(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】電流を遮断する装置、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
H01H 9/54 20060101AFI20220201BHJP
H01H 9/42 20060101ALI20220201BHJP
H01H 33/59 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
H01H9/54 A
H01H9/42
H01H33/59 A
H01H33/59 G
(21)【出願番号】P 2018533158
(86)(22)【出願日】2016-12-08
(86)【国際出願番号】 SE2016051233
(87)【国際公開番号】W WO2017116296
(87)【国際公開日】2017-07-06
【審査請求日】2019-11-19
(32)【優先日】2015-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】516386122
【氏名又は名称】サイブレーク アーベー
【氏名又は名称原語表記】SCIBREAK AB
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【氏名又は名称】太田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】スタファン ノーガ
(72)【発明者】
【氏名】レナルト アングィスト
(72)【発明者】
【氏名】トーマス モデーア
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-073845(JP,A)
【文献】特表2015-507325(JP,A)
【文献】国際公開第2011/034140(WO,A1)
【文献】特開2014-235834(JP,A)
【文献】特開平06-215669(JP,A)
【文献】特開2004-288478(JP,A)
【文献】特開2002-271975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/30 - 9/56
H01H 33/00 - 33/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統の2つの区分(100,200)を電気的に接続するように構成された、第1及び第2の端子(11,12)を備える電流遮断装置(10)であって、少なくとも、機械的主回路遮断器(1)を含み、該機械的主回路遮断器が閉じるとき該機械的主回路遮断器を経て前記端子(11,12)の間で主電流(I)を流すことができる主ブランチ(15)と、前記主ブランチ(15)と並列に接続された2極回路(3)とを備え、前記2極回路(3)は、キャパシタ(31)及びエネルギー吸収装置(2)を含む少なくとも1つの2極ブランチ(16)を備え、前記主ブランチ(15)と前記2極回路(3)は一緒にループを構成し、該ループはインダクタ(32)及び電圧制御手段(4)を含み、少なくとも1つの共振周波数を示す、電流遮断装置において、
前記電圧制御手段(4)は、前記機械的主回路遮断器(1)が主電流(I)を遮断するために開くよう制御されるとき、
前記機械的主回路遮断器の接点間に発生するアークを通して、前記ループに含まれる前記主ブランチ(15)を流れる交流電流(Io)を急速に増加させるために前記ループにエネルギーを注入するように使用中制御可能であり、それによって前記交流電流(Io)の振幅(AIo)が前記主電流(I)の振幅(AI)を超えるとき、前記機械的主回路遮断器(1)を流れる電流(I
sw)のゼロクロスが実現され、
前記エネルギー吸収装置(2)は、前記機械的主回路遮断器が開くとき、前記キャパシタ(31)の両端間及び前記機械的主回路遮断器(1)の両端間の電圧を制限するよう構成され、且つ
前記エネルギー吸収装置(2)は、前記機械的主回路遮断器の両端間電圧が開路プロセス時に又はその直後にブレークダウンする場合に前記インダクタ(32)の両端間電圧を制限するように構成され、それによって前記ループを流れる電流の上昇率及びピークを制限する、
ことを特徴とする電流遮断装置(10)。
【請求項2】
前記2極回路(3)は少なくとも2つの2極ブランチ(16)の並列接続を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の電流遮断装置(10)。
【請求項3】
少なくとも1つの2極ブランチ(16)は、少なくとも1つのキャパシタ(31)と少なくとも1つのインダクタ(32)と1つの電圧制御手段の直列接続を備え、更に前記キャパシタ(31)と並列に接続された少なくとも1つのエネルギー吸収電圧制限装置(2)を備える、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電流遮断装置(10)。
【請求項4】
少なくとも1つの2極ブランチ(16)は、少なくとも1つのキャパシタ(31)と少なくとも1つのインダクタ(32)と1つの電圧制御手段の直列接続を備え、更に前記キャパシタ(31)と前記電圧
制御手段(4)の直列接続と並列に接続された少なくとも1つのエネルギー吸収電圧制限装置(2)を備える、ことを特徴とする請求項1-3のいずれか一項に記載の電流遮断装置(10)。
【請求項5】
前記端子(11,12)は、前記主ブランチ(15)及び前記2極回路(3)が前記機械的主回路遮断器(1)の両側に結合された点に接続されている、ことを特徴とする請求項1-4のいずれか一項に記載の電流遮断装置。
【請求項6】
前記機械的主回路遮断器(1)の端子間の接続された過電圧低減回路(17)を備える、ことを特徴とする請求項1-5のいずれか一項に記載の電流遮断装置。
【請求項7】
前記過電圧低減回路(17)は少なくとも1つの抵抗と少なくとも1つのキャパシタを含む直列接続である、ことを特徴とする請求項6に記載の電流遮断装置。
【請求項8】
前記第1及び第2の端子(11,12)の少なくとも1つと直列に接続された少なくとも1つの断路スイッチ(5)を備え、該断路スイッチは電力系統の前記2つの区分(100,200)の物理的分離を提供するように使用中接続可能である、ことを特徴とする請求項1-7のいずれか一項に記載の電流遮断装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの電圧制御手段(4)は静電圧源コンバータである、ことを特徴とする請求項1-8のいずれか一項に記載の電流遮断装置。
【請求項10】
前記キャパシタ(31)には放電手段(33)が設けられている、ことを特徴とすることを特徴とする請求項1-9のいずれか一項に記載の電流遮断装置。
【請求項11】
前記機械的主回路遮断器(1)は、前記機械的主回路遮断器の開路プロセス中に移動するように構成された接点を備え、前記機械的主回路遮断器(1)は少なくとも一つのセンサを備える、ことを特徴とする請求項1-10のいずれか一項に記載の電流遮断装置。
【請求項12】
