IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工サーマルシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-スクロール圧縮機 図1
  • 特許-スクロール圧縮機 図2
  • 特許-スクロール圧縮機 図3
  • 特許-スクロール圧縮機 図4
  • 特許-スクロール圧縮機 図5
  • 特許-スクロール圧縮機 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】スクロール圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20220201BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
F04C18/02 311M
F04C29/00 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018152322
(22)【出願日】2018-08-13
(65)【公開番号】P2020026777
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 友貴
(72)【発明者】
【氏名】山崎 浩
(72)【発明者】
【氏名】池▲高▼ 剛士
(72)【発明者】
【氏名】濱元 伸也
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-174796(JP,A)
【文献】特開2012-225328(JP,A)
【文献】特開2012-145120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端板部、及び前記第1の端板部に立設された第1の渦巻部を有する固定スクロールと、
前記第1の端板部と対向する一面を含む第2の端板部、及び前記第2の端板部の一面に立設され、前記第1の渦巻部と噛み合うことで、圧縮室を形成する第2の渦巻部、及び前記一面の反対側に位置する前記第2の端板部の他面に設けられ、前記他面から突出するボス部をする旋回スクロールと、
前記第2の端板部の他面と対向する一方の端面側に形成された第1の凹部を有し、第1の軸線の方向に延びるとともに、前記第1の軸線回りに回転するシャフトと、
前記ボス部内に収容された状態で、前記第2の端板部と前記シャフトの一方の端面との間に設けられたドライブブッシュ本体、及び前記第2の端板部から前記シャフトの一方の端面に向かう方向に前記ドライブブッシュ本体を貫通する貫通部を有するドライブブッシュと、
前記シャフトの一方の端面に対して一体に設けられ、前記第1の凹部を露出する圧入孔が形成された台座部と、
前記第1の凹部、前記圧入孔、及び前記貫通部に配置され、前記第1の軸線と平行な第2の軸線の方向に延びる偏心シャフトと、
前記偏心シャフトの前記第2の端板部側の端部に設けられ、前記偏心シャフトの外周面から前記第2の軸線の径方向外側に突出するスナップリングと、
を備え、
前記ドライブブッシュ本体の前記シャフト側の端面は、前記台座部が設けられた前記シャフトの端面と接触し、
前記貫通部は、前記旋回スクロール側に配置された第1の部分と、前記シャフト側に配置され、前記第1の部分と連通し、かつ前記第1の部分よりも拡径された第2の部分と、を有しており、
前記偏心シャフトは、前記第1の凹部、及び前記第1の部分に嵌合されるとともに、前記圧入孔に圧入されており、
前記台座部は、前記ドライブブッシュ本体との間に、前記第2の軸線方向及び前記第2の軸線の径方向に隙間を介在させた状態で前記第2の部分に配置されているスクロール圧縮機。
【請求項2】
前記シャフトは、前記一方の端面側に形成された第2の凹部を有し、
前記ドライブブッシュ本体のうち、前記第2の凹部と対向する部分には、第3の凹部が形成されており、
前記第1及び第2の軸線に対して平行な第3の軸線の方向に延びるリミットピンと、
前記リミットピンの外周面に設けられたラバーリングと、
をさらに備え、
前記ラバーリングが設けられた前記リミットピンの一部は、前記第2及び第3の凹部のうち、一方の凹部の内周面に前記ラバーリングが当接されるように、前記一方の凹部内に収容されており、
前記シャフトの一方の端面から突出する前記リミットピンの残部は、前記第2及び第3の凹部のうち、他方の凹部内に嵌合されている請求項1記載のスクロール圧縮機。
