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特許7017515水溶性アゾ化合物又はその塩、インク、及び記録メディア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】水溶性アゾ化合物又はその塩、インク、及び記録メディア
(51)【国際特許分類】
   C09B 43/16 20060101AFI20220201BHJP
   C09D 11/328 20140101ALI20220201BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20220201BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
C09B43/16 CSP
C09D11/328
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018547631
(86)(22)【出願日】2017-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2017038038
(87)【国際公開番号】W WO2018079442
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2016213232
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016213233
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016213234
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016213238
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017023615
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017023616
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017023617
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017023618
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017023619
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017023620
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100136939
【弁理士】
【氏名又は名称】岸武 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】永塚 真也
(72)【発明者】
【氏名】飯野 拓
(72)【発明者】
【氏名】武藤 瞳
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/122427(WO,A1)
【文献】特開2012-246342(JP,A)
【文献】特開2013-018849(JP,A)
【文献】国際公開第2008/142989(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/043184(WO,A1)
【文献】特開2013-010825(JP,A)
【文献】国際公開第2012/099059(WO,A1)
【文献】特開2014-118437(JP,A)
【文献】特開2014-118439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B
C09D 11/328
B41M 5/00
B41J 2/01
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記式(1-11)~(1-15)のいずれかで表される化合物又はその塩。
【化1】
【請求項2】
記式(1-16)で表される化合物又はその塩。
【化2】
【請求項3】
下記式(1-19)で表される化合物又はその塩。
【化3】
[式(1-19)中、RA12はC1-C3アルキル基を示し、nは1~6の整数を示す。]
【請求項4】
前記式(1-19)において、nが3である請求項に記載の化合物又はその塩。
【請求項5】
下記式(1-20)で表される化合物又はその塩。
【化4】
[式(1-20)中、RA13は水酸基を2つ以上有するC2-C6アルキル基を示す。]
【請求項6】
前記式(1-20)において、RA13が水酸基を2つ有するC2-C4アルキル基である請求項に記載の化合物又はその塩。
【請求項7】
前記式(1-20)で表される化合物が下記式(1-21)又は(1-22)で表される請求項5又は6に記載の化合物又はその塩。
【化5】
【請求項8】
記式(1-17)又は(1-18)で表される化合物又はその塩。
【化6】
【請求項9】
下記式(1-22)で表される化合物又はその塩。
【化7】
【請求項10】
下記式(1-23)で表される化合物又はその塩。
【化8】
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物又はその塩を含有するインク。
【請求項12】
水溶性有機溶剤をさらに含有する請求項11に記載のインク。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のインクのインクジェット記録における使用。
【請求項14】
請求項11又は12に記載のインクの液滴を、記録信号に応じて吐出させて記録メディアに付着させるインクジェット記録方法。
【請求項15】
前記記録メディアが、普通紙又はインク受容層を有するシートである請求項14に記載のインクジェット記録方法。
【請求項16】
(a)請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物又はその塩、及び
(b)請求項11又は12に記載のインク、
のいずれかが付着した記録メディア。
【請求項17】
請求項11又は12に記載のインクを含む容器が装填されたインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性アゾ化合物又はその塩、その水溶性アゾ化合物又はその塩を含有するインク、そのインクを用いるインクジェット記録方法、そのインクを含む容器が装填されたインクジェットプリンタ、並びにその水溶性アゾ化合物若しくはその塩又はインクが付着した記録メディアに関する。
【背景技術】
【0002】
各種カラー記録方法の中で、その代表的方法の1つであるインクジェットプリンタによる記録方法は、インクの吐出方式が各種開発されている。これらは、いずれもインクの小液滴を発生させ、これを種々の記録メディア(紙、フィルム、布帛等)に付着させ記録を行うものである。この方法は、記録ヘッドと記録メディアとが直接接触しないため、音の発生がなく静かである。また、小型化、高速化、及びカラー化が容易であるという特徴を有するため、近年急速に普及し、今後とも大きな伸長が期待されている。
【0003】
従来、万年筆、フェルトペン、インクジェット記録等の各種の記録用インクに使用される色素は、水溶性の色素と水不溶性の色素との2種類に大別される。水溶性の色素としては、直接染料、酸性染料、反応染料等が挙げられる。また、水不溶性の染料としては、顔料、分散染料、溶剤染料等が挙げられる。これらの色素のうち染料は、顔料と比較して彩度等に優れ、高画質な記録画像が得られるとされている。しかし、耐光性等の記録画像の堅牢性は、顔料に対して劣るとされている。
【0004】
ここで耐光性とは、記録画像に付着した色素が太陽光、蛍光灯の光等の各種の光に暴露されることにより分解し、記録画像を変退色させるという現象に対する耐性のことである。
インクジェット記録の特徴の1つとして、写真画質の記録画像が得られることが挙げられる。写真画質の記録画像を得る方法の1つとして、インク受容層を有する記録メディアの使用が挙げられる。そのようなインク受容層は、インクの乾燥を早め、また色にじみの少ない高画質な画像を得るために、一般には多孔性白色無機物を含有する。しかし、そのような記録メディアにおいて、光による変退色現象が顕著に観察される。この理由から、記録画像の耐光性の向上は、インクジェット記録の分野における重要な技術課題の1つとされている。
【0005】
水溶性及び鮮明性に優れる公知のインクジェット用のイエロー色素として、特許文献1~3には、C.I.ダイレクトイエロー132が開示されている。また、特許文献4には、各種の堅牢性に優れたインクジェット用のイエロー色素が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-70729号公報
【文献】特許第3346755号公報
【文献】特許第4100880号公報
【文献】国際公開第2011/122427号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、耐光性に優れる記録画像が得られる水溶性アゾ化合物、及びそれを含有する各種の記録用、特にインクジェット記録用のイエローインクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の下記式で表される水溶性アゾ化合物又はその塩、及びそれを含有するインクが上記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の1)~30)に関する。
1)
下記式(1)若しくは(2)で表される化合物又はその塩。
【化1】
[式(1)中、Qはそれぞれ独立にハロゲン原子を示し、R11及びR12はそれぞれ独立にイオン性親水性基で置換されたアルキル基を示す。Aは下記式(A1-1)で表される基、下記式(A1-2)で表される基、C1-C3アルコキシ置換アルキルアミノ基、モノC1-C6アルキル置換アミノ基、水酸基を2つ以上有するモノC2-C6アルキル置換アミノ基、下記式(A1-3)で表される基、下記式(A1-4)で表される基、又は環状アミン基を示す。]
【化2】
[式(A1-1)中、RA11は分岐鎖状のアルキレン基を示し、*はトリアジン環との結合位置を示す。]
【化3】
[式(A1-2)中、nは1~6の整数を示し、*はトリアジン環との結合位置を示す。]
【化4】
[式(A1-3)中、mは1~6の整数を示し、nは1~5の整数を示し、*はトリアジン環との結合位置を示す。]
【化5】
[式(A1-4)中、nは2~6の整数を示し、*はトリアジン環との結合位置を示す。]
【化6】
[式(2)中、Q21~Q24はそれぞれ独立にハロゲン原子を示し、R21~R24はそれぞれ独立にイオン性親水性基で置換されたアルキル基を示す。Aは2価の基を示す。]
【0010】
2)
前記式(1)で表される化合物が下記式(1-1)で表される1)に記載の化合物又はその塩。
【化7】
[式(1-1)中、Q及びAは前記式(1)におけるのと同じ意味を示し、xはそれぞれ独立に2~4の整数を示す。]
【0011】
3)
前記式(1-1)において、Qが塩素原子である2)に記載の化合物又はその塩。
【0012】
4)
前記式(1-1)において、xが3である2)又は3)に記載の化合物又はその塩。
【0013】
5)
前記式(1)で表される化合物が下記式(1-11)~(1-15)のいずれかで表される1)に記載の化合物又はその塩。
【化8】
【0014】
6)
前記式(A1-2)において、nが2である1)~4)のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【0015】
7)
前記式(1)で表される化合物が下記式(1-16)で表される1)に記載の化合物又はその塩。
【化9】
【0016】
8)
前記式(1-1)において、Qが塩素原子であり、xが3であり、Aが下記式(A1-5)で表される基である2)に記載の化合物又はその塩。
【化10】
[式(A1-5)中、RA12はC1-C3アルキル基を示し、nは1~6の整数を示し、*はトリアジン環との結合位置を示す。]
【0017】
9)
前記式(A1-5)において、nが3である8)に記載の化合物又はその塩。
【0018】
10)
前記式(1-1)において、Qが塩素原子であり、xが3であり、AがモノC1-C4アルキル置換アミノ基である2)に記載の化合物又はその塩。
【0019】
11)
前記式(1-1)において、Qが塩素原子であり、xが3であり、Aが直鎖のモノC1-C4アルキル置換アミノ基である10)に記載の化合物又はその塩。
【0020】
12)
前記式(1-1)において、Qが塩素原子であり、xが3であり、Aが下記式(A1-6)で表される基である2)に記載の化合物又はその塩。
【化11】
[式(A1-6)中、RA13は水酸基を2つ以上有するC2-C6アルキル基を示し、*はトリアジン環との結合位置を示す。]
【0021】
13)
前記式(A1-6)において、RA13が水酸基を2つ有するC2-C4アルキル基である12)に記載の化合物又はその塩。
【0022】
14)