前記少なくとも一つのセンサは前記機械的主回路遮断器の開路プロセス中に前記接点の位置、加速度及び速度の少なくとも一つを決定するように構成されている、ことを特徴とする請求項11に記載の電流遮断装置。
【請求項13】
前記少なくとも一つのセンサは物理量、好ましくはアーク電圧降下、音響現象及び光学的又は熱的又はX線放射などの電磁放射又は雑音の少なくとも一つを検出するように構成されている、ことを特徴とする請求項11又は12に記載の電流遮断装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの2極ブランチ(16)は、前記ループがいくつかの共振周波数を示すように追加の受動コンポーネントを備える、ことを特徴とする請求項1-10のいずれか一項に記載の電流遮断装置。
【請求項15】
前記2極回路(3)は異なる共振周波数を有する複数の2極ブランチ(16)を備え、それによって前記ループがいくつかの共振周波数を示す、ことを特徴とする請求項1-14のいずれか一項に記載の電流遮断装置。
【請求項16】
前記主ブランチ(15)は、前記機械的主回路遮断器(1)を流れる電流のゼロクロスの近傍での電流変化率を低減するために前記機械的主回路遮断器(1)と直列に配置された可飽和リアクトル(8)を更に備える、ことを特徴とする請求項1-15のいずれか一項に記載の電流遮断装置。
【請求項17】
前記主ブランチ(15)及び前記2極回路(3)と並列に配置された追加の回路ブランチ(18)を更に備え、前記追加の回路ブランチ(18)は、電流遮断中に、逆電流(Io-I)のための代替通路を提供する逆電流制御手段(6)を前記機械的主回路遮断器(1)から離れて備える、ことを特徴とする請求項1-16のいずれか一項に記載の電流遮断装置。
【請求項18】
前記逆電流制御手段(6)は互に逆方向に流れる電流を制御するよう逆並列に配置された2つのサイリスタ(61,62)を備える、ことを特徴とする請求項17記載の電流遮断装置。
【請求項19】
前記主ブランチ(15)は、前記機械的主回路遮断器(1)と直列に配置された低電圧半導体スイッチ(7)を更に備え、前記低電圧半導体スイッチは前記機械的主回路遮断器(1)からの電流を前記追加の回路ブランチ(18)へ迂回させるように使用中制御可能である、ことを特徴とする請求項17又は18に記載の電流遮断装置。
【請求項20】
前記電流遮断装置は直流遮断器である、ことを特徴とする請求項1-19のいずれか一項に記載の電流遮断装置。
【請求項21】
前記電流遮断装置は電流制限交流遮断器である、ことを特徴とする請求項1-19のいずれか一項に記載の電流遮断装置。
【請求項22】
請求項1-21のいずれか一項に記載の少なくとも2つの電流遮断装置(10)を備え、前記少なくとも2つの電流遮断装置(10)は直列に接続されている、電流遮断システム。
【請求項23】
請求項1-22のいずれか一項に記載の電流遮断装置(10)を用いて電力系統の電流を遮断する方法において、前記方法は、
前記機械的主回路遮断器(1)の接点の分離を促進し、振幅(AI)を有する主電流(I)を遮断するために機械的主回路遮断器(1)を開くステップと、
前記主ブランチ(15)内に電流ゼロクロスを生じさせるために前記遮断された主電流(I)の振幅(AI)より高い最大振幅(AIo)を有する振動電流(Io)を励振するために前記2極回路(3)内
の前記電圧制御手段(4)を制御するステップと、
を備える、ことを特徴とする電流遮断方法。
【請求項24】
前記電圧制御手段(4)を励振する波形は、前記ループのフィルタ特性に関して、前記機械的主回路遮断器(1)を含む前記主ブランチ(15)内で電流ゼロクロスを生じさせるために所望の波形を有する振動電流を提供するように設計される、ことを特徴とする請求項23に記載の電流遮断方法。
【請求項25】
前記機械的主回路遮断器(1)を含む前記主ブランチ(15)内で電流ゼロクロスを生じさせるために所望の波形を有する全振動電流を提供すべく、前記2極ブランチ(16)の数、それらの共振周波数及びそれらのそれぞれの始動時間が選択される、ことを特徴とする請求項23又は24に記載の電流遮断方法。
【請求項26】
前記機械的主回路遮断器を開くステップ及び前記電圧制御手段を制御するステップは同時に且つ協調して実行される、ことを特徴とする請求項23-25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ステップの実行順序は、前記機械的主回路遮断器を流れる電流のゼロクロスが、前記接点が互いに離れるときに前記機械的主回路遮断器に確立される絶縁破壊強度に対して最適な瞬時に生じるように予め規定される、ことを特徴とする請求項23及び26のいずれか一項に記載の電流遮断方法。
【請求項28】
前記一連のステップは連続するステップの間に所定の時間遅延を置いて実行され、前記時間遅延は一定もしくは遮断すべき前記主電流の振幅に依存して変化する、ことを特徴とする請求項23-27のいずれか一項に記載の電流遮断方法。
【請求項29】
前記ステップ間の時間遅延を決定するためにセンサを用いる、ことを特徴とする請求項26-28のいずれか一項に記載の電流遮断方法。
【請求項30】
前記ステップの一つ又はいくつかの実行はコンディショナルであり、前記機械的主回路遮断器(1)を流れる電流(I
sw)にゼロクロスを生じるような振幅を有する振動電流が励振され且つ主電流(I)を遮断する完全な一連のステップを実行するか、遮断を完了しないかの決定がなされるまで維持され、遮断を完了しない場合には振動電流は抑制される、ことを特徴とする請求項23-29のいずれか一項に記載の電流遮断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に電力系統の電流の遮断に関し、特に主電流を遮断するために補助振動電流の付加を用いる回路遮断器に関する。本発明は電流を遮断するシステム及び方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器又は他の電流遮断手段の使用は一般に電気システム、例えば電力配電又は送電システムにおいて、特に電力系統内の種々のコンポーネントの動作を、特に短絡障害又は過電流状態などの障害状態の下で保護し、絶縁し、及び/又は制御する手段として十分に確立されている。回路遮断器は電力系統の特定のコンポーネント又は部分を修理及び/又は保守管理する間、電力系統のいくつかの部分を絶縁分離するためにも使用される。更に、回路遮断器はモータや他の工業負荷などの様々な負荷をネットワークに接続するために頻繁に使用されている。
【0003】
様々なタイプの回路遮断器が電力系統の電流又は電圧レベルに応じて電流遮断器として使用されている。通常、機械的回路遮断器が使用され、その接点を分離させるために使用されるアクチュエータはモータ、ばね、空気圧装置又は他のいくつかの手段を使用し得る。別の電流遮断器は半導体デバイスを使用し得る。
【0004】
殆どの用途において、特に安全上の理由のために、電流遮断器は回路遮断器の両サイド間で物理的な分離を実現する必要があり、従って固体電流遮断器を使用する場合でも機械的スイッチが必要とされる。機械的スイッチは半導体デバイスにおける損失をなくすために固体電流遮断器と並列に使用してもよく、これは高電圧用途に使用されるときに有効であり得るが、必要な耐電圧性能を達成するために多数のデバイスの直列接続を必要とする。
