(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-31
(45)【発行日】2022-02-08
(54)【発明の名称】高度に多重化された蛍光イメージング
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6816 20180101AFI20220201BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220201BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220201BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20220201BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20220201BHJP
【FI】
C12Q1/6816 Z ZNA
C12M1/34 D
G01N33/53 Y
G01N33/48 P
G01N33/53 M
G01N33/543 575
(21)【出願番号】P 2019503242
(86)(22)【出願日】2017-07-26
(86)【国際出願番号】 US2017044039
(87)【国際公開番号】W WO2018022809
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-20
(32)【優先日】2016-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】ノーラン,ギャリー ピー.
(72)【発明者】
【氏名】サムシク,ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】ケネディー-ダーリング,ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】ゴルツェフ,ユーリー
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0004598(US,A1)
【文献】国際公開第2015/138653(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/017586(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0021904(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12M 1/00- 3/10
C12N 1/00-15/90
CA/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Genbank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定された細胞を含む試料を分析するための方法であって、順次行われる以下のステップ:
(a)
i.それぞれ異なるオリゴヌクレオチドに連結された複数の捕捉剤と、
ii.対応する複数の標識された核酸プローブと、
を得るステップであって、前記標識された核酸プローブの各々は、前記(a)(i)のオリゴヌクレオチドのただ1つのみと特異的にハイブリダイズするものであるステップ;
(b)前記(a)(i)の複数の捕捉剤で
、固定された細胞を含む試料を標識するステップ;
(c)(a)(ii)の標識された核酸プローブの第1のサブセットを
前記固定された細胞を含む試料と特異的にハイブリダイズさせるステップであって、第1のサブセット中のプローブが識別可能に標識されていて、標識されたプローブ/オリゴヌクレオチド二本鎖を生成するステップ;
(d)ステップ(c)でハイブリダイズした前記プローブの各々についての結合パターンを示す画像を得るために、前記
固定された細胞を含む試料を読み取るステップ;
(e)ステップ(c)
でハイブリダイズした前記プローブを、置換プローブを用いてDNAプローブを置換することによって変性するのではなく、DMSO又はホルムアミドを用いて変性することにより前記固定された細胞を含む試料から完全に除去し、前記(b)の複数の捕捉剤およびそれらに関連付けられたオリゴヌクレオチドは依然として前記
固定された細胞を含む試料に結合させておくステップ、及び
(f)(a)(ii)の標識された核酸プローブの異なるサブセットを用いてステップ(c)および(d)を複数回繰り返すステップであって、最後の繰り返しを除いて各繰り返しの後にはステップ(e)を行って、
前記固定された細胞を含む試料の複数の画像を生成し、各画像は(c)で使用された標識された核酸プローブの
異なるサブセットに対応しているステップ、
を含む、方法。
【請求項2】
前記試料が平面細胞試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記(a)(i)のオリゴヌクレオチドが、少なくとも5ヌクレオチドの長さである、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記(a)(ii)の標識された核酸プローブが、少なくとも5ヌクレオチドの長さである、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記(a)(i)の捕捉剤に結合している前記オリゴヌクレオチドの配列が、i.前記(a)(ii)の標識された核酸プローブの配列よりも長い、および、ii.さもなければ前記(a)(ii)の単一の標識された核酸プローブに相補的な部分配列を除いて互いに同じである、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記(c)の二本鎖が少なくとも15℃のT
mを有する、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記(c)のハイブリダイズが、約2分間である、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
各標識された核酸プローブが、配列番号1~47から選択される配列か、またはその相補配列を有する、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
捕捉剤に連結された各オリゴヌクレオチドが、配列番号48~94から選択されるか、またはその相補配列である、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記複数の捕捉剤が少なくとも10個の捕捉剤である、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記
異なるサブセットの各々が、独立して2~4個の標識された核酸プローブである、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記試料を70%~90%のホルムアミド中で少なくとも1分間インキュベートし、続いて洗浄することによって、前記プローブがステップ(e)において除去される、請求項1~
11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ステップ(f)がステップ(c)およびステップ(d)を2~20回繰り返すことを含む、請求項1~
12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
少なくとも2つの前記画像を解析することをさらに含む、請求項1~
13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記解析が、少なくとも2つの前記画像を比較することまたは重ね合わせることを含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
全ての前記捕捉剤の前記試料への結合パターンを示す画像を生成するために、全ての前記画像を重ね合わせることをさらに含む、請求項1~
15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記標識された核酸プローブが、蛍光標識されている、請求項1~
16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
読み取りが、蛍光顕微鏡によって行われる、請求項1~
17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記捕捉剤が、抗体またはアプタマーである、請求項1~
18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記試料が、ホルマリン固定され、パラフィン包埋(FFPE)された切片
である、請求項1~
19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
ステップ(f)が、(a)(ii)の標識された核酸プローブの異なるサブセットを用いてステップ(c)およびステップ(d)を少なくとも5回繰り返すことを含む、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
試料ウェル、オートサンプラー、コントローラ、プロセッサ、およびプロセッサによって実行された場合にコントローラに
固定された細胞を含む試料を分析させる指示を含むコンピュータ可読媒体を含む、前記
固定された細胞を含む試料を分析するためのシステムであって、前記分析が、
(a)前記
固定された細胞を含む試料を複数の捕捉剤で標識することと、
(b)複数の標識された核酸プローブの第1のサブセットを
前記固定された細胞を含む試料に特異的にハイブリダイズすることと、
(c)ステップ(b)でハイブリダイズした前記プローブの各々についての結合パターンを示す画像を得るために、前記
固定された細胞を含む試料を読み取ることと、
(d)
ステップ(b)でハイブリダイズした前記プローブを、置換プローブを用いてDNAプローブを置換することによって変性するのではなく、DMSO又はホルムアミドを用いて変性することにより前記固定された細胞を含む試料から完全に除去し、前記(a)の複数の捕捉剤およびそれらに関連付けられたオリゴヌクレオチドは依然として前記固定された細胞を含む試料に結合させておくこと、および
(e)前記複数の標識された核酸プローブの異なるサブセットを用いて、ステップ(b)および(c)を複数回繰り返し、最後の繰り返しを除いて、各繰り返しの後にステップ(d)を続けることと、を含む、システム。
【請求項23】
前記(b)のハイブリダイズが、約2分間である、請求項
22に記載のシステム。
【請求項24】
ステップ(e)が、ステップ(b)および(c)を2~20回繰り返すことを含む、請求項
22又は23に記載のシステム。
【請求項25】
前記複数の捕捉剤が少なくとも10個の捕捉剤である、請求項
22~24のいずれかに記載のシステム。
【請求項26】
前記
異なるサブセットの各々が、独立して2~4個の標識された核酸プローブである、請求項
22~25のいずれかに記載のシステム。
【請求項27】
前記試料を70%~90%のホルムアミド中で少なくとも1分間インキュベートし、続いて洗浄することによって、前記プローブがステップ(d)において除去される、請求項
26に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の支援
本発明は、米国食品医薬品局(FDA)により授与された契約HHSF223201210194Cに基づく政府支援によってなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2016年7月27日に出願された米国仮特許出願第62/367,530号の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
生菌を注入されたマウスからの臓器生検において肺炎球菌抗原を可視化するために、1942年に初めて、抗体が組織切片分析において使用された。それ以来、免疫組織化学は臨床診断および基礎研究の中心となっている。
【0004】
しかしながら、従来の免疫組織化学的方法は、組織切片中の1つ、2つ、または3つ(まれにそれ以上)のエピトープの空間分布を評価することしかできないという点で限界がある。この制約により、臨床診断における免疫組織化学の適用には限界があるが、この分野では、はるかに多数のエピトープを分析することが非常に望ましい。試料中のエピトープ検出のためのより新しい方法が、例えば、WO2015/200139およびUS2015/0368697に記載されており、この方法は、例えば、捕捉剤をDNAで標識し、続いて、このDNAをプライマー伸長により検出することを含む。
【0005】
本方法は自動化可能であり、高度に多重化された分析を可能にする。故に、本方法は、従来の免疫組織化学的方法のいくつかの欠点を満たすと考えられる。
【発明の概要】
【0006】
本明細書では、試料を分析するための方法が提供される。いくつかの実施態様において、本方法は、それぞれ異なるオリゴヌクレオチドに連結された複数の捕捉剤と、対応する複数の標識された核酸プローブとを利用し、ここで、標識された核酸プローブの各々は、ただ1つのオリゴヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする。試料は、捕捉剤でまとめて標識され、捕捉剤のサブセットは、標識された核酸プローブの対応するサブセットを用いた反復ハイブリダイゼーション/標識除去サイクルを用いて検出される。いくつかの実施形態では、捕捉剤は、ハイブリダイゼーション/脱ハイブリダイゼーションサイクルの間に試料から取り除かれない。本方法がどのように実施されるかに応じて、本方法は、試料から捕捉剤を取り除く必要なしに、試料中の40を超えるエピトープを検出するために使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
当業者は、以下に記載される図面が例示目的のみであることを理解するだろう。図面は、本教示の範囲を限定することを意図するものでは決してない。
【0008】
【
図1】各抗体は、色素標識されたより短いオリゴヌクレオチド(b)に相補的な38~40ntの長さのオリゴヌクレオチド(a)にコンジュゲートされている。
【