前記式(1)において、Aが下記式(A1-7)又は(A1-8)で表される基である1)~4)のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【化12】
[式(A1-7)及び(A1-8)中、*はトリアジン環との結合位置を示す。]
【0023】
15)
前記式(A1-3)において、mが2である1)~4)のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
【0024】
16)
前記式(1)で表される化合物が下記式(1-17)又は(1-18)で表される1)に記載の化合物又はその塩。
【化13】
【0025】
17)
前記式(1-1)において、Qが塩素原子であり、xが3であり、Aが前記式(1-4)におけるnが3である基である2)に記載の化合物又はその塩。
【0026】
18)
前記式(1-1)において、Qが塩素原子であり、xが3であり、Aが下記式(A1-9)で表される基である2)に記載の化合物又はその塩。
【化14】
[式(A1-9)中、RA14~RA21はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を示し、*はトリアジン環との結合位置を示す。]
【0027】
19)
前記式(A1-9)において、RA14~RA21が水素原子である18)に記載の化合物又はその塩。
【0028】
20)
前記式(2)で表される化合物が下記式(2-1)で表される1)に記載の化合物又はその塩。
【化15】
[式(2-1)中、Q21~Q24及びAは前記式(2)におけるのと同じ意味を示し、xはそれぞれ独立に2~4の整数を示す。]
【0029】
21)
前記式(2-1)において、Q21~Q24が塩素原子である20)に記載の化合物又はその塩。
【0030】
22)
前記式(2-1)において、xが3である20)又は21)に記載の化合物又はその塩。
【0031】
23)
前記式(2-1)において、Q21~Q24が塩素原子であり、xが3であり、Aが1,4-ピペラジンジイル基である20)に記載の化合物又はその塩。
【0032】
24)
1)~23)のいずれか1項に記載の化合物又はその塩を含有するインク。
25)
水溶性有機溶剤をさらに含有する24)に記載のインク。
26)
24)又は25)に記載のインクのインクジェット記録における使用。
27)
24)又は25)に記載のインクの液滴を、記録信号に応じて吐出させて記録メディアに付着させるインクジェット記録方法。
28)
前記記録メディアが、普通紙又はインク受容層を有するシートである27)に記載のインクジェット記録方法。
29)
(a)1)~23)のいずれか1項に記載の化合物又はその塩、及び
(b)24)又は25)に記載のインク、
のいずれかが付着した記録メディア。
30)
24)又は25)に記載のインクを含む容器が装填されたインクジェットプリンタ。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、耐光性に優れる記録画像が得られる水溶性アゾ化合物、及びそれを含有する各種の記録用、特にインクジェット記録用のイエローインクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の水溶性アゾ化合物(上記式(1)若しくは(2)で表される化合物又はその塩)は、水溶性のイエロー色素である。本明細書においては特に断りがない限り、イオン性親水性基のうち酸性官能基は、実施例等を含めて遊離酸の形で表す。
また、本明細書においては特に断りがない限り、イオン性親水性基を有する「化合物」は、「化合物又はその塩」の両方を含む意味として用いる。
また、本明細書においては特に断りがない限り、「%」及び「部」は、実施例等も含めて質量基準である。
【0035】
[式(1)で表される化合物]
上記式(1)において、Qは、ハロゲン原子を示す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。これらの中では、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0036】
上記式(1)において、R11及びR12はそれぞれ独立に、イオン性親水性基で置換されたアルキル基を示す。
アルキル基部分の炭素数は、2~4が好ましく、3がより好ましい。
イオン性親水性基としては、スルホ基、カルボキシ基、ホスホ基、及び4級アンモニウム基から選択される基が挙げられる。これらの中では、スルホ基、カルボキシ基、及びホスホ基から選択される基が好ましく、スルホ基及びカルボキシ基から選択される基がより好ましく、スルホ基がさらに好ましい。イオン性親水性基の置換数は特に制限されないが、通常1~5個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1個又は2個、特に好ましくは1個である。
【0037】
イオン性親水性基で置換されたアルキル基の具体例としては、例えば、スルホメチル基、スルホエチル基、2,3-ジスルホプロピル基、3-スルホプロピル基、4-スルホブチル基、5-スルホペンチル基、6-スルホヘキシル基、7-スルホヘプチル基、8-スルホオクチル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、3-カルボキシプロピル基、4-カルボキシブチル基、5-カルボキシペンチル基、6-カルボキシヘキシル基、7-カルボキシヘプチル基、8-カルボキシオクチル基、ホスホメチル基、ホスホエチル基、3-ホスホプロピル基、4-ホスホブチル基、5-ホスホペンチル基、6-ホスホヘキシル基、7-ホスホヘプチル基、8-ホスホオクチル基、トリメチルアンモニウムメチル基、トリメチルアンモニウムエチル基、3-トリメチルアンモニウムプロピル基、4-トリメチルアンモニウムブチル基、5-トリメチルアンモニウムペンチル基、6-トリメチルアンモニウムヘキシル基、7-トリメチルアンモニウムヘプチル基、8-トリメチルアンモニウムオクチル基、2-メチル-3-スルホプロピル基、2,2-ジメチル-3-スルホプロピル基、4-スルホシクロヘキシル基、2,5-ジスルホシクロヘキシルメチル基等が挙げられ、3-スルホプロピル基が好ましい。
【0038】
上記式(1)において、Aは、上記式(A1-1)で表される基、上記式(A1-2)で表される基、C1-C3アルコキシ置換アルキルアミノ基、モノC1-C6アルキル置換アミノ基、水酸基を2つ以上有するモノC2-C6アルキル置換アミノ基、上記式(A1-3)で表される基、上記式(A1-4)で表される基、又は環状アミン基を示す。Aの詳細については後述する。
【0039】
上記式(1)で表される化合物のうち好ましい化合物が、上記式(1-1)で表される化合物である。上記式(1-1)において、Q及びAは、好ましいもの等を含めて上記式(1)におけるのと同じ意味を示す。上記式(1-1)において、xはそれぞれ独立に2~4の整数を示し、3が好ましい。
【0040】
(式(A1-1)で表される基)
上記式(A1-1)において、RA11は、分岐鎖状のアルキレン基を示す。RA11の炭素数の範囲は、通常2~20、好ましくは3~12、より好ましくは3~8、さらに好ましくは3~6である。上記式(A1-1)で表される基の具体例としては、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基、s-ブチレン基、t-ブチレン基、1-メチル-n-ブチレン基、2-メチル-n-ブチレン基、3-メチル-n-ブチレン基、1,1-ジメチル-n-プロピレン基、1,2-ジメチル-n-プロピレン基、2,2-ジメチル-n-プロピレン基、1-エチル-n-プロピレン基、n-ヘキシレン基、1-メチル-n-ペンチレン基、2-メチル-n-ペンチレン基、3-メチル-n-ペンチレン基、4-メチル-n-ペンチレン基、1,1-ジメチル-n-ブチレン基、1,2-ジメチル-n-ブチレン基、1,3-ジメチル-n-ブチレン基、2,2-ジメチル-n-ブチレン基、2,3-ジメチル-n-ブチレン基、3,3-ジメチル-n-ブチレン基、1-エチル-n-ブチレン基、2-エチル-n-ブチレン基、1,1,2-トリメチル-n-プロピレン基、1,2,2-トリメチル-n-プロピレン基、1-エチル-1-メチル-n-プロピレン基、1-エチル-2-メチル-n-プロピレン基等が挙げられ、イソブチレン基又は3-メチル-n-ブチレン基が好ましい。
【0041】
上記式(1)中のAが上記式(A1-1)で表される基である場合、好ましい化合物としては、例えば、上記式(1-11)~(1-15)で表される化合物が挙げられる。
【0042】
(式(A1-2)で表される基)
上記式(A1-2)において、nは1~6の整数を示し、2~5の整数が好ましく、2がより好ましい。
【0043】
上記式(1)中のAが上記式(A1-2)で表される基である化合物の具体例を下記表1及び表2に示す。ただし、これらの具体例に限定される訳ではない。
表1及び表2中の略号等は、以下の意味を表す。
2-SEt:2-スルホエチル(*-CHCH-SOH)
3-SPr:3-スルホ-n-プロピル(*-CHCHCH-SOH)
4-SBu:3-スルホ-n-ブチル(*-CHCHCHCH-SOH)
上記式中の「*」は、酸素原子との結合位置を示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
上記式(1)中のAが上記式(A1-2)で表される基である場合、好ましい化合物としては、例えば、上記式(1-16)で表される化合物が挙げられる。
【0047】
(C1-C3アルコキシ置換アルキルアミノ基)
C1-C3アルコキシ置換アルキルアミノ基におけるアルキル部分の炭素数は、1~6が好ましく、2~5がより好ましく、3がさらに好ましい。C1-C3アルコキシ置換アルキルアミノ基におけるC1-C3アルコキシ基の置換数は、通常1個又は2個、好ましくは1個である。
【0048】
C1-C3アルコキシ置換アルキルアミノ基の中でも、上記式(A1-5)で表される基が好ましい。上記式(A1-5)において、RA12はC1-C3アルキル基を示す。また、上記式(A1-5)において、nは1~6の整数を示し、2~5の整数が好ましく、3がより好ましい。
【0049】
上記式(1)中のAがC1-C3アルコキシ置換アルキルアミノ基である化合物の具体例を下記表3~表14に示す。ただし、これらの具体例に限定される訳ではない。
表3~表14中の略号等は、以下の意味を表す。
SMe:スルホメチル(*-CH-SOH)
2-SEt:2-スルホエチル(*-CHCH-SOH)
3-SPr:3-スルホ-n-プロピル(*-CHCHCH-SOH)
4-SBu:3-スルホ-n-ブチル(*-CHCHCHCH-SOH)
上記式中の「*」は、酸素原子との結合位置を示す。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
【表6】
【0054】
【表7】
【0055】
【表8】
【0056】
【表9】
【0057】
【表10】
【0058】
【表11】
【0059】
【表12】
【0060】
【表13】
【0061】
【表14】
【0062】
上記式(1)中のAがC1-C3アルコキシ置換アルキルアミノ基である場合、好ましい化合物としては、例えば、上記式(1-1)におけるQが塩素原子であり、xが3であり、Aが上記式(A1-5)で表される基であり、上記式(A1-5)におけるnが3である化合物が挙げられる。
【0063】
(モノC1-C6アルキル置換アミノ基)
モノC1-C6アルキル置換アミノ基の具体例としては、例えば、モノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、モノn-プロピルアミノ基、モノイソプロピルアミノ基、モノn-ブチルアミノ基、モノs-ブチルアミノ基、モノt-ブチルアミノ基、モノn-ペンチルアミノ基、モノn-ヘキシルアミノ基等が挙げられる。これらの中でも、モノC1-C4アルキル置換アミノ基が好ましく、モノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、モノn-プロピルアミノ基、モノn-ブチルアミノ基等の直鎖のモノC1-C4アルキル置換アミノ基がより好ましい。
【0064】
上記式(1)中のAがモノC1-C6アルキル置換アミノ基である化合物の具体例を下記表15~表20に示す。ただし、これらの具体例に限定される訳ではない。
表15~表20中の略号等は、以下の意味を表す。
SMe:スルホメチル(*-CH-SOH)
2-SEt:2-スルホエチル(*-CHCH-SOH)
3-SPr:3-スルホ-n-プロピル(*-CHCHCH-SOH)
4-SBu:3-スルホ-n-ブチル(*-CHCHCHCH-SOH)
上記式中の「*」は、酸素原子との結合位置を示す。
【0065】
【表15】
【0066】
【表16】
【0067】
【表17】
【0068】
【表18】
【0069】
【表19】
【0070】
【表20】
【0071】
上記式(1)中のAがモノC1-C6アルキル置換アミノ基である場合、好ましい化合物としては、例えば、上記式(1-1)におけるQが塩素原子であり、xが3であり、AがモノC1-C4アルキル置換アミノ基である化合物が挙げられ、より好ましい化合物としては、例えば、上記式(1-1)におけるQが塩素原子であり、xが3であり、Aが直鎖のモノC1-C4アルキル置換アミノ基である化合物が挙げられる。