【0005】
電気回路を流れる電流を接点分離により遮断するとき、一般に接点間にアークが発生する。高電圧ではアークを消弧するにはアークを流れる電流を自然に、又は人工的手段によってゼロクロスさせなければならない。交流電力系統では、電流ゼロはシステム周波数の半サイクル毎に1度自然に起こるため、交流回路遮断器は一般に簡単な構成で実現され、十分に確立されている。しかしながら、いくつかの用途では、障害電流が高レベルに達するのを阻止するため又は高感度機器を保護するために、交流システムの電流を電流の自然発生ゼロクロスにより与えられるペースより速いペースで遮断することが望まれる。
【0006】
他方、直流システムでは電流の自然発生ゼロクロスは起こらないため、直流電力系統の障害電流を遮断する高速直流遮断器を実現するために多くの試みが行われている。この問題は、従来技術では、遮断すべき電流に交流電流を重畳してゼロクロスを生じさせる共振回路を導入することによって解決している。特許文献1には、機械的電流遮断器を少なくとも一つのキャパシタと少なくとも一つのインダクタと少なくとも一つのスイッチ素子を含む共振回路と並列に使用する直流回路遮断装置が開示されている。共振回路はスイッチ素子を閉じることによって電流遮断器で発生されるアークの電流に重畳する共振電流を発生するように構成されている。この構成は、振動電流が基本的にアーク電圧により励振されるという欠点を有する。この欠点を克服するために、開示の装置は必要に応じキャパシタを充電する電力を搬送し得る補助電源を備えている。この装置は複雑な充電プロセスを必要とするとともに、用途毎に特別に構成する必要がある。
【0007】
特許文献2には、上記の問題を解決するために充電されたキャパシタを用いて強制的にゼロ電流を生じさせることが開示されている。これを達成するために、一端が直流線路の正極母線に接続され、他端が充電抵抗を経て直流線路の負極母線に接続された転流キャパシタと、転流キャパシタと並列に接続され、電磁反発コイル及び第2のスイッチを含む直列回路とを備え、転流キャパシタが正の直流線路から直接充電される直流回路遮断器を開示している。遮断ユニットが開き始めるとき、第2のスイッチが充電された転流キャパシタの極性を逆転するためにターンオンされるため、遮断ユニットが開くと同時に逆放電電流が遮断ユニットに流される。この発明の欠点は可制御性が非常に制限され、最適なスイッチング動作を達成することが難しいことにある。更に、この解決法は高電圧用途に適切でなく、提案の充電機構に種々の制約をもたらす。
【0008】
直流電流送電線用の回路遮断装置が特許文献3に開示されている。この回路遮断装置は、駆動時に送電線の電流を遮断するように構成された機械的電流遮断ユニットと2つの共振回路を備え、各共振回路は、電流遮断ユニットの駆動時に電流遮断ユニットで発生するアーク電流に重畳する共振電流を発生し、第1の共振回路により発生された共振電流が第2の共振回路により発生された共振電流と異なる方向から電流遮断ユニットに流入するように構成されている。この提案の解決法は、2つの共振回路を必要とし、それらの共振回路を接続する2つのスイッチを制御する追加の複雑さを有する不利がある。
【0009】
非特許文献1において、筆者達は、真空遮断器を流れる全電流の人工的なゼロクロスを生成するために、予備充電されたキャパシタが負荷電流を搬送する真空遮断器を経て放電した場合の実験について記載している。真空遮断器は高速の消弧や極めて速い絶縁耐力の増加など、この用途に魅力的な特性を有することが示されている。放電は制御トリガギャップを点弧することにより開始され、それによって装置の仕事をシングルショット放電動作に制限する。
【0010】
例えば、非特許文献2などから、真空遮断器の両端間電圧が電流ゼロクロスにおける電流ターンオフの直後に増加し始めるとき、真空遮断器の耐電圧能力がブレークダウン(絶縁破壊)し得る(いわゆるレイトブレークダウン)ことが周知である。この現象は殆どの場合遮断室の粒子汚染に起因する。電圧ブレークダウンは、電流ターンオフの数ミリ秒後に真空遮断器の両端間電圧が高い値に上昇したときに起こり得る。真空遮断器ベースの如何なる電流遮断装置の設計もこの現象を考慮し、適切な予防措置を講じる必要がある。
【0011】
一般に、遮断器に電流を駆動するソースは内部インダクタンスを有する。これは特に送電用途に有効である。電流が遮断されるとき、ソースインダクタンスに蓄積された磁気エネルギーは電流遮断装置で吸収されなければならない。この目的のためには、金属酸化物バリスタ(MOV)が使用される場合が多く、MOVは同時に電圧制限機能も提供する。MOVは、特許文献1に示されているように、機械的主遮断器の両端間に直接接続することができる。しかしながら、この回路トポロジは電流遮断装置にあまり実用的でなく、上述したようなレイト電圧ブレークダウン状況を有効に処理すべきである。
【0012】
電流を遮断する従来装置の例は
図1-4に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際公開第2014/166528号
【文献】米国特許第4805062号明細書
【文献】国際公開第2014/154260号
【非特許文献】
【0014】
【文献】J.M. Anderson, J.J. Carroll, "Applicability of a Vacuum Interrupter as the Basic Switch Element in HVDC Breakers", IEEE Transactions on Power Apparatus and Systems, Vol. PAS-97, No. 5, Sept/Oct 1972,
【文献】M. Schlaug et al, "Late Breakdown Phenomena in Vacuum Interrupters", XXIIIrd Int. Symp. on Discharges and Electrical Insulation in Vacuum -Bucharest - 2008,
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、従来技術の問題及び欠点を克服し、遮断すべき電流のタイプに関わらず電流遮断能力を改善することにある。特に、本発明は、レイト電圧ブレークダウン状況をうまく処理して安全な電流遮断が保証されるように設計される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、