図2】DNA-コンジュゲート抗体に対する、色素-オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション/除去ヒト新鮮凍結リンパ節組織を、DNA-コンジュゲートCD3抗体およびAlexa647-コンジュゲートCD19抗体で染色した。統合されたおよび個々のFITC/A647チャネルの両方が、10サイクルのハイブリダイゼーション/ホルムアミド除去にわたって、同一組織領域について示される。
【
図3】ハイブリダイゼーションの反復サイクルは、一貫した染色パターンを与える。
図2の統合された画像の拡大された領域が示される。FITC-オリゴヌクレオチドのDNA-コンジュゲートCD3抗体へのハイブリダイゼーションによって示されるCD3染色は、10サイクルにわたって同等である。
【
図4】DNA-オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション動力学。蛍光強度は、DNA-コンジュゲートCD3抗体に相補的なFITC標識オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション後に測定した。ハイブリダイゼーション効率は、30秒(A)、1分(B)、2分(C)、5分(D)、10分(E)、および20分(F)の6つの時点にわたって測定された。
【
図5】ホルムアミド動力学による色素標識されたオリゴヌクレオチドの除去。
図4で使用された組織を使用して、DNA-コンジュゲートCD3抗体にハイブリダイズした色素-オリゴヌクレオチドを除去するための最短時間を測定した。30秒(A)、1分(B)、2.5分(C)、および55分(D)の4つの時点を試験した。
【
図6】長さ/Tmの関数としての色素標識されたオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション効率。DNA-コンジュゲートCD3抗体に相補的な色素標識オリゴヌクレオチドを、様々な長さ(8~30nt)および対応するTm(それぞれ14.6~65.9℃)で設計した。各プローブを、CD19-Alexa647およびDNA-コンジュゲートCD3で染色した異なるヒトリンパ節組織切片にハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション効率は、得られたFITC蛍光強度により測定された。
【
図7】長さ/Tmの関数としての色素標識されたオリゴヌクレオチドのホルムアミド除去効率。ハイブリダイズした色素標識されたオリゴヌクレオチドを除去するための最小ホルムアミド溶液を、FITC蛍光(緑色)の喪失によって測定した。
【
図8】クロスハイブリダイゼーションマトリックス。色素標識されたオリゴヌクレオチドのライブラリーとCD45抗体にコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドとの間のクロスハイブリダイゼーションをスクリーニングした。クロスハイブリダイゼーションを伴うオリゴヌクレオチド対は、対角線上にない蛍光強度を有する。
【
図9】各オリゴヌクレオチド対についての代表的な細胞トレース。陽性の蛍光強度を有する細胞を、他の全てのサイクルに対してスクリーニングした。各トレースの色は、色素修飾に対応する:緑=FITC、青=Cy3、赤=Cy5。
【
図10】配列直交型オリゴヌクレオチド対の第1世代。
【
図11】自動化流体工学セットアップスクリーニング色素-オリゴヌクレオチドの対を、96ウェルプレート上の奇数/偶数番号のウェルに入れた。各流体サイクルは、T11-Cy5およびT18-Cy3、またはT24-Cy5およびT26-Cy3のいずれかを送達した。5つの代表的な細胞トレースがプロットされている。
【
図12】色素標識されたオリゴヌクレオチドのアニーリング/除去のサイクルを用いた、ヒト扁桃腺の多重化免疫蛍光染色。
【
図13】色素標識されたオリゴヌクレオチドのアニーリング/除去のサイクルを用いた、ヒト扁桃腺の多重化免疫蛍光染色。
【0009】
定義
本明細書で別途定義されない限り、本明細書で使用されている専門用語および科学用語はすべて、本発明が属する当該技術の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものに類似するまたはそれらと同等である任意の方法および材料を本発明の実践および試験で使用することができるが、好ましい方法および材料が記載される。
【0010】
本明細書で言及されるそのような特許および刊行物中に開示される全ての配列を含む全ての特許および刊行物は、参照により明示的に組み込まれる。
【0011】
数値範囲は範囲を定義する数を含む。特に指示されない限り、それぞれ、核酸は5’から3’の方向に左から右に書かれ、アミノ酸配列はアミノからカルボキシの方向に左から右に書かれる。
【0012】
本明細書に提供される見出しは、本発明の様々な態様または実施形態を限定するものではない。したがって、直下で定義されている用語は、明細書全体を参照することによってより完全に定義される。
【0013】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。Singletonら、DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY、2D ED.、John Wiley and Sons、New York(1994)、およびHale&Markham、THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY、Harper Perennial、N.Y.(1991)は、本明細書で使用される用語の多数の一般的な意味を当業者に提供する。さらに、参照を明確かつ容易にするために、特定の用語が以下で定義される。
【0014】
本明細書で使用されるとき、「目的とする生物学的特徴」という用語は、捕捉剤への結合によって示され得る細胞の任意の部分を指す。目的とする例示的な生物学的特徴には、細胞壁、核、細胞質、膜、ケラチン、筋肉線維、コラーゲン、骨、タンパク質、核酸(例えば、mRNAまたはゲノムDNA等)、脂肪等が挙げられる。目的とする生物学的特徴は、免疫学的な方法、例えば、オリゴヌクレオチドに連結される捕捉剤によって示すこともできる。これらの実施形態では、捕捉剤は試料における部位、例えば、タンパク質エピトープに結合する。例示的なエピトープには、癌胎児性抗原(腺癌の特定用)、サイトケラチン(癌腫特定用のものではあるが、一部の肉腫にも発現され得る)、CD15およびCD30(ホジキン病用)、アルファフェトプロテイン(卵黄嚢腫瘍および肝細胞癌用)、CD117(消化管間質腫瘍用)、CD10(腎細胞癌および急性リンパ芽球性白血病用)、前立腺特異抗原(前立腺癌用)、エストロゲンおよびプロゲステロン(腫瘍の特定用)、CD20(B細胞リンパ腫の特定用)、CD3(T細胞リンパ腫の特定用)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
本明細書で使用されるとき、用語「多重化」とは、生物学的に活性のある物質を同時または順次検出かつ測定するために2つ以上の標識を使用することを指す。
【0016】
本明細書で使用されるとき、用語「抗体」および「免疫グロブリン」は、本明細書では相互交換可能に使用され、当業者によってよく理解されている。これらの用語は、抗原を特異的に結合する1つまたは複数のポリペプチドからなるタンパク質を指す。抗体の一形態は、抗体の基本構造単位を構成する。この形態は四量体であり、各対が1本の軽鎖および1本の重鎖を有する2対の同一の抗体鎖からなる。各対では、軽鎖および重鎖の可変領域は一緒に抗原への結合に関与し、定常領域は抗体のエフェクター機能に関与する。
【0017】
認識されている免疫グロブリンのポリペプチドには、カッパおよびラムダの軽鎖、ならびにアルファ、ガンマ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、デルタ、イプシロン、およびミューの重鎖、または他の種における同等物が含まれる。完全長の免疫グロブリン「軽鎖」(約25kDaまたは約214アミノ酸の)は、NH2末端における約110アミノ酸の可変領域、およびCOOH末端におけるカッパまたはラムダの定常領域を含む。完全長の免疫グロブリン「重鎖」(約50kDaまたは約446アミノ酸の)は、同様に可変領域(約116アミノ酸の)および前述の重鎖定常領域の1つ、例えば、ガンマ(約330アミノ酸の)を含む。
【0018】
用語「抗体」および「免疫グロブリン」には、Fab、Fv、scFv、およびFdの断片、キメラ抗体、ヒト化抗体、ミニボディ、単鎖抗体、ならびに抗体の抗原結合部分および非抗体タンパク質を含む融合タンパク質を含むが、これらに限定されない、抗原への特異的な結合を保持する任意のアイソタイプの抗体または免疫グロブリン、抗体の断片が挙げられる。この用語には、Fab’、Fv、F(ab’)2、およびまたは抗原への特異的結合を保持する他の抗体フラグメント、およびモノクローナル抗体もまた包含される。抗体は、例えば、Fv、Fab、および(Fab’)2、ならびに二機能性(すなわち、二重特異性)ハイブリッド抗体(例えば、Lanzavecchiaら、Eur.J.Immunol.17、105(1987))を含む種々の他の形態で、かつ一本鎖(例えば、Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、85、5879-5883(1988)およびBirdら、Science、242、423-426(1988))で存在していてもよく、これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる(一般的には、Hoodら、“Immunology”、Benjamin、N.Y.、2nd ed.(1984)、ならびにHunkapillerおよびHood、Nature、323、15-16(1986)を参照のこと)。
【0019】
用語「特異的な結合」は、異なる検体の均質な混合物中に存在する特定の検体に優先的に結合する結合試薬の能力を指す。特定の実施形態では、特異的な結合の相互作用により、試料中の望ましい検体と望ましくない検体とが識別され、いくつかの実施形態では、約10~100倍またはそれ以上を超えて(例えば、約1000~10,000倍を超えて)識別するであろう。
【0020】
特定の実施形態では、捕捉剤/検体の複合体にて特異的に結合する場合、結合試薬と検体との間の親和性は、10-6未満、10-7M未満、10-8M未満、10-9M未満、10-9M未満、10-11M未満、または約10-12M未満またはそれ未満のKD(解離定数)を特徴とする。
【0021】
「複数」には、少なくとも2つのメンバーが含まれる。特定の場合では、複数は、少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも100、少なくとも1000、少なくとも10,000、少なくとも100,000、少なくとも106、少なくとも107、少なくとも108、または少なくとも109、またはそれ以上のメンバーを有してもよい。
【0022】
本明細書で使用されるとき、用語「標識する」は、部位の存在および/または部位の豊富さが、捕捉剤の存在および/または豊富さを評価することによって決定することができるように、試料中の特定の部位(例えば、使用される抗体についてのエピトープを含有する部位など)に捕捉剤を付着させることを指す。用語「標識する」は、必要とされる標識された試料が作製される限り、任意の必要な工程が任意の好都合な順で実施される、標識された試料を作製するための方法を指す。例えば、いくつかの実施形態では、および以下で例示されるように、抗体が試料に結合する前に、捕捉剤がオリゴヌクレオチドに連結されてもよく、その場合、試料は相対的に少ない工程を用いて標識することができる。
【0023】
本明細書で使用されるとき、「平面試料」は、細胞、またはタンパク質、核酸、脂質、オリゴ糖類/多糖類、生体分子複合体、細胞小器官、細胞残渣もしくは分泌物(エキソソーム、微小胞)のような細胞に由来する生体分子の任意の組み合わせを含む、実質的に平面の、すなわち、二次元の物質(例えば、ガラス、金属、セラミック、有機ポリマーの表面またはゲル)を指す。平面的な細胞試料は、例えば、平面的な表面上で細胞を増殖させることによって、遠心などにより細胞を平面的な表面に堆積させることによって、細胞を含有する三次元の物体を切片に切断し、この切片を平面的な表面に載置することによって、すなわち、組織切片を作製し、親和性物質(例えば、抗体、ハプテン、核酸プローブ)で官能化されている表面に細胞成分を吸着することによって、生体分子をポリマーゲルに導入し、またはそれらを電気泳動的にもしくは他の手段によりポリマー表面に移動させることによって、作製することができる。細胞または生体分子は、ホルマリン、メタノール、パラホルムアルデヒド、メタノール:酢酸、グルタルアルデヒド、二官能性架橋剤、例えば、スベリン酸ビス(スクシンイミジル)、ビス(スクシンイミジル)ポリエチレングリコール等を含む任意の数の試薬を用いて固定されてもよい。この定義は、細胞性試料(例えば、組織切片等)、電気泳動ゲルおよびそのブロット、ウエスタンブロット、ドットブロット、ELISA、抗体マイクロアレイ、核酸マイクロアレイ等を包含することが意図される。
【0024】
本明細書で使用されるとき、用語「組織切片」は、対象から得られ、固定され、切片化され、次いで、平面的な表面、例えば、顕微鏡スライドガラスの上に載置された組織片を指す。
【0025】
本明細書で使用されるとき、「ホルマリン固定され、パラフィン包埋された(FFPE)組織切片」は、対象から得られ、ホルムアルデヒド(例えば、リン酸緩衝生理食塩水中で3%~5%のホルムアルデヒド)またはブアン液にて固定され、ワックスに包埋され、薄い切片に切断され、次いで、顕微鏡スライドガラスの上に載置された組織片、例えば、生検の小片を指す。
【0026】
本明細書中で使用されるとき、用語「非平面試料」は、実質的に平坦ではない試料を指し、例えば、脂質除去-アクリルアミド交換-ハイブリダイズ剛性イメージング-組織適合性-ハイドロゲル(Clear Lipid-exchanged Acrylamide-hybridized Rigid Imaging-compatible Tissue-hydrogel)(CLARITY)などの屈折率整合技法により透明化された全体的または部分的な器官載置物(例えば、リンパ節、脳、肝臓などの)を指す。例えば、Robertsら、J Vis Exp.2016;(112):54025を参照のこと。標本に透明性を付与するために、ベンジルアルコール/安息香酸ベンジル(BABB)またはベンジルエーテルなどの透明化剤を使用してもよい。