【0072】
(水酸基を2つ以上有するモノC2-C6アルキル置換アミノ基)
水酸基を2つ以上有するモノC2-C6アルキル置換アミノ基における水酸基の置換数は、通常2個又は3個、好ましくは2個である。水酸基を2つ以上有するモノC2-C6アルキル置換アミノ基は、上記式(A1-6)で表される基であることが好ましい。上記式(A1-6)において、RA13は水酸基を2つ以上有するC2-C6アルキル基を示し、好ましくは水酸基を2つ有するC2-C4アルキル基である。
【0073】
水酸基を2つ以上有するモノC2-C6アルキル置換アミノ基の具体例としては、例えば、1,2-ジヒドロキシエチルアミノ基、1,1-ジヒドロキシエチルアミノ基、1,2-ジヒドロキシプロピルアミノ基、1,2-ジヒドロキシブチルアミノ基、1,2-ジヒドロキシペンチルアミノ基、1,2-ジヒドロキシヘキシルアミノ基、1,2,3-トリヒドロキシヘキシルアミノ基等の水酸基を2つ以上有するモノC2-C6直鎖アルキル置換アミノ基;1,1’-ジヒドロキシイソプロピルアミノ基、1,1’-ジヒドロキシペンチルアミノ基等の水酸基を2つ以上有するモノC2-C6分岐アルキル置換アミノ基;などが挙げられる。これらの中でも、上記式(A1-7)又は(A1-8)で表される基が好ましい。
【0074】
上記式(1)中のAが水酸基を2つ以上有するモノC2-C6アルキル置換アミノ基である化合物の具体例を下記表21~表25に示す。ただし、これらの具体例に限定される訳ではない。
表21~表25中の略号等は、以下の意味を表す。
SMe:スルホメチル(*-CH-SOH)
2-SEt:2-スルホエチル(*-CHCH-SOH)
3-SPr:3-スルホ-n-プロピル(*-CHCHCH-SOH)
4-SBu:3-スルホ-n-ブチル(*-CHCHCHCH-SOH)
上記式中の「*」は、酸素原子との結合位置を示す。
【0075】
【表21】
【0076】
【表22】
【0077】
【表23】
【0078】
【表24】
【0079】
【表25】
【0080】
上記式(1)中のAが水酸基を2つ以上有するモノC2-C6アルキル置換アミノ基である場合、好ましい化合物としては、例えば、上記式(1-1)におけるQが塩素原子であり、xが3であり、Aが上記式(A1-7)又は(A1-8)で表される基である化合物が挙げられる。
【0081】
(式(A1-3)で表される基)
上記式(A1-3)において、mは1~6の整数を示し、2~5の整数が好ましく、2がより好ましい。nは1~5の整数を示し、1~3の整数が好ましい。
【0082】
上記式(1)中のAが上記式(A1-3)で表される基である化合物の具体例を下記表26~表31に示す。ただし、これらの具体例に限定される訳ではない。
表26~表31中の略号等は、以下の意味を表す。
SMe:スルホメチル(*-CH-SOH)
2-SEt:2-スルホエチル(*-CHCH-SOH)
3-SPr:3-スルホ-n-プロピル(*-CHCHCH-SOH)
4-SBu:3-スルホ-n-ブチル(*-CHCHCHCH-SOH)
上記式中の「*」は、酸素原子との結合位置を示す。
【0083】
【表26】
【0084】
【表27】
【0085】
【表28】
【0086】
【表29】
【0087】
【表30】
【0088】
【表31】
【0089】
上記式(1)中のAが上記式(A1-3)で表される基である場合、好ましい化合物としては、例えば、上記式(1-17)又は(1-18)で表される化合物が挙げられる。
【0090】
(式(A1-4)で表される基)
上記式(A1-4)において、nは2~6の整数を示し、3が好ましい。
【0091】
上記式(1)中のAが上記式(A1-4)で表される基である化合物の具体例を下記表32~表37に示す。ただし、これらの具体例に限定される訳ではない。
表32~表37中の略号等は、以下の意味を表す。
SMe:スルホメチル(*-CH-SOH)
2-SEt:2-スルホエチル(*-CHCH-SOH)
3-SPr:3-スルホ-n-プロピル(*-CHCHCH-SOH)
4-SBu:3-スルホ-n-ブチル(*-CHCHCHCH-SOH)
上記式中の「*」は、酸素原子との結合位置を示す。
【0092】
【表32】
【0093】
【表33】
【0094】
【表34】
【0095】
【表35】
【0096】
【表36】
【0097】
【表37】
【0098】
上記式(1)中のAが上記式(A1-4)で表される基である場合、好ましい化合物としては、例えば、上記式(1-1)におけるQが塩素原子であり、xが3であり、Aが上記式(A1-4)におけるnが3である化合物が挙げられる。
【0099】
(環状アミン基)
環状アミン基としては、環構成原子として窒素原子を1個有する3~5員環の基が好ましく、窒素原子を1個有する5員環の基がより好ましい。窒素原子を1個有する3~5員環としては、アジリジン環、アゼチジン環、ピロリジン環等が挙げられる。環状アミン基の中でも、上記式(A1-9)で表されるものが好ましい。
【0100】
上記式(A1-9)において、RA14~RA21はそれぞれ独立に水素原子又は置換基を示す。置換基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、置換又は非置換のC1-C4アルキル基、ハロゲン原子、スルホ基、カルボキシ基、ホスホ基、置換又は非置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0101】
C1-C4アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。C1-C4アルキル基が置換基を有する場合の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、スルホ基、カルボキシ基、ホスホ基、置換又は非置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0102】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0103】
置換のアミノ基としては、例えば、モノ(C1-C4アルキル)アミノ基、ジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基等が挙げられる。
【0104】
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のC1-C4アルコキシ基が挙げられる。
【0105】
上記式(A1-9)において、RA14~RA21は、いずれも水素原子であることが好ましい。
【0106】
上記式(1)中のAが環状アミン基である化合物の具体例を下記表38及び表39に示す。ただし、これらの具体例に限定される訳ではない。
表38及び表39中の略号等は、以下の意味を表す。
SMe:スルホメチル(*-CH-SOH)
2-SEt:2-スルホエチル(*-CHCH-SOH)
3-SPr:3-スルホ-n-プロピル(*-CHCHCH-SOH)
4-SBu:3-スルホ-n-ブチル(*-CHCHCHCH-SOH)
上記式中の「*」は、酸素原子との結合位置を示す。
【0107】
【表38】
【0108】
【表39】
【0109】
上記式(1)中のAが環状アミン基である場合、好ましい化合物としては、例えば、上記式(1-1)におけるQが塩素原子であり、xが3であり、Aが上記式(A1-9)で表される基であり、上記式(A1-9)におけるRA14~RA21がいずれも水素原子である化合物が挙げられる。
【0110】
上述した全ての成分及び事項について、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましく、より好ましいもの同士の組み合わせはさらに好ましい。好ましいものとより好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
【0111】
上記式(1)で表される化合物は、例えば次のようにして製造することができる。なお、下記式(10-1)~(14)において適宜使用されるQ、R11、R12、及びAは、それぞれ上記式(1)におけるのと同じ意味を示す。
【0112】
まず、特開2004-75719号公報に記載の方法に準じて、2-アミノ-4-ハロゲノフェノールを原料として得られる下記式(10-1)で表される化合物を、重亜硫酸ナトリウム及びホルマリンを用いて下記式(11)で表されるメチル-ω-スルホン酸誘導体に変換する。次いで、常法により、下記式(12)で表される化合物をジアゾ化し、先に得られた下記式(11)で表されるメチル-ω-スルホン酸誘導体と、反応温度0~15℃、pH4~6でカップリング反応を行う。引き続き、反応温度80~95℃、pH10.5~11.5で加水分解反応を行うことにより、下記式(13-1)で表される化合物を得る。また、下記式(10-1)で表される化合物の代わりに下記式(10-2)で表される化合物を用いる以外は上記と同様にして、下記式(13-2)で表される化合物を得る。
【0113】
【化16】
【0114】
【化17】
【0115】
【化18】
【0116】
【化19】
【0117】
次いで、上記式(13-1)で表される化合物(1当量)、上記式(13-2)で表される化合物(1当量)、及びハロゲン化シアヌル(塩化シアヌル等、1当量)を、反応温度15~45℃、pH5~8で縮合することにより、下記式(14)で表される化合物を得る。なお、上記式(13-1)で表される化合物(1当量)及び上記式(13-2)で表される化合物(1当量)の一方の化合物とハロゲン化シアヌル(1当量)とを反応させた後、得られた反応物と他方の化合物とをさらに反応させてもよい。
【0118】
【化20】
【0119】
次いで、上記式(14)で表される化合物と、式H-Aで表される化合物とを、反応温度55~95℃、pH6~9で反応させることにより、脱HCl反応が起こり、上記式(1)で表される化合物を得ることができる。
【0120】
[式(2)で表される化合物]
上記式(2)において、Q21~Q24はそれぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。これらの中では、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0121】
上記式(2)において、R21~R24はそれぞれ独立に、イオン性親水性基で置換されたアルキル基を示す。
アルキル基部分の炭素数は、通常1~4、好ましくは1~3、より好ましくは3である。
イオン性親水性基としては、スルホ基、カルボキシ基、ホスホ基、及び4級アンモニウム基から選択される基が挙げられる。これらの中では、スルホ基、カルボキシ基、及びホスホ基から選択される基が好ましく、スルホ基及びカルボキシ基から選択される基がより好ましく、スルホ基がさらに好ましい。イオン性親水性基の置換数は特に制限されないが、通常1~5個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1個又は2個、特に好ましくは1個である。
【0122】
イオン性親水性基で置換されたアルキル基の具体例としては、例えば、スルホメチル基、スルホエチル基、2,3-ジスルホプロピル基、3-スルホプロピル基、4-スルホブチル基、5-スルホペンチル基、6-スルホヘキシル基、7-スルホヘプチル基、8-スルホオクチル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、3-カルボキシプロピル基、4-カルボキシブチル基、5-カルボキシペンチル基、6-カルボキシヘキシル基、7-カルボキシヘプチル基、8-カルボキシオクチル基、ホスホメチル基、ホスホエチル基、3-ホスホプロピル基、4-ホスホブチル基、5-ホスホペンチル基、6-ホスホヘキシル基、7-ホスホヘプチル基、8-ホスホオクチル基、トリメチルアンモニウムメチル基、トリメチルアンモニウムエチル基、3-トリメチルアンモニウムプロピル基、4-トリメチルアンモニウムブチル基、5-トリメチルアンモニウムペンチル基、6-トリメチルアンモニウムヘキシル基、7-トリメチルアンモニウムヘプチル基、8-トリメチルアンモニウムオクチル基、2-メチル-3-スルホプロピル基、2,2-ジメチル-3-スルホプロピル基、4-スルホシクロヘキシル基、2,5-ジスルホシクロヘキシルメチル基等が挙げられ、3-スルホプロピル基が好ましい。
【0123】
上記式(2)において、Aは、2価の基を示す。2価の基としては、例えば、アルキレンジアミノ基、含窒素複素環基、アリーレンジアミノ基、アミノアルキルチオ基、及びアミノアリールチオ基が挙げられる。これらの中では、アルキレンジアミノ基及び含窒素複素環基が好ましく、含窒素複素環基がより好ましい。
【0124】
アルキレンジアミノ基としては、アルキレン部分が直鎖、分岐鎖、又は環状のものが挙げられる。アルキレン部分は、直鎖又は分岐鎖が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキレン部分の炭素数は、通常2~12、好ましくは2~8、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4である。アルキレンジアミノ基の具体例としては、例えば、1,2-エチレンジアミノ、1,2-プロピレンジアミノ、1,3-プロピレンジアミノ、1,2-ブチレンジアミノ、1,4-ブチレンジアミノ、1,2-ペンチレンジアミノ、1,5-ペンチレンジアミノ、1,2-へキシレンジアミノ、1,6-へキシレンジアミノ、2-メチル-1,3-プロピレンジアミノ、1,2-シクロペンチレンジアミノ、1,2-シクロヘキシレンジアミン、1,4-ピペラジニル等が挙げられる。これらの中では、1,4-ピペラジニルが好ましい。