【請求項3】
前記ドライブブッシュの中心軸は、前記第1の軸線に対して平行とされており、
前記第2及び第3の軸線は、前記中心軸に対して直交する直線を通過する位置に配置させる請求項2記載のスクロール圧縮機。
【請求項4】
前記ドライブブッシュ本体のうち、前記シャフト側に位置する外周面には、リング状の切欠き部が形成されており、
前記ドライブブッシュのうち、前記切欠き部が形成された部分と嵌合する嵌合用貫通部を有するバランスウェイトをさらに備える請求項1から3のうち、いずれか一項記載のスクロール圧縮機。
【請求項5】
前記ボス部の内周面と前記ドライブブッシュ本体の外周面との間に配置されたブッシュ用ラジアル軸受をさらに備え、
前記ブッシュ用ラジアル軸受は、ボールベアリングであり、
前記ドライブブッシュの材質は、鋳鉄である請求項1から4のうち、いずれか一項記載のスクロール圧縮機。
【請求項6】
前記シャフトの外側に配置され、前記シャフトを回転させるモータと、
前記シャフトのうち、前記モータと前記ドライブブッシュとの間に位置する部分の外周面を回転可能に支持するシャフト用ラジアル軸受と、
をさらに備え、
前記台座部の外径は、前記シャフト用ラジアル軸受の内径よりも小さい請求項1から4にうち、いずれか一項記載のスクロール圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクロール圧縮機は、固定スクロール、及びボス部をする旋回スクロールからなるスクロール圧縮部と、第1の軸線回りに回転するシャフトと、ボス部の内側に収容されたドライブブッシュと、第1の軸線と平行でかつ、第1の軸線とは異なる第2の軸線の方向に延び、ドライブブッシュに一部が挿入される偏心シャフトと、を備える。
【0003】
特許文献1には、シャフトと、長さ方向において一定の外径とされた偏心シャフトと、を別体とすることで、シャフト及び偏心シャフトを容易に製造する技術が開示されている。
また、特許文献1には、シャフトに形成した嵌合孔に偏心シャフトを圧入させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-371976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように片持ち梁状態で偏心シャフトを支持する場合、運転時において、偏心シャフトのうち、嵌合孔と偏心シャフトとの境界部分(以下、「偏心シャフトの根元部分」という)に高い応力が発生し、偏心シャフトの根元部分に大きな負荷が加えられる可能性があった。
また、上記のように、偏心シャフトの根元部分に大きな負荷が加えられる場合、偏心シャフトの強度が低下する可能性があるため、偏心シャフトの外径を小さくすることが困難であった。このため、ドライブブッシュの径方向のサイズが大型化してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、偏心シャフトの強度を向上させた上で、ドライブブッシュの径方向のサイズの小型化を図ることの可能なスクロール圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係るスクロール圧縮機は、第1の端板部、及び前記第1の端板部に立設された第1の渦巻部を有する固定スクロールと、前記第1の端板部と対向する一面を含む第2の端板部、及び前記第2の端板部の一面に立設され、前記第1の渦巻部と噛み合うことで、圧縮室を形成する第2の渦巻部、及び前記一面の反対側に位置する前記第2の端板部の他面に設けられ、前記他面から突出するボス部をする旋回スクロールと、前記第2の端板部の他面と対向する一方の端面側に形成された第1の凹部を有し、第1の軸線の方向に延びるとともに、前記第1の軸線回りに回転するシャフトと、前記ボス部内に収容された状態で、前記第2の端板部と前記シャフトの一方の端面との間に設けられたドライブブッシュ本体、及び前記第2の端板部から前記シャフトの一方の端面に向かう方向に前記ドライブブッシュ本体を貫通する貫通部を有するドライブブッシュと、前記シャフトの一方の端面に対して一体に設けられ、前記第1の凹部を露出する圧入孔が形成された台座部と、前記第1の凹部、前記圧入孔、及び前記貫通部に配置され、前記第1の軸線と平行な第2の軸線の方向に延びる偏心シャフトと、前記偏心シャフトの前記第2の端板部側の端部に設けられ、前記偏心シャフトの外周面から前記第2の軸線の径方向外側に突出するスナップリングと、を備え、前記ドライブブッシュ本体の前記シャフト側の端面は、前記台座部が設けられた前記シャフトの端面と接触し、前記貫通部は、前記旋回スクロール側に配置された第1の部分と、前記シャフト側に配置され、前記第1の部分と連通し、かつ前記第1の部分よりも拡径された第2の部分と、を有しており、前記偏心シャフトは、前記第1の凹部、及び前記第1の部分に嵌合されるとともに、前記圧入孔に圧入されており、前記台座部は、前記ドライブブッシュ本体との間に、前記第2の軸線方向及び前記第2の軸線の径方向に隙間を介在させた状態で前記第2の部分に配置されている。