【0027】
本明細書で使用されるとき、用語「空間的に指定可能な測定」は、それぞれ表面上の特定の位置に関連付けられる値のセットを指す。空間的に指定可能な測定は、試料中の位置にマッピングすることができ、試料の画像、例えば、二次元または三次元画像を再構築するのに使用することができる。
【0028】
「診断マーカー」は、疾患を検出するため、疾患の進行もしくは治療の効果を測定するため、または目的とする過程を測定するために有用となる特定の分子特性を有する、体内の特定の生化学物質である。
【0029】
「病状の指標となる」細胞は、組織に存在する場合、組織が位置する(または組織が得られる)動物が疾患または障害に罹患していることを示す細胞である。例として、動物の肺組織に1つまたは複数の乳腺細胞が存在することは、その動物が転移性乳癌に罹患していることの指標である。
【0030】
用語「相補性部位」は、抗体またはアプタマーに対するエピトープを指すために使用される。具体的には、捕捉剤が抗体またはアプタマーである場合、捕捉剤についての相補性部位は、抗体が結合する試料中のエピトープである。
【0031】
本明細書で使用されるとき、用語「エピトープ」は、抗体またはアプタマーによって結合される抗原分子上の小さな化学基として定義される。抗原は1つまたは複数のエピトープを有することができる。多くの場合、エピトープは、約5つのアミノ酸または糖のサイズである。当業者は、一般に分子の三次元構造全体または特定の線状配列が抗原特異性の主な基準であり得ることを理解する。
【0032】
診断または治療の「対象」は、植物、またはヒトを含む動物である。診断または治療の非ヒト動物対象には、例えば、家畜およびペットが含まれる。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「インキュベートする」は、試料中の分子(例えば、エピトープまたは相補的な核酸)に対する捕捉剤の特異的結合に好適である条件下(この条件には、時間、温度、適切な結合緩衝液および洗浄が含まれる)で試料および捕捉剤を維持することを指す。
【0034】
本明細書で使用されるとき、用語「捕捉剤」は、試料中の相補的部位に特異的に結合することができる物質を指す。例示的な捕捉剤は、抗体およびアプタマーを含む。抗体またはアプタマーが使用される場合、多くの場合、それらはタンパク質エピトープに結合してもよい。
【0035】
本明細書中で使用されるとき、用語「オリゴヌクレオチドに連結された捕捉剤」は、非共有結合的に(例えば、ストレプトアビジン/ビオチン相互作用を介して)または共有結合的に(例えば、クリック反応などを介して)、捕捉剤がその結合部位になおも結合することができるように一本鎖オリゴヌクレオチドに連結された捕捉剤、例えば、抗体またはアプタマーを指す。核酸および捕捉剤は、システイン反応性であるマレイミドまたはハロゲン含有基を使用する方法を含む多数の異なる方法を介して連結されてもよい。捕捉剤およびオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの5’末端の近傍もしくは5’末端で、オリゴヌクレオチドの3’末端の近傍もしくは3’末端で、またはその間の任意の箇所で連結されてもよい。
【0036】
本明細書中で使用されるとき、試料に関連付けられた、すなわち、試料にハイブリダイズされた標識および/またはプローブを除去するという文脈において、「除去する」という用語は、標識および/またはプローブを試料から物理的に分離するための任意の方法を指す。標識および/またはプローブは、例えば、変性により、またはプローブ中の結合またはプローブに標識を連結しているリンカーを切断することにより、試料から除去することができ、ここで、使用される除去方法は、他の抗体に連結されているハイブリダイズされていないオリゴヌクレオチドをインタクトのままとし、こでが、次のサイクルにおいて使用される標識されたプローブに自由にハイブリダイズする。
【0037】
本明細書で使用されるとき、標識を不活化するという文脈において、用語「不活化する」は、標識が検出可能なシグナルをもはや生成しないように、標識を化学的に修飾することを指す。フォトブリーチは、標識を不活化するための一つの方法であるが、他の方法も知られている。
【0038】
「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は、任意の長さのポリマーを説明するために、本明細書では互換的に使用されており、例えば、約2塩基を超える、約10塩基を超える、約100塩基を超える、約500塩基を超える、1000塩基を超える、最大約10,000の、またはそれ以上の塩基から構成されるヌクレオチド、例えば、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、またはそれらの組み合わせを指し、それらは、酵素的または合成的に製造することができ(例えば、米国特許第5,948,902号およびそこで引用された参考文献に記載のPNA)、2つの天然に存在する核酸のものに類似する配列特異的な様式で天然に存在する核酸にハイブリダイズすることができ、例えば、ワトソン-クリック塩基対形成相互作用に関与することができる。天然に存在するヌクレオチドには、グアニン、シトシン、アデニン、チミン、ウラシル(それぞれ、G、C、A、T、およびU)が含まれる。DNAおよびRNAは、それぞれデオキシリボースおよびリボース糖骨格を有し、一方で、PNAの骨格は、ペプチド結合によって連結された反復N-(2-アミノエチル)-グリシン単位からなる。PNAでは、種々のプリンおよびピリミジン塩基が、メチレンカルボニル結合によりその骨格に連結されている。アクセスできないRNAと呼ばれることも多いロックド核酸(LNA)は、修飾されたRNAヌクレオチドである。LNAヌクレオチドのリボース部分は、2’酸素と4’炭素を連結する追加の架橋で修飾されている。この架橋が、3’-endo(ノース)構造のリボースを「ロック」するが、これはA形態の二本鎖で見いだされることが多い。LNAヌクレオチドは、所望であればいつでも、オリゴヌクレオチド中のDNAまたはRNA残基と混合することができる。「非構造化核酸」または「UNA」という用語は、低下した安定性で互いに結合する非天然のヌクレオチドを含有する核酸である。例えば、非構造化核酸は、G’残基およびC’残基を含んでもよいが、これらの残基は、天然に存在しない形態に相当する、すなわち、低下した安定性で互いに塩基対を形成するが、それぞれ天然に存在するC残基およびG残基と塩基対を形成する能力を保持する、GおよびCの類似体に相当する。非構造化核酸は、US2005/0233340に記載されており、これは、UNAの開示について参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
本明細書で使用されるとき、用語「オリゴヌクレオチド」は、少なくとも10個、例えば、少なくとも15個、または少なくとも30個のヌクレオチドの多量体を指す。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、15~200ヌクレオチドの長さの範囲内、またはそれ以上であってもよい。本明細書で使用される任意のオリゴヌクレオチドは、G、A、T、およびC、または相補的なヌクレオチドと確実に塩基対を形成することができる塩基から構成されてもよい。そのような塩基の例としては、7-デアザ-アデニン、7-デアザ-グアニン、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、2-デアザ-2-チオ-グアノシン、2-チオ-7-デアザ-グアノシン、2-チオ-アデニン、2-チオ-7-デアザ-アデニン、イソグアニン、7-デアザ-グアニン、5,6-ジヒドロウリジン、5,6-ジヒドロチミン、キサンチン、7-デアザ-キサンチン、ヒポキサンチン、7-デアザ-キサンチン、2,6ジアミノ-7-デアザプリン、5-メチル-シトシン、5-プロピニル-ウリジン、5-プロピニル-シチジン、2-チオ-チミン、または2-チオ-ウリジンが挙げられるが、他にも多くのものが知られている。上記のように、オリゴヌクレオチドは、例えば、LNA、PNA、UNA、またはモルホリノオリゴマーであってもよい。本明細書で使用されるオリゴヌクレオチドは、天然または非天然のヌクレオチドまたは結合を含み得る。
【0040】
本明細書で使用されるとき、蛍光シグナルを読み取るという文脈において、用語「読み取る」は、走査または顕微鏡によって画像を得ることを指し、この場合、画像は、視野内の蛍光のパターンおよび蛍光強度を示す。
【0041】
本明細書で使用されるとき、蛍光ヌクレオチドの付加によって生成される蛍光シグナルを読み取るという文脈において、用語「によって生成されるシグナル」は、蛍光ヌクレオチドから直接放射されるシグナル、別の蛍光ヌクレオチドへのエネルギー移動によって(すなわち、FRETによって)間接的に放射されるシグナルを指す。例えば、いくつかの実施形態では、蛍光エネルギー移動のために一端に供与体蛍光体を、他端に受容体蛍光体を有する分子反転プローブを使用して、本方法を実施することができる。プローブが溶液中で自由であるとき、2つの蛍光体ははるかに離れている。それらが抗体上のオリゴとハイブリダイズすると、2つの蛍光対は互いに直接隣接する。
【0042】
本明細書を通して用語の他の定義が現れてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0043】
試料、例えば、平面試料を分析するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、i.それぞれ異なるオリゴヌクレオチドに連結された複数の捕捉剤と、ii.対応する複数の標識された核酸プローブ(ここで、「対応する」という用語は、標識された核酸プローブの数が、使用される捕捉剤の数と同じであることを意味することが意図される)と、を得ることを含んでもよく、ここで、標識された核酸プローブの各々は、オリゴヌクレオチドのただ1つのみと相補的であり、かつ特異的にハイブリダイズする。例えば、50個の捕捉剤が存在する場合、それらはそれぞれ異なるオリゴヌクレオチドに連結され、50個の標識された核酸プローブが存在し、各標識された核酸プローブは、オリゴヌクレオチドのただ1つのみに相補的であり、かつ特異的にハイブリダイズする。この方法で使用される捕捉剤および標識された核酸プローブの数は変動してよい。いくつかの実施形態では、本方法は、i.それぞれ異なるオリゴヌクレオチドに連結されている少なくとも10個、または少なくとも20個、および最大で50個または100個またはそれ以上の捕捉剤、ならびにii.対応する数の標識された核酸プローブ、を用いて実施されてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、本方法は、試料を複数の捕捉剤で標識することを含み得る。この工程は、捕捉剤が試料中の相補的部位(例えば、タンパク質エピトープ)に結合する条件下で、試料(例えば、顕微鏡スライドのような平面表面上に載置されたFFPE切片)を全ての捕捉剤とまとめて接触させることを含む。試料中の部位に抗体およびアプタマーを結合するための方法は周知である。いくつかの実施形態では、捕捉剤は試料に架橋されてもよく、それによって、捕捉剤がその後の工程中に解離するのを防止する。この架橋工程は、アミン-アミン架橋剤(例えば、ホルムアルデヒド、ジスクシンイミルタレート、または同様の作用を有する他の試薬)を使用して行われてもよいが、所望ならば、捕捉剤を試料に架橋するために、他の種々の化学作用を利用することができる。
【0045】
試料が捕捉剤に結合した後、本方法は、標識された核酸プローブの第1のサブセットを試料と特異的にハイブリダイズさせることを含んでもよく、ここで、第1のサブセット中のプローブは、識別可能に標識され、標識されたプローブ/オリゴヌクレオチド二本鎖を生成する。「サブセット」とは、少なくとも2つ、例えば、2つ、3つ、または4つを意味し、「識別可能に標識された」という用語は、複数の標識が同じ位置にあったとしても各標識を別々に検出できることを意味する。したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、2つ、3つ、または4つの標識された核酸プローブを試料と特異的にハイブリダイズさせ、それによって、試料中の部位に結合する抗体に連結された標識されたプローブ/オリゴヌクレオチド二本鎖を生成することを含んでもよい。標識は、例えば、蛍光体前駆体、二次的に活性化可能な蛍光体、蛍光タンパク質、可視染色、多染性バーコード、質量タグ(例えば、定義されたサイズの同位体またはポリマー)、標識フリー検出のための構造タグ、放射線感受性タグ(THzカメラによって活性化される)、放射性タグ、または特定の周波数の光だけを吸収する光吸収タグであってもよい。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、蛍光体を送達する酵素を送達してもよく、またはシグナルの酵素的増幅が存在してもよい。いくつかの実施形態では、検出されたシグナルは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって生成されてもよく、他の実施形態では、検出は、ラマン分光法、赤外線検出、または磁気的/電気的検出によって行われてもよい。いくつかの実施形態では、検出工程は、ハイブリダイゼーション連鎖反応、分岐DNA(bDNA)増幅などを含むがこれらに限定されない、二次的な核酸増幅工程を含み得る。
【0046】