【0125】
含窒素複素環基としては、環構成原子として窒素原子を2個有する4~9員環(好ましくは5~7員環、より好ましくは5又は6員環、さらに好ましくは6員環)の含窒素複素環基が挙げられる。含窒素複素環基の具体例としては、例えば、1,2-ジアゼチジン、ピラゾリジン、ヘキサヒドロピリダジン、ヘキサヒドロピリミジン、ピペラジン、1,2-ジアゼパン、1,3-ジアゼパン、1,4-ジアゼパン、1,2-ジアゾカン、1,4-ジアゾカン、1,4-ジアゾナン等が挙げられる。これらの中では、ピペラジン(特に1,4-ピペラジンジイル)が好ましい。
【0126】
アリーレンジアミノ基としては、炭素数が通常6~14、好ましくは6~10、より好ましくは6のアリーレンジアミノ基が挙げられる。アリーレンジアミノ基の具体例としては、例えば、1,2-フェニレンジアミノ、1,3-フェニレンジアミノ、1,4-フェニレンジアミノ、1,8-ナフチレンジアミノ、2,8-ナフチレンジアミノ等が挙げられる。
【0127】
アミノアルキルチオ基としては、アルキル部分が直鎖、分岐鎖、又は環状のものが挙げられる。アルキル部分の炭素数は、通常2~12、好ましくは2~8、より好ましくは2~6、さらに好ましくは2~4である。アミノアルキルチオ基の具体例としては、例えば、アミノエチルチオ、アミノプロピルチオ、アミノブチルチオ、アミノペンチルチオ、アミノヘキシルチオ、3-アミノ-2-メチルプロパン-1-チオ、2-アミノシクロヘキサン-1-チオ等が挙げられる。
【0128】
アミノアリールチオ基としては、炭素数が通常6~14、好ましくは6~10、より好ましくは6のアミノアリールチオ基が挙げられる。アミノアリールチオ基の具体例としては、例えば、2-アミノフェニルチオ、4-アミノフェニルチオ、8-アミノナフチル-2-チオ等が挙げられる。
【0129】
は通常1~5個、好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、さらに好ましくは1個又は2個、特に好ましくは1個の置換基をさらに有することができる。置換基としては特に限定されず、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基等が挙げられる。
【0130】
上記式(2)で表される化合物のうち好ましい化合物が、上記式(2-1)で表される化合物である。上記式(2-1)において、Q21~Q24及びAは、好ましいもの等を含めて上記式(2)におけるのと同じ意味を示す。上記式(2-1)において、xはそれぞれ独立に2~4の整数を示し、3が好ましい。
【0131】
上記式(2)で表される化合物の具体例を下記表40~表46に示す。ただし、これらの具体例に限定される訳ではない。
表40~表46中の略号等は、以下の意味を表す。
SMe:スルホメチル(*-CH-SOH)
2-SEt:2-スルホエチル(*-CHCH-SOH)
3-SPr:3-スルホ-n-プロピル(*-CHCHCH-SOH)
4-SBu:3-スルホ-n-ブチル(*-CHCHCHCH-SOH)
上記式中の「*」は、酸素原子との結合位置を示す。
【0132】
また、表40~表46中の「A」欄に記載した式(A2-1)~(A2-5)は、それぞれ下記式で表される。下記式中の「*」は、トリアジン環との結合位置を示す。
【0133】
【化21】
【0134】
【表40】
【0135】
【表41】
【0136】
【表42】
【0137】
【表43】
【0138】
【表44】
【0139】
【表45】
【0140】
【表46】
【0141】
上記式(2)で表される好ましい化合物としては、例えば、上記式(2-1)におけるQ21~Q24が塩素原子であり、xが3であり、Aが1,4-ピペラジンジイル基である化合物が挙げられる。
【0142】
上述した全ての成分及び事項について、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましく、より好ましいもの同士の組み合わせはさらに好ましい。好ましいものとより好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
【0143】
上記式(2)で表される化合物は、例えば次のようにして製造することができる。なお、下記式(20-1)~(24)において適宜使用されるQ21~Q24、R21~R24、及びAは、それぞれ上記式(2)におけるのと同じ意味を示す。
【0144】
まず、特開2004-75719号公報に記載の方法に準じて、2-アミノ-4-ハロゲノフェノールを原料として得られる下記式(20-1)で表される化合物を、重亜硫酸ナトリウム及びホルマリンを用いて下記式(21)で表されるメチル-ω-スルホン酸誘導体に変換する。次いで、常法により、下記式(22)で表される化合物をジアゾ化し、先に得られた下記式(21)で表されるメチル-ω-スルホン酸誘導体と、反応温度0~15℃、pH4~6でカップリング反応を行う。引き続き、反応温度80~95℃、pH10.5~11.5で加水分解反応を行うことにより、下記式(23-1)で表される化合物を得る。また、下記式(20-1)で表される化合物の代わりに下記式(20-2)~(20-4)で表される化合物を用いる以外は上記と同様にして、下記式(23-2)~(23-4)で表される化合物を得る。
【0145】
【化22】
【0146】
【化23】
【0147】
【化24】
【0148】
【化25】
【0149】
次いで、上記式(23-1)で表される化合物(1当量)、上記式(23-2)で表される化合物(1当量)、及びハロゲン化シアヌル(塩化シアヌル等、1当量)を、反応温度15~45℃、pH5~8で縮合することにより、下記式(24-1)で表される化合物を得る。なお、上記式(23-1)で表される化合物(1当量)及び上記式(23-2)で表される化合物(1当量)の一方の化合物とハロゲン化シアヌル(1当量)とを反応させた後、得られた反応物と他方の化合物とをさらに反応させてもよい。また、上記式(23-1)及び(23-2)で表される化合物の代わりに上記(23-3)及び(23-4)で表される化合物を用いる以外は上記と同様にして、下記式(24-2)で表される化合物を得る。
【0150】
【化26】
【0151】
次いで、上記式(24-1)で表される化合物(1当量)、上記式(24-2)で表される化合物(1当量)、及び式H-A-Hで表される化合物を、反応温度55~95℃、pH6~9で反応させることにより、脱HCl反応が起こり、上記式(2)で表される化合物を得ることができる。なお、上記式(24-1)で表される化合物(1当量)及び上記式(24-2)で表される化合物(1当量)の一方の化合物と式H-A-Hで表される化合物とを反応させた後、得られた反応物と他の化合物とをさらに反応させてもよい。
【0152】
[式(1)又は(2)で表される化合物の塩等]
上記式(1)又は(2)で表される化合物の塩としては、無機陽イオン又は有機陽イオンとの塩が挙げられる。無機陽イオンとの塩の具体例としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩;などが挙げられる。有機陽イオンとしては、例えば、下記式(3)で表される4級アンモニウムが挙げられるが、この例に限定されるものではない。
【0153】
【化27】
【0154】
上記式(3)中、Z~Zはそれぞれ独立に、水素原子、C1-C4アルキル基、ヒドロキシC1-C4アルキル基、又はヒドロキシC1-C4アルコキシC1-C4アルキル基を示し、Z~Zの少なくとも1つは水素原子以外の基である。
【0155】
~ZにおけるC1-C4アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。同様に、ヒドロキシC1-C4アルキル基の具体例としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基等が挙げられる。同様に、ヒドロキシC1-C4アルコキシC1-C4アルキル基の具体例としては、ヒドロキシエトキシメチル基、2-ヒドロキシエトキシエチル基、3-(ヒドロキシエトキシ)プロピル基、3-(ヒドロキシエトキシ)ブチル基、2-(ヒドロキシエトキシ)ブチル基等が挙げられる。
【0156】
上記塩の中では、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩等の有機4級アンモニウム塩;アンモニウム塩;などが好ましい。より好ましくは、リチウム塩、ナトリウム塩、及びアンモニウム塩である。
一般に化合物の塩は、その塩の種類により溶解性等の物理的な性質、及び/又はその塩を含有するインクの性能が変化する場合のあることが知られている。このため、目的とするインクの性能等に応じて、塩の種類を選択することも好ましく行われる。
上記式(1)又は(2)で表される化合物の塩は、単一の塩;複数の塩の混合物;遊離酸と、単一又は複数の塩との混合物;等のいずれとすることもできる。
【0157】
上記式(1)又は(2)で表される化合物は、互変異性体、幾何異性体、光学異性体、構造異性体等の各種異性体構造をとり得る場合がある。その場合、上記式(1)又は(2)で表される化合物は、いずれかの構造、あるいは複数の構造が混在した状態で用いることも可能である。互変異性体とは、例えば一般的に知られる、1つの化合物が容易に一方から他方に相互変換しうる2種以上の異性体として存在するものを示す。幾何異性体とは、例えば一般的に知られる立体異性体の一種であり、有機化合物においてはシス-トランス異性体を示す。光学異性体とは、例えば一般的に知られる立体異性体の一種であり、偏光面の回転の向きを異にする物質を示し、左対掌体、右対掌体、及びラセミ体がある。構造異性体とは、例えば一般的に知られる異性体の一種であり、組成式は等しいが、原子間の結合関係が異なる分子を示す。
【0158】
[インク]
本発明のインクは、上記式(1)又は(2)で表される化合物を含有するものである。このインクは、上記式(1)又は(2)で表される化合物を水性媒体(水、又は水と水溶性有機溶剤との混合溶液)に溶解し、必要に応じインク調製剤を添加して調製することができる。
【0159】
インクは、本発明の効果を阻害しない範囲で、その色相を微調整する目的等から、上記式(1)又は(2)で表される化合物以外の公知のイエロー色素をさらに含有していてもよい。
また、例えば、ブラック、レッド、グリーン等の各色のインクを調製する目的で、上記式(1)又は(2)で表される化合物と、公知のマゼンタ、シアン等の色素とを併用することもできる。
【0160】
インクをインクジェットインクとして使用する場合、無機不純物の含有量が少ないものを用いるのが好ましい。無機不純物とは、例えば、金属陽イオンの塩化物(塩化ナトリウム等)、硫酸塩(硫酸ナトリウム等)などを意味する。上記式(1)又は(2)で表される化合物の総質量に対して、無機不純物の総含有量は、通常1質量%以下であり、下限値は0質量%、すなわち検出機器の検出限界以下でよい。色素中の無機不純物の含有量を減らす方法としては、例えば、逆浸透膜、晶析、懸濁精製等により、色素を精製する方法が挙げられる。
【0161】
水溶性有機溶剤は、色素の溶解;組成物の乾燥の防止(湿潤状態の保持);組成物の粘度の調整;色素の記録メディアへの浸透の促進;組成物の表面張力の調整;組成物の消泡;等の効果を有するときがある。このため、上記インクは水溶性有機溶剤を含有するのが好ましい。
【0162】
水溶性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1-C4アルコール;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-オン、1,3-ジメチルヘキサヒドロピリミド-2-オン等の複素環式ケトン;アセトン、メチルエチルケトン、2-メチル-2-ヒドロキシペンタン-4-オン等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール等のC2-C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ、若しくはポリアルキレングリコール又はチオグリコール;トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサン-1,2,6-トリオール等のポリオール(好ましくはトリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのC1-C4モノアルキルエーテル;γ-ブチロラクトン;ジメチルスルホキシド;等が挙げられる。
【0163】
なお、上記の水溶性有機溶剤には、トリメチロールプロパン等のように、常温で固体の物質も含まれている。すなわち、室温では固体であっても水溶性を示す物質であって、その物質を含有する水溶液が水溶性有機溶剤と同様の性質を示し、同じ効果を期待して使用することができる物質は、本明細書においては水溶性有機溶剤とする。そのような物質としては、例えば、固体の多価アルコール類、糖類、アミノ酸類等が挙げられる。