第1及び第2の端子を備え、電力系統の2つの区分を電気的に接続するように構成された電流遮断装置であって、少なくとも、機械的主回路遮断器を含み、該主回路遮断器が閉じるとき該主回路遮断器を経て前記端子の間で主電流を流すことができる主ブランチと、前記主ブランチと並列に接続された2極回路(two-pole)とを備え、前記2極回路は、キャパシタ及びエネルギー吸収装置を含む少なくとも1つの2極ブランチを備え、前記主ブランチと前記2極回路は一緒にループを構成し、該ループはインダクタンス及び電圧制御手段を含み、少なくとも1つの共振周波数を示す、電流遮断装置において、前記電圧制御手段は、前記機械的主回路遮断器が主電流を遮断するために開くよう制御されるとき、前記機械的主回路遮断器の接点間に発生するアークを通して、前記ループに含まれる前記主ブランチを流れる交流電流を急速に増加させるために前記ループにエネルギーを注入するように使用中制御可能であり、それによって前記交流電流の振幅が前記主電流の振幅を超えるとき、前記機械的主回路遮断器を流れる電流のゼロクロスが実現され、前記エネルギー吸収装置は、前記機械的遮断器が開くとき、前記キャパシタの両端間及び前記機械的遮断器の両端間の電圧を制限するよう構成され、且つ前記エネルギー吸収装置は、前記機械的遮断器の両端間の電圧がブレークダウンする場合に前記誘導性要素の両端間電圧を制限するように構成され、それによって前記ループを流れる電流の上昇率及びピークを制限する、ことを特徴とする、電流遮断装置によって達成される。
【0017】
好ましい実施形態において、前記2極回路は少なくとも2つの2極ブランチの並列接続を備える。
【0018】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの2極ブランチは、少なくとも1つのキャパシタと少なくとも1つのインダクタと1つの電圧制御手段の直列接続を備え、更に前記キャパシタと並列に接続された少なくとも1つのエネルギー吸収電圧制限装置を備える。代わりに又は加えて、少なくとも1つの2極ブランチは、少なくとも1つのキャパシタと少なくとも1つのインダクタと1つの電圧制御手段の直列接続を備え、更に前記キャパシタと前記電圧接続手段の直列接続と並列に接続された少なくとも1つのエネルギー吸収電圧制限装置を備える。
【0019】
好ましい実施形態において、前記端子は前記主ブランチ及び前記2極回路が前記主遮断器の両側に結合された点に接続されている。
【0020】
好ましい実施形態において、過電圧低減回路が設けられ、前記機械的遮断器の端子間に接続されている。前記過電圧低減回路は好ましくは少なくとも1つの抵抗と少なくとも1つのキャパシタを含む直列接続である。
【0021】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの断路スイッチが前記第1及び第2の端子の少なくとも1つと直列に配置され、該断路スイッチは電力系統の前記2つの区分の物理的分離を提供するように使用中接続可能である。
【0022】
好ましい実施形態において、前記少なくとも1つの電圧制御手段は静電圧源コンバータである。
【0023】
好ましい実施形態において、前記キャパシタには放電手段が設けられている。
【0024】
好ましい実施形態において、前記機械的遮断器は前記機械的遮断器の開路プロセス中に移動するように構成された接点を備え、且つ前記機械的遮断器は少なくとも一つのセンサを備えている。前記少なくとも一つのセンサは前記機械的遮断器の開路プロセス中に前記接点の位置、加速度及び速度の少なくとも一つを決定するように構成されている。更に、前記少なくとも一つのセンサは物理量、好ましくはアーク電圧降下、音響現象及び光学的又は熱的又はX線放射などの電磁放射又は雑音の少なくとも一つを検出するように構成されている。
【0025】
好ましい実施形態において、前記少なくとも1つの2極ブランチは、前記ループがいくつかの共振周波数を呈するように追加の受動コンポーネントを備えている。
【0026】
好ましい実施形態において、前記2極回路は異なる共振周波数を有する複数の2極ブランチを備え、それによって前記ループがいくつかの共振周波数を呈する。
【0027】
好ましい実施形態において、前記主ブランチは、前記機械的遮断器を流れる電流のゼロクロスの近傍での電流変化率を低減するために前記機械的遮断器と直列に配置された可飽和リアクトルを更に備える。
【0028】
好ましい実施形態において、前記主ブランチ及び前記2極回路と並列に追加の回路ブランチが配置され、前記追加の回路ブランチは、電流遮断中に、逆電流のための代替通路を提供する逆電流制御手段を前記機械的遮断器から離れて備えている。前記逆電流制御手段は、好ましくは、互に逆方向に流れる電流を制御するよう逆並列に配置された2つのサイリスタを備える。更に、前記主ブランチは前記機械的遮断器と直列に配置された低電圧半導体スイッチ備え、前記低電圧半導体スイッチは前記機械的遮断器からの電流を前記追加の回路ブランチへ迂回させるように使用中制御可能である。
【0029】
好ましい実施形態において、前記電流遮断装置は直流遮断器である。あるいは、前記電流遮断装置は電流制限交流遮断器である。
【0030】
本発明の第2の態様によれば、少なくとも2つの本発明による電流遮断装置を備え、前記少なくとも2つの電流遮断装置が直列に接続された電流遮断システムが提供される。
【0031】
本発明の第3の態様によれば、本発明による電流遮断装置を用いて電力系統の電流を遮断する方法が提供され、前記方法は、前記機械的遮断器の接点の分離を促進し、振幅を有する主電流を遮断するために前記機械的遮断器を開くステップと、電流ゼロクロスを生じさせるために前記遮断された主電流の振幅より高い最大振幅を有する振動電流を励振するために前記電圧制御手段を制御するステップとを備える、ことを特徴とする。
【0032】
好ましい実施形態において、前記電圧制御手段を励振する波形は、前記ループのフィルタ特性に関して、前記遮断器を含む前記主ブランチ内で電流ゼロクロスを生じさせるために所望の波形を有する全振動電流を提供するように設計される。
【0033】
好ましい実施形態において、前記遮断器を含む前記ブランチ内で電流ゼロクロスを生じさせるために所望の波形を有する全振動電流を提供するように、前記2極ブランチの数、それらの共振周波数及びそれらのそれぞれの始動時間が選択される。
【0034】
好ましい実施形態において、前記機械的回路遮断器を開くステップ及び前記電圧制御手段を制御するステップは同時に且つ協調して実行される。
【0035】
好ましい実施形態において、前記ステップの実行順序は、前記機械的遮断器を流れる電流のゼロクロスが、前記接点が互いに離れるときに前記遮断器に確立される絶縁耐力に対して最適な瞬時に生じるように予め規定される。
【0036】
好ましい実施形態において、前記一連のステップは連続するステップの間に所定の時間遅延を置いて実行され、前記時間遅延は一定もしくは遮断すべき前記主電流の振幅に依存して変化する。
【0037】
好ましい実施形態において、前記連続するステップの間の所定の時間遅延は、最小の総時間内に前記機械的遮断器の接点分離距離が前記第2の並列ブランチの前記エネルギー吸収装置の電圧制限に耐えるのに十分になるように選択される。
【0038】
好ましい実施形態において、前記ステップ間の時間遅延を決定するためにセンサを使用する。
【0039】
好ましい実施形態において、前記ステップの一つ又はいくつかの実行はコンディショナルであり、前記機械的遮断器を流れる電流にゼロクロスを生じるような振幅を有する振動電流は、主電流を遮断する完全な一連のステップを実行するという決定がなされるまで励振され、維持されるが、遮断を完了しないという決定がなされると、その場合には振動電流は抑制される。
【0040】