本方法において有用な好適な識別可能な蛍光標識対には、Cy-3およびCy-5(Amersham Inc.、Piscataway、NJ)、Quasar570およびQuasar670(Biosearch Technology、Novato CA)、Alexafluor555およびAlexafluor647(Molecular Probes、Eugene、OR)、BODIPY V-1002およびBODIPY V1005(Molecular Probes、Eugee、OR)、POPO-3およびTOTO-3(Molecular Probes、Eugene、OR)、ならびにPOPRO3およびTOPRO3(Molecular Probes、Eugene、OR)が含まれる。さらなる好適な識別可能な検出可能な標識は、Krickaら、(Ann Clin Biochem.39:114-29、2002)、Riedら、(Proc.Natl.Acad.Sci.1992:89:1388-1392)、およびTankeら、(Eur.J.Hum.Genet.1999 7:2-11)などにおいて見出され得る。いくつかの実施形態では、3つまたは4つの識別可能な色素が用いられてもよい。対象となる具体的な蛍光色素には、キサンテン色素、例えば、フルオレセインおよびローダミン色素、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、6-カルボキシフルオレセイン(略記FAMおよびFによって一般に知られる)、6-カルボキシ-2’,4’,7’,4,7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン(JOEまたはJ)、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRAまたはT)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROXまたはR)、5-カルボキシローダミン-6G(R6G5またはG5)、6-カルボキシローダミン-6G(R6G6またはG6)、およびローダミン110;シアニン色素、例えば、Cy3、Cy5、およびCy7色素;クマリン、例えば、ウンベリフェロン;ベンズイミド色素、例えば、ヘキスト33258;フェナントリジン色素、例えば、テキサスレッド;エチジウム色素;アクリジン色素;カルバゾール色素;フェノキサジン色素;ポルフィリン色素;ポリメチン色素、例えば、BODIPY色素、およびキノリン色素が含まれる。本出願において一般的に使用される対象となる特定の蛍光体には、ピレン、クマリン、ジエチルアミノクマリン、FAM、フルオレセインクロロトリアジニル、フルオレセイン、R110、エオシン、JOE、R6G、テトラメチルローダミン、TAMRA、リサミン、ナフトフルオレセイン、テキサスレッド、Cy3、およびCy5などが含まれる。上述したように、プローブの各サブセットのうち、蛍光体は、それらが互いに区別可能であるように、すなわち独立して検出可能であるように選択されてもよく、これは、複数の標識が混合された場合にも、これらの標識が独立して検出および測定可能であることを意味する。言い換えれば、各標識について存在する標識の量(例えば、蛍光の量)は、複数の標識が同一の場所に存在する場合(例えば、同一管中、または切片の同一領域)であっても、別々に測定可能である。
【0047】
ハイブリダイズしていない標識された核酸プローブを除去するために試料を洗浄した後、本方法は、前の工程でハイブリダイズしたプローブの各サブセットについての結合パターンを示す画像を得るために試料を読み取ることを含む。この工程は、任意の都合の良い読み取り方法を使用して実施されてもよく、いくつかの実施形態では、例えば、異なるプローブのハイブリダイゼーションは、各蛍光体に適するフィルタを備えた蛍光顕微鏡を使用して、または複数の蛍光体を観察するように設定されたデュアルもしくはトリプルバンドパスフィルタを使用することにより、別々に読み取ることができる(例えば、米国特許第5,776,688号を参照されたい)。
【0048】
試料を読み取った後、本方法は、試料に関連付けられた(すなわち、ハイブリダイズした)標識を不活化または除去し、一方で、複数の捕捉剤およびそれらに関連付けられたオリゴヌクレオチド(すなわち、ハイブリダイズしていないオリゴヌクレオチド)を依然として試料に結合させたままにすることを含み得る。試料に結合している標識は、変性により(この場合、標識、およびプローブの全てが放出され、洗い流され得る)、プローブ中の結合の切断により(この場合、標識、およびプローブの一部が放出され、洗い流され得る)、プローブとプローブにハイブリダイズしているオリゴヌクレオチドとの両方を切断することにより(フラグメントが放出され、洗い流され得る)、プローブと標識との間の結合を切断することにより(この場合、標識が放出され、洗い流され得る、洗い流され得る)、または標識自体を不活化することにより(例えば、標識内の結合を切断して、標識からのシグナル生成を阻止することにより)、を含むが、これらに限定されない種々の方法により、除去または不活化されてもよい。これらの除去方法の全てにおいて、他の抗体に結合しているハイブリダイズしていないオリゴヌクレオチドは、インタクトであり、次のサイクルで使用される標識されたプローブのセットに自由にハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、蛍光は、過酸化物に基づく漂白により、または切断可能なリンカーを介してヌクレオチドに連結された蛍光体を(例えば、切断試薬としてTCEPを使用して)切断することにより、不活化されてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、除去工程は、変性によって試料からハイブリダイズしたプローブを除去し、他の捕捉剤(すなわち、プローブにハイブリダイズしていない捕捉剤)およびそれらに関連付けられたオリゴヌクレオチドを依然として試料に結合させておくことによって、実施される。他の実施形態では、除去工程は、変性によって試料からハイブリダイズしたプローブを除去し、他の捕捉剤(すなわち、プローブにハイブリダイズしていない捕捉剤)およびそれらに関連付けられたオリゴヌクレオチドを依然として試料に結合させておくことによって、実施されない。これらの実施形態では、標識は、試料に関連付けられたプローブ中の少なくとも1つの結合、またはプローブを標識に連結するリンカーを切断し、それにより、プローブから標識を放出させることにより、除去されてもよい。この切断は、酵素的に、化学的に、または光への暴露を介して行うことができる。代替的には、標識は、フォトブリーチにより、または標識を化学的に改変することにより、不活化され得る。
【0050】
除去工程が、変性によって試料からハイブリダイズしたプローブを除去することによって行われない場合、様々な化学的方法、酵素触媒的方法、または光誘導的切断方法が使用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、プローブは、化学物質または光への曝露によってそれらが断片化され得るように、化学的にまたは光により切断可能な結合を含み得る。いくつかの実施形態では、二本鎖(それらが二本の鎖からなるため)は、例えば、制限酵素または二本鎖DNA特異的エンドヌクレアーゼ(フラグメント化酵素)によって切断され得る。いくつかの実施形態では、プローブはウラシル(これはUSERによって切断され得る)を含んでもよく、またはミスマッチ特異的エンドヌクレアーゼを使用して切断され得るミスマッチを含むヘアピンを含んでもよい。これらの実施形態のいくつかにおいて、切断後、標識を含むプローブのフラグメントのTmは、オリゴヌクレオチドと塩基対合を維持するのに十分に高くない可能性があり、したがって、フラグメントはオリゴヌクレオチドから解離するであろう。いくつかの実施形態では、プローブおよび標識は、光により切断可能なまたは化学的に切断可能なリンカーによって連結されてもよい。このリンカーを切断すると、試料から標識が放出される。他の実施形態では、プローブはRNAであってもよく、プローブは、RNAseを用いて分解することができる。いくつかの実施形態では、酵素的に切断可能な結合を使用することができる。例えば、エステルはエステラーゼによって切断することができ、グリカンはグリカーゼによって切断することができる。代替的には、標識を修飾することによって標識自体を不活化してもよい。一例では、色素はフォトブリーチされてもよいが、他の方法も知られている。
【0051】
いくつかの実施形態では、試料を読み取った後、本方法は、(e)変性によって(すなわち、標識したプローブをオリゴヌクレオチドから非アニーリングして、それらを洗い流すことによって)試料から工程(c)でハイブリダイズしたプローブを除去し、一方で、(b)の捕捉剤およびそれらに関連付けられたオリゴヌクレオチドを依然として試料に結合させたままにすること、を含んでもよい。この工程は、任意の好適な化学変性剤、例えば、ホルムアミド、DMSO、尿素、またはカオトロピック剤(例えば、塩化グアニジニウムなど)を用いて、足掛かり(toehold)放出戦略を用いて(例えば、Kennedy-Darling、Chembiochem.2014 15:2353-2356を参照されたい)、または熱、塩基、トポイソメラーゼ、もしくは一本鎖結合剤(例えば、SSBP)を用いて、実施されてもよい。この工程はまた、より高い親和性を有するオリゴヌクレオチド(例えば、PNA)のハイブリダイゼーションによっても達成され得る。いくつかの場合において、プローブは、試料を70%~90%のホルムアミド(例えば、75%~85%のホルムアミド)中で少なくとも1分間(例えば、1~5分間)インキュベートし、その後、洗浄することによって、除去されてもよい。必要ならば、この変性工程を繰り返して、ハイブリダイズしたプローブの全てが除去されてもよい。明らかなように、この工程は酵素的には実施されず、すなわち、この工程は、DNAseまたは制限酵素のようなヌクレアーゼを使用せず、また、例えば、プローブまたはオリゴヌクレオチドのいずれにおいても、いかなる共有結合の切断ももたらさず、または試料からいかなる捕捉剤の除去ももたらさない。この工程において、プローブ/オリゴヌクレオチド二本鎖の鎖は互いに分離され(すなわち、変性され)、そして今や溶液中で遊離している分離されたプローブは洗い流され、捕捉剤およびそれらに関連付けられたオリゴヌクレオチドは依然としてインタクトであり、かつ適切な場所にある。
【0052】
切断可能な結合が使用される場合(例えば、プローブ中、またはプローブを標識に連結するため)、切断可能なリンカーは、抗体に結合したオリゴヌクレオチド中の結合を破壊することなく、刺激(例えば、光またはその環境の変化)を使用して選択的に切断され得るべきである。いくつかの実施形態では、切断可能な結合は、還元剤(例えば、β-メルカプトエタノールなど)を使用して容易に切断され得るジスルフィド結合であり得る。使用されてもよい好適な切断可能な結合としては、以下:塩基切断可能部位、例えば、エステル、特に、コハク酸エステル(例えば、アンモニアまたはトリメチルアミンにより切断可能)、四級アンモニウム塩(例えば、ジイソプロピルアミンにより切断可能)およびウレタン(水酸化ナトリウム水溶液により切断可能);酸切断可能部位、例えば、ベンジルアルコール誘導体(トリフルオロ酢酸を使用して切断可能)、テイコプラニンアグリコン(トリフルオロ酢酸、続いて、塩基により切断可能)、アセタールおよびチオアセタール(トリフルオロ酢酸によっても切断可能)、チオエーテル(例えば、HFまたはクレゾールによって切断可能)、およびスルホニル(トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、チオアニソールなどによって切断可能);求核剤切断可能部位、例えば、フタルアミド(置換ヒドラジンによって切断可能)、エステル(例えば、三塩化アルミニウムによって切断可能);ならびにワインレブアミド(水素化アルミニウムリチウムによって切断可能);ならびにホスホロチオエート(銀または水銀イオンによって切断可能)およびジイソプロピルジアルコキシシリル(フッ化物イオンによって切断可能)を含む他の種類の化学的に切断可能な部位、が挙げられるが、これらに限定されない。他の切断可能な結合は当業者に明らかであるか、または関連する文献およびテキストに記載されている(例えば、Brown(1997)Contemporary Organic Synthesis4(3);216-237)。いくつかの実施形態では、切断可能な結合は、酵素によって切断されてもよい。
【0053】
特定の実施形態では、光切断可能な(「PC」)リンカー(例えば、UV切断可能なリンカー)が使用されてもよい。使用に好適な光切断可能なリンカーには、Guillierら(Chem Rev.2000Jun14;100(6):2091-158)に記載されているように、オルト-ニトロベンジル系リンカー、フェナシルリンカー、アルコキシベンゾインリンカー、クロムアレーン錯体リンカー、NpSSMpactリンカー、およびピバロイルグリコールリンカーが含まれ得る。本方法で使用されてもよい例示的な連結基は、Guillierらの上記文献、およびOlejnikら、(Methods in Enzymology1998 291:135-154)に記載されており、また、U.S.P.N.6,027,890;Olejnikら、(Proc.Natl.Acad Sci,92:7590-94);Ogataら、(Anal.Chem.2002 74:4702-4708);Baiら、(Nucl.Acids Res.2004 32:535-541);Zhaoら、(Anal.Chem.2002 74:4259-4268);およびSanfordら、(Chem Mater.1998 10:1510-20)にさらに記載されており、Ambergen(Boston、MA;NHS-PC-LC-Biotin)、Link Technologies(Bellshill、Scotland)、Fisher Scientific(Pittsburgh、PA)およびCalbiochem-Novabiochem Corp.(La Jolla、CA)から購入可能である。
【0054】
プローブを除去した後、試料は、標識されたプローブの異なるサブセット(例えば、複数のプローブが識別可能に標識されている場合、2~4個の標識されたプローブの第2のサブセット)とハイブリダイズされてもよく、また、試料は、最も直近にハイブリダイズしたプローブのサブセットのそれぞれについての結合パターンを示す画像を生成するために再度読み取られてもよい。試料が読み取られた後、プローブは、例えば、変性または他の方法(上記のように)によって試料から除去されてもよく、ハイブリダイゼーションおよび読み取り工程は、識別可能に標識されたプローブの異なるサブセットを用いて繰り返されてもよい。言い換えれば、この方法は、2~4個の標識された核酸プローブの異なるサブセットを用いて、ハイブリダイゼーション工程、標識除去または不活化工程、および読み取り工程を複数回繰り返して、試料の複数の画像を生成することを含んでもよく、ここで、各サブセット中のプローブは識別可能に標識されており、各繰り返しの後には、例えば、変性または別の方法によりプローブの除去が続き(最後の繰り返しを除く)、各画像は、標識された核酸プローブのサブセットに対応する。ハイブリダイゼーション/読み取り/標識除去または不活化の工程は、全てのプローブが分析されるまで繰り返されることができる。
