である。この被覆部材20は、例えば天然皮革や合成皮革などの皮革、あるいは合成樹脂などによりシート状に形成されている。この被覆部材20は、中間層部材19を覆ってリム部本体37の表面側に取り付けられている。この被覆部材20は、両側の縁部20a,20aを有し、これら縁部20a,20aが溝部35にそれぞれ落とし込まれて固定されている。この被覆部材20は、接着剤により、リム部本体37の表面側に貼り付けられているとともに、縁部20a,20aが溝部35内に接着固定されている。そして、この被覆部材20の溝部35に落とし込まれた縁部20a,20aの部分に、いわゆる木目込み風の線状の意匠部が構成されている。この溝部35に落とし込まれた縁部20a,20a間には、図示しないステッチが施されている。また、この被覆部材20は、リム部本体37の表面全体を連続的に覆うように一体に形成されていてもよいし、あるいはリム部本体37の各部位毎に分割形成されていてもよい。本実施の形態では、被覆部材20は、少なくとも、電気部品配置部21以外の被覆部材部48と、電気部品配置部21の被覆部材部49とに分割形成されている。
【0029】
また、電気部品配置部21は、リム部15のスポーク部17が接続される位置に対して異なる位置に設けられている。本実施の形態では、この電気部品配置部21は、リブ部15の2本のスポーク部17が接続される位置から中間の位置となるリブ部15の下側位置に設けられている。この電気部品配置部21には、電気部品22が配置される。例えば、この電気部品配置部21では、電気部品22が樹脂層26に埋め込み配置され、周囲が中間層部材19及び被覆部材20で覆われている。
【0030】
また、電気部品22は、本実施の形態では、振動発生ユニット52が用いられている。この振動発生ユニット52は、モータ53、及びこのモータ53によって偏心回転して振動を発生する分銅を備えている。振動発生ユニット52は、電気部品配置部21に配置される。この振動発生ユニット52は、例えばリム芯金部30に固定され、振動をリム芯金部30からリム部15全体に伝達する。例えば、車線逸脱検出機能を有する自動車の場合、車線逸脱の検出時にモータ53を駆動してリム部15に振動を発生し、リム部15を把持する運転者に注意を促すように構成されている。
【0031】
また、ハーネス23は、ボス部16側に設けられる電源供給部とモータ53(電気部品22)とを電気的に接続する。このハーネス23は、モータ53(電気部品22)に例えば直流電源を供給するために2本の電線で構成されている。そして、このハーネス23は、ボス部16側からスポーク部17内を通じてリム部15側に配線されるとともにこのリム部15の溝部35内に沿って配線され、電気部品配置部21のモータ53に接続される。本実施の形態では、このハーネス23は、ボス部16側から一方のスポーク部17内を通じてリム部15の一方の正面側溝部38に沿って配線され、電気部品配置部21のモータ53に接続される。このハーネス23は、溝部35の底面側に配線され、溝部35内に突出する保持部40により溝部35の底面側に配線されている状態に保持される。
【0032】
また、ボスカバーは、裏カバー、下部カバーあるいはボディカバーとも呼ばれ、合成樹脂などにより形成され、ボス部16の下側部を覆っている。
【0033】
また、パッド体12としては、例えばエアバッグ装置、あるいは衝撃吸収体を収納したものなどを用いることができる。なお、このパッド体12は、スイッチ装置としてのホーンスイッチ機構などを一体的に組み込んでもよい。
【0034】
そして、ステアリングホイール10を製造する際には、まず、予め成形された芯金25を成形型にセットした後、一の半型と他の半型とを型合わせ(型閉)して形成したキャビティに対して、合成樹脂原料を攪拌混合して成形型のキャビティ内に射出する。この結果、合成樹脂原料が発泡を伴いながら反応してポリウレタンとなりつつ流動末端に向かって流れていき、樹脂層26を形成する。
【0035】
キャビティ内で樹脂層26が形成された芯金25を、一の半型と他の半型とを型開きした成形型から脱型する。
【0036】
次いで、リム部15の電気部品配置部21(リム部本体37)に振動発生ユニット52を配置し、ボス部16側に設けられる電源供給部とモータ53とをハーネス23で電気的に接続する。ハーネス23は、ボス部16側からスポーク部17内を通じてリム部15側に配線するとともにこのリム部15の溝部35内に沿って配線し、電気部品配置部21のモータ53に接続する。溝部35内に配線するハーネス23は、溝部35の両側の内壁面から突出する保持部40を乗り越えて溝部35の底面側に配線する。これにより、保持部40でハーネス23を溝部35内に保持する。
【0037】
さらに、リム部15の樹脂層26(リム部本体37)の表面に中間層部材19を巻き付けて接着固定する。
【0038】
この後、中間層部材19を覆うようにリブ部15の樹脂層26(リム部本体37)の表面側に被覆部材20を巻き付けて取り付ける。被覆部材20の縁部20a,20aを溝部35に落とし込んで固定する。このとき、被覆部材20の縁部20a,20aが溝部35に過剰に落とし込まれようとしても、被覆部材20の縁部20a,20aが溝部35内に突出する保持部40に当接することで、溝部35への被覆部材20の縁部20a,20aの落とし込みが規制され、被覆部材20の縁部20a,20aの処理を適切にできる。そして、被覆部材20の縁部20a,20aを溝部35に落とし込んで固定することにより、溝部35の表面開口側が閉塞され、ハーネス23が溝部35内に収容保持される。
【0039】