以下、本発明について、一例として添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図5】本発明による電流遮断装置の一般的実施形態の構成図を示す。
【
図6】本発明による電流遮断装置の様々な実施形態の一つを示す。
【
図7】本発明による電流遮断装置の様々な実施形態の他の一つを示す。
【
図8】本発明による電流遮断装置の様々な実施形態の他の一つを示す。
【
図9】本発明による電流遮断装置の様々な実施形態の他の一つを示す。
【
図10】本発明による電流遮断装置の様々な実施形態の他の一つを示す。
【
図11】本発明による電流遮断装置の様々な実施形態の他の一つを示す。
【
図12】本発明による電流遮断装置の様々な実施形態の他の一つを示す。
【
図14】直列に接続された断路スイッチを備えた
図5に類似の電流遮断装置を示す。
【
図15】
図15a-eは電子電力コンバータの種々の実装例を示す。
【
図16】
図16a-bは電子電力コンバータのための保護装置の例を示す。
【
図17】キャパシタと、インダクタと、電圧制御手段と、エネルギー吸収装置とを含み、そのキャパシタは放電手段を備えているブランチを示す。
【
図18】
図18a-cは、キャパシタと、インダクタと、電圧制御手段と、エネルギー吸収装置とを含み、そのキャパシタは放電手段を備えているブランチの異なる構成を示す。
【
図20】
図20a-cは電圧制限エネルギー吸収装置の実装例を示す。
【
図21】
図21a-bは逆電流用ブランチを有する電流遮断装置の代替実施形態を示す。
【
図22】
図22a-cは可飽和リアクトルを有する電流遮断装置の代替実施形態を示す。
【
図23】低電圧転流半導体スイッチを備える電流遮断装置の代替実施形態を示す。
【
図24】複数の電流遮断装置を備える本発明による電流遮断システムを示す。
【
図25】
図25a-bは共振回路における振動電流振幅の上昇の原理を示す。
【
図30】本発明による電流遮断装置のブランチの代替構成例を示す。
【
図31】
図31a-bは本発明による電流遮断装置のブランチの他の代替構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明に係る電流遮断装置、システム及び方法について、詳細に説明する。
【0043】
図5は本発明に関連する回路の概要を示す。電力系統内の区分100及び200間の電気接続は前記区分の間で電力を伝送するために役立ち、この場合には主電流Iが機械的遮断器1を経て流れる。区分100及び200は直流又は交流を用いる共通電力系統のサブ系統又は別個の電力伝送系統とすることができる。あるいは、これらの区分は負荷、例えば電源100に接続されたモータ200を給電する電力系統を表し得る。
【0044】
機械的遮断器1の接点分離時に、内部アークが接点間に確立され、主電流Iがアークを経て流れ続ける。機械的スイッチが高電圧で動作する場合、アークは自然のゼロクロス又は人工的手段による強制的電流ゼロクロスが起こる場合にのみ消弧する。
【0045】
交流系統では、主電流Iは自然のゼロクロスを有し、接点分離が電流消滅後に現れる電圧を超える耐電圧能力を与えるのに十分になると同時にアークはこのようなゼロクロス時に消弧する。短絡時にこの電流は典型的にはゼロクロスに近づく前に最初にきわめて高いピーク値に向かって増加する。このとき、この電流がゼロクロスを待たずにそのピーク値に達する前に瞬間遮断を実行するのが望ましい。主電流の電流制限遮断として知られるこの方法は
図13で説明される。
【0046】
電力伝送システムが高電圧直流(HVDC)システムのように直流電圧を使用するとき、電流は自然のゼロクロスを示さない。むしろ、電流は相互接続されたシステム100,200のいずれか一方又は両方における障害時に極めて高い値に向かって上昇する。この場合には相互接続された電力系統の完全破壊を防止するために電流遮断システムの高速介入が要求される。
【0047】
遮断器の観点からは、交流系統内の瞬間電流制限遮断は直流系統の直流電流の遮断と同等であり、それはいずれの場合も機械的スイッチ1を流れる電流を自然のゼロクロスがないときに遮断するのが望ましいためである。
【0048】
本発明の目的は、電気ノード11、12間を流れる主電流Iを搬送する機械的遮断器において人工的な電流ゼロクロスを生じさせ、機械的遮断器が電流を遮断できるようにする装置及び方法を提供することにある。
【0049】
請求項1に記載の本発明の一般的な形態は
図5に概略的に示され、電力系統の2つの電気ノード11,12は装置10を介して電力系統の2つの区分100,200に電気的に接続するように構成され、前記装置10は1つの主ブランチ15と、前記ブランチ15と並列に接続された2極回路(two-pole)3とを備え、主ブランチ15は端子11、12の間で電流を流すことができる機械的遮断器1を含み、2極回路3は少なくとも1つのキャパシタ31及び少なくとも1つのエネルギー吸収装置2を含み、ブランチ15と2極回路3は相俟ってループを構成し、このループは更に少なくとも1つのインダクタンス32及び少なくとも1つの電圧制御手段4を含み、主ブランチ15と2極回路3は相俟って少なくとも1つの共振周波数を生じる。好ましくは、2極回路3の装置は図に示すように1つ又は複数のブランチ16内に配置される。
【0050】
好ましい実施形態では、電圧制限回路、いわゆる「スナバ」17が機械的主遮断器の両端間に並列に接続される。一般的に、電圧制限回路は抵抗とキャパシタの直列接続より成るが、他の設計も考えられ、電力エレクトロニクスの分野において確立されている。
【0051】
図6-
図10は装置10を実装する種々の実施形態を示す。これらはエネルギー吸収装置2の配置(位置)の点で及び電力系統内における2つの電気ノード11、12の回路装置10への接続法の点で異なる。
【0052】
電圧制御手段は使用中、機械的主回路遮断器1が主電流Iを遮断するために開路するよう制御されるとき、機械的主回路遮断器1の接点間に発生するアークを通して、前記ループに含まれ、かつ機械的主回路遮断器1を含む前記ブランチ15を流れる交流電流Ioを急増させるために前記ループにエネルギーを注入するように制御可能であり、それによって交流電流Ioの振幅AIoが主電流Iの振幅AIを越えるとき機械的主回路遮断器1を流れる電流Iswのゼロクロスが得られる。更に、2極回路3内のエネルギー吸収装置2は、機械的主遮断器1が開路(非導通)であるとき前記キャパシタ31の両端間電圧及び機械的主遮断器1の両端間電圧を制限するように構成され、且つ機械的主回路遮断器1の両端間電圧が開路プロセス時に又はその直後にブレークダウンする場合に、ブランチ15と2極回路3とにより構成されたループ内の誘導性要素32の両端間電圧を制限するように構成され、それによって前記ループを流れる電流の上昇率及びピークを制限する。
【0053】
機械的スイッチ1を流れる電流Iswがそのゼロクロスで消滅すると、主電流Iは2極回路3に一時的に転送される。最初に、電流Iswはキャパシタ31に流入し、その後エネルギー吸収装置2に転流する。装置2の保護電圧は主電流Iを除去するために相互接続された区分100,200の最高駆動電圧より高くなければならない。
【0054】