【0055】
明らかであろうが、使用されるDNA配列は、非特異的吸着に由来するか、または内因性ゲノム配列(RNAまたはDNA)への結合を通してのいずれかによるバックグラウンド染色を最小にするように選択され得る。同様に、ハイブリダイゼーションおよび洗浄用の緩衝液は、非特異的吸着に由来するか、または内因性ゲノム配列(RNAまたはDNA)への結合もしくは他のレポーター配列への結合を通してのいずれかによるバックグラウンド染色を最小にするように設計されてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、試料を捕捉剤で標識した後、本方法は、標識された核酸プローブの第1のサブセットを試料と特異的にハイブリダイズさせること、ここで、第1のサブセット中のプローブは識別可能に標識されており、標識されたプローブ/オリゴヌクレオチド二本鎖を生成する;前の工程でハイブリダイズしたプローブの各々についての結合パターンを示す画像を得るために、試料を読み取ること;変性または別の方法によって、前の工程でハイブリダイズしたプローブを試料から除去し、一方で、複数の捕捉剤およびそれらに関連するオリゴヌクレオチドは依然として試料に結合させたままにすること;標識された核酸プローブの第2のサブセットを試料と特異的にハイブリダイズさせること、ここで、第2のサブセット中のプローブは識別可能に標識されており、標識されたプローブ/オリゴヌクレオチド二本鎖を生成する;プローブの第2のサブセット中のプローブの各々についての結合パターンを示す画像を得るために、試料を読み取ること;変性または別の方法によって、試料にハイブリダイズした第2のサブセット中のプローブ中のプローブを除去し、一方で、複数の捕捉剤およびそれらに関連するオリゴヌクレオチドを依然として試料に結合させたままにすること;を含んでもよい。次いで、ハイブリダイゼーション/読み取り/標識除去または不活化サイクルは、最終サイクルでプローブが試料から除去される必要がないことを除いて、全てのプローブがハイブリダイズされ読み取られるまで、プローブの3、4、5、またはそれ以上のサブセットについて繰り返されることができる。いくつかの場合において、ハイブリダイゼーション/読み取り工程は、最後の繰り返しを除いて、各読み取り後に変性工程を伴って、2~20回以上繰り返されてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、標識された核酸プローブは、8~20ヌクレオチドの長さ、例えば、10~18ヌクレオチドまたは11~17ヌクレオチドの長さであるが、いくつかの実施形態では、プローブは、5ヌクレオチドの長さの短いものから、150ヌクレオチドの長さの長いものであってもよい(例えば、6ヌクレオチドの長さ~100ヌクレオチドの長さ)。いくつかの実施形態では、プローブは、ハイブリダイゼーション工程の二本鎖が同じ範囲のTmを有するように、15℃~70℃(例えば、20℃~60℃、または35℃~50℃)の範囲の計算Tmを有し得る。これらの実施形態では、Tmは、IDTオリゴアナライザープログラム(IDTのウェブサイトで入手可能であり、Owczarzyら、Nucleic Acids Res.2008 36:W163-9にて記載されている)を用いて、50mMのNa+、250nMのオリゴヌクレオチドのデフォルト設定を用いて、計算され得る。プローブの配列は任意の配列であり得るが、いくつかの実施形態では、各標識された核酸プローブは、配列番号1~47から選択される配列、またはその相補配列を有してもよい。いくつかの実施形態では、プローブは、Tm整合されており、ここで、用語「Tm整合された」とは、定義された範囲内、例えば、15℃未満、10℃未満、または5℃未満の定義された温度の融解温度を有する配列を指す。明らかなように、プローブは、5’末端、3’末端、またはその間の任意の箇所で標識されていてもよい。いくつかの実施形態では、プローブは、特異的に切断可能であってもよく、例えば、切断可能なリンカー(例えば、光または化学的に切断可能なリンカー)を含んでもよい。同様に、オリゴヌクレオチドは、少なくとも5ヌクレオチドの長さ、例えば、少なくとも10、少なくとも15、または少なくとも20、例えば、30~40ヌクレオチドの長さであり得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、捕捉剤が連結されているオリゴヌクレオチドの配列は、標識されたプローブと同じ長さであり、完全に相補的である。これらの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドと捕捉剤との間のリンカーによって捕捉剤に連結されてもよい。いくつかの実施形態では、捕捉剤に連結されているオリゴヌクレオチドの配列は、i.標識された核酸プローブの配列よりも長く、また、標識された単一の核酸プローブに相補的な部分配列(sub-sequence)を除いて互いに同一である。これらの実施形態では、追加の配列は、オリゴヌクレオチドと捕捉剤との間のリンカーとして作用する。特定の実施形態では、捕捉剤に連結されているオリゴヌクレオチドは、38~40ntの長さである。オリゴヌクレオチドは、任意の都合のよい方法を用いて捕捉剤に連結することができる(例えば、Gongら、Bioconjugate Chem.2016:27:217-225、およびKazaneら、Proc Natl Acad Sci2012 109:3731-3736を参照されたい)。様々な標識方法が利用可能である。例えば、独特のオリゴヌクレオチドが、捕捉剤上の任意の好適な化学部分(例えば、システイン残基または操作された部位を介して)を利用して直接捕捉剤に連結されてもよい。他の実施形態では、共通のオリゴヌクレオチドが、任意の好適な化学を利用して捕捉剤の全てに直接コンジュゲートされてもよく、また、独特のオリゴヌクレオチドが、例えば、連結によって、酵素的に共通のオリゴヌクレオチドに連結されてもよい。他の実施形態では、独特のオリゴヌクレオチドは、直接的に、または非共有相互作用を介して間接的に、例えば、ビオチン/ストレプトアビジンもしくはその等価物を介して、アプタマーもしくは二次抗体を介して、またはタンパク質-タンパク質相互作用、例えば、ロイシンジッパータグ相互作用などを介して、捕捉剤に連結されてもよい。代替的な実施形態では、本方法のオリゴヌクレオチドおよびプローブは、特定の様式で互いに結合することができる他の実体物、例えば、ロイシンジッパー対または抗原/抗体対の代用となり得る。
【0059】
各読み取り工程は、プローブのサブセットの結合パターンを示す、試料の画像を生成する。いくつかの実施形態では、この方法は、少なくとも2つの画像を分析すること、比較すること、または重ね合わせることをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、この方法は、全ての画像を重ね合わせて、全ての捕捉剤の試料への結合パターンを示す画像を生成することをさらに含む。使用される画像解析モジュールは、各蛍光体からのシグナルを変換して、複数の偽色画像を生成してもよい。画像解析モジュールは、多重化された偽色画像を得るために、複数の偽色画像を重ね合わせる(例えば、各画素に偽色を重ね合わせる)ことができる。例えば、特定の捕捉剤の結合を特徴とする目的の生物学的特徴を表すために、複数の画像(例えば、重み付けされていない、または重み付けされた)を単一の偽色に変換してもよい。ユーザからの手動入力に基づいて、偽色を特定の捕捉剤または捕捉剤の組み合わせに割り当てることができる。特定の態様では、画像は、核コンパートメント内など、目的の特徴に関連する標識の強度のみに関連する偽色を含んでもよい。画像解析モジュールはさらに、シグナル強度もしくは偽色の強度および/またはコントラストを調整(例えば、正規化)し、畳み込み演算(強度もしくは偽色のぼかしまたはシャープ化など)を実行するように、または画像の質を高めるために任意の他の適切な操作を実行するように、構成されてもよい。画像解析モジュールは、上記の操作のいずれかを実行して、連続した複数の画像から得られた画素を整列させてもよく、および/または連続した複数の画像から得られた画素の強度もしくは偽色をぼかすまたは平滑化してもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、試料の画像は、z方向において異なる焦点面で撮影されてもよい。これらの光学切片は、試料の三次元画像を再構築するために使用することができる。他の方法も知られているが、光学切片は共焦点顕微鏡を用いて撮影されてもよい。画像解析方法は、コンピュータ上で実施することができる。特定の実施形態では、汎用コンピュータは、本明細書に開示されている方法およびプログラムのための機能的配置となるように構成することができる。このようなコンピュータのハードウェアアーキテクチャは、当業者に周知であり、1つ以上のプロセッサ(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、内部または外部のデータ記憶媒体(例えば、ハードディスクドライブ)を含むハードウェア構成要素を含むことができる。コンピュータシステムは、グラフィック情報を処理して表示手段に出力するために、1つ以上のグラフィックボードを含むこともできる。上記の構成要素は、コンピュータ内部のバスを介して適切に相互接続することができる。コンピュータは、モニター、キーボード、マウス、ネットワークなどの汎用外部構成要素と通信するための適切なインターフェースをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、コンピュータは、並列処理が可能であってもよく、または本方法およびプログラムの処理能力を高めるために、並列もしくは分散コンピューティング用に構成されたネットワークの一部とすることができる。いくつかの実施形態では、記憶媒体から読み出されたプログラムコードは、コンピュータに挿入された拡張ボードに備わるメモリ、またはそのコンピュータに接続された拡張ユニットに書き込むことができ、そして、拡張ボードもしくは拡張ユニットに備わるCPUなどは、以下に記載の機能を達成するために、プログラムコードの指示に従って実際に操作の一部または全てを実行する。他の実施形態では、この方法は、クラウドコンピューティングシステムを使用して実行することができる。これらの実施形態では、データファイルおよびプログラミングをクラウドコンピュータにエクスポートすることができ、クラウドコンピュータはプログラムを実行し、出力をユーザに返す。
【0061】
上記の標識方法に加えて、上記の方法を実施する前または後に、細胞学的染色を使用して試料を染色してもよい。これらの実施形態では、染色は、例えば、ファロイジン、ガドジアミド、アクリジンオレンジ、ビスマルクブラウン、バーミン、クマシーブルー、ブレシルバイオレット、ブリスタルバイオレット、DAPI、ヘマトキシリン、エオシン、臭化エチジウム、酸性フクシン、ヘマトキシリン、ヘキスト染色、ヨウ素、マラカイトグリーン、メチルグリーン、メチレンブルー、中性赤、ナイルブルー、ナイルレッド、四酸化オスミウム(osmium tetroxide)(正式名称:osmium tetraoxide)、ローダミン、サフラニン、リンタングステン酸、四酸化オスミウム、四酸化ルテニウム、モリブデン酸アンモニウム、ヨウ化カドミウム、カルボヒドラジド、塩化第二鉄、ヘキサミン、三塩化インジウム、硝酸ランタン、酢酸鉛、クエン酸鉛、硝酸鉛(II)、過ヨウ素酸、リンモリブデン酸、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化カリウム、ルテニウムレッド、硝酸銀、プロテイン酸銀、塩化金(III)酸ナトリウム、硝酸タリウム、チオセミカルバジド、酢酸ウラニル、硝酸ウラニル、硫酸バナジル、またはそれらの任意の誘導体であってもよい。染色は、目的とする任意の特徴、例えば、単一のタンパク質、または複数のタンパク質のクラス、リン脂質、DNA(例えば、二本鎖DNA、一本鎖DNA)、RNA、細胞内小器官(例えば、細胞膜、ミトコンドリア、小胞体、ゴルジ体、核エンベロープ等)、細胞コンパートメント(例えば、細胞質ゾル、核分画等)について特異的であってもよい。染色は、細胞内または細胞外構造のコントラストまたはイメージングを向上してもよい。いくつかの実施形態では、試料をヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色してもよい。
【0062】
キット
本開示により、上記のように本方法を実施するための試薬を含むキットも提供される。いくつかの実施形態では、キットは、少なくとも10個のオリゴヌクレオチド(例えば、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、または全部で47個)の第1の集団を含んでもよく、ここで、この少なくとも10個のヌクレオチドの配列は、配列番号1~47から選択される配列、またはそれらの相補配列からなる。多くの実施形態では、これらのオリゴヌクレオチドは水溶液中にあり、固体支持体につながれていない。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは標識されている(例えば、蛍光体に連結されている)が、他の実施形態では、それらは標識されていない。これらのオリゴヌクレオチドは、別々の容器内にあっても、同じ容器内で混合されてもよい。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、最大3個の上記のオリゴヌクレオチドを含む混合物中にあり、これらのオリゴヌクレオチドは、識別可能に標識されている。いくつかの実施形態では、キットは、オリゴヌクレオチドの第2の集団を含んでもよく、ここで、この第2の集団中のオリゴヌクレオチドはそれぞれ、第1の集団中のオリゴヌクレオチドの全長と相補的な配列を含む。これらの実施形態では、第2の集団中のオリゴヌクレオチドはそれぞれ捕捉剤に連結されていてもよい。いくつかの実施形態では、第2の集団中のオリゴヌクレオチドは、第1の集団中のオリゴヌクレオチドより長くてもよい。キットの様々な構成要素は別々の容器中に存在してもよく、または必要に応じて特定の適合性のある構成要素を単一の容器中で事前に組み合わせてもよい。いくつかの実施形態では、使用されるプローブは、切断可能な結合(例えば、化学的にまたは光切断可能な結合)を含み得る。