【0008】
本発明によれば、シャフトの一方の端面に対して一体に設けられ、第1の凹部を露出する圧入孔が形成された台座部を有するとともに、ドライブブッシュ本体と台座部との間に隙間を介在させた状態で貫通部の第2の部分に台座部を配置させることで、高い応力が発生しやすいシャフトの一方の端面付近に位置する偏心シャフト(偏心シャフトの根元部)の強度を向上させることができる。
【0009】
また、台座部が無い場合と比較して、ドライブブッシュ側に突出する偏心シャフトの長さを短くすることが可能となる。これにより、偏心シャフトの強度を確保することが可能となるので、偏心シャフトの外径を小さくすることが可能となる。これにより、偏心シャフトが嵌合されるドライブブッシュの径方向のサイズの小型化を図ることができる。
さらに、ドライブブッシュ本体と台座部との間に隙間を介在させることで、ドライブブッシュ本体と台座部との間の摩擦力を低減することができる。
【0010】
また、上記本発明の一態様に係るスクロール圧縮機において、前記シャフトは、前記一方の端面側に形成された第2の凹部を有し、前記ドライブブッシュ本体のうち、前記第2の凹部と対向する部分には、第3の凹部が形成されており、前記第1及び第2の軸線に対して平行な第3の軸線の方向に延びるリミットピンと、前記リミットピンの外周面に設けられたラバーリングと、をさらに備え、前記ラバーリングが設けられた前記リミットピンの一部は、前記第2及び第3の凹部のうち、一方の凹部の内周面に前記ラバーリングが当接されるように、前記一方の凹部内に収容されており、前記シャフトの一方の端面から突出する前記リミットピンの残部は、前記第2及び第3の凹部のうち、他方の凹部内に嵌合されていてもよい。
【0011】
このように、シャフトに第2の凹部を形成するとともに、ドライブブッシュ本体に第2の凹部と対向する第3の凹部を形成し、一方の凹部内にリミットピンの一部を収容させ、他方の凹部内にリミットピン残部を嵌合させることで、2つの部材(偏心シャフト及びリミットピン)でシャフトに対するドライブブッシュの位置が規制されるため、スイング量を低減することができる。
また、ラバーリングが設けられたリミットピンの一部を、第2及び第3の凹部のうち、一方の凹部の内周面にラバーリングが当接されるように、一方の凹部内に収容させることで、スイングが発生した際の衝撃を緩和させることができる。
【0012】
また、上記本発明の一態様に係るスクロール圧縮機において、前記ドライブブッシュの中心軸は、前記第1の軸線に対して平行とされており、前記第2及び第3の軸線は、前記中心軸に対して直交する直線を通過する位置に配置させてもよい。
【0013】
このように、ドライブブッシュの中心軸に対して直交する直線を通過する位置に第2及び第3の軸線を配置させることで、可能な限り第3の軸線の位置をドライブブッシュの外側に配置させた上で、リミットピンの太さを確保することができる。
【0014】
また、上記本発明の一態様に係るスクロール圧縮機において、前記ドライブブッシュ本体のうち、前記シャフト側に位置する外周面には、リング状の切欠き部が形成されており、前記ドライブブッシュのうち、前記切欠き部が形成された部分と嵌合する嵌合用貫通部を有するバランスウェイトをさらに備えてもよい。
【0015】
このように、ドライブブッシュとバランスウェイトとを別体とすることで、ドライブブッシュとバランスウェイトとを一体とした場合と比較して加工しやすい形状となるので、ドライブブッシュ及びバランスウェイトを容易に製造することができる。
【0016】
また、上記本発明の一態様に係るスクロール圧縮機において、前記ボス部の内周面と前記ドライブブッシュ本体の外周面との間に配置されたブッシュ用ラジアル軸受をさらに備え、前記ブッシュ用ラジアル軸受は、ボールベアリングであり、前記ドライブブッシュの材質は、鋳鉄であってもよい。