【0164】
インク調製剤としては、例えば、防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、染料溶解剤、褪色防止剤、表面張力調整剤、消泡剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0165】
防腐防黴剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N-ハロアルキルチオ系、ベンゾチアゾール系、ニトリル系、ピリジン系、8-オキシキノリン系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。
有機ハロゲン系化合物としては、例えば、ペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられる。
ピリジンオキシド系化合物としては、例えば、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウムが挙げられる。
イソチアゾリン系化合物としては、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンマグネシウムクロライド、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンカルシウムクロライド等が挙げられる。
その他の防腐防黴剤としては、酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、アーチケミカル社製の商品名プロクセルシリーズ(例えば、プロクセルGXL(S)及びXL-2(S)等)が挙げられる。
【0166】
pH調整剤は、インクの保存安定性を向上させる目的で、インクのpHを6.0~11.0の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;タウリン等のアミノスルホン酸;等が挙げられる。
【0167】
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0168】
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
【0169】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物、スチルベン系化合物等が挙げられる。また、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤等も使用できる。
【0170】
粘度調整剤としては、水溶性有機溶剤の他に、水溶性高分子化合物が挙げられ、例えばポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等が挙げられる。
【0171】
染料溶解剤としては、例えば、尿素、ε-カプロラクタム、エチレンカーボネート等が挙げられる。
【0172】
褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。
有機系の褪色防止剤としては、例えば、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類等が挙げられる。
金属錯体系の褪色防止剤としては、例えば、ニッケル錯体、亜鉛錯体等が挙げられる。
【0173】
表面張力調整剤としては、界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、例えば、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤、及びノニオン界面活性剤に分類することができる。
【0174】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N-アシルアミノ酸及びその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
【0175】
カチオン界面活性剤としては、例えば、2-ビニルピリジン誘導体、ポリ4-ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
【0176】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、その他イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0177】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレングリコール(アルコール)系;日信化学工業株式会社製の商品名サーフィノール104、同82、同465、オルフィンSTG;SIGMA-ALDRICH社製の商品名Tergitol15-S-7;等が挙げられる。
【0178】
消泡剤としては、例えば、高酸化油系化合物、グリセリン脂肪酸エステル系化合物、フッ素系化合物、シリコーン系化合物等が挙げられる。
【0179】
インクの総質量に対して、上記式(1)又は(2)で表される化合物の総含有率は、通常0.1~20質量%、好ましくは1~10質量%、より好ましくは2~8質量%である。同様に、水溶性有機溶剤の含有率は、通常0~60質量%、好ましくは10~50質量%である。同様に、インク調製剤の含有率は、通常0~20質量%、好ましくは0~15質量%である。インクは、上記式(1)又は(2)で表される化合物、並びに必要に応じて水溶性有機溶剤及びインク調製剤を含有し、これら以外の残部は水である。
【0180】
インクの表面張力は、通常25~70mN/m、好ましくは25~60mN/mである。インクの粘度は、30mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下がより好ましい。
【0181】
インクは、上記の各成分を必要に応じて混合することにより調製することができる。各成分を加える順序には特に制限はない。
インクの調製に用いる水は、イオン交換水、蒸留水等の不純物が少ないものが好ましい。
また、調製したインクに対してメンブランフィルター等を用いた精密濾過を行うことができる。インクをインクジェットインクとして使用するときは、ノズルの目詰まり等を防止する目的で、精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過に使用するフィルターの孔径は、通常1~0.1μm、好ましくは0.8~0.1μmである。
【0182】
インクは、印捺、複写、マーキング、筆記、製図、スタンピング、記録等の各種の用途に使用することができる。それらの用途の中でも、インクジェット記録における使用に適する。
【0183】
[インクジェット記録方法、インクジェットプリンタ、及び記録メディア]
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインクの液滴を、記録信号に応じて吐出させて記録メディアに付着させて記録を行う方法である。インクジェット方式としては、例えば、ピエゾ方式、サーマルインクジェット方式等が挙げられる。本発明のインクは、いかなる方式のインクジェットインクとしても使用できる。
【0184】
本発明のインクジェット記録方法では、本発明のインクを単独で使用してもよく、他のインクと併用してもよい。例えば、フルカラーの記録画像を得る目的で、本発明のインクと、マゼンタ、シアン、グリーン、ブルー(又はバイオレット)、レッド、ブラック等から選択される1種又は2種以上のインクとを併用することもできる。
【0185】
記録メディアとしては、インク受容層を有するものと有さないものとに大別される。インクジェット記録方法に用いる記録メディアとしては、これらのいずれも好ましい。
具体的な記録メディアとしては、例えば、紙、フィルム、繊維又は布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等が挙げられる。
【0186】
インク受容層は、インクを吸収してその乾燥を早める等の作用を目的として、記録メディアに設けられる。インク受容層は、例えば、上記記録メディアにカチオン系ポリマーを含浸又は塗工する方法;インク中の色素を吸収できる無機微粒子を、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーとともに記録メディアの表面に塗工する方法;等により設けられる。インク中の色素を吸収し得る無機微粒子としては、多孔質シリカ、アルミナゾル、特殊セラミックス等が挙げられる。
このようなインク受容層を有する記録メディアは、通常、インクジェット専用紙、インクジェット専用フィルム、光沢紙、光沢フィルム等と呼ばれる。インク受容層を有する記録メディアの代表的な市販品の例としては、キヤノン株式会社製、商品名プロフェッショナルフォトペーパー、キヤノン写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]、及び光沢ゴールド;セイコーエプソン株式会社製、商品名写真用紙クリスピア(高光沢)、写真用紙(光沢);日本ヒューレット・パッカード株式会社製、商品名アドバンスフォト用紙(光沢);富士フイルム株式会社製、商品名画彩 写真仕上げPro;ブラザー工業株式会社製、商品名:写真光沢紙BP71G;等が挙げられる。
【0187】
インク受容層を有さない紙としては、普通紙等が挙げられる。市販されている普通紙のうち、インクジェット記録用としては、両面上質普通紙(セイコーエプソン株式会社製);PB PAPER GF-500(キヤノン株式会社製);Multipurpose Paper、All-in-one Printing Paper(Hewlett Packard社製)等が挙げられる。また、プレーンペーパーコピー(PPC)用紙等も普通紙である。
【0188】
上記のうち、
(a)上記式(1)又は(2)で表される化合物、及び、
(b)上記式(1)又は(2)で表される化合物を含有するインク
のいずれかが付着した記録メディアは、本発明の範囲に含まれる。
また、上記式(1)又は(2)で表される化合物を含有するインクを含む容器が装填されたインクジェットプリンタも、本発明の範囲に含まれる。
【0189】
以下に本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されない。以下において、実施例9~12、18はいずれも参考例と読み替えるものとする。
実施例中、反応温度は反応系内の温度である。特に断りの無い限り、反応等の各種の操作は、いずれも撹拌下に行った。
また、λmax(最大吸収波長)は、pH7~8の水溶液中での測定値であり、小数点以下2桁目を四捨五入して記載した。
なお、実施例で得られた本発明の化合物の水に対する溶解度は、室温において100g/L以上であった。
【0190】
本発明の上記式(1)又は(2)で表される化合物は、水、及び水と水溶性有機溶剤との混合液に対する溶解性に優れる。
また、本発明のインクは、例えば、メンブランフィルターに対する濾過性が良好であるという特徴を有する。
本発明のインクは、各種の記録メディアに記録したときに、非常に鮮明で、彩度及び印字濃度が高く、理想的な色相のイエロー色の画像を与える。このため、写真画質のカラー画像を、記録メディアに忠実に再現させることもできる。
本発明のインクは、長期間保存後の固体析出、物性変化、色相変化等もなく、貯蔵安定性が極めて良好である。
本発明のインクは、乾燥による固体の析出が非常に起こりにくい。このため、本発明のインクは、インクジェットプリンタの噴射器(記録ヘッド)の目詰まりを生じることがない。
本発明のインクは、比較的長い時間間隔においてインクを再循環させて使用する連続式インクジェットプリンタにおいても、オンデマンド式インクジェットプリンタによる断続的な使用においても、物理的性質の変化を起こさない。
本発明のインクを使用してインク受容層を有する記録メディアに記録した画像は、耐水性、耐湿性、耐オゾンガス性、耐擦性、耐光性等の各種堅牢性、特に耐光性が良好である。この理由から、写真画質で記録した画像の長期保存安定性も優れる。
本発明のインクを使用してインク受容層を有さない記録メディアに記録した画像は、彩度、明度、及び印字濃度等の発色性も優れる。
【実施例
【0191】
以下に本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
実施例中、反応温度は反応系内の温度である。特に断りの無い限り、反応等の各種の操作は、いずれも撹拌下に行った。
また、λmax(最大吸収波長)は、pH7~8の水溶液中での測定値であり、小数点以下2桁目を四捨五入して記載した。
なお、実施例で得られた本発明の化合物の水に対する溶解度は、室温において100g/L以上であった。
【0192】
[実施例1]
(工程1)
5-アミノ-2-クロロベンゼンスルホン酸20.8部を、水酸化ナトリウムでpH6に調整しながら水200部に溶解し、次いで亜硝酸ナトリウム7.2部を加えた。この溶液を0~10℃で、5%塩酸200部中に30分間かけて滴下した後、10℃以下で1時間撹拌してジアゾ化反応を行い、ジアゾ反応液を調製した。