電圧制御手段4は、機械的遮断器1を流れる電流Iswに寄与する交流電流IOを急増させるためにキャパシタ31及びインダクタ32を含む共振回路にエネルギーを注入するように制御される。電圧制御手段4に対する第1の制御法では、測定電流の正帰還を利用する。この場合には電圧制御手段4は回路に挿入された人工的な負抵抗とみなせる。負抵抗の値は設計によって慎重に選択することができる。エネルギーの注入により前記ループの電流を励振する第2の制御法では、電圧制御手段4は共振周波数に近い周波数を有する出力電圧を発生するように制御される。この周波数は振動電流IOの振幅AIOの上昇率を制御するために変化させることができる。振動電流IOの他の制御法を使用してもよい。更に、可制御電圧制御手段4の使用によって、遮断器1を含むブランチ15と2極回路3とで構成されたループへのエネルギー注入は遮断器1の接点分離が起こる前に開始させることができる。
【0055】
好ましい実施形態では、電流Iswが遮断器1に流れなくなったとき、振動電流の更なる励振は禁止する。
【0056】
好ましい実施形態では、遮断器1の導通状態を監視し、再点弧が起こるとき、振動電流の励振を再開する。
【0057】
図11に示す他の実施形態では、2極回路3は、インダクタ32と直列の電圧制御手段4からなる複数のブランチの並列接続と直列にキャパシタ31を含む。インダクタはキャパシタとともに、電圧制御手段4により励振し得る共振回路を形成する。電圧制御手段4が同じ電圧を供給するとき、並列接続ブランチの各々を流れる電流は同相になり、従って合計すると高い振幅AIoを有する合計共振電流になり、単一の電圧制御手段の場合より高い振幅AIを有する電流の遮断が可能になる。
【0058】
好ましい実施形態では、2極回路は
図12に示すように同一又は異なる周波数を有する少なくとも2つの共振回路備える。それらの共振周波数、インピーダンス及びそれぞれの開始時間は、機械的主遮断器1を含むブランチ内の電流のゼロクロスを生じさせるために所望の波形を有する合計振動電流を提供するように選択される。
【0059】
電流遮断装置の代替実施形態では、断路スイッチ5が
図5につき記載した遮断装置10と直列に接続される。この構成は
図14に示されている。主電流Iが装置10により遮断されたとき、2極回路3内の電圧制限エネルギー吸収装置2は端子11,12間の電圧がその保護電圧より低いので電流を通さない。従って、区分100,200は2極回路3のみを経て接続されたままとなる。この2極回路は小さい直列キャパシタを含むため、断路スイッチ5は持続アークなしに開くことができる。断路スイッチ5は開路時に電力系統の区分100,200間の電気接続に物理的分離をもたらす。
【0060】
電力系統の区分100,200間の接続を行う一つの方法では、断路器5を用いてその接続を閉じる。この場合には、断路器5が開路されたとき、2極回路3内のキャパシタ31は放電することができ、主スイッチ1はその後放電パルスを生じることなく閉じることができる。よって、装置10は断路器5の再閉路時に直ちに電流遮断を実行し得る状態になる。
【0061】
電力系統の区分100,200間の接続を行う別の方法では、断路スイッチ5を機械主スイッチ1より前に閉じる。
【0062】
可制御電圧源4は静電圧源コンバータとするのが好ましい。これは種々の半導体を用いて多くの方法で実装することができる。
図15a-eは、有効な回路トポロジの例として多数の可能なコンバータ設計例を示す。典型的には、このようなコンバータは少なくとも一つの直流リンク41(又は41a,41b)を使用し、このリンクは典型的には直流キャパシタバンクからなる。直流キャパシタバンクは電池又は任意の他の直流電圧源で補完することができる。直流リンクは任意の絶縁分離された補助電源、局部直流発電装置、例えば燃料電池、光電池又は任意の種類のエネルギー蓄積装置により給電することができる。コンバータの出力電圧の周波数は5-25kHzの範囲内にするのが好ましい。直流リンク電圧(コンバータ内の半導体の電圧定格を決定する)は、エネルギー吸収装置2の保護電圧のほんの一部分とする。半導体デバイスの直接的な直列接続を含むストリングを用いる必要なしに高い出力電圧を達成するためにはいくつかのブリッジと別々の直流リンクの直列接続を利用できることに注意されたい。半導体及び直流リンクは高いピーク動作電流又は過電圧に耐えるように設計しなければならず、また適切な保護手段を備えなければならない。
【0063】
図15a-eの回路は1つ又は2つのハーフブリッジ位相レグを用いる。
図15a及び
図15cでは、1つのハーフブリッジのみが使用される。
図15aに示すように位相レグと直流リンクのそれぞれの中点が出力端子として使用される場合には、対称出力電圧(双極性)が得られるが、
図15cに示すように位相レグの中点と直流リンクレールの1つが出力端子として作用する場合には、単極性電圧とゼロ電圧が得られる。コンバータが
図15b、15d、及び15eに示すように2つの位相レグを用いてHブリッジとして構成される場合には、ゼロ電圧のみならずいずれかの極性を有する出力電圧を発生し得る。
図15b-eに示すトポロジでは、出力電圧がゼロであるとき、振動電流I
Oは完全に直流リンクを迂回する。
【0064】
半導体ブリッジがブロックされるとき、即ち一つの能動半導体デバイスもターンオンされないとき、振動電流IOはコンバータアーム内のダイオードを通過し、直流リンクを充電する。結果として振動電流は反対電圧で抑圧され、その振幅は直流リンク41(又は41a、41b)の電圧で決まる。
【0065】
電子電力コンバータ(半導体及び直流リンク)をサージ電流及び過電圧から保護するための保護装置の例が
図16a及び
図16bに示されている。
【0066】
図15a-eにおいて、MOSFET,IGBT,IGCT/GTO及びサイリスタタイプの半導体が示されている。最初の3つの半導体ファミリーは固有の電流消失能力を保持し、それらは振動電流I
Oのゼロクロス近くでスイッチし得る。他方、サイリスタのターンオンは、その位相レグの相手サイリスタをターンオフ後に回復させるために振動電流のゼロクロス後に遅らせなければならない。
【0067】
振動電流I
Oは過渡期中のみ存在し、その間にその振幅AI
Oは主電流Iの振幅AIを超えて増加する。それは他の任意の時間におけるキャパシタ電圧がその平均値になる場合に適切であり、その平均値は主スイッチ1及び電圧源4の両端間電圧により決まる。この状態は、キャパシタ31が放電手段、例えば
図17に示すように並列に接続された線形又は非線形抵抗33を備える場合に、自動的に達成される。放電時間はI
Oの励振に必要な時関より十分に長くすべきであるが、依然として極めて短くすることができ、5ミリ秒以内にすることができる。この構成は遮断装置が断路スイッチ5を含むとき特に有利である。この場合、キャパシタは完全に放電されるため、主スイッチ1は放電電流なしに再閉路することが可能になり、よって電流遮断装置10は断路スイッチ5が閉じるとき直ちに電流Iを遮断し得る状態になる。
【0068】
図18a-cは、キャパシタ、インダクタ、電圧制御手段及びエネルギー吸収装置を備えるブランチの種々の構成を示し、キャパシタに放電手段が装備されている。
【0069】