【0017】
このように、ボス部の内周面とドライブブッシュ本体の外周面との間に配置されたブッシュ用ラジアル軸受として、ボールベアリングを用いることで、ブッシュ用ラジアル軸受の内径を小さくすることが可能となる。これにより、ドライブブッシュの外径を小さくすることが可能となる。
このように、ドライブブッシュの外径を小さくすることで、安価な鋳鉄を使用することが可能となり、ドライブブッシュのコストの低減を図ることができる。
【0018】
また、上記本発明の一態様に係るスクロール圧縮機において、前記シャフトを回転させるモータと、前記シャフトのうち、前記モータと前記ドライブブッシュとの間に位置する部分の外周面を回転可能に支持するシャフト用ラジアル軸受と、をさらに備え、前記台座部の外径は、前記シャフト用ラジアル軸受の内径よりも小さくてもよい。
【0019】
このように、台座部の外径をシャフト用ラジアル軸受の内径よりも小さくすることで、ドライブブッシュの径方向のサイズを小さくすることが可能となる。これにより、ドライブブッシュの径方向外側に、バランスウェイトを配置するための空間を形成することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、偏心シャフトの強度を向上させたうえで、ドライブブッシュの径方向のサイズの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るスクロール圧縮機の概略構成を示す断面図である。
図2図1に示すスクロール圧縮機を構成する偏心シャフト及びリミットピンを通過するように、ドライブブッシュ、旋回スクロール、シャフトの端部、シャフト用ラジアル軸受、ブッシュ用ラジアル軸受、及びバランスウェイトを切断した際の断面図である。
図3図2に示すシャフトの端部及び旋回スクロールの断面図である。
図4図2に示すドライブブッシュ、リミットピン、及びラバーリングの断面図である。
図5図4に示す構造体をA視した平面図である。
図6図4に示す構造体をB視した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態)
図1図6を参照して、本発明の実施形態に係るスクロール圧縮機10について説明する。図1の切断面は、図5に示すC-C線方向の断面に対応している。図2において、Rは台座部92の外径(以下、「外径R」という)、Rはシャフト用ラジアル軸受17の内径(以下、「内径R」という)をそれぞれ示している。図2及び図4に示す構造体の切断面は、図5に示すD-D線方向の断面に対応している。
図5において、Lはドライブブッシュ29の中心軸Oに対して直交する直線(以下、「直線L」という)を示している。
図1図6において、Oはシャフト15の軸線(以下、「第1の軸線O」という)、Oは偏心シャフト33の軸線(以下、「第2の軸線O」という)、Oはリミットピン37の軸線(以下、「第3の軸線O」という)、Oはドライブブッシュ29の中心軸(以下、「中心軸O」という)をそれぞれ示している。
なお、第1の軸線Oは、ケーシング12の軸線でもある。
【0023】
スクロール圧縮機10は、ケーシング12と、シャフト15と、シャフト用ラジアル軸受17,18と、モータ21と、スクロール圧縮部23と、スラスト軸受25と、スラストプレート26と、オルダムリング28と、ドライブブッシュ29と、ブッシュ用ラジアル軸受31と、バランスウェイト32と、偏心シャフト33と、台座部92と、スップリング35と、リミットピン37と、ラバーリング38と、を有する。
【0024】
ケーシング12は、ケーシング本体41と、カバー43と、第1の蓋体44と、第2の蓋体46と、を有する。
【0025】
ケーシング本体41は、第1の筒状部51、第2の筒状部52、環状部54と、を有する。
【0026】
第1の筒状部51は、第1の軸線Oを中心とした円筒状をなす部材である。第1の筒状部51は、両端が開放端とされている。第1の筒状部51は、内側に配置されたモータ収容空間51Aを有する。モータ収容空間51Aは、円柱状の空間である。
【0027】
第2の筒状部52は、第1の軸線Oを中心とした円筒状をなす部材である。第2の筒状部52は、両端が開放端とされている。第2の筒状部52は、内側に配置された圧縮部収容空間52Aを有する。圧縮部収容空間52Aは、円柱状の空間である。
【0028】