一方、2-(スルホプロポキシ)-5-クロロアニリン26.6部を、水酸化ナトリウムでpH7に調整しながら水130部に溶解し、10.4部の重亜硫酸ナトリウム及び8.6部の35%ホルマリンを用いて、常法によりメチル-ω-スルホン酸誘導体とした。得られたメチル-ω-スルホン酸誘導体を、先に調製したジアゾ反応液中に加え、0~15℃、pH2~4の条件下で24時間撹拌した。反応液を水酸化ナトリウムでpH11に調整した後、同pHを維持しながら80~95℃で5時間撹拌し、さらに100部の塩化ナトリウムを加えて塩析し、析出固体を濾過分離することにより、下記式(100)で表される化合物100部をウェットケーキとして得た。
【0193】
【化28】
【0194】
(工程2)
250部の氷水中にライオン株式会社製、商品名:レオコールRTMTD90(界面活性剤)0.10部を加えて激しく撹拌し、その中に塩化シアヌル3.6部を添加し、0~5℃で30分間撹拌し、懸濁液を得た。続いて、上記式(100)で表される化合物のウェットケーキ100部を水200部に溶解し、この溶液に上記の懸濁液を30分間かけて滴下した。滴下終了後、pH6~8、25~45℃の条件下で6時間撹拌した。得られた液に、4-アミノ-2-メチル-1-ブタノール6.2部を加え、pH7~9、75~90℃の条件下で4時間撹拌した。得られた反応液を20~25℃まで冷却後、2-プロパノール2000部を加え、20~25℃で2時間撹拌した。析出固体を濾過分離することによりウェットケーキ50.0部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより、下記式(101)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:416.6nm)11.5部を得た。
【0195】
【化29】
【0196】
[実施例2]
実施例1(工程2)において、4-アミノ-2-メチル-1-ブタノール6.2部を使用する代わりにDL-2-アミノ-1-ブタノール5.3部を使用する以外は実施例1と同様にして、下記式(102)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:418.4nm)11.3部を得た。
【0197】
【化30】
【0198】
[インクの調製]
下記表47に示した各成分を混合して溶液とした後、0.45μmのメンブランフィルターで精密濾過することにより、実施例1、2及び比較例1、2のインクを調製した。表中の数値は「部」を表し、「-」はその成分を含有していないことを表す。
下記表47中、「aq.NaOH」が「残部」とは、各成分の混合液に25%水酸化ナトリウム水溶液と水とを加え、各液のpHを8.0~9.5に、且つ、液の総量を100部に調製したことを意味する。
【0199】
下記表47中の略号等は、以下の意味を表す。
式(101):上記式(101)で表される化合物
式(102):上記式(102)で表される化合物
式(300):下記式(300)で表される化合物
DY132:C.I.ダイレクトイエロー132
EDTA2Na:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム
104PG50:サーフィノール104PG50(エアープロダクツジャパン株式会社製)
【0200】
【化31】
【0201】
【表47】
【0202】
[インクジェット記録]
インクジェットプリンタ(キヤノン株式会社製、商品名:PIXUS ip7230)を用いて、実施例1、2及び比較例1、2の各インクを下記の光沢紙1~4に付着させ、インクジェット記録を行った。記録の際は、100%、85%、70%、55%、40%、25%濃度の6段階の階調が得られるように画像パターンを作り、ハーフトーンの記録物を得た。得られた記録物を試験片として用い、下記の試験を行った。
光沢紙1:キヤノン株式会社製、商品名:キヤノン写真用紙・プラチナグレード(PT-201)
光沢紙2:セイコーエプソン株式会社製、商品名:写真用紙クリスピア
光沢紙3:ブラザー工業株式会社製、商品名:BP71G
光沢紙4:富士フイルム株式会社製、商品名:画彩 写真仕上げPro
【0203】
[記録画像の測色]
記録画像の測色が必要なときは、X-rite社製の測色機、商品名SpectroEyeを用いて測色を行った。測色は、濃度基準にANSI A、視野角2度、光源D50の条件で行った。
【0204】
[キセノン耐光性試験]
各試験片をホルダ-を用い、キセノンウェザオメータXL75[スガ試験機株式会社製]中に設置し、温度24℃、湿度60%RH、100klux照度で168時間照射した。各試験片の55%濃度の階調部分について、試験前後の反射濃度を測色した。得られた反射濃度から色素残存率を算出し、下記3段階の基準で評価した。色素残存率は、より大きい数値のものがより優れる。評価結果を下記表48に示す。
(耐光性評価基準)
色素残存率が85%以上:A
色素残存率が81%以上85%未満:B
色素残存率が81%未満:C
(色素残存率の算出式)
色素残存率(%)=(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100
【0205】
【表48】
【0206】
表48から明らかなように、耐光性試験において、いずれの光沢紙においても実施例1、2は比較例1、2より優れる結果を示した。
【0207】
[実施例3]
実施例1(工程2)において、4-アミノ-2-メチル-1-ブタノール6.2部を使用する代わりに2-(メチルアミノ)エタノール4.5部を使用する以外は実施例1と同様にして、下記式(103)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:418.5nm)11.2部を得た。
【0208】
【化32】
【0209】
[インクの調製]
上記式(101)で表される化合物の代わりに上記式(103)で表される化合物を使用する以外は実施例1と同様にして、実施例3のインクを調製した。
【0210】
[インクジェット記録]
インクジェットプリンタ(キヤノン株式会社製、商品名:PIXUS ip7230)を用いて、実施例3及び上記比較例1、2の各インクを下記の光沢紙1~4に付着させ、インクジェット記録を行った。記録の際は、100%、85%、70%、55%、40%、25%濃度の6段階の階調が得られるように画像パターンを作り、ハーフトーンの記録物を得た。得られた記録物を試験片として用い、下記の試験を行った。
光沢紙1:キヤノン株式会社製、商品名:キヤノン写真用紙・プラチナグレード(PT-201)
光沢紙2:セイコーエプソン株式会社製、商品名:写真用紙クリスピア
光沢紙3:ブラザー工業株式会社製、商品名:BP71G
光沢紙4:富士フイルム株式会社製、商品名:画彩 写真仕上げPro
【0211】
[記録画像の測色]
記録画像の測色が必要なときは、X-rite社製の測色機、商品名SpectroEyeを用いて測色を行った。測色は、濃度基準にDIN NB、視野角2度、光源D65の条件で行った。
【0212】
[キセノン耐光性試験]
各試験片をホルダ-を用い、キセノンウェザオメータXL75[スガ試験機株式会社製]中に設置し、温度24℃、湿度60%RH、100klux照度で168時間照射した。各試験片の70%濃度の階調部分について、試験前後の反射濃度を測色した。得られた反射濃度から色素残存率を算出し、下記4段階の基準で評価した。色素残存率は、より大きい数値のものがより優れる。評価結果を下記表49に示す。
(耐光性評価基準)
色素残存率が90%以上:A
色素残存率が85%以上90%未満:B
色素残存率が81%以上85%未満:C
色素残存率が81%未満:D
(色素残存率の算出式)
色素残存率(%)=(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100
【0213】
【表49】
【0214】
表49から明らかなように、耐光性試験において、いずれの光沢紙においても実施例3は比較例1、2より優れる結果を示した。
【0215】
[実施例4]
(工程1)
5-アミノ-2-クロロベンゼンスルホン酸17.3部を、水酸化ナトリウムでpH7に調整しながら水200部に溶解し、次いで亜硝酸ナトリウム7.2部を加えた。この溶液を0~10℃で、5%塩酸200部中に30分間かけて滴下した後、10℃以下で1時間撹拌してジアゾ化反応を行い、ジアゾ反応液を調製した。
一方、2-(スルホプロポキシ)-5-クロロアニリン26.6部を、水酸化ナトリウムでpH7に調整しながら水130部に溶解し、10.4部の重亜硫酸ナトリウム及び8.6部の35%ホルマリンを用いて、常法によりメチル-ω-スルホン酸誘導体とした。得られたメチル-ω-スルホン酸誘導体を、先に調製したジアゾ反応液中に加え、0~15℃、pH4~6の条件下で24時間撹拌した。反応液を水酸化ナトリウムでpH11に調整した後、同pHを維持しながら80~95℃で5時間撹拌し、さらに100部の塩化ナトリウムを加えて塩析し、析出固体を濾過分離することにより、上記式(100)で表される化合物100部をウェットケーキとして得た。
【0216】
(工程2)
250部の氷水中にライオン株式会社製、商品名:レオコールRTMTD90(界面活性剤)0.10部を加えて激しく撹拌し、その中に塩化シアヌル3.6部を添加し、0~5℃で30分間撹拌し、懸濁液を得た。続いて、上記式(100)で表される化合物のウェットケーキ100部を水200部に溶解し、この溶液に上記の懸濁液を30分間かけて滴下した。滴下終了後、pH6~8、25~45℃の条件下で6時間撹拌した。得られた液に、3-メトキシプロピルアミン3.4部を加え、pH7~9、75~90℃の条件下で2時間撹拌した。得られた反応液を20~25℃まで冷却後、2-プロパノール2000部を加え、20~25℃で2時間撹拌した。析出固体を濾過分離することによりウェットケーキ103.3部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより、下記式(104)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:408.0nm)13.3部を得た。
【0217】
【化33】
【0218】
[インクの調製]
上記式(101)で表される化合物の代わりに上記式(104)で表される化合物を使用する以外は実施例1と同様にして、実施例4のインクを調製した。
【0219】
[インクジェット記録]
インクジェットプリンタ(キヤノン株式会社製、商品名:PIXUS ip7230)を用いて、実施例4及び上記比較例1、2の各インクを下記の光沢紙1~4に付着させ、インクジェット記録を行った。記録の際は、100%、85%、70%、55%、40%、25%濃度の6段階の階調が得られるように画像パターンを作り、ハーフトーンの記録物を得た。得られた記録物を試験片として用い、下記の試験を行った。
光沢紙1:キヤノン株式会社製、商品名:キヤノン写真用紙・プラチナグレード(PT-201)
光沢紙2:セイコーエプソン株式会社製、商品名:写真用紙クリスピア
光沢紙3:ブラザー工業株式会社製、商品名:BP71G
光沢紙4:富士フイルム株式会社製、商品名:画彩 写真仕上げPro
【0220】
[記録画像の測色]
記録画像の測色が必要なときは、X-rite社製の測色機、商品名SpectroEyeを用いて測色を行った。測色は、濃度基準にDIN NB、視野角2度、光源D65の条件で行った。
【0221】
[キセノン耐光性試験]
各試験片をホルダ-を用い、キセノンウェザオメータXL75[スガ試験機株式会社製]中に設置し、温度24℃、湿度60%RH、100klux照度で168時間照射した。各試験片の55%濃度の階調部分について、試験前後の反射濃度を測色した。得られた反射濃度から色素残存率を算出し、下記3段階の基準で評価した。色素残存率は、より大きい数値のものがより優れる。評価結果を下記表50に示す。
(耐光性評価基準)
色素残存率が85%以上:A
色素残存率が81%以上85%未満:B
色素残存率が81%未満:C
(色素残存率の算出式)
色素残存率(%)=(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100
【0222】
【表50】
【0223】
表50から明らかなように、耐光性試験において、いずれの光沢紙においても実施例4は比較例1、2より優れる結果を示した。
【0224】
[実施例5]
実施例1(工程2)において、4-アミノ-2-メチル-1-ブタノール6.2部を使用する代わりに1-アミノ-2-プロパノール6.0部を使用する以外は実施例1と同様にして、下記式(105)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:419.0nm)10.5部を得た。
【0225】
【化34】
【0226】
[実施例6]
実施例1(工程2)において、4-アミノ-2-メチル-1-ブタノール6.2部を使用する代わりに2-アミノ-1-プロパノール6.0部を使用する以外は実施例1と同様にして、下記式(106)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:418.0nm)10.2部を得た。
【0227】
【化35】
【0228】
[実施例7]