ステアリングホイール本体11にパッド体12やボスカバーなどを取り付け、ステアリングホイール10が完成する。
【0040】
このように、本実施の形態では、被覆部材20の縁部20a,20aを収容する溝部35の一部をハーネス23の配線位置に対応して設けることで、その溝部35にハーネス23を配線することが可能となるとともに、その溝部35内に保持部40を突設しておくことで、ハーネス23を溝部35内に保持することが可能となるため、ハーネスカバーをなくし、部品点数、及び組立工数を削減できるとともに、被覆部材20の外観や把持感触を向上できる。
【0041】
しかも、被覆部材20の縁部20a,20aを収容する溝部35の一部をハーネス23の配線に有効活用できることにより、リブ部15のリム部本体37にハーネス23の配線専用のハーネス配線溝部を設ける必要がなく、リム部本体37の構造を簡素化できる。
【0042】
さらに、溝部35内に突出する保持部40により、溝部35内に配線されるハーネス23を保持できるため、リブ部本体37を覆って被覆部材20を巻き付ける際などにハーネス23が溝部35内から飛び出すようなことがなく、組立作業性を向上できる。
【0043】
また、リブ部本体37の複数箇所に溝部35が設けられているが、この溝部35の一部を共用することでハーネス23を配線できる。
【0044】
また、溝部35内の複数箇所から突出する保持部40でハーネス23を確実に保持できる。本実施の形態のように、溝部35の両側の内壁面で、溝部35の底面から所定距離だけ離れた位置に、一対の保持部40を互いに対向して突設して溝部35の両側の内壁面間の間隔よりも狭い幅狭部分を形成することにより、溝部35の底面側に配線されるハーネス23を確実に保持することができる。
【0045】
次に、第2の実施の形態を、
図4を参照して説明する。なお、上記の第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0046】
本実施の形態は、第1の実施の形態の保持部40が、溝部35の底面中央から一体に突出されているものである。この保持部40は、断面略三角形状で、両側面つまり両内壁面が傾斜状に形成されている。この保持部40は、溝部35の底面からの高さ寸法が、ハーネス23の半径寸法よりも大きく、例えばハーネス23の直径寸法と同等となっている。また、この保持部40は、溝部35内の溝方向に沿って連続して設けられていてもよいし、溝部35内の溝方向に所定の間隔毎に設けられていてもよい。
【0047】
この保持部40の両側にハーネス23が配線される一対の配線溝部60,60が形成されている。本実施の形態では、これら配線溝部60,60には、ハーネス23が1本ずつ配線される。これら配線溝部60,60は、外側の内壁面が保持部40の内壁面と略平行となるように傾斜されている。これら配線溝部60,60の溝幅は、ハーネス23を1本ずつ配線可能とする幅で、例えばハーネス23が配線溝部60,60に圧入されて配線されるようにハーネス23の直径と同じか小さくてもよい。
【0048】
このように、本実施の形態では、保持部40が溝部35の底面中央から突出されるため、配線溝部60,60を分割形成でき、各配線溝部60,60にハーネス23を1本ずつ配線して保持することができる。
【0049】
さらに、配線溝部60,60は傾斜状に形成されているため、配線溝部60,60の内壁面にハーネス23が接しやすく、ハーネス23を保持することが可能となる。さらに、配線溝部60,60の溝幅がハーネス23の直径と同じか小さい場合には、ハーネス23を配線溝部60,60に圧入して保持することが可能となる。
【0050】
なお、上記各実施の形態において、電気部品22は、振動発生ユニット52に限らず、例えば、ヒータ装置、表示器、及びスピーカなどでもよいし、あるいはスイッチやマイクなどでもよい。
【0051】
また、溝部35に配線されるハーネス23の本数は、電気部品22の種類によっては、2本に限らず、1本や、3本以上の場合もある。このような場合、溝部35内において保持部40の設ける位置や保持部40の数は、各本数のハーネス23を保持可能とするように適宜設定すればよい。
【0052】
また、リム部本体37の溝部35は、一部(正面側溝部38)がリム部本体37の正面側に設けられ、ハーネス23の配線に利用されているが、リム部本体37の正面側に代えて内周面や裏面に設け、ハーネス23の配線に利用してもよい。さらに、この溝部35は、ステアリングホイール10のデザインなどに応じて、その位置や数を任意に設定できる。
【0053】
また、保持部40は、溝部35の底面側と側壁面の両方から突出していてもよい。
【0054】
また、中間層部材19は、例えばリム部15の温度を調整するためのヒータユニットとすることもできる。この場合、例えば、線材45は、通電により発熱するヒータ(電熱線)である。また、中間層部材19は、センサユニットやヒータユニットなどの機能を備えず、単なる中間層でもよい。あるいは、中間層部材19は省略してもよい。
【0055】
また、ステアリングホイール10は、2本のスポーク部17を備えた構成に限られず、3本、あるいは4本以上のスポーク部17を備えた構成などとすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、例えば、自動車のハンドル(ステアリングホイール)の他、種々の移動体のハンドルに適用できる。
【符号の説明】
【0057】
10 ハンドルであるステアリングホイール
15 把持部としてのリム部
20 被覆部材
20a 縁部
23 ハーネス
35 溝部
37 把持部本体としてのリム部本体
40 保持部