環状部54は、第1の筒状部51と第2の筒状部52との境界部分の内周面からケーシング本体41の径方向内側に向かって突出している。環状部54には、モータ収容空間51Aと圧縮部収容空間52Aとを連通させる流路56が形成されている。
流路56は、スクロール圧縮部23が圧縮する流体や潤滑油が移動する流路として機能する。
【0029】
カバー43は、基板室を区画する部材であり、両端が開放端とされている。カバー43は、第1の筒状部51のX方向他方側に位置する開放端に設けられている。
カバー43は、モータ収容空間51A内に延出するボス部43Aを有する。ボス部43Aの内側には、シャフト用ラジアル軸受18を配置するためのリング状の切欠き部43Aaが形成されている。
上記構成とされたカバー43は、例えば、ボルト等により第1の筒状部51に固定されている。
【0030】
第1の蓋体44は、カバー43のX方向他方側に位置する開放端を塞ぐように、カバー43に設けられている。
第2の蓋体46は、第2の筒状部52のX方向一方側に位置する開放端を塞ぐように、第2の筒状部52に設けられている。第2の蓋体46は、例えば、ボルト等により第2の筒状部52に固定されている。
【0031】
シャフト15は、ケーシング12内に収容されており、X方向に延びている。シャフト15は、一方の端部61と、他方の端部62と、中間部63と、を有する。
一方の端部61は、X方向他方側に配置された端部である。一方の端部61は、円柱形状とされており、中間部63よりも拡径されている。一方の端部61は、一部が環状部54の内側に配置されており、残部がモータ収容空間51Aに配置されている。
【0032】
一方の端部61は、端面61a(一方の端面)と、外周面61bと、第1の凹部65と、第2の凹部66と、を有する。
端面61aは、X方向一方側に配置された端面である。端面61aは、旋回スクロール76を構成する第2の端板部76Aの他面76Abと対向している。
外周面61bは、環状部54から離れた状態で、環状部54の内周面54aと対向している。
第1の凹部65は、第2の軸線Oを中心軸とする円柱形状の孔である。第1の凹部65は、第2の軸線O方向に延びている。第1の凹部65は、偏心シャフト33を一方の端部61に嵌合させるための孔である。
【0033】
第2の凹部66は、第3の軸線Oを中心軸とする円柱形状の孔である。第2の凹部66は、第3の軸線O方向に延びている。第2の凹部66の内径は、ラバーリング38が取り付けられたリミットピン37を収容可能な大きさとされている。
【0034】
他方の端部62は、X方向他方側に配置された端部である。他方の端部62は、円柱形状とされており、中間部63よりも縮径されている。他方の端部62の外周面は、径方向において切欠き部43Aaから離れた状態で、切欠き部43Aaと対向している。
【0035】
中間部63は、モータ収容空間51Aに配置された円柱状の部材である。中間部63は、一方の端部61と他方の端部62とを連結している。
【0036】
シャフト用ラジアル軸受17は、一方の端部61の外周面61bと環状部54の内周面54aとの間に設けられている。シャフト用ラジアル軸受17は、シャフト15の一方の端部61を回転可能な状態で支持している。
【0037】
シャフト用ラジアル軸受18は、他方の端部62の外周面と切欠き部43Aaとの間に配置されている。シャフト用ラジアル軸受18は、シャフト15の他方の端部62を回転可能な状態で支持している。
【0038】
モータ21は、ロータ71と、ステータ72と、を有する。ロータ71は、シャフト15を構成する中間部63の外周面に固定されている。
ステータ72は、第1の軸線Oを中心とした環状をなしている。ステータ72の外周面は、隙間を介在させた状態で、第1の筒状部51の内周面に固定されている。ステータ72は、ロータ71との間に隙間を介在させた状態で、ロータ71の径方向外側に配置されている。
上記構成とされたモータ21は、第1の軸線O回りにシャフト15を回転させる。
【0039】
スクロール圧縮部23は、ケーシング本体41内に形成された圧縮部収容空間52Aに配置されている。スクロール圧縮部23は、固定スクロール75と、旋回スクロール76と、を有する。
固定スクロール75及び旋回スクロール76は、X方向に配置されている。固定スクロール75は、第2の蓋体46と旋回スクロール76との間に配置されている。
【0040】
固定スクロール75は、第2の筒状部52の内周面に固定されている。固定スクロール75は、第1の端板部75Aと、第1の渦巻部75Bと、吐出孔75Cと、を有する。