実施例1(工程2)において、4-アミノ-2-メチル-1-ブタノール6.2部を使用する代わりに2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール6.2部を使用する以外は実施例1と同様にして、下記式(107)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:418.5nm)5.6部を得た。
【0229】
【化36】
【0230】
[実施例8]
実施例1(工程2)において、4-アミノ-2-メチル-1-ブタノール6.2部を使用する代わりにエトキシプロピルアミン6.2部を使用する以外は実施例1と同様にして、下記式(108)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:418.5nm)11.2部を得た。
【0231】
【化37】
【0232】
[インクの調製]
上記式(101)で表される化合物の代わりに上記式(105)~(108)で表される各化合物を使用する以外は実施例1と同様にして、実施例5~8のインクを調製した。
【0233】
[インクジェット記録]
インクジェットプリンタ(キヤノン株式会社製、商品名:PIXUS ip7230)を用いて、実施例5~8及び上記比較例1、2の各インクを下記の光沢紙1~6に付着させ、インクジェット記録を行った。記録の際は、100%、85%、70%、55%、40%、25%濃度の6段階の階調が得られるように画像パターンを作り、ハーフトーンの記録物を得た。得られた記録物を試験片として用い、下記の試験を行った。
光沢紙1:キヤノン株式会社製、商品名:キヤノン写真用紙・プラチナグレード(PT-201)
光沢紙2:キヤノン株式会社製、商品名:キヤノン写真用紙・ゴールドグレード(GL-101)
光沢紙3:セイコーエプソン株式会社製、商品名:写真用紙クリスピア
光沢紙4:セイコーエプソン株式会社製、商品名:写真用紙<光沢>
光沢紙5:ブラザー工業株式会社製、商品名:BP71G
光沢紙6:富士フイルム株式会社製、商品名:画彩 写真仕上げPro
【0234】
[記録画像の測色]
記録画像の測色が必要なときは、X-rite社製の測色機、商品名SpectroEyeを用いて測色を行った。測色は、濃度基準にANSI A、視野角2度、光源D50の条件で行った。
【0235】
[キセノン耐光性試験]
各試験片をホルダ-を用い、キセノンウェザオメータXL75[スガ試験機株式会社製]中に設置し、温度24℃、湿度60%RH、100klux照度で168時間照射した。各試験片の70%濃度の階調部分について、試験前後の反射濃度を測色した。得られた反射濃度から色素残存率を算出し、下記4段階の基準で評価した。色素残存率は、より大きい数値のものがより優れる。評価結果を下記表51に示す。
(耐光性評価基準)
色素残存率が90%以上:A
色素残存率が85%以上90%未満:B
色素残存率が81%以上85%未満:C
色素残存率が81%未満:D
(色素残存率の算出式)
色素残存率(%)=(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100
【0236】
【表51】
【0237】
表51から明らかなように、耐光性試験において、いずれの光沢紙においても実施例5~8は比較例1、2より優れる結果を示した。
【0238】
[実施例9]
250部の氷水中にライオン株式会社製、商品名:レオコールRTMTD90(界面活性剤)0.10部を加えて激しく撹拌し、その中に塩化シアヌル3.6部を添加し、0~5℃で30分間撹拌し、懸濁液を得た。続いて、上記式(100)で表される化合物のウェットケーキ100部を水200部に溶解し、この溶液に上記の懸濁液を30分間かけて滴下した。滴下終了後、pH6~8、25~45℃の条件下で6時間撹拌した。得られた液に、メチルアミン塩酸塩5.0部を加え、pH7~9、75~90℃の条件下で2時間撹拌した。得られた反応液を20~25℃まで冷却後、2-プロパノール2000部を加え、20~25℃で2時間撹拌した。析出固体を濾過分離することによりウェットケーキ48.6部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより、下記式(109)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:418.0nm)10.9部を得た。
【0239】
【化38】
【0240】
[インクの調製]
上記式(101)で表される化合物の代わりに上記式(109)で表される化合物を使用する以外は実施例1と同様にして、実施例9のインクを調製した。
【0241】
[インクジェット記録]
インクジェットプリンタ(キヤノン株式会社製、商品名:PIXUS ip7230)を用いて、実施例9及び上記比較例1、2の各インクを下記の光沢紙1~4に付着させ、インクジェット記録を行った。記録の際は、100%、85%、70%、55%、40%、25%濃度の6段階の階調が得られるように画像パターンを作り、ハーフトーンの記録物を得た。得られた記録物を試験片として用い、下記の試験を行った。
光沢紙1:キヤノン株式会社製、商品名:キヤノン写真用紙・プラチナグレード(PT-201)
光沢紙2:セイコーエプソン株式会社製、商品名:写真用紙クリスピア
光沢紙3:ブラザー工業株式会社製、商品名:BP71G
光沢紙4:富士フイルム株式会社製、商品名:画彩 写真仕上げPro
【0242】
[記録画像の測色]
記録画像の測色が必要なときは、X-rite社製の測色機、商品名SpectroEyeを用いて測色を行った。測色は、濃度基準にANSI A、視野角2度、光源D50の条件で行った。
【0243】
[印字濃度試験]
各試験片のうち、反射濃度が最も高い階調部分について、上記測色システムによりイエロー印字濃度(Dy値)を測定した。発色性は、より大きい数値のものがより優れる。評価結果を下記表52に示す。
【0244】
【表52】
【0245】
表52から明らかなように、イエロー印字濃度試験(Dy値)において、いずれの光沢紙においても実施例9は比較例1、2より優れる結果を示した。
【0246】
[実施例10]
250部の氷水中にライオン株式会社製、商品名:レオコールRTMTD90(界面活性剤)0.10部を加えて激しく撹拌し、その中に塩化シアヌル3.6部を添加し、0~5℃で30分間撹拌し、懸濁液を得た。続いて、上記式(100)で表される化合物のウェットケーキ100部を水200部に溶解し、この溶液に上記の懸濁液を30分間かけて滴下した。滴下終了後、pH6~8、25~45℃の条件下で6時間撹拌した。得られた液に、エチルアミン塩酸塩6.0部を加え、pH7~9、75~90℃の条件下で2時間撹拌した。得られた反応液を20~25℃まで冷却後、2-プロパノール2000部を加え、20~25℃で2時間撹拌した。析出固体を濾過分離することによりウェットケーキ49.3部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより、下記式(110)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:416.5nm)11.0部を得た。
【0247】
【化39】
【0248】
[実施例11]
エチルアミン塩酸塩6.0部を使用する代わりにプロピルアミン4.4部を使用する以外は実施例10と同様にして、下記式(111)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:416.5nm)11.2部を得た。
【0249】
【化40】
【0250】
[実施例12]
エチルアミン塩酸塩6.0部を使用する代わりにブチルアミン5.4部を使用する以外は実施例10と同様にして、下記式(112)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:418.0nm)11.3部を得た。
【0251】
【化41】
【0252】
[インクの調製]
上記式(101)で表される化合物の代わりに上記式(110)~(112)で表される各化合物を使用する以外は実施例1と同様にして、実施例10~12のインクを調製した。
【0253】
[インクジェット記録]
インクジェットプリンタ(キヤノン株式会社製、商品名:PIXUS ip7230)を用いて、実施例10~12及び上記比較例1、2の各インクを下記の光沢紙1~3に付着させ、インクジェット記録を行った。記録の際は、100%、85%、70%、55%、40%、25%濃度の6段階の階調が得られるように画像パターンを作り、ハーフトーンの記録物を得た。得られた記録物を試験片として用い、下記の試験を行った。
光沢紙1:キヤノン株式会社製、商品名:キヤノン写真用紙・ゴールドグレード(GL-101)
光沢紙2:セイコーエプソン株式会社製、商品名:写真用紙クリスピア
光沢紙3:ブラザー工業株式会社製、商品名:BP71G
【0254】
[記録画像の測色]
記録画像の測色が必要なときは、X-rite社製の測色機、商品名SpectroEyeを用いて測色を行った。測色は、濃度基準にANSI A、視野角2度、光源D50の条件で行った。
【0255】
[キセノン耐光性試験]
各試験片をホルダ-を用い、キセノンウェザオメータXL75[スガ試験機株式会社製]中に設置し、温度24℃、湿度60%RH、100klux照度で168時間照射した。各試験片の70%濃度の階調部分について、試験前後の反射濃度を測色した。得られた反射濃度から色素残存率を算出し、下記3段階の基準で評価した。色素残存率は、より大きい数値のものがより優れる。評価結果を下記表53に示す。
(耐光性評価基準)
色素残存率が85%以上:A
色素残存率が81%以上85%未満:B
色素残存率が81%未満:C
(色素残存率の算出式)
色素残存率(%)=(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100
【0256】
【表53】
【0257】
表53から明らかなように、実施例10は比較例1と比べて、光沢紙1では同等、光沢紙2、3では優れた結果を示した。また、実施例10は比較例2と比べて、いずれの光沢紙においても優れた結果を示した。実施例11、12は比較例1と比べて、光沢紙1、3では同等、光沢紙2では優れた結果を示した。また、実施例11、12は比較例2と比べて、光沢紙3では同等、光沢紙1、2では優れた結果を示した。これらの結果は、実施例10~12が比較例1、2と比べて同等以上の耐光性を有していることを示している。
【0258】
[実施例13]
エチルアミン塩酸塩6.0部を使用する代わりに2-アミノ-1,3-プロパンジオール15.0部を使用する以外は実施例10と同様にして、下記式(113)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:416.5nm)11.0部を得た。
【0259】
【化42】
【0260】
[インクの調製]
上記式(101)で表される化合物の代わりに上記式(113)で表される化合物を使用する以外は実施例1と同様にして、実施例13のインクを調製した。
【0261】
[インクジェット記録]
インクジェットプリンタ(キヤノン株式会社製、商品名:PIXUS ip7230)を用いて、実施例13及び上記比較例1、2の各インクを下記の光沢紙1~3に付着させ、インクジェット記録を行った。記録の際は、100%、85%、70%、55%、40%、25%濃度の6段階の階調が得られるように画像パターンを作り、ハーフトーンの記録物を得た。得られた記録物を試験片として用い、下記の試験を行った。
光沢紙1:キヤノン株式会社製、商品名:キヤノン写真用紙・ゴールドグレード(GL-101)
光沢紙2:セイコーエプソン株式会社製、商品名:写真用紙<光沢>
光沢紙3:富士フイルム株式会社製、商品名:画彩 写真仕上げPro
【0262】
[記録画像の測色]
記録画像の測色が必要なときは、X-rite社製の測色機、商品名SpectroEyeを用いて測色を行った。測色は、濃度基準にANSI A、視野角2度、光源D50の条件で行った。
【0263】
[キセノン耐光性試験]
各試験片をホルダ-を用い、キセノンウェザオメータXL75[スガ試験機株式会社製]中に設置し、温度24℃、湿度60%RH、100klux照度で168時間照射した。各試験片の70%濃度の階調部分について、試験前後の反射濃度を測色した。得られた反射濃度から色素残存率を算出し、下記3段階の基準で評価した。色素残存率は、より大きい数値のものがより優れる。評価結果を下記表54に示す。
(耐光性評価基準)
色素残存率が85%以上:A
色素残存率が81%以上85%未満:B
色素残存率が81%未満:C
(色素残存率の算出式)
色素残存率(%)=(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100
【0264】
【表54】
【0265】
表54から明らかなように、実施例13は比較例1と比べて、光沢紙1、3では同等、光沢紙2では優れた結果を示した。また、実施例13は比較例2と比べて、いずれの光沢紙においても優れた結果を示した。これらの結果は、実施例13が比較例1、2と比べて同等以上の耐光性を有していることを示している。
【0266】
[実施例14]
実施例1(工程2)において、4-アミノ-2-メチル-1-ブタノール6.2部を使用する代わりに2-(エチルアミノ)エタノール5.3部を使用する以外は実施例1と同様にして、下記式(114)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:422.0nm)11.3部を得た。