【0063】
上記の構成要素に加えて、本キットは、本方法を実施するためにキットの構成要素を使用するための説明書、すなわち、試料分析のための説明書をさらに含み得る。本発明の方法を実施するための説明書は、一般に、適切な記録媒体に記録される。例えば、説明書は、紙またはプラスチックなどの基材上に印刷されてもよい。そのようなものとして、説明書は、添付文書としてキット中に、キットの容器またはその構成要素(すなわち、包装または副包装に関連する)のラベル中などに存在し得る。他の実施形態では、説明書は、CD-ROM、ディスケットなどの適切なコンピュータ可読記憶媒体上に存在する、電子記憶データファイルとして存在する。さらに他の実施形態では、実際の説明書はキット中に存在しないが、例えば、インターネットを介してリモートソースから説明書を取得するための手段が提供される。この実施形態の一例は、説明書を閲覧することができ、かつ/または説明書をダウンロードできるウェブアドレスを含むキットである。説明書と同様に、説明書を得るためのこの手段は、適切な基材上に記録される。
【0064】
システム
本発明の態様は、試料を分析するために構成されたシステムおよびその装置を含む。いくつかの実施形態では、本システムは、試料ウェル、オートサンプラー、コントローラ、プロセッサ、およびプロセッサによって実行された場合にコントローラに試料を分析させる指示を含むコンピュータ可読媒体を含む。ここで、これらの構成要素のそれぞれについて、さらに詳細に説明する。
【0065】
いくつかの実施形態では、システムは試料ウェルを含み、各分析サイクルは、3種類の溶液、1)オリゴヌクレオチド混合液、2)洗浄溶液、および3)ホルムアミド溶液を試料ウェルに送達することを含む。いくつかの実施形態では、使用の簡便性および再現性を目的として、流体工学は完全に自動化されている。特定の実施形態では、オートサンプラーは、各溶液を制御する一連のポンプに沿ってプログラムされる。
【0066】
上記に要約したように、本発明の態様は、対象システムの1つまたは複数の構成要素を制御または動作するように構成または適合されたコントローラ、プロセッサ、およびコンピュータ可読媒体を含む。いくつかの実施形態では、システムは、本明細書で説明されるように、システムの1つまたは複数の構成要素と通信し、システムの態様を制御し、および/または対象システムの1つまたは複数の動作または機能を実行するように構成されたコントローラを含む。いくつかの実施形態では、システムは、プロセッサと、メモリ媒体および/または記憶媒体を含み得るコンピュータ可読媒体とを含む。コンピュータ可読メモリ上のコンピュータ可読命令として実施されるアプリケーションおよび/またはオペレーティングシステムは、本明細書で説明される機能のうちのいくつかまたは全てを提供するためにプロセッサによって実行され得る。特定の実施形態では、単一の分析サイクルを完了するための一連のコマンド全体が完全に自動化され、pythonプログラムによって制御される。
【0067】
いくつかの実施形態では、システムは、ユーザから入力を受信し、本明細書に記載の方法の1つまたは複数を実行するように適合または構成されたグラフィカルユーザインターフェース(GUI)などのユーザインターフェースを含む。いくつかの実施形態では、GUIはデータまたは情報をユーザに表示するように構成されている。
【0068】
有用性
本明細書に記載の方法および組成物は、任意の試料の分析のための多種多様な応用において一般的な用途が見いだされる(例えば、組織切片、細胞のシート、遠心した細胞、電気泳動ゲルのブロット、ウエスタンブロット、ドットブロット、ELISA、抗体マイクロアレイ、核酸マイクロアレイ等の分析にて)。この方法は、例えば、脂質除去などによって透明化された組織を含む任意の組織を分析するために使用されてもよい。試料は、拡大顕微鏡法を用いて調製することができ(例えば、Chozinskiら、Nature Methods2016 13:485-488を参照されたい)、これは、有機ポリマーと細胞成分との選択的共重合によって作製された生物系のポリマー複製物を作製することを含む。この方法は、例えば、細胞のスプレッド(spreads of cells)、エキソソーム、細胞外構造、固体支持体上またはゲル中(Elisa、ウエスタンブロット、ドットブロット)に堆積した生体分子、生物全体、個々の器官、組織、細胞、細胞外成分、細胞小器官、細胞成分、クロマチンおよびエピジェネティックマーカー、生体分子および生体分子複合体を分析するために使用されることが使用されることができる。捕捉剤は、タンパク質、脂質、多糖類、プロテオグリカン、代謝産物、または人工小分子などを含む任意の種類の分子に結合することができる。この方法は、ハイスループットスクリーニングおよび創薬などにおいて多くの生物医学的用途を有し得る。さらに、この方法は、診断、予後診断、疾患の階層化、個別化医療、臨床試験、および薬物付随試験を含むがこれらに限定されない、様々な臨床適用を有する。
【0069】
特定の実施形態では、試料は患者から得られた組織生検の切片であってもよい。対象となる生検には、皮膚(黒色腫、癌腫など)、軟部組織、骨、乳房、結腸、肝臓、腎臓、副腎、消化管、膵臓、胆嚢、唾液腺、頸部、卵巣、子宮、精巣、前立腺、肺、胸腺、甲状腺、副甲状腺、脳下垂体(腺腫など)脳、脊髄、眼球、神経、および骨格筋などの腫瘍生検および非腫瘍生検の両方が含まれる。
【0070】
特定の実施形態では、捕捉剤は、タンパク質性であり得る癌バイオマーカーを含むバイオマーカーに特異的に結合する。例示的な癌バイオマーカーとしては、癌胎児性抗原(腺癌の特定用)、サイトケラチン(癌腫特定用のものではあるが、一部の肉腫にも発現され得る)、CD15およびCD30(ホジキン病用)、アルファフェトプロテイン(卵黄嚢腫瘍および肝細胞癌用)、CD117(消化管間質腫瘍用)、CD10(腎細胞癌および急性リンパ芽球性白血病用)、前立腺特異抗原(前立腺癌用)、エストロゲンおよびプロゲステロン(腫瘍の特定用)、CD20(B細胞リンパ腫の特定用)、CD3(T細胞リンパ腫の特定用)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
上記の方法は、対象からの細胞を分析して、例えば、その細胞が正常であるか否かを決定するために、またはその細胞が治療に応答しているかどうかを決定するために、使用されることができる。一実施形態では、この方法を用いて癌細胞の形成異常の程度を判定することができる。これらの実施形態では、細胞は、多細胞生物由来の試料であり得る。生物学的試料は、個体から、例えば、軟組織から単離することができる。特定の場合において、この方法は、FFPE試料中の異なる種類の癌細胞を区別するために使用され得る。
【0072】
上記の方法により、各抗体が異なるマーカーを認識する、複数の抗体を使用して試料を検査する際に、特定の有用性が見いだされる。癌の例、およびそれらの癌を同定するために使用することができるバイオマーカーを以下に示す。これらの実施形態では、診断を下すために以下に列挙されるマーカーの全てを調べる必要はない。
【0073】
【0074】
いくつかの実施形態では、本方法は、上述のような画像(その電子形態が遠隔地から転送されてもよい)を取得することを含んでもよく、この画像が医師または他の医療専門家により分析されて、患者が異常細胞(例えば、癌様細胞)を有するかどうか、またはどの型の異常細胞が存在するのかを判定することができる。画像を診断として用いて、対象が疾患または病態、例えば、癌を有するかどうかを判定することができる。特定の実施形態では、本方法を用いて、例えば、癌のステージを判定し、転移細胞を特定し、または治療に対する患者の応答をモニターすることができる。
【0075】
本明細書に記載の組成物および方法は、疾患を有する患者を診断するために使用することができる。場合によっては、患者の試料中のバイオマーカーの有無は、患者が特定の疾患(例えば、癌)を有することを示し得る。場合によっては、患者由来の試料を健康対照者由来の試料と比較することによって、患者が疾患を有すると診断することができる。この例では、対照に対するバイオマーカーのレベルが測定され得る。対照に対する患者の試料中のバイオマーカーのレベルの差が、疾患の指標となり得る。いくつかの場合において、疾患を有する患者を診断するために、1つ以上のバイオマーカーが分析される。本開示の組成物および方法は、試料中の複数のバイオマーカーの存在または不在を同定するために、またはそれらの発現レベルを測定するために、特に適している。
【0076】
場合によっては、本明細書の組成物および方法は、患者に対する治療計画を決定するために使用されることができる。バイオマーカーの存在または不在は、患者が特定の療法に対して応答性を示すか、または難治性であるかを示してもよい。例えば、1つまたは複数のバイオマーカーの存在または不在は、疾患が特定の療法に対して難治性であることを示してもよく、代替的な療法が実施され得る。場合によっては、患者は現在治療を受けており、1つまたは複数の生体マーカーの存在または不在は、その治療がもはや効果的ではないことを示す場合がある。
【0077】
任意の実施形態では、データを「遠隔地」に転送することができるが、「遠隔地」とは、画像が検査される場所以外の場所を意味する。例えば、遠隔地は、同じ町の別の場所(例えば、オフィス、ラボ等)、異なる町の別の場所、異なる州の別の場所、異なる国の別の場所等であってもよい。したがって、1つの項目がもう1つの項目と「遠隔」にあると示される場合、それは、2つの項目が、同じ部屋にあるが離れている、または少なくとも異なる部屋または異なる建物にある、少なくとも1マイル、10マイル、もしくは少なくとも100マイル離れているということを意味する。情報を「通信する」とは、その情報を表すデータを電子シグナルとして好適な伝達経路(例えば、プライベートまたは公的なネットワーク)を介して送信することを指す。項目を「転送する」とは、その項目を物理的に輸送するかまたは別の方法(それが可能である場合)によるかに関わらず、その項目を1つの場所から次の場所に移動する任意の手段を指し、少なくともデータの場合、データを有する媒体を物理的に輸送するか、またはデータを通信することを含む。通信媒体の例としては、無線または赤外線の伝達経路、ならびに別のコンピュータまたはネットワークデバイスへのネットワーク接続、ならびに電子メール伝達およびウェブサイト等で記録された情報を含むインターネットが挙げられる。特定の実施形態では、画像は、MDまたは他の資格のある医療専門家によって分析されてもよく、画像の分析結果に基づく報告が、試料が得られた患者に転送されてもよい。
【0078】
場合によっては、本方法は、疾患または病態の診断またはモニタリング(画像によって疾患または病態についてのマーカーが特定される)、薬剤標的の探求(画像中のマーカーが薬剤療法のための標的とされてもよい)、薬剤スクリーニング(画像で示されるマーカーによって薬剤の効果がモニターされる)、薬剤感受性を判定すること(薬剤感受性はマーカーに関連する)、および基礎研究(試料における細胞間での差異を測定することが望ましい)を含むが、これらに限定されない、種々の診断、創薬、および研究応用において利用されてもよい。
【0079】
特定の実施形態では、上記の方法を用いて、2つの異なる試料を比較することができる。異なる試料は、「試験用」試料、すなわち、目的の試料と、試験用試料と比較され得る「対照」試料とから構成され得る。多くの実施形態では、異なる試料は細胞型の対またはその画分であり、一方の細胞型は、目的の細胞型、例えば、異常細胞であり、他方は、対照、例えば、正常細胞である。細胞の2つの画分が比較される場合、その画分は通常2つの細胞の各々からの同じ画分である。しかしながら、特定の実施形態では、同じ細胞の2つの画分が比較されてもよい。例示的な細胞型の対には、例えば、組織生検から(例えば、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、皮膚癌などの疾患を有する、または病原体に感染した組織等から)単離された細胞、および通常同じ患者の同じ組織に由来する正常細胞;不死である組織培養で増殖する細胞(例えば、増殖性の変異または不死化させた導入遺伝子を有する細胞)、病原体に感染した細胞、または治療された細胞(例えば、ペプチド、ホルモン、温度変化、増殖条件、物理的ストレス、細胞の形質転換等などの環境的なまたは化学的な因子によって)、および正常な細胞(例えば、不死でないこと、感染していないこと、または治療されていないこと等を除いて試験用細胞とその他の点では同一である細胞);癌、疾患を有する哺乳類、高齢哺乳類、または病態に曝された哺乳類から単離された細胞、および健常または若年の同一種、好ましくは、同一家族の哺乳類に由来する細胞;ならびに同一哺乳類に由来する分化した細胞および未分化の細胞(例えば、哺乳類における他の前駆細胞である1つの細胞)が含まれる。一実施形態では、異なる型の細胞、例えば、神経細胞および非神経細胞、または異なる状態の細胞(例えば、細胞への刺激の前および後)が用いられてもよい。本発明の別の実施形態では、実験材料は、ウイルス、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのような病原体による感染に感受性のある細胞を含み、対照材料は、病原体による感染に対して耐性のある細胞を含む。別の実施形態では、試料の対は、未分化細胞、例えば、幹細胞と、分化した細胞とによって表される。
【0080】
本方法によって生成された画像は、並べて見られてもよく、またはいくつかの実施形態では、画像は重ね合わされてもよいし、または結合されてもよい。場合によっては、画像はカラーであってもよく、画像に使用される色は、使用される標識に対応してもよい。
【0081】
任意の生物に由来する細胞、例えば、細菌、酵母、植物、および動物、例えば、魚類、鳥類、爬虫類、両生類、および哺乳類に由来する細胞を、本方法に使用することができる。特定の実施形態では、哺乳類細胞、すなわち、マウス、ウサギ、霊長類、もしくはヒトに由来する細胞、またはそれらの培養誘導体が使用されてもよい。