第1の端板部75Aは、円形状の板材であり、一面75Aaと、一面75Aaの反対側に配置された他面75Abと、を有する。一面75Aaは、第2の蓋体46と対向している。他面75Abは、旋回スクロール76と対向している。
第1の渦巻部75Bは、第1の端板部75Aの他面75Abから旋回スクロール76に向かうX方向に立設して設けられている。
吐出孔75Cは、第1の端板部75Aの中央部を貫通するように形成されている。吐出孔75Cは、スクロール圧縮部23により圧縮された流体をスクロール圧縮部23の外部に吐出する。
【0041】
旋回スクロール76は、第2の端板部76Aと、第2の渦巻部76Bと、ボス部76Cと、を有する。第2の端板部76Aは、円形の板材であり、一面76Aaと、一面76Aaの反対側に配置された他面76Abと、を有する。一面76Aaは、X方向において、第1の端板部75Aの他面75Abと対向している。他面76Abは、X方向において、環状部54と対向している。
第2の渦巻部76Bは、第2の端板部76Aのから一面76Aaから固定スクロール75に向かうX方向に立設して設けられている。第2の渦巻部76Bは、第1の渦巻部75Bと噛み合っている。旋回スクロール76と固定スクロール75との間には、流体が圧縮される圧縮室78が形成されている。
【0042】
スラスト軸受25は、X方向に配置された環状部54とスラストプレート26との間に設けられている。
スラストプレート26は、X方向に配置されたスラスト軸受25とオルダムリング28との間に設けられている。
オルダムリング28は、X方向に配置されたスラストプレート26と第2の端板部76Aとの間に設けられている。
【0043】
ドライブブッシュ29は、ドライブブッシュ本体81と、貫通部82と、第3の凹部84と、凹部85と、切欠き部86と、を有する。
ドライブブッシュ本体81は、ボス部76Cとの間に間隔を空けた状態で、ボス部76C内に収容されている。ドライブブッシュ本体81は、第2の端板部76Aとシャフト15の端面61a(一方の端面)との間に設けられている。
ドライブブッシュ本体81は、一面81aと、一面81aの反対側に配置された他面81bと、を有する。一面81a及び他面81bは、X方向に配置された面である。一面81aは、第2の端板部76Aと対向している。他面81bは、シャフト15の端面61aと接触している。
【0044】
貫通部82は、ドライブブッシュ本体81のうち、シャフト15の一方の端部61に形成された第1の凹部65と対向する部分をX方向(第2の端板部76Aからシャフト15の端面61aに向かう方向)に貫通するように形成されている。
貫通部82は、第1の部分82Aと、第2の部分82Bと、を有する。
第1の部分82Aは、第2の端板部76A側に形成されており、X方向に延びている。第1の部分82Aは、円柱形状とされた孔である。第1の部分82Aの内径は、偏心シャフト33の外径と略等しい大きさとされている。
【0045】
第2の部分82Bは、シャフト15側に形成されており、X方向に延びている。第2の部分82Bは、円柱形状とされた孔である。第2の部分82Bは、第1の部分82Aと連通するとともに、第1の部分82Aの内径よりも拡径された内径を有する。
上記構成とされた第1及び第2の部分82A,82Bの軸線は、第1及び第2の部分82A,82Bに収容された偏心シャフト33の第2の軸線Oと一致している。
【0046】
第3の凹部84は、第2の凹部66と対向するドライブブッシュ本体81の他面81b側に形成されている。第3の凹部84は、円柱形状とされており、X方向に延びている。第3の凹部84の内径は、第2の凹部66の内径よりも小さくなるように構成されている。第3の凹部84の内径は、リミットピン37を嵌合させることが可能な大きさとされている。
【0047】
凹部85は、ドライブブッシュ本体81の一面81a側に形成されている。凹部85は、第2の部分82Bよりも径の大きい円柱状の穴である。
【0048】
ブッシュ用ラジアル軸受31は、ボス部76Cの内周面とドライブブッシュ29の外周面との間に設けられている。ブッシュ用ラジアル軸受31としては、例えば、ボールベアリングを用いるとよい。
このように、ブッシュ用ラジアル軸受31として、ボールベアリングを用いることで、ブッシュ用ラジアル軸受31の内径を小さくすることが可能となる。これにより、ドライブブッシュ29の外径を小さくすることが可能となる。