【0267】
【化43】
【0268】
[実施例15]
実施例1(工程2)において、4-アミノ-2-メチル-1-ブタノール6.2部を使用する代わりに2-(ブチルアミノ)エタノール7.0部を使用する以外は実施例1と同様にして、下記式(115)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:420.5nm)11.6部を得た。
【0269】
【化44】
【0270】
[インクの調製]
上記式(101)で表される化合物の代わりに上記式(114)、(115)で表される各化合物を使用する以外は実施例1と同様にして、実施例14、15のインクを調製した。
【0271】
[インクジェット記録]
インクジェットプリンタ(キヤノン株式会社製、商品名:PIXUS ip7230)を用いて、実施例14、15及び上記比較例1、2の各インクを下記の光沢紙1~4に付着させ、インクジェット記録を行った。記録の際は、100%、85%、70%、55%、40%、25%濃度の6段階の階調が得られるように画像パターンを作り、ハーフトーンの記録物を得た。得られた記録物を試験片として用い、下記の試験を行った。
光沢紙1:キヤノン株式会社製、商品名:キヤノン写真用紙・ゴールドグレード(GL-101)
光沢紙2:セイコーエプソン株式会社製、商品名:写真用紙<光沢>
光沢紙3:ブラザー工業株式会社製、商品名:BP71G
光沢紙4:富士フイルム株式会社製、商品名:画彩 写真仕上げPro
【0272】
[記録画像の測色]
記録画像の測色が必要なときは、X-rite社製の測色機、商品名SpectroEyeを用いて測色を行った。測色は、濃度基準にANSI A、視野角2度、光源D50の条件で行った。
【0273】
[キセノン耐光性試験]
各試験片をホルダ-を用い、キセノンウェザオメータXL75[スガ試験機株式会社製]中に設置し、温度24℃、湿度60%RH、100klux照度で168時間照射した。各試験片の70%濃度の階調部分について、試験前後の反射濃度を測色した。得られた反射濃度から色素残存率を算出し、下記4段階の基準で評価した。色素残存率は、より大きい数値のものがより優れる。評価結果を下記表55に示す。
(耐光性評価基準)
色素残存率が90%以上:A
色素残存率が85%以上90%未満:B
色素残存率が81%以上85%未満:C
色素残存率が81%未満:D
(色素残存率の算出式)
色素残存率(%)=(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100
【0274】
【表55】
【0275】
表55から明らかなように、実施例14は比較例1と比べ、光沢紙1では同等、光沢紙2~4では良好な結果を示した。また、実施例14は比較例2と比べ、全ての光沢紙で良好な結果を示した。実施例15は比較例1と比べ、光沢紙1、2では同等、光沢紙3、4では良好な結果を示した。また、実施例15は比較例2と比べ、光沢紙2では同等、それ以外の光沢紙では良好な結果を示した。これらの結果は、実施例14、15が比較例1、2と比べて同等以上の耐光性を持つことを示している。
【0276】
[実施例16]
250部の氷水中にライオン株式会社製、商品名:レオコールRTMTD90(界面活性剤)0.10部を加えて激しく撹拌し、その中に塩化シアヌル3.6部を添加し、0~5℃で30分間撹拌し、懸濁液を得た。続いて、上記式(100)で表される化合物のウェットケーキ100部を水200部に溶解し、この溶液に上記の懸濁液を30分間かけて滴下した。滴下終了後、pH6~8、25~45℃の条件下で6時間撹拌した。得られた液に、テトラヒドロフルフリルアミン6.1部を加え、pH7~9、75~90℃の条件下で2時間撹拌した。得られた反応液を20~25℃まで冷却後、2-プロパノール2000部を加え、20~25℃で2時間撹拌した。析出固体を濾過分離することによりウェットケーキ103.3部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより、下記式(116)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:417.5nm)11.4部を得た。
【0277】
【化45】
【0278】
[インクの調製]
上記式(101)で表される化合物の代わりに上記式(116)で表される化合物を使用する以外は実施例1と同様にして、実施例16のインクを調製した。
【0279】
[インクジェット記録]
インクジェットプリンタ(キヤノン株式会社製、商品名:PIXUS ip7230)を用いて、実施例16及び上記比較例1、2の各インクを下記の光沢紙1~4に付着させ、インクジェット記録を行った。記録の際は、100%、85%、70%、55%、40%、25%濃度の6段階の階調が得られるように画像パターンを作り、ハーフトーンの記録物を得た。得られた記録物を試験片として用い、下記の試験を行った。
光沢紙1:キヤノン株式会社製、商品名:キヤノン写真用紙・プラチナグレード(PT-201)
光沢紙2:キヤノン株式会社製、商品名:キヤノン写真用紙・ゴールドグレード(GL-101)
光沢紙3:セイコーエプソン株式会社製、商品名:写真用紙クリスピア
光沢紙4:ブラザー工業株式会社製、商品名:BP71G
【0280】
[記録画像の測色]
記録画像の測色が必要なときは、X-rite社製の測色機、商品名SpectroEyeを用いて測色を行った。測色は、濃度基準にANSI A、視野角2度、光源D50の条件で行った。
【0281】
[キセノン耐光性試験]
各試験片をホルダ-を用い、キセノンウェザオメータXL75[スガ試験機株式会社製]中に設置し、温度24℃、湿度60%RH、100klux照度で168時間照射した。各試験片の55%濃度の階調部分について、試験前後の反射濃度を測色した。得られた反射濃度から色素残存率を算出し、下記4段階の基準で評価した。色素残存率は、より大きい数値のものがより優れる。評価結果を下記表56に示す。
(耐光性評価基準)
色素残存率が90%以上:A
色素残存率が85%以上90%未満:B
色素残存率が81%以上85%未満:C
色素残存率が81%未満:D
(色素残存率の算出式)
色素残存率(%)=(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100
【0282】
【表56】
【0283】
表56から明らかなように、実施例16は比較例1、2と比べて、全ての光沢紙で良好な結果を示した。これらの結果は、実施例16が比較例1、2と比べて耐光性に優れていることを示している。
【0284】
[実施例17]
テトラヒドロフルフリルアミン6.1部を使用する代わりにピロリジン4.0部を使用する以外は実施例16と同様にして、下記式(117)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:416.5nm)10.5部を得た。
【0285】
【化46】
【0286】
[インクの調製]
上記式(101)で表される化合物の代わりに上記式(117)で表される化合物を使用する以外は実施例1と同様にして、実施例17のインクを調製した。
【0287】
[インクジェット記録]
インクジェットプリンタ(キヤノン株式会社製、商品名:PIXUS ip7230)を用いて、実施例17及び上記比較例1、2の各インクを下記の光沢紙1、2に付着させ、インクジェット記録を行った。記録の際は、100%、85%、70%、55%、40%、25%濃度の6段階の階調が得られるように画像パターンを作り、ハーフトーンの記録物を得た。得られた記録物を試験片として用い、下記の試験を行った。
光沢紙1:キヤノン株式会社製、商品名:キヤノン写真用紙・プラチナグレード(PT-201)
光沢紙2:富士フイルム株式会社製、商品名:画彩 写真仕上げPro
【0288】
[記録画像の測色]
記録画像の測色が必要なときは、X-rite社製の測色機、商品名SpectroEyeを用いて測色を行った。測色は、濃度基準にANSI A、視野角2度、光源D50の条件で行った。
【0289】
[キセノン耐光性試験]
各試験片をホルダ-を用い、キセノンウェザオメータXL75[スガ試験機株式会社製]中に設置し、温度24℃、湿度60%RH、100klux照度で168時間照射した。各試験片の55%濃度の階調部分について、試験前後の反射濃度を測色した。得られた反射濃度から色素残存率を算出し、下記2段階の基準で評価した。色素残存率は、より大きい数値のものがより優れる。評価結果を下記表57に示す。
(耐光性評価基準)
色素残存率が85%以上:A
色素残存率が85%未満:B
(色素残存率の算出式)
色素残存率(%)=(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100
【0290】
【表57】
【0291】
表57から明らかなように、実施例17は比較例1、2と比べて、いずれの光沢紙においても良好な結果を示した。これらの結果は、実施例17が比較例1、2と比べて耐光性に優れていることを示している。
【0292】
[実施例18]
(工程1)
5-アミノ-2-クロロベンゼンスルホン酸20.8部を、水酸化ナトリウムでpH7
に調整しながら水200部に溶解し、次いで亜硝酸ナトリウム7.2部を加えた。この溶液を0~10℃で、5%塩酸200部中に30分間かけて滴下した後、10℃以下で1時間撹拌してジアゾ化反応を行い、ジアゾ反応液を調製した。
一方、2-(スルホプロポキシ)-5-クロロアニリン26.6部を、水酸化ナトリウムでpH7に調整しながら水130部に溶解し、10.4部の重亜硫酸ナトリウム及び8.6部の35%ホルマリンを用いて、常法によりメチル-ω-スルホン酸誘導体とした。得られたメチル-ω-スルホン酸誘導体を、先に調製したジアゾ反応液中に加え、0~15℃、pH4~6の条件下で24時間撹拌した。反応液を水酸化ナトリウムでpH11に調整した後、同pHを維持しながら80~95℃で5時間撹拌し、さらに100部の塩化ナトリウムを加えて塩析し、析出固体を濾過分離することにより、上記式(100)で表される化合物100部をウェットケーキとして得た。
【0293】
(工程2)
250部の氷水中にライオン株式会社製、商品名:レオコールRTMTD90(界面活性剤)0.10部を加えて激しく撹拌し、その中に塩化シアヌル3.6部を添加し、0~5℃で30分間撹拌し、懸濁液を得た。続いて、上記式(100)で表される化合物のウェットケーキ100部を水200部に溶解し、この溶液に上記の懸濁液を30分間かけて滴下した。滴下終了後、pH6~8、25~45℃の条件下で6時間撹拌した。得られた液に、ピペラジン0.9部を加え、pH7~9、75~90℃の条件下で2時間撹拌した。得られた反応液を20~25℃まで冷却後、2-プロパノール2000部を加え、20~25℃で2時間撹拌した。析出固体を濾過分離することによりウェットケーキ92.1部を得た。このウェットケーキを80℃の熱風乾燥機で乾燥することにより、下記式(200)で表される本発明の化合物のナトリウム塩(λmax:418.5nm)12.0部を得た。
【0294】
【化47】
【0295】
[インクの調製]
上記式(101)で表される化合物の代わりに上記式(200)で表される化合物を使用する以外は実施例1と同様にして、実施例18のインクを調製した。
【0296】
[インクジェット記録]
インクジェットプリンタ(キヤノン株式会社製、商品名:PIXUS ip7230)を用いて、実施例18及び上記比較例1、2の各インクを下記の光沢紙1~4に付着させ、インクジェット記録を行った。記録の際は、100%、85%、70%、55%、40%、25%濃度の6段階の階調が得られるように画像パターンを作り、ハーフトーンの記録物を得た。得られた記録物を試験片として用い、下記の試験を行った。
光沢紙1:キヤノン株式会社製、商品名:キヤノン写真用紙・プラチナグレード(PT-201)
光沢紙2:セイコーエプソン株式会社製、商品名:写真用紙クリスピア
光沢紙3:ブラザー工業株式会社製、商品名:BP71G
光沢紙4:富士フイルム株式会社製、商品名:画彩 写真仕上げPro
【0297】
[記録画像の測色]
記録画像の測色が必要なときは、X-rite社製の測色機、商品名SpectroEyeを用いて測色を行った。測色は、濃度基準にDIN NB、視野角2度、光源D65の条件で行った。
【0298】
[キセノン耐光性試験]
各試験片をホルダ-を用い、キセノンウェザオメータXL75[スガ試験機株式会社製]中に設置し、温度24℃、湿度60%RH、100klux照度で168時間照射した。各試験片の70%濃度の階調部分について、試験前後の反射濃度を測色した。得られた反射濃度から色素残存率を算出し、下記4段階の基準で評価した。色素残存率は、より大きい数値のものがより優れる。評価結果を下記表58に示す。
(耐光性評価基準)
色素残存率が90%以上:A
色素残存率が85%以上90%未満:B
色素残存率が81%以上85%未満:C
色素残存率が81%未満:D
(色素残存率の算出式)
色素残存率(%)=(試験後の反射濃度/試験前の反射濃度)×100
【0299】
【表58】
【0300】
表58から明らかなように、耐光性試験において、いずれの光沢紙においても実施例18は比較例1、2より優れる結果を示した。