【0082】
実施形態
実施形態1順次行われる以下の工程を含む試料を分析するための方法であって、
(a)
i.それぞれ異なるオリゴヌクレオチドに連結された複数の捕捉剤と、
ii.対応する複数の標識された核酸プローブと、を得る工程であって、標識された核酸プローブの各々は、(a)(i)のオリゴヌクレオチドのただ1つのみと特異的にハイブリダイズする、得る工程;
(b)(a)(i)の複数の捕捉剤で試料を標識する工程;
(c)(a)(ii)の標識された核酸プローブの第1のサブセットを試料と特異的にハイブリダイズさせる工程、ここで、第1のサブセット中のプローブは、識別可能に標識され、標識されたプローブ/オリゴヌクレオチド二本鎖を生成する、ハイブリダイズさせる工程;
(d)工程(c)でハイブリダイズしたプローブの各々についての結合パターンを示す画像を得るために、試料を読み取る工程;
(e)工程(c)において試料と関連付けられた標識を不活化または除去し、一方で、(b)の複数の捕捉剤およびそれらに関連付けられたオリゴヌクレオチドは依然として試料に結合させておく工程;ならびに
(f)(a)(ii)の標識された核酸プローブの異なるサブセットを用いて工程(c)および(d)を複数回繰り返し、各繰り返しの後には、最後の繰り返しを除いて工程(e)が続き、試料の複数の画像を生成する工程であって、各画像は、(c)で使用された標識された核酸プローブのサブセットに対応する、繰り返す工程;を含む、試料を分析するための方法。
【0083】
実施形態2試料が平面細胞試料である、実施形態1に記載の方法。
【0084】
実施形態2A試料が平面試料である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0085】
実施形態2B試料が非平面試料である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0086】
実施形態3A(a)(i)のオリゴヌクレオチドが少なくとも5ヌクレオチドの長さである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0087】
実施形態3B(a)(i)のオリゴヌクレオチドが30~40ヌクレオチドの長さである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0088】
実施形態4A(a)(ii)の標識された核酸プローブが少なくとも5ヌクレオチドの長さである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0089】
実施形態4B(a)(ii)の標識された核酸プローブが8~30ヌクレオチドの長さである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0090】
実施形態5前記(a)(i)の捕捉剤に連結しているオリゴヌクレオチドの配列が、i.(a)(ii)の標識された核酸プローブの配列よりも長く、また、ii.(a)(ii)の標識された単一の核酸プローブに相補的な部分配列を除いて互いに同一である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0091】
実施形態6A6A(c)の二本鎖が少なくとも15℃のTmを有する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0092】
実施形態6B(c)の二本鎖が35℃~75℃の範囲のTmを有する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0093】
実施形態7(c)のハイブリダイズが、約2分間である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0094】
実施形態8各標識された核酸プローブが、配列番号1~47から選択される配列、またはその相補配列を有する、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0095】
実施形態9捕捉剤に連結された各オリゴヌクレオチドが、配列番号48~94から選択されるか、またはその相補配列である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0096】
実施形態10複数の捕捉剤が少なくとも10個の捕捉剤である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0097】
実施形態11サブセットのそれぞれが独立して2~4個の標識された核酸プローブである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0098】
実施形態12プローブが工程(e)においてホルムアミドを用いて除去される、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0099】
実施形態13試料を70%~90%のホルムアミド中で少なくとも1分間インキュベートし、続いて洗浄することによって、プローブが工程(e)において除去される、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0100】
実施形態14工程(f)が工程(c)および(d)を2~20回繰り返すことを含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0101】
実施形態15少なくとも2つの画像を解析することをさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0102】
実施形態16解析が、少なくとも2つの画像を比較することまたは重ね合わせることを含む、実施形態15に記載の方法。
【0103】
実施形態17全ての画像を重ね合わせて、全ての捕捉剤の試料への結合パターンを示す画像を生成することをさらに含む、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0104】
実施形態18標識された核酸プローブが、蛍光標識されている、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0105】
実施形態19読み取りが、蛍光顕微鏡によって行われる、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0106】
実施形態20捕捉剤が、抗体またはアプタマーである、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0107】
実施形態21試料が、ホルマリン固定され、パラフィン包埋(FFPE)された切片または細胞スプレッド(cell spread)である、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0108】
実施形態22工程(e)が、工程(c)でハイブリダイズしたプローブを変性により試料から除去し、一方で、(b)の複数の捕捉剤およびそれらに関連付けられたオリゴヌクレオチドを依然として試料に結合させておくことにより実施される、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0109】
実施形態23工程(e)が、工程(c)でハイブリダイズしたプローブを変性により試料から除去し、一方で、(b)の複数の捕捉剤およびそれらに関連付けられたオリゴヌクレオチドを依然として試料に結合させておくことにより実施されない、先行する実施形態のいずれかに記載の方法。
【0110】
実施形態24工程(e)が、工程(c)で試料と関連付けられた前記プローブ中の少なくとも1つの結合、またはプローブを標識に連結するリンカーを切断し、それにより、プローブから標識を放出させることにより行われる、実施形態23に記載の方法。
【0111】
実施形態25切断が、酵素的、化学的、または光への暴露を介して行われる、実施形態24に記載の方法。
【0112】
実施形態26工程(e)が、標識を不活化することによって行われる、実施形態23に記載の方法。
【0113】
実施形態27少なくとも10個の核酸プローブの第1集団を含むキットであって、
少なくとも10個のオリゴヌクレオチドの配列が、配列番号48~94から選択される配列、またはそれらの相補配列からなる、キット。
【0114】
実施形態28オリゴヌクレオチドが標識されている、実施形態27に記載のキット。
【0115】
実施形態29オリゴヌクレオチドが別々の容器に入っている、実施形態27~28のいずれかに記載のキット。
【0116】
実施形態30オリゴヌクレオチドが、最大3個までのオリゴヌクレオチドを含む混合物中にある、実施形態27~29のいずれか一項に記載のキット。
【0117】
実施形態31オリゴヌクレオチドの第2の集団をさらに含むキットであって、
第2の集団中のオリゴヌクレオチドがそれぞれ、第1の集団中のオリゴヌクレオチドの全長に相補的な配列を含む、実施形態27~30のいずれかに記載のキット。
【0118】
実施形態32第2の集団中のオリゴヌクレオチドがそれぞれ捕捉剤に連結されている、実施形態27~31のいずれかに記載のキット。
【0119】
実施形態33第2の集団中のオリゴヌクレオチドが、第1の集団中のオリゴヌクレオチドより長い、実施形態27~32のいずれかに記載のキット。
【0120】
実施形態34第2の集団中のオリゴヌクレオチドが、配列番号48~94から選択されるか、またはその相補配列である、実施形態27~33のいずれかに記載のキット。
【0121】
実施形態35プローブが、ホスホジエステル結合ではない切断可能な連結を含む、実施形態27~34のいずれかに記載のキット。
【0122】
実施形態36試料ウェル、オートサンプラー、コントローラ、プロセッサ、およびプロセッサによって実行された場合にコントローラに試料を分析させる指示を含むコンピュータ可読媒体を含む、試料を分析するためのシステムであって、分析が、
(a)試料を複数の捕捉剤で標識すること;
(b)複数の標識された核酸プローブの第1のサブセットを試料に特異的にハイブリダイズさせること;
(c)工程(b)でハイブリダイズしたプローブの各々についての結合パターンを示す画像を得るために、試料を読み取ること;
(d)工程(b)でハイブリダイズした標識および/またはプローブを試料から除去すること;ならびに
(e)複数の標識された核酸プローブの異なるサブセットを用いて、工程(b)および(c)を複数回繰り返し、最後の繰り返しを除いて、各繰り返しの後に工程(d)を続けること;を含む、システム。
【0123】
実施形態37(b)のハイブリダイズが、約2分間である、実施形態36に記載のシステム。
【0124】
実施形態38工程(e)が、工程(b)および(c)を2~20回繰り返すことを含む、実施形態36~37のいずれかに記載のシステム。
【0125】
実施形態39複数の捕捉剤が少なくとも10個の捕捉剤である、実施形態36~38のいずれかに記載のシステム。
【0126】
実施形態40サブセットのそれぞれが独立して2~4個の標識された核酸プローブである、実施形態36~39のいずれかに記載のシステム。
【0127】
実施形態41プローブが工程(d)において変性によって除去される、実施形態36~40のいずれかに記載のシステム。
【0128】
実施形態40試料を70%~90%のホルムアミド中で少なくとも1分間インキュベートし、続いて洗浄することによって、プローブが工程(d)において除去される、実施形態41に記載のシステム。
【0129】
実施形態41順次行われる以下の工程:(a)i.それぞれ異なるオリゴヌクレオチドに連結された複数の捕捉剤と、ii.対応する複数の標識された核酸プローブと、を得る工程、ここで、標識された核酸プローブの各々は、(a)(i)のオリゴヌクレオチドのただ1つのみと特異的にハイブリダイズする;(b)(a)(i)の複数の捕捉剤で平面試料を標識する工程;(c)(a)(ii)の標識された核酸プローブの第1のサブセットを試料と特異的にハイブリダイズさせる工程、ここで、第1のサブセット中のプローブは、識別可能に標識され、標識されたプローブ/オリゴヌクレオチド二本鎖を生成する;(d)工程(c)でハイブリダイズしたプローブの各々についての結合パターンを示す画像を得るために、試料を読み取る工程;(e)工程(c)においてハイブリダイズしたプローブを変性により試料から除去し、一方で、(b)の捕捉剤およびそれらに関連付けられたオリゴヌクレオチドを依然として試料に結合させておく工程;ならびに(f)(a)(ii)の標識された核酸プローブの異なるサブセットを用いて工程(c)および(d)を複数回繰り返し、各繰り返しの後には、最後の繰り返しを除いて工程(e)が続き、試料の複数の画像を生成する工程、ここで、各画像は、(c)で使用された標識された核酸プローブのサブセットに対応する;を含む、試料を分析するための方法。
【0130】
実施形態42試料が平面細胞試料である、実施形態41に記載の方法。
【0131】
実施形態43(a)(i)のオリゴヌクレオチドが30~40ヌクレオチドの長さである、実施形態41~42のいずれかに記載の方法。
【0132】
実施形態44(a)(ii)の標識された核酸プローブが8~30ヌクレオチドの長さである、実施形態41~43のいずれかに記載の方法。
【0133】
実施形態45(a)(i)の捕捉剤に連結しているオリゴヌクレオチドの配列が、i.(a)(ii)の標識された核酸プローブの配列よりも長く、また、ii.(a)(ii)の標識された単一の核酸プローブに相補的な部分配列を除いて互いに同一である、実施形態41~44のいずれかに記載の方法。
【0134】
実施形態46(c)の二本鎖が、35℃~75℃の範囲のTmを有する、実施形態41~45のいずれかに記載の方法。
【0135】
実施形態47(c)のハイブリダイズが、約2分間である、実施形態41~46のいずれかに記載の方法。
【0136】
実施形態48各標識された核酸プローブが、配列番号1~47から選択される配列、またはその相補配列を有する、実施形態41~47のいずれかに記載の方法。
【0137】
実施形態49捕捉剤に連結された各オリゴヌクレオチドが、配列番号48~94から選択されるか、またはその相補配列である、実施形態41~48のいずれかに記載の方法。
【0138】
実施形態50複数の捕捉剤が少なくとも10個の捕捉剤である、実施形態41~49のいずれかに記載の方法。