このように、ドライブブッシュ29の外径を小さくすることで、ドライブブッシュ29の材質として安価な鋳鉄を使用することが可能となる。これにより、ドライブブッシュ29のコストの低減を図ることができる。
【0049】
切欠き部86は、ドライブブッシュ本体81のうち、シャフト15側に位置する外周面にリング状に形成されている。
【0050】
バランスウェイト32は、ドライブブッシュのうち、前記切欠き部が形成された部分と嵌合する嵌合用貫通部32Aを有する。
嵌合用貫通部32Aは、ドライブブッシュ29のうち、切欠き部86が形成された部分と嵌合している。
つまり、バランスウェイト32は、ドライブブッシュ29とは別体とされている。
【0051】
このように、ドライブブッシュ29とバランスウェイト32とを別体とすることで、ドライブブッシュ29とバランスウェイト32とを一体とした形状と比較して加工しやすい形状になるので、ドライブブッシュ29及びバランスウェイト32を容易に製造することができる。
【0052】
上記構成とされたドライブブッシュ29の中心軸Oは、X方向に延び、第1~第3の軸線O,O,O3に対して平行な軸である。
【0053】
偏心シャフト33は、第2の軸線O方向に延びている。偏心シャフト33は、外径が一定の大きさとされている。偏心シャフト33は、第1の凹部65及び貫通部82に嵌合(圧入)されている。第2の端板部76A側に位置する偏心シャフト33の端部33Aは、凹部85内に配置されている。偏心シャフト33の端部33Aは、X方向において、第2の端板部76Aから離れた位置に配置されている。
【0054】
台座部92は、シャフト15の端面61aに対して一体に設けられており、第1の凹部65を露出する圧入孔92Aが形成されている。台座部92は、偏心シャフト33の外周面33aのうち、第2の部分82Bに位置する外周面33aに配置されている。
第2の部分82Bに配置された状態において、台座部92は、ドライブブッシュ本体81との間に隙間95を形成している。
【0055】
このように、シャフト15の一方の端面61aに対して一体に設けられ、第1の凹部65を露出する圧入孔92Aが形成された台座部92を有するとともに、ドライブブッシュ本体81と台座部92との間に隙間95を介在させた状態で貫通部82の第2の部分82Bに台座部92を配置させることで、高い応力が発生しやすいシャフト15の一方の端面61a付近に位置する偏心シャフト33(偏心シャフトの根元部)の強度を向上させることができる。
【0056】
また、台座部92が無い場合と比較して、ドライブブッシュ29側に突出する偏心シャフト33の長さを短くすることが可能となる。これにより、偏心シャフト33の強度を確保することが可能となるので、偏心シャフト33の外径を小さくすることが可能となる。これにより、偏心シャフト33が嵌合されるドライブブッシュ29の径方向のサイズの小型化を図ることができる。
さらに、ドライブブッシュ本体81と台座部92との間に隙間95を介在させることで、ドライブブッシュ本体81と台座部92との間の摩擦力を低減することができる。
【0057】
台座部92の外径Rは、例えば、シャフト用ラジアル軸受17の内径Rよりも小さいことが好ましい。
このように、台座部92の外径Rをシャフト用ラジアル軸受17の内径Rよりも小さくすることで、ドライブブッシュ29の径方向のサイズを小さくすることが可能となる。これにより、ドライブブッシュ29の径方向外側に、バランスウェイト32を配置するための空間を形成することができる。
【0058】
ップリング35は、偏心シャフト33の端部33Aの外周部に設けられている。スップリング35は、偏心シャフト33の端部33Aの外周面33aから径方向外側に突出している。
このように、偏心シャフト33の端部33Aの外周面33aから径方向外側に突出するスップリング35を設けることで、第2の端板部76Aからシャフト15に向かうX方向における偏心シャフト33の位置を規制することができる。
【0059】
リミットピン37は、円柱形状とされたピンである、リミットピン37は、その一部が第2の凹部66内に配置されており、残部が第3の凹部84に嵌合(圧入)されている。
リミットピン37は、第1の軸線O方向に対して平行な第3の軸線O方向に延びている。リミットピン37の一部の外周面には、リング状凹部37Aが形成されている。
【0060】
ラバーリング38は、リング状凹部37Aに配置されている。ラバーリング38は、リミットピン37の一部とともに、第2の凹部66内に配置されている。