キャパシタを放電する代替手段の構成が
図19a-cに示されている。
【0070】
主スイッチ1はミリ秒範囲内の接点分離の達成を可能にする高速機械駆動システムを持つべきである。好ましくは、真空スイッチが、単一スイッチとして又は直列接続されたスイッチの列として使用される。それらの通電機構の物理構造によってそれらは電流ゼロクロス時に又はその前に極めて高速(マイクロ秒範囲内又はそれより高速)で消弧することができる。更に、他のタイプの機械的遮断器と比較すると、所要の機械的ストロークが短く、可動接点の質量が小さい。
【0071】
中電圧真空スイッチと他のタイプの高電圧遮断器の直列接続を利用することもできる。主スイッチは低電圧電子電力スイッチと直列接続してもよい。
【0072】
更に、主スイッチ1は複数の直列接続した機械的スイッチで実装することができ、これらのスイッチは個々のスイッチの接点分離瞬時が時間的に分布されるように操作される。この手法は保護のために使用でき、スイッチの列を流れる電流がゼロクロスするときに少なくとも一つの個別の機械的スイッチにおいて十分な耐電圧能力が達成される。
【0073】
可制御電圧源4は、振動電流IOの振幅を制御し、主スイッチ1を流れる電流のゼロクロスが適正な瞬時に、即ち接点分離が十分な電圧処理能力をもたらすのに十分であるときに、現れるように操作される。接点分離を時間の関数として良好に推定することは、瞬時位置用、加速度用及び/又は速度用の一つ以上のセンサを設ければ達成できる。
【0074】
主スイッチ1の接点分離を検出するセンサは適切な情報を可制御電圧源4の制御及び監視システムに供給する。好ましくは、このような検出器は接点分離に関連する物理量の観測に基づくものとし得る。このような現象はアーク電圧降下、音響現象、光、熱、X線又は他の任意の種類の電磁放射又は雑音を発生する。
【0075】
機械的主回路遮断器1の導通状態を監視するセンサは振動電流Ioの励振を管理する制御装置に情報を提供するために使用することができる。このセンサは、例えば機械的主遮断器1の端子間電圧又はエネルギー吸収装置2の両端間電圧を直接測定し得る。機械的主遮断器の検出状態に応じて、振動電流Ioの励振は機械的主遮断器が非導通状態であるとき禁止することができる。
【0076】
機械的主遮断器の状態が電流遮断動作中に非導通状態から導通状態に変化する場合、振動電流Ioの励振が再開することができる。
【0077】
好ましくは、エネルギー吸収装置2は金属酸化物バリスタ(MOV)であるが、代わりに、同様の強い非線形電圧依存性を有する抵抗値を示す他の装置又は電圧制限装置を使用することができる。必要に応じ、ダイオードを介して接続された充電キャパシタからなるクランプ回路を使用してもよい。エネルギー吸収装置2の様々な実装例が
図20a-cに示されている。
【0078】
本発明による電流遮断装置の代替実施形態では、電流遮断装置10内の機械的遮断器1を含むブランチ15と並列に追加のブランチ18が付加される(
図21a参照)。追加のブランチの目的は、電流I及びI
Oが同じ符号を有し、振動電流の振幅AI
Oが主電流の振幅AIを超えるときに生じる逆電流のための導電通路を提供するためである。制御システムは、振動電流I
Oが励振されるとき、この通路を主電流Iと反対方向に導通させる。このとき、接点分離が存在すると、逆電流がブランチ18へ転流され、その結果ゼロ電流が機械的スイッチ1を流れ、その絶縁耐電圧能力を回復する。振動電流I
Oがスイングバックし、ブランチ18を流れる電流が再びゼロクロスするとき、少なくとも1つのキャパシタ31、電圧制御手段4及び電圧制限エネルギー吸収装置2を含む2極回路3が主電流Iのために開いたままになる唯一の通路になる。主電流Iはキャパシタ31を、その電圧が電圧制限吸収装置2が導通し始めるレベルになるまで充電する。電力系統の区分100,200内の電源電圧を超える装置2の保護電圧が主電流Iをゼロにせしめる。
【0079】
ブランチ18は逆並列に接続された2つの単方向弁61,62で構成された回路配置6を備え得る(
図21b参照)。各単方向弁は少なくとも一つのサイリスタを備える。代わりに、双方向サイリスタの列を使用してもよい。いくつかの用途では決められた方向の電流Iに対してのみ電流遮断が要求される。そのような場合には、主電流Iと反対の導通方向を有するサイリスタ弁のみを実装してもよい。
【0080】
本発明による電流遮断装置の代替実施形態では、主スイッチ1を含むブランチは
図22a-bに示すように直列に接続された可飽和リアクトル8を含む。
図22aはブランチ18を備えてない装置10を示し、
図22bはブランチ18を備えた装置10を示す。その目的はゼロクロス時での電流微分を低減することにあり、これは所定の機械遮断器に対し電流遮断直後のそれらの電圧処理能力に関して有益である。その原理は図で明らかにされている。可飽和リアクトル8は
図22cに略図で示すように主導体を包む鉄又はフェライトからなる空隙磁気コアの形を取り得る。
【0081】
前節で述べた逆電流が確かに追加のブランチ18(設けられている場合)へ転流するようにするために、低電圧半導体スイッチ7を機械的スイッチ1と直列に接続することができる(
図23参照)。低電圧スイッチ7は主電流Iと同じ方向の電流のみを許可するように制御され、逆方向の電流を阻止する。このスイッチはブランチ18内の弁61,62の制御と協調して制御されるべきである。
【0082】
上述したいくつかの電流遮断装置10は
図24に示すように電力系統内の区分100,200の間に直列に配置することができる。電力系統の区分100,200間の相互接続を流れる障害電流を制限するために、これらの装置10内の主スイッチ1を開/閉することによって異なる数の電圧制限エネルギー吸収装置2を電力系統内の区分100,200間の接続内に挿入することができる。多量のエネルギーがこれらの装置に蓄積されるので、このような動作状態は最大数十ミリ秒の短時間の間維持することができるのみである。しかしながら、この時間は電力系統内のどの遮断器が特定の障害時に動作するかを決定するのに必要な時間の間電力網内の短絡電流を制限するのに十分である。
【0083】
ここで、上述した遮断装置10を制御する方法について説明する。この方法を実行するためには、機械的スイッチ1の開路及び2極回路3内の電圧制御手段4による振動電流Ioの励振を調整する制御システムが必要とされる。
【0084】
機械的スイッチ1の開路は「開路」コマンドを機械的アクチュエータに与えることによって簡単に開始し、アクチュエータは接点分離を発生させるために可動接点を固定接点から離れるように移動させる。機械的遅延tmech、すなわち「開路」コマンドが与えられてから接点分離が確立されるまでの経過時間は通常良い精度で知ることができ、その時間は制御システムで利用し得る。1-5msの範囲内の機械的遅延時間は機械的観点からすると極めて短いように見えるが、パワーエレクトロニクスの観点からすると極めて長い。例えば、10kHzの10サイクルは1ミリ秒の間に完了し、
図25a-bには、高速可制御電圧制御手段4の働きによる、ブランチ15と2極回路3とで構成される共振回路における振動電流振幅の増加原理が示される。
図25aに示すLC回路について考察する。この回路は、その共振周波数f