【0139】
実施形態51サブセットのそれぞれが独立して2~4個の標識された核酸プローブである、実施形態41~50のいずれかに記載の方法。
【0140】
実施形態52プローブが工程(e)においてホルムアミドを使用して除去される、実施形態41~51のいずれかに記載の方法。
【0141】
実施形態53試料を70%~90%のホルムアミド中で少なくとも1分間インキュベートし、続いて洗浄することによって、プローブが工程(e)において除去される、実施形態41~52のいずれかに記載のシステム。
【0142】
実施形態54工程(f)が工程(c)および(d)を2~20回繰り返すことを含む、実施形態41~53のいずれかに記載の方法。
【0143】
実施形態55少なくとも2つの画像を解析することをさらに含む、実施形態41~54のいずれかに記載の方法。
【0144】
実施形態56分析が、少なくとも2つの画像を比較することまたは重ね合わせることを含む、実施形態55に記載の方法。
【0145】
実施形態57全ての画像を重ね合わせて、全ての捕捉剤の試料への結合パターンを示す画像を生成することをさらに含む、実施形態41~56のいずれかに記載の方法。
【0146】
実施形態58標識された核酸プローブが、蛍光標識されている、実施形態41~57のいずれかに記載の方法。
【0147】
実施形態59読み取りが、蛍光顕微鏡によって行われる、実施形態41~58のいずれかに記載の方法。
【0148】
実施形態60捕捉剤が、抗体またはアプタマーである、実施形態41~59のいずれかに記載の方法。
【0149】
実施形態61平面試料が、ホルマリン固定され、パラフィン包埋(FFPE)された切片または細胞スプレッドである、実施形態41~60のいずれかに記載の方法。
【0150】
本発明をさらに説明するために、以下の特定の実施例が提供されるが、それらは本発明を説明するために提供されており、決してその範囲を限定するものとして解釈されるべきではないということが理解される。
【実施例】
【0151】
全体的手順
各抗体は、色素分子にコンジュゲートしたより短い相補的なオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする独特のオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされる。全ての抗体が合わされ、このカクテルを用いて標的組織(または細胞スプレッド)を染色する。組織をフローセルに取り付け、標準的な4色顕微鏡用に3セットの色素-オリゴヌクレオチドのライブラリーを送達するためにオートサンプラーを使用して、オリゴヌクレオチドのアニーリングおよび除去の反復サイクルを行う。各ハイブリダイゼーション工程の後、組織または細胞スプレッドを蛍光顕微鏡で画像化する。色素-オリゴヌクレオチドは、各サイクルの間にホルムアミド溶液を用いて除去される。各サイクルからの蛍光画像を重ね合わせて、全てのサイクルおよび蛍光チャネルにわたる単一細胞の解像度情報を抽出する。
【0152】
試薬デザイン
オリゴヌクレオチドライブラリー
配列直交型(sequence orthogonal)オリゴヌクレオチドプローブセットのライブラリーを、以下の基準に従って設計した:1)各プローブセットは、抗体にコンジュゲートした30~40ntのオリゴヌクレオチド配列(オリゴa)と、蛍光色素にコンジュゲートしたより短い長さ(10~20nt)の相補的オリゴヌクレオチド(オリゴb)とを含む。2)各オリゴbは、35℃~50℃の融解温度(Tm)を有する。Tmが35℃未満である場合、イメージングの間、オリゴbはオリゴaにハイブリダイズしない。Tmが75℃を超える場合、色素-オリゴヌクレオチド(b)は、ホルムアミドインキュベーション工程中に除去されることができない。
【0153】
プローブセットのライブラリーを、配列重複についてスクリーニングした。以下の配列は、配列類似性がないことが判明した。
【0154】
【0155】
オリゴヌクレオチド除去
ハイブリダイズした色素標識されたオリゴヌクレオチドは、2mMのトリスpH=7.5、2mMのMgCl2、25mMのNaCl、および0.02%(v/v)のTritonXを伴う80%のホルムアミド溶液を用いて、除去される。各サイクルの間に色素標識されたオリゴヌクレオチドを完全に除去するために、試料の表面にてホルムアミド溶液での120秒のインキュベーションを3回行い、次いで、10mMのトリスpH=7.5、10mMのMgCl2、150mMのNaCl、および0.1%(v/v)のTritonXを用いる4回の洗浄工程が行われる。
【0156】
自動化流体工学デザイン
各サイクルは、以下の工程を含む。
1.ウェル内の溶液の除去および色素-オリゴヌクレオチドセットの送達
2.ハイブリダイゼーションインキュベーション
3.色素-オリゴヌクレオチドセット溶液の除去および試料の洗浄(4×)
4.試料イメージング
5.ウェル内の溶液の除去およびホルムアミド溶液の送達
6.ホルムアミド溶液インキュベーション
7.ウェル内の溶液の除去および試料の洗浄(4×)
8.ウェル内の溶液の除去およびホルムアミド溶液の送達
9.ホルムアミド溶液インキュベーション
10.ウェル内の溶液の除去および試料の洗浄(4×)
11.ウェル内の溶液の除去およびホルムアミド溶液の送達
12.ホルムアミド溶液インキュベーション
13.ウェル内の溶液の除去および試料の洗浄(4×)
【0157】
このプロセスは、96ウェルプレート対応オートサンプラーと組み合わせた特注の電子ボード/pythonプログラムによって制御されるポンプシステムを使用して完全に自動化される。
【0158】
実施例1
色素-オリゴヌクレオチドは、抗体-DNAコンジュゲートにハイブリダイズされ、繰り返しサイクルにわたって除去することができる。
この技術の基盤は、DNAにコンジュゲートした抗体に色素標識したオリゴヌクレオチドをアニールする能力/DNAにコンジュゲートした抗体から色素標識したオリゴヌクレオチドを除去する能力である。これの実行可能性を証明するために、ヒト新鮮凍結リンパ節組織を、DNAにコンジュゲートしたCD3抗体(クローンUCHT1)で染色した。対比染色として、CD19に対して直接的に色素(Alexa647)標識した抗体を使用した。アニーリング/脱ハイブリダイゼーションの反復サイクルを実施した。ハイブリダイゼーション/ホルムアミド工程の両方の後に、同一組織領域をキーエンス顕微鏡で可視化した。各サイクルの間に、相補的なFAM標識されたオリゴヌクレオチドを、CD3コンジュゲート配列(14nt、Tm=42.4℃)に対して、室温(約23℃)で5分間ハイブリダイズさせた。ホルムアミド溶液(30%)を組織に添加し、5分間インキュベートして、色素標識されたオリゴヌクレオチドを除去した(
図2および3)。
【0159】
実施例2
DNA-オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションの動力学
1サイクル当たりの時間が短縮されることにより、この技術における有用性が改善する。ハイブリダイゼーションの最短時間を決定するために、新鮮凍結ヒトリンパ節組織を、DNA-コンジュゲートCD3抗体およびAlexa647-コンジュゲートCD19抗体で染色した。相補的なFITC標識されたオリゴヌクレオチドを、異なるインキュベーション時間で組織(1μM)に添加し、細胞染色強度を測定した。各ハイブリダイゼーションインキュベーションの後に、ホルムアミドインキュベーション(30%)を続け、全てのハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを除去した。蛍光強度を直接比較するために、試験した全てのインキュベーション時間について、同一組織領域を画像化した。ハイブリダイゼーションの2分以内に、蛍光強度は最大化した(
図4)。
【0160】
実施例3
ホルムアミド除去の動力学
各サイクルは、ハイブリダイゼーション工程およびホルムアミドを用いた除去工程の両方を含む。ハイブリダイズした全ての色素標識されたオリゴヌクレオチドを除去するための最短時間を測定した。ハイブリダイゼーション動力学を試験するために使用したのと同じ組織を、ホルムアミド除去動力学を試験するために使用した。相補的な色素標識されたオリゴヌクレオチド(1μM)を5分間ハイブリダイズさせた。ホルムアミド溶液(30%)を異なる時間でインキュベートした後、溶液を洗い流し、除去を停止した(
図5)。試験した各時点の間に、追加の色素標識されたオリゴヌクレオチドを添加した。1分後、色素標識されたオリゴヌクレオチドを完全に除去した。
【0161】
実施例4
色素-オリゴヌクレオチドの特徴:長さ、Tm
ハイブリダイゼーション/除去の繰り返しサイクルの実現可能性を測定する予備研究は、Tm=42.4℃を伴う14ntの相補的な色素標識されたオリゴヌクレオチドを用いて実施した。イメージングの間(2時間まで)に十分な抗体染色を達成するための長さ/Tmの最小値と、ホルムアミド溶液で除去することができる長さの最大値とを決定するために、様々な長さの色素標識されたオリゴヌクレオチドを、ハイブリダイゼーション傾向/除去の両方について試験した(
図5および6)。28℃未満のTmを伴う長さ10ntの色素標識されたオリゴヌクレオチドは、使用された条件下で、CD3DNAコンジュゲート抗体で染色された組織に効率的にハイブリダイズしないことが見出された(
図6)。これに最も近い特徴を有する、長さ12ntおよびTm=34.4℃を有するオリゴヌクレオチドは、試験した他の全てのより長い色素標識されたオリゴヌクレオチドと同様に効率的にハイブリダイズした。ハイブリダイズした色素標識されたオリゴヌクレオチドの各々を、ホルムアミド溶液と共に2分間隔でインキュベートした(
図7)。試験した最長の色素標識されたオリゴヌクレオチドは、30ntであり、Tm=65.9℃を有した。このプローブは80%のホルムアミド溶液中で効率的に除去された。これらの知見に基づいて、このアッセイに最適な色素標識されたオリゴヌクレオチドは、少なくとも35℃のTmを有するべきである。
【0162】
実施例5
抗体コンジュゲーションのための配列直交型オリゴヌクレオチド対のライブラリーの設計
各オリゴヌクレオチド対は、抗体にコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドと、色素修飾を有する相補的配列とからなる。抗体に結合したオリゴヌクレオチドは、テザー(tether)配列を許容するために、色素標識されたオリゴヌクレオチドよりも長さが長いので、ハイブリダイゼーションは、抗体のすぐ隣で起こる必要はない。30個のオリゴヌクレオチド対のライブラリーを設計し、合成した。クロスハイブリダイゼーションについてスクリーニングするために、各マレイミドオリゴヌクレオチドを、マウスCD45抗体にコンジュゲートさせた。マウス脾臓細胞のアリコートを、単一のオリゴヌクレオチドで標識したCD45抗体で染色した。十分に洗浄した後、細胞を合わせて、カバーガラス上に置いた。3セットの色素標識されたオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションの反復サイクルを実施した。色素標識されたオリゴヌクレオチドの除去は、ホルムアミドを用いて、各ハイブリダイゼーションの間に行った。色素標識されたオリゴヌクレオチドの各々に対応する細胞にわたる蛍光強度を測定し、他の全ての色素標識されたオリゴヌクレオチドに対応する蛍光強度と比較した。蛍光強度の値を
図8にプロットする。各細胞集団についての蛍光強度プロファイルの代表的なトレースを
図9に示す。オリゴヌクレオチド対のいくつかは、クロスハイブリダイゼーション活性を示す(例えば、T9およびT10)。
図8に示した蛍光強度データに基づいて、オリゴヌクレオチド対の最小のセットを30のライブラリーから取り出し、配列直交型ライブラリーセットを作成した。得られた24個のオリゴヌクレオチド対のライブラリーを
図10に示す。
【0163】
追加のオリゴヌクレオチド対を設計し、プローブの第1のセットと同様にスクリーニングした。現在、45の配列直交型プローブセットが存在する。
【0164】
実施例6
自動化流体工学セットアップ
各サイクルは、3種類の溶液、1)オリゴヌクレオチド混合液、2)洗浄溶液、および3)ホルムアミド溶液、を試料ウェルに送達することを含む。使用の簡便性および再現性を目的として、流体工学は完全に自動化された。オートサンプラーは、各溶液を制御する一連のポンプに沿ってプログラムされた。各サイクルにおいて、3つのオリゴヌクレオチドの対応するセットが、96ウェルプレート内の指定されたウェルから取り出される。溶液を試料にポンプで送り込み、次いで、インキュベートする。単一のサイクルを完了するための一連のコマンド全体が完全に自動化され、pythonプログラムによって制御される。オートサンプラーの使用を実証するために、色素標識されたオリゴヌクレオチドの対を、96ウェルプレート内の最初の8つの位置に加えた。各奇数サイクルウェルは、色素-オリゴヌクレオチドT11-cy5およびT18-cy3を含み、各偶数サイクルは、T24-Cy5およびT26-Cy3を含む。このプラットフォームを用いて、異なるオリゴヌクレオチドにコンジュゲートしたCD45抗体で染色したマウス脾臓細胞の集団を画像化した。各サイクルからの染色された細胞の画像を、各集団からの5つの細胞にわたる代表的な細胞トレースと共に、
図11に示す。示されるように、蛍光強度は全ての奇数および偶数サイクルにわたって同等であり、これは、オートサンプラーが色素標識されたオリゴヌクレオチド溶液をキャリーオーバーなしに試料に送達することを示している。
【0165】
実施例7
オリゴヌクレオチドライブラリーにコンジュゲートした抗体を用いたヒト組織の染色
ヒト組織を、マレイミドオリゴヌクレオチドの1つにコンジュゲートした抗体のカクテルで染色した。ハイブリダイゼーション/除去の反復サイクルは、各ハイブリダイゼーション工程後に行われるイメージングを伴って実施した。このプラットフォームを用いて、ヒト扁桃腺(
図12)およびヒトリンパ節(
図13)を画像化した。予想される染色はほぼすべてのサイクルで生じた。
【0166】
上記の発明は、理解を明確にするために、例示および実施例によってある程度詳細に記載されているが、本発明の教示に照らして当業者には、特定の変更および修正が添付の特許請求の範囲の主旨または範囲から逸脱することなく、本発明を実施することができることは容易に明らかである。
【配列表】