ラバーリング38が設けられたリミットピン37の一部は、第2の凹部66の内周面にラバーリング38が当接されるように、第2の凹部66内に収容されている。
【0061】
このように、第2の凹部66内にラバーリング38が設けられたリミットピン37の一部を配置させるとともに、第3の凹部84にリミットピン37の残部を嵌合(圧入)させることで、2つの部材(偏心シャフト33及びリミットピン37)でシャフト15に対するドライブブッシュ29の位置が規制されるため、スイング量を低減することができる。
また、ラバーリング38が設けられたリミットピン37の一部を、第2の凹部66の内周面にラバーリング38が当接されるように収容させることで、スイングが発生した際の衝撃を緩和させることができる。
【0062】
上述した第2及び第3の軸線O,Oは、例えば、ドライブブッシュ29の中心軸Oに対して直交する直線Lを通過する位置に配置させることが好ましい。
【0063】
このように、ドライブブッシュ29の中心軸Oに対して直交する直線Lを通過する位置に第2及び第3の軸線O,Oを配置させることで、可能な限り第3の軸線Oの位置をドライブブッシュ29の外側に配置させた上で、リミットピン37の太さを確保することができる。
【0064】
本実施形態のスクロール圧縮機10によれば、シャフト15の一方の端面61aに対して一体に設けられ、第1の凹部65を露出する圧入孔92Aが形成された台座部92を有するとともに、ドライブブッシュ本体81と台座部92との間に隙間95を介在させた状態で貫通部82の第2の部分82Bに台座部92を配置させることで、高い応力が発生しやすいシャフト15の一方の端面61a付近に位置する偏心シャフト33(偏心シャフトの根元部)の強度を向上させることができる。
【0065】
また、台座部92が無い場合と比較して、ドライブブッシュ29側に突出する偏心シャフト33の長さを短くすることが可能となる。これにより、偏心シャフト33の強度を確保することが可能となるので、偏心シャフト33の外径を小さくすることが可能となる。これにより、偏心シャフト33が嵌合されるドライブブッシュ29の径方向のサイズの小型化を図ることができる。
さらに、ドライブブッシュ本体81と台座部92との間に隙間95を介在させることで、ドライブブッシュ本体81と台座部92との間の摩擦力を低減することができる。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0067】
例えば、本実施形態では、一例として、シャフト15に第2の凹部66を形成し、ドライブブッシュ本体81に第3の凹部84を形成した場合を例に挙げて説明したが、リミットピン37の残部が嵌合(圧入)される第3の凹部84をシャフト15に形成し、ラバーリング38が設けられたリミットピン37の一部が収容される第2の凹部66をドライブブッシュ本体81に形成してもよい。
【符号の説明】
【0068】
10…スクロール圧縮機
12…ケーシング
15…シャフト
17,18…シャフト用ラジアル軸受
21…モータ
23…スクロール圧縮部
25…スラスト軸受
26…スラストプレート
28…オルダムリング
29…ドライブブッシュ
31…ブッシュ用ラジアル軸受
32…バランスウェイト
32A…嵌合用貫通部
33…偏心シャフト
33A…端部
35…スップリング
37…リミットピン
37A…リング状凹部
38…ラバーリング
41…ケーシング本体
43…カバー
43A…ボス部
43Aa,86…切欠き部
44…第1の蓋体
46…第2の蓋体
51…第1の筒状部
51A…モータ収容空間
52…第2の筒状部
52A…圧縮部収容空間
54…環状部
54a…内周面
56…流路
61…一方の端部
61a…端面
61b,33a…外周面
62…他方の端部
63…中間部
65…第1の凹部
66…第2の凹部
71…ロータ
72…ステータ
75…固定スクロール
75A…第1の端板部
75Aa,76Aa,81a…一面
75Ab,76Ab,81b…他面
75B…第1の渦巻部
75C…吐出孔
76…旋回スクロール
76A…第2の端板部
76B…第2の渦巻部
76C…ボス部
78…圧縮室
81…ドライブブッシュ本体
82…貫通部
82A…第1の部分
82B…第2の部分
84…第3の凹部
85…凹部
92…台座部
92A…圧入孔
95…隙間
L…直線
O1…第1の軸線
O2…第2の軸線
O3…第3の軸線
O4…中心軸
R1…外径
R2…内径
図1
図2
図3
図4
図5
図6