osc及びそのリアクタンスx
0(共振周波数における)で特徴づけられる。
【0085】
【0086】
【0087】
この回路は電圧制御手段によって励振され、この電圧制御手段は両極性の電圧を発生するものと仮定し得る。印加電圧の振幅はUoscであり、その方向は電流IOの方向に追従するように電子電力手段により制御される。印加電圧振幅Uoscと特性リアクタンスx0との比は単位電流を規定し、これは下記のIoscで示すことができる。
【0088】
【0089】
最初に電圧制御手段が一定の出力電圧Uoscを発生し、この出力電圧は直列キャパシタCoscにより阻止される。励振が活性化されると、出力電圧の逆転が行われ、それに応じて振幅2×Uoscを有する電圧ステップが共振回路に印加される。この出力電圧の最初の逆転後に、損失がなければ、振幅2×Ioscを有する正弦波半サイクルが生成される。そのピークは共振周波数の4分の1サイクル後に発生する。電流が半サイクル後にゼロクロスするとき、新たな逆転が行われ、振動電流の振幅が4×Ioscに増加する。同様に、振動電流の各ゼロクロスにおいてその振幅が2×Ioscずつ増加する。従って、N回の逆転(半サイクル)後の4分の1サイクルにおける振動電流の振幅は理想的には2×N×Ioscである。3サイクルと4分の1サイクル後、すなわち7回の逆転(半サイクル)後に、振動電流の振幅は理想的には14×Ioscである。
【0090】
振動電流振幅の大幅な増加が極めて短い時間内に得られることに注意されたい。例えば、10kAの電流が100kVの保護電圧で遮断される場合について考察する。この場合にはx0=8Ωの特性リアクタンスを有するLC回路を使用し得る。損失を考慮すると、4サイクル後の振動電流の振幅は約14×Ioscであり、その振幅は、Iosc=1.1×10/14=0.79kAであれば、10kAの10%を超える。所要の直流リンク電圧はUosc=x0×Iosc=8×0.79=6.3kVであり、これは保護電圧のわずか6.3%である。更に、この振幅に達する時間はわずか4サイクル、すなわち10kHzで400μsであり、機械的遅延時間tmechより大幅に短い。フルブリッジを用いる電子電力コンバータ内の各半導体の定格電圧はUosc、即ち保護電圧の6.3%になる。フルブリッジでは、4つのアームが必要とされるため、全半導体の合計電圧定格は半導体保護電圧の25%になる。
【0091】
この例は、本発明による電流遮断装置10は、一般に両極性の全保護電圧を定格とする半導体を使用する必要がある既知の装置と比較して半導体デバイスの量を大幅に低減することができることを示す。
【0092】
図26は上述した電流遮断動作の経過を示す。典型的には電流遮断は振動電流I
Oが主電流Iと同じ方向を有し、振動電流の振幅AI
Oが主電流の振幅AIを超えるときに起こる。その後、主電流Iが2極回路3内のキャパシタ31を充電し、電圧制限エネルギー吸収装置2の両端間電圧がその保護電圧に達し、主電流を引き継ぐまで、主スイッチ1の両端間電圧は線形電圧変化を受ける。
【0093】
電流遮断装置10が追加のブランチ18を含む場合には、「逆」電流、すなわち遮断動作中に振動電流IOと主電流Iが同じ方向を有し振動電流IOの振幅が主電流Iの振幅を超えるときに生じる過大電流Isw=Io-Iは追加のブランチ18により搬送される。この場合、電流遮断は振動電流Ioの振幅が減少するとき生じる。2極回路内3内のキャパシタ電圧はエネルギー吸収装置2の保護電圧に達するまで線形増加する。
【0094】
好ましくは、主電流Iの上首尾の遮断を達成するために機械的スイッチ1の開路と振動電流IOの励振の協調制御が与えられる。
【0095】
電流遮断装置10が断路スイッチ5、逆導通手段6、又は逆導通手段61,62への主電流Iの転流を補助する補助低電圧スイッチ7を含むとき、対応するスイッチの制御は協調制御方式に含めるのが好ましい。
【0096】
ステップの実行順序は、機械的遮断器を流れる電流Iswのゼロクロスが、2極回路3内のエネルギー吸収装置2の電圧制限に十分に耐える絶縁耐力が接点分離後に遮断器に確立されるときに生じるように予め定めるのが好ましい。
【0097】
制御ステップの協調は、
図27に示すように、振動電流I
Oにより機械的スイッチ1を流れる電流にゼロクロスが生成されるときに機械的スイッチ1に十分な耐電圧能力を与えるのに十分な接点分離が確実に確立されているようにするためである。
【0098】
機械的遅延時間は多くの場合明確に規定され、既知であり、振動電流の励振の経過は十分に制御される。その場合には、
図28に示すように、スイッチに与える信号は機械的スイッチ1を開くコマンドを基準とする時間遅延に基づいて規定されたタイムシーケンスで与えるのが好ましい。時間遅延は主電流Iの測定値に応じて変化させることができる。
【0099】
スイッチに与えられる信号は接点分離が生じたことを検出する又は開路動作中の可動接点の位置を示すセンサからの信号に応じて決定するのが好ましい。必要に応じ、固定の時間遅延を使用することができ、また主電流I及び/又は振動電流Ioの測定値又は可動接点の速度の検出値に依存する可変時間遅延を使用することができる。いくつかの例が
図29に示されている。
【0100】
機械的遮断器1の導通状態はセンサで監視し、その情報を振動電流の励振を制御するシステムに送信するのが好ましい。典型的には、励振は機械的遮断が非導通状態であるとき停止するが、電圧ブレークダウンが電流遮断動作中に生じ、機械的遮断器が導通状態に戻るときに再開する。
【0101】
振動電流振幅AIOを主電流レベルAIを超えるまで励振するのに要する時間が機械遅延時間tmechより長い場合には、主電流Iが通常の引き外しレベルより低いレベルを超えると同時に励振を開始し、振動電流の振幅を主電流Iの振幅の近くに維持し、電流遮断を実行するという最終決定を待ち、その場合には、機械的スイッチが動作するように命令され、振動電流の振幅が出力電流振幅AIを超えるように制御されるようにし、また電流遮断を完了しないという決定を待ち、その場合には振動電流の励振が禁止されるようにするのが有利である。振動電流の振幅は電圧制御手段4で選択される転流を禁止することによってほぼ一定のレベルに維持することができる。
【0102】
電力系統の区分100,200間を流れる主電流Iを制限するために複数の電流遮断装置10が直列に接続される場合がある。典型的には、このような設置は複数のHVDCステーションを相互接続する直流送電網に有利であり得る。このような直流送電網は多数の直流遮断器を含むことができ、送電網の障害時に該当する直流遮断器のみが作動されることが重要である。その適切な選択には若干の時間(数ミリ秒程度)を必要とし得る。制御可能な数の電流遮断装置10の挿入はこの時間中の主電流Iのさらなる増加を抑えることができる。
【0103】
本発明による電流遮断装置は種々の電力網構成で使用可能であり、そのうちの3つが
図30及び
図31a-bに示され、
図30は交流電力網を示し、
図30a-bは直流電力網を示す。
【0104】
本発明による電流遮断装置、システム及び方法の好ましい実施形態を開示した。これらの実施形態は添付の請求項の範囲内において本発明の思想から逸脱することなく変更し得ることを理解